くまもりHOMEへ

ホーム > アーカイブ > 2019-11-08

2019-11-08

西中国山地も山が貧しくなっており、奥山からクマの姿が消えている 2019,11,7中国放送

自動撮影カメラや痕跡調査によって、東中国山地の奥山を23年間調査し続けてきた熊森本部は、人間活動による奥山劣化が激しくなっており、食料や隠れ場所を失ったクマがしかたなく里山に移動している。もはやクマは奥山に棲んでいないことを、かねてから指摘し続けてきました。

 

しかし、残念ながら、兵庫県庁も兵庫県のマスコミも、耳を傾けようとしてくれませんでした。なぜ、クマが人里に出て来るようになったのか、根本となる原因の特定を間違えば、対策は全て無意味になります。

 

兵庫県森林動物研究センターの権威ある研究者の指摘する原因説は、あまりにも人間中心であり、残念ながら、現地調査不足です。責任を全てクマに負わせた身勝手な学説と言わねばなりません。

 

「なぜクマが人里に出てくるようになったのか」
(横山真弓氏の原因5説)

1、クマ数増加

2、クマによる生息地拡大

3、クマによる味しめ

4、クマによる人なめ

5、里山放置

 

こんな中、中国テレビが、西中国山地の奥山劣化により、クマが本来の奥山から消えていることを報道しました。

 

現場第一主義で利権抜き、真実を語り続けている広島県在住の生態学者の声を、多くの国民にも聞いていただきたいです。

 

11/7(木) 20:19配信 中国放送より一部転載

「山が貧しくなっている」広島フィールドミュージアム 金井塚務代表)

 

広島県内で人里に現れ、捕獲されたツキノワグマの数をグラフで示します。2011年は年間16頭でしたが、その後、増加傾向が続いていて、ことしは先月末の時点ですでに61頭にのぼっています。

 

 

 

 

 

 

 

なぜ、クマは人里に姿を現すケースが増えているのか。その背景を知るために、長年、クマの生態を研究している「広島フィールドミュージアム」代表の金井塚務さんと西中国山地の細見谷渓畔林を訪ねました。

クマが好むドングリなどの木の実は、落葉広葉樹にできますが、昭和20年代から30年代の森林開発で針葉樹が増え、木の実は減っているといいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

「たくさんなって、たくさん食べられる状況の中で、どんぐりは重要なんですよ。本来で言えば、もっと重要なものがあったんですよ。それが魚なんです。渓流魚。」(広島フィールドミュージアム 金井塚務代表)

 

山林を流れる小川には、渓流魚のゴギが泳いでいました。金井塚さんによると、今はゴギの産卵期にあたり、クマは浅瀬に集まるゴギを狙って食べます。しかし、そのゴギも砂防ダム建設などの影響で減っているといいます。

「ものすごい少ない。砂防ダムを支流に作って、本流にダムを作って循環を止めてるから魚も行き来できない。山がそれだけ貧しくなってんだよね。」(広島フィールドミュージアム 金井塚務代表)

 

金井塚さんは、細見谷渓畔林に監視カメラを設置し、クマの生態を調査しています。今回、10台のカメラで撮影された2週間分の映像を回収しましたが、クマは全く映っていませんでした。これまでおよそ15年間の調査で、初めてのことだといいます。

「どんどん本来の生息場所であったところからいなくなっている。出て行っちゃっている。」

 

 

 

 

 

 

 

 

金井塚さんは木の実や渓流魚などのエサが不足していることを背景に、クマの生息範囲が広がり、人里に及びつつあるとみています。ツキノワグマは、人を襲うケースがある一方で、絶滅危惧種にも指定されています。金井塚さんはクマが人里を離れ、本来の生息地に戻れるように、山林の再生を進めることも大切だと話しています。

 

熊森から

中国テレビさん、戦後の林野庁の拡大造林政策や建設省(国交省)のダム開発によって、奥山にひっそりと棲んでいたクマたちが人里に追い出されたことを報道してくださってありがとうございます。

 

ただし、クマに人間を襲う習性はありません。あくまで人身事故であって、「襲う」という言葉を使わないようにしていただきたいと要望します。この間違ったマスコミ言葉の使用によって、クマを危険と誤解する人達が増え、殺処分が当然視される国になってしまっています。

兵庫県に同調か 京都府行政が無害グマを大量殺処分 9月末クマ捕殺数過去最多110頭

3年前から近畿地方では、兵庫県以外に京都府でも、前代未聞、クマを大量に捕殺しています。

 

そのバックには、調査委託した業者からの、京都府におけるクマの推定生息数が激増しているという報告があります。(熊森はかれらの推定数計算方法に、根本的な疑問を持っています。広域を隠れて動くクマの生息数など、人間にわかるものではありません。しかし、数字化されると科学的だと誤解して信じる人が増えるので困ったものです)

 

京都府としてはこの報告書を信じ、農作物などに被害を出したクマを捕殺するこれまでの有害捕殺に代わって、平成29年から「被害未然防止捕獲」という名の大量捕殺法を導入しています。

 

更にクマ数を減らそうと、京都府は絶滅寸前種として平成14年から禁止してきたクマ狩猟を再開する方向にまで進んでいます。

 

どうして京都府は兵庫県とまるで同じ道を歩んで行くのでしょうか。

 

先に捕獲強化体制を敷いた兵庫県の影響を受け、同調しているのでしょうか。兵庫県が音頭を取って、京都府、大阪府、鳥取県、岡山県の2府3県で、2018年からツキノワグマについて広域連携をということで、「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会」を立ち上げました(2018年10月30日設立総会、於:兵庫県県民会館亀の間、担当課:兵庫県農政環境部環境創造局鳥獣対策課)。

 

以下は、日本学術会議のHPに掲載されている兵庫県森林動物研究センターの横山真弓研究員の「兵庫県における野生動物管理の体制」という資料です。「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会による個体群管理への取り組み」が紹介されています。

兵庫県立大学・兵庫県森林動物研究センター横山真弓研究員「学術会議 兵庫県における野生動物管理体制」より引用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この図を見ると、横山研究員が、兵庫県の鳥獣対策を周りの府県に広げていこうとしている同調圧力を感じます。

 

この協議会で広域での個体数推定や被害対策等を定めた「広域保護管理指針」を取りまとめ、平成33年度に各府県が策定する次期ツキノワグマ保護(又は管理)計画に反映させる予定だそうです。

 

尚、この協議会は、私たちの税金で運営されているにもかかわらず、設立総会も今後の協議会も、マスコミの傍聴は認めるが、日本熊森協会の傍聴は認めないという回答が兵庫県庁担当部署からなされています。27年間クマ問題を研究し、クマとの共存のために実践活動を推進してきた当協会を排除するとは、どういうことでしょうか。

長年にわたるクマ研究団体として、熊森はこの協議会の科学部会委員就任を希望しましたが、兵庫県に拒否されました。野生動物保全に関わる重要な政策決定が密室で行われる形になってしまっているのは大問題です。熊森は学術論文を出していない博士号を持っていない。よって参加できないとこれまで兵庫県に言われてきました。しかし、日本に今もクマが残っているのは、研究者が活躍したからではなく、人々のクマへの共感であり、殺生を避ける文化です。

 

一方、西中国山地3県の科学部会は、ツキノワグマの本来の生息地は劣化し続けており、目撃数や捕獲数が増えたものの、これはドーナツ化現象であり、ツキノワグマ推定生息数の総数は微減でクマは危機的状況にあると発表しており、熊森協会と見解が一致しています。

真実はひとつのはずですが、府県行政がどの研究者の見解を採用するかによって、クマ対応は正反対となります。

 

今回の京都府新聞記事「増えるツキノワグマ1400頭」を見ると、京都府は生息数が増加しているという兵庫県森林動物研究センター研究者と同じ結論を採用したことになります。

 

しかし、京都府の山を長年見てきた熊森協会としては、ミズナラのドングリや昆虫などの重要な食料を失った京都府のツキノワグマが何故激増できるのか、万一激増しているのなら何を食べているのか、全くのミステリーで腑に落ちないことが多々あります。もし、人間が大量に山に放置している有害捕殺後のシカの死肉を食べて増えてるのであれば、責任を問われるのは人間の方です。

 

10月17日、室谷会長ら熊森本部3名、熊森京都府支部3名、長年熊森を指導してくださって京都府在住の研究者の総勢7名で、担当部署である京都府農村振興課(注:京都府では今年から、クマは農村振興課?!が担当することになった)を訪ねました。ありがたいことに、新聞記者が同席してくださいました。

 

どこの行政もそうですが、行政担当者はふつう3年ごとに部署が変わるため、「春からこの部署に来ました」などと、新任が担当することが多くあります。自然界のことはわからないことが多すぎるため、3年間の担当期間では行政担当者はとても研究者に物言えるような見識までは持てません。結果、良くわからないので、委託した研究者の結論を信じるしかないというのが、現状のようです。

 

春の時点で、銃によるクマ捕殺許可証を多発し、罠に誤捕獲されたクマを大量殺処分していた京都府

京都府はクマの被害未然防止捕殺という名の乱獲をやめるよう担当者たちに訴える室谷会長と水見研究員於:京都府庁

 

 

 

 

年々捕殺数を増加させている京都府(注:2019年は9月末現在の捕殺数)(クリックで大きくなります)

 

担当者との話で、以下のような京都府のクマ捕殺体制の問題点が明らかになりました。

1、人間活動により荒廃した奥山生息地が、放置されたままである。スギやヒノキの放置人工林の自然林化に取り組むべきである。(共存に一番大切な生息地保障がなされていない)

2、まだクマが出ていない4月の段階で、すでに捕獲者(猟師)に、銃によるクマ駆除許可を大量に出している。集落や田畑から200m以内に設置された、シカ・イノシシを捕獲するための無数の米糠誘引剤入りの箱罠・くくり罠の常設罠にクマをおびき寄せている。かかったからとして、何の被害も出していない誤捕獲グマをすべて殺処分している。(倫理観の欠如)

3、京都府はクマ保護計画という名の計画を作成している。しかし、中身は保護の観点が抜け落ちた完全な管理計画であり、「被害未然防止捕獲」という名目で、実態としては個体数調整捕殺をどんどん行っている。(中身と実態が真逆の行政言葉はおかしい)

4、これだけ多くのクマを駆除しているにもかかわらず、奥山の本来のクマ生息地で、ナラ枯れをはじめ、シカの食害や地球温暖化による下層植生の衰退が進み、奥山にクマが生息できる環境がもはやないことを把握していない。(業者や猟師に丸投げ対応になっていないか)

5、人間に被害を与えられるはずもない赤ちゃんグマまで、母子ともに殺処分している。(3つグマ獲るなは、猟師でさえ守ってきた掟です)

 

京都府 2019年9月末までの捕殺グマの体重別頭数(熊森がグラフ化)

 

今年は、夏の段階で山にクマの食べるものが無く、子グマや痩せたクマ、体格の小さいクマがたくさん駆除されている。

(クリックで大きくなります)

 

特に、1に関しては箱罠だけではなく、無数に設置されたくくり罠に間違ってかかってしまったクマまで、全頭殺処分されており、兵庫県同様の最悪の無差別捕殺といえます。

 

これらの捕殺実態は、これまた兵庫県同様、京都府民に全く知らされておらず、同席した熊森京都府支部会員たちも、大きなショックを受けていました。

このような人としての倫理観が欠如した残虐極まりない乱獲をやめさせるためには、多くの人達がこの事実を知り、声を挙げるしかありません。

フィード

Return to page top