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2019-10
クマとの共存をめざして動き出そう
- 2019-10-27 (日)
- くまもりNEWS
11月3日 東京シンポジウムにご参加ください!
いよいよ、東京シンポジウムが迫ってきました。
今年のテーマの1つは「クマとの共存」です。
スギ・ヒノキの人工林や開発により、生息地を終われ、西日本では絶滅の危機に追いやられているクマたちですが、「凶暴で、人を襲う動物」という誤ったレッテルを貼られ、今年も大量のクマたちが捕殺されています。
今年は、山の実りが悪い地域も多く、冬ごもりのために大量の食い込み(どんぐりなど)が必要なクマたちはさらに苦しい状況です。
「捕殺に頼るのではなく、生息地を保障し、クマと棲み分ける共存の道を進もう。」
クマを正しく理解し、付き合い方を学ぶことでほとんどの事故は防ぐことができます。
東京シンポジウムでは、特別講演として、昨年、顧問に就任いただいた野生動物写真家でネイチャーガイドの安藤誠顧問にご講演いただきます。
愛情を持って接するからこそわかるクマや野生動物たちの本当の姿を、美しい写真や映像とともにお話いただきます。全国各地で大人気の講演会です。
安藤顧問は、人間の無理解で捕殺されてしまうクマがたくさんいることに心を痛め、正しい知識を持ち、備えをすることでクマたちと共存できることを伝えていきたいと熱い気持ちから、クマとの共存のために22年間活動を続けてきた日本熊森協会の顧問にご就任いただきました。
兵庫県の本部からも、会長の室谷とクマ保全担当職員水見が参加し、森林保全、クマ保全の最新情報をお伝えします。
ぜひ、お友だちやご家族をお誘いいただきご参加いただきたいです。
第12回くまもり東京シンポジウム 【日時】2019年11月3日(日)13:00~16:00(開場12:30) 【参加費】500円 【会場】お茶の水女子大学共通講義棟2号館102号室 【申し込み先】日本熊森協会本部事務所 TEL:0798-22-4190 mail: contact@kumamori.org |
※座席に、限りがありますので、必ずお申込みください。
愛知県支部 大村秀章愛知県知事を表敬訪問
先月、発足したばかりの愛知県支部ですが、平子恵美支部長を先頭に、豊かな森を守る流れを愛知県でもつくろうと活発に動いています。
10月25日、支部立ち上げのご挨拶に愛知県知事の大村秀章知事を表敬訪問しました。
愛知県支部では、今後も、応援してくださる方の輪を広げながら、実践活動も含め、様々な活動をしていきたいと計画しています。
愛知県のみなさん、ぜひ、愛知県支部の活動にご参加ください。
【今後の活動】
11月23日(土)映画「大きな家~タイマグラの森の子どもたち~」
名古屋市 イーブルなごや 13時~
名古屋市 今池ガスビル 7階 14時~
大村知事とお会いして
10月25日、大村知事に表敬訪問をさせていただきました。
愛知県支部長 平子恵美 |
京都府 生息地を失ったクマが1400頭に激増のミステリー
以下、2019年9月30日京都新聞記事
「府内、16年前の4倍以上に 増えるツキノワグマ1400頭 」より
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京都府の森林面積は3426㎢で、98%が民有林です。
京都府には標高が1000メートルを超えるような高い山はありません。一番高い山は滋賀県境に位置する皆子山971mです。
人工林率は約38%で多くが放置されており、人工林の中に野生動物たちの食料はありません。
こんな京都府にも、ブナ・ミズナラの冷温帯気候に属する豊かな森が一部、残されていました。そこが、京都府のツキノワグマの生息地でした。
過去形にしたのは、21世紀になって、冷温帯の森が、ナラ枯れや地球温暖化、シカの食害によって一気に劣化してしまったからです。
数年もしないうちに、全く別の山に来たのかと思われるほど、林相が変化しました。
ミズナラの巨木が枯れてあちこちで倒れ、下層植生が消えて公園のようになり、昆虫が消滅していきました。
別の山かと思うほど一気に変貌した京都府芦生原生林2012、11、7撮影
枯れて倒れているのは、冬ごもり前のクマたちの食い込み用ドングリのミズナラ
臆病者のクマたちはもはや身を隠すところもなく、春の山菜、夏の昆虫、秋の木の実・・・食料は激減です。
生物の自然増加現象等を説明する際によく引き合いにだされるロジスティック曲線というのがあります。
横軸に経過時間、縦軸に個体数をとると、環境収容力にほど遠い段階では個体数は加速度的に増加しますが、飽和状態に近づくと増加率が減少し、ついに増えられなくなるというものです。
ロジスティック曲線
京都府の場合、環境収容力である生息地がどんどんと劣化して縮小していっているのですから、本来、クマは増えられないはずです。
16年間に4倍に増えたというのは京都府が、WMO(㈱野生動物保護管理事務所)に生息数推定計算を委託した結果の報告に基づくものだそうです。
京都府のツキノワグマはこれまで絶滅寸前種に指定され、狩猟も禁止されてきましたが、今回のWMOの報告を受け、絶滅寸前種の指定を外したり、環境省ガイドラインの800頭を越えたからとしてクマ狩猟を再開したりすることも考え始めるそうです。
この流れは、どこかとまったく同じです。そうです、隣接する兵庫県と、全く同じ流れです。兵庫県が京都府に伝えたのでしょうか。
ちなみに、兵庫県のクマが爆発増加していると言い出したのは、2011 年春、兵庫県森林動物研究センターの研究員で兵庫県立大学の助教授でもあった坂田宏志氏です。彼は、現在、公務員をやめて、㈱野生鳥獣対策連携センターの社長になって、環境省や地方自治体から請け負った仕事をしたり、WMOの下請けもしています。
クマは動物ですから、食べ物がないと生きていけません。餌場がどんどん狭められ失われていく中、生息数がどんどん増えていくなどあり得るのでしょうか。もし、そうなら、何を食べて増え出したのでしょうか。その辺のことが報告書に記述されていなければなりません。もしかして、行政がハンターや捕殺会社に依頼して大量に有害駆除し、谷底に投げ捨てられたままになっているシカの遺体?
もしそうなら、生態系の大攪乱を起こしている張本人は人間です。
熊森は、WMOの報告書を読んでみることにしました。(続く)
大型台風19号により東日本の21河川24か所が決壊し多くの住宅が水没 地球温暖化対策を問う
台風19号に思う
大型で非常に強い台風19号は、2019年10月12日午後7時前に静岡県の伊豆半島に上陸し、東海、関東、東北と進み、強風と大雨による大きな被害をもたらしました。被害にあわれたみなさんに、お見舞い申し上げます。
東京都心では瞬間的に40メートルを超える暴風を15年ぶりに観測しています。
神奈川の箱根では12日に降った雨の量が900ミリを超えて全国の観測史上1位を記録しました。
その結果、10月13日のニュースによると、21河川で24か所の堤防が決壊し、決壊まで行かなくても多くの場所で越水が見られたもようです。
水没した住宅地が次々とテレビニュースに映し出され、居住者はご無事だっただろうか、犬や猫たちは逃げおおせたのだろうかと、胸が痛みました。
いずれ水は引くでしょうが、その後の泥まみれの家の片づけを思うと気が遠くなりそうです。
テレビニュースのインタビューを見ていると、戸建て住宅の皆さんは高齢者が多く、とてもこの人たちの力だけでは片づけられないのではないかと思いました。国や地方自治体による大きな支援が必要です。
徳島新聞号外より
長野市在住の宮澤正義くまもり顧問のおうちは大丈夫でした。
地下鉄やリニア
このような洪水が、地下鉄や大深度地下を走るリニア中央新幹線に流れ込めば、一体どうなることか。復旧はもう不可能でしょう。
熊森は改めて、リニア中央新幹線の建設をやめるべきだと訴えたいです。こんなに災害の多い日本でリニア中央新幹線の建設推進をそそのかした黒幕は、日本経済の衰退を願う外国勢力ではないかと疑ってしまいます。(国民のみなさん、祖先から受け継いだすばらしい国土の横っ腹に、地下水脈を次々とぶちきって長い長い深穴をあけることに反対の声を挙げませんか)
ダムの緊急放流
それにしても、関東甲信越地方の河川上流にあるダムでは12日夜から13日未明にかけて大雨の真っ最中に次々と緊急放流を実施したということで、西日本豪雨の時のダムの緊急放流問題が生かされていないなあと思いました。緊急放流はダムが洪水調節機能を喪失する事態で、そんなことをすれば下流域で水位が急上昇するのは当然です。台風19号は来る前から、記録的な豪雨をもたらすと予測されていたのですから、ダムは空にして備えていたらよかったのにと思いますが、実際ダム放流の責任者になってみれば、その決断にはなかなか難しいものがあったのだろうと察します。
地球温暖化
こんな大型台風が、これから何度も日本列島を襲うようになるのでしょうか。たまりません。マスコミは、現象ばかりを報道しますが、近年、大型台風が頻発するようになった原因があるのなら、それも合わせて報道すべきです。今回の19号台風がかくも大型台風に成長したのは、日本近海27度という海水面の温度(台風発生場所は30度)
の高さも原因の一つだと言われています。地球温暖化を止めないとますます台風がエスカレートしていくのでしょうか。
CO2よりシベリア東部のメタンガス噴出による温暖化
地球温暖化に詳しい人に聞くと、今や地球温暖化の脅威はCO2ではなく、解け出した永久凍土から出てくるようになったメタンガスだそうです。メタンガスの温室効果はCO2の100倍と言われています。シベリア東部の海岸線ではメタンハイグレードが不安定化しメタンガスが噴出しているそうです。さらにエアコンなどに広く使われている代替フロンの温室効果はCO2の数百~数万倍と言われています。
マスコミのみなさんへ
日本のマスコミのみなさんには、野生動物大量捕殺問題を初め、全ての問題に対して、現象だけを国民に伝えるのではなく、原因と対策まで伝えていただきたいです。
もう一つ、もういい加減に人間至上主義から脱してほしいです。こういう災害時に、他の生き物たちがどうなったのかの報道が全くありません。人間のことばかり見てきたから、人間は地球環境を破壊できたのです。人間至上主義は人間を滅ぼす。
便利さよりも地球環境保全
今の暮らしは、以前と比べて格段に楽で便利になりましたが、その暮らしが、近い将来、地球の気温50度、海水温40度、植物は光合成が出来ず、食物連鎖は断ち切られ、海の中に住む生物もほぼ全てが消え生物の95%が死に絶えたという2億5000万年前の地球環境の再来をもたらすという説もあります。地球環境保全はプラスチックが海や海の生物を広域に汚染してしまっていることなども入れて、もう手遅れと個人的には感じています。しかし、マスコミが本当のことを伝えるようになれば、戦争中、「欲しがりません、勝つまでは」をやり抜いた我ら日本人は、経済はほどほどにして地球環境を子や孫に残そうと、欲望を押さえ始めると思います。地球人の良きお手本になれると思います。
強力な誘引物で山中のクマをおびき出し、無害グマを大量に有害捕殺している行政はアイヒマン?
奥山生息地が野生動物たちが棲めないまでに荒廃している西日本で、ツキノワグマを初めとする野生動物たちが罠に次々と捕獲され、銃や、電気、槍、ロープによる首絞め、炎天下放置などによって前代未聞の大量殺処分を受けています。
<西日本の2019年度8月末までのクマ殺処分数と放獣数>
全ての野生動物に自然豊かな生息地を保証することは、地球上で最強・最大の力を持つようになった私たち人間の責務です。
しかし、現実には、野生動物たちのすみかであった広大な山は、戦後、人間が針葉樹の単一造林に大きく造り変えてしまい、生き物の住めない死の山となっています。
熊森は、野生動物たちのために、そして私たち人間の水源の森確保のために、会結成以来23年間、奥山を、天然林に復元・再生し続けています。
また、大型野生動物と人間が昔のようにすみ分けて共存できるよう、21世紀の柵設置(=祖先のシシ垣にあたるもの)も、行政に訴え続けてきました。
しかし、行政は現在、動物を殺して数を低減させておけば、野生動物による被害がなくなるという短絡的なエリート研究者たちの言いなりです。
そこにはもはや、他生物の生命への畏敬の念や人としての倫理観は完全に失われてしまっています。
それにしてもどうしてこんなに大量のクマが有害捕殺されるのでしょうか。
わが国ではこれまで、人間に何の被害も出していないクマを有害捕殺することは、原則できませんでした。
しかし、今やっているのは、有害捕殺とは言いながら、実は、無害グマを大量に捕殺しているのです。
現在、シカやイノシシを捕獲するための罠も含めて、クマの大好物である米糠を誘引物として入れたおびただしい数の罠が設置されています。
山中にいるクマまでおびきだして、捕獲されたら、何の被害など出していない無害グマであっても、有害獣として行政が猟師や捕獲会社に殺処分させています。
箱罠にかかった哀れなクマ
0歳児グマもどんどん殺されています。0歳児の子グマのあどけなさかわいさを思い浮かべると、とても殺す気に等なれないはずですが・・・どうしてこんな残酷なことができるのでしょうか。
以下、山中伸弥京都大学教授のネット発言が参考になると思います。(以下、ネットから一部転載。)
人間は、特定の状況に置かれると、感覚が麻痺して、通常では考えられないようなひどい行動におよぶ場合があります。そのことを示したのが、アイヒマン(ナチス将校で、第二次大戦中、強制収容所におけるユダヤ人大量虐殺の責任者。後に死刑に処せられた)実験です。
内気で、仕事熱心な人物が、どうして残虐になり得たのか。それを検証したのです。
略
ところが、白衣を着て、いかにも権威のありそうな監督役の実験者から「続行してください」とか「あなたに責任はない」と堂々と言われ、教師役はボタンを押すのをためらいながらも、どんどんエスカレートして、実験を継続したんです。(権威のある人のもとで、人間は際限なく残酷になってしまう。)
ひとりで研究しているだけなら、生命に対する恐れを感じて、慎重に研究する。そういう感覚はどの研究者にもあると思います。
ところがチームになって、責任が分散されると、慎重な姿勢は弱まって、大胆になってしまう。たとえルールがあっても、そのルールを拡大解釈してしまう。気がついたらとんでもないことをしていたというのは、実際、科学の歴史だけでなく、人類の歴史上、何度も起きたし、これからも起こりえます。
チームを組んで研究することによって責任が分散され、倫理観が弱まって、危険な領域へ侵入する誘惑に歯止めが利きにくくなっているのではないか。歯止めとして有効なのは、透明性を高めることだと思います。密室で研究しないことです。研究の方向性について適宜公表し、さまざまな人の意見を取り入れながら進めていくことが重要ですし、そうした意見交換をしやすい仕組みを維持することも大切だと思います。
熊森から
山中教授の言葉はまさに言い得て妙です。
神の手で絶妙のバランスを保ってきた自然界に、現在、人間が手を入れてぐちゃぐちゃにしています。
シカやイノシシと比べて生息数が2ケタも小さいクマたちに、今のようなだまし討ち的な殺害を加え続けていたら、そのしっぺ返しは必ずや全生態系や人間に来ると確信します。
行政や研究者の皆さんは、大量殺害理論とその実態を隠さずに公表して、このような対応の仕方でいいのか、多くの国民の声を聞いてみるべきです。
【速報】石川県支部が金沢市長に要望書を提出
森林環境税で放置人工林の天然林化を!
【兵庫県本部】動物たちの餌場復元のため、奥山で実のなる樹の大苗を植えました!
今年2019年は、2010年ほど皆無ではないものの、全国的に、クマたちの食糧になる液果類やドングリなどの堅果類の実りが悪く、クマたちは夏から秋まで冬籠りに向けての食糧探しに必死です。
兵庫県では平成29年から、推定生息数の3倍にも等しい膨大な数のクマ捕獲罠を春から秋まで集落や田畑周辺200メートルゾーン内に常設していることもあって、今年は9月末時点で、すでに91頭ものクマが、大量捕殺されています。
一刻も早く、かつて奥山に存在したクマなどの野生動物の餌場復元が必要です。
2019年10月5日、熊森は、公益財団法人奥山保全トラストが兵庫県宍粟市に所有する120ヘクタールの山林で、財団が兵庫県緑税を使って2017年10月に伐採した0.78ヘクタールの人工林部分に、4本の実のなる樹を植樹しました。今回植えたのは、ヤマグリ1本、ヤマグワ1本、ヤマボウシ1本、ヤマザクラ1本の計4本で、全て高さ2m以上の大苗です。大苗は、植えた年の翌年からすぐに実を成らすので、即、野生動物が餌場として利用できますし、成長も早い上、シカが植樹地に入ってしまっても、成長点を食べられない為、枯れません。
財団のこの所有地には、2012年から実のなる樹を植樹してきましたが、ここで大苗を植えるのは初めてです。植樹には、本部から室谷会長、スタッフの水見、兵庫県の熊森森保全部会メンバーのボランティア6名、そして遠方からも、熊森東京都支部から1名、奈良県在住の非会員の方1名が参加してくださいました。皆様、ありがとうございました!
大苗4本植樹完了
以下は、今回の植樹会に東京から参加してくださった、熊森東京都支部の若い女性(1児の母)の感想です。
「東京都支部で活動しているMです。本部が実のなる木の大苗を植樹するということで、参加しました。本部の方たちとは現地に向かう車内のなかで、和気あいあいと情報交換しました。室谷会長から、植樹地のある兵庫県宍粟市は、山林の73%がスギ・ヒノキ人工林と高く、このような所で落葉広葉樹林に戻していくモデルを作っていくことの重要性を教えていただきました。
今年の山は山ビルが多いということで、現地到着後、長靴の隙間にも養生テープをぐるぐる巻きにして準備万端で植樹地に向かいました。(本日の山ビル被害者ゼロ)
山からは地元の人達が飲み水にしているきれいな川が流れ出ていて、地元の方たちが今回の植樹会のためにかけてくださった手作りの橋がかけられており、歩きやすかったです。
頑丈なシカ柵ネットで覆われた植樹地ですが、冬の積雪でネットが倒れることもあるそうで、積雪前にはネットを外すなど、手間がかかる作業が必要だということもわかりました。
3人一組になり1本の大きな苗木を植えました。私は、ヤマグワの樹を植えました。植樹後、支柱と札を付けました。
来年夏には実がつくということで動物たちの餌になってくれるよう、この後、大きくすくすくと育ってほしいです。
シカの食べた植物の食痕や、シカが樹に角を擦りつけた跡などを見せていただき、動物がこの山に棲んでいるんだという、生き物の息吹を感じて嬉しくなりました。みなさんテキパキとわからないことを教えてくださり、遠足のように楽しく、あっという間の1日でした。
11月になれば、この場所に、森林組合によって実のなる木の3年苗が数百本植樹される予定だそうです。
また機会があったら参加してみたいです。
今後、東京都支部でもこのような活動ができないか、場所をさがしてみようと思いました。
ヒグマを追って、知床から釧路湿原を行く
以下、赤松正雄顧問のブログからです。
2019,9,13 それはもう、まさに名優の登場でした。
舞台の下でその登場を待ちわびる人々の前に、ヒグマが岩尾別川の上流から現れたのは午後4時過ぎ。
今か今かと息を呑んでいたプロカメラマンや俄かカメラ好き達が、急ぎ望遠レンズやスマホを覗いたり、かかげたのを尻目に、川の浅瀬を縦横にカラフト
マス(一般的にはシャケと呼ぶ)を探して、ヒグマは動き回っています。
初めて見るヒグマの立ち居振る舞いに、私はただただ目を凝らし、唾を飲み込むだけでした。
日本熊森協会の顧問に私がなってほぼ20年。
森の荒廃がクマの生息状況に予兆として現れるーこのことを人々に訴え続けてきながら、クマを目の前にすることは初めての経験でした。
▼著名な動物写真家であり、プロのツアーガイドである安藤誠さんの講演を聴いたのはほぼ一年前のこと。
熊森協会の顧問に彼が就任されたのを披露する意味も込められた企画でした。
その印象はまことに強烈なものでした。「日常的な奇跡の連続が我々の人生、あだやおろそかに生きてはいけない」というメッセージ。
これは野生動物たちの人間と全く同じと言っていい振る舞いを収めた彼の写真や映像と共に私の脳裏に刻まれました。
長年の別離ののちに久方ぶりに邂逅した熊の兄弟が感激して二本足で立って睦み合う姿。
笑う狐やあくびをするフクロウの表情。
白雪のなかを舞う丹頂鶴など。
私がその直後に始めたブログでの回顧録に『日常的奇跡の軌跡』と名付けたのも、まさにこの時の安藤さんの講演の影響でした
▼彼は釧路空港から少し離れた阿寒郡鶴居村でヒッコリーウインドという名のウイルダネスロッジ(原野の中の宿)を経営しています。
20年ほど前からの、徹底したリサーチと鍛錬されぬかれたガイドぶりは海外での評価も高く、多くの人々が訪れます。
初めて講演を聴いて以来、熊森協会の室谷悠子会長、事務局の水見竜哉氏らと共にそのロッジを訪れ、知床や釧路湿原にヒグマを追う旅を夢見てきましたが、ついに実現をさせることができたのです。
知床に往復8時間ほどかけて走った第一日目に続き二日目は、鶴居村にほど近い釧路湿原聖域への探索行でした。
雄大そのものの草原のなかにひっそりと姿を現した湿地と沼は、絵画の中の世界でしか目にしたことのない幻想的な風景でした。
また、名高いチルワツナイ川の蛇行を小高い丘の上から見た時は、10年ほど前にオーストリアに行った際に見た風景に既視感を持ちました
▼二日目の夜には、安藤さんを求めて、釧路周辺や札幌から車で片道5時間近くもかけて走ってきた青年たちを前に、ミニ講演会が開かれました。
ヒグマと人間との間の無理解からくる争いのもたらす悲劇を止めようと、真剣な語らいが夜遅くまで繰り広げられました。
カメラを通じて、野生動物たちと言葉を交わすことができるほどの自然人・安藤さんの話を通じて、〝まやかしの人間主義〟こそヒグマの敵だと私は実感しました。
「人間は自然と離れてはいけない。なぜかというと、人間が作ったものばかりに囲まれていると、本質、本物が見えなくなる」し、「自然はごまかさないし、嘘がない」との言葉に心底から共鳴します。
クマを守れと強調するたびに、私は「人間とクマとどっちが大事なのか」との反論に出くわしてきました。
その都度、「どっちも大事だ、人と野生動物の共生こそ忘れてはならない」と言い返してきました。
今そこに、滅法心強い助っ人が登場して、大いなる喜びに浸っています。
(2019-9-15)