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2019-11-15
11月15日 2019年度狩猟解禁日
- 2019-11-15 (金)
- くまもりNEWS
本日11月15日は、狩猟解禁日です。(北海道は10月1日~1月31日)
「今日から狩猟解禁や。何にも悪いことしてない山の動物たちが、また遊びで撃たれる。痛いやろうな」
この日が来ると、1995年当時、和歌山県鳥獣保護連絡会(猟友会組織)会長※故東山省三先生の奥様が狩猟解禁日にお顔をゆがめてつぶやかれた上の言葉をいつも思い出します。
これは、ほとんどの女性や子供に共通の感覚だと思います。(※東山先生は野生動物を保護したくて猟友会に入られた方で、ただひとり銃を持たない猟友会員でした)
兵庫県は今年も一般の狩猟(シカ・イノシシは4か月間)に加えてクマ狩猟(1か月間)を継続して再開するそうです。
理由は、クマ生息推定数が830頭で環境省規定の狩猟できる数800頭を超えているからだそうです。
しかし現在、有害捕殺(無害捕殺多し?)が、111頭です。
830頭-111頭=719頭で狩猟はできません。
しかし、狩猟を再開するために、もう一つの基準が県から出されてきました。
生息数の15%までなら殺していいという環境省規定に従うと、830頭×0,15=124頭
であり、まだ、124頭に達していないから、まだ殺せる。
狩猟解禁日までに114頭の捕殺があれば、狩猟を中止する。
114頭を越えなかったので、狩猟を実施する。
ただし、有害捕殺(無害捕殺多し?)と狩猟の合計が114頭を越えたら、猟期であってもクマ狩猟を中止する。
数字数字で、まるで捕殺ゲームです。
大量捕殺を実施した凶作年ですから、狩猟などしている場合ではない。
狩猟を禁止すべきと熊森は主張してきましたが、兵庫県井戸敏三知事も鳥獣対策課も受け入れませんでした。
あと3頭の攻防、そこまでして狩猟を実施する意味があるのでしょうか。
(注:捕殺数111頭以外の数字は全て人間が頭で考えたり計算したりしたものです。どこまで意味のある数字なのか誰にもわかりません。
今の狩猟は一般的には生きるために必要なものではなく、スポーツでありレジャーです。)
11月9日、兵庫県でクマ人身事故2件発生。クマ大量捕殺の効果なし。熊森本部が現場検証
- 2019-11-15 (金)
- くまもりNEWS
11月9日、兵庫県新温泉町と豊岡市日高町で、クマによる人身事故が2件発生しました。
熊森が事故情報を知ったのは9日、地元の方が電話で新聞やメディアよりも早く熊森に情報を伝えてくださいました。その方はすぐに新温泉町で発生した人身事故現場へ出向き、被害者に助言したり事故を起こしたクマを殺さないように動いたりしてくださっていました。
地元の方のお話(電話)
「朝、喫茶をしていたら近所でクマに出会ってけがを負った人がいるという話が入ってきた。現場に向かうと、シカ捕獲用箱罠に子グマだけがかかっていた。事故を起こした母グマは、山へ逃げたようだったが、子グマはずっと箱罠の中で鳴いており、かわいそうだった。すでに町役場や警察、兵庫県森林動物研究センターの職員、猟友会が来ていた。私は彼らに対し、その場で、2つお願いをした。
①子グマをこの場で放してやってほしい。
②子グマは母グマがいないと生きていけないから、母グマも生かしてやってほしい。
そしたら、子グマを放してくれた。子グマは山に逃げて行った。よかった。母グマも捕獲しないことになった。
以前、自分もクマと鉢合わせてかまれたり引掻かれたりしてけがをしたことがある。クマは初めから逃げ腰だったよ。人を襲うような気持ちじゃない。かわいい顔してた。クマも人間が怖かったんだろうよ。今回も母グマは、子グマを守ろうとしたんだよ。近くに人間が現れて怖かったんだろうな。」
この方がすぐに動いてくださりありがたかったです。
おケガをされた方の容態も心配だし、なぜ事故が起きてしまったのか検証もしたい。翌日10日の朝、熊森本部は地元の方に案内していただき、まず、おケガをされた方のお見舞いへ向かいました。
新温泉町で今回事故に遭われた男性は、深い傷を負われたものの、幸いにも日帰りの治療で済んだとのことです。しかし、まだ歩くと痛みがあるという事で、事故当時の状況についてご自宅でくわしくお話を伺いました。
ケガを負った男性のお話1(新温泉町)
「あの日は、朝6時半ころ、集落で設置しているシカ捕獲用の箱罠の見回りをしていた。まだ朝日が出てまもなくで薄暗かった。箱罠の中に何かが入っているのを発見した。よく見ると子グマだった。すぐに行政に連絡しなきゃとその場を離れようとしたとき、大きなクマが背後から抱き付いてきたので、段差を滑って転倒した。母グマだった。その瞬間、母グマも驚いて山へ逃げた。私は自力で自宅へ戻り、救急車を呼んだ。事故当時はライトもクマ鈴も持っていなかった。自分がうかつだった。別にクマを憎いとは思っていない。これまでその罠にクマがかかったことはなかったが、最近近所でもクマが夜カキの木に来ていたという話は聞いていた。」
男性の証言を基に、現場検証してみてわかったことがありました。
1、事故現場となった箱罠付近は、幹線道路や集落から近い場所にあるが、日当たりが悪く昼間でも暗い。→見通しが悪く、クマがいても気づきにくい
2、箱罠の入り口には、米糠が置かれていた→クマを誘引してしまった。
3、すぐそばのカキの木に実が少し残っていた→柿を食べたクマの糞が2,3個落ちていたので、カキの木もクマをここに誘引してしまっていた。
再発防止対策
熊森は、事故の再発を防ぐために、男性にクマの行動が活発になる早朝や夕方は必ずクマ鈴を持って出歩いていただくようにお願いしました。
そして、男性の許可の元、僅かに残っていたカキの実を全てもぎました。さらに、箱罠の誘因物である米糠を地面から削り取って除去しました。(この箱罠は事故後、罠の入り口を固定して、動物がかからないようにしているそうです。)男性に喜んでいただけました。
今年は、クマの生息する兵庫県北部の山々はドングリ(ブナ・ミズナラ)の実りが悪いですが、里にあるカキの実りも悪く、1本のカキの木に数個がちょびちょびと成っているだけです。こうした年は、クマもあちこちのカキの木に登らねばなりません。(ちなみに、冬ごもり前のクマが一番食べたいのはカキではなくドングリです)
続いて、2か所目の、豊岡市日高町の事故現場へ向かいました。現場付近で聞き取りを行ったところ、事故に遭われた方のお宅へたどり着くことができ、ご本人が現場までご案内してくださり事故の状況を説明してくださいました。
ケガを負った男性のお話2(豊岡市日高町)
「朝の7時半ころ、たまたま昔の里道を散歩しようと思いたって行って歩いていたら、左の繁みから1頭のクマが飛び出してきた。距離は5mないくらいだったと思う。直前にうーっという唸り声が聞こえた。まさかクマが出てくると思わなかった。クマ鈴とか、音の出るものは持っていなかった。とっさに逃げようとしたけどびっくりして腰が抜け、しりもちをついたところでクマが覆いかぶさってきて引っかかれた。その後、クマは元居た方向へ飛んで逃げていった。痛みはあまり感じなかったが、顔から出血しており、びっくりして家に戻って救急車を呼んだ。この集落は、周囲を山に囲われている。空き家を取り壊した場所やかつて田畑だった場所には、ササや木々が繁り動物の潜み場になってきている。」
この現場近くには米糠入りの箱罠が設置されており、しかも、クマとシカの有害捕獲許可が降りていました。
その設置期間、なんと1年!
先日の兵庫県農政環境常任委員会での県当局の答弁では、最大6か月間クマ用箱罠をかけているということでしたが、1年間常設罠を許可していたとは?!(答弁が不正確?)
熊森から
今年、兵庫県は10月末時点で前代未聞の、103頭ものクマを殺処分しています。(11月13日現在106頭)(11月15日現在111頭)
県は、クマとの人身事故を防ぐために、2017年7月から、集落周辺200mゾーンまでのシカ・イノシシ・クマ捕獲用箱罠にかかったクマは全て殺処分するという方針に切り替え、以来大量の実害のないクマを米糠で山からおびき出し殺処分するという非道な政策を行ってきました。でも、結局、人身事故は起きてしまったのです。
今回の事故で、いくらクマの生息数を低減させても事故防止対策をとらない限り人身事故は起きると主張してきた、熊森の主張が正しかったことがわかります。
それよりも、早朝や夕方などクマが出やすい時間帯にはクマ鈴等音の出るものを持って人間の存在をアピールしたり、クマを引き寄せるような誘引剤(米糠、生ごみ、カキの実等の不要果樹)を集落周辺から取り除くことの方が重要です。
クマを殺すことばかりが優先され、こうしたクマとの共存策の普及啓発が不十分なことが人身事故を繰り返させているのです。
新温泉町での事故は、まさに集落周辺に設置された強力にクマを誘引する米糠入り箱罠が招いたクマによる人身事故と言えます。熊森は、県が助成金を出してでも米糠に変わる誘引剤を使用すべきであるとお願いし続けてきましたが、いまだに何ら改善されていません。
熊森が保護飼育中の元野生グマに好物種を与えて実験してみました。
まずクマは米糠から食べ始め、食べ終わると米糠を体に塗りつけます。
兵庫県のツキノワグマ管理計画には、被害防除のために集落周辺の潜み場を刈る事業をやると謳われていますが、その実践例や実証効果については議会や野生鳥獣審議会で議員や委員が質問しても全く返答がありません。
県が本当にクマの人身事故を防ごうとしているのなら、自然が何たるかを知らずにクマを殺すことによってクマの生息数を人間がコントロールできるなどと思いあがっている数字まみれの研究者たちに毎年クマ推定生息数の計算精度を上げるための予算を付けるのではなくて、そんなことよりも大事なことがあることに早く気付いてほしいものです。
最後になりましたが、クマでお困りのことがありましたら、ぜひ熊森にご相談ください。
ボランティア団体なので無料です。
TEL:0798 -22-4190 FAX:0798-22-4196
Mail:field@kumamori.org (熊森本部クマ保全担当 水見)