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2017-09-26
第6回ストップ・リニア訴訟 南アルプスを愛する登山家が、物言えぬすべての命に代わって訴え
9月8日、熊森としてストップ・リニア!訴訟の第6回口頭弁論を傍聴するため、東京地裁に行ってきました。
傍聴の抽選には173名が並びました。
今回は、服部隆さん、林克さん、西ヶ谷弁護士から、静岡県のリニアトンネル工事についての陳述がありました。
服部さんは、登山歴46年のベテラン登山家です。
以下、服部氏の訴え
「登山歴46年、私たち岳人は、リニア・トンネル工事による南アルプスの自然破壊に対し深く憂慮しています。
本日、私は登山者の代表として、また物言えぬすべての命に代わって、裁判官各位に訴えます。
<トンネル掘削によ地下水脈分断について>
静岡県の北端でリニア路線が横切る地域を「南アルプス南部」と呼びます。
頂点は3000メートル峰で、そこから駿河湾に流下している130キロメートルの大井川。
その最上部地下をリニアが貫通します。
静岡県におけるリニア問題は、ここ大井川最上流部に集中しています。
この拡大図を見ると、まるで毛細血管のように無数の枝沢=谷が本流に注ぎます。
この無数の支流が減水、ないし枯れる恐れがあるのです。
資料によれば「二軒小屋」付近が毎秒2トン強の減水予測で、ここは登山基地です。南アルプスの真っ只中です。
毎秒2トンは冬の渇水時は本流が干上がることになり看過できません。
保全策として、JR東海は「導水路トンネル」を計画。
トンネル内にあふれ出した水を集めて11.4キロメートルほど下流の椹島(さわらじま)で本流に放水、「水を戻す」という案です。
しかしこれでは根本解決になりません。水が戻るのは椹島より下流のみ、上流部には一滴の水も戻らないのです。
すなわち「人間の都合」しか考えていない保全策です。
「隣に似たような谷があるから大丈夫」?!
環境アセス書でJR東海は「周辺に同質の環境が広く分布するから影響は小さい」と記述していますが、そんな単純な話ではありません。
その谷に棲む水生生物、魚、植物はどうやって移動するのでしょう。
また簡単に「重要種の移植」を持ち出すのも、水を戻さず見捨てるという宣言であり、この言い訳は免罪符にすぎません。
そもそも重要種とそうでない命をどうやって決めるのか?
厳しい自然条件の中で南アルプスに生きる命への敬意のみじんもなく、心の震えが止まりません。
生き物の生息場所には皆理由があり、安易に「移植」などすべきではありません。
この7月に奥西河内(おくにしごうち)の水源調査に行って、2.350メートル地点の谷筋でツキノワグマの糞を発見しました。
山は彼らのものです。
彼らが生きる場所です。
この谷は彼らが命をつなぐ場所なのです。
この谷水を減らしては、枯らしては決してなりません。
「上流部の谷に水を戻せないなら、工事は中止してください」これが、南アルプスに生きる生き物と私たち登山者の思いです。
ずさん極まりない、甘すぎるアセスメントを追認した国土交通省の、リニア工事計画認可の取り消しを求めます。
(熊森から)
大井川下流
リニア工事によって大井川の水が毎秒2トン減少することはJR東海も認めており、その保全策として、導水路を引いて水を戻すとしています。
しかし、この保全策にはそこに生息する動植物への配慮が全くありません。
トンネルを掘るのは大井川最上流部にもかかわらず、JR東海が保全によって水を戻す場所は11.4km下流であり、大井川中下流域住民のための利水対策にすぎません。
大井川上流におけるリニアトンネル工事は、上流に生息する「谷の水を生きる糧としている多くの動植物の減少そして死滅を意味」します。
山を知り尽くした登山家が物言えぬ生き物に代わって訴えてくれたことが、熊森としてとてもうれしかったです。
リニア事業によって、南アルプスに生きる動植物の生息地は確実に奪われ、移動できるものは益々人里に出てくるようになるでしょう。
そして、有害獣のレッテルを張られて殺処分されていくのです。
リニア事業を止めるためには、世論を動かすことが不可欠です。
一体誰のためのリニアなのか。
自然を、そして、私たち人間や動植物の大切な水源の森を壊してまで必要な物なのか。
一旦破壊してしまえば、後でいくら後悔しても、豊かな自然も地下水脈も、もう2度と取り戻せないのです。
全国民が、JR東海やJR東海から宣伝費をもらっているマスコミによるリニア宣伝に騙されず、自分の頭でよーく考えて見るべきだと思います。
口頭弁論後の集会
現在、リニア市民ネットは
リニア中央新幹線訴訟の公正な審理を求める署名が始めました。
まだの方はよろしくお願いします。(署名用紙)
次回以降の口頭弁論は、
2017年11月24日 第7回(愛知県におけるリニア被害について)
2018年1月19日 第8回(東京・神奈川におけるリニア被害について)
2018年3月23日 第9回(内容未定)
です。
ストップ・リニア!訴訟の口頭弁論をまだ傍聴されたことのない方は、ぜひご予定ください。