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2021-09-06

長野の森を見る会② 八ヶ岳連峰 道路、別荘、観光施設・・・どこまでも人間が入り込んでいた  

2日目 8月8日(日)

訪れた八ヶ岳連峰は、南北30km余りの八っつの大火山群からなっています。熊森はこれまで各地のクマ生息地を調査してきましたが、今回が最も標高の高い場所です。

 

茅野市から見た八ヶ岳連峰(茅野市市街地の標高が800m~900m)Wikipediaより

 

岳という漢字からわかるように、これらの山は下の方は森林ですが、上に行くと高木の育たない森林限界となっており、草原や岩石地帯になっています。

 

長野のクマの生息地は1000m~1400mと言われています。関西と違って人間の住んでいるところの標高が高いため、平地がすでに落葉広葉樹林帯です。よって、クマは奥山の動物ではなく裏山の動物なのです。

 

今回の目的地は、蓼科山と赤岳の間の麦草峠です。

黄線が今回の行程(3月撮影写真引用により落葉広葉樹林は茶色、針葉樹林は緑色)

 

9時に標高1400mの白樺湖を出発。

山岳道路はコロナ禍にもかかわらず、結構、人も車も多くてびっくりしました。東京ナンバーが多かったです。

 

11時に標高1900mに到着。

コメツガやヤツガダケトウヒなどの針葉樹やダケカンバが中心。

もう、クマの生息地ではありません。びっしり植えられたカラマツの人工林は、戦後の植林によるものです。

ササ原の上をいろいろな昆虫が飛び交っていた

 

シラビソの枝に、緑色の薄い布のようなサルオガセ(猿尾枷)があちこちで垂れ下がっています。サルオガセは酸性雨に弱いため、兵庫県や京都府では消滅してしまった植物です。内陸部の長野にはまだたくさん残されていました。さすが、長野。

 

 

 

 

 

 

サルの尾が絡めとられてしまうのでしょうか

 

13時 標高2100mの麦草峠に到着。車で行けるのはここまでです。もっと上まで行きたい人は、歩いて登らねばなりません。

お花畑には可憐な高山植物の花々がたくさん咲いており、とてもきれかったです。びっくりしたのは、実に様々な昆虫たちが花々にいっぱい群がっていたことです。日本にはこんなにいろいろな昆虫がいたのかと思いました。(もちろん、本当はもっといますが)

 

人間がお花畑に踏み込まないようにロープが張り巡らされている

シシウドの花には、ハチやカミキリなど多くの昆虫が集まっていました。

 

積雪減で、数年前から、シカがここまで上がってくるようになったそうです。お花畑に少々のシカはいいのですが、(動物の体内を通過すると、草本の種子が発芽するため)、しかし、あまりにもシカが増え過ぎるとお花畑が食べ尽くされてしまう恐れがあります。

 

お花畑を抜けて、ヤツガダケトウヒの森に入ります。

今のところシカは大好物のササやトウヒの樹皮を主に食べており、森の入口には、シカが森に入らないように、シカ除け網が張られていました。

 

 

この辺りは溶岩に被われるなど火山性の土地で標高も高いため、トウヒ、シラビソ、ゴヨウマツ、ハイマツ等針葉樹だけの森です。

森の中に入っていきました。木の太さが皆だいたい同じなのは、70年ほど前にパルプ材として皆伐された後、放置された2次林だからです。

原生林ではありませんが、放置されたことによって元の森にもどってきていますから、植林されなくてよかったと思いました。

しかし、この森に、シカが入り込んできていますから、今後、この森が存続できるかどうかわかりません。

シカが入り込まないように、道路を閉鎖してほしいです。人間も入り込めなくなりますが、そんなところを作っておくことは大切です。

 

 

 

 

 

 

 

 

八ガ岳中腹の針葉樹林帯入口付近①

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八ガ岳中腹の針葉樹林帯奥②トウヒの倒木更新があちこちにみられる

 

この森の外観が見渡せる場所がありました。見事に針葉樹ばかりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつまでも見ていたいほど美しい北八ケ岳針葉樹林帯

(南八ケ岳は、火山灰地帯で落葉広葉樹林帯だそうです

 

熊森本部は、今回長野県の奥山に初めて入りましたが、標高が上がるにつれて林相がガラッと変わっていくことを体感しました。長野県ならではの体験です。

 

車で進みながらショックを受けたのは、長野の山はどこまでも別荘地やリゾート開発、観光道路などの人手が入っていたことです。これでは野生動物たちは安心して棲めません。

 

 

 

 

 

 

 

 

別荘が点在していることがわかる八ヶ岳中腹(3月撮影)

 

運転しながらスマホの地図に目をやると、1軒ずつの別荘に至る道路が山に張り巡らされていることがわかりました。

 

 

 

 

 

 

 

区画が大きい別荘地独特の道路(車中でスマホに表示された道路を撮影)

 

今回の長野は完全に観光地だという印象を受けました。人間には楽しいかもしれませんが、こんな奥地にまで人間が入ってきて、野生動物たちには迷惑この上ないと思います。

長野県ツキノワグマ管理計画によると、1,150平方キロメートルに及ぶ八ケ岳エリアに生息しているツキノワグマの推定数は15頭~570頭となっています。中央値は150頭だそうです。今回行ってみて、クマが棲めない訳がよくわかりました。

 

案内してくださった主原先生に、今回の長野の山を視る会は森林生態学的にはそれなりに勉強になりましたが、私たちが見たかったのは、人間の手がほとんど入っていない長野の原生的な森ですというと、そんな場所は北部の新潟県境にでも行かないともうありませんということでした。

 

1998年の長野オリンピックの時に、熊森第一顧問の宮澤正義先生が、長野最後の原生林が長野オリンピックで開発されてしまったと嘆いておられたのを思い出しました。西日本はもちろんですが、長野県でさえ、人間は大地を取り過ぎており、野生生物たちを追い詰めていると感じました。皆さんはどう思われますか。

 

観光は間違いなく自然を劣化させます。観光という産業について深く考えさせられた1日でした。

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