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カテゴリー「_現地訪問・調査」の記事一覧

6月8日①三重県大台町池ノ谷

NPO法人奥山保全トラス トが所有する池ノ谷を訪れました。

日本一の清流宮川の水が初めて湧きだすところが、池ノ谷です。

途中の宮川では、アユ釣りの人が川に入って友釣りをされていました。

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池ノ谷に着くと、3年前の大雨で崩れた国道の復旧作業が終わっていました。コンクリートを使わずに、石をかごに入れたものを積み上げる工法でした。

ここを通過してしばらく行くと、道路の復旧がまだのところが出てきます。車の通行は無理なので、車から降りてみんなで歩きました。

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池の入り口にある桑の木には実がびっしりと付いていましたが、まだ小さくて実は熟してもいませんでした。(平地では、今ちょうど実は食べごろです)

池に行くと、今年も、透明度100%のきれいな泉ができていました。いつ見ても絵葉書のように美しい風景です。

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6月15日特殊伐採

以前から、日陰になるから切ってほしいとお願いされていた杉の木を伐採しました。

 

本来は民家のそばにある木を切っても動物のエサ場作りにはならないのですが、地元でお世話になっているので感謝の気持ちを込めて伐採させていただきました。

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2014.2.23の風景

上の写真は雪の時期の写真ですが、杉の木のまわりに電線や金網フェンスなどの人工物があり、一歩間違えると人工物を壊してしまうので、非常に難しい特殊な伐採です。

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2014.6.15当日の風景

木を間違いなく山側に倒すために、木に登って枝を打って木の高い位置にロープを掛けてきます。

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上の写真で木の枝を打っているところまで登っています。

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しっかり安全帯もつけて登ります。

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この足の裏についている金属の爪を木に食い込ませながら登ります。

今回お手伝いしてくれたもんきちさんの映像です。

http://youtu.be/3bZ5qQveBes

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伐採後の林床

 

特殊伐採は一日に伐れる本数が限られています。

本当はもっと切りやすい場所をバッサバッサ伐りたいのですが、久しぶりだったので楽しかったです。

 

(iedy)

5月18日 大好評だったトチノキ巨木群ツアー (滋賀県)

「びわ湖水源の森巨木トラスト基金」にご寄付下さったみなさんに、感謝の心を込めて、くまもりがトチノキ巨木群ツアーを企画させていただきました。

 

JR西日本安曇川駅に午前9時過ぎ集合。室谷副会長から参加されたみなさんに、トラスト基金ご協力への感謝の挨拶がありました。

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この後、貸し切りバスや乗用車に乗っていただき、約50分でサケビ峠登山口に到着。地元のスタッフのみなさん十数人が迎えてくださいました。

巨木と水源の郷をまもる会と熊森滋賀県支部のみなさんは、あらかじめ林道の整備や沢に橋を架けておいてくださるなど、この日の参加者のために、こまごましたところまで至れり尽くせりの準備をしてくださっていました。

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巨木保全運動の中で、滋賀県が保護に乗り出してくださったトチノキの巨木(周囲484cm)を観察しました。大きすぎて、木がカメラに入りきりません。

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ササ谷とトチモチ谷の合流点には伐採を免れた立派なトチノキがそびえていました。ここで昼食です。森の中で木漏れ日を浴びながら食べる弁当は格別です。

昼食後、青木先生(元朽木いきものふれあいの里館長・巨木と水源の郷をまもる会相談役)が、清楚な白いトチの花を手に、一房のトチにはおよそ100個の花が付き、その中に雌蕊は数個しかなく、最終的に一房に実るトチの実は1~2個となるなど、興味深いお話をしてくださいました。

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お話の後、サケビ峠方面へ20分ほど登りました。途中、トチノキの大きな切り株を何本も目撃しました。もし、トラストが成功していなかったら、道中観察してきたトチノキがすべてこのような無残な姿になっていたことが容易に想像できました。

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伐採されたトチノキ巨木の切り株

 

さわやかな5月の風に吹かれて、何本もの新緑のトチノキ巨木を見て歩きました。

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日光を通したトチノキの若葉が、絵のように美しかったです。

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全員で記念写真

ご参加くださったみなさんの健脚ぶりにはスタッフ一同、驚かされました。みなさん、お疲れさまでした。

この日、案内してくださったスタッフを代表して、熊森滋賀県支部村上支部長が挨拶。この後、JR西日本安曇川駅までもどって3時前に解散しました。

 

(最後に)

参加されたみなさんに大変喜んでいただき、企画して本当によかったと思いました。

 

今回、応募が殺到したため、当初の定員25名を36名にまで増やしましたが、それでも受け入れられず、お断りせざるを得ない方々が出ました。申し訳ございませんでした。次回の機会にご応募ください。

 

最後になりましたが、巨木と水源の郷をまもる会のみなさん、くまもり滋賀県支部のスタッフのみなさん、お世話になりました。ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

冬の兵庫県奥山原生的自然林の動植物調査

2月24日、天気の良い日を狙って兵庫県最高峰氷ノ山(1510メートル)の近くにある奥山保全トラストのトラスト地を調査してきました。下の地図の赤線で囲まれたところがトラスト地で、120haの広さがあり、真ん中の谷には沢が流れています。ここは、ブナ・ミズナラの巨木の原生的自然林が残されています。

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戸倉スキー場の隣なので、いったんリフトで標高840mまで登り、そこから6時間半かけて、トラスト地の外周の尾根筋(赤線上)を一周してきました。地図上の左の方に縦に走っている黒い線が、鳥取県との県境になります。この線の左側が鳥取県で、右側が兵庫県です。

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定番のスノーシューをはいて、いざ出発です。

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こちらは動物を撮影するための自動撮影カメラです。今回は昨年12月12日に設置した動物カメラを回収して、新たにこのカメラを設置してくる予定です。

約2か月半の間雪山に設置したカメラに、どんな動物たちが映っているのか楽しみです。

自動撮影カメラを使い始めてから、少しずつ動物たちの動きがわかってきました。自動撮影カメラによる調査研究は、動物を捕獲して全身麻酔を施し、発信機を装着するテレメトリー調査などと比べると、動物に与える負担はほとんどありません。支部のみなさんにもこれから大いに使っていただきたいと思います。

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尾根筋は積雪が1m以上のところもあれば、地表が見えるほど雪が融けているところもあります。傾斜や道の幅、日当たりなどで積雪量も変わってくるのでしょう。

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このブナの木には、冬でも緑色をした寄生木ヤドリギがたくさんついていました。ヤドリギの種を運んでくるのは鳥なので、ここが鳥の飛行ルートになっていることがわかります。春の訪れを感じさせる程鳥の鳴き声を何度も聞くことができました。

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ミズナラの巨木に洞がありました。クマは頭さえ入ると体までスッポリ洞の中に入ることができるそうです。

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洞の中はなんとも暖かそうでしたが、クマが冬籠りしたような痕跡はありませんでした。

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尾根筋に動物の足跡を見つけることができましたが、前回氷ノ山を調査したときよりは少なかったです。

ずっと奥山を見続けてきた人の話では、20年前までは、雪山は動物たちの足跡でいっぱいだったそうです。そういう時と比べると、現在の奥山はどこも、動物たちが激減しているといえるでしょう。山の変化は、ずっと山を見続けてきた人にしかわからないので、高齢者の証言は、本当に貴重です。

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笹の葉が、雪から頭を出していました。ここにはシカが来ていないようです。雪から出ている部分の笹は、春先にいったん冬眠解除した後、わずかな低温でも一気に凍害を起こして枯れてしまうそうです。このチシマザサが元気でいるためには、全身が雪のフトンに覆われていることが必要なのです。

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これは何でしょう?ゼリー状の中に粒があります。何かの実が落ちたものでしょうか。

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シカの角砥ぎの跡です。傷が浅いので幹が固くなった昨年の秋頃につけられたのではないでしょうか。

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こちらは傷が深いので、幹が柔らかかった昨年の春につけられた跡だと思います。

 

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頂上までもうすぐです。雪が深くなってきました。この辺りは背丈の高い笹がたくさん生えているのですが、すべて雪で覆われています。

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テンのフンを見つけました。中になにか種のようなものがあります。この時期のテンが何を食べているのか気になったので持って帰って調べることにしました。

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10:15に出発して13:30、ついに1216メートルの山頂に到着しました!

頂上からの景色は実にすばらしく、熊森のフィールド担当をさせてもらって本当に良かったなと思う瞬間です。

手前の山の雪で白くなっている部分が広葉樹の自然林で、トラスト地です。遠くに見える黒っぽい山の部分がスギやヒノキの人工林です。このあたりの山は本当に人工林が多くて、宍粟市の人工林率は、今も73%です。人工林率が下がる気配は一向になく、野生鳥獣たちにとっては相変わらず、すみづらい山です。

くたくたになって山から下りてきました。

 

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さて、冬の2か月半の間に、自動撮影カメラにどんな動物がどれくらい映っていたでしょうか。

オスジカ1頭(12月に2回)、ウサギ1頭(1月に1回)、テンらしきもの1頭(1月に1回)。これだけでした。2月はゼロでした。

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明らかに、環境に百害あって一利なし リニアモーターカー 山梨県建設現場視察

今年1月26日午後、初めてリニア建設現場を見ました。こんなグロテクスな巨大建造物を、山梨県どころか、美しい南アルプスの山を貫いて大阪まで、残された大切な自然を破壊しながら建造していくだなんて、日本に生まれて、この美しい国土を愛することができない人たちがいるのだろうかと、不思議にも思い、悲しくも思いました。

 

リニアモーターカー建設現場近くのブドウ農家の方にインタビューしてみました。やはり地下水脈が切断されて、水が枯れたり、また反対に、かなり離れた思いもかけない場所から水が噴き出したりしているということでした。地下水脈をぶち切るのですから、当然、そうなると思います。地元にとっては迷惑この上ない事業でしょう。

 

景観にとってどうか。

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美しい風景の前に、巨大な白線が引かれる。景観に百害あって一利なし。白線はそのうち、色が汚くなっていくはずです。

山中のトンネル部分では、熊森的には、振動と騒音で、冬籠り中のクマたちが跳び出してしまうと言えます。リニアによって、山を捨てて、人里に出ていく動物たちが増えるかもしれません。そうなれば、国は何の躊躇もなく、ただ彼らを殺すだけでしょう。

 

とにかく近くで見ると、リニアトンネルは大きいのです。

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これだけのセメントの材料を、どこから持ってくるのか不思議です。セメント原料を採掘した場所でも、国土大破壊となっているはずです。この場所を見る限り、野生生物や弱者への配慮は全くなされていません。トンネルの下に付け替えられた新しい川(というより水路)に落ちた動物や子供は、垂直3面張りのため、2度と地上に上がれません。もちろん川の中の生態系は、完全に失われていました。

 

近くの山の中を覗いてみました。

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ここは以前、川だったのだろうと思われますが、完全に水が干上がっていました。山梨県の野生動物たちは、リニアの工事で失った水飲み場を新たに探さねばならず、みんな大混乱に陥っていると思われます。

 

山梨のこれまで美しく静かだった環境が、大破壊されようとしています。今からでも遅くない。大手メディアは、現地を取材し、全国に真実を報道して欲しい。国民は、報道がないから、現地を見たことがないので想像力が働かず、黙っているのです。真実を知れば、この事業で金儲けができそうだとして正常な判断力を失ってしまっている人たちでない限り、ほとんどの国民は、リニアなんていらないと反対し始めるでしょう。

 

ああ、それがわかっているから、リニア推進報道しか、世に出さないのですね。

 

 

本部 1月20日 雪の中の痕跡調査

冬の間、クマは冬籠りをしており、活動していません。しかし、最近、冬籠り前の食い込みがしっかりできていなかったのか、雪の中を歩いているクマがいたそうです。顧問の先生に、雪山の調査は危険だからしないようにと言われたのですが、若さを頼りに2人で出かけて行きました。

 

足にはいているのは、スノーシューです。

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地面は白一色でした。冬は、落葉広葉樹が葉を落としているので、山の様子がとてもよくわかります。

 

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動物の足跡やフン尿の跡などの痕跡が見れましたが、クマ棚や爪痕などはなかなか見つかりません。

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1m以上の積雪がありました。沢沿いでは、積雪の下が川ということもあると聞いていたので、慎重に慎重に歩を進めました。斜面を登るのにも、普段以上に時間がかかります。

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ハイイヌガヤ

途中でカヤを見つけたので、もしやと思い握ってみました。するとまったく痛くありません!握って痛くないのはハイイヌガヤ。葉がやわらかくてシカの大好物です。兵庫県ではほとんど見かけなくなったと思っていたら、こんなところにありました!

そっくりでも、握ると葉が固くて手がチクチクするのは、チャボガヤです。こちらはシカも食べないようで、兵庫県では、下層植生としてチャボガヤが群落になっている所があります。

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目的地は標高800mくらいでしたが、その辺りまで行くとブナ・ミズナラ帯になります。GPSで記録しながら進みました。なだらかな森が広がっておりとても美しかったです。

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クマ棚

 

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クマの爪痕

やっとブナの木に、クマの痕跡を発見しました!新しい爪跡です。このあたりにクマが来たことがわかりました。

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林道は積雪が少ないのか、不思議とスノーシューなしでも歩けました。動物も、林道の方が歩きやすいのでしょう。林道の動物の足跡は、林内よりも多いと感じました。雪の林道を歩くだけで、いろいろな足跡に出会え、とても勉強になります。

足跡の明瞭さで、その足跡がどれくらい前につけられたものなのかわかります。

このシカの足跡は、つい今しがたついたくらい新しいなと思って、顔をあげると、案の定、目の前に立派なオスジカが1頭いて、逃げて行きました。この日出会った唯一の動物です。

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尾根付近の景色は本当に素晴らしく、1m以上の雪が積もっている上を歩くと不思議な感覚があります。

 

厳しい場所が多かったのですが、何とかクリアーして進みました。しかし、帰るルートが見つからなくなり、適当に歩いていくとかなりの急斜面を降りなければならなくなり、そこを回避するために沢を渡ったり、人工林内を進んだりと、だいぶんじたばたしてしまいました。やっと林道に出れたときは、生きて山を出ることができたことを2人で喜び合いました。

 

雪山は、歩く前にコースをきちんと設定しておかないと、死の危険があると痛感しました。また、スノーシューがないと絶対に無理です。スノーシューをはいていても、足が埋まってしまって抜けなくなることもありました。途中で、もし、このスノーシューをなくしたら、足が埋まってしまってもう二度と歩けないと思うと、こわくなりました。

 

この日は一日中天候も良く、とても気持ち良く調査をすることができました。雪山の静寂さなど、貴重な体験ができました。しかし、これだけの大変な思いをして雪山に登っても、動物のくらしはほとんどわかりませんでした。みんな、どこで何をしているのだろう。

 

 

 

 

どうすれば、人里の柿の木にクマが来ないようになるのか

今年の秋のクマの目撃数は、ありえないまでの山の実り大凶作年だった2004年、2006年、2010年と比べると桁違いにぐんと少ないものの、目撃報告はそれなりにあります。そのほとんどが、人里の柿の実を狙ってやってきたものです。

 

最近、人に聞いたのですが、クマが来ないように柿の木を伐ってしまようにと行政の方から指導されたある地元の方が、「柿の木は伐りたくない。クマの方を殺してくれ」と言ったのだそうです。昔、山にたくさん山柿の巨木があったと聞いています。この方は、それらを全部伐って、人間がスギやヒノキに植え替えたことをご存じないのではないかと思いました。知れば、そんなことは言えなくなると思います。

 

野生鳥獣に、人間が壊したかれらの餌場やねぐらを返してやることが、一番の解決策でしょう。しかし、残念ながら、今のところ、平成の日本で、このような活動に取り組んでいるところは、皆無に近いです。

 

野生鳥獣の棲める森を壊すのは一瞬ですが、復元するのは気が遠くなるほどの年月がかかります。それまでの間、クマが人里に来ないように防除対策をとるのが、2番目に必要なことでしょう。

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どうしたら、クマを防除できるのでしょうか。熊森協会は何度も地元に出向き、地元の人たちと共に考えています。

①電気柵、②金網柵、③柿の幹にクマが登れないよう、トタンをまく。④柿の木の枝を剪定して、実を除去し、クマがいてもいい奥地に、獲った柿の実を運ぶ。⑤クマを見かけたら犬などを使って、徹底的に追い払う。⑥犬のふんやニコチンのにおいなど、クマが嫌がるものを柿の木の周りに置く。・・・ケースバイケースですが、いろいろと実験していきたいと思います。

 

都会の人たちの中には、地元の人たちに任せておけばいいという人たちもいますが、実際、地元は、過疎化高齢化が進み、取り組みが困難になっています。地元の過疎化高齢化の上に、都市の繁栄があることを思うと、都市市民が知らんふりしていてはならないと、私たちは考えます。同じ国民同士、助け合うべきだろうと思うのです。行政に任せたらいいという人もいますが、一番簡単な解決法、「クマを殺害する」になってしまうのであれば、困ります。

10月27日 京都府支部 桑谷山佐保の森の実り調査→良好

京都市花脊(はなせ)にある桑谷山佐保の森は、50ヘクタール。2007年に奥山保全トラストが購入しました。10月27日、京都府支部の皆さん7名が、秋の実り調査を行ってくださいました。以下その報告です。

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今回は、久多峠から入りました。樹上のドングリはもうありませんでしたが、林床にはミズナラのドングリやシバクリがたくさん落ちていました。今年の実りは良好でした。今年は、動物たちも喜んでいることだろうと思うと嬉しくなりました。アスナロの巨木たちも健在でした。(上写真右)

クリはイガだけになっており、傍らには、栗の中身がきれいに食べられ、皮だけになった実が落ちていました。クマ棚や熊の爪痕など、クマの痕跡を探しましたが、登山道を歩いた限りでは見つかりませんでした。

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ミズナラの枯死木が多くありましたが、いずれも何年か前のものばかりで、今年、新しく枯れた木は見当たりませんでした。これまでミズナラの枯死木を多くみてきて、森がなくなってしまうのではないかと胸が痛んでいましたが、今回、2~3年生のミズナラやクリの実生苗が、枯死した木の根元でたくましく成長しているのがたくさん見つかり、希望が芽生えているようで嬉しくなりました。特に、栗の苗木は無数に生えており、なぜここの苗木はシカに食べられないのか、不思議に感じました。

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イヌブナの実生稚樹

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ミズナラの実生稚樹

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シバグリの実生稚樹

9月23日 本部クマ部会が山の実り豊凶調査・・・ 並作です

熊森では、今年も春の花の時期からずっと現地を回り、ドングリ類の豊凶を予測し続けてきました。今年は、3年連続になりますが、ハイイロチョッキリの出現もほとんどなく、ドングリは木についたまま、無事、秋を迎えることができました。熊森を指導してくださっている研究者のおひとりによると、虫の発生が抑えられているのは、冬の気温が低かったからということです。

 

9月23日(月)に本部クマ部会で参加者を募り、計10人で兵庫県北西部のクマ生息地の山の実りの豊凶調査(最終)に出かけました。調査方法は、兵庫県森林動物研究センターに教えていただいた調査法を参考にさせていただきました。

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まずは調査地1カ所に対して10本ほど調査木を決めます。道のそばの林縁部で、できるだけ樹木全体が見えやすく、日当たりも良好で健康そうな樹木を選びます。そして、その樹木を双眼鏡で見て、ランク分けをしました。

×凶作→0点:前方投影面積で樹幹1㎡当たりの平均結実数1個未満

△不作→1点:前方投影面積で樹幹1㎡当たりの平均結実数1-4個

○並作→2点:前方投影面積で樹幹1㎡当たりの平均結実数5-9個

◎豊作→3点:前方投影面積で樹幹1㎡当たりの平均結実数10個以上

以上のようにランク分けを点数化して10本の平均を出すという方法です。実際は、兵庫県ではこの数字を計算式に当てはめて最終的には6段階の評価にしていますが、私たちはこの4段階評価でも十分豊凶を知ることはできると考えました。

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ということで、実際にやってみるといろいろな問題点が出てきました。

・双眼鏡の良し悪しで豊凶が違って見える

・実を探すのが人によって得手不得手がある

・逆光や日陰の具合によって見えにくいときがある

・見えやすい木と見えにくい木で豊凶結果に影響されてしまう

・特にミズナラは下からだと実が見えにくい

・豊作の樹木を見たあとに少し実なりの悪い木をみると、たとえその樹木が豊作であっても並作などと評価を低くしてしまう

・クマの生息地とそうでない場所を同じ基準で考えて良いのか

 

今回は初めて豊凶調査をする人がほとんどでしたので、ブナ、ミズナラ、コナラの特徴をお教えしました。特にミズナラとコナラの違いはしっかりと覚えていただきました。

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そして、もうすでにブナの実が落ちていたので、みなさんに味見していただきました。みなさん、アクもなく、香ばしくておいしいと言われていました。昔の人たちが食料にしていたのもうなずけます。

結果的にはブナは1.9点、ミズナラは1.8点で、共に並み程度ということですが、今回の調査で様々な改良点を考えると全体的に厳しく見ていたかなと思うので、並以上かなと思います。ただこれはこの地点においてはという話ですので兵庫県全体を見ていくと、また違う結果の地域があるかもしれません。(当協会は、クマの生息地のみ、調査しています)

今回、ボランティアの皆さんに集まっていただいて豊凶調査をしたのは、初めてです。今後、調査方法を改良しながら、多くの会員のみなさんに参加していただき、結果をクマ保全に生かしていきたいと思います。

 

 

本部・石川県支部 白山トラスト地及び周辺の調査に入る 6月29日

6月29日、本部8人と石川県支部8人は、研究者と共に白山トラスト地22ヘクタール及びその周辺の山の調査に入りました。

当日は天気も良く、前回の岐阜県の奥飛騨トラスト地に続いて下層植生が生い茂り、多様性豊かな森を見ることができました。

s-ギャップ

トラスト地は、極相林に近い森です。100年たってもこの景観が保たれます。それぞれの遺伝的な木の高さをもった木が生えており、高木層、亜高木層、低木層、草本層という形できれいに光配分ができているので、一面が緑色でした。

s-ハイイヌガヤ

この山にはまだシカが入っていないこともあり、兵庫県ではもうほとんど見ることができないシカの大好物ハイイヌガヤの群生があちこちに残っていました。 s-虫の食痕

奥飛騨ではほとんど確認できなかった虫たちの食痕が、ここ白山では驚くほど多くの葉に見られました。

しかし、この時期は蝶々がたくさん飛んでいる時期であるにもかかわらず、ほとんど飛んでいませんでした。やはり、昆虫が豊かに生息しておれる状況ではなくなっているのかもしれません。

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クマが大好きな桑の実がたくさん実っていました。夏の木の実はクワぐらいしかなく、クマにとっては貴重です。

s-今年のクマハギ

今回、石川県支部スタッフの皆さんが、大雨の中で事前に調査をしてくださっており、みんなで今年のクマハギを見ることができました。白い部分がクマの歯跡です。

s-チシマザサ(グレード8)

ここにはササも多く生えていましたが、奥飛騨トラスト地でも一斉開花が始まってきているので、10年後にこのササが残っているかどうかは、研究者の先生にも分からないということです。

s-HPの画像

白山連峰にはまだクマが住めそうな場所がたくさん残っていると感じ、安心しましたが、地球温暖化や、酸性雨、農薬関連の化学物質などによって、地球環境が激変していっている今、10年後にこの森がどうなっているのかという気がかりも残りました。

 

また、白山では、場所によっては、2005年あたりから、ミズナラなどの広葉樹の巨木の枯れがすさまじく、森が消えてしまうんだろうかと心配していましたが、今回調べてみると、更新稚樹があちこちで育ってきていました。自然界はすごいです。

 

フィード

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