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2013-03-14

東京都水道局が、奥多摩町などのスギヒノキの人工林(民有)を購入し、環境林に整備予定

水がめ守れ 多摩川水源林 都が購入計画

2013年3月13日 東京新聞夕刊

東京都が買い取りを進めている水源林。手前は奥多摩湖=13日、東京都奥多摩町で、本社ヘリ「まなづる」から(伊藤遼撮影)

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 東京都民の水がめをうるおす山林を守れ-。都は、荒廃が進んでいる多摩川上流の水源林を保護するため、民有林の購入に乗り出した。都内から山梨県 にかけての、JR山手線内側の約二・五倍に相当する約一万六千ヘクタールの取得を目指す。都水道局は、水源保全のための民有林購入は神奈川県に例があるも のの「全国的にも珍しい」と話している。 (松村裕子)

 都が購入したのは都民の水がめ、小河内ダム(奥多摩町)の上流にある、奥多摩町と山梨県小菅村の民有林二件。スギやヒノキの人工林36ヘクタールで、費用は四千四百万円だった。

 多摩川は都内の水道水の二割を賄う。それを生み出す、都内から山梨県にかけての水源林のうち、上流の約二万千六百ヘクタールは都有林。明治時代に皇室から都が譲り受けるなどして所有、管理してきた。

 一方、ダムに近い山林は民有地が多い。林業が盛んだった時代は間伐や枝打ちなどの手入れが行き届いていたが、国産木材の価格低迷に伴い、荒廃している。森の中に日が差さず、低木や下草が育たない。地盤が弱くなり、土壌の保水量が乏しくなっている。

 この影響で二〇〇七年、台風でダムに多量の土砂が流入した。都は危機感を抱き、民有林を適正管理する手法を検討。購入可能な民有林を公募することにし、一〇年度から現地確認や境界線画定などを進めていた。

 今月七日に計約三十六ヘクタールを買い取ったのを手始めに、すでに山梨県甲州市、丹波山村などの八カ所、約千二百ヘクタールの応募があり、順次購入する。購入後は都が手入れし、ダムの水質保全や水量確保につなげる。

 神奈川県では一九九七~二〇一一年度に、相模川などの上流の民有林約六百ヘクタールを購入した例がある。賃借地なども含めて手入れを進めたところ、〇九年度には県内全体で手入れの行き届いた森が七割を超えた。

 

( 熊森から)都が購入した人工林は、青梅市の林業部門が間伐し、今後、林業は行わず、針広混交林にもどしていくということでした。行政が動き出してくれた!すばらしいニュースです。無花粉スギなど植えず、是非、クマをはじめとする動物の棲める広葉樹の森に戻していただき、動物たちに山を返してやってほしいと、熊森から東京都上水部管理課企画係に、本日、電話で申し入れておきました。

3月5日 兵庫県野生動物保護管理運営協議会に出席して

【森林被害】清浄な空気や水を生み、兵庫県民の生活を支えてきてくれてた広大な兵庫の森。その中で、今、下草や、昆虫、魚、鳥、シカ以外のけものなど、生きものたちの姿が忽然と消え、「沈黙の森」が、一気に広がっています。木々の弱りも目立ちます。

このままいくと天然更新ができなくなり森が消えるかもしれないという大変な事態が進行しているのに、この日も報道関係者の取材はゼロ、傍聴者は2名のみでした。

 

報道関係者を含め、一般国民に、現在、最重要国家問題であるこの深刻な事態が全く伝わっていないと強く感じました。

 

【農業被害】もちろん、農業関係者は何年か前から、山から出て来た野生鳥獣に田畑を荒らされて、悲鳴を上げ続けています。しかし、大部分の県民は都市に住んでおり、このような実態をほとんど知っておりません。

○第一次産業のこと、○森のこと、○野生動物のこと、県民のみなさんにもっともっと関心を持っていただけるように、私たち市民団体も、広報にがんばらねばならないと思いました。

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神戸市教育会館501号室で開かれた協議会のもよう

 

<野生鳥獣被害対策>

毎回、協議会のたびに思うことですが、そもそも、ワイルドライフを人間がマネジメントする(=野生鳥獣対策に保護管理を導入する)と決めた1999年当時の環境庁の発想(=「鳥獣保護法改正案」)自体に無理があります。当時、熊森は国会で、「保護管理というけれど、こんなものを導入したら、保護の話にはならず、何頭殺そうかという駆除の話ばかりになるに決まっている」と、反論したことを覚えています。実際、全国で、クマ・サル・シカ・イノシシや彼らの生息環境を保護するために人々が協議しているという話は、全く聞きません。被害防除と駆除話ばかりです。

 

特定鳥獣に指定されたクマ・サル・シカ・イノシシは、大・中・小・極微、いろいろな他生物と、生態系の中で複雑に絡み合って生活しています。生態系の他の生き物たちを無視してこの4種の動物の生息数だけを、人間が操ってやろうとしても、そもそも、初めから不可能な話なのです。

そんな中で、この4種の動物に対する、兵庫県の平成25年度事業実施計画が発表され、協議されました。

 

兵庫大学の研究者の研究結果では、兵庫県のクマの自然増加率は昨年度20%で、この1年で100頭も増え、約600頭になったのだそうです。

クマの生息数 を推定するために用いたデータは、1、目撃数、2、捕獲数、3、再捕獲数、4、初捕獲数、5、新規標識放獣個体数、6、人為的死亡個体数、7、標識有の人 為的死亡個体数、8、ブナ科堅果類の豊凶指数だそうです。

<クマの推定生息数と保護管理方針>

400頭未満      狩猟禁止   可能な限り、殺処分しない

400頭~800頭   狩猟禁止 有害捕獲個体は、原則殺処分 ・・・ 兵庫県は、現在、この範囲だそうです。

800頭以上       狩猟再開 有害捕獲個体は、原則殺処分

 

<熊森の見解>

配布された資料が膨大であり、担当者の御苦労は大変なものだったと思います。ただ、配布資料が、推定生息数など、人間にわかりっこないものをあえて数字に表しており、あいまいな数字が独り歩きして、人々に誤った印象を与えてしまうのではないかと、心配します。

 

野生鳥獣など何頭いようが、彼らの勝手で、絶えず変化していくものであり、それが自然です。昔のように、人間が一歩下がり、野生鳥獣と人間との棲み分けが復元できたら、それでいいだけのことではないでしょうか。

 

今は、クマ対応方針が、推定生息数という数字だけで決められていますが、数字だけではなく、どこに住んでいるかという場所や何を食べて生きているのかなども、対応方針を決めるにあたって重要となるはずです。800頭いたとしても、山奥にいるのなら問題ないのでほっておけばいいし、200頭しかいなかったとしても、民家の裏に集結していたら、人身事故や農作物被害が絶えず起こり、クマも絶えず駆除されることになるので大問題となります。

 

 

 

 

 

 

 

3月10日 JBN主催シンポジウム ~紀伊半島・絶滅危惧個体群のツキノワグマの行く末を考える~(於:奈良教育大学)に参加して

前日のポカポカ陽気を思い、薄着で出かけたところ、この日は一転、冬に逆戻りかと思うほど寒くて震え上がる一日でした。

 

わたしたちは、紀伊半島のクマを守るため命を懸けられた、当協会顧問故東山省三先生のことを、忘れたことがありません。

熊森こそ、このようなシンポジウムを紀伊半島で持たねばならないのに、まだ力不足で、持てていません。JBNがこのようなシンポジウムを持ってくださったことに感謝します。

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紀伊半島のツキノワグマは完全な孤立個体群で、その推定生息数は残り約200頭とされ、種の保全には危機的な数です。胸が痛みます。

ツキノワグマたちをここまで追い込んだのは、紀伊半島の人工林です。(黄土色の部分が、人間によるスギ・ヒノキの人工林)

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研究者の中には、純血を守ることよりも、種の存続に重きを置いて、今後、コリドー(=動物たちが移動できる回廊)を造って、京都や滋賀などの近隣府県のクマたちとの交流を可能にしようと提案される方もおられ、とても現実的な提案に、うれしくなりました。その研究者は、紀伊半島のクマを、四国に放すことも考えておられました。紀伊半島と四国のクマは、遺伝的には同種で似通っているということですから、残り十数頭と予測される四国のクマが消える前に、早く取り組むべきだと思いました。

 

現在、多くの研究者たちは、なぜか、遺伝子の攪乱を何よりも恐れておられ、地域個体群間の交雑を絶対に認めようとしません。しかし、以前、京都府で有害捕殺されたクマが、石川県のタグをつけていたことを思うと、もっと人間が少なかった頃、動物たちは今より自由に移動していたと思われます。長いコリドーを造ることは大変で、すぐには無理でしょうが、近隣府県で有害捕獲され、殺処分されるクマがいたら、紀伊半島のクマ生息地に運んで放してやれば、コリドー効果と同じ効果があります。

 

しかし、問題は、紀伊半島には、もはやクマたちが生き残れる自然環境がほとんど残されていないことです。生息環境を復元してやらねば、いくら他地域からクマを入れても、餓死するだけです。研究者によると、紀伊半島で餓死グマを3頭も発見したそうです。解剖すると、胃の中は空っぽだったそうです。こんなことは他地域ではありえないと言われていました。

 

和歌山県でこの前、人里に出て来て有害捕殺されたクマの場合、痩せてガリガリで餓死寸前だったのに、全くエサのない奥山に3回放獣して、また出て来たので3回目だからと殺処分したということでした。このような場合、保護して、春まで飼育し、元気にしてから放してやればいいのではという提案に対して、好意的な研究者もあれば、予算がないなどとと反論する研究者もありました。当協会は無料でやらせてもらいます。

 

自然林がほとんど残されていないという厳しい環境の紀伊半島で、下の照葉樹林と山の上の落葉広葉樹林をうまく使って生き延びているけなげな三重県のクマたちの撮影に成功された地元林業家の映像が上映されました。すばらしい映像でした。

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ただし、紀伊半島のクマは、スギのかわはぎを行うので、林業家から、害獣としての駆除要望がとても強いのです。

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この方のブログは、すばらしいので、ぜひ紀伊半島のクマに思いを寄せる方は、ご覧になってください。

 

(熊森から)

以前、紀伊半島の林業家のみなさんが多くおられる会で講演させていただいたとき、紀伊半島では、クマの捕殺が毎年ゼロですと話すと、みなさんが、「そんなはずはないだろう。うちもだけど、みんな獲ってるよ。クマは林業の敵だ」と教えてくれました。ただし、誰も行政には届けないと言われていました。行政のみなさんは、きちんと見回りをして、違法捕獲を厳しく取り締まっていただきたいです。

 

シンポジウムに出られた行政の方が、当県の林業を守るために、クマの被害を何とかしないとという話を強調されたため、奈良県の山の中を歩き回ったり、動物の棲める森を復元したりされている熊森会員が、会場から発言を求め、「林業が成り立っている所は守ってもらいたいが、当県では多くの人工林が放置されて、荒れ放題。林業なんかやっていない場所がほとんど。そういう所は、動物たちが棲めるように広葉樹林に戻してほしい」と、人々の胸に響くように、しっかりと落ち着いて訴えられました。すばらしかったです。

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