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2019-08-03

どうした?!「とよ」

大阪府高代寺で保護飼育されてきたツキノワグマの「とよ」9才。

元野生グマで、最初は人間をえらく恐れていましたが、今では良くなついています。

元気に走り回わる愛らしい姿は、熊森の希望でした。

 

7月13日、お世話隊や副住職さんが、とよの異変に気づきました。

食欲不振。あんなに好きだったブドウも食べず寝ています。

風邪かなと思っていたら、7月16日、後肢が2本とも動かなくなっていることが判明したのです。

「とよ」は犬のように横になったまま、寝たきりになってしまいました。

 

何の病気?!。

みんな、もう真っ青です。全く原因がわかりません。高い所から落ちて骨折か?

大雨の中、会員の獣医さんに診に来てもらいました。

骨折ではない。血栓か椎間板ヘルニアが疑われるが、外からではわからないとのこと。

「とよ」は、寝室に寝たままで、4日間出てきませんでした。

もうだめ。

マジックハンドを使ってサクランボを口の前に差し出すと、1粒ずつなら食べることが分かりました。

とにかくサクランボで命を繋いでもらおうと、どんどん買ってきて与えました。

なんと、「とよ」は、この日、サクランボを15パック平らげました。

次々と「とよ」の口の前にサクランボを差し出すお世話隊の方は、最後、腕が動かなくなるまでがんばったそうです。

 

2本の前足だけで移動する「とよ」

 

本部は森山名誉会長を中心に必死で、クマにくわしい獣医さんを探し回りました。

和歌山県の北野支部長や室谷会長も、つてを頼って獣医さんを探しました。

動物園の獣医さんには、すべて断られました。

やっとのことで獣医さんを見つけて、「とよ」の動画をいくつか送って見てもらったり、現地に来てもらったりしました。

骨折ではないが、ヒビによる神経炎かもしれない。左足の甲を下にして足をひきづっているのは、脊髄損傷のサイン・・・。

いろんな診立てがありましたが、レントゲンを撮らないとわかりません。

痛みがひどいと食欲も出ないということで、とりあえず、痛みどめの抗炎症剤と胃の保護剤を飲ませることになりました。

 

おかげさまで、服薬によって痛みが抑えられたのか、「とよ」の食欲は戻ったのですが、まだ後肢が不自由なままです。

お世話隊を中心にお寺や熊森本部職員も入って、連日、お世話や見守りをしていますが、現在、完治のめどが立っていません。

若いクマなので、こんなことになろうとは夢にも思いませんでした。

 

とりあえず、みなさんに、「とよ」の現状をお知らせしておきます。

推定918頭のクマに春~秋、誘引物入り捕殺罠2311基常設の異常性 和田副会長 兵庫県議会で質問

去る6月20日、くまもり副会長の和田有一朗兵庫県議会議員(神戸市垂水区選出)が、兵庫県本議会でいくつかの質問をしました。

その中から、兵庫県のツキノワグマが3年前から一大捕殺強化されている問題について質問した部分について、以下に紹介させていただきます。

 

【質問2:ツキノワグマの保護管理について】

和田 有一朗議員:

次に適正な野生鳥獣の保護・管理についてお伺いいたします。

近年、人と野生動物との軋轢がメディアを賑わせることが多くなってきています。シカやイノシシは人身事故はあるものの、農業被害が中心である一方で、クマの場合は人身事故の問題が中心となっているところであります。

 

兵庫県においても本県に生息するツキノワグマは平成8年度から狩猟禁止、追い払い活動や学習放獣などの保護対策を進めた結果、推定生息数が絶滅することが当面ないレベル800頭まで回復し、直近の推定生息数の中央値が830頭となっていると推定した県(注:推定したのは兵庫県森林動物研究センターの研究員)は、ツキノワグマ管理計画に基づき狩猟を含め野生鳥獣の被害対策の強化を進めてきたところであります。

 

しかし、注意をしておかなければならないのは、推定生息数はあくまでも統計に基づく推定であって、実際の生息数は推定より多い可能性もはるかに少ない可能性もあるということであります。

日本ではクマをはじめ野生動物は(今や)害獣として扱われ、個体数調整という名のもとに、本来の生息地である山の中まで人が入り捕殺をしており、本県でも出没を確認しない段階で推定生息数をはるかに超える罠を必要以上に仕掛け、捕獲されたクマを放獣せず、害獣駆除しているという声を私は聞いております。

 

乱獲は野生動物の絶滅の大きな原因であり、兵庫県でもツキノワグマが絶滅の危機に陥った過去からしても、捕獲が過剰となっていないか、十分な検証が必要であると思います。

 

そもそもクマは基本的には人を避け、森の奥深くに生息する動物であります。しかし、突発的に出会うと防御的な攻撃を招き危険な場合があります。また、クマによる人身被害、農業被害の発生は必ずしも、実はクマの個体数の多さに比例しているわけではありません。

 

クマの本来の生息地である森を開発、利用してきた人間が、季節や年によって食べ物を柔軟に変化させるといったクマの生態を知り、例えば奥地の放置人工林を天然林に戻すなど、本来のクマの生息地である奥山のクマの生息環境を整え、棲み分けを実施していくこと、藪の刈り払いをすること、庭の果実を除去すること、事故が起こった場所には立ち入らないようにすること、クマの餌場となる場所にはできるだけ近づかないようにすること、また、近づく必要がある場合は十分に注意すること等、地道な取り組みを続けていけば、当然クマ生息地の住民の不安を解消することは重要でありますが、私はクマを殺さずとも共存していくことはできると考えます。

 

そこで、誘因物、それは放置果樹であったり廃棄農作物であったり、生ごみなどがありますが、こういったものを除去、農耕地等への電気柵等の設置と管理、クマの集落周辺への侵入や一時的な定着を防止するための耕作放棄地等の整備や藪の苅りはらい等によって、出没を確認しない段階で罠を必要以上に仕掛け、捕獲されたクマを放獣せずに害獣駆除するといった方法によることなく、適正なクマの保護・管理ができると考えますが、当局の誤所見をお伺いいたします。

 

【答弁:ツキノワグマの保護管理について】

田中基康 環境部長

本県では森林動物研究センターの知見に基づき、生息数推定の精度を向上させながら、個体数管理、生息地管理、被害管理を総合的に推進するワイルドライフマネジメントを行っております。

 

近年ツキノワグマの推定生息数が狩猟解禁基準の800頭を超えたため、平成28年度から1か月の制限付きで狩猟解禁しております。

また自然増加数を上限に、集落やその周辺地域に出没する個体に限定して必要な有害捕獲を従来から行っておりますが、これに加えまして、シカ罠等に誤って入り込む、これは当然放獣するわけですけれども、個体までを含めた捕獲総数は3年連続で100頭を超えております。これは過去にはございませんでした。

 

人身被害が発生する中で、残念ながら危険度がより身近になっている有害罠の設置など確実な対策が必要な状況にあると考えておりますので、どうぞご理解を賜わりたいと思います。

もとより、先ほどより答弁にありましたように中長期的な生息地管理として広葉樹の植栽を行っております。

何より、集落にクマを誘引しないよう被害管理として放置果樹、生ごみなどの誘因物の除去を進めておりますけれども、啓発呼びかけにとどまらないよう、本年度からは民間専門家(株式会社野生動物保護管理事務所や 元兵庫県森林動物研究センター研究員坂田宏志氏が設立した株式会社野生鳥獣対策連携センターなどを想定)による集落ごとのきめ細やかな実地指導も展開してまいります。

GPS行動追跡等も進めて引き続き進めてまいります。

今後とも市町はもとより近隣府県とも十分に連携しながら人身被害の防止を最優先にしつつ、クマと共生できる科学的・計画的な保護管理を着実に進めてまいりますのでどうぞよろしくお願い致します。

 

熊森から

和田副会長の質問、完璧です。ありがとうございました。

 

2018年を例にとると、兵庫県では、県内推定生息数918頭のツキノワグマに対して、まだクマが出てきていない春の時点で、609頭のクマ捕殺許可書が県から発行され、シカ・イノシシ捕獲檻のうちの2311基にクマ札が付けられてクマ捕獲共有罠とされ、春から10月末まで、集落200メートルゾーン内に罠を常設。入ったクマは狩猟と合わせて137頭までという上限数があるものの、全頭殺処分。

兵庫県がこのようなクマ捕殺体制をこっそり敷いていたことが、昨年の熊森の調査で発覚しました。

 

その結果、人里に出て行きたかったわけではない多くのクマが、誘引物の匂いに誘引されて罠に向かったのです。

2019.7.23現在までの、兵庫県庁資料より

 

地元で聞くと、このようなクマの捕殺方法は、平成29年(2017年)の7月から始まり、平成30年(2018年)と今年の2019年は、春から開始されたとのこと。

 

上記グラフから、大量の常設クマ捕獲罠によって、集落200メートルゾーンになど出ていく気がなかったクマを、山から呼び出して罠にかけ、殺処分していることがはっきりとわかります。

初めに殺したいありきであり、これはもはや有害捕獲ではなく、完全に、クマの個体数調整捕殺なのです。クマの個体数調整はしませんと協議会で宣言された兵庫県の言葉が嘘になっています。

 

熊森は26年間兵庫県の奥地を見て参りましたが、熊森がささやかながらも奥山に餌場を復元してきたことと比べて、兵庫県のクマの餌場復元事業は掛け声ばかりで復元実態はゼロだと思います。それどころか、奥山観光地化や奥山道路建設、シカの食害など、クマの生息環境は劣化の一途です。生きるために、過疎化した集落周辺に移動したクマたちを、人は責められないと思います。

 

奥山をクマたちが棲めないようにしたあげく、人間の所に出て行かないように踏ん張っているクマまで誘引剤で里に誘引して、有害駆除名目で個体数調整捕殺をする。もう、人間をやめたくなります。人間の残酷さや嘘に、クマたちは泣いていることでしょう。

 

なぜか、新聞社は、兵庫県の実態を県民に全く伝えようとしません。

 

地元の皆さんの何人が一体、兵庫県のしていることを知っているのでしょうか。

地元の皆さんの何人が一体、兵庫県のクマ捕殺法を支持しているのでしょうか。

 

くまもりは、集落周辺でクマの被害や人身事故が起きたら、山中にいるクマを集落周辺に呼び出した兵庫県が責任を取るべきだと思います。みなさんはどう思われますか。

 

みなさんの住んでおられる都府県でのツキノワグマ捕殺体制は、どうなっているでしょうか。みなさんも調べてみてください。

 

トヨくんに会いに行きました

はじめまして、私は、7月22日から8月4日まで、熊森協会でインターンシップさせて頂いている学生です。

 

私は動物が守りたくて、保護関係の仕事に就きたいと思いました。

自分なりに動物を守るにはどうすればいいのか考えた結果、環境を守ればその環境に生息している動物は悠々自適に過ごせるのではないかという単純な考えから始まりました。

今回初めて、動物保護関係の団体でインターンシップをすることができました。

経験を積んでいき、今後につながるようにしたいと思います。

 

7月22日に熊森協会が保護したクマ――トヨくんのお世話に行きました。

その時は雰囲気的に少しやせていて、構わないでほしいように見えました。

目線もずっと別のところを見ていて、たまにチラッとこちらを見るぐらいで、私に興味を持ってはくれなかったです。

前日の餌も手付かずで、ビタミン剤を入れたソーセージも少しいじったぐらいで、減ってはいませんでした。

 

職員さんもボランティアさんも、とても心配していて、食事を取らないことで栄養が足りなくなり、ますます衰弱しかねないので、何とか食事を摂ってほしく、トヨくんの好物を色々用意してマジックハンドで口元まで運んでみたり、親しい人が名前を呼んでみたり、色々な方法を試してみました。それでも食べなく、少し鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまいました。

 

職員さんとボランティアさんも何とか元気にならないか相談したり、トヨくんを見てくれる獣医さんを探したり、お世話をするため毎日のように訪れるほど皆さんは心配でいっぱいでした。

寝室に引きこもったままのトヨ

 

ボランティアさんが用意してくださったものの中で、犬猫用のドライフードを与えてみたら、少しクンクンと匂いをかいだらパクパク食べ始めました、フードの量は少ないがきちんと栄養とカロリーが凝縮しており、活動や生きるために必要なものが詰まっているので、ちゃんと食べてくれて皆さんホッとしていました。

 

25日、また職員さんとトヨくんを訪れました。初めての時と打って変わって、色々食べていました。大きなマスカットを美味しそうに食べていたり、ボランティアさんが採ってくれた山菜をもぐもぐ食べていたり、終わっても口をこっちに向けもっと頂戴とねだっているように見えました。とてもではないですが、元気そうで何よりです。

飲んだヤギミルクが付いて、鼻が白くなっているトヨ

 

そんなトヨくんのために、ボランティアさんが雨でぬかるんでしまった運動場を新しい木の板で張り直し作業を行いました。

私も含め、皆で置く場所をどこにどう置けばトヨくんが過ごしやすいかを話し合って決めました。

トヨくんが早く元気になれるようお薬を用意し、好物の蜜蝋と合わせて与えてみたところ、お薬に気付かずペロッと食べました。

その後、トヨくんのところから事務所へ帰ったところ、ボランティアさんから動画が送られてきていて、トヨくんが運動場に出ていました。

お薬が効いたのか少し後肢を引きずりながらプールの横までいき、トイレができるくらい踏ん張れるようになっていました。

動画を見た職員さんもとても喜んでいて期待が高まっていました。

 

トヨくんが元気に運動場で動き回っている姿が見られないのは残念ですが、職員さんやボランティアさんと一緒にエサを工夫したり、運動場の模様替えをしたり、色々な方法を試して回復に繋がるように考えていき、トヨくんが元気になっていく姿を見ると、喜びとやりがいを感じました。

 

インターンシップ生 H

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