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2019-11-03

【北海道標茶町】家畜被害が沈静するも、いまだに捕獲罠が設置され、無実のヒグマが捕殺されていく

今夏、北海道標茶町の牧場で、ヒグマが乳牛を襲う事件が相次ぎました。

NHK2019年8月8日ほっとNEWS北海道

どうしてこのような事件が発生したのでしょうか。

事件を起こしたヒグマはまだ捕獲されておらず、今もなお、捕獲罠が設置されたままです。

北海道では捕獲されたヒグマの放獣体制がいまだに皆無のため、これまでこの罠に誤ってかかってしまった無関係のヒグマが5頭も捕殺されています。

このことを問題視した熊森本部が、標茶町の担当者に電話で問い合わせました。

 

〈以下、担当者とのやり取り〉

熊森:今年、8月から9月にかけて、ヒグマによる乳牛被害のニュースを見ました。現在も被害は続いているんですか?

 

標茶町担当者:8月から発生し、9月18日を最後に被害は止まりました。

 

熊森:具体的にどんな被害があったんですか?ヒグマが乳牛を襲って食べたのですか、それとも圧死ですか。

 

標茶町担当者:今回、放牧中にヒグマに襲われて死亡したと思われる乳牛は12頭です。死因は、ヒグマにはたかれたり引っかかれたりしたことで首の頸動脈や脇を損傷して失血死したものがほとんどです。確実にヒグマが食べたと思われる乳牛は1頭です。発見されたときその乳牛はかなり腐敗が進んでいましたから、ヒグマに襲われて死んだのではなく、何らかの原因で病死して腐敗していた乳牛をヒグマが食べに来た可能性もあります。

また、一命はとりとめましたが、ヒグマに前足ではたかれたのか、ヒグマの爪痕がついてケガを負った乳牛や、その爪痕から感染症を引き起こしてしまった乳牛も13頭います。(ということは25頭もの乳牛がヒグマの被害に遭ったわけだ)

 

ヒグマの攻撃を受けたと思われる乳牛の様子。(NHKほっと北海道8月8日)

 

熊森:今回のヒグマは、何のために乳牛を襲ったのでしょうか?食べるためではないようですね。

 

標茶町担当者:詳しい原因は分かりません。猟友会の方のお話では、手負いグマなのではないかという推測もあります。真相はわかりません。

 

熊森:今回これらの乳牛を襲ったヒグマは特定されているんですか?

 

標茶町担当者:はい、体重300㎏近い1頭のオスの大きなヒグマだと思われます。

今回の被害があった牧場には、肉球の足幅18cmという大きなクマの痕跡がありました。標茶町は町域の中央を釧路川が縦断していますが、この川の西と東でヒグマによる乳牛被害が立て続けに発生した訳です。被害にあった乳牛の傷跡が同じことと、牧野の周囲に張り巡らされた鉄線の先に付いていた体毛のDNA鑑定結果からも、川の西・東とも事件を起こしたのは同じクマであることがわかりました。実際、被害現場付近に自動撮影カメラを設置したところ、大きなヒグマが撮影されました。

 

熊森:町のHPに、クマの家畜被害があった場所をプロットした地図が出てきますが、その現場に罠をかけているんですか?

 

標茶町担当者:はい、家畜被害があったその現場に罠をかけています。現在も5基設置してます。

 

クリックすると、大きく見られます。

 

熊森:そのヒグマは罠に捕獲されたんですか?

 

標茶町担当者:これまで、5頭のクマを捕獲しましたが、事件にかかわったクマはまだ捕獲されていません。

 

熊森:誤捕獲された5頭のクマはその後どうなりましたか?

 

標茶町担当者:すべて、殺処分しました。

 

熊森:それは、むちゃくちゃですよ。事件に関与していないクマだと知りながら殺処分ですか。山に返してあげるべきじゃないですか。問題を引き起こしたクマがかかるまで、罠を設置し無関係のヒグマを獲り続けるんですか?

 

標茶町担当者:はい。来年も、同じ事件が起きるかもしれませんので。

 

熊森:北海道のクマ管理計画を読まれましたか?原則はクマを殺さないでクマ対策を行うことになっていますよ。どうしても捕殺が必要な場合は問題グマのみ確実に捕殺すべきで、標茶町のやり方は、北海道のクマ管理計画に反して、乱獲になっていると思います。事件に関与していないクマが捕獲された場合、放獣してやれませんか。

 

標茶町担当者:海外と違って、北海道にはヒグマの放獣体制がないのでむずかしいです。今後もこうした被害が発生してはなりません。

 

熊森:捕獲罠を設置して問題グマがかかるまで無実のヒグマを何頭も捕り続けるのですか?それはもはや共存とは言えません。ヒグマが牧野に入ってきた侵入経路を探して、電気柵などでそこを通れないようにしておくことが必要です。人間側が知能を使って被害防除を考えないと、罠設置だけでは問題は解決しないですよ。電気柵は設置されていますか?

 

標茶町担当者:していません。

 

熊森:ぜひ、柵を設置してください。このような事件が今後起きないようにするには、まず被害防除です。9月に標茶での事態がおさまってから、近隣の自治体で同様の被害が発生していませんか?また、標茶の周辺自治体で、このDNAをもったヒグマが捕殺されていませんか。

 

標茶町担当者:今回の事件は道内でも非常に珍しいケースのようで、他の自治体では起きていません。隣接の釧路市、厚岸町、鶴居村、弟子屈町には、このヒグマの情報をお知らせして捕獲があったら連絡してもらう体制をとっています。今のところ、その特徴を持ったヒグマの捕獲はないようです。

 

熊森:中標津町や、別海町ではどうですか?

 

標茶町担当者:隣の根室振興局になりますので聞いてません。

 

熊森:ヒグマはそれぐらい移動するので、その地域にも聞いておいた方がいいと思います。

 

標茶町担当者:たしかに確認したほうがいいですね。聞いてみます。

 

熊森:昨年、羅臼の方で飼い犬がクマにやられて死亡する事件が相次ぎましたが、その時のクマが屈斜路・阿寒の山々を伝って標茶に入ってきた可能性もあります。

 

標茶町担当者:じつは、羅臼町の担当の方が、今回の乳牛被害のニュースを見られて電話してこられたんです。羅臼でも同様の問題が昨年あったと。その時のクマではないか?と。その時のヒグマはうちの町で出ているヒグマよりもっと小さいクマだということで、話を聞く限り別グマです。(羅臼町の件は、飼い犬がヒグマに食べられる瞬間を家主が見ておられたので、ヒグマの特徴が把握できたそうです)。羅臼でも、そのヒグマの捕獲にはまだ至っていないそうす。

 

熊森:ぜひ、周辺自治体のみなさんで連絡を取りあっていっていただきたいです。ただ、今設置されている罠は、今被害が落ち着いているのですから、蓋を閉めるか誘因物を除去していただきたいです。別のクマを引き寄せますし、無実の無害グマを次々と獲って殺処分していくのは問題です。

 

標茶町担当者:また内部で話して、相談します。

 

〈熊森から〉

標茶町担当者様におかれましては、お忙しい中、当方からの電話に丁寧に対応していただき、誠にありがとうございました。

罠閉めをだいぶんお願いしたのですが、今年は雪が降るまでこのまま罠を設置するそうです。

これだけの被害があると、酪農家のみなさんの怒りは相当強いと推察します。しかし、罠にかかったクマが事件と無関係なクマであるとわかっていながら全て殺処分というのは、生態系保全上、倫理上、教育上、大変問題です。誤捕獲グマは、車の中からロープを引いて罠の扉を開けるなど、放獣時にけが人が出ないように細心の注意を払って放獣すべきでしょう。みなさんはどう思われますか。賛同していただける方は、6頭目の無実のヒグマが殺処分される前に、声を標茶町に届けてください。

 

【連絡先】

標茶町農林課 住所:〒088-2312 北海道川上郡標茶町川上4丁目2

TEL: 015-485-2111 FAX:015-485-4111

お問合せリンク:https://town.shibecha.hokkaido.jp/contact/index.html

 

 

 

10月27日 ナショナル・トラストに成功した滋賀県北部トチノキ巨木群観察会

今も、クマが棲める森に感激~2019.10.27~

ナショナル・トラストした巨木群の前で記念撮影。

 

業者に買われて伐採されそうになっていた滋賀県長浜市の奥山に、人知れず存在するトチノキ巨木群数十本。

「びわ湖源流の森林文化を守る会」は、地元のみなさんと力を合わせて、これらの巨木群を2年半に亘る裁判とナショナル・トラストによって未来永劫に守り抜きました。もちろん日本熊森協会も、精一杯協力しました。

 

この日は嬉しいお披露目観察会です。

兵庫勢は、巨木もさることながら、クマたちが安定して棲んでいる森だということで、どんな森か1回見ておきたいと思い参加しました。

 

嘉田由紀子元滋賀県知事(現参議院議員・熊森顧問)やトチノキ裁判で弁護士として巨木所有者の代理人も務めた日本熊森協会の室谷悠子会長、村上滋賀県支部長ら支部員、守る会の共同代表の野間直彦滋賀県立大学准教授、岡田直紀京都大学准教授、ナショナル・トラストを成功させるために寄付してくださった方々など30名がJR木ノ本駅に集まりました。遠く埼玉県から来られた方もおられました。

チャーターされた定員いっぱいのバスに乗って奥山に向け出発です。

車中、守る会の代表である小松さんの挨拶、室谷悠子会長から裁判の経緯、嘉田参議院議員からは保全に成功するまでの裏話・・・どれも大変興味深かったです。自然を守るために本気で闘った滋賀県のメンバーをすごい人たちだと改めて思いました。お話を聞いているうちに、もうここからはバスが入れないという地点に来ました。この後は、ひたすら歩きです。

それにしても、滋賀県のこんな山奥にまで、スギがびっしり植えられて放置されているのには驚きました。

スギの放置人工林

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦後、拡大造林政策が始まったころ、ある研究者が、スギの人工林は自然林より水源涵養能力が高いという論文を発表したため、それを信じてみんなで競って滋賀県民はスギを植えたんですと嘉田さんに教えてもらいました。いつの世でも、間違ったことを発表する学者の罪は本当に大きい。

奥に入っていくと、20年前の兵庫県の森とそっくりのなつかしい豊かな自然林が目の前に現れました。

 

下層植生も水量も豊かで、絵のように美しい自然林

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「滋賀県には、まだこんな森が残っていたんですか!」

「これはすごい!まさに、クマの楽園だ」

私たち兵庫県からの参加者は、目を見張りました。

しかし、滋賀県でもこんな森が残っているのは、北部だけで、高島市の奥山などは、もう下層植生も昆虫も消えてしまっているということです。

一見豊かに見えるこの森も、実は、冬籠り前のクマたちのドングリの餌となるミズナラが、ナラ枯れでほぼ全て枯れてしまっているそうです。足元には、ミズナラの稚樹が何本か芽生えていましたが、育つのかどうかはわかりません。

ミズナラの稚樹

 

 

 

 

 

 

まだ少しですが、ここにもシカが入り始めているということで、少しシカ糞がありました。この森が今後どうなっていくのか不安ですが、とにかくこの日は皆で今もクマの棲める森を楽しませてもらうことにしました。

今年は、ブナ・ミズナラが凶作ですが、何とこの森にはオニグルミの木が何本かあるのです。よかった、クマたちの食べ物がまだ残っていたのです。クマ棚がしっかりとできていました。

オニグルミにできたクマ棚

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オニグルミの木の下には、クマにボキボキに折られた太い枝が大量に落ちていました。さすがにオニグルミの木も危機感を感じたのでしょう。折られることを免れた樹上の枝には、まるで春のように黄緑色の若葉があちこちから芽吹いていました。

 

草原もところどころにあって、様々な草花が咲いていました。ここは雪が3メートル積もるという豪雪地帯だそうです。草原のあるところは、雪崩が毎年起きる場所です。宮澤正義先生が、いつも、クマが季節ごとの食料を得るためには、森があるだけではダメで、川はもちろん、草原や湿地や様々な地形が必要であるとよく語っておられたのを思い出しました。まさにこの森は、そのような場所がすべてそろった自然の森です。

雪崩地形にできた草原

 

 

 

 

 

 

広葉樹林の森の保水力は、さすがにすごいです。

 

 

 

 

 

 

途中何度か川を渡りました。水量が多く、手を引いてもらわなければ渡れない場所も何か所かありました。

昼食後も、まだ歩くのですかと言いたくなるほど奥に進んでいきました。そしてついに到着。トチノキの巨木です。

ナショナル・トラストしたトチの巨木

 

 

 

 

 

 

何百年生きた巨木には、何とも言えない迫力と神々しさがあります。

 

斜め上にあるのは、ケンポナシの巨木です。これも、ナショナル・トラストした巨木のうちの1本です。

急斜面でしたが、室谷会長がさっさと登って行きました。大きな洞があって、木の下にはクマの糞があったそうです。

ケンポナシの巨木。クマが休める大きな洞がありました。

 

巨木の根元に、液果類を食べた後のクマのふん。

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり、この奥山の森には、今もクマが棲んでいます。

ここには、まだまだ私たち自然保護団体が守った巨木があと数十本あるようですが、2本見るだけで大変でした。

残りの巨木群は、山岳系の人でないといけないような場所にあるようで、指でどのあたりかだけ教えてもらいました。

この日、ずいぶん歩きましたが、疲れよりも満足感でいっぱいでした。

クマの棲める本物の森を堪能しました。

 

下見もしっかりして完璧にお世話くださったスタッフのみなさんに心から感謝申し上げます。

私有林なのに、特別に私たちに入山許可を出してくださった山主のみなさんたちにも感謝です。(完)

豊かで美しい湖北の森よ永遠に!

 

 

 

 

 

 

 

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