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2019-11
ツキノワグマ捕殺、過去最多4000頭に迫る!可能な限りそっと見守って事故回避を:熊森緊急要請
- 2019-11-14 (木)
- くまもりNEWS
狩猟中止・捕殺抑制を求め、環境省と22府県へ緊急要請
2019年11月14日、日本熊森協会本部は、環境省及びクマの捕殺が多い府県に対し、今期の狩猟中止と、人身事故の回避と共存のため、冬ごもり(=数か月間飲まず食わず)に向けて現在必死で食い込み中のクマを怖がらせず可能な限り家中からそっと見守るよう、緊急要請文を提出しました。
クマは本来昼行性ですが人間を恐れており、通常、人里周辺では人間活動が見られにくい夕方から夜や早朝にかけてこっそり採食活動をします。
当会の聞き取り調査により10月末現在判明した都府県分だけで、ツキノワグマ3897頭、北海道ではヒグマ453頭が捕殺されていることがわかりました。捕殺は現在も続いています。
クマ大量捕殺の背景には以下のような実態があります。
①近年、クマを銃ではなく、米糠などの強力な誘因物を入れた大量の罠で獲るようになったため、無関係のクマまで誘引され過剰捕獲が生じている。
②シカ・イノシシ罠に錯誤捕獲されたクマを「鳥獣保護管理法」に反して殺処分している府県が増えてきた。
③春の時点で大量の捕殺許可を出し、被害のないクマを有害捕獲の名で次々と箱罠にかけ、殺処分している県がある。
④過激な報道によって、ツキノワグマが危険な動物であるという誤解が広まっている。
⑤自然現象ではなく、奥山人工林化や地球温暖化、ナラ枯れ、シカの食害等による生息地荒廃などにより奥山の食料が激減しており、今秋の山の実り凶作という事実も加わって大量出没が起こっている。(食い込み不足だと冬ごもり中に死亡するため、今もクマは必死で食料を探している)
今年度のクマ大量捕殺は明らかに行き過ぎで、乱獲となっています。種の保全上も、人道的な配慮からも、クマの食い込みを見守りクマが無事冬ごもりに入れるよう、環境省や都道府県がブレーキをかける必要があります。
【要請事項】
1 スポーツやレジャーでのクマ狩猟を、本年度禁止すること 2 クマが出没しただけで駆除しようとするような安易な捕殺を抑制すること 3 豊凶の少ない裏山のドングリや空家に放置された柿の実等を食べに来たクマには近づかず、可能な限り食べ終わるまでそっと見守ること(食べ終われば山に帰ります) ※人がクマを取り囲んだり追いかけたりして騒ぐとクマはパニックを起こし、逃げたい一心から近くの人に駆け寄り前足ではたいて人がひるんだ隙に逃げようとします。人身事故につながり危険ですので、クマが出てきたら人々は屋内に退避するよう地元をご指導ください。 |
環境の悪化により、人里に出て来ざるを得ない野生動物を「凶暴」という誤ったレッテルを貼り、片っ端から捕殺していては、野生動物と人との共存は不可能です。
当会には、連日、「クマが大量に捕殺されるニュースを聞き、胸が痛い。なんとかならないのか」「食べ物を求めて里に出てきているのだから、クマ防除のためにもいだ柿等は山に運んでクマにやるべきだ」という声も全国から届いています
私たち人間も、クマをはじめとする野生動物たちがつくる豊かな森に生かされています。感謝の心を持ち、大凶作で窮地に陥っている野生動物に対し、寛容な姿勢で見守ることができるような社会をつくるため、このような実態をたくさんの方に広めていただきたいです。
各府県への要請文は以下よりご覧いただけます
◆東北地方
◆関東地方
◆中部地方
◆近畿地方
◆中国地方
メディアの皆さまへ
多くの国民は、クマがこんなにも日本で過剰に捕獲されていることやクマが人里に出てくる背景、祖先がしていたようにそっと見守ることで人身事故が回避されることなどを知りません。
ツキノワグマはアジアに広く分布する中型の森林性のクマで、絶滅しやすい動物です。これまですでに広範な地域で絶滅してしまっており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストではさらに個体数がこの30年に30~50%も減ったということで、国際的に「絶滅危惧種」に指定されています。
日本における過剰捕殺の実態を、たくさんの皆様に広めていただくようお願いします。
これまでの主張に従い兵庫県はクマ狩猟を中止せよ!本部が井戸敏三兵庫県知事に緊急申し入れ書
- 2019-11-11 (月)
- くまもりNEWS
―速報―
本年4月からの兵庫県におけるクマの有害捕殺数は10月末現在、過去最多103頭であることがわかりました。
これまで兵庫県は狩猟再開に反対する熊森に、クマの生息推定数が環境省規定の800頭を越えたから狩猟を再開すると、ずっと説明してこられました。
(一体兵庫県にクマが本当に800頭いるのかどうか誰にもわからない上、地方によって山の状態も全く違います。兵庫の奥山は大荒廃しているのに、全国一律の800頭規程で狩猟を再開するとは、熊森は全く納得できないできましたが)
それにしても、今年の兵庫県のクマ推定生息数は830頭でしたから、現在の推定生息数は830頭-103頭 =727頭で800頭を割っています。
これまでの県の主張に従って、本年度のクマ狩猟は当然禁止にすべきです。
もし、今年も兵庫県が狩猟を実施されるなら、わたしたちはもはや、県の言葉の何を信じていいのかわかりません。
井戸知事は不在のようでしたので、知事にお渡し頂くようお願いして、秘書の方に申し入れ書を手渡してきました。
ツキノワグマによる人身事故125件(死亡1名) 9月末までに3453頭を捕殺 熊森が緊急声明
- 2019-11-10 (日)
- くまもりNEWS
2019年秋 熊森緊急声明
クマは人など襲いません
(マスコミのみなさんは、襲うという間違った表現をやめてください。この誤解によって、殺されなくてもいいクマが大量に殺されているのです。)
人身事故を防ぐためにも、クマに寛容であってください!
生きるのに必死のクマを見守ってやってください
不要な柿や豊作の里のドングリは、場所的に可能ならクマに与えてやってください
11月8日のNHKニュースによると、今年4月以降、全国でツキノワグマによる人身事故は125件です。山の実りゼロというあり得ない異常年だった2010年(147件)に次ぐ多さです。気仙沼市では死亡事故も1件起きました。
都府県別には、新潟が17人と最も多く、次いで岩手が16人、秋田と岐阜が13人、富山が9人、福島が8人、福井と長野が7人となっています。
都府県のうち75%に当たる24の府県が「クマの出没が増えている」と回答、半数を超える17の都府県では「市街地の中心部など、平年なら出没がみられない地区で出没しています。
捕殺されるツキノワグマの数もうなぎ上り。
遅い遅い環境省の速報値ですが、本日やっと9月末までのツキノワグマ全国捕殺数集計が発表されました。
その数何と、3453頭!
もうだめだ
一体、この国は、今年、何頭のツキノワグマを殺すつもりですか。
こんなことでは、共存などできません。
ツキノワグマによる人身事故の多くは、ひっかき傷です。
ツキノワグマは冬籠り中の数か月間、飲まず食わずで過ごします。
冬籠り前に、体の周りに分厚い脂肪層を貯えてから冬籠りに入らないと、冬籠り中に死にます。
そのため、山の実り大凶作年の今年、クマは生きるか死ぬかでもう必死なのです。
このような食糧難の年は出産しても子グマへの授乳など無理です。こういう年は、メスグマの体内の受精卵は子宮に着床することなく終わってしまいます。
(何というすばらしい仕組み!)
後、母グマは、自分や0才子1才子をいかにして生き永らえさせるかで必死です。
テレビニュースでは、クマが放置されたカキの木の実を食べに来たら、まるで駆除するのが当然のような報道ぶりです。
なぜ殺さない対応を報道しないのでしょうか。
私たちはこれまでの23年間に、全国の無数のクマ生息地の人達に会って対話をしてきました。
クマがカキの木に来たら、そっと見守っている集落が全国に結構たくさんありました。
どうしてこういう知恵を持った集落の人達のことを、報道しないのでしょうか。
山のものに実をあげるため、カキの木の上3分の1は実を採らずに残しておく地域もあります。
貧しかった時代の方が、人々は寛容だったのでしょうか。
昔の町民は少々の農作物被害なら、被害被害と騒がずに、これが自然だと気に留めていなかったよと、ある町の町長さん。
また、別の町の町長さんは、子どもや町民に、今年山に餌が全くないから、クマたちは生き残るために必死で来たくない人間のところまで来ているんだよ。そっと見守ってあげるんだよと教えておられます。こういう時こそ、やさしい子供たちを作るチャンスだと言われていました。この様な対応を取れば、人身事故などまず起きません。
クマが人間のところに出て来る目的はただ一つ。
冬籠りを前にして食い込むためです。
人間なんかに興味はありません。
かれらはかわいそうなくらい、人間に遠慮しながら人間が活動しない時間帯に出てきています。
熊森は、これまで、全国で起きた人身事故を各地で調べてきました。
人身事故が起きると、ツキノワグマが100%悪いように報道されますが、人間側がツキノワグマがどういう動物か知って気を付ければ起きなかった事故がほぼ全てです。
ツキノワグマが出てきても、追い掛け回さないでください。
追い掛け回すと、クマはこわくなって必死に逃げようとします。
逃げられない臨界距離12メートル以内に人間が入り込むと、ときには走り寄ってきて前足で人間をはたいて、その隙に逃げようとするクマが出ます。
人間から逃げたい一心でツキノワグマは人身事故を起こしてしまうのです。
だからほとんどのケガは、ひっかき傷で、軽傷です。
ツキノワグマは人間を避けようと努力していますので、クマが出てきている今の時期、早朝や夕方、そっと外に出るのはひかえてください。
必ず、大きな音のするものを持ったり、大声を出したりしてください。クマは人間を襲いたいと思っていませんから、自分から逃げます。
やっと見つけた餌を食べている時は、もう人間など目にも入らないかもしれません。その時は、食べ終わるまで見守ってやってください。
食べ終わったら消えます。
飢えに苦しんだことのある人なら、飢えが動物にとってどんなにつらいものかわかるはずです。
人間を舐めたり人間のものを食べたいと思ったりして出て来たのではありません。
熊森協会が保護飼育している元野生のツキノワグマ「とよ」は、今、朝から晩まで、クヌギやコナラのドングリを食べ続けています。
今、ツキノワグマたちが本当に食べたいのは、ドングリなのです。
しかし、奥山にブナやミズナラのドングリが今年ないから困ってしまって出て来たのです。
里のドングリは豊作です。
食べさせてやって下さい。
山の実りが悪いのは自然現象だから仕方がないと思う人もいるでしょうが、自然現象だけではありません。
人間が開発やスギ・ヒノキの植林を行ったこと、また、人間が現在、地球温暖化を引き起こしていることなど、私たち人間のせいであることも多いのです。
ミネラルいっぱいの水を湧き出して私たちの命を支えてくれている森の形成に、クマ達は大きく貢献しています。
人間も、野生動物たちに感謝の心が必要です。
自分の子がかわいいお母さん、クマのお母さんも、人間と同じように自分の子がかわいいことを思いやってください。
子を連れて出て来たクマを見守ってやってください。
猟師にクマを射殺してもらったあと、「これでほっとした」という近隣住民のコメントを、まるで定型のようにいつもテレビは流します。
そうなんですか?
殺さないで対応する道はたくさんあります。
27年前、クマを守ろうと立ち上がった中学生たちが、「殺さない対応策を考えてこそ大人だ」とよく言っていました。
この国土は人間だけのものではありません。
みんなで共存していかないと、結局人間も生き残れなくなります。
それが自然のしくみです。
どうか、里のドングリや柿やクルミ、米糠など、クマたちが命がけで食べに来ていたら、寛容の心で慈悲の心で、可能なものは与えてやってください。
冬籠り前の食い込みに必死のクマを哀れに思い、もうこれ以上、殺さないでやってほしいのです。
でなければ、クマは絶滅してしまいます。
ツキノワグマはアジアに広く分布する中型の森林性のクマです。
開発に伴う生息環境の悪化と、漢方薬となる胆のうなどを目当てとした密猟によって、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは個体数がこの30年に30~50%も減り「絶滅危惧種」に指定されています。
クマが来ないようにカキの実を収穫してしまうのはいいことですが、人間が食べるのではなく、熊森協会がしているように、山に持って行って、生きられなくなっているクマたちに与えてやって欲しいと思います。
そのような優しさが、人間社会にも必要だと思うのです。
お願いします。
新潟県魚沼市で6人もの人身事故を起こして射殺されたオスグマの体は、米糠まみれだった
- 2019-11-10 (日)
- くまもりNEWS
日本海側は、2000年代になって大発生したナラ枯れで、クマたちの冬籠り前の主な食料であったミズナラのドングリが大量に失われてしまっています。
それに輪をかけて、今年、ブナ・ミズナラが大凶作~凶作です。クマたちが冬籠り前の食料を求め、必死になって連日、各地で山から出て来ています。
冬ごもり中の何か月間飲まず食わずですから、今、食い込んでおかないと冬ごもり中に死亡するそうです。クマたちは命がけでもう必死です。
新潟県魚沼市では、人間に追われて逃げ惑うクマが、10月18日、19日にかけて連続6件の人身事故を起こし、射殺されました。
(10月19日新潟日報モアより)
この事件について熊森本部にテレビ局から電話取材が入り、野生動物保全担当の水見竜哉研究員がコメントしました。
最近、クマに関することは熊森に聞こうという流れがメディア界にできてきたようです。
テレビニュースを見て衝撃を受けたのは、警察車か何かが車でこのクマを追い掛け回しているすぐそばで、人々が歩いていることです。
クマが集落に出て来た時、まず行政がしなければならないのは、「只今、クマが出てきています。みなさん家の中に入って、戸を閉め、合図があるまで出ないでください」と、緊急広報することです。
そして、クマを刺激しないようにして、山に帰る道を作ってやることです。
このクマは、テレビ映像で見ると、車に追われて、走りに走り続けていました。もう、死ぬほど息が切れていたと思います。人間に見つかって逃げ惑うクマは、パニックに陥っています。目の前に、人が現れたら、はたき倒して逃げ続けます。もし自分がこのクマだったらと想像してみたら、クマの心理がわかるはずです。クマも人間も同じなのです。
食料を探しに集落近くまで出てきて、朝方山に帰りそびれたクマだと思います。
熊森本部は魚沼市の担当者にお話をお聞きしました。
<以下、魚沼市の担当者のお話>
10月19日に射殺されたクマの年齢は5歳から6歳でオスでした。射殺後見に行くと体中に米糠がついていました。
魚沼は国内屈指の米の産地で、この時期は収穫期なのでたくさん米糠が出ます。その米糠を畑に山積みにしている場所もあります。精米所にクマがやってきて糠の袋を破いたという被害もありました。このクマも、米糠に引き寄せられて出て来たと思います。
米糠や、生ごみは必ず頑丈な屋内で保管するように、市街地やその周辺に呼びかけています。
魚沼市は東西を山に挟まれた細長い盆地の中にあり、盆地を流れる魚野川には山から無数の川が流れ込んでいます。クマは山からつながる川の繁みを伝って市街地までやってきます。
熊森から
魚沼市の担当者さん、お忙しい中、いろいろと教えて下さってありがとうございました。
米糠がクマを誘引することをみなさんに知ってもらって、クマを呼び込まない対策を練ってもらいたいです。
クマによる人身事故が起きないように。
殺される不幸なクマを出さないために。
今秋、熊森本部は、全国から入ってくるクマ事件に対応するために、連日てんてこ舞いです。
ブログに上げているのは活動のほんの一部だけです。人手が全く足りません。
現在、職員を3名募集しています。我こそはと思ってくださる皆さん!どうか、応募してください!
お願いします。
そもそも「階層ベイズモデル」でクマの生息数の推定などできないと統計学の専門家が指摘
- 2019-11-10 (日)
- くまもりNEWS
京都府のクマ生息数激増発表に大いなる疑問を感じた熊森は、京都府が調査委託したWMO(株)野生動物保護管理事務所作成の「京都府平成30年度野生鳥獣(ツキノワグマ)生息実態調査業務報告書」(平成31年3月)を、全文読んでみました。さすがWMO、しっかり書けていると思いました。
しかし、生息数推定のページになると、どこかに下請けでも出したのだろうかと感じるほど、この部分だけが、タッチが変わり意味不明です。
「階層ベイズモデル」は、ソフトが市販されているので誰でも使えますが、本来、経済学で使うモデルで、10年後の経済成長をどれくらいにするかなど、答えを先に決めて使うモデルです。
クマが何頭いるかわからないというような答えがわからないものには元来使えません。使えないのに使おうとすると、初めに何頭いることにしようかと答えを決めなければなりません。要するに、「階層ベイズモデル」によるクマの生息数推定は、答えをいかようにも好きに出せるということなのです。
要するに、いかさまに使える推定法なのですが、計算法が非常に複雑なので、一般行政マンをけむに巻くにはもってこいの推定法だとも言われています。
「階層ベイズモデル」によるクマの生息推定数が初めて日本に登場したのは2011年春兵庫県で、出してきたのは、当時兵庫県森林動物研究センターの研究員で兵庫県立大学の准教授でもあった坂田宏志氏です。
コンピューターを何十日も煙が出るほど長時間動かしてやっと解を得たということで、兵庫県のツキノワグマ最大値は2004年の180頭から1651頭に爆発増加している(7年間に9倍以上に増加)という驚異的なもので、熊森はずっこけそうになりました。
しかも、2010年は奥山の実りゼロというあり得ない凶作年となり、次々と山からクマが食料を求めて出て来て、有害捕殺や交通事故で80頭以上のクマが死亡しているのに、全体の生息数は増え続けていることになっていたのです。
ありえないと熊森が真っ先に発言したのですが、訂正されませんでした。しかし、専門家たちからあり得ないという声が上がると、坂田氏は一挙に生息推定数を751頭という半分以下に訂正されました。いかようにもできるという「階層ベイズモデル」の特性がよくわかる一面でした。
この度、統計学の専門家である日本福祉大学経済学部経済学科の山上俊彦教授(京都大学卒)に、京都府のクマ生息推定数のページを読んでもらい、「階層ベイズモデル」でクマの生息推定数を出すことについてのご意見をいただきました。特に、全国の行政担当者に読んでいただきたいです。
以下に掲載します。
1.「階層ベイズモデル」について
報告書における「階層ベイズモデル」による京都府のツキノワグマ生息数推定は、状態・空間モデルを援用したものであるが、その趣旨が生かされたものではない。
報告書では、生息数と自然増加率の関係は次式で示される。
今年の生息数=昨年の生息数×自然増加率-昨年の捕殺数
式が一本で、データは捕獲数しかないため、生息数と自然増加率は確定できない。
確定できない数値はベイズ法を用いても推定できない。
これを推定できると考えるのは自然科学者の知的傲慢である。
事前分布として設定した生息数、自然増加率、捕獲率については、捕獲数データは何ら情報を与えない。つまり、満足なベイズ更新がなされないままに、データの数値変動から事後分布が導かれていると考えられる。これは、事前に設定した生息数によって結果としての生息数が導出されたに過ぎず、このようにして出した生息数推定値を政策議論に用いることは不適切である。
また、京都府は2017年から予察捕獲を実行しており、この結果、捕獲数が異常な増加を記録している。つまり捕獲数データが京都府の方針変更に伴う行動変化を反映したものとなっており、統計解析には用いることができない。
この「科学的」ではないデータを用いると、特に近年の推定値は上方バイアスが大きくなって生息数の過大推定につながる。これは当初からクマを殺せば殺す程、生息数推定値が増えると懸念された「階層ベイズモデル」の致命的欠陥を示すものである。
なお、報告書ではベイズ法における核心的部分である尤度関数の記述が省略されているため、具体的なMCMCによる解探索過程は確認できない。このことは尤度関数の最大値を正しく求めているか否かが不明確なままであることを意味する。
また、プログラミングは公開されておらず、再現性に乏しい。この意味で推定は「科学的」根拠を欠いている。
2.生息密度について
京都府の森林面積は3423㎢、自然林面積は2107㎢なので、生息数推定値を京都府が主張する1400頭とした場合の生息密度は0.664/㎢となる。米国の著名な研究成果ではクマの生息密度は0.15/㎢程度なので、米国の生息密度を日本に適用したとすると、京都府の推定結果は過大推定であることが伺える。(山上俊彦)
熊森から
日本に於けるツキノワグマの生息密度を調べた論文を見つけました。
ツキノワグマの地域個体群区分と保全管理―生息環境と必要な面積―
Local Population and Conservation of Asian Black Bear; Habitat Preference and Minimum Area Size
米田政明*Masaaki YONEDAランドスケープ研究64 (4), 2001*(財)自然環境研究センター
316ページに、好適な生息地における生息密度は0.15~0.3頭/km2とあります。
2001年はまだナラ枯れも下層植生消滅もなかった時代です。その当時ですら、生息密度はこの程度なのですから、自然林の内部が大荒廃した今の京都府で生息密度が0.664/㎢とは、おかし過ぎます。
以下は、京都府に於けるツキノワグマによる農林業被害額と作物別の被害面積の推移です。(京都府資料より)
今回の京都府の発表では、平成15年から16年間で、府内のクマ数は4倍に激増したことになっていますが、農林業被害や作物別面積は大幅に減少しています。
上のグラフを見ただけでも、京都府のクマ数が4倍に激増したというのは、おかしいと思います。
このようなおかしげなデータが、世の中を通っていくなんて、研究者のみなさん、行政のみなさん、本当に自分の頭でしっかり考えてくれたのですかと思ってしまいました。
西中国山地も山が貧しくなっており、奥山からクマの姿が消えている 2019,11,7中国放送
- 2019-11-08 (金)
- くまもりNEWS
自動撮影カメラや痕跡調査によって、東中国山地の奥山を23年間調査し続けてきた熊森本部は、人間活動による奥山劣化が激しくなっており、食料や隠れ場所を失ったクマがしかたなく里山に移動している。もはやクマは奥山に棲んでいないことを、かねてから指摘し続けてきました。
しかし、残念ながら、兵庫県庁も兵庫県のマスコミも、耳を傾けようとしてくれませんでした。なぜ、クマが人里に出て来るようになったのか、根本となる原因の特定を間違えば、対策は全て無意味になります。
兵庫県森林動物研究センターの権威ある研究者の指摘する原因説は、あまりにも人間中心であり、残念ながら、現地調査不足です。責任を全てクマに負わせた身勝手な学説と言わねばなりません。
「なぜクマが人里に出てくるようになったのか」
(横山真弓氏の原因5説)
1、クマ数増加
2、クマによる生息地拡大
3、クマによる味しめ
4、クマによる人なめ
5、里山放置
こんな中、中国テレビが、西中国山地の奥山劣化により、クマが本来の奥山から消えていることを報道しました。
現場第一主義で利権抜き、真実を語り続けている広島県在住の生態学者の声を、多くの国民にも聞いていただきたいです。
11/7(木) 20:19配信 中国放送より一部転載
「山が貧しくなっている」(広島フィールドミュージアム 金井塚務代表)
広島県内で人里に現れ、捕獲されたツキノワグマの数をグラフで示します。2011年は年間16頭でしたが、その後、増加傾向が続いていて、ことしは先月末の時点ですでに61頭にのぼっています。
なぜ、クマは人里に姿を現すケースが増えているのか。その背景を知るために、長年、クマの生態を研究している「広島フィールドミュージアム」代表の金井塚務さんと西中国山地の細見谷渓畔林を訪ねました。
クマが好むドングリなどの木の実は、落葉広葉樹にできますが、昭和20年代から30年代の森林開発で針葉樹が増え、木の実は減っているといいます。
「たくさんなって、たくさん食べられる状況の中で、どんぐりは重要なんですよ。本来で言えば、もっと重要なものがあったんですよ。それが魚なんです。渓流魚。」(広島フィールドミュージアム 金井塚務代表)
山林を流れる小川には、渓流魚のゴギが泳いでいました。金井塚さんによると、今はゴギの産卵期にあたり、クマは浅瀬に集まるゴギを狙って食べます。しかし、そのゴギも砂防ダム建設などの影響で減っているといいます。
「ものすごい少ない。砂防ダムを支流に作って、本流にダムを作って循環を止めてるから魚も行き来できない。山がそれだけ貧しくなってんだよね。」(広島フィールドミュージアム 金井塚務代表)
金井塚さんは、細見谷渓畔林に監視カメラを設置し、クマの生態を調査しています。今回、10台のカメラで撮影された2週間分の映像を回収しましたが、クマは全く映っていませんでした。これまでおよそ15年間の調査で、初めてのことだといいます。
「どんどん本来の生息場所であったところからいなくなっている。出て行っちゃっている。」
金井塚さんは木の実や渓流魚などのエサが不足していることを背景に、クマの生息範囲が広がり、人里に及びつつあるとみています。ツキノワグマは、人を襲うケースがある一方で、絶滅危惧種にも指定されています。金井塚さんはクマが人里を離れ、本来の生息地に戻れるように、山林の再生を進めることも大切だと話しています。
熊森から
中国テレビさん、戦後の林野庁の拡大造林政策や建設省(国交省)のダム開発によって、奥山にひっそりと棲んでいたクマたちが人里に追い出されたことを報道してくださってありがとうございます。
ただし、クマに人間を襲う習性はありません。あくまで人身事故であって、「襲う」という言葉を使わないようにしていただきたいと要望します。この間違ったマスコミ言葉の使用によって、クマを危険と誤解する人達が増え、殺処分が当然視される国になってしまっています。
兵庫県に同調か 京都府行政が無害グマを大量殺処分 9月末クマ捕殺数過去最多110頭
3年前から近畿地方では、兵庫県以外に京都府でも、前代未聞、クマを大量に捕殺しています。
そのバックには、調査委託した業者からの、京都府におけるクマの推定生息数が激増しているという報告があります。(熊森はかれらの推定数計算方法に、根本的な疑問を持っています。広域を隠れて動くクマの生息数など、人間にわかるものではありません。しかし、数字化されると科学的だと誤解して信じる人が増えるので困ったものです)
京都府としてはこの報告書を信じ、農作物などに被害を出したクマを捕殺するこれまでの有害捕殺に代わって、平成29年から「被害未然防止捕獲」という名の大量捕殺法を導入しています。
更にクマ数を減らそうと、京都府は絶滅寸前種として平成14年から禁止してきたクマ狩猟を再開する方向にまで進んでいます。
どうして京都府は兵庫県とまるで同じ道を歩んで行くのでしょうか。
先に捕獲強化体制を敷いた兵庫県の影響を受け、同調しているのでしょうか。兵庫県が音頭を取って、京都府、大阪府、鳥取県、岡山県の2府3県で、2018年からツキノワグマについて広域連携をということで、「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会」を立ち上げました(2018年10月30日設立総会、於:兵庫県県民会館亀の間、担当課:兵庫県農政環境部環境創造局鳥獣対策課)。
以下は、日本学術会議のHPに掲載されている兵庫県森林動物研究センターの横山真弓研究員の「兵庫県における野生動物管理の体制」という資料です。「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会による個体群管理への取り組み」が紹介されています。
この図を見ると、横山研究員が、兵庫県の鳥獣対策を周りの府県に広げていこうとしている同調圧力を感じます。
この協議会で広域での個体数推定や被害対策等を定めた「広域保護管理指針」を取りまとめ、平成33年度に各府県が策定する次期ツキノワグマ保護(又は管理)計画に反映させる予定だそうです。
尚、この協議会は、私たちの税金で運営されているにもかかわらず、設立総会も今後の協議会も、マスコミの傍聴は認めるが、日本熊森協会の傍聴は認めないという回答が兵庫県庁担当部署からなされています。27年間クマ問題を研究し、クマとの共存のために実践活動を推進してきた当協会を排除するとは、どういうことでしょうか。
長年にわたるクマ研究団体として、熊森はこの協議会の科学部会委員就任を希望しましたが、兵庫県に拒否されました。野生動物保全に関わる重要な政策決定が密室で行われる形になってしまっているのは大問題です。熊森は学術論文を出していない博士号を持っていない。よって参加できないとこれまで兵庫県に言われてきました。しかし、日本に今もクマが残っているのは、研究者が活躍したからではなく、人々のクマへの共感であり、殺生を避ける文化です。
一方、西中国山地3県の科学部会は、ツキノワグマの本来の生息地は劣化し続けており、目撃数や捕獲数が増えたものの、これはドーナツ化現象であり、ツキノワグマ推定生息数の総数は微減でクマは危機的状況にあると発表しており、熊森協会と見解が一致しています。
真実はひとつのはずですが、府県行政がどの研究者の見解を採用するかによって、クマ対応は正反対となります。
今回の京都府新聞記事「増えるツキノワグマ1400頭」を見ると、京都府は生息数が増加しているという兵庫県森林動物研究センター研究者と同じ結論を採用したことになります。
しかし、京都府の山を長年見てきた熊森協会としては、ミズナラのドングリや昆虫などの重要な食料を失った京都府のツキノワグマが何故激増できるのか、万一激増しているのなら何を食べているのか、全くのミステリーで腑に落ちないことが多々あります。もし、人間が大量に山に放置している有害捕殺後のシカの死肉を食べて増えてるのであれば、責任を問われるのは人間の方です。
10月17日、室谷会長ら熊森本部3名、熊森京都府支部3名、長年熊森を指導してくださって京都府在住の研究者の総勢7名で、担当部署である京都府農村振興課(注:京都府では今年から、クマは農村振興課?!が担当することになった)を訪ねました。ありがたいことに、新聞記者が同席してくださいました。
どこの行政もそうですが、行政担当者はふつう3年ごとに部署が変わるため、「春からこの部署に来ました」などと、新任が担当することが多くあります。自然界のことはわからないことが多すぎるため、3年間の担当期間では行政担当者はとても研究者に物言えるような見識までは持てません。結果、良くわからないので、委託した研究者の結論を信じるしかないというのが、現状のようです。
春の時点で、銃によるクマ捕殺許可証を多発し、罠に誤捕獲されたクマを大量殺処分していた京都府
担当者との話で、以下のような京都府のクマ捕殺体制の問題点が明らかになりました。
1、人間活動により荒廃した奥山生息地が、放置されたままである。スギやヒノキの放置人工林の自然林化に取り組むべきである。(共存に一番大切な生息地保障がなされていない)
2、まだクマが出ていない4月の段階で、すでに捕獲者(猟師)に、銃によるクマ駆除許可を大量に出している。集落や田畑から200m以内に設置された、シカ・イノシシを捕獲するための無数の米糠誘引剤入りの箱罠・くくり罠の常設罠にクマをおびき寄せている。かかったからとして、何の被害も出していない誤捕獲グマをすべて殺処分している。(倫理観の欠如)
3、京都府はクマ保護計画という名の計画を作成している。しかし、中身は保護の観点が抜け落ちた完全な管理計画であり、「被害未然防止捕獲」という名目で、実態としては個体数調整捕殺をどんどん行っている。(中身と実態が真逆の行政言葉はおかしい)
4、これだけ多くのクマを駆除しているにもかかわらず、奥山の本来のクマ生息地で、ナラ枯れをはじめ、シカの食害や地球温暖化による下層植生の衰退が進み、奥山にクマが生息できる環境がもはやないことを把握していない。(業者や猟師に丸投げ対応になっていないか)
5、人間に被害を与えられるはずもない赤ちゃんグマまで、母子ともに殺処分している。(3つグマ獲るなは、猟師でさえ守ってきた掟です)
京都府 2019年9月末までの捕殺グマの体重別頭数(熊森がグラフ化)
(クリックで大きくなります)
特に、1に関しては箱罠だけではなく、無数に設置されたくくり罠に間違ってかかってしまったクマまで、全頭殺処分されており、兵庫県同様の最悪の無差別捕殺といえます。
これらの捕殺実態は、これまた兵庫県同様、京都府民に全く知らされておらず、同席した熊森京都府支部会員たちも、大きなショックを受けていました。
このような人としての倫理観が欠如した残虐極まりない乱獲をやめさせるためには、多くの人達がこの事実を知り、声を挙げるしかありません。
【北海道標茶町】家畜被害が沈静するも、いまだに捕獲罠が設置され、無実のヒグマが捕殺されていく
今夏、北海道標茶町の牧場で、ヒグマが乳牛を襲う事件が相次ぎました。
どうしてこのような事件が発生したのでしょうか。
事件を起こしたヒグマはまだ捕獲されておらず、今もなお、捕獲罠が設置されたままです。
北海道では捕獲されたヒグマの放獣体制がいまだに皆無のため、これまでこの罠に誤ってかかってしまった無関係のヒグマが5頭も捕殺されています。
このことを問題視した熊森本部が、標茶町の担当者に電話で問い合わせました。
〈以下、担当者とのやり取り〉
熊森:今年、8月から9月にかけて、ヒグマによる乳牛被害のニュースを見ました。現在も被害は続いているんですか?
標茶町担当者:8月から発生し、9月18日を最後に被害は止まりました。
熊森:具体的にどんな被害があったんですか?ヒグマが乳牛を襲って食べたのですか、それとも圧死ですか。
標茶町担当者:今回、放牧中にヒグマに襲われて死亡したと思われる乳牛は12頭です。死因は、ヒグマにはたかれたり引っかかれたりしたことで首の頸動脈や脇を損傷して失血死したものがほとんどです。確実にヒグマが食べたと思われる乳牛は1頭です。発見されたときその乳牛はかなり腐敗が進んでいましたから、ヒグマに襲われて死んだのではなく、何らかの原因で病死して腐敗していた乳牛をヒグマが食べに来た可能性もあります。
また、一命はとりとめましたが、ヒグマに前足ではたかれたのか、ヒグマの爪痕がついてケガを負った乳牛や、その爪痕から感染症を引き起こしてしまった乳牛も13頭います。(ということは25頭もの乳牛がヒグマの被害に遭ったわけだ)
熊森:今回のヒグマは、何のために乳牛を襲ったのでしょうか?食べるためではないようですね。
標茶町担当者:詳しい原因は分かりません。猟友会の方のお話では、手負いグマなのではないかという推測もあります。真相はわかりません。
熊森:今回これらの乳牛を襲ったヒグマは特定されているんですか?
標茶町担当者:はい、体重300㎏近い1頭のオスの大きなヒグマだと思われます。
今回の被害があった牧場には、肉球の足幅18cmという大きなクマの痕跡がありました。標茶町は町域の中央を釧路川が縦断していますが、この川の西と東でヒグマによる乳牛被害が立て続けに発生した訳です。被害にあった乳牛の傷跡が同じことと、牧野の周囲に張り巡らされた鉄線の先に付いていた体毛のDNA鑑定結果からも、川の西・東とも事件を起こしたのは同じクマであることがわかりました。実際、被害現場付近に自動撮影カメラを設置したところ、大きなヒグマが撮影されました。
熊森:町のHPに、クマの家畜被害があった場所をプロットした地図が出てきますが、その現場に罠をかけているんですか?
標茶町担当者:はい、家畜被害があったその現場に罠をかけています。現在も5基設置してます。
熊森:そのヒグマは罠に捕獲されたんですか?
標茶町担当者:これまで、5頭のクマを捕獲しましたが、事件にかかわったクマはまだ捕獲されていません。
熊森:誤捕獲された5頭のクマはその後どうなりましたか?
標茶町担当者:すべて、殺処分しました。
熊森:それは、むちゃくちゃですよ。事件に関与していないクマだと知りながら殺処分ですか。山に返してあげるべきじゃないですか。問題を引き起こしたクマがかかるまで、罠を設置し無関係のヒグマを獲り続けるんですか?
標茶町担当者:はい。来年も、同じ事件が起きるかもしれませんので。
熊森:北海道のクマ管理計画を読まれましたか?原則はクマを殺さないでクマ対策を行うことになっていますよ。どうしても捕殺が必要な場合は問題グマのみ確実に捕殺すべきで、標茶町のやり方は、北海道のクマ管理計画に反して、乱獲になっていると思います。事件に関与していないクマが捕獲された場合、放獣してやれませんか。
標茶町担当者:海外と違って、北海道にはヒグマの放獣体制がないのでむずかしいです。今後もこうした被害が発生してはなりません。
熊森:捕獲罠を設置して問題グマがかかるまで無実のヒグマを何頭も捕り続けるのですか?それはもはや共存とは言えません。ヒグマが牧野に入ってきた侵入経路を探して、電気柵などでそこを通れないようにしておくことが必要です。人間側が知能を使って被害防除を考えないと、罠設置だけでは問題は解決しないですよ。電気柵は設置されていますか?
標茶町担当者:していません。
熊森:ぜひ、柵を設置してください。このような事件が今後起きないようにするには、まず被害防除です。9月に標茶での事態がおさまってから、近隣の自治体で同様の被害が発生していませんか?また、標茶の周辺自治体で、このDNAをもったヒグマが捕殺されていませんか。
標茶町担当者:今回の事件は道内でも非常に珍しいケースのようで、他の自治体では起きていません。隣接の釧路市、厚岸町、鶴居村、弟子屈町には、このヒグマの情報をお知らせして捕獲があったら連絡してもらう体制をとっています。今のところ、その特徴を持ったヒグマの捕獲はないようです。
熊森:中標津町や、別海町ではどうですか?
標茶町担当者:隣の根室振興局になりますので聞いてません。
熊森:ヒグマはそれぐらい移動するので、その地域にも聞いておいた方がいいと思います。
標茶町担当者:たしかに確認したほうがいいですね。聞いてみます。
熊森:昨年、羅臼の方で飼い犬がクマにやられて死亡する事件が相次ぎましたが、その時のクマが屈斜路・阿寒の山々を伝って標茶に入ってきた可能性もあります。
標茶町担当者:じつは、羅臼町の担当の方が、今回の乳牛被害のニュースを見られて電話してこられたんです。羅臼でも同様の問題が昨年あったと。その時のクマではないか?と。その時のヒグマはうちの町で出ているヒグマよりもっと小さいクマだということで、話を聞く限り別グマです。(羅臼町の件は、飼い犬がヒグマに食べられる瞬間を家主が見ておられたので、ヒグマの特徴が把握できたそうです)。羅臼でも、そのヒグマの捕獲にはまだ至っていないそうす。
熊森:ぜひ、周辺自治体のみなさんで連絡を取りあっていっていただきたいです。ただ、今設置されている罠は、今被害が落ち着いているのですから、蓋を閉めるか誘因物を除去していただきたいです。別のクマを引き寄せますし、無実の無害グマを次々と獲って殺処分していくのは問題です。
標茶町担当者:また内部で話して、相談します。
〈熊森から〉
標茶町担当者様におかれましては、お忙しい中、当方からの電話に丁寧に対応していただき、誠にありがとうございました。
罠閉めをだいぶんお願いしたのですが、今年は雪が降るまでこのまま罠を設置するそうです。
これだけの被害があると、酪農家のみなさんの怒りは相当強いと推察します。しかし、罠にかかったクマが事件と無関係なクマであるとわかっていながら全て殺処分というのは、生態系保全上、倫理上、教育上、大変問題です。誤捕獲グマは、車の中からロープを引いて罠の扉を開けるなど、放獣時にけが人が出ないように細心の注意を払って放獣すべきでしょう。みなさんはどう思われますか。賛同していただける方は、6頭目の無実のヒグマが殺処分される前に、声を標茶町に届けてください。
【連絡先】
標茶町農林課 住所:〒088-2312 北海道川上郡標茶町川上4丁目2
TEL: 015-485-2111 FAX:015-485-4111
お問合せリンク:https://town.shibecha.hokkaido.jp/contact/index.html
10月27日 ナショナル・トラストに成功した滋賀県北部トチノキ巨木群観察会
今も、クマが棲める森に感激~2019.10.27~
業者に買われて伐採されそうになっていた滋賀県長浜市の奥山に、人知れず存在するトチノキ巨木群数十本。
「びわ湖源流の森林文化を守る会」は、地元のみなさんと力を合わせて、これらの巨木群を2年半に亘る裁判とナショナル・トラストによって未来永劫に守り抜きました。もちろん日本熊森協会も、精一杯協力しました。
この日は嬉しいお披露目観察会です。
兵庫勢は、巨木もさることながら、クマたちが安定して棲んでいる森だということで、どんな森か1回見ておきたいと思い参加しました。
嘉田由紀子元滋賀県知事(現参議院議員・熊森顧問)やトチノキ裁判で弁護士として巨木所有者の代理人も務めた日本熊森協会の室谷悠子会長、村上滋賀県支部長ら支部員、守る会の共同代表の野間直彦滋賀県立大学准教授、岡田直紀京都大学准教授、ナショナル・トラストを成功させるために寄付してくださった方々など30名がJR木ノ本駅に集まりました。遠く埼玉県から来られた方もおられました。
チャーターされた定員いっぱいのバスに乗って奥山に向け出発です。
車中、守る会の代表である小松さんの挨拶、室谷悠子会長から裁判の経緯、嘉田参議院議員からは保全に成功するまでの裏話・・・どれも大変興味深かったです。自然を守るために本気で闘った滋賀県のメンバーをすごい人たちだと改めて思いました。お話を聞いているうちに、もうここからはバスが入れないという地点に来ました。この後は、ひたすら歩きです。
それにしても、滋賀県のこんな山奥にまで、スギがびっしり植えられて放置されているのには驚きました。
戦後、拡大造林政策が始まったころ、ある研究者が、スギの人工林は自然林より水源涵養能力が高いという論文を発表したため、それを信じてみんなで競って滋賀県民はスギを植えたんですと嘉田さんに教えてもらいました。いつの世でも、間違ったことを発表する学者の罪は本当に大きい。
奥に入っていくと、20年前の兵庫県の森とそっくりのなつかしい豊かな自然林が目の前に現れました。
「滋賀県には、まだこんな森が残っていたんですか!」
「これはすごい!まさに、クマの楽園だ」
私たち兵庫県からの参加者は、目を見張りました。
しかし、滋賀県でもこんな森が残っているのは、北部だけで、高島市の奥山などは、もう下層植生も昆虫も消えてしまっているということです。
一見豊かに見えるこの森も、実は、冬籠り前のクマたちのドングリの餌となるミズナラが、ナラ枯れでほぼ全て枯れてしまっているそうです。足元には、ミズナラの稚樹が何本か芽生えていましたが、育つのかどうかはわかりません。
まだ少しですが、ここにもシカが入り始めているということで、少しシカ糞がありました。この森が今後どうなっていくのか不安ですが、とにかくこの日は皆で今もクマの棲める森を楽しませてもらうことにしました。
今年は、ブナ・ミズナラが凶作ですが、何とこの森にはオニグルミの木が何本かあるのです。よかった、クマたちの食べ物がまだ残っていたのです。クマ棚がしっかりとできていました。
オニグルミの木の下には、クマにボキボキに折られた太い枝が大量に落ちていました。さすがにオニグルミの木も危機感を感じたのでしょう。折られることを免れた樹上の枝には、まるで春のように黄緑色の若葉があちこちから芽吹いていました。
草原もところどころにあって、様々な草花が咲いていました。ここは雪が3メートル積もるという豪雪地帯だそうです。草原のあるところは、雪崩が毎年起きる場所です。宮澤正義先生が、いつも、クマが季節ごとの食料を得るためには、森があるだけではダメで、川はもちろん、草原や湿地や様々な地形が必要であるとよく語っておられたのを思い出しました。まさにこの森は、そのような場所がすべてそろった自然の森です。
広葉樹林の森の保水力は、さすがにすごいです。
途中何度か川を渡りました。水量が多く、手を引いてもらわなければ渡れない場所も何か所かありました。
昼食後も、まだ歩くのですかと言いたくなるほど奥に進んでいきました。そしてついに到着。トチノキの巨木です。
何百年生きた巨木には、何とも言えない迫力と神々しさがあります。
斜め上にあるのは、ケンポナシの巨木です。これも、ナショナル・トラストした巨木のうちの1本です。
急斜面でしたが、室谷会長がさっさと登って行きました。大きな洞があって、木の下にはクマの糞があったそうです。
やはり、この奥山の森には、今もクマが棲んでいます。
ここには、まだまだ私たち自然保護団体が守った巨木があと数十本あるようですが、2本見るだけで大変でした。
残りの巨木群は、山岳系の人でないといけないような場所にあるようで、指でどのあたりかだけ教えてもらいました。
この日、ずいぶん歩きましたが、疲れよりも満足感でいっぱいでした。
クマの棲める本物の森を堪能しました。
下見もしっかりして完璧にお世話くださったスタッフのみなさんに心から感謝申し上げます。
私有林なのに、特別に私たちに入山許可を出してくださった山主のみなさんたちにも感謝です。(完)
10月19日(土)クマ大量捕殺問題を考える会 翌日は恒例の熊森クマ生息地ツアー 於:兵庫県
- 2019-11-17 (日)
- くまもりNEWS
本部は10月19日(土)、兵庫県尼崎市の尼崎商工会議所会館で、熊森から見て全国ワースト1である兵庫県と京都府のクマ対応について考える会を持ちました。
なんと東京都支部からも自費参加者が1名ありました。
守りたいあまり兵庫まで勉強しに来た、その情熱に拍手です。
こんな人がもっともっと増えてほしいです。
この会は昨年までは、兵庫県のクマ狩猟再開問題を過去3年間取り上げてきましたが、今年は去年にも増してクマが大量に捕殺されているため、狩猟問題よりさらに大変なこの問題を取りあげました。(行政が次々とクマ保護政策を後退させていくため、自然保護団体として熊森がなすべきことが増える一方です)
行政の問題点
まず、日本熊森協会の室谷悠子会長が、クマを大量に捕殺している行政の問題点を40分間話しました。
・大量のクマ捕獲用箱罠を常設
「以前は、農作物などに被害が出た場合、その被害に対して被害者が有害捕獲を役場に申請し、許可が下りたらドラム缶檻を1か月間設置し、捕獲してもらう。捕獲されなかった場合は捕獲罠を片付けるというシステムが普通でした。
森林動物研究センターの研究者たちのクマ激増説に基づくのか、兵庫県は平成29年(2017年)7月から、これまでシカやイノシシを捕獲してきた10000を超える県内常設箱罠のうち2379基にクマ札を付けて共同捕獲罠とし、クマがかかったら問答無用で全て殺処分するという方針に切り替えました。尚、今年のクマ推定生息数は830頭だそうです。」
・誘引物として米糠を使用
「罠の中に入れている強い誘因物=米糠で、山からクマを集落近くに誘引しています。」
・無害グマまで有害として捕殺
「米糠に誘引されてクマ札付き箱罠にかかったクマには全く実害のないクマがたくさん含まれているにもかかわらず、全て殺処分します。被害など出しようがない赤ちゃんグマであっても殺処分していました。その結果、過去最多の91頭ものクマを駆除してしまいました。
兵庫県のクマ管理体制は研究者のための?大量虐殺であり、熊森がめざしている公正で動物倫理にそった共存や棲み分けとは程遠いものです。
地元の方々の声と被害防除
続いて、本部クマ担当の水見が、兵庫県のクマ生息地の方々の生の声と被害対策のあり方について話しました。
県はクマの被害などまだ何も発生していない春の時点で、大量のクマ捕殺許可書を前もって地元に出しています。
米糠で無害グマを集落周辺までおびき出して捕殺してほしいというのは、本当に地元の総意なのでしょうか?
開場風景
・地元の声(取材動画)
昔からクマだけじゃなく多くの野生動物と共存してきた。今年、すでに90頭ものクマが殺されていたなんて、わしらは全く知らなかった。ショックだ。自分たちが昔スギばっかり植えたので山にクマたちの餌がもうない。かわいそうだ。
・被害防除
生ごみなどの誘引物を屋外に置かないようにしたり電気柵を設置したりして、クマを集落に寄せ付けないことが一番です。(行政は、大量の米糠入り罠を設置して集落周辺にクマを呼び込むというしてはいけない真逆をしている。人身事故を誘発しており、県の責任は大きい)
クマが出て来る時期には、車で移動したり、夕方~夜~朝までのクマと遭遇しやすい時間帯には鈴などを持ち歩き、クマに人間が近づいてきたことを知らせてやることで多くの人身事故は防げます。
奥山を開発や人工林で動物たちが棲めない山にしてしまった人間には、昔のように食料豊かな山を奥地に再生して、人とクマとの棲み分け共存を可能にしてやる責任があります。
参加者の意見交換
発表後、集会に参加された方々とみんなで意見交換を行いました。
翌日は、1日かけてクマ生息地ツアーです。
奥山は紅葉が始まっていました。ブナには無数のクマの爪痕がついていましたが、どれも古いものばかりで、今年の爪痕は見つかりませんでした。糞も全く見つけられませんでした。
話が少し前後しますが、熊森本部は今年も10月7日、 クマ狩猟講習会場で、クマ狩猟中止を呼びかけるチラシを参加した猟師たちに配布しました。兵庫県は、この後のクマの有害捕殺数の伸びを見て狩猟をどうするか考えるそうです。講習会には神戸など遠くからも意外と多くの70人程度の猟師が来ていました。
今年も講習会の傍聴はマスコミに許されただけで、熊森は建物内に入ることさえ拒否されました。チラシを配りかけると、敷地内から出るように県の職員に言われました。一応従いましたが、公的な建物なのに敷地に立ち入ることも許されないなんて、ひどい話です。県民として怒り心頭です。