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2020-05
全国各地で投資目当ての外資メガソーラーが日本の山野を食い物に 奈良県平群町建設予定地視察
兵庫県の緊急事態宣言が解除された翌日の2020年5月22日。森山まり子名誉会長が出かけて行ったのは、「たたみごも平群の山」と『古事記』や『日本書紀』、『万葉集』にもうたわれた奈良県生駒市平群町です。
今、この町で、アメリカに本社がある投資会社によって、平群の起伏に富んだ山野を48ヘクタールも切り崩し、谷を埋め、一枚の巨大な斜面にして、太陽光発電パネル6万枚のメガソーラーを作る計画が持ち上がっています。
何とかこの計画を阻止しようと、今、地元熊森会員らが「平群メガソーラーを考える会」を結成して、反対運動を繰り広げています。少しでも力になれないかと森山名誉会長が出かけて行った次第です。
熊森は太陽光発電を否定しているわけではありません。しかし、山野を大がかりに切り崩しての太陽光発電は絶対に認められません。もう我が国は十二分に山野を破壊してしまいました。今残されている山野はいずれも大変貴重であり、そこは人間によって肥沃な平地から追い立てられた様々な生き物たちが、最後の命を輝かせている場所なのです。
しかも、山野の複雑な地形にはすべて自然界としての意味があるのです。それらを無視した造成では、野生生物だけではなく必ず人間にもしっぺ返しが来ます。山崩れなど、どれだけの人災が起きたら人間は目が覚めるのでしょうか。
赤い線で囲まれている山林部分が開発予定地です
近鉄生駒線終点の東山駅で落ち合い、まず最初に開発されるという森を、考える会の皆さんに案内していただきました。
開発予定地の山林です
近くには万葉集に登場する竜田川が流れ、古墳時代、奈良時代など、いにしえの貴重な遺跡をあちこちに残す由緒ある土地です。人工林の率が極めて高い奈良県にあって、なぜか平群町は、人工林率20%程度。ほとんどが自然林なのです。生い茂るアベマキやコナラの巨木群がフラワーロードという大きな農道沿いから見えます。桐の花がきれいに咲いていました。シカがいないのでしょうか。下草もびっしり繁っています。鳥の声があちこちから聞こえてきます。
コンクリートジャングルの中で日々暮らしている都会の住民としては、平群の自然豊かな山林は全て歴史的景観として傷つけず保存しておきたくなります。
目先の金もうけにしか関心のないような外資系企業に、なぜ、私たちの国土を売り渡さなければならないのかと憤りを覚えます。残念ながら、今の所、規制する法律はありません。すでに平群の山野は、何カ所かが残土処理場にされており、農道には埋め立てなどのためトラックが行きかっていました。すべて、目先のお金目当てなのです。胸が痛みました。
この山野の谷を埋め立てるとどうなるのか。大雨で崩れてしまうことは小学生でもわかることです。しかし、開発業者は、小さな調整池を三つ作ることで安全性は確保されると主張しているそうです。木々や下草がしっかりと根を張り、山が水を吸収する健全な森以上に確かな防災はないのですが。
実際の開発にあたる東京の子会社を調べると、マンションの一室が事務所で、その部屋には他にも650社が名を連ねているそうで、実態が何かさっぱり見えないペーパーカンパニーのようです。これらの会社の資本金は1円とか10円とか多くても10万円だそうです。もし開発後、災害が起きたり何か不都合なことがあっても、弁償する能力があるのでしょうか。どうして国は、このような実態が不明確な会社に、貴重な自然を破壊し、地域に災害をもたらす恐れのある巨大開発を認めるのでしょうか。
「平群メガソーラーを考える会」のブログ
視察後、事務所で、考える会の5人の方々と長時間懇談しました。
最初に森山名誉会長が「本気の3人がいたらどんな運動も勝てる。日本の自然が守れないのは、大人がみんな弱虫だから」という恩師の言葉を紹介しました。その後、何らかを参考にしていただきたいとして、行政も裁判所も開発を止めることはできないなかで、どうやって住民運動で無茶な開発を止めたか、体験談を話しました。
考える会の皆さんからは、行政と協定書を交わしたはずの開発企業がいつの間にか消え、別の開発企業に変わっていく、住民説明会に参加したが、業者が質問に明確に答えないなど、様々な不安が出されました。
うかがった話の中で一つ、希望のある話が聞けました。
岩手県遠野市の条例です。遠野市はすでに山野を削ってメガソーラーが建設されてしまいましたが、その後、大雨で山から濁流が噴き出すなどの被害が出るに及んで、1ヘクタール以上のメガソーラーを作らないという市独自の条例を制定したのです。
この遠野市の条例を、日本全国に広めなければならないと思いました。
今回お会いした皆さんは、熊森の小冊子「クマともりとひと」を読んで「とても感動しました」「知り合いや子どもに読ませたい」とおっしゃってくれていました。
いろんな人生がありますが、次世代に責任を持ち誠実に生きようとする人間なら、最終的にはみんな同じところに集まってくるのではないかと思いました。
社会を動かし、世の中を変えるには会員数が必要です。ぜひ皆さんに、次々と生き物や森を守っていっているくまもりの会員になっていただきたいです。
(くまもりへの入会はこちらから)※年会費1000円から入会できます。
筆者は、新入職員として初めてこうした集まりに同行しました。
思ったことを以下に書きます。
①住民として、災害が起きた後の補償を企業に求めるのではなく、災害が起きると予測される開発を企業に絶対にさせないことが大切。濁流にのまれた家や命は、たとえ大金を積まれたところで、元に戻るものではありません。
②人間が手を入れ続けないと山林が荒れるという誤解を振り払う必要があります。考える会の人たちの中にも「自分たちも高齢になってきたので、山林を維持できなくなるのでは」という不安を持っておられる方がいました。人間が手を入れ続けなければ荒れるのは、人工林です。スギやヒノキの単相林や、昔の里山のように人間が作り上げたマツタケ山やクヌギ・コナラ・などの落葉広葉樹は、確かに人間が手を入れ続けなければ保てません。しかし、放っておけば一時期バランスを崩したとしても、その土地の気候風土にあった健全な森に移行していき安定します。
人間が手を入れて荒れる自然はあっても、人間が放っておいて荒れる自然などありません。
もう今は少なくなりましたが、未開の地を見ていただければ一目瞭然です。
平群のメガソーラーが、住民の力で白紙撤回されるよう心から祈ります。
これまで熊森は、尾根筋の風力発電問題に取り組んできましたが、今後は、自然保護団体として、山野を削るメガソーラー問題にも取り組んでいきます。
緊急事態宣言解除を受けて、よりパワフルに活動していきます
- 2020-05-26 (火)
- くまもりNEWS
いつも応援いただきありがとうございます。
新型コロナウィルスの感染拡大と緊急事態宣言に伴う社会、経済の混乱の中、大変苦しい思いをされている方々がたくさんおられるのではないかと心配をしています。
この間、熊森もテレワーク中心に切り替えざるを得ませんでしたが、活動を継続できたのは、ひとえに支えていただいている会員のみなさまのおかげです。改めて心からの感謝を申し上げます。
新型コロナウィルスにより、自然環境を破壊し、貧富の差を助長してきたグローバル化する世界の欠陥が浮き彫りになりました。
人がもっともっと自然や他生物に謙虚になり、彼らと共存できる、地域に根差した持続可能な社会をつくらなければならないという、日本熊森協会の活動は、今後いっそう重要になってくるはずです。
まだまだ感染対策が必要なときですが、感染防止を図りながら、①野外での自然保護活動、②感染対策をとった少人数での集まり、③インターネットを使ったWeb上の集まりなどに力を入れていきます。
1人1人の行動が社会を変えていく力となることはこれからも変わりません。
全国のみなさまとともに、自然保護を進めていけるよう活動に工夫をしたいと思います。ぜひ、できる形で、日本熊森協会の活動にご参加ください。
会長 室谷 悠子
◆活動報告会◆
全国大会ができなかったので、活動報告会を開きます。全国のみなさんにも、参加いただけるようにインターネット報告会の開催にもチャレンジします。詳細は、近日中にご連絡します。
7月5日(日) 14時~16時 芦屋市民センター本館401室
7月11日(土) 13時30分~ Zoomでのインターネット報告会
◆クマの乱獲の規制を求める署名◆
緊急事態宣言下でもたくさんの方にご協力いただき、現在、署名数はネットと紙の署名合わせて3000筆弱です。まだまだたくさんの方のご賛同が必要です。9月末までに2万人を目標に頑張りたいと思います。ぜひ、ご協力ください。
【署名用紙はこちらから】
http://kumamori.org/files/1515/8590/4188/20200403175627001.pdf
【ネット署名はこちらから】
【クマ署名プロジェクトチーム インターネット会議】
6月6日(土)13時30分~15時まで
署名をたくさん集めるためプロジェクトチームのZoomでのインターネット会議を開催します。スマホ、パソコンで全国から参加できます。参加を希望される方は本部までご連絡ください。
◆最新情報はブログ・Facebookで◆
クマのこと、森のこと、日々の活動を随時発信しています。シェアして、活動を広めていただくことも応援になります。
【ブログ】 http://kumamori.org/news/
【Facebook】https://www.facebook.com/JapanBearForestSociety/
◆小冊子「クマともりとひと」売れています◆
2007年1月の刊行以来54万部を発行してきた1冊100円の小冊子の売れ行きが好調です。
最近も有名なブログで小冊子をとりあげていただいたこともあり、本部に問い合わせや注文が相次ぎ、たいへん好評を集めています。
社会を動かすにはさらに多くの会員数が必要です。身近なお知り合いにぜひ小冊子を配っていただき、それぞれのみなさんが1年に1人でも2人でも会員を増やしていけるとうれしいです。
http://kumamori.org/subcategory/books/booklist/moriyama-kuma/
5月26日動物の餌場づくり(兵庫県豊岡市)
緊急事態宣言が解除されて初めての野外活動。雨の中、本部スタッフ4人が苗木の植樹や 、鹿よけ柵の補修にあたりました。
富山市の事故例から:ツキノワグマによる人身事故を減らす方法
富山県で、クマによる人身事故が発生しました。
お怪我をされたお二人の方に、心からお見舞い申し上げます。
それにしても、どうして人身事故が発生してしまったのでしょうか。
このクマを生かして山に返してやることはできなかったのでしょうか。
<以下、報道から>
警察や市によると、5月17日(日)朝8時28分に「高速道路ののり面にある繁みに1頭のクマがいる」という目撃情報が入りました。
午前9時25分ごろ、同市石田の無職、Kさん(92)が自宅の家庭菜園で作業していたところ、クマに遭遇。驚いて転倒し、左脚の骨を折りました。約5分後に、近くの畑で農作業をしていた同市小杉の飲食店経営、Iさん(84)がクマに右腕と右脚をかまれました。2人とも県立中央病院に運ばれましたが、命に別条はありませんでした。
午後1時15分、クマは民家の庭に逃げ込んだところを警察官立ち合いの元、猟師が銃で射殺しました。若いメスグマでした。
現場は北陸自動車道の南側で、富山地方鉄道上滝線の布市駅に近く、周辺には住宅地があります。
熊森から
富山市の担当者に電話で聞き取ったところ、現場周辺にはクマを引き寄せるものは何もなく、どうやってそこまでクマが来たのか、経路もわからないということでした。胃の内容物は草だったそうです。
熊森としては、現場近くの地理的特徴から、このクマは人目に付かない時間帯に、河川敷に沿って草を食べながら山から出てきたのだろうと思います。その後、山に帰りそびれたクマは川の繁みを伝って移動していたのではないでしょうか。その際、何らかのきっかけがあって(障壁があった、あるいは人を避けたなど。ちなみに現場の近くにある富山空港は、神通川の河川敷が滑走路になっています)北陸道ののり面に出てしまったようです。一般に、ツキノワグマは、人をとても恐れています。今回のメスグマも。人に見つかって恐怖におののいたと想像できます。
目撃情報を得て、日曜返上で、市担当者、県担当者、猟友会、警察など皆さんが現地に駆け付けられ、クマの捜索に当たられたそうですが、クマは見つからなかったそうです。クマは、これらの人間の動きを息を潜めてそっと見ていた可能性があります。
捜索中も、一般市民から、クマを見かけたという情報が次々と入り続けていたそうです。
多くの人間がクマを追いかける。多くの市民が屋外にいる。この状況が人身事故を誘発するのです。
何とか改善願いたいものです。
このクマは、人間から逃げようと走り回った結果、次々と人間に見つかるはめになり、もうどうしていいかわからず、パニックになってしまっていたのでしょう。
必死で逃げているときに、急に目の前に現れた人を攻撃して逃げきろうとするのは、人もクマも同じです。こうして、また、人身事故が発生してしまったのだと思われます。
先進的な海外では、このような場合、行政は住民に屋内退避を指示します。全員でクマをそっと見守って、クマが逃げて帰るまで待つと聞いています。「クマ1頭のために、人間活動が制御されるのはおかしい」という考えもあると思います。しかし、人身事故を起こさず、クマの命も守るためにはとても有効なやり方ではないでしょうか。
奥山生態系の保全・再生に取り組んでいる熊森は、日本最大のクマの保護団体でもあります。熊森として、いつも一番恐れているのは人身事故の発生です。
ひとたび人身事故が発生すれば、人も大変です。クマはその場で殺されてしまいます。
本来、平和愛好者であるはずのクマが、マスコミによって人を襲う恐ろしい動物のような誤ったイメージに、あおりたてられて、独り歩きしてしまっています。
どうして人身事故が発生したのか。事故が起こるたびに熊森は調べ、考えます。
人身事故を起こしたクマは、射殺されて当然という声もあると思います。しかし、今回のクマも、人身事故など起こしたくなかったと思います。
海外のように、クマが山に帰りましたという放送があるまで人間が全員家に入っていたら、人身事故は起きませんでした。警察や行政にも責任はあると考えます。
このクマにいつの時点で射殺決定が下りたのかはわかりませんが、富山市は緊急の場合のために、あらかじめ3頭のクマ駆除枠を取ってあるそうです。今回のクマはこの駆除枠を使って射殺したのではなく、警察官職務執行法によって射殺したそうです。
富山県は、県職員が麻酔銃でクマを捕獲する体制が整備されているということで、すばらしいと思います。この体制を使って、民家に逃げ込んだクマを捕獲して山に返してやれなかったのでしょうか。
クマが最後に植物で覆われた民家の庭に逃げ込んだのは、人間たちに追いかけられて、どこかに逃げ込みたい一心だったのだろうと思います。銃を構えた多くの猟友会員に囲まれて、このクマはもう人身事故を起こして逃げおおせる可能性は消えていたと思われます。
現場で対策に当たられたみなさんは、使命感を持って頑張られたと思いますが、初めてのミスで人間の所に白昼留まってしまったこのクマを麻酔銃で捕獲して山に返してやることもできたのではないでしょうか。他生物にも思いやりある優しい社会を作っていきたいものです。
P.S 熊森からの質問に対して、お忙しい中で隠すことなく丁寧に答えてくださった富山市の担当者に感謝します。
暑くなったね、とよにたらい
- 2020-05-02 (土)
- _クマ保全 | くまもりNEWS | 大阪府 | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
本日の最高気温は27℃。一気に、汗ばむ陽気となりました。
プールが大好きなとよは、なんと先日、暑さにたまりかねてか、水飲み用のステンレスバケツに、足を突っ込んでいたそうです。
そこで、プール改修が終わるまでの間、これで我慢してもらおうと、本日、昔洗濯に使っていた大きなたらいを持参しました。
大きなたらいと思ったのですが、とよの前では本当に小さく見えました。
右前足を入れたら、もう一杯です。
何とか水に触れたいトヨが、この後、どうしたか。動画で見てください。
両前足とお顔の半分下をつけたらもう限界。でも、楽しんでくれたようでした。
お寺やお世話隊の愛情をいっぱいに受けて、今ではとよは、人間を信頼しきって生きています。
久しぶりにとよに会って、しばらくお互いに見つめ合いました。
クマがこんなに穏やかでこんなに人の心をいやしてくれる動物だなんて。
テレビ局が撮影に来てほしいな。
家族連れが次々ととよ会いに来てくれました。
とよを見始めると、みなさんのお顔がみるみるゆるんでいきます。
みなさん、ニコニコ顔になって帰って行かれました。
とよの力、すごいね!
プール改修、急ぐね。(完)
「令和元年、市区町村における森林環境譲与税1年目の使途計画」を調査してみて思うこと
2019年に成立した「森林環境税・譲与税法」の付帯決議には、この税は「放置人工林の天然林化」とそのための体制づくりにも使えるという条項が入りました!
熊森のロビー活動の成果です。(既報)
熊森は、この付帯決議が効果を発するよう、まず、全国市区町村議会に「放置人工林の天然林化」に取り組んでいただきたいという請願書を送りました。次に、室谷悠子会長以下本部スタッフや各支部長以下支部員らが直接訪問または電話をかけるなどして、これはと思う市区町村の首長、議員、担当職員に精力的にお願いして回りました。(これまでの活動は、当協会ブログのキーワードに「森林環境譲与税」を入れて検索ください)
また、会員や大学生アルバイトにも手伝ってもらって、これまで数百に上る全国市区町村の使途計画調査を行いました。(大変なエネルギーを要しました!)
群馬県、東京都、静岡県、岐阜県、愛知県、大阪府、兵庫県、岡山県、福岡県、石川県、埼玉県は、全市区町村の聞き取りを終えました。
結果、残念ながら、人工林の広葉樹林化に使おうと考えている町は、まだ例外的なわずかさでした。
日本では奥山荒廃報道がなされないため、森からの湧き水の激減や、生息地を失った野生動物たちの悲鳴に気づいていない行政マンがほとんどで、危機感がないのかもしれません。
以下の円グラフは、使途計画調査の結果です。
<令和元年、市区町村に於ける森林環境譲与税の使途計画>
都府県別の円グラフも作成済みです。せっかくの調査結果ですから、マスコミの皆さんにもデータを活用していただきたいです。
注:森林環境譲与税の使途報告は、1年後に、全国市町村によって公表されます。
熊森から
(1)税の「人口」配分比率に見直しが必要
森林がない又は少ししかない都市部であっても、人口が極端に多いと多額の税が配分されます。その結果、森林整備に使うことと限定されているこの税の使い道が思い浮かばないなど、ありがた迷惑に思っている担当部署もありました。
また、反対に、荒廃した森林は多いが人口が少ないために税の配分が少なくなっている郡部では、この程度の税額では思い切った森林整備に取り組めない。むしろ従来県が徴収してきた森林税の方がけた違いに大きく、今後も林業整備費用はこちらに頼りたいという声もありました。
現在、森林環境譲与税は、50%が「私有林人工林面積」、20%が「林業就業者数」、30%が「人口」の比率によって配分されています。
至急、税の配分比率を再検討すべきであると思います。
(2)都市配分税を、水源の森となる郡部の市町村に回す
当面は、都市部に過剰に配分された今回の森林環境譲与税を、その都市の水源の森がある川上の郡部市町村の森林保全に一定量回すことを、熊森は提案しています。
(3)いまだに森林整備=林業整備という認識の市町村
熊本県の代々の林業家であった平野虎丸くまもり顧問は、森林保全と林業整備を完全に分離しないかぎり、日本の森は再生しないし守れないと主張されています。
これまで我が国における森林整備予算は、林業だけに使われてきたと言っても過言ではありません。(経済第一、人間至上、自然生態系無視、森林で暮らす生物無視)
今回の調査で、いまだ多くの市町村が、森林整備予算=林業整備という発想から抜け出せていないことがわかりました。
平野顧問は、そもそも、業というのは、農業、漁業、工業、商業、全て民間がやることであり、どこの省庁に、業に取り組んでいるところがあるというのか。民間の林業者のためにも、国土保全のためにも、林野庁は、林業から撤退して、本来の行政としての仕事だけに取り組むべきとも強く訴えておられます。
結構多くの市区町村担当職員から、都道府県や林野庁の使途説明会に、「人工林の広葉樹林化」の使途などなかったという声がありました。しかし、林野庁に問い合わせると、きちんと説明したということです。今後、都道府県や林野庁には、この税が広葉樹林化にも使えることを印象付ける積極的な説明をお願いしたいです。
より多くの市区町村が、森林環境譲与税を林業だけではなく人工林の広葉樹林化にも使ってくださるように、熊森は今後も粘り強く全国市区町村にアタックしていきます。
みなさんもぜひ、お住いの市区町村長さんや担当職員に声を届けてください!
<スギ・ヒノキ人工林の広葉樹林化に取り組もうと思われるみなさんへ>
広葉樹林に戻すにはコツがあります。長年取り組んできた熊森がノウハウを全てお伝えしますので、お知りになりたい方は、当協会までご連絡ください。
森造り先進市事例紹介
(2020年3月30日発行くまもり通信102号特集より)
浜松市のクリハラリスたちの命を守ってやりたいのです
本部に以下のような相談が寄せられましたので、みなさんと共有したいと思います。
・
わたしは静岡県浜松市のくまもり会員です。
浜松市では、公園や緑地などでクリハラリス(通称タイワンリス)が放し飼いにされており、すっかり野生化しています。私もその一人ですが、その姿や仕草に心癒やされている市民も多くいて、すっかり地域の風物詩になっています。今やクリハラリスはアイドル的存在です。
・
浜松城公園で撮影したクリハラリス(尻尾を入れて30~40~センチ)
・このリスたちは野生化してすでに半世紀近く経っています。浜松市はこれを観光資源として利用してきました。
その数、推定1万5千頭(浜松市のみ)だそうです。
・
・
しかし、今年度5000万円の予算が組まれ、このリスたちが、浜松市によって根絶殺害(=ゼロになるまで殺し尽くすこと)されようとしています。
理由は、
・外来種だから。
・家庭菜園の果物を食べるから。
・家の戸袋をかじるから。
・在来種のニホンリスを脅かすかもしれないから。
だそうです。
・
自分たちの楽しみのために海外から連れてきて利用しておいて、都合が悪くなったらいきなり全部殺す。私は、とてもではありませんが、はいそうですかと賛同はできません。あまりにも人間勝手ではないかと感じております。
賛同できない理由を、以下の6点にまとめました。
・
①コロナ禍にある今、やるべきことなのでしょうか
・5千万円もの予算があるなら、今大変なことになっている人命を救うべきです。
・
②大きな哺乳類を大量に殺すことに対する市民感情を考えてください
・リスはかわいい哺乳動物です。捕獲作業に当たる人間も、目の前で捕獲されていくリスを見ることになる市民も、その心的負担は相当なものになるはずです。子どもたちは間違いなく胸を痛めるでしょう。
・
③クリハラリスを根絶しても問題は解決されない
家庭菜園のミカンやビワを食べたり、家の戸袋をかじったりする。林業に影響が出るかもしれない。ある程度はそうだろうと思われます。
しかし、それは、ニホンリスをはじめ、他の野生動物たちもすることです。ミカンやビワなどは、カラスもスズメもネズミも食べています。全部殺さねばならなくなります。法的には許されないでしょう。
緑地近郊で暮らしたり、農業を業とするには、ある程度は避けて通れないリスクの一つではないでしょうか。
・
④在来種のニホンリスと本当に競合するのですか
クリハラリスのほうが体が大きいから、ニホンリスを駆逐するのではないか、ニホンリスを守るためにクリハラリスを根絶しなければならないと言われます。しかし、クリハラリスは南国出身であり、基本的には寒さが苦手です。浜松市北部の山中へ進出して先住民であるニホンリスを駆逐するとは限りません。したとしても、ある程度は限定的なものになる可能性も考えられます。
大陸から来たコウベモグラはアズマモグラより体が大きいが、競合することなく、自然環境の違いに合わせてうまく棲み分けています。種類の多いコウモリなども、実に、環境の違いによってうまく棲み分けています。
・
⑤第一、根絶などできないです
クリハラリスは静岡県だけでなく、すでに12都府県で生息しています。小さな島や半島の先ならいざ知らず、広い大地で自然環境を残したままの根絶殺害は不可能ではないでしょうか。根絶殺害を施したつもりでも少しは見逃しが出るはずです。その結果、気が付くと再び元の数に戻ってしまっている、この繰り返しになると思われます。このようなことのために、多額の税金を投入することは、費用対効果の面からも問題です。
外来種問題は、まず、外来種の輸入を止めること。すでに国内で大量に繁殖してしまっている外来種は、もう、新たな可能性として受け入れるしかないというのが世界的な流れになってきています。現在、在来種とされている動物でも、元をただせば外来種であったものがとても多いのです。
・
⑥対策の提案
諸外国でも外来リスが問題となっているところがあるようですが、アメリカなどは数の低減をめざして避妊ワクチンや生殖力減衰エサなどで対応している例もすでにあります。
浜松市もこうした動物福祉に沿った先進的な手法で問題解決をめざせないでしょうか。こちらの方が、圧倒的に市民からの賛同も得られやすいでしょう。
・
このコロナ禍の中、多くの国民が声をあげたことで、チャーター機が無料化されるなど、国が姿勢を変える場面を何度か見ました。クリハラリスの問題も国民が声を上げれば、変わるのかもしれないと知るいい機会でした。
リスのこと、クマのこと、自然のこと、私たちが声を上げることによって、今や罠や銃の前で完全弱者である地球のなかまたちを助けてやれないでしょうか。命を大切にする文明を取り戻せないでしょうか。何とかかれらとの共存をめざしたいと思います。
・
ご賛同いただける方は、浜松市に柵や網で果樹被害を低減させたり、海外のように避妊去勢策をとったりして、クリハラリスの命を奪わない対処法をとってほしいと一緒にお願いしていただけないでしょうか。他にもいいアイディアがあれば、ぜひ、浜松市にお伝え願います。
・
(要望先)
・浜松市役所 鈴木康友市長 〒430-8652 浜松市中区元城町103-2
市長へのご意見箱 https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/cgi-bin/simple_faq/form.cgi
広聴広報課電話番号:053-457-2021ファクス番号:053-457-2028
熊森注:担当部署には決定権がないので、要望先から外しました。
・環境省 自然環境局 野生生物課 外来生物対策室
・電話03-3581-3351(代)
浜松城公園の森を臨む
クリハラリスの生存を支える浜松城公園内の自然豊かな森の中
・
・クリハラリス根絶殺害の開始を伝える新聞記事
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200327-00010013-satvv-l22
・
熊森から
今回のクリハラリス根絶殺害は、浜松市が考えたことではなく、日本哺乳類学会(茨城県つくば市にある国立研究開発法人森林総合研究所内に事務所)に属する一部の外来種根絶派の研究者たちの脅しともいえる要望書に、行政が屈して実施するものだと思われます。
<クリハラリスの根絶殺害を要望する日本哺乳類学会からの要望書>
2019年11月15日 熊本県知事・宇土市長・宇城市長宛て
2019年11月15日 神奈川県知事宛て
2017年12月12日 環境大臣・農林水産大臣宛て
2010年1月4日 熊本県知事・環境大臣・農林水産大臣宛て
確かに、大学の偉い先生方に、いますぐ外来種を根絶殺害しなければ大変なことになると専門用語を使って脅されたら、行政は人間として、そんな無茶なそんなかわいそうなと本能的に思うものの、専門知識もなく他に情報源もないため、震えあがってしまうのも無理のないことだと思います。
大人たちは思っていても口には出しません。まさに、裸の王様です。「外来種を皆殺しにするなんてまちがってるよ」という子供の声が、今こそ日本社会に必要です。
歴史は、専門家の判断が時には間違うこともあることを示しています。外来種根絶思想は、専門家たちが専門性を高めるために小さな穴の中にどんどん潜って行ったことによって、全体や他生物の命の貴さが見えなくなってしまったことで生じた誤判断ではないでしょうか。
まちがい1 倫理上完全にアウト
外来種が入ってきて在来生態系のバランスが変化するのを好まない研究者たちの気持ちはわかります。しかし、現在の外来種根絶政策は、そのような外来動物を輸入してもうけようとした人、輸入を許可した国、売った人、買った人、逃がした人、これら人間の責任を一切追及することなく、無理やり日本に連れて来られた哀れな被害者である外来種に全責任を負わせ、彼らの命を奪って終わろうとしています。これは、倫理上、完全にアウトです。恐ろしい思想だと思います。予算の5000万円(うち1200万円は環境省からの交付金)は、捕殺業者にわたすお金だそうです。
自然保護団体などの輸入を止めろという声で、現在やっと、植物も含めて148種の特定外来生物の輸入が止まりました。しかし、一方で、2000種以上の外来生物の生体輸入が今も続いていると聞きます。
昨年度、動物実験を廃止する会(JAVA)が取り上げたエキゾチックアニマル展示販売会問題に熊森も賛同し、環境省にこのような販売会を禁止するよう申し入れました。しかし、環境省は、職業は自由であり、特定外来生物種のリストに入っていない種の販売は違法ではないとして動きませんでした。今売られている外来種が、いずれ野に出て繁殖し増えて特定外来生物種になることは十分に考えられます。環境省は、蛇口をまず止めないとだめです。
まちがい2 外来種の根絶は不可能で、無用の殺生となるだけ
私たちも、在来生態系を守りたいと思っています。しかし、いったん野で繁殖してしまった外来種を根絶することはもはや不可能なのです。取り返しのつかない問題です。北海道では平成11年からアライグマ根絶事業が始まっていますが、北海道の気候がアライグマに合うのでしょう。殺しても殺しても生息域は拡大の一歩。あれから20年以上たちますが、頭数的に増えたか減ったかさえつかめないということです。これまで全国で殺してきたおびただしい数のアライグマの死体の山を想像すると、ぞっとします。根絶殺害は一体何だったのでしょうか。自然界をコントロールしようという人間たちのおごりがもたらした残虐行為ではないでしょうか。
大量に殺害しても、しばらくすると再び増えて環境収容力に合わせた元の数に戻ってしまうため、それまでの殺害が無用の殺生となります。行政はもういい加減に気づいてほしいです。
早稲田大学の池田清彦名誉教授のように、専門家でありながら、外来種根絶政策を無意味と批判しておられる方もいます。現在、外来種根絶派の研究者たちと環境省がつながっているので、こんな漫画のような理不尽で残酷な政策が全国でまかり通ってしまっているのです。
当協会がドイツの自然保護団体を訪れたとき、ドイツでは50年以上野で暮らす外来種は在来種とみなすということでした。ドイツのアライグマは50年以上たっているため、アライグマを組み込んだ生態系がドイツの新生態系とみなされるのです。合理的だと思いました。
日本哺乳類学会からの要望書が来ても乗らず、手間がかかっても、殺生しない解決法をめざす毅然とした命に優しい地元行政であってほしいです。
尚、浜松市の会員さんは、クリハラリスに関して膨大な資料や専門的な文献を集めておられます。今後、避妊ワクチン導入などの代替案を早急に出していかなければなりません。一人では大変なので何人かの方につながっていただきたいです。(完)