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2021-09
熊森通信108号発送
- 2021-09-28 (火)
- くまもりNEWS
9月27日、28日で、一般会員向けの会報発送を終えました。
もうすぐ着くと思います。
お楽しみに。
表紙は、なんとしても開発を止めたいメガソーラー開発の一つ、青森市で現在、森林伐採中の「新青森太陽光発電所建設事業」105ヘクタールです。
目次
グラビア 宮城山形北部風力発電伐採予定地の森(奥羽山脈林野庁緑の回廊)
巻頭言 森林を破壊しての温暖化防止などない!会長 室谷 悠子
特集 祝 全国再エネ問題連絡会結成 くまもりは共同代表で事務局を分担
自然破壊を伴うメガソーラー・巨大風力発電事業に規制を
丹波篠山酒井市長と懇談 自然と人が共存棲み分けできるまちに
電力大量消費社会からの脱却 金井塚 務 氏
主原 憲司 顧問と歩く 長野県八ヶ岳
全国初調査
クマ保全 くくり罠錯誤捕獲の実態と鳥獣捕獲体制の改革
長野県小諸市農林課野生鳥獣担当員 竹下 毅 氏
新顧問紹介 衆議院議員 土屋 品子 氏
第26回くまもり本部原生林ツアー
新支部長紹介
・宮城県支部
・栃木県支部
太郎と花子のファンクラブ・くまこ
とよファンクラブ
北海道 57年ぶりに市街地で羆による人身事故 原因と対策
顧問 門崎 允昭 氏
会報発送風景
ボランティアさん毎回ありがとうございます。
9月7日 豊かな自然や住民生活を破壊する事業に規制を!河野大臣に全国再エネ問題連絡会が訴え
- 2021-09-07 (火)
- くまもりNEWS
第15回 内閣府「再生可能エネルギーに関する規制等のタスクホース」(オンライン会議)で、全国再エネ問題連絡会共同代表山口氏(静岡県)が訴える
タスクフォース:緊急性の高い、特定の課題に取り組むために設置される特別チームのこと。もともとは軍事用語で「機動部隊」を意味する。
全国再エネ問題連絡会は、メガソーラーや大規模風力発電問題に取り組む団体が、国政へ声を届けるために設立されました。
熊森は、事務局と共同代表を務めています。
今回、上記タスクフォースで、連絡会の山口雅之共同代表が、全国で起こるメガソーラーや大規模風力発電開発に関する問題点について訴えました。
第15回目のテーマ
地域と共生した、持続可能な再エネ(主に太陽光発電)の導入拡大に向けた規 制・制度の在り方について
政府出席者
河野太郎規制改革担当大臣、藤井副大臣、内閣府事務方幹部
出席官庁
経産省(新エネ課:FIT法、電安課:電気事業保安関連)
環境省(温対法、環境アセス関連)
農水省林野庁
委員
大林ミカ(自然エネルギー財団)
高橋洋(都留文科大学)
原英史(元経産省)
川本明(元経産省)
招へい
山口雅之(全国再エネ問題連絡会共同代表)
全国再エネ問題連絡会の山口代表は、利益優先の違法・杜撰な再エネ開発により地域住民の生活が脅かされている実態を力強く訴えました。タスクフォースの委員の専門家のみなさんも、現実に起こっている再エネ開発のトラブルを解決するために、具体的な規制が必要であるとして、各省庁に的確な意見や質問をしてくださいました。皆様ありがとうございます。
しかし、残念ながら、経済産業省や林野庁、環境省の回答には真剣さがなく非常に中身の薄いものだったと思います。
特に林野庁の、再エネで森林を伐採したら保水力が衰えるというなら、より強固な調整池を作ればいいという発想は安易過ぎます。
林野庁は、メガソーラーや風力発電を建設するために森林がどんどん伐採されているというのに、規制をかける気はないようでした。
宮城県と山形県の県境北部では、緑の回廊に指定しているクマたちが棲む豊かな国有林を、外資のエネルギー会社に貸し、開発許可を出しています。
我が国に最後に残された生物の多様性に富む水源の森を潰してしまうことについて、林野庁で働く人やOBはどう感じているのでしょうか。
山口代表は、
「今日の国の答えは今までの延長線ばかり。全く改善されない。
事業者の財産権より私たちの生存権の方が優先されるべき。国民の命と暮らしを守るのが行政でしょう。
今の現状では悪徳業者がのさばるばかり。環境アセス法に罰則をつけてほしい。
県知事がいくら開発に反対しても、林地開発許可を不許可にできないなんておかしい。
今、このユーチューブを見ている方たちは失望されているはずです。
森林法に決定的な欠陥があります。森林法を改善しない限り、国民は守られません。悪徳業者が森林法10条を悪用してくる。現状ではお金を儲けることしか考えていない悪徳業者がのさばるばかり。違反者には認定を取り消す仕組みが必要。
今日のような答弁では、私たちは国に対して不信が募る一方です。もっと真剣に困っている全国各地の国民の声を聞いて、考えて欲しい。」
と必死に訴えましたが、担当部局は消極的だったと思います。
最後に河野大臣が「今日聞いた話は一部の地域の例だと思います。」という話をされましたが、この問題は一部の地域の問題ではなく、全国で起きている、あるいはこれから起こり得ることです。
自然生態系にとっても、地域の人々にとっても「極めて危機的」な問題であることを、各省庁の担当者の方にもご理解いただきたいです。
空気中のCO2濃度を下げるためにCO2の吸収源である森林を伐採して設置する自然エネルギーなど本末転倒です。自然エネルギーは自然を破壊しない場所で設置されるべきです。
山口共同代表、たいへんお疲れさまでした。これを皮切りに自然破壊型の再エネ問題に困っておられるもっとたくさんの方々を巻き込み、国政へ意見を届けて行きましょう!
★メガソーラーや大規模風力発電に取り組む住民のみなさん★
全国再エネ問題連絡会へ、ぜひご参加ください!!
豊かな自然や地域を破壊する開発を止めるため、力を合わせましょう
https://saiene-news.com/
長野の森を見る会② 八ヶ岳連峰 道路、別荘、観光施設・・・どこまでも人間が入り込んでいた
- 2021-09-06 (月)
- くまもりNEWS
2日目 8月8日(日)
訪れた八ヶ岳連峰は、南北30km余りの八っつの大火山群からなっています。熊森はこれまで各地のクマ生息地を調査してきましたが、今回が最も標高の高い場所です。
茅野市から見た八ヶ岳連峰(茅野市市街地の標高が800m~900m)Wikipediaより
岳という漢字からわかるように、これらの山は下の方は森林ですが、上に行くと高木の育たない森林限界となっており、草原や岩石地帯になっています。
長野のクマの生息地は1000m~1400mと言われています。関西と違って人間の住んでいるところの標高が高いため、平地がすでに落葉広葉樹林帯です。よって、クマは奥山の動物ではなく裏山の動物なのです。
今回の目的地は、蓼科山と赤岳の間の麦草峠です。
黄線が今回の行程(3月撮影写真引用により落葉広葉樹林は茶色、針葉樹林は緑色)
9時に標高1400mの白樺湖を出発。
山岳道路はコロナ禍にもかかわらず、結構、人も車も多くてびっくりしました。東京ナンバーが多かったです。
11時に標高1900mに到着。
コメツガやヤツガダケトウヒなどの針葉樹やダケカンバが中心。
もう、クマの生息地ではありません。びっしり植えられたカラマツの人工林は、戦後の植林によるものです。
ササ原の上をいろいろな昆虫が飛び交っていた
シラビソの枝に、緑色の薄い布のようなサルオガセ(猿尾枷)があちこちで垂れ下がっています。サルオガセは酸性雨に弱いため、兵庫県や京都府では消滅してしまった植物です。内陸部の長野にはまだたくさん残されていました。さすが、長野。
サルの尾が絡めとられてしまうのでしょうか
13時 標高2100mの麦草峠に到着。車で行けるのはここまでです。もっと上まで行きたい人は、歩いて登らねばなりません。
お花畑には可憐な高山植物の花々がたくさん咲いており、とてもきれかったです。びっくりしたのは、実に様々な昆虫たちが花々にいっぱい群がっていたことです。日本にはこんなにいろいろな昆虫がいたのかと思いました。(もちろん、本当はもっといますが)
人間がお花畑に踏み込まないようにロープが張り巡らされている
積雪減で、数年前から、シカがここまで上がってくるようになったそうです。お花畑に少々のシカはいいのですが、(動物の体内を通過すると、草本の種子が発芽するため)、しかし、あまりにもシカが増え過ぎるとお花畑が食べ尽くされてしまう恐れがあります。
お花畑を抜けて、ヤツガダケトウヒの森に入ります。
今のところシカは大好物のササやトウヒの樹皮を主に食べており、森の入口には、シカが森に入らないように、シカ除け網が張られていました。
この辺りは溶岩に被われるなど火山性の土地で標高も高いため、トウヒ、シラビソ、ゴヨウマツ、ハイマツ等針葉樹だけの森です。
森の中に入っていきました。木の太さが皆だいたい同じなのは、70年ほど前にパルプ材として皆伐された後、放置された2次林だからです。
原生林ではありませんが、放置されたことによって元の森にもどってきていますから、植林されなくてよかったと思いました。
しかし、この森に、シカが入り込んできていますから、今後、この森が存続できるかどうかわかりません。
シカが入り込まないように、道路を閉鎖してほしいです。人間も入り込めなくなりますが、そんなところを作っておくことは大切です。
八ガ岳中腹の針葉樹林帯入口付近①
八ガ岳中腹の針葉樹林帯奥②トウヒの倒木更新があちこちにみられる
この森の外観が見渡せる場所がありました。見事に針葉樹ばかりです。
いつまでも見ていたいほど美しい北八ケ岳針葉樹林帯
(南八ケ岳は、火山灰地帯で落葉広葉樹林帯だそうです)
熊森本部は、今回長野県の奥山に初めて入りましたが、標高が上がるにつれて林相がガラッと変わっていくことを体感しました。長野県ならではの体験です。
車で進みながらショックを受けたのは、長野の山はどこまでも別荘地やリゾート開発、観光道路などの人手が入っていたことです。これでは野生動物たちは安心して棲めません。
別荘が点在していることがわかる八ヶ岳中腹(3月撮影)
運転しながらスマホの地図に目をやると、1軒ずつの別荘に至る道路が山に張り巡らされていることがわかりました。
区画が大きい別荘地独特の道路(車中でスマホに表示された道路を撮影)
今回の長野は完全に観光地だという印象を受けました。人間には楽しいかもしれませんが、こんな奥地にまで人間が入ってきて、野生動物たちには迷惑この上ないと思います。
長野県ツキノワグマ管理計画によると、1,150平方キロメートルに及ぶ八ケ岳エリアに生息しているツキノワグマの推定数は15頭~570頭となっています。中央値は150頭だそうです。今回行ってみて、クマが棲めない訳がよくわかりました。
案内してくださった主原先生に、今回の長野の山を視る会は森林生態学的にはそれなりに勉強になりましたが、私たちが見たかったのは、人間の手がほとんど入っていない長野の原生的な森ですというと、そんな場所は北部の新潟県境にでも行かないともうありませんということでした。
1998年の長野オリンピックの時に、熊森第一顧問の宮澤正義先生が、長野最後の原生林が長野オリンピックで開発されてしまったと嘆いておられたのを思い出しました。西日本はもちろんですが、長野県でさえ、人間は大地を取り過ぎており、野生生物たちを追い詰めていると感じました。皆さんはどう思われますか。
観光は間違いなく自然を劣化させます。観光という産業について深く考えさせられた1日でした。