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2012-11-22

滋賀県のクマたちは生きていけなくなっているのではないか

11月17日、滋賀県一のクマ生息地だった、旧朽木村(現高島市)の奥山を、滋賀県支部と本部で調査しました。

人工林部分にも、紅葉の美しい広葉樹林部分にも、クマたちはもはや棲めません。林の中をのぞいてもらえば、そのわけは一目瞭然でしょう。

 

滋賀県は兵庫県と同じく、野生動物防除策が徹底してなされていました。電気柵、ネット、金網・・・至る所、農作物を野生動物から守るため、人間側も努力しています。大変なお金を使われています。

 

 

 

 

滋賀県のクマは、スギのかわはぎをします。そのため、皮をはがされないように、徹底したテープ巻きがなされています。クマが皮をはぐとも思えないような細い木にまで、徹底してテープが巻かれていました。やり過ぎだと思う所もありましたが、国内林業が振るわない今、森林組合は補助金で暮らすしかない為、補助金目当てに巻き過ぎも見られるということでした。

 

林業の生活保護化という見方もできます。

 

 

 

いよいよ、クマの生息地に入ります。典型的なⅤ字谷です。山を外から見た時は、紅葉のきれいな広葉樹林でしたが、ここもまた、シカによって下草が消え、町の公園状態になっており、向こうまで見渡せました。こうなってしまっては、ここにはもう、クマは棲めないでしょう。

 

このあたりの山は、少し前までは、1.5メートルを超えるササで林床が覆い尽くされ、藪漕ぎをしないと前には進めない場所だったそうです。以前は、クマたちの春の食料である山菜がいっぱいの山で、山菜は地元の収入源にもなっていたそうです。今は、地元の人さえ、山菜にありつけなくなりました。

高圧電線の下には、シカが行かないので、地元の方々は、そこにだけ残されたワラビを自家用に取りに行くそうです。

 

 

 

 

 ナラ枯れで枯れたミズナラには、なぜか、キノコがびっしり生えます。ナメコ、クリタケなど、キノコの山になっていましたが、手放しでは喜べません。

 

 

 

 

 

 

 

 かつてクマたちが冬ごもりに使っていたであろう、樹洞のあるトチの木が何本かありました。入り口が高すぎるように思えますが、ここの積雪は4メートルだそうですから、ちょうど良いようです。残念ながら、今は、使われていません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 造林公社によるスギ造林地(なのに水源涵養保安林に指定されている!)です。林床の緑色植物は、ユズリハやシダで、いずれも、シカが食べません。比較的新しいスギの皮はぎが何本か見つかりましたが、今年のものはゼロでした。クマはもうこの山にいないのではないでしょうか。

 

 

 

 

 地元の方との楽しい語らい。

クマやイノシシは昔から山にいたそうです。この方は、焼いた炭を背負って山から降りてくるときなどに、百回までは行かないがそれくらい多く、クマに5メートルぐらいの距離で出会ったことがあるそうです。クマのことを、この方は、「あちらさん」と呼ばれます。

ここでは、クマに出会ったらどうするのか、代々子供の時から家で教わっていたので、事故など起きなかったそうです。

クマに対する3つの教え:①びっくりさせない。②子連れを構うな。③走らない。

 

山でクマに出会った時の話を教えてもらいました。「こっちもびっくりするが、あちらさんもびっくりしている。でも、あちらさんは、森の王者としての威厳を保とうという感じで、じっとしている。こちらもじっとしている。しばらくすると、あちらさんは、おもむろに、今来た道をゆっくり帰っていく。人間が見えなくなったころ、いつもあちらさんは、ダッシュして一目散に走って逃げる。それで、偉そうに見せていたが、本当はあちらさんもこわかったんだなあといつも思った」

 

シカとサルが、10年ぐらい前から、村に現れ出したそうです。これまで、こんな動物は知らなかったと言われます。シカやサルは群れでやってきて、その辺にある食べ物を根こそぎ食べていきます。クマは強そうですが、実はシカ・サルに食料を奪われ、生きられなくなっているのではないかということです。

 

滋賀県のクマたちも、絶滅が近いのではないでしょうか。しかし、うれしいことに、滋賀県行政のみなさんが、なんとかクマを守ろうと一生懸命取り組んでおられます。今年のクマ捕殺数も、1頭だけです。熊森は、自然保護団体として、滋賀県のクマ対応を高く評価します。

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