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2021-11-26
宮城の猟師くくり罠を真円12センチに戻すならイノシシを駆除しにくくなると不満 熊森見解は?
- 2021-11-26 (金)
- くまもりNEWS
以下、11月23日河北新報より
里山を駆け回るイノシシの群れ。駆除するわなの形状見直しで異論も=宮城県亘理町
「このままでは繁殖適齢期のイノシシがくくりわなで捕獲できず、獣害を止められない」。
宮城県で有害鳥獣駆除に当たる猟友会員から河北新報社に憤りの声が寄せられた。きっかけは、くくりわなの形状変更(縮小)を呼び掛ける全国組織の大日本猟友会(東京)の提言。わなの形状が駆除にどう影響するのか。現場の事情を探った。
大日本猟友会:
9月1日発行の会報「日猟会報」で、わなを12センチの真円にするよう訴えた(イラスト参照)。 同会の担当者は「(規定より大きな形状のため)クマを誤って捕まえる錯誤捕獲が多発しているし、人間の子どもが掛かる可能性もある。会員は本来の形状のくくりわなか、箱わな、銃で捕獲してほしい」と促す。
環境省が2007年に規制緩和した現行のくくり罠 最大径が18~26センチの楕円(だえん)形のわな製品が出回っている。
■宮城県蔵王町遠刈田猟友会の前会長 佐藤秀一さん(79)
大日本猟友会の主張に真っ向から反論する。
理由はイノシシ特有の蹴爪(けづめ)の位置。ひづめとほぼ直角に横方向へ伸びており、繁殖可能な体重50キロ以上の成獣は足の横幅が12センチを超える。わなの枠内に収まらず逃げてしまうという。佐藤さんは「わなの形状が会報通りに変更されれば、どんどんイノシシが繁殖してしまう」と危惧する。
佐藤さんによると、わなで足全体をくくるイノシシと違い、クマは指1本でも引っ掛かるので最大径を縮めても意味がないという。
大日本猟友会が活用を求める箱わなは、警戒心が強いイノシシの成獣がなかなか入らないとされる。昔のように集団で獲物を追い込み、銃で仕留める巻き狩りをするマンパワーもない。佐藤さんはクマの錯誤捕獲の多さを認めつつ「12センチの真円になったらイノシシが全く捕れなくなる。猟をやめる人が続出するだろう」と強調する。
■環境省:
「見直しは必要」 環境省は「07年度は今ほど極端な楕円形の製品が出ると想定していなかった。錯誤捕獲も懸念されるし、何らかの見直しは必要」(野生生物課鳥獣保護管理室)との立場だ。深刻化する獣害を食い止めようと、環境省は13年度にイノシシの個体数を10年間で半減させる目標を掲げている。担当者は「捕獲数が減っては矛盾する。さまざまな意見を聞き、どうするか判断したい」と話す。(桜田賢一)
熊森から
宮城県の2020年度のクマの有害駆除数は279頭です。うち、64%にあたる178頭が、イノシシ罠に誤ってかかったクマで、罠に掛かったクマは危険だからと全て殺処分されました。こんなことを放置していたら、クマは滅びてしまいます。
クマだけではありません。キツネやタヌキなど、何の問題もない大量の野生動物たちが、山の中に仕掛けられたおびただしいくくり罠に誤って掛かって殺されているのです。
今の日本のやり方の根本的な問題は、自然界の中のある種の動物だけを捕獲することなどできないということがわかっていないことです。(=自然がわかっていない)ワイルドマネジメントによる個体数調整として、山の中にどんどん罠を仕掛けてシカやイノシシを捕殺する政策は方向転換が必要です。
どうしたら大量の錯誤捕獲問題が解決できるのか。基本的には、祖先がしていたように、野生動物を殺すのではなく、被害が減るように田畑を守る対策に方向転換すべきでしょう。
山の中にいるイノシシまで獲る必要があるのですか
彼等は土を掘って根の成長を助け、豊かな森を造ってくれています。
<野生動物を殺さないで被害対策を進めている方もいます>
井上雅央(いのうえ まさてる)氏 1949年、奈良県生まれ。愛媛大学大学院農学 研究科修士課程修了。京都大学博士(農学)。元近畿中国四国農業研究センター 鳥獣害研究チーム長、退職後、同センター専門員。
井上氏は、宮崎県、熊本県、広島県、静岡県等でアドバイザー野生動物を殺さな くても防除対策をとれば被害を減らすことは可能で、女性にもできる防除対策を 各地で広めておられます。
イノシシ、サル、シカなどによる農作物被害。獣害対策がうまく機能しないの は、なぜか。
井上氏は各地を歩いた経験からその原因を鳥獣害は行政の仕事と決 めてかかる頭の固さなど「男」の論理と喝破。女性が主導で女性の論理、パワー で動き出すことでそれを突破し、集落自衛が起動し始めた成功実践例を各地に 作っておられます。井上氏の実践は、目からうろこです。『これならできる獣害対策』、『山の畑をサルから守る』『山と田畑をシカから守る』『60歳からの防除作業便利帳』など、著書多数。イノシシ編もクマ編もあります。
日本は、もういい加減に、残酷なだけの駆除や捕殺一辺倒の野生動物の生命軽視対応から卒業しなければなりません。シカやイノシシは、殺しても殺してもすぐ環境収容力に見合った元の数にもどります。膨大な税金を使って何をしていることかわかりません。発想の転換が必要です。