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2019-03
3月15日 片山大介議員、参議院予算委員会で、森林環境税についてご質問
片山大介議員は、現在、森林環境税法案が審議されている総務委員会に所属しておられません。しかし、何とか質問できないかと熱い思いを持って下さり、予算委員会でご質問くださいました。
以下、2019.03.15 片山大介議員 予算委員会質問要旨
(文責:熊森)
片山大介議員:森林環境税と森林環境譲与税について聞きたいと思います。
森林環境税というのは、全国の住民から毎年1000円徴収して、そのお金を全国の自治体に交付して、森林整備などに役立ててもらおうというものです。
まず森林環境譲与税が平成31年度からスタート、森林環境税はその5年後の平成36年度からスタートです。
譲与額は3段階になっていて、最初の3年間が200億円、次の3年間が300億円、そしてそれ以降は600億円になっています。
そもそも1000円とるということにした理由を説明していただきたいんですが。
石田総務大臣:お答えさせていただきます。
森林環境税の税収規模を検討するにあたりまして、必要な森林整備やその促進に要する費用等につきまして林野庁から年間600億円程度が必要との試算が示されたところでございます。
国民の皆さんに広く均等にご負担を求める観点から、個人住民税均等割りの枠組みを活用することと致しました。
その納税義務者数は6千万人強ということで見込んでおります。
そういうことから、年間1000円にしたところであります。
片山大介議員:じゃあ林野庁に聞きます。600億円は本当に必要な額なのか。十分なのか。
農林水産省牧本林野庁長官:お答えを申し上げます。
条件が不利な私有林では経営力の低下などによりまして、従来の施策のみでは適切な間伐等を進めることは困難となっているところでございます。
このため、そのような条件不利な私有林における間伐量を年平均10万ha程度と推計いたしまして、これに境界確定や担い手育成など、その促進に関する費用を加えまして年間600億円程度と試算したところでございます。
片山大介議員:現在、森林整備等を目的として37府県及び1政令市(横浜市)において、独自に超過課税(=標準税率以上の課税)が行われている。これ二重課税になるのではって話にもなっている。そこについてはどのように調整を図るつもりか。
内藤自治税務局長:お答え申し上げます。
府県が行っております超過課税の使途において重複する可能性がありますが、国は森林環境税を平成36年度から課税することとしておりますので、それまでの間に、関係府県において超過課税の取り扱いを検討いただけるものと考えているところでございます。
片山大介議員:そうすると、自らの財源で積極的に森林整備に取り組んでいる自治体ほど、影響を受けるってことになるんですよね。そうするとね、地方の自主性だとか、地方の自立性だとかそういったものを損なう懸念があります。これについて、大臣どうお考えですか。
石田総務大臣:お答えさせていただきます。
両者の財源の帰属主体が基本的に異なるということになってくるんだろうと思います。36年まで猶予の期間があるわけですから、この間においてそれぞれの自治体でご検討いただけるものと思っております。
片山大介議員:国の上から目線になっちゃうんじゃないですか。大丈夫ですか。
石田総務大臣:この森林環境税につきましては、地方6団体(=全国知事会・全国都道府県議会議長会・全国市長会・全 国 市 議 会 議 長 会 ・全国町村会・全国町村議会議長会)の方からも長年にわたりまして、ご要望がありました。そういうことを受けて、創設をしたものです。
片山大介議員:課税とその導入時期が5年違っています。これまで、このような法案っていうのは過去にあったのかどうか。
内藤自治税務局長:ございません。
片山大介議員:そこまでして譲与の方を早めた緊急性っていうのはなんなのですか。
内藤自治税務局長:お答え申し上げます。
パリ協定の枠組みのもとにおけます、我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図りますため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から創設するものでございます。
森林環境税の開始時期につきましては、全国の地方団体による防災施策の財源を確保するための個人住民税均等割りの引き上げ措置(=東日本大震災からの復興を踏まえて、年間一人1000円を徴収している税)が終了する時期も考慮して設定したところでございます。
片山大介議員:地球温暖化のことで言えばね、もっと他に緊急でやらなきゃいけないことが、実はいっぱいありますよね。
消費税が10月から10%にあがる、そしてそれからもう一つ、今その東日本大震災の教訓として全国で行う防災施策対応分として個人住民税均等割りの税率の引き上げっていうのを平成35年までやっているんですよね。それに引き継ぐ形でやってる。だからこれ良く言えばね、その負担感をちょっと和らげるためにちょっと遅らしたというのもあるけれども、悪く言えばね、ちょっと気付かれないうちにそのまま引き続いてやるみたいなね、なんかとれるところからとれるタイミングでとっていくみたいな感じもするんですけど、ここらへんはどのようにお考えですか。
内藤税務局長:お答え申し上げます。
国民の負担感ってことを考えました場合に、防災施策の財源を確保するために個人住民税均等割りに上乗せする措置が終了した後の平成36年度から課税を開始することとしたところであります。
片山大介議員:地球温暖化のことを言うんだったら、排出源として多いのはやはり産業界ですよね。法人への課税も検討すべきだったんじゃないかなと思いますがこれはどうですかね。
石田総務大臣:お答えさせていただきます。
地球温暖化対策は、二酸化炭素の排出対策と森林吸収源対策の両面から推進する必要があります。
二酸化炭素の排出抑制対策については、これまで自主構造計画等の枠組みの中で、温室効果ガスの排出削減を実現するとともに、平成24年度の税制改正によりまして創設されました石油石炭税の上乗せ措置も負担をしていただいており、すでに産業界からは一定の貢献をしていただいております。
地球温暖化対策は、個人・法人双方に相応の負担をいただくことになるものと考えております。
片山大介議員:排出抑制のことを言うんだったら、じゃあカーボンプライスはどうなっているのかって話ですよね。きちんと出来てないですし、今の地球温暖化課税だってパーセンテージは欧米に比べて低いですよね。今日は、環境省がきてないですから、これ以上は言いませんけども。
森林が二酸化炭素吸収してくれるために必要な間伐ですが、2013年から20年のまでで年平均52万ha必要だと資料にありますが、達成できたのは2013年だけです。
今回の森林環境譲与税で年52万haまで回復するのですか。試算はできているのですか。
牧本林野庁長官:お答え申し上げます。
厳しい財政事情もありまして、委員ご指摘のように近年、十分な森林整備の確保が出来てないというような状況でございます。
また一方、森林所有者の意欲低下などもございます。このような状況を背景にいたしまして、昨年、森林経営管理法を制定いたしました。
これを踏まえて、新たに市町村が担うことになる森林の公的な管理をはじめとする森林整備の財源として、この森林環境税・森林環境譲与税が創設されたということでございます。
片山大介議員:私が聞いたのは分析データがきちんとあがっているような試算が出来ているのかという話です。
牧本林野庁長官:基本的には、使途は、市町村等の判断ということでございます。
この税の創設によりまして、どれぐらい森林整備量があがるかとは一概には言えないところでございますけども、森林整備量の増加に寄与するということは事実かと思います。
片山大介議員:使い方は自由に自治体に任すだけではなく、目標達成できるような努力もきちんとしていただきたい。
牧本林野庁長官:今回の森林環境譲与税によりまして、従来なかなか森林整備が進んでこなかった、経済的にうまくまわらないような森林の管理をですね、市町村が中心にやっていただくということでございます。このような取り組みを通じまして、森林整備量の向上というものが図られるという風に考えております。
片山大介議員:今の日本の森林には、放置人工林がとても多いという話ですが、天然林に戻していくことについてはどのようにお考えですか。
牧本林野庁長官:お答え申し上げます。
平成28年5月に閣議決定された森林林業基本計画におきましては、地域の自然条件等に応じまして、林業に適した森林においては適切な間伐や再造林によります人工林を維持するということ、それ以外の森林は、抜き伐り等によりまして、広葉樹等の導入を図っていく。これがまさに委員がご指摘するところの天然林化ということかと思います。それから原生的な天然生林については適切に保全する、こういったことを通じまして、多様で健全な森林を育成することとしているところでございます。
尚、現在、育成単層林となっているいわゆるスギの山とかヒノキの山とかですね、これは約1000万ha程度あるわけでございますが、将来的には、この3分の1程度におきまして、広葉樹の導入等により針葉樹と広葉樹が混ざっている複層林、そういう山に転換していくことを目指しているところでございます。農林水産省といたしましては、自然条件等に応じた多様で健全な森林づくりというものに取り組んで参りたいと考えております。
片山大介議員:是非よろしくお願いします。自治体にはノウハウがなかったりするわけです。自治体にね、アドバイスしたりノウハウを伝えたりするようなことも国としてやっていってもいいんじゃないかと思います。
牧本林野庁長官:お答え申し上げます。
人工林への広葉樹の導入についてでございますけれども、これは種子の供給源となる広葉樹林からの距離などですね、自然条件に応じて伐採方法を適切に選択をしていかなきゃいけないということでございます。
林野庁都道府県におきましては、これまでの育成複層林への誘導技術等に関する各種マニュアル、技術指針等をとりまとめまして、市町村等への助言に努めていきたいと思っているところでございます。
また、森林所有者等が行います広葉樹を含めた造林保育につきましては、森林整備事業により補助することが可能ともなっているところでございます。
加えて、今後、森林環境譲与税を活用した地方団体の取り組みによりまして、条件不利な人工林における広葉樹の導入など、多様で健全な森づくりというものが一層推進されることが期待されているところでございます。農林水産省といたしましてもマニュアル等活用いたしまして、施業管理方法の周知・助言というものにしっかりと努めてまいりたいと考えております。
片山大介議員:是非きちんとやっていただきたいと思います。
石田総務大臣:森林環境税の使途につきましては、各地方団体に行っていただきたいと思います。その使途につきましても、毎年度、インターネット等により公表することを義務付けることといたしておりますので、適切な使途に用いられることを担保されていると思います。
片山大介議員:終わります。ありがとうございました。
くま森から
さすが、見事に、予算委員会での質問になっていました。片山大介議員、新たな角度からのご質問をありがとうございました。
速報 3月 18日 とよ君お目覚め
- 2019-03-18 (月)
- _クマ保全 | くまもりNEWS | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
速報 衆議院総務委員会に引き続き 3月14日、参議院総務委員会でも、森林環境税で放置人工林を天然林化するよう、熊森資料で国会議員が質問
2019.03.14 参議院総務委員会
参議院インターネット 3時間12分1~3時間18分までで視聴可能
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.phpより
「総務委員会」を選択し、発言者に「若松謙維」と入力すると、3/14の動画が表示されます。
若松 謙維(かねしげ)議員 総務委員会での質問要旨(約6分間)文責:くまもり
若松:森林環境税につきまして、総務省と農水省にお伺いいたします。
今回の森林環境税と森林環境譲与税は、森林の公益的機能に着目した税であります。
この税で本州や四国、九州に広がる人工林を天然林化して、土砂災害防止や豊かな水源の森を再生することを、税の使用目的に入れるべきだと考えております。
資料を委員の先生方にもお配りさせていただいております。(委員たちが、資料を見る)
ご存知の通り、戦後の拡大造林政策で天然林を伐採し、奥地までスギ・ヒノキを植林しました。しかし、間伐もしているわけでありますが、現在、その人工林の3分の2が間伐が間に合わないで放置されて、荒廃しております。
放置された人工林の内部には日光が入らず下草も生えない、雨で表土が流出し保水力が低下した結果、谷川の水量も低下、生態系にも影響が出ています。
私も災害対策特別委員長でありましたので、豪雨による山崩れに関しましては、九州北部豪雨災害も現地も行ってまいりましたし、また西日本豪雨災害の被害も見てまいりました。災害に強い森をつくるためには天然林の再生が必要であります。
特にこの放置人工林はですね、食べ物がないということで野生動物たちが餌を求めて里に出てくると、こういう原因にもなっております。併せて、大量の花粉を発生させているという弊害もあります。
この放置人工林を天然林に再生すること、これが野生動物との共存や花粉症軽減にもつながるということです。
次に、この天然林化ですが、具体的にどうしていくかということなんですけども、これはもうずっと研究してるNPO関係者の方のお話が(注:熊森作成資料に)実体験を基にわかりやすく説明されております。
配布された資料を見ている委員たちと、質問中の若松謙維議員
特に人工林の間伐、これは必要だなと思うんですけど、実際にやってみると(人工林の)木を太くするには有効なんですけど、結局残された針葉樹がですね、成長してすぐに元の状態(放置人工林)に戻ってしまったというのが(配布資料の)最初の例であります。ですから、間伐ではですね、結局、天然林の復元にはならないことが、実証されております。
そこで、皆伐という考え方がありまして、この図にもありますが、まるごとしっかり(人工林の)木を皆伐して除くと、種とかが鳥に運ばれて自然に(天然林に)回復したということで、特にこの9年経過後、青く広葉樹が茂っている状況になっています。併せて、一番下の図にありますが、こういう風に豪雪とか寒冷地の上、シカも多いという地域は、当然、シカが若芽を食べてしまいますので、そのための防護柵を設置することが必要になってまいります。
この場所には、広葉樹が植樹されたそうですが、結局、周囲から鳥や風によって種が運ばれて、4年間で46種類の自然の木が生育したということであります。(平野虎丸顧問による植えない森造りの提唱)
今回のこの森林環境税はどちらかというと財源確保が重点なんでしょうけど、この税をどう使っていくかということがこれからの議論であります。是非、今ご説明させて頂いたような放置人工林の天然林化、是非、こういったところにも使途として使っていくべきだと考えますが、総務大臣、いかがでしょうか。
委員長:石田総務大臣
石田:森林環境譲与税の使途につきましては、法律上、森林の整備に関する施策及び森林整備の促進に関する施策を規定しているところでございまして、各地方団体におきましてはこの法律上の使途の範囲内において地域での実情に応じて幅広く断続的に事業を実施することが可能であり、ご指摘の人工林を天然林化する事業についても森林の整備に該当するものとして活用可能であると考えます。
答弁する石田総務大臣
委員長:若松かねしげくん
若松:そこで、農水省にお伺いしたいんですけども、いわゆる、実際にどう使われるかはなかなか不透明でありますし、実際にこのような天然林化っていうのはなかなかそのノウハウとして定着されていないし、今後どうやっていいかということがよくわからないということもありますので、是非ですね、放置人工林の天然林化ですか、これが進むように指針の明示とかノウハウの提供、これ是非ですね、林野庁にお願いしたいと思っているんですけど、いかかでしょうか。
委員長:林野庁、織田森林整備部長
織田:はい、お答えいたします。平成28年5月に閣議決定いたしました森林林業基本計画におきましては、多様で健全な森林づくりを推進することとしておりまして、その際、地域の自然条件等に応じて、針葉樹だけではなく、針葉樹に広葉樹が混じったような針広混交の森づくりなども進めることとしているところでございます。
これまでの対策に加えまして、この森林環境税を活用した地方団体の取組みにより、針広混交林化も含めて多様で健全な森づくりが一層推進されることを期待しているところでございますし、また農林水産省にいたしましても、必要な技術的支援を行って参りたいというふうに考えております。
答弁する林野庁、織田森林整備部長
委員長:若松かねしげくん。
若松:是非あの、そのノウハウが伝わるようにしっかり良いガイドラインなり、通達などを期待しております。よろしくお願い致します。
熊森から
今回、参議院総務委員会で配布された資料は、熊森が、兵庫県宍粟市波賀町原集落の皆さんと人工林を天然林化するため2005年から10年かけて共同実施した事業結果に基づくものです。
原集落のみなさん、本当にありがとうございました。みなさんとの先行事例が、全国に於ける人工林の天然林化の良き指針となります。おかげで、間伐では、針広混交林にはならないことを、前もって全国市町村の皆さんに知っていただけます。
[速報] 森林環境税 27562筆の全国署名と要望書を総務大臣宛に提出!!
全国で放置人工林の天然林化が進むよう要請しました
昨日3月13日、東京都の総務省庁舎内にある総務大臣政務官室にて、古賀友一郎政務官(参議院・自民)に、皆様の想いが詰まった2万7562筆の署名と森林環境税でスギ・ヒノキの放置人工林を天然林に再生することとそのための体制整備を求める要望書を届けてまいりました!
熊森本部に届いたたくさんの署名用紙には「日本の森を豊かにしてください」「国を変えるために熊森ががんばってほしい!」というお手紙も一緒に送ってくださった方々もおられました。みなさんの想いを、日本熊森協会の室谷悠子会長と現役参議院議員の片山大介顧問がしっかりとお届けさせていただきました!
署名提出後、室谷会長は、古賀政務官へ以下のような要望書を提出しました。
室谷会長はここで、
- 日本の人工林の3分の2が、放置林で、野生動物の食料にならないスギやヒノキの単一針葉樹林を人間が植えてしまったことで野生動物の生息地が失われてしまったこと。
- 山の保水力を著しく低下させ、各地で湧き水が激減し、台風や大雨により放置人工林が大規模に崩壊し、毎年多くの人命や財産が失われていること。
- スギ・ヒノキから発生する大量の花粉が、多くの国民が花粉症をもたらしていること。
について政務官にお話し、森林環境税を使って全国規模で放置人工林の天然林化を進めていくように国の政策を大転換していただきたいと要望されました。
古賀政務官は
「この問題は非常に重要な問題ですね。昨年は西日本豪雨災害など大規模な大雨災害がありました。総務省としても、森林環境税・譲与税が放置人工林の天然林化が進んでいくよう取り組んでまいります。」と回答されました。
片山大介顧問は
「森林環境税・譲与税がしっかりと市町村に天然林化に使っていただけるような体制づくりをしていただきたい。今後の国会で質問します。」と、古賀政務官へ話されました。
日本の森林は今、大転換期を迎えようとしております。熊森が今取り組んでいることは、今後の日本の歴史を大きく変えることにつながるかもしれません。メディアのみなさまには、ぜひ取材をしていただきたいです。またフェイスブックでこのブログを読まれた方は、広く世界へ拡散してください。
みなべ町での森山名誉会長講演「森林環境税で放置人工林の天然林化を」が、全国ニュースに!
3月6日夜、和歌山県みなべ町の旧ロイヤルホテルで、南部ライオンズクラブ主催の森山まり子名誉会長の講演が開催されました。
この日の昼にみなべ町を訪れた森山名誉会長らは、講演前に、真造議員に案内してもらって、有名な梅林や備長炭の炭焼きを見せてもらったり、森林組合の方と長時間懇談したり、数年前の紀伊半島豪雨で山が崩れて死者が出た場所などを訪れたりして、地元の貴重な声を聞いて回ることができました。
この町では、かつて、立木所有権の売買がさかんに行われたため、山のスギ・ヒノキ人工林の立木所有者が誰なのか、もうわからなくなってしまっているところが多いという問題があるということでした。
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同じ日本の郡部と言っても、これまで熊森がずっと訪れてきた豪雪地帯の山や暮らしとは、全く違っていました。
みなべ町は第一次産業が元気な町です。
みなべ町風景
熊森運動のきっかけとなったのは、1992年1月の夕刊全国版トップに掲載された新聞記事です。実はこの記事の中の有害駆除されたクマの写真は、当時の南部川村のツキノワグマです。地元の人達は、この時のことをよく覚えておられ、当時、全国から非難の電話が役場に殺到して、ほろ苦い思い出がありますと言われていました。
このクマさんは、現在、清川小学校の玄関を入った所に、剥製となってガラスケースに入れられ、きれいに保全されていました。このクマさんに会える日が来るなど、考えてみたこともありませんでした。感無量でした。当時の状況など聞くことができました。
まだわかりませんが、森林環境税を使って放置人工林を天然林化する全国初の試みは、みなべ町から始まるのではという予感がしました。もし、そうなれば、剥製にされてしまったクマさんも浮かばれると思いました。
夜の講演会には、紀伊民報社と日高新報社の記者が出席してくださって、記事にしてくださいました。
この記事を、共同通信が取り上げ、ヤフーニュースにも流し、全国ニュースとなりました。
尚、講演会には、北野久美子熊森和歌山県支部長も参加され、名誉会長の講演会後、和歌山県の話をされました。
以下、紀伊民報社2019.3.7より
放置人工林を天然林に再生 森林環境税活用で講演
国が新たに導入する森林環境税の活用をテーマに、一般財団法人「日本熊森協会」(兵庫県西宮市)の森山まり子名誉会長が6日、和歌山県みなべ町内で講演した。鳥獣被害や山地災害など放置人工林による問題、動物と共存してきた先祖の知恵にも触れながら「森林環境税で、放置人工林を天然林に再生してほしい」と呼び掛けた。
講演会は南部ライオンズクラブ(山崎崇会長)が主催し、クラブ員に加え、町内や田辺市、印南町から役場担当職員、議員、森林組合関係者も参加した。
森山さんは、里山は先祖が手を入れてきたが、エネルギー革命などで使う人がいなくなったことで荒れ始めたと話した。先祖が野生動物とすみ分けし、手をつけなかった奥山まで戦後の拡大造林で人工林にしたが、いまは放置人工林となり、鳥獣被害や表土流出、山地災害の多発、湧き水の減少といった問題につながっていると解説した。
日本地図や紀伊半島の地図で、スギやヒノキなど人工林がいかに多くを占めるか色分けしたものを示し、放置人工林を天然林に再生するための協会の国への働き掛けや植樹などの取り組みも紹介しながら「森林環境税を天然林にするために使ってよいとなった。後に続くところが出てくるよう、ぜひその第一号に」と、みなべ町の取り組みに期待を掛けた。
熊森から
主催者が、最後に、「本当に有意義で、目からうろこのお話でした。和歌山県の人工林の多さにびっくりしました。原生林を残さなければならないわけも良くわかりました。」と挨拶してくださいました。
森林組合や、農家、炭焼き、行政の方たちが、自然保護団体である熊森の主張をどのように受け止められるのか、少し、心配でしたが、非常によくわかっていただけたように感じました。
講演後、経験豊かな町のリーダーたちが、熊森の言う通りやと思うなといって会員にもなってくださいました。しかし、私たちは、農業も、炭焼きも、林業もしたことがないので、本当はわかっていないことも多々あるはずです。これをきっかけに、いろいろと教えていただこうと思いました。
熊森の活動は、戦後造りすぎた人工林を豊かな天然林に再生させて、山川海を元気にし、100年後も1000年後も、全ての生き物と人間がこの国土でお互いに畏敬の念を持って生きられるようにしておくことです。
県平均人工林率62%の和歌山県 赤色部分が人工林で、7割~8割が放置人工林
P.S 全国の皆さんへ:森林環境税・譲与税で、今度こそ、放置人工林を天然林に再生しないと、日本文明が崩壊してしまうと熊森は危機感でいっぱいになっています。最後のチャンスです。会長・名誉会長共、全国を行脚して、これまでの26年間に調べたことを命の限り人々に伝えていく決意ですので、どうか私たちに話す機会を作っていただきたいです。お電話ください。
みなべ町議会議員、議会で放置人工林の天然林化を事業化するよう提案
和歌山県みなべ町の真造賢二議員が、将来もはや何の役にも立たないばかりか、山崩れ、河川への土砂の堆積、水資源の枯渇、鳥獣害被害、花粉症等の原因になっている放置人工林を森林環境税で天然林に戻せるよう事業化すべきとして、議会で町長さんに質問されました。
まだ決まった訳ではありませんが、町長さんも前向きの回答をされておられます。
和歌山県みなべ町議会だより(3月1日発行)より
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熊森から
全国の都道府県議会及び市町村議会で、このような質問や提案が続いてほしいです。同様の質問や提案を議会でしてくださる議員さんがおられましたら、放置人工林の天然林化を訴えて26年の当協会まで、ぜひお知らせ願いたいです。
2007年、熊森は全力を振り絞って国会ロビー活動を行い、鳥獣被害防止特措法の第十八条に、国及び地方公共団体は、人と鳥獣の共存に配慮し、鳥獣の良好な生息環境の整備及び保全に資するため、地域の特性に応じ、間伐の推進、広葉樹林の育成その他の必要な措置を講ずるものとする。(生息環境の整備及び保全)という一条を、国会議員のみなさんに入れていただきました。(この特措法の年間予算は全国で毎年92億円)
しかし、その後、調べてみたところ、鳥獣の捕殺や被害防止柵には大量の予算が使われていましたが、広葉樹林の育成に使われた予算はずっとゼロでした。担当者に理由をたずねると、申請する集落がゼロだったからということでした。 (個人使用不可) ガックリ・・・
私たち自然保護団体が少しでもこの国の野生動物や山を守ろうと、国会でいい法律を作ってもらっても、実践してくださる人達が現れなかったら、すべて絵に描いた餅です。
放置人工林の弊害は、もう待ったなしにまで大きくなっています。今度こそ、森林環境税を有効に使って、全ての生き物たちのために、子や孫のために、日本から放置人工林をなくしていっていただきたいと、都道府県担当者、市町村担当者のみなさんに熱望します。
森林環境税の使い方に関するくまもり提言
国民の材の需要量は、以前の6割に落ちており、今後、人口減に伴って益々縮小していくと思われます。
燃料にしたらという声もありますが、燃料にするなら広葉樹です。
国の森林環境譲与税試算 和歌山県田辺市へ毎年1億円配分
以下、2018年12月31日紀伊民報記事より
国が2019年度に森林管理を目的に導入する森林環境譲与税の和歌山県田辺市への配分額は、21年度までの3年間、各年1億421万円と県が試算した。全国屈指の多さという。手入れが不十分な人工林を再生し、いかに山村振興につなげるか。市の手腕が問われる。
県がスギやヒノキなどの私有人工林の面積や自治体の人口、林業就業者などの指標を使って試算した。年間の配分額は(和歌山)県が9620万3千円、(和歌山)県内市町村合計が3億8477万3千円。全国の約1700市町村への配分額が160億円で、田辺市の額は平均の10倍近い。配分額は4年後には1・5倍になる見通し。
国が19年度から始める森林経営管理制度では、森林所有者自身で伐採や植林ができない場合、市町村が経営管理の権利を得て、意欲と能力のある林業経営者に間伐などを再委託する。一度に伐採や間伐をする森林を集約できれば、作業効率も高まる。
ただし、実行段階では課題も多い。田辺市でも所有者に意向調査をするが、相続人がどれだけいるかなどの把握はこれからだ。
林業経営に適さない森林は、市が管理する。ただ、直接管理は難しく、委託するにしても担い手不足の中、対応できる経営者がいるか分からない。県の協力、広域連携も必要になる。
熊森から
昨年、国会で成立した林野庁提出「森林経営管理法」は、日本の森林所有制度を根底からひっくり返す大転換法でした。
しかし、この法案は、パブコメも採らず、突然、国会に出たため、ほとんどの国民が、そんな法案が国会に出たことすら気づいていないのではないでしょうか。
(法案通過後、施行令と施工規則については、パブコメがとられましたが、パブコメを寄せたのはそれぞれ2名と0名でした。熊森はこのようなパブコメが取られていたことにも気づきませんでした)
昨年末、紀伊民報さんが、この問題をタイムリーに記事にしてくださったことに感謝します。
熊森がこの法案に気づいたのは、林野庁が、手入れが不十分な人工林(=放置人工林)を所有している山主は、意欲と能力が低いと決めつけたことに、一部の自伐林家が反論した時です。
人工林を放置しているのは、ありにも奥地過ぎたり急斜面過ぎたりして、伐り出せない、無理して伐り出しても赤字になるからです。こんなところは天然林に戻すべきなのです。どうしようもないものがあるのに、山主の意欲と能力が低いとして、山主に責任を負わせるのは、私たちもひどいと思いました。
この法律では、放置人工林や所有者不明の山林は、川下の素材生産会社などが山主に代わり伐採して林業利用するか、市町村が50年の管理下に置くかすることになっています。
個人所有の山が公有林化されていくことに議論は必要かもしれませんが、熊森としては、あまりにも放置人工林が多過ぎて、第1次被害者の野生鳥獣、第2次被害者の地元の人々、第3次被害者の花粉症国民などの大変な被害を思うと、もう一刻の猶予もない状況にあると思います。日本の水源の森を再生させるためにも、林野庁の一大発想をうまく活用したいと思います。
2018年西日本豪雨災害死者200人
赤色:スギヒノキの単一造林1030万ヘクタール 7割~8割が放置されている
手入れ不足の放置人工林の内部(和歌山県)
天然林内部
ただ、戦後の拡大造林政策によって造林し、現在50年生となったスギ・ヒノキの放置人工林を伐採した後、再びスギ・ヒノキ苗を植えたのでは何をしていることかわかりません。
今春から配当される森林環境譲与税は、放置人工林を多く抱える地元市町村には多大のお金が配当され、使い道は市町村に任されます。とりあえず積み立てておくではなく、まず天然林再生のための人材を確保し、直ちに有効活用を図っていただきたいものです。当協会を呼んでいただければ、使い道はいくらでも提案できます。
都市部は、その町の水道源となる山を有する町の放置人工林を天然林化するために、森林環境税をそこに寄付するなどしていただきたいです。
速報:森林環境税・譲与税法案 衆議院総務委員会可決
附帯決議に「放置人工林の広葉樹林化」と体制整備が入りました!
2018年3月1日深夜、森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案が、衆議院総務委員会で可決されました。
その際、自由民主党、立憲民主党、無所属フォーラム、国民民主党、無所属クラブ、公明党、日本維新の会及び希望の党の6派の共同提案による附帯決議も可決されました。附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものです。
森林環境税・譲与税法案の付帯決議では、「放置人工林の天然林化」とそのための体制をつくることといった熊森が訴えてきた条項が入りました!
放置人工林の天然林化(広葉樹林化)を国会に出向いて訴えていたのは、私たちだけでしたが、本部支部あげて国会議員にアタックした結果です。
衆議院総務委員会の国会議員の皆さま、本当にありがとうございます!
審議は、参議院に移りますが、引き続き放置人工林の天然林化を訴えていきます。
(衆議院総務委員会での付帯決議の抜粋)
政府は本邦の施行にあたり次の事項に対して適切に処置すべきである。
12 私有人工林において、荒廃し、保水力低下、土砂災害の発生、野生鳥獣の生息地の破壊、花粉症罹患者の急増など、深刻な問題が生じていることがわが国の森林における重要な課題であると鑑み、豊かな水源の森再生のために、森林環境譲与税で地域の自然条件に応じて放置人工林の広葉樹林化を進めること
13 広葉樹林化の施業は実践例が乏しく、森林環境譲与税の交付を受ける自治体にその技術がなく、人材も不足していることから森林環境譲与税で放置人工林の広葉樹林化が進むように具体的な指針を示し、必要な支援を行うこと。
14 既存の森林整備に係る補助金等は放置人工林の広葉樹林化に利用が難しく、自治体独自の補助事業もほとんどないことに鑑み、放置人工林の広葉樹林化が各地で進むよう必要な取り組みを行うこと。
15 森林環境税及び森林環境譲与税制度について各自治体における使途及び豊かな森林の公益的機能増進への効果を検証しつつ、必要がある場合には豊かな森林環境の生のために森林環境譲与税の使途や譲与基準を始め、所要の見直しを行うこと。
熊森から
放置人工林の天然林化を誰よりも待っているのは、有害獣のレッテルを張られ、無残にも大量捕殺され続けている日本の野生動物たちでしょう。
彼らは、人間のところに出て来たくて出て来たのではなく、荒廃した広大な放置人工林によって山で生きられなくなり、生きるために食べ物を求めて里に出てきたのです。
熊森は、今回の付帯決議を、誰よりも、彼らと喜び合いたいです。
動物たちに帰れる森を、地元の人たちに安心を。
熊森は、今後も必死で天然林を復元・再生していきます。
今、日本の山野にはおびただしい数の捕獲罠が仕掛けられています。
罠にかからないように気を付けてください。
なんとか野生動物のみなさんに、生き伸びていてほしいです。
民間林業会社等に国有林の人工林伐採権を長期間与える「国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会に
2月26日、上記法案が閣議決定されて、農林水産委員会に提出されました。
この法案は、2018年に成立した「森林経営管理法」で新たな民有林管理システムの要となる、意欲と能力のある民間林業経営者(森林組合、素材生産業者、自伐林家等)に、10年~50の長期にわたり、数百ヘクタール、年間数千立方メートルの国有林の伐採権を与える法案です。(現在も民間が国有林を伐採していますが、現行は3年までという制限がついています)
伐採後は、伐採林業者が再造林を行い、造林経費は国が支出します。
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これによって、民間林業経営者が収入を確保し、長期的な経営計画が立てられるようにするとともに、安定的に木材を供給できる仕組みをわが国に創設し、川上・川中・川下の連携による木材需要拡大をはかるものです。
林野庁経営企画課に電話をして問い合わせました。
くまもり:国有林の多くは最奥地にあるので、伐採跡地は、天然更新させて天然林に戻してください。伐採後は林業をせず、水源の森・生物多様性保全の森に再生させて、全生物のため、子や孫のため、永久保全すべきです。
林野庁:今回の法案は、林業として成り立つ場所での伐採しか考えていませんから、そのような奥地の人工林には手を付けません。
くまもり:じゃあ、伐採跡地には、またスギ・ヒノキを植えるのですか?
林野庁:地元の森林管理局や森林管理署に任せます。もし、造林するのなら、費用は国が持ちます。
熊森:国有林伐採に外資が参入するのではないかと心配している人がいますが、その恐れはありますか。
林野庁:伐採権を得られるのは、地元で実績のある林業会社と決められていますから、外国人が入ってきて国有林を伐採することはありません。ただ、その林業会社に外資が投入されることはあるかもしれません。
熊森から
林業振興のためだけの法案であることがわかりました。これからはどんどん人口が減っていく時代ですから、材の需要が増えることは考えられません。無理に木材需要を拡大しなくても、身の丈に合った林業規模でいいのではないでしょうか。人間の利益ばかり考えるのではなく、生息地を人間に破壊されて苦しんでいる野生動物たちに、森を返してやることも考えていく人間でありたいです。