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2019-11-10
ツキノワグマによる人身事故125件(死亡1名) 9月末までに3453頭を捕殺 熊森が緊急声明
- 2019-11-10 (日)
- くまもりNEWS
2019年秋 熊森緊急声明
クマは人など襲いません
(マスコミのみなさんは、襲うという間違った表現をやめてください。この誤解によって、殺されなくてもいいクマが大量に殺されているのです。)
人身事故を防ぐためにも、クマに寛容であってください!
生きるのに必死のクマを見守ってやってください
不要な柿や豊作の里のドングリは、場所的に可能ならクマに与えてやってください
11月8日のNHKニュースによると、今年4月以降、全国でツキノワグマによる人身事故は125件です。山の実りゼロというあり得ない異常年だった2010年(147件)に次ぐ多さです。気仙沼市では死亡事故も1件起きました。
都府県別には、新潟が17人と最も多く、次いで岩手が16人、秋田と岐阜が13人、富山が9人、福島が8人、福井と長野が7人となっています。
都府県のうち75%に当たる24の府県が「クマの出没が増えている」と回答、半数を超える17の都府県では「市街地の中心部など、平年なら出没がみられない地区で出没しています。
捕殺されるツキノワグマの数もうなぎ上り。
遅い遅い環境省の速報値ですが、本日やっと9月末までのツキノワグマ全国捕殺数集計が発表されました。
その数何と、3453頭!
もうだめだ
一体、この国は、今年、何頭のツキノワグマを殺すつもりですか。
こんなことでは、共存などできません。
ツキノワグマによる人身事故の多くは、ひっかき傷です。
ツキノワグマは冬籠り中の数か月間、飲まず食わずで過ごします。
冬籠り前に、体の周りに分厚い脂肪層を貯えてから冬籠りに入らないと、冬籠り中に死にます。
そのため、山の実り大凶作年の今年、クマは生きるか死ぬかでもう必死なのです。
このような食糧難の年は出産しても子グマへの授乳など無理です。こういう年は、メスグマの体内の受精卵は子宮に着床することなく終わってしまいます。
(何というすばらしい仕組み!)
後、母グマは、自分や0才子1才子をいかにして生き永らえさせるかで必死です。
テレビニュースでは、クマが放置されたカキの木の実を食べに来たら、まるで駆除するのが当然のような報道ぶりです。
なぜ殺さない対応を報道しないのでしょうか。
私たちはこれまでの23年間に、全国の無数のクマ生息地の人達に会って対話をしてきました。
クマがカキの木に来たら、そっと見守っている集落が全国に結構たくさんありました。
どうしてこういう知恵を持った集落の人達のことを、報道しないのでしょうか。
山のものに実をあげるため、カキの木の上3分の1は実を採らずに残しておく地域もあります。
貧しかった時代の方が、人々は寛容だったのでしょうか。
昔の町民は少々の農作物被害なら、被害被害と騒がずに、これが自然だと気に留めていなかったよと、ある町の町長さん。
また、別の町の町長さんは、子どもや町民に、今年山に餌が全くないから、クマたちは生き残るために必死で来たくない人間のところまで来ているんだよ。そっと見守ってあげるんだよと教えておられます。こういう時こそ、やさしい子供たちを作るチャンスだと言われていました。この様な対応を取れば、人身事故などまず起きません。
クマが人間のところに出て来る目的はただ一つ。
冬籠りを前にして食い込むためです。
人間なんかに興味はありません。
かれらはかわいそうなくらい、人間に遠慮しながら人間が活動しない時間帯に出てきています。
熊森は、これまで、全国で起きた人身事故を各地で調べてきました。
人身事故が起きると、ツキノワグマが100%悪いように報道されますが、人間側がツキノワグマがどういう動物か知って気を付ければ起きなかった事故がほぼ全てです。
ツキノワグマが出てきても、追い掛け回さないでください。
追い掛け回すと、クマはこわくなって必死に逃げようとします。
逃げられない臨界距離12メートル以内に人間が入り込むと、ときには走り寄ってきて前足で人間をはたいて、その隙に逃げようとするクマが出ます。
人間から逃げたい一心でツキノワグマは人身事故を起こしてしまうのです。
だからほとんどのケガは、ひっかき傷で、軽傷です。
ツキノワグマは人間を避けようと努力していますので、クマが出てきている今の時期、早朝や夕方、そっと外に出るのはひかえてください。
必ず、大きな音のするものを持ったり、大声を出したりしてください。クマは人間を襲いたいと思っていませんから、自分から逃げます。
やっと見つけた餌を食べている時は、もう人間など目にも入らないかもしれません。その時は、食べ終わるまで見守ってやってください。
食べ終わったら消えます。
飢えに苦しんだことのある人なら、飢えが動物にとってどんなにつらいものかわかるはずです。
人間を舐めたり人間のものを食べたいと思ったりして出て来たのではありません。
熊森協会が保護飼育している元野生のツキノワグマ「とよ」は、今、朝から晩まで、クヌギやコナラのドングリを食べ続けています。
今、ツキノワグマたちが本当に食べたいのは、ドングリなのです。
しかし、奥山にブナやミズナラのドングリが今年ないから困ってしまって出て来たのです。
里のドングリは豊作です。
食べさせてやって下さい。
山の実りが悪いのは自然現象だから仕方がないと思う人もいるでしょうが、自然現象だけではありません。
人間が開発やスギ・ヒノキの植林を行ったこと、また、人間が現在、地球温暖化を引き起こしていることなど、私たち人間のせいであることも多いのです。
ミネラルいっぱいの水を湧き出して私たちの命を支えてくれている森の形成に、クマ達は大きく貢献しています。
人間も、野生動物たちに感謝の心が必要です。
自分の子がかわいいお母さん、クマのお母さんも、人間と同じように自分の子がかわいいことを思いやってください。
子を連れて出て来たクマを見守ってやってください。
猟師にクマを射殺してもらったあと、「これでほっとした」という近隣住民のコメントを、まるで定型のようにいつもテレビは流します。
そうなんですか?
殺さないで対応する道はたくさんあります。
27年前、クマを守ろうと立ち上がった中学生たちが、「殺さない対応策を考えてこそ大人だ」とよく言っていました。
この国土は人間だけのものではありません。
みんなで共存していかないと、結局人間も生き残れなくなります。
それが自然のしくみです。
どうか、里のドングリや柿やクルミ、米糠など、クマたちが命がけで食べに来ていたら、寛容の心で慈悲の心で、可能なものは与えてやってください。
冬籠り前の食い込みに必死のクマを哀れに思い、もうこれ以上、殺さないでやってほしいのです。
でなければ、クマは絶滅してしまいます。
ツキノワグマはアジアに広く分布する中型の森林性のクマです。
開発に伴う生息環境の悪化と、漢方薬となる胆のうなどを目当てとした密猟によって、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは個体数がこの30年に30~50%も減り「絶滅危惧種」に指定されています。
クマが来ないようにカキの実を収穫してしまうのはいいことですが、人間が食べるのではなく、熊森協会がしているように、山に持って行って、生きられなくなっているクマたちに与えてやって欲しいと思います。
そのような優しさが、人間社会にも必要だと思うのです。
お願いします。
新潟県魚沼市で6人もの人身事故を起こして射殺されたオスグマの体は、米糠まみれだった
- 2019-11-10 (日)
- くまもりNEWS
日本海側は、2000年代になって大発生したナラ枯れで、クマたちの冬籠り前の主な食料であったミズナラのドングリが大量に失われてしまっています。
それに輪をかけて、今年、ブナ・ミズナラが大凶作~凶作です。クマたちが冬籠り前の食料を求め、必死になって連日、各地で山から出て来ています。
冬ごもり中の何か月間飲まず食わずですから、今、食い込んでおかないと冬ごもり中に死亡するそうです。クマたちは命がけでもう必死です。
新潟県魚沼市では、人間に追われて逃げ惑うクマが、10月18日、19日にかけて連続6件の人身事故を起こし、射殺されました。
(10月19日新潟日報モアより)
この事件について熊森本部にテレビ局から電話取材が入り、野生動物保全担当の水見竜哉研究員がコメントしました。
最近、クマに関することは熊森に聞こうという流れがメディア界にできてきたようです。
テレビニュースを見て衝撃を受けたのは、警察車か何かが車でこのクマを追い掛け回しているすぐそばで、人々が歩いていることです。
クマが集落に出て来た時、まず行政がしなければならないのは、「只今、クマが出てきています。みなさん家の中に入って、戸を閉め、合図があるまで出ないでください」と、緊急広報することです。
そして、クマを刺激しないようにして、山に帰る道を作ってやることです。
このクマは、テレビ映像で見ると、車に追われて、走りに走り続けていました。もう、死ぬほど息が切れていたと思います。人間に見つかって逃げ惑うクマは、パニックに陥っています。目の前に、人が現れたら、はたき倒して逃げ続けます。もし自分がこのクマだったらと想像してみたら、クマの心理がわかるはずです。クマも人間も同じなのです。
食料を探しに集落近くまで出てきて、朝方山に帰りそびれたクマだと思います。
熊森本部は魚沼市の担当者にお話をお聞きしました。
<以下、魚沼市の担当者のお話>
10月19日に射殺されたクマの年齢は5歳から6歳でオスでした。射殺後見に行くと体中に米糠がついていました。
魚沼は国内屈指の米の産地で、この時期は収穫期なのでたくさん米糠が出ます。その米糠を畑に山積みにしている場所もあります。精米所にクマがやってきて糠の袋を破いたという被害もありました。このクマも、米糠に引き寄せられて出て来たと思います。
米糠や、生ごみは必ず頑丈な屋内で保管するように、市街地やその周辺に呼びかけています。
魚沼市は東西を山に挟まれた細長い盆地の中にあり、盆地を流れる魚野川には山から無数の川が流れ込んでいます。クマは山からつながる川の繁みを伝って市街地までやってきます。
熊森から
魚沼市の担当者さん、お忙しい中、いろいろと教えて下さってありがとうございました。
米糠がクマを誘引することをみなさんに知ってもらって、クマを呼び込まない対策を練ってもらいたいです。
クマによる人身事故が起きないように。
殺される不幸なクマを出さないために。
今秋、熊森本部は、全国から入ってくるクマ事件に対応するために、連日てんてこ舞いです。
ブログに上げているのは活動のほんの一部だけです。人手が全く足りません。
現在、職員を3名募集しています。我こそはと思ってくださる皆さん!どうか、応募してください!
お願いします。
そもそも「階層ベイズモデル」でクマの生息数の推定などできないと統計学の専門家が指摘
- 2019-11-10 (日)
- くまもりNEWS
京都府のクマ生息数激増発表に大いなる疑問を感じた熊森は、京都府が調査委託したWMO(株)野生動物保護管理事務所作成の「京都府平成30年度野生鳥獣(ツキノワグマ)生息実態調査業務報告書」(平成31年3月)を、全文読んでみました。さすがWMO、しっかり書けていると思いました。
しかし、生息数推定のページになると、どこかに下請けでも出したのだろうかと感じるほど、この部分だけが、タッチが変わり意味不明です。
「階層ベイズモデル」は、ソフトが市販されているので誰でも使えますが、本来、経済学で使うモデルで、10年後の経済成長をどれくらいにするかなど、答えを先に決めて使うモデルです。
クマが何頭いるかわからないというような答えがわからないものには元来使えません。使えないのに使おうとすると、初めに何頭いることにしようかと答えを決めなければなりません。要するに、「階層ベイズモデル」によるクマの生息数推定は、答えをいかようにも好きに出せるということなのです。
要するに、いかさまに使える推定法なのですが、計算法が非常に複雑なので、一般行政マンをけむに巻くにはもってこいの推定法だとも言われています。
「階層ベイズモデル」によるクマの生息推定数が初めて日本に登場したのは2011年春兵庫県で、出してきたのは、当時兵庫県森林動物研究センターの研究員で兵庫県立大学の准教授でもあった坂田宏志氏です。
コンピューターを何十日も煙が出るほど長時間動かしてやっと解を得たということで、兵庫県のツキノワグマ最大値は2004年の180頭から1651頭に爆発増加している(7年間に9倍以上に増加)という驚異的なもので、熊森はずっこけそうになりました。
しかも、2010年は奥山の実りゼロというあり得ない凶作年となり、次々と山からクマが食料を求めて出て来て、有害捕殺や交通事故で80頭以上のクマが死亡しているのに、全体の生息数は増え続けていることになっていたのです。
ありえないと熊森が真っ先に発言したのですが、訂正されませんでした。しかし、専門家たちからあり得ないという声が上がると、坂田氏は一挙に生息推定数を751頭という半分以下に訂正されました。いかようにもできるという「階層ベイズモデル」の特性がよくわかる一面でした。
この度、統計学の専門家である日本福祉大学経済学部経済学科の山上俊彦教授(京都大学卒)に、京都府のクマ生息推定数のページを読んでもらい、「階層ベイズモデル」でクマの生息推定数を出すことについてのご意見をいただきました。特に、全国の行政担当者に読んでいただきたいです。
以下に掲載します。
1.「階層ベイズモデル」について
報告書における「階層ベイズモデル」による京都府のツキノワグマ生息数推定は、状態・空間モデルを援用したものであるが、その趣旨が生かされたものではない。
報告書では、生息数と自然増加率の関係は次式で示される。
今年の生息数=昨年の生息数×自然増加率-昨年の捕殺数
式が一本で、データは捕獲数しかないため、生息数と自然増加率は確定できない。
確定できない数値はベイズ法を用いても推定できない。
これを推定できると考えるのは自然科学者の知的傲慢である。
事前分布として設定した生息数、自然増加率、捕獲率については、捕獲数データは何ら情報を与えない。つまり、満足なベイズ更新がなされないままに、データの数値変動から事後分布が導かれていると考えられる。これは、事前に設定した生息数によって結果としての生息数が導出されたに過ぎず、このようにして出した生息数推定値を政策議論に用いることは不適切である。
また、京都府は2017年から予察捕獲を実行しており、この結果、捕獲数が異常な増加を記録している。つまり捕獲数データが京都府の方針変更に伴う行動変化を反映したものとなっており、統計解析には用いることができない。
この「科学的」ではないデータを用いると、特に近年の推定値は上方バイアスが大きくなって生息数の過大推定につながる。これは当初からクマを殺せば殺す程、生息数推定値が増えると懸念された「階層ベイズモデル」の致命的欠陥を示すものである。
なお、報告書ではベイズ法における核心的部分である尤度関数の記述が省略されているため、具体的なMCMCによる解探索過程は確認できない。このことは尤度関数の最大値を正しく求めているか否かが不明確なままであることを意味する。
また、プログラミングは公開されておらず、再現性に乏しい。この意味で推定は「科学的」根拠を欠いている。
2.生息密度について
京都府の森林面積は3423㎢、自然林面積は2107㎢なので、生息数推定値を京都府が主張する1400頭とした場合の生息密度は0.664/㎢となる。米国の著名な研究成果ではクマの生息密度は0.15/㎢程度なので、米国の生息密度を日本に適用したとすると、京都府の推定結果は過大推定であることが伺える。(山上俊彦)
熊森から
日本に於けるツキノワグマの生息密度を調べた論文を見つけました。
ツキノワグマの地域個体群区分と保全管理―生息環境と必要な面積―
Local Population and Conservation of Asian Black Bear; Habitat Preference and Minimum Area Size
米田政明*Masaaki YONEDAランドスケープ研究64 (4), 2001*(財)自然環境研究センター
316ページに、好適な生息地における生息密度は0.15~0.3頭/km2とあります。
2001年はまだナラ枯れも下層植生消滅もなかった時代です。その当時ですら、生息密度はこの程度なのですから、自然林の内部が大荒廃した今の京都府で生息密度が0.664/㎢とは、おかし過ぎます。
以下は、京都府に於けるツキノワグマによる農林業被害額と作物別の被害面積の推移です。(京都府資料より)
今回の京都府の発表では、平成15年から16年間で、府内のクマ数は4倍に激増したことになっていますが、農林業被害や作物別面積は大幅に減少しています。
上のグラフを見ただけでも、京都府のクマ数が4倍に激増したというのは、おかしいと思います。
このようなおかしげなデータが、世の中を通っていくなんて、研究者のみなさん、行政のみなさん、本当に自分の頭でしっかり考えてくれたのですかと思ってしまいました。