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2018-04
東京新聞が、秋田県がクマの推定生息数を2300頭と訂正発表した件に対する熊森コメントを掲載
記者がクマの生息推定数に関して環境省担当者に問い合わせたところ、「クマの保護・管理は、都道府県が行っている」と取り合わなかったという記述は、国際自然保護連合レッドリスト危急種に対するこの国の姿勢を良く表しています。(日本は生物多様性条約を批准しているのですから、本当は、環境省が逃げないで責任を持つべきなのです)
熊森関連記述
深い山にいるクマの生息数を調べるのは難しい。日本熊森協会(本部・兵庫県)の森山まり子会長は「アフリカの草原にいる動物を上から数えるのと違い、クマは単独生活で、何キロも先から人間を察知して逃げるので正確に調べようがない。生息数の数字が独り歩きし、捕獲数が増えていくのが怖い」と危ぶむ。
以下、3月24日東京新聞<こちら特報部>です。
兵庫県井戸知事の「連携してクマを管理(=捕殺)」の呼びかけに、岡山県伊原木知事が合意
以下、山陽新聞より
岡山県の伊原木隆太知事と兵庫県の井戸敏三知事が政策課題について話し合う会議が3月27日、岡山市内のホテルで開かれた。
両県をまたぐ中国山地でツキノワグマの推定生息数が増加していることを受け、連携して管理計画(熊森注=捕殺計画のこと)の策定を目指すことで合意した。
鳥取を含めた3県で協力し、生息数の調査や駆除の方向性を盛り込んだ計画を想定している。
井戸知事が「狩猟許可を出して捕獲しているが、効果が上がっていない。共同で広域的な計画を作りたい」と持ち掛け、伊原木知事は「クマは県境を越えて行き来している。人命を守るためにも協力したい」と応じた。
両知事はまた、シカやカワウなど有害鳥獣対策(=捕殺対策)でも連携する。
同会議は2002年度から開いており、7回目。
熊森から
ちなみに、鳥取県は、今後もクマ狩猟を再開しないと発表しています。理由は、山にいるクマまで獲る必要はないと思うからだそうです。
その通りです。熊森は鳥取県に拍手です。
宮城県の雪山で、今年初のクマによる人身事故が発生。熊森本部が地元行政へ電話で聞き取り
2018年3月31日、今年度全国初となるクマによる人身事故が、まだ雪が残る宮城県の山奥で発生しました。
以下、河北新報 ONLINE NEWS (2018年4月1日付)より
クマに襲われ男性が大けが 加美・荒沢湿原
31日午前11時ごろ、宮城県加美町鹿原の荒沢湿原で、仙台市太白区の団体職員男性(68)がクマ1頭に襲われ、頭に大けがをした。
加美署によると、男性は10センチほどの裂傷が2カ所あるが、命に別条はないという。現場は荒沢自然館の西約4キロの山中で、男性は景色などを撮影するため1人で歩いていたという。
荒沢湿原は県内有数のミズバショウの群生地。以下略。
熊森本部は、すぐに加美町役場の担当者へ電話して、くわしい状況を聞き取りました。
【加美町担当者の話】
事故があった場所は今も雪に覆われている。冬眠しているクマを刺激する恐れがあるため、町としては現場調査は行わない。
ケガをされた男性は、自然の写真を趣味で撮られている方で、撮影時、動物に気づかれないように、クマ鈴など音の出るものを携帯していなかった。
人の気配を近くで感じてびっくりしたクマが、冬ごもり穴から出てきたのかもしれない。
事故後、男性は電話で荒沢自然館へ救助を要請し、荒沢自然館の方が、当日現場方面の山の中にスノーモービルで入っていた方に、男性の捜索と救助を要請して、無事男性を救出した。
現場はクマの生息地なので、町としては今回、有害駆除はしない。現場につながる道路を閉鎖するとともに、山に入る時は音の鳴るものを携帯して十分注意して頂くよう、看板設置をして回っているところ。
熊森から
お怪我をされた方に、お見舞い申し上げます。
クマは、人間に対して恐怖心を抱きながら生きています。ふつうは人間を察知すると、クマの方がさっと逃げますが、うっかりして臨界距離(12メートル)内で人間に出会ってしまうと、クマは逃げられないと思い、恐怖でいっぱいになります。クマの中には、習性として人間をはたいてそのすきに逃げようとする者がいます。クマの棲む山に入る時は、熊鈴などを携帯して早めに人間の存在をクマに知らせるなど、人間側の努力が必要です。
今回、加美町は、クマと人間、両者の視点から中立的に見て、クマを有害駆除しないと決められたそうで、ほっとしました。
お怪我の程度が心配されます。メディアの報道が「大けが」となっていたり、「引っ掻かれた」となっていたり、まちまちです。
2017年度、兵庫県ではクマによる人身事故が2件発生し、県はどちらも重傷と発表しています。しかし、本人にお会いすると、軽傷と言われました。うち1名の方は、医師の判定も軽傷だったと教えてくださいました。
一方的にクマを狂暴な動物に仕立て上げるのではなく、怪我の程度は本人に会って確認して、正確に伝えていただきたいものです。
3月15日 日本で初めて巨大ダム工事の建設を止めた藤田恵氏をお招きしました
元徳島県那賀郡木頭村村長で、国や県を相手に建設省の直轄ダムとして計画されていた細川内(ほそごうち)ダムの建設を止めた藤田恵氏を本部にお招きしました。
藤田氏は物静かな方で、3時間半とつとつとお話を聞かせてくださいました。
木頭村は山深い山村です。
幼少のころから山に入ってきつい山仕事に従事してこられた1939年生まれの藤田氏の話は、熊森にとってどれもこれも貴重な証言でした。
藤田氏は、山仕事をされていたのに、クマサルシカイノシシなどの大型野生動物に出会ったことは1回もないということです。当時、ずっと山奥に、人間が行くことも入ることもできない深い森があり、そこにはクマやイノシシなどの動物たちがいると聞いたことがあるということでした。人と動物との棲み分けが完全にできていたもようです。
拡大造林が始まって、村では、ブナ、ミズナラ、もう巨木という巨木を片っ端からすべて伐り倒して、跡地にスギの人工林を延々と造っていきました。
人工林は、10年たつと次々と崩れ始めたそうです。多くの土木作業員が募集され、崩れた林道や山を直していきます。仕事が終わると、作業員たちは失業してしまうので、次の土木工事の仕事を作らねばなりません。拡大造林が土建国家日本を作りあげて行ったようすが良くわかりました。
この日お聞きしたことは、何らかの方法で、ぜひ会員のみなさんにお伝えしなければならないと思っています。
今まで、なぜ熊森と藤田氏が出会えずにいたのか、不思議でなりません。
熊森には、まだまだ藤田氏から教わらねばならないことがいろいろあります。
藤田さん、また機会を作ってくださって、ぜひお話をもっとお聞かせください。
第2代会長就任のご報告
- 2018-04-02 (月)
- くまもりNEWS
平成30年4月1日より、当財団の会長が森山まり子より室谷悠子に代わりましたので、ご報告いたします。
森山まり子は、今後も役員(名誉会長)として、当財団の活動に従事し続けます。日本熊森協会は新しい会長のもと、森を守り全ての生きものと共存できる社会をめざして、ますます力強く活動を展開していきますので、変わらぬご支援をいただきますようお願いいたします。
第2代会長就任のごあいさつ
「未来の子どもたちのためにも、奥山再生の流れを全国に」
室谷 悠子
中学生の時から、私の「理科の先生」であった初代会長の森山まり子とともに、ツキノワグマの絶滅を回避し、豊かな森を守ろうと、26年間、自然保護活動を進めてまいりました。この度、第2代会長に就任いたしましたので、ごあいさつ申し上げます。
奥山の広大なスギ・ヒノキの人工林が荒廃したまま放置され、日本は豊かな森を失っています。生きられなくなった野生動物たちは里に出て来るようになり、地元の人達も困っています。しかし、社会は目の前のことに必死で、奥山の問題は忘れ去られています。
中学生の時、日本の森が危機的な状況にあり、森を失えば島国である日本は水源を失うことを知り、大きなショックを受けました。未来の社会を担う自分たちが先頭にたって森再生に取り組まなければと、大学生の時、日本熊森協会を立ち上げて以来、会の中心で自然保護活動を実践し続けてきました。
母親になった今は、100年先、1000年先に、子どもたちが豊かに生きていける自然環境を遺すためにも、奥山再生に人生をかけようと思うようになりました。
初代会長の「本当に自然や野生動物を守ることのできる、市民に支えられた100万人の大自然保護団体を日本にもつくろう」という大きな夢を引継ぎ、思いを同じくするたくさんの方々と手をつないで、大型野生動物の棲める奥山の豊かな森再生の流れを全国に広めてまいります。
平成30年4月1日
室谷悠子(むろたにゆうこ)略歴
1992年、尼崎市立武庫東中学校在学時、理科教諭であった森山まり子(当財団の初代会長)や同級生たちと、絶滅寸前のクマの保護運動に取り組む。兵庫県立尼崎北高校から京都大学文学部に進学し、1997年の日本熊森協会の設立に参加。以来、最前線で熊森活動に従事。その後、京都大学文学部大学院に進むも、大きな自然保護団体を育てるには中心に法律の専門家が必要と気がつき、修士課程修了後、大阪大学法科大学院に進学し、弁護士資格を取得。現在、1児の母で、大阪のあすなろ法律事務所に所属する弁護士。
3月29日(木) 神崎ロータリークラブで副会長が卓話
- 2018-04-01 (日)
- くまもりNEWS
3月26日 春の訪れを感じる兵庫県クマ生息地の広葉樹植樹地のシカよけネットを補修
- 2018-04-01 (日)
- いきもり | お知らせ(参加者募集) | くまもりNEWS
クマ生息地のくまもり植樹地は、シカ除けネットで囲ってあります。
このネットが毎年、雪溶け時に斜面を移動する雪によって杭ごと倒されてしまいます。
シカに広葉樹の苗木を食べられる前に、倒れたネットの補修に行かねばなりません。
何とか、倒れないネット張りが出来ないものか。
昨年度、雪の流れを考えたり、ネットを周りの立木に結び付けたりして工夫した場所を見に行きました。
一部雪の重みでネットが下がっていた部分はありましたが、ほぼ完ぺきにネットが残っていました!
立木を使ったネットの固定は、効果がありました。
以前設置したネットの中にも、雪に耐えたものがありました。
しかし、ネットと苗木が近いとシカが首を伸ばして苗木の先端を齧ってしまいます。
ネットがたるんでいるのは、シカが首を突っ込んだ痕跡です。
下写真の尾根筋に残された落葉広葉樹林は、今年ネットで囲って下層植生を回復させたいと考えています。
2つ目の植樹地。こちらのネットは雪の影響を受けて結構倒れていました。ネットを張ってから5年ほど経って支柱が劣化していることも影響していると思われます。倒れたネットを次々と立て直していきました。
この植樹地の周辺には4月になると白い花を咲かすタムシバがあります。この日はすでに花が咲いていました。クマの大好物と言われています。
カマキリの卵も発見。もう少し暖かくなると孵化するのかな。
この日はなんとコウノトリにも出会いました!暖かくなって田んぼから出てきた虫をついばんでいるようでした。
今年は雪が多かったと聞いていましたが、場所によっては少ない地域もあったようです。
雪の影響を受けていた植樹地のネットは、ある程度補修できました。
この日はとても暖かく春の訪れを感じた一日でした。
4月7日のいきもり活動では、雪が多かった戸倉でシカ除けネットの修繕をする予定です。みなさん、是非ご参加ください!
3月4日 宮城県で熊森本部主催「クマを知る会」を開催
- 2018-04-03 (火)
- くまもりNEWS
熊森本部は、争いを避けるクマ本来の平和的な姿を知ってもらおうと、5年半ぶりに宮城県で集会を持ちました。
2016年に秋田県で起きた死者4名というクマによる人身事故以来、クマのイメージが極端に悪くなっています。
クマ推定生息数1000頭と発表してきた秋田県が、2016年に476頭、2017年に817頭ものクマを有害駆除した背景には、クマという動物に対する誤ったイメージがあると思われます。
集会では、まず本部が、「野生のツキノワグマを保護飼育してわかったこと」というテーマで、大阪府の高代寺で飼育している元野生グマ「とよ」の研究発表をしました。
動物園でクマフードなどを与えられて飼育されているクマと違って、「とよ」には、秋、ドングリが大量に与えられます。
すると、この時期、「とよ」はドングリ以外の物を一切食べなくなります。
自然界に生きるクマにとって、冬ごもりにいかにドングリが欠かせないかがわかります。
また、「とよ」は誤捕獲された当初、人間に対して強い恐怖心を抱いていましたが、クマへの愛情いっぱいにお世話に来てくれるスタッフたちに次第に心をひらいていきました。
クマは知能が大変高く、人間と心が通じ合えるすばらしい動物であることを、動画で皆さんに見ていただきました。
「とよ」の食事風景 2016年7月
お世話スタッフにブラシで背中を搔いてもらう「とよ」 2016年9月
次に、宮城県で長年野生グマの調査をされてきた研究者に、クマの生態について発表していただきました。
宮城県は、西側に標高1500m以上の山々が連なる奥羽山脈があり、ここがクマ生息地の中心です。
山奥に設置したセンサーカメラでとらえた野生グマの動画を見せていただきました。
ほほえましい野生グマたちの動画に、参加者の皆さんも大喜びです。
山形県の八木支部長もご参加くださいました。
会場をセットしてくださった宮城県会員、発表してくださった方、参加してくださった方、みなさんありがとうございました。
他の県でも、クマの本当の姿を知ってもらうこのような集いを、どんどん持っていきたいです。
みなさん、ぜひ、会場をセットしてください。