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2020-10

京都府与謝野町でクマによる人身事故現場を調査 

現地のクマ生息地の山は、凶作の上にナラ枯れが深刻、エサ不足が懸念されます

10月24日、京都府与謝野町でクマによる人身事故が発生したと報道されました。

読売新聞オンライン 10月25日

熊森本部は、近畿圏で発生するクマによる人身事故の現場を訪ね、お怪我をされた方をお見舞いし、再発防止対策を伝えたり、再発を防ぐお手伝いをさせていただいたりしています。

10月26日、熊森本部スタッフたちは現場へ急行しました。

事故現場と思われる場所を指さす、スタッフ

 

お怪我をされた方のご家族と少しお話が出来ました。現場は、ご自宅の裏のクリの木付近とのことです。お怪我をされた方は、24日の朝8時頃、金属製のヒバサミを使って栗拾いをされていました。栗を拾い終えて帰るころ、クマが茂みから突然出てきて、背後から耳を引っかかれ、男性が転倒した後にクマは来た道を逃げていったそうです。幸い、命に別状はなかったそうです。

今年は、京都も山の実りが悪いと発表されています。エサが無く、里のクリを食べに来ていたクマと鉢合わせになったものと考えられます。なるべく、クマと人が至近距離で合わないように、この場の草刈り等が必要と感じました。

 

全国各地で、クマが出来てた、事故が発生したというニュースが後を絶ちません。秋にクマが出てくる原因を考えるには、「クマの生息地が今どうなっているか」ということを調べる必要があります。

くまもりNEWS「もはや末期症状 クマが山から次々と出てくるその訳は?」

熊森のスタッフは事故が発生した現場近くの山の調査をしました。

写真(左)葉が茶色く枯れるコナラ 写真(右)スタッフが指をさしている場所から根元までびっちりと白い粉を吹いて枯れる、ミズナラの木。決して老木ではない太さ。

 

クマが降りてきた山を下から見ると、ナラ枯れが起きているようには見えません。しかし、山に登ってみると、標高600m程の山の上にある、コナラ、ミズナラが、木の根元から粉を吹きだし枯れていました。

100m歩くだけで、ナラ枯れで、虫の穴が開いている木は15本も見つかりました。

しかし、そのうち5本は、樹液を出して樹皮を修復しようとしていました。

黒く染みのようになっているのが、樹液を出している個所。アベマキにこのような傾向が見られた。

樹液を吹きだしている木には、クワガタが樹液を吸いに来ていた!

ナラ枯れの原因は、カシノナガキクイムシが木に穴をあけることだというのが国の見解ですが、元気な木であればこのように樹液を出して復活できます。スタッフは、ナラ枯れ以前に木そのものが弱っていると感じました。

この山はクマの棲む自然林なのに、下草が全くありません。下草が無ければ、クマが身を潜める場所や、夏のクマの食料となる昆虫の生息環境もありません。

クマたちは、もう山に棲めないのでしょう。

 

里だけを見ていると真の原因や対策はわからない

山を見た後、地元の与謝野町役場を訪ねました。担当者は、山の中がこのような状況であることを知らなかったようです。その理由として「里で生活していると、里のことしかわからないから、クマが里に出てきたという情報だけしか問題にならない」ということでした。担当者は、ナラ枯れで山奥にクマがいないことは、あまりにも別世界の話でにわかに信じがたいという様子でした。

 

事故が発生した現場は、クマ捕獲罠が設置されましたが、1日で撤去されました。担当者のお話では、クマは事故直前に、事故現場の隣の家の柿の木に来てカキを食べていたようです。このカキを、事故後にすぐに隣の家の方が除去してくださったので、被害対策が出来ているか罠の撤去に至ったようです。

 

 

全国のクマ生息地自治体の皆さま

クマによる事故が発生した、クマの目撃が絶えない、そういった地域では、クマがなぜ、本来の生息地である山から出て来ているのか調査してみてください。山でナラ枯れが発生していたり、山の実りの大凶作など、大来な異変が発生しています。里に出て来たからといって捕獲していては、クマは滅びます。

どうか、山から降りてきたクマに遭遇しないように気をつけてください。

山の実り大飢饉の今、里の実りをわけてやってください。

人身事故の危険性がある場合は、柿の実を採って山中のクマの通り道に運んでやってください。今年のような異常年、クマと人が安全に棲み分け・共存していくためにはそれしか策はありません。

 

 

以下、今回初めて被害対策にきた、新入スタッフの感想です。

初めて事故現場を訪ねました。

事故に遭われた方以外にも町の方のお話もお伺いしましたが、対して気にされていない方から怖くてお墓参りにも行けないんだという方、クマや森の話をしても無関心な方という多様な反応に出会いました。

実りゼロという異常事態が山で起きていることに無関心な方が多いと、人身事故を起こすかもしれないクマは捕殺しておこうとなり、安易な捕殺が暴走するのではないかという印象を受けました。

問題に対し関心を持ち、実際に山に入って原因を探り、対策を考えることの重要性を改めて感じました。これからも、徹底した現場主義を貫き、現地を歩き続けます。

 

 

【埼玉県飯能市】このまま、メガソーラーのために森林破壊を許していいの? 工事を止めるため、もう一度、声を上げませんか!

埼玉県飯能市が所有する加治丘陵の森林の伐採が始まっています。
●誰のためのメガソーラー開発?
この森は、飯能市が「自然公園」を目的に(すなわち、豊かな森林を守るために)20億円かけて買い戻している場所です。莫大な税金を投入した市民の財産を、飯能市は、年間たった120万円で、一般社団法人飯能インターナショナルスポーツアカデミー(https://hisa.world/index.html)に貸し出し、サッカー練習場とメガソーラー開発が行われます。
開発予定地は、17ヘクタールもあり、多様性豊かな雑木林や針広混交林で、絶滅危惧種も多く発見されています。
インターナショナルスポーツアカデミーから開発事業を請け負ったのは、大手住宅総合メーカーのダイワハウスの子会社ダイワリース株式会社(https://www.daiwalease.co.jp/)で、事業費は60億円を超えると言われています。
メガソーラーの売電収入は年間2億円と試算されています。
市民の税金で買い取った豊かな森林は、一部の人たちの利益のために、今消えようとしています。森の生きものたちはどうなるのでしょうか。
●10月14日、工事着工 伐採が進んでいます
 日本熊森協会は、加治丘陵のメガソーラー開発を知り、地元で工事中止を求めて活動する「加治丘陵の自然を考える会 飯能」のみなさんと、9月27日にシンポジウムを開催しました。
 スタッフも入れて170人を超える方が参加され、飯能市にお住いの方もたくさんご参加くださいました。「計画を詳しく知らなかった」「何とかして止めたい」という声もたくさんあり、もっと事実を知ってもらうことで、開発を止めてほしいと声をあげる市民の輪は広げて行けると感じました。
●一度、壊してしまった森は、二度と戻らない
 動物の棲める森復元に24年間取り組んできた日本熊森協会は、一度、壊してしまうと元に戻すにはたいへんな時間がかかることを身をもって知っています。
今、この森を壊すのは誰のためでしょうか。子どもたちや次世代のために、豊かな森を残してほしい、開発を中止してほしいと、もう一度、森林の所有者である飯能市、事業者である一般社団法人飯能インターナショナルスポーツアカデミー、開発業者である大和リース株式会社に訴えませんか。
 森林の伐採が始まり、開発地の隣の地区では、ニホンカモシカが2頭現れたそうです。工事により、追い出されたのかもしれません。
●10月25日13時~TBS「噂の東京マガジン」に出ます
 森林文化都市宣言をした飯能市の暴挙ともいえる、メガソーラー開発問題が、25日(日)13時~TBS「噂の東京マガジン」で取り上げられます。
たくさんの方に広めていただきたいです。

 

くまもり本部・支部、人身事故とクマの絶滅回避のために、里の実りを山に運んでいます

奥山原生林でひっそりと生きながらえてきた日本のクマたちは、戦後の林野庁の拡大造林政策と、奥山開発で、広大なえさ場を人間に破壊され、生息地を失いました。

外から見ると青々とした人工林、林内食料はゼロ

 

さらに、近年、残されたわずかな自然林の中から、ブドウやイチゴ類など果肉が多汁で柔らかい果物である液果の実りが少なくなっています。受粉してくれる昆虫が、地球温暖化等の影響で大量絶滅したからです。

ほとんどの液果は虫媒花です。写真は、ミズキ  

 

ドングリ類など実の堅い堅果の実りも少なくなりました。酸性雨等の影響で、木々が弱ってきており、大量枯死してしまったからです。(ナラ枯れ、カシ枯れ、シイ枯れ)

今年枯れたクヌギの巨木(兵庫県)

今年夏の鳥取大山のナラ枯れ(赤色部分の木が枯れてしまった)

 

様々な液果の実りやミズナラを中心とする堅果の実りに頼って生きてきたツキノワグマたちは、食料を失いました。ツキノワグマは日本の奥山にいるだけでは生きられない状況になっています。ブナは幹の構造上、ナラ枯れしませんが、多くの地域で、去年も今年も大凶作。実りがゼロです。木々が弱ってきているのです。

 

こんなことになったのはすべて人間活動が原因です。

 

冬ごもりに備えて今大量の堅果を食べ続けなければならないクマたちは、連日、里の木々の実りを求め、次から次へと山から出てきています。

クマと共存する経験をしたことがない集落では、対応の仕方がわからず、皆さん悲鳴を上げておられます。

猟友会、警察、行政、マスコミなど大勢で1頭のクマを追いかけまわして、クマをパニックに陥れ、人身事故を誘発させています。

 

クマは人間と違って、本来、争いを避ける大変平和的な動物です。至近距離での突然の接触を避ければ、人身事故のほとんどは防げます

 

日本のほとんどの役所は、クマが出てこないように里の柿の木を伐ったり、里の柿の実をもいで捨てたりするよう、地元に指示しています。

しかし、里の実りを利用できないと、クマたちは生きるために仕方なく、里を通り越して、その先の市街地に出て行くようになりました。

これが今、日本中で起きているクマ騒動の実態です。

 

熊森は、臆病なクマたちが、夜こっそり民家の柿の木に登って柿の実を食べていたら、静かに見守ってくださいと地元にお願いして回っています。

奥地に行くと、昔からクマと共存してきた集落が今もいくつもあって、必死で柿を食べるクマを皆さんそっと温かい目で見守っておられます。こういう集落では、クマによる人身事故は全く起きていません。

 

このようなことが無理な集落では、柿の実をもいでください。

熊森も手伝って本部・支部、みんなでどんどん山に運んでいます。

熊森本部資料より  山中のクマの通り道に運んだドングリと柿

熊森本部資料より  ドングリやカキを食べたクマの糞

熊森本部資料より  人間の運んだドングリを食べに来たクマの兄妹(自動撮影カメラ)

 

以下は、今年、くまもりの支部から送られてきた10月の活動報告写真です。

集落の方と協力して、一緒に、軽トラでごみ袋50袋分ものもいだ柿と集めたドングリを、クマが山から出てくる道に大量に運びました。

 

次の日見に行くと、「クマのエサ場です。近寄らないで下さい」という看板を、地元が立てておられました。

 

辺り一面クマの糞でいっぱいでした。

もいだ柿の実、ドングリを運び続けると、クマをこの場所で止めることができます。

 

 

平地のクヌギやコナラのドングリを、クマの通り道に運ぶ熊森会員たち

 

この町では、山裾に実のなる木をたくさん植樹して、令和のクマ止め林を作っていこうという熊森提案に賛成する方が、何人も出てきました。

 

熊森は、奥山水源の森の再生活動を進めるために結成されたボランティア団体で、がんばっています。しかし、これには時間がかかります。

当面のクマ対策として、平地向きのドングリや、カキ、クリなどを地元の皆さんと、山裾にたくさん植えていこうと思います。

 

飢えて人里に出て来ざるを得ない哀れなクマたちが、やっとのことで見つけた食料を取り上げた上、「危険」とレッテルを貼り殺してしまう。こんな行為が、今、日本全国で展開されており、このようなことが続けば、クマの個体数は激減し、クマは確実に絶滅します。

 

熊森は、やさしい解決法が一番優れていると思います。

 

クマが里や街中に出てきたという現象だけを見ている人たちは、現在のクマの異常事態に対してびっくりするような間違った原因説を出しておられます。

 

<クマが山から出てくる誤った原因説>

1、クマが爆発増加した(クマ爆発増加説)
熊森反論:本来の奥山生息地は空っぽです。

2、クマが人間をなめだした(人なめ説)
熊森反論:人間が怖いから人間から逃げようとして人身事故を起こすのです。

3、クマが山のものより里のもののほうがおいしいと味を占めた(味しめ説)
熊森反論:実験で、ドングリと柿やリンゴを同時に与えると、クマはドングリに飛びつきます。

4、クマが生息地を拡大しようとしだした(生息地拡大説)
熊森反論:生息地拡大ではなく、ドーナツ化現象です。

5、地元が里山を放置した(里山放置説)
熊森反論:里山は1960年から放置されています。

 

どうしてこんなに誤った原因説が世に出回るのでしょうか。

日本熊森協会の原因説は、ただ一つです。

→1、山から食料が消えた

 

小泉進次郎環境相が26日にクマ被害対策の会議開催を表明されているそうです。

クマの生息環境の危機的な状況も踏まえた共存のために何をするべきかを具体的に進めることができる会議になることを祈るばかりです。(完)

【速報】クマ止め林をつくろう! 

凶作年にクマたちが集落に出ないように、

えさ場づくりをめざして植樹会を開きました

10月18日 兵庫県宍粟市 原観光りんご園の裏山

ナラ枯れと山の実りの大凶作でクマをはじめとする野生動物にとって深刻な食料危機が現実になっている中、山から食料を求めて下りてくるクマたちのえさ場となるように、日本熊森協会は18日、兵庫県宍粟市波賀町原の原観光りんご園裏山でクマのえさ場づくり植樹会を開きました。兵庫県の奥地では、昔は、山すそにクリやカキを植えている地域が多く、奥山の実りの凶作年に、クマがクリやカキを食べに来て、植えた木々によってクマが集落に下りるのを止めていたそうです。

線路の枕木の利用や拡大造林のために伐られてしまった「クマ止め林」をもう一度、復活させたいと考えています。

 

兵庫県内だけでなく、大阪府や滋賀県在住の会員や非会員など15人とスタッフ4人が参加。原観光りんご園で約5年前まで専務理事を務めておられた幸福重信さん(83歳)に選んでいただいたカキ10本、クリ6本、ヤマボウシ2本を植えました。

 

幸福さんは、専務理事ご在任当時に苦労して育てたリンゴ約1万個を山から下りてきたクマたちに食べられてしまった体験を参加者に話されました。

「被害を知って腹は立ったけれど、よくよく考えてみると山に食料がないから生きるために下りて来たことが分かった。人間だけが良かったらいいのではなく原因は人間の側にあるのだ、人間が反省しないと、と思って共生の森づくりを熊森さんたちと始めました」と幸福さんはこれまでのいきさつを紹介。現場の裏山での植樹の取り組みなどを振り返りました。

幸福さんは「今年はあのころと同じように、山にえさがないひどい状態。あの当時から数えてちょうど今年は15年。クマたちと共生できる森をつくるために、いっしょに頑張りましょう」と呼びかけました。

りんご園の向かいの奥山も深刻なナラ枯れで、ドングリの実りが全く期待できない状況です。

幸福さんは続いて樹高約1メートルほどの苗木を手にとり、土を掘って水を入れ、土で固まった根を手でほぐしながら植え付けていく方法を身ぶり手ぶりを交えて解説しました。幸福さんの指導を受けながら、親子連れの参加者が植え付けにチャレンジ。植え終わると満足そうな笑顔を見せていました。

子どもたちもクワやスコップを持って植樹

最後に、シカなどが侵入して食べられてしまう被害を防ぐためネットを外側に貼る作業をしました。

この日植えられた木は3年ほどで実をつけます。幸福さんは「皆さん自身の手で植えた木をぜひまた見に来てください」と呼びかけていました。奥山に実りが少ない状況は、当面は続くと思いますので、今後、液果やすぐエサになるものを補植していきたいと考えています。

シカやイノシシが植えた木を食べたり、掘り起こしたりしないように電柵とネットも張り、看板も新しく作りました。

小学1年の娘を連れて、初めて熊森の野外活動に参加した兵庫県の女性は「植えることの大切さや森林の意味についてとてもよく分かる説明で、参加して実際に植えることができて良かったと思います。必ずまた植えた木を見に来たいし、活動にも親子で参加します」と目を輝かせて感想を話していました。

 

山にエサがないクマたちが集落に降りて来ないようにするには、当面のえさ場が必要です。本部や支部を中心に、全国でこのような活動を広めていきたいです。

【緊急提言】食料を求め出てきて次々と捕殺されているクマたちの絶滅回避と共存のために 

10月17日 全国クマWEB集会を開きました!

全国でナラ枯れが広がり、クマの秋の大事なエサであるどんぐりが枯死しています。

それだけでなく、今年は2年連続、山の実りの凶作の地域も多く、各地でクマがエサを求めて人里に下りてきて次々と捕殺されています。

昨年は、過去最多、6000頭を超えるクマが捕殺されました。 熊森協会は4月以降、クマ罠規制の強化を求める署名運動に取り組み、現在署名は1万8794筆に達し目標の2万筆まであと少しに迫っていますが、奥山ではエサが全くない状況が続いており、今のように人里に出てきただけでクマを捕殺続ければ、クマは絶滅します。

森と動物たちの危機的危機的状況をたくさんの方に伝え、1頭でも多くのクマたちを何とか救っていく行動を起こそうと、インターネットのウェビナーを使ったオンライン集会を開催しました。

 

北海道から四国まで50人が参加

会議には北海道から四国まで50人がインターネットを通じて参加されました。

参議院議員で熊森顧問の片山大介先生も参加され「全ての生物が共存共生できる環境をつくることは容易ではありませんが、私たち一人ひとりが取り組むべき課題です。人間たちの都合で大型動物の捕殺について目を背けるのではなく、私たちは問題解決に向け取り組まねばなりません」とお祝いのメッセージを寄せてくださり、会議でも「10月26日から臨時国会、来年1月には通常国会が始まり期間中に環境委員会の審議などできちんと(国に)説明を求めて、皆さんの不安に対する回答を引き出し、署名運動に関してもお手伝いできるよう頑張っていきたい」と話されました。

忙しいスケジュールの合間を縫ってゲスト参加してくださった参議院議員片山大介熊森顧問(手前が片山顧問(写真提供:片山大介事務所))

 

奥山にえさがない! クマ生息地の危機的状況~なぜ、クマの大量捕殺が止まらないのか

クマ保全担当職員水見より

戦後以降で東北6県分に相当する天然林が伐採されクマの生息地は人間による開発と環境破壊で失われ続けてきました。

さらに追い打ちをかけるように今年、エサとなるドングリを実らすナラが全国的に広範囲で枯れてしまい、山の実りは2年連続の凶作となっています。水見職員はグラフや写真を使いながら深刻な実情を訴えました。

どんぐり類が枯死し、秋のエサが危機的状況にあります。

ブナだけでなく、ミズナラ、コナラも悪い地域があります。クマたちは里のドングリやクルミ、クリ、カキに頼らざるを得ない状況です。

異常気象により、今年は液果や昆虫も少なく、夏からエサが少ない状況でした。地球温暖化と推定される森の変化にクマたちは翻弄されています。

しかし、人里に現れたクマたちは見つかると追いかけ回され、問答無用で殺され続けています。

海外では、同じように人里に現れても、日本のように追いかけ回されたり、すぐに殺されたりはせず、そっと立ち去るのを待つように扱われているのが自然な姿です。

ところが、最近の日本ではクマの出没が相次いでいることについて、一部のメディアは人里に相次いで出てくるクマを研究者の言葉を借りて「新世代グマ」などと表現し人身事故を起こしていると報道しています。

 

絶滅回避と共存のための5つの提言

会長 室谷悠子

クマにとってエサがない絶望的な状況が続き、人里にクマたちが下りてくる事態を簡単には止められない状況が続く中で、「クマの現状を知り、これから何をすべきか」と題して発言した室谷悠子会長は、熊森協会として、クマの絶滅を何としても避けたいと、「クマの絶滅回避に向けた緊急声明」(→全文はこちら)を発表しました。

【クマとの共存のための緊急提案】

1 里のどんぐり、オニグルミ、カキ・クリなどをクマに分けてやってください。人身事故の危険がある場合は、もいで山へ運んでやってください
栄養補給ができればクマは山に戻って冬眠します。緊急事態として人里周辺の木の実を食べに来たクマには近づかないでそっと見守ってください。木の実と民家が近く、人との接触の可能性がある場合は、実をもいで、山へ運んでやってください。

2 人身事故が起きないようにするためにも、できる限りの捕殺抑制を
ただ出没しただけで、子グマや親子グマまで大勢の人たちで追いかけまわして捕殺しており、過剰反応が起こっています。クマは恐怖のあまりパニックに陥り、人身事故を起こすようになります。捕殺をできる限り抑制することが必要です。

3 クマが里に出てくるのを押さえるために、山裾にクリなどを植え、クマ止め林を造る必要があります
奥山の自然林劣化の回復には時間がかかり、今後も奥山のエサ不足の頻繁な発生が予測されます。クマが人里に出て来ないように、集落から離れた里山にえさ場を作っていくべきです。

4 潜み場除去のための草刈りや誘因物除去など人身事故防止対策の徹底を
人とクマの至近距離での突発的な遭遇が人身事故の原因です。過疎と高齢化により、これまでできていたクマを寄せつけない集落づくりができない地域が多くあり、公的支援が必要です。

5 根本対策として、奥山の生息地の復元を
奥山にクマの生息環境があれば、クマと人は以前のように棲み分けて共存することができます。時間はかかりますが、根本対策である放置人工林の広葉樹林化や奥山自然林の劣化を止めるための土壌改良など、さまざまな対策が急務です。

 

2006年に植樹したクリの木にはクマ棚ができるようになりました。こういう場所を全国にたくさんつくりたい。

取ったカキは、地元の了解を得て裏山へ。

 

室谷会長は、「マスコミにも訴え、事実をできる限りたくさんの人に伝えて知ってもらいたいです。 私たちは、自ら実践していくことで何とかクマたちと共存することのできる国づくりをしていきたいです。

心ある全国の皆さんにお力を受け、助けていただき、何とか今からでも間に合うように、取り組みを続けていきます」と力強く宣言しました。

 

真実を広め、民間と行政が協力して行動を!

このメンバーでウェブ集会を運営しました

参加された方々からチャット機能を通じた意見交換や質問がさまざまに寄せられ、「きょうの内容をWEBでもぜひ公開してほしい」との意見もさっそくあり、室谷会長は「なるべくたくさんの人たちが共有できるようにしていきます」と約束しました。

最後に森山まり子名誉会長があいさつしました。

森山名誉会長は、森はなさんの童話「こんこんさまにさしあげそうろう」を手にとって示し、昔の兵庫県北部の但馬地方で子供たちが冬の大寒のころ、たくさんの食べ物を用意して「こんこん(キツネ)さまに差し上げよう」と山に食料を置き分け与えていた童話のストーリーを紹介。 「これが本来の日本の文化です。生き物にもやさしい文化だから水源の森も残すことができたのです。 今こそ私たちは、祖先の優しさを取り戻し、豊かな自然を取り戻しましょう」と語りかけました。

そして、クマたちの捕殺が止まらない中で、時間をかけて話を聞いてくれた行政担当者や、協力してくれた熊森支部のエピソードを紹介しながら「民間と、行政と、それぞれだけでできないことも、互いに力を合わせるとできることは増えてきます。 力を合わせて、政治を動かさないとだめです。 仲間をもっと増やしていけば、注目を集めることはできます。 ただ、思っているだけでは変わりません。 行動して、どんどん広めていきながら、大きな声にしていきましょう」と力を込めて呼びかけ、閉会しました。

 

報道機関のみなさんへ

クマの絶滅を回避し、クマたちの棲める豊かな森を残すため、問題の背景とどうすればよいのかを報道してください!

問題の解決へ向けて、実践活動を行っている日本熊森協会の本部・支部の活動も取り上げていただきたいです。

 

 


 

祝 安藤誠顧問、本日、ロンドンのネイチャーフォトコンテストで受賞!

熊森より

安藤さん、おめでとうございます!


以下は、どう出版からのお知らせの転載です。

本日、イギリスロンドン自然史ミュージアム主催の
「Wildlife Photographer of the Year」の授賞式があり、
季刊『道』で連載して頂いている、
動物写真家の安藤誠さんの受賞が公式発表されました!

ネイチャーフォトコンテストの最高峰での受賞、
おめでとうございます!

そんな嬉しい日に、安藤さんの著書出版のお知らせです。



□ 11/5発売 予約開始
■ 安藤誠著 『日常の奇跡』


「日常の奇跡」に気づいたなら、
それは毎日やってくる。
私たちの毎日は、当たり前ではないのだから ――


北海道鶴居村の原野の中の宿、
ウィルダネスロッジ・ヒッコリーウィンド。

ネイチャーガイド、カヌーツアー、バードウォッチング、
スローフード、音楽とバーボン ―― 

オーナー 安藤誠の磨かれた感性で提供される
ヒッコリーウィンドの時間・空間は、
多くのリピーターを生んでいる。

彼らが求めて集まる「安藤誠の世界」。

本書では、その魅力を伝えるとともに、
彼独自の世界がどのように形作られたのかを
明らかにしていきます。

クマに魅了され「森や動物を守る仕事がしたい」と願った
幼年時代、自転車やバイクで旅を重ねた少年~青年時代。

子供たちの絶大な信頼を得た塾講師時代や、
ギタリストとしての活躍、ヒッコリーウィンドの建設、
アラスカの人々との固い絆、動物写真家そして
プロガイドとしての矜持。

安藤誠の人生をたどると、そこには必ず
人を幸せにしたいと願う哲学と美学があります。

現在は日本熊森協会の顧問としても活躍し、
森の自然保護活動、そしてクマを始め
森の野生動物たちが人と同じように
感情豊かに生きていることを伝え、

彼らを愛し共存したいと願う人たちの輪を
つなぐことに尽力している。

人間が自然の一部であることを振り返り、
日常を丁寧に生きることを思い出させてくれる1冊です。


『日常の奇跡 ― 安藤誠の世界 ―』
https://www.dou-shuppan.com/books/ando01/
1冊 1,870円 A5判ソフトカバー 178ページ



□ 安藤誠 講演会 「日常の奇跡」
■ 11月5日(木) 19時~ 東京町田


かねてよりご案内している
安藤誠さんの講演会。

本日の、Wildlife Photographer of the Year 2020 受賞
そして先日発表された
Nature's Best Photography Asia 2020 受賞

ダブルの受賞記念と、
出版記念という、
とても意味ある講演会となりました。

できたての著書の販売もいたします。


「自然はごまかさないし、嘘がない。
 だから本物に触れ、ぶれない感性を磨く。

 コロナ禍で変わっていく世界を生き抜く力は、
 大自然の変わらぬ営みにこそあるのだ」


今だからこそ触れていただきたい「安藤誠の世界」
ぜひお越しください!


■ 安藤誠 講演会 「日常の奇跡」

2020年11月5日(木) 19:00~21:00(開場18:30)
町田市文化交流センター(けやき)
入場料: 3,000円

会報「くまもり通信」104号を発送しました

会員の皆様、お元気ですか。

新型コロナウイルスの新規感染者数は落ち着いてきましたが、まだまだマスク着用の日々が続いています。

 

こうした中、この度、会報「くまもり通信」104号を、会員の皆様に発送させていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これまで同様、熊森本部(兵庫県西宮市)近隣地域にお住まいの会員さんたちがボランティアで発送作業に駆け付けてくださいました。

3カ月前の103号発送時と同様、全員マスクを着用しての作業となりました。104号は、間もなく皆さまのお手元に届くはずです。

 

104号の特集記事として今回取り上げたのは、今年、いっそう広範囲に広がったナラ枯れの危機的な状況です。これにより、食料を失ったクマたちが、人里に下りてくる事例が全国で今年も多発しています。

ナラ枯れ特集を組んだきっかけは、兵庫県の地元のクマ被害防除に乗り出した熊森本部スタッフたちが現地に通う中、まだ夏なのに山々の木々があちこちで赤茶色に変色して枯死する「ナラ枯れ」現象が広がっていることに気づいたことでした。

さっそく、クマ生息地を抱える全国の都道府県の担当者に電話をかけて実態を聞き取りました。その結果、「ナラ枯れ」現象が、北海道を除いて全国に広がっていることが判明しました。

 

このほか、国会ロビー活動や関東の拠点として、ついに開設に至った「祝:くまもり東京事務所」や、8月2日に開催された埼玉県支部結成祝賀会の様子なども紹介されています。

 

また、コロナによるリモートワークの広がりで、真っ先に不要となったリニア中央新幹線工事や、埼玉県飯能市で進みつつある国土破壊以外の何物でもないメガソーラー事業計画に反対する動きも記事として取り上げています。

 

ぜひ、多くの皆さんに読んでいただきたいです。

 

<くまもり通信 104号 目次>

・巻頭言 気づいた人が行動しよう  室谷悠子会長

・兵庫県トラスト地120ヘクタール実り調査

・特集 クマ空前の食料飢饉 ドングリ類の大量枯死、山の実り今年も凶作

・森保全 若杉原生林ツアー  会員寄稿「山と子育て」

・コロナでリニア不要論広がる

2020年度支部長地区長研修会 滋賀県高島市で開催

・祝 熊森東京事務所開設

埼玉県支部結成会祝賀会

飯能市メガソーラー開発にストップを!

・新支部長挨拶 和歌山県・石川県・徳島県

・支部活動報告 四国トラスト地にクマのえさ場復元を! 徳島県

・太郎と花子のファンクラブ&とよファンクラブ

―――

発送作業をお手伝いくださった皆さん、ありがとうございました。

9月25日 熊森環境教育再開は、大阪の進学校 清風学園中高生から

新型コロナで今年のくまもり本部による環境教育が止まってしまっていましたが、大阪の進学校清風学園の藤浦新聞塾に参加している生徒や生物部に所属している生徒など、中高生併せて約40名を対象に、開催しました。

 

なんと、理事長の平岡英信先生も興味を持たれてご参加下さいました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回お声掛けくださったのは、清風学園で顧問として新聞塾を開設されている藤浦さんです。新聞記者として活躍してこられた藤浦さんは、若い者にこそ文章との向き合い方、新聞の読み方を教えなければならないと考え、新聞塾を開設され、その活動の一環として熊森を呼んでくださったのです。

 

まず初めは、低学年向きに作られた「どんぐりの森を守って」という熊森青年部作の実話紙芝居です。大人にも見ていただけます。演じたのは、今春、新卒で熊森環境教育担当職員となったKさんです。着任してから初めて人前に立てました。

 

母グマが殺されてしまうシーンではおもわず耳をふさぐ生徒もいて、手ごたえを感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次は、室谷悠子会長の講話です。

大阪の水道水が一体どこから来ているのか、琵琶湖の水はどこから来ているのかというお話から始まり、クマの棲める豊かな森の重要性につなげていかれました。そして、日本の森林の現状を伝え、森再生の必要性に話を進めていかれました。

 

参加した生徒は皆、社会問題に興味を寄せているということで、終始真剣な面持ちでメモを取りながら熱心に聞いていました。

 

生徒たちは、普段から新聞部として様々な文章に触れているというだけあって、質疑応答の時間もクマに関することから森再生に関するものまで、鋭い質問が絶え間なく室谷会長に投げかけられました。

 

単に植樹するだけでは木は生育しないのではないか、どのようにすれば良く育つのかという質問も出て、室谷会長は、する予定のなかった小規模皆伐の話をすることにもなりました。

 

生徒が、どうすればより良くなるかを真剣に考えたからこそ、出てきた質問だと思います。

 

今回、清風学園に熊森を、呼んでいただき、本当に感謝しています。

 

自然保護の第一歩は、今どうなっているのか、まず現状を知ることからです。

 

自然保護の輪を広げるために、これからも環境教育や講演等を精一杯させていただきます。

幼児から小学校各学年、中学校、高校、大学、社会人、それぞれ向きのプログラムを持っておりますので、環境教育、環境講演会など、ぜひ、熊森にお気軽にお声掛けください。熊森は、全国どこへでも出かけます。

 

9月16日兵庫県農政環境常任委員会で、丸尾牧議員がクマ目線で質問

兵庫県農政環境常任委員会を傍聴しました。

 

まず初めに、県鳥獣対策課の三輪課長から兵庫県の野生動物保護管理について説明があり、その後、委員会所属の12名の議員と兵庫県当局との意見交換がありました。

その中で、丸尾牧議員が、的確な質問をしてくださいました。

 

 

 

<以下、丸尾議員の質問・意見>

◇生息地について

 

丸尾議員:今年は兵庫県でもナラ枯れがひどいという情報を耳にしているが、どの程度把握しているか?野生動物の餌に関係するため、被害対策の上でも把握すべき。

 

→兵庫県豊かな森づくり課:今、ナラ枯れの調査をしているが、昨年に比べ広範囲に被害が拡大している状況。

 

→鳥獣対策課 三輪課長:ナラ枯れの情報に加え、今年はさらにツキノワグマの餌となるドングリの実りが悪い。まだ調査中だが、現時点ではブナは凶作、ミズナラ、コナラは、但馬地域では成りの良いものが少しあるものの、凶作。全体を通して凶作になる見込み。昨年に続く凶作。現時点では、昨年より出没、捕獲数は少ないが、(熊森注:昨年度120頭殺処分)今後、出没や捕獲が多くなるかもしれない。

 

兵庫県森林動物研究センター豊凶調査

2019年 ブナ大凶作、※ミズナラ凶作、コナラ並下

2020年 ブナ大凶作、※ミズナラ並下、コナラ凶作

 

 

(熊森注※)秋のクマたちの命をつないできたミズナラのドングリ。多くが枯れて白骨化し、木そのものがなくなっている。兵庫県赤谷山。2020.9.15熊森撮影

 

丸尾議員:以前、兵庫県が県民緑税を使って人工林を伐採し、実のなる木を植えた場所を見てきたが、植えた苗木はぜんぜん管理ができていなかった。苗木を囲っていたシカ柵は倒れ、せっかく植えた木は枯れていた。野生動物との共存、棲み分けのために広葉樹を植えたと県はいうが、奥山に植えた広葉樹は、現在動物が利用しその機能を果たしているのか、県は点検しているか?できていないなら、すべき。

→県当局:回答せず。

 

◇ツキノワグマについて

 

丸尾議員:山の実りが悪く、クマの出没が多くなる予想とのことだが、今年の推定生息数は、722頭で、捕殺上限が57頭となっている。すでに30頭獲っているが、上限に来たらどうなるのか?

 

→兵庫県鳥獣対策課 三輪課長

・有害捕殺が上限にきたら、精神被害での捕獲許可を受けた罠はすべて解除する。しかし、集落に執着しているものは、申請があれば捕獲許可を出すことになる。

 

丸尾:今年の有害捕殺された30頭のクマのうち、1歳の小さな子グマが5頭もいることが分かっている。中には6.2kg、7.2kgなど(熊森注:0才)体重10kgにも満たない小さなクマもいる。そんな小さなクマが人を襲う危険があるのか?

三輪課長:一歳になると、犬歯が生えてくるので、噛むと人に危害を加える可能性があるので殺処分にした。

 

丸尾:錯誤捕獲が多いが、再発防止対策もすべき。くくり罠が法律で定められたものを使っているかなどのチェック、クマを強力に引き寄せる誘引物を置かない、クマが何回もかかった場所には、罠を設置しない等、錯誤捕獲防止の措置はとっているか?

三輪課長:錯誤捕獲に関しては、誘引物がクマを引き寄せていないか等、厳格に調べている。(熊森注:糠などの誘因物がクマを引き寄せているのは明らかで、熊森が何度も指摘している)

 

丸尾:ツキノワグマの5府県でやっている広域科学部会の情報を、公開してほしい。

三輪課長:科学部会の資料は、基本的に公開と考えていきたいが、個人の思想など、研究結果として発表されていないものは非公開にしたい。(熊森注:個人の思想や知的財産などを公開してほしいと熊森が要望したことは一度もない。まず、科学部会開催日、開催場所、委員名などを公開すべき。)

 

丸尾:兵庫県のクマ推定生息数に関してだが、県は制度の高い手法だというが、日本福祉大学の山上俊彦教授は、兵庫県のクマ推定生息数の出し方に厳しい意見を言っている。当局はどうお考えか。

 

三輪課長:山上教授のご指摘はきいている。科学的手法でやってきたが、これまで様々な専門家(熊森注:異論学者を排除している)から意見をいただて今の手法にたどり着いた。生態学会からも厳しい意見をもらいながら、やってきた。山上教授のご指摘に関しては、他にも同じようなご意見が出てきたら考えたい。

 

熊森から

今、行政に求められていることは、国に忖度して人工林のじの字も言わない専門家という人たちの声を鵜呑みにせず、行政担当者自身がクマの生息地を訪れ、自分の目でクマ生息地の現実をしっかり見ていただきたいです。

 

一見緑に覆われた豊かに見える兵庫県の山ですが、人間活動によって内部が絶望的なまで荒廃していること、以前と比べ樹種もすっかり変化し、昆虫は消え、液果・堅果共、実りのない山に様変わりしていることに気づくべきです。

 

その上で、共存をめざし、他者(=クマ)の窮状を思いやる力が、人間に残っているかどうかなのです。

これによって、対策がすっかり変わってくると思います。

 

兵庫県はこれまでクマが何頭いるかの推定精度を上げることに多額の予算を使い続け、今年、何頭殺せばいいのか計算をし続けてきましたが、このような計算に意味がない。奥山生態系が崩壊しているのです。

 

県が重用してきた捕殺一辺倒のワイルドライフマネジメント派の野生動物対応手法は、もう完全に破綻していることに気づくべきです。

毎年毎年大量の野生動物を多額の税金を使って捕殺し続けてきましたが、人間は自然に生かされていること、その自然とは何かを忘れた結果、水源の森を失うという取り消しのつかない事態を進行させています。

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