くまもりHOMEへ

ホーム > アーカイブ > 2020-10-18

2020-10-18

【速報】クマ止め林をつくろう! 

凶作年にクマたちが集落に出ないように、

えさ場づくりをめざして植樹会を開きました

10月18日 兵庫県宍粟市 原観光りんご園の裏山

ナラ枯れと山の実りの大凶作でクマをはじめとする野生動物にとって深刻な食料危機が現実になっている中、山から食料を求めて下りてくるクマたちのえさ場となるように、日本熊森協会は18日、兵庫県宍粟市波賀町原の原観光りんご園裏山でクマのえさ場づくり植樹会を開きました。兵庫県の奥地では、昔は、山すそにクリやカキを植えている地域が多く、奥山の実りの凶作年に、クマがクリやカキを食べに来て、植えた木々によってクマが集落に下りるのを止めていたそうです。

線路の枕木の利用や拡大造林のために伐られてしまった「クマ止め林」をもう一度、復活させたいと考えています。

 

兵庫県内だけでなく、大阪府や滋賀県在住の会員や非会員など15人とスタッフ4人が参加。原観光りんご園で約5年前まで専務理事を務めておられた幸福重信さん(83歳)に選んでいただいたカキ10本、クリ6本、ヤマボウシ2本を植えました。

 

幸福さんは、専務理事ご在任当時に苦労して育てたリンゴ約1万個を山から下りてきたクマたちに食べられてしまった体験を参加者に話されました。

「被害を知って腹は立ったけれど、よくよく考えてみると山に食料がないから生きるために下りて来たことが分かった。人間だけが良かったらいいのではなく原因は人間の側にあるのだ、人間が反省しないと、と思って共生の森づくりを熊森さんたちと始めました」と幸福さんはこれまでのいきさつを紹介。現場の裏山での植樹の取り組みなどを振り返りました。

幸福さんは「今年はあのころと同じように、山にえさがないひどい状態。あの当時から数えてちょうど今年は15年。クマたちと共生できる森をつくるために、いっしょに頑張りましょう」と呼びかけました。

りんご園の向かいの奥山も深刻なナラ枯れで、ドングリの実りが全く期待できない状況です。

幸福さんは続いて樹高約1メートルほどの苗木を手にとり、土を掘って水を入れ、土で固まった根を手でほぐしながら植え付けていく方法を身ぶり手ぶりを交えて解説しました。幸福さんの指導を受けながら、親子連れの参加者が植え付けにチャレンジ。植え終わると満足そうな笑顔を見せていました。

子どもたちもクワやスコップを持って植樹

最後に、シカなどが侵入して食べられてしまう被害を防ぐためネットを外側に貼る作業をしました。

この日植えられた木は3年ほどで実をつけます。幸福さんは「皆さん自身の手で植えた木をぜひまた見に来てください」と呼びかけていました。奥山に実りが少ない状況は、当面は続くと思いますので、今後、液果やすぐエサになるものを補植していきたいと考えています。

シカやイノシシが植えた木を食べたり、掘り起こしたりしないように電柵とネットも張り、看板も新しく作りました。

小学1年の娘を連れて、初めて熊森の野外活動に参加した兵庫県の女性は「植えることの大切さや森林の意味についてとてもよく分かる説明で、参加して実際に植えることができて良かったと思います。必ずまた植えた木を見に来たいし、活動にも親子で参加します」と目を輝かせて感想を話していました。

 

山にエサがないクマたちが集落に降りて来ないようにするには、当面のえさ場が必要です。本部や支部を中心に、全国でこのような活動を広めていきたいです。

【緊急提言】食料を求め出てきて次々と捕殺されているクマたちの絶滅回避と共存のために 

10月17日 全国クマWEB集会を開きました!

全国でナラ枯れが広がり、クマの秋の大事なエサであるどんぐりが枯死しています。

それだけでなく、今年は2年連続、山の実りの凶作の地域も多く、各地でクマがエサを求めて人里に下りてきて次々と捕殺されています。

昨年は、過去最多、6000頭を超えるクマが捕殺されました。 熊森協会は4月以降、クマ罠規制の強化を求める署名運動に取り組み、現在署名は1万8794筆に達し目標の2万筆まであと少しに迫っていますが、奥山ではエサが全くない状況が続いており、今のように人里に出てきただけでクマを捕殺続ければ、クマは絶滅します。

森と動物たちの危機的危機的状況をたくさんの方に伝え、1頭でも多くのクマたちを何とか救っていく行動を起こそうと、インターネットのウェビナーを使ったオンライン集会を開催しました。

 

北海道から四国まで50人が参加

会議には北海道から四国まで50人がインターネットを通じて参加されました。

参議院議員で熊森顧問の片山大介先生も参加され「全ての生物が共存共生できる環境をつくることは容易ではありませんが、私たち一人ひとりが取り組むべき課題です。人間たちの都合で大型動物の捕殺について目を背けるのではなく、私たちは問題解決に向け取り組まねばなりません」とお祝いのメッセージを寄せてくださり、会議でも「10月26日から臨時国会、来年1月には通常国会が始まり期間中に環境委員会の審議などできちんと(国に)説明を求めて、皆さんの不安に対する回答を引き出し、署名運動に関してもお手伝いできるよう頑張っていきたい」と話されました。

忙しいスケジュールの合間を縫ってゲスト参加してくださった参議院議員片山大介熊森顧問(手前が片山顧問(写真提供:片山大介事務所))

 

奥山にえさがない! クマ生息地の危機的状況~なぜ、クマの大量捕殺が止まらないのか

クマ保全担当職員水見より

戦後以降で東北6県分に相当する天然林が伐採されクマの生息地は人間による開発と環境破壊で失われ続けてきました。

さらに追い打ちをかけるように今年、エサとなるドングリを実らすナラが全国的に広範囲で枯れてしまい、山の実りは2年連続の凶作となっています。水見職員はグラフや写真を使いながら深刻な実情を訴えました。

どんぐり類が枯死し、秋のエサが危機的状況にあります。

ブナだけでなく、ミズナラ、コナラも悪い地域があります。クマたちは里のドングリやクルミ、クリ、カキに頼らざるを得ない状況です。

異常気象により、今年は液果や昆虫も少なく、夏からエサが少ない状況でした。地球温暖化と推定される森の変化にクマたちは翻弄されています。

しかし、人里に現れたクマたちは見つかると追いかけ回され、問答無用で殺され続けています。

海外では、同じように人里に現れても、日本のように追いかけ回されたり、すぐに殺されたりはせず、そっと立ち去るのを待つように扱われているのが自然な姿です。

ところが、最近の日本ではクマの出没が相次いでいることについて、一部のメディアは人里に相次いで出てくるクマを研究者の言葉を借りて「新世代グマ」などと表現し人身事故を起こしていると報道しています。

 

絶滅回避と共存のための5つの提言

会長 室谷悠子

クマにとってエサがない絶望的な状況が続き、人里にクマたちが下りてくる事態を簡単には止められない状況が続く中で、「クマの現状を知り、これから何をすべきか」と題して発言した室谷悠子会長は、熊森協会として、クマの絶滅を何としても避けたいと、「クマの絶滅回避に向けた緊急声明」(→全文はこちら)を発表しました。

【クマとの共存のための緊急提案】

1 里のどんぐり、オニグルミ、カキ・クリなどをクマに分けてやってください。人身事故の危険がある場合は、もいで山へ運んでやってください
栄養補給ができればクマは山に戻って冬眠します。緊急事態として人里周辺の木の実を食べに来たクマには近づかないでそっと見守ってください。木の実と民家が近く、人との接触の可能性がある場合は、実をもいで、山へ運んでやってください。

2 人身事故が起きないようにするためにも、できる限りの捕殺抑制を
ただ出没しただけで、子グマや親子グマまで大勢の人たちで追いかけまわして捕殺しており、過剰反応が起こっています。クマは恐怖のあまりパニックに陥り、人身事故を起こすようになります。捕殺をできる限り抑制することが必要です。

3 クマが里に出てくるのを押さえるために、山裾にクリなどを植え、クマ止め林を造る必要があります
奥山の自然林劣化の回復には時間がかかり、今後も奥山のエサ不足の頻繁な発生が予測されます。クマが人里に出て来ないように、集落から離れた里山にえさ場を作っていくべきです。

4 潜み場除去のための草刈りや誘因物除去など人身事故防止対策の徹底を
人とクマの至近距離での突発的な遭遇が人身事故の原因です。過疎と高齢化により、これまでできていたクマを寄せつけない集落づくりができない地域が多くあり、公的支援が必要です。

5 根本対策として、奥山の生息地の復元を
奥山にクマの生息環境があれば、クマと人は以前のように棲み分けて共存することができます。時間はかかりますが、根本対策である放置人工林の広葉樹林化や奥山自然林の劣化を止めるための土壌改良など、さまざまな対策が急務です。

 

2006年に植樹したクリの木にはクマ棚ができるようになりました。こういう場所を全国にたくさんつくりたい。

取ったカキは、地元の了解を得て裏山へ。

 

室谷会長は、「マスコミにも訴え、事実をできる限りたくさんの人に伝えて知ってもらいたいです。 私たちは、自ら実践していくことで何とかクマたちと共存することのできる国づくりをしていきたいです。

心ある全国の皆さんにお力を受け、助けていただき、何とか今からでも間に合うように、取り組みを続けていきます」と力強く宣言しました。

 

真実を広め、民間と行政が協力して行動を!

このメンバーでウェブ集会を運営しました

参加された方々からチャット機能を通じた意見交換や質問がさまざまに寄せられ、「きょうの内容をWEBでもぜひ公開してほしい」との意見もさっそくあり、室谷会長は「なるべくたくさんの人たちが共有できるようにしていきます」と約束しました。

最後に森山まり子名誉会長があいさつしました。

森山名誉会長は、森はなさんの童話「こんこんさまにさしあげそうろう」を手にとって示し、昔の兵庫県北部の但馬地方で子供たちが冬の大寒のころ、たくさんの食べ物を用意して「こんこん(キツネ)さまに差し上げよう」と山に食料を置き分け与えていた童話のストーリーを紹介。 「これが本来の日本の文化です。生き物にもやさしい文化だから水源の森も残すことができたのです。 今こそ私たちは、祖先の優しさを取り戻し、豊かな自然を取り戻しましょう」と語りかけました。

そして、クマたちの捕殺が止まらない中で、時間をかけて話を聞いてくれた行政担当者や、協力してくれた熊森支部のエピソードを紹介しながら「民間と、行政と、それぞれだけでできないことも、互いに力を合わせるとできることは増えてきます。 力を合わせて、政治を動かさないとだめです。 仲間をもっと増やしていけば、注目を集めることはできます。 ただ、思っているだけでは変わりません。 行動して、どんどん広めていきながら、大きな声にしていきましょう」と力を込めて呼びかけ、閉会しました。

 

報道機関のみなさんへ

クマの絶滅を回避し、クマたちの棲める豊かな森を残すため、問題の背景とどうすればよいのかを報道してください!

問題の解決へ向けて、実践活動を行っている日本熊森協会の本部・支部の活動も取り上げていただきたいです。

 

 


 

フィード

Return to page top