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2023-05

再エネ事業による森林大破壊を止めるため、田嶋要衆議院議員(千葉)が森林法の文言改正を提案

2023年5月19日(金)衆議院経済産業委員会で千葉県選出の田嶋要議員が、再エネ事業から森林を守るために森林法の文言改正を提案されました。

 

田嶋議員は以前から再エネ事業による森林破壊問題に取り組んでおられ、地元千葉県鴨川の山林に計画されている日本最大級の鴨川メガソーラー(146ヘクタール)計画を地元の皆さんと今も止めておられます。

 

 今回の委員会質問では、有識者の方たちからヒントを得たということで、森林法を以下の3点で文言改正するよう提案されました。
①森林法10条の第2項の規定を、都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、「次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、これを許可しなければならない」から「次の各号のいずれにも該当しないと認められない限り、これを許可してはならないと逆側から書くようにすること。
②その下の一、二、三の次に四を加えて、
四「生物多様性と景観の維持、その他の公益的機能を害するなど、森林法の目的に反するおそれがあること」という言葉を入れること。
③森林法の目的にも、生物多様性と景観の維持、その他の公益的機能の保全に資することを加えて明文化すること。
農地は農地法でしっかり守られている。森林も森林法でしっかり守られるように法改正しなければならない。とりあえずすぐできることとして、法文自体の書きぶりを少し変えるだけでもいい効果が生まれる可能性があるので、すぐ取り組んでほしい。(日本の森林を守れないできた)林野庁の責任は重い、再エネを進めている経産省も「森林法」に関心を持ってもらいたいと締めくくられました。

 

質問中の田嶋議員の動画 約12分間
参考資料
現行森林法
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、森林計画、保安林その他の森林に関する基本的事項を定めて、森林の保続培養と森林生産力の増進とを図り、もつて国土の保全と国民経済の発展とに資することを目的とする。
省略
(開発行為の許可)
第十条の二 
2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、これを許可しなければならない。
一 当該開発行為をする森林の現に有する土地に関する災害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあること。
一の二 当該開発行為をする森林の現に有する水害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水害を発生させるおそれがあること。
二 当該開発行為をする森林の現に有する水源のかん養の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがあること。
三 当該開発行為をする森林の現に有する環境の保全の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがあること。
以下省略
熊森から
林地開発許可を握っているのは都道府県知事です。
どうして多くの都道府県知事は、森林を大破壊する再エネ事業にこれまで林地開発許可を降ろしてきたのでしょうか。
その原因の一つは、森林法の文言が、都道府県知事が許可を下ろさざるを得ないように書かれていることです。
業者が、「私たちの事業が、災害発生、水害発生、水の確保に著しい支障、環境を著しく悪化させる恐れがあることを行政が証明しない限り、林地開発を許可しなければならないと書いてある。もし、それが証明できないのに不許可にしたら、裁判所に訴えますよ」と、行政担当者を脅すと、専門知識のない行政は訴えられるのがこわくなって、林地開発許可を下ろしてしまいます。このような自治体が実に多いのです。
しかし、中には、和歌山県や和歌山市のように、メガソーラーの林地開発許可を不許可とした県と条例に基づき不許可とした市に対し、10億円の損害賠償を求めるとして再エネ事業者が訴えても(2022年に提訴され、現在、係争中)、受けて立つとして毅然と不許可を貫いているあっぱれな行政もいくつかあります。林野庁は法文改正に、すぐに取り組んでいただきたいです。

それにしても、このような提案が林野庁からではなく民間の有識者から出たということは、特記すべきことであると思います。どうしたらふるさとの山を森林伐採から守れるか、地元の方々の苦しみに同苦した有識者がいたからこそ出てきた提案です。

田嶋議員、国会で提案してくださって、ありがとうございました。
国民の皆さん、とにかくあらゆる手段を使って、今、大規模伐採されようとしている全国の森林を、守りましょう。
・・
日本は歴史のある国です。祖先が言い伝えてきた言葉にはそれなりの理由があります。知恵があります。
子孫として、私たちはしっかりと耳を傾けるべきです。
森なくして人なし、森あっての人間
風車群建設が計画されている国有林「緑の回廊」宮城県にて

6月4日投開票予定の青森県知事選立候補者に熊森青森がみちのく風発アンケートを実施

青森県知事選立候補者は、以下の4名の方です。

宮下宗一郎候補(44)無所属新人 前むつ市長

小野寺晃彦候補(47)無所属 前青森市長

横垣成年候補(63)共産・社民推薦 元むつ市議

楠田謙信候補(66)元損害保険会社社員

 

これまでに熊森青森県支部のアンケートにご回答いただけたのは、宮下氏と小野寺氏です。あとの方もアンケートが届き次第アップさせていただきます。

以下は、アンケート回答用紙です。(wクリックで拡大されます)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たな「認定失効制度」により、FIT認定が取り消されたメガソーラー計画地の山々

再生可能エネルギーの固定価格買い取り(FIT)制度が創設されて今年で11年となります。

 

この間、経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)からFIT認定を受けたものの、運転開始期限を過ぎても運転が開始されない事業案件が多くあります。

 

原因は、事業者がもうけを多くしたいため、ソーラーパネルの価格が下がるのを待っていたり、最初から発電事業に参画する気などないがFIT認定を取っておいて認定を転売してもうけようとしていたり、土砂災害、景観、自然環境破壊を懸念する地域住民との紛争が続いており、事業者が工事の着工や運転開始ができない状況に陥っているなどです。

 

これらの事業について、これまで国は様々な措置を取ってきましたが、ついに2022年4月1日、「認定失効制度」の施行に踏み切りました。

対象は、主に10〜50kWの太陽光発電事業者で、認定は取得しているが運転を開始していない場合は認定を失効させるという制度です。

 

これにより、2023年4月以降、エネ庁は順次認定失効物件を発表し始めました。約6万7000件以上が認定失効となるとみられています。ほとんどがこまごまとした案件だったと思われますが、この中で、認定が失効された2つの大規模メガソーラー(発電量が1MW=1000kWを超えるもので、1ヘクタール以上の敷地が必要)について、予定地の山々を見てみましょう。

 

(1)奈良県山添村メガソーラー

(事業面積81ヘクタール、甲子園球場の21倍の広さ)

 

奈良県北東部に位置する人口約3500人の山添村は、村の8割を山林が占めています。

2019年突然、村の東側の山肌に奈良県最大というメガソーラー建設計画が持ち上がりました。

守られた山添村メガソーラー計画予定地の山 MBSのテレビNEWS2021年より

 

山添村では30年前、この山にゴルフ場計画が持ち上がったことがあるそうですが、飲料水がゴルフ場の農薬で汚染されるとして、みんなで阻止したということです。今回、メガソーラー計画に反対する住民ら約1600人が署名を村に提出し、村議会でも全会一致で「同意なき計画への反対」を決議していました。

 

(熊森は、この問題を取り上げてくださったMBSテレビに拍手を送りたいと思います。これでこそ、マスコミの価値ありです)

 

 

 

熊森から

どちらも熊森が大変胸を痛めていた事業案件です。

直接的には広大な生息地を破壊され、イノシシをはじめ山に住む様々な動物たちが生きられなくなります。

もちろん、地域住民の安全で安心な生活が脅かされます。

 

しかし、どちらもFIT認定(≠許可)を受けているとして、業者は強気。再エネ事業は合法ですから、どうして事業を中止させるのか、地元住民には難題です。裁判所は違法か合法か判断するだけですから、裁判所に訴えても合法物件には勝てません。

 

今回、認定失効に至ったのは、地域でふるさとの山を守ろうと粘り強く事業阻止運動をし続けた勇気ある人たちがいたからです。議会や首長もがんばったんだろうと思います。

 

降ってわいたような自然破壊事業を止めるため、自腹を切って、時間や膨大なエネルギーを使い、1円にもならないことのためにがんばり続けたふるさと愛にあふれるみなさんを、熊森は心から讃えたいと思います。「今だけ、金だけ、自分だけ」の今の日本で、他生物や次世代のことも考え、業者から提示されたお金に目がくらまない日本人もまだまだいる、心強い限りです。

 

無謀な再エネ事業に対し、泣き寝入りしかないとあきらめておられる全国の多くのみなさん、どうぞ勇気を出してNOの声を上げてください。熊森が事務局を務めている再エネ問題連絡会にご加入ください。(会費無料)自然破壊事業の止め方を伝授させていただきます。

 

祖先が守ってきた山を、たった20年間の固定資産税欲しさに半永久的に破壊してしまう。こんな失敗をしないように、共にがんばりましょう。心ある国会議員たちも、今、国土保全をめざしし、再エネ法規制に動いてくださっています。

 

太陽光発電は駐車場の屋根や都会のビルの屋上など、新たな自然破壊を伴わないところで実施していただきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駐車場に設置された太陽光パネル ネットより

 

業者はこの後この事業をどうするのかわかりませんが、白紙撤回されるまで、熊森は見届けたいと思います。

 

山なくして人なし、山あっての人間。(完)

 

 

 

 

 

国有林を大規模伐採する再エネ事業は控えるべき 長野県選出の務台俊介衆議院議員が国会で質問

今国会では、内閣が提出した「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」の審議が行われています。(再エネ法規制第一弾をめざしています)

 

4/19の経済産業・環境・原子力問題連合審査会で、くまもり顧問の務台俊介衆議院議員が、森林伐採を伴う大規模再エネ事業など論外である等、質問してくださいました。(以下、質問及び答弁要旨の文責は熊森。動画なその時の一部を紹介)

 

 

 

【務台俊介議員質問要旨】

 

再エネ事業について

最近、良い再エネと悪い再エネが明らかになってきた。再エネは地球環境に資するために推進するべきもので、単に金もうけの手段として考えてはいけない。

 

森林伐採について

CO²の吸収源である森林を伐採して太陽光パネルを設置するとか、大規模風力発電を導入するなどは論外である。

森林破壊が行われようとしている地帯は、日本の脊梁部で保安林水源涵養機能があり、土砂災害防止の役割も果たしている。

国有林を大規模伐採するような再エネ計画は控えるべき。

(よくぞ、言ってくださいました。林野庁の回答が欲しい。くまもり)

 

 

クマについて

山の尾根伝いに大規模な風車を設置すると、クマが里に追い出される。

クマは生態系の頂点に立っている生物多様性の象徴たる存在だが、毎年4000頭を超えるクマが里に出て捕獲殺処分されているという(看過ならない)現状がある。

 

【資源エネルギー庁新エネルギー部長井上氏答弁要旨】

住民説明会の開催を重視

今回の法案では、フィットの事業譲渡の際に住民説明会の開催などを認定要件化するということを盛り込んでいる。これにより事業者の責任を明確化するとともに、住民説明会等の事前周知が行われない場合には変更を認めないといった措置により、事業譲渡に対する規律を強化し、地域に根差した再エネ発電事業の実施を促していきたい。

 

熊森から

務台議員が心から日本の森や生物の多様性を守りたいと願っておられることが、質問内容から伝わってきて感動しました。

 

今やっとの感もありますが、与野党の心ある議員の皆さんによって、「CO²の吸収源である森林伐採を伴う再エネ事業は本末転倒である」といった声が国会で大きくなってきています。
再エネ事業が合法であるため、再エネ事業の暴走をどうやって止めたらいいのか頭を痛めていた私たちですが、まだまだ日本の国会も捨てたもんではないと希望が湧いてきました。
たった20年間のどれだけ発電できるのか怪しい再エネ発電(風力の年間稼働率10%、太陽光の年間稼働率15%~20%風力や太陽光の設備造りや設備維持のために使われる化石燃料由来の電力の方が多いという説もある)のために、自然を大破壊し、現在、もう取り返しのつかないことになってしまっている場所が次々と誕生していっています。

 

エネ庁の井上部長は、住民説明会を持つことによって地域に根差した再エネ事業になると思われているようですが、それはムリです。なぜなら、日本はドイツのような市民社会ではありませんから、市民がみんなで調べて声を上げようという動きが非常に起きにくい上、未だにお上の国的なところがあって、市民運動のリーダーとなれる人がほとんど育っていません。(国民のみなさん、がんばりましょう!熊森がリーダー養成の手助けをします。)

 

よって、とにかく国会は、一刻も早く法、政令、省令、通達で再エネ規制を急いでください。

 

国会議員の中には再エネ業者とべったりで、業者から大口寄付をもらい続けている人たちが、今も与野党問わず大勢(3ケタ?)いると言われています。それらの議員は、最初は再エネ推進が100%善であると思って業者を応援し始めたのでしょうが、これだけ再エネによる水源破壊生物多様性喪失住民の安全安心の危機が明らかになってきた中で、まだ法規制を考えないのなら、売国奴と言われても仕方がありません。

 

国会議員になるには多大なる資金が必要と言われています。国会議員が大口寄付者と訣別するのは大変でしょうが、業者の側に立ち続けるなら、次の選挙で落ちてもらわねばなりません。

 

熊森はどこまでも国土とその上に生きる全生物の保全をめざします。水や電気などの大切なインフラを外資に任せたりしてはならないと考えます。(完)

5/15 マゲシカの保全対策を求めて東京の防衛省に電話 日本人が声を上げるしかないと思い知る

馬毛島は種子島の西約12キロに浮かぶ約8平方キロの無人島です。

 

 

 

 

 

 

 

 

種子島の左に浮かぶ小さな島が馬毛島 赤印

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前の馬毛島

 

 

12年前に、この島を米軍と自衛隊が使う基地にするという計画が発表され、地元は賛成・反対で大きく揺れてきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年8月大半の樹木が伐採されてしまった朝日新聞馬毛島写真

 

2年間にわたって進められてきた環境影響評価(環境アセスメント)ですが、2023年1月に最終段階である「評価書」が公告されました。

陸域に限ると、鳥類83種、ほ乳類4種(シカ、コウモリ、ネズミ、モグラ)、両生類2種、爬虫類6種、昆虫類580種の生存が確認されたそうです。

 

いよいよ今年1月から工事が始まりました。工期は4年間です。

交差する2本の滑走路のほか、火薬庫や港湾施設などを整備し、島全体が基地となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

計画では、島のほとんどが基地に

 

熊森は、そこに生息している最大の動物に目を付けて保全活動を行いますから、もちろん馬毛島固有種と言われるマゲシカにずっと目を付けて、防衛省に意見を出し続けてきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マゲシカの群れ

 

基地建設反対を掲げて再選された西之表市の八板俊輔市長は、元朝日新聞の支局長です。2021年に当選後、基地化を黙認するようになりました。

もちろん公約違反です。

島内の市有地を国に売却し、協力自治体に支給される「米軍再編交付金」を受け取ることにしたようです。

 

「なんだ、お金か。お金のためなら、豊かな自然や漁場を永遠に失い、マゲシカたちが絶滅してもいいのか」と思ってしまいます。

<武士は食わねど高楊枝>の日本人の誇り高き武士道精神はどうなったのか。

まあ、基地も大切だし、地元の人たちにしかわからないことも多いので、勝手なことは言えませんが、地元の皆さんは公約違反するなとみんなで怒らないのでしょうか。

 

空手道で有名な宇城憲治先生は、「人間にとって、一番大切なものは怒りです。怒りを忘れたらもはや人間ではありません」と言われています。

最近の日本人、怒りを忘れていませんか。もっと怒りましょうよ。世のため人のため。

 

と言っていても、急がないと、今、島に数百頭いると言われているマゲシカは、生息地を極端に縮小させられて、存続の危機です。

ああ、マゲシカたちの顔が浮かんでしまいます。

馬毛島固有種マゲシカの優しい顔

 

2022年12月、環境省は環境大臣名で防衛大臣に、馬毛島のニホンジカの生息地となる樹林地等の改変面積を可能な限り低減、餌資源や水飲み場等を再生、創出すること。また、生息状態に係る事後調査を実施し、その結果を踏まえ、適切に環境保全措置を講じるこという意見書を出しています。さすが環境省。

 

しかし、予定通り、工事が始まるのですから、日本の環境アセスメントっていったい何なの?儀式?意味あるの?という感じです。

 

日本人は日々の生活に追われて、マゲシカどころではない人が多いかもと思い、5月15日、東京の防衛省に熊森が電話しました。

 

電話交換手は出てくれたのですが、他の省庁と違って、防衛省は担当者に電話をつなぐということはできないのだそうです。マゲシカ保全にどんな対策が取られるのか具体策を教えてほしいと電話番号を伝えましたが、返答するかどうかもお答えできませんということでした。

 

もうこうなったら、かねてより狙っていた外圧です。

 

世界自然保護連合(IUCN)に詳しい団体に電話で相談してみました。

回答は、「期待しても、無理です」とのこと。

20年前に、IUCNが沖縄のジュゴンの保全を求めて意見書を出してくれたことがありますが、その時、日本政府は、棄権しました。

以来、IUCNが日本の生物についてコメントしたことは1回もないし、今、取り組んでいる日本の問題もありませんとのこと。

では、生物多様性条約事務局に訴えるというのは?などといろいろ外国の団体名を言ってみたのですが、マゲシカが生息地を壊されて生きていけなくなる問題に声を上げてくれそうな団体は、世界にゼロという答えでした。

 

私たち日本人が声を上げないと、日本の自然や生き物たちは守れないんだ!

 

みなさん、熊森はブログを書く暇もないぐらい日々多忙です。がんばって書くようにしますが。

どんどん動きますので、まだの方はぜひ正会員になって、熊森を広め、熊森をもっと大きくしてください。(完)

神奈川県で弁当型くくり罠に錯誤捕獲された絶滅危惧種が殺処分される 鳥獣保護管理法違反

新聞報道によると、5月6日(土曜日)午後5時頃、相模原市緑区名倉の集落近くの畑に設置されたシカ・イノシシ捕獲用の弁当箱型くくり罠に体長91センチ体重16キロの子熊があやまってかかっており、放獣できる場所を確保することができなかったという理由で、行政により翌朝殺処分されました。当然ながら、錯誤捕獲は放獣すべきで、鳥獣保護管理法でも放獣することととなっていますから、相模原市と神奈川県は法違反を犯したことになります。

 

四つ足動物がくくり罠にかかると、尋常ではない強力バネによってワイヤーが足を締め上げ続けるため、足が切れてしまいます。長野県では、3回くくり罠に掛って足が1本になってしまったカモシカも発見されたとのことです。あまりにも残虐な罠であるため、熊森はトラばさみ同様にくくり罠を使用禁止にするよう、環境省に強く訴え続けてきました。

 

結果、当時の環境省は、くくり罠を現時点では使用禁止にできない代わりに、せめて成獣グマが錯誤捕獲されないように、とりあえず12cm規制をかけることにしたと発表されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが、すぐに、長野県を筆頭に規制緩和が進み、現在では多くの地方自治体で、短径さえ12cmであればよいという弁当箱型くくり罠が一般的になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弁当箱型くくり罠

 

くくり罠問題については、何度も何度も熊森が規制を訴え続けているだけではなく、大日本猟友会もクマなどのあまりの錯誤捕獲の多さに悲鳴を上げ、真円12cm規制をかけるべきだと主張していますが、未だに環境省は規制をかけられていません。

 

神奈川県のツキノワグマは、富士・丹沢地域個体群に属しており、丹沢地域個体群の推定生息数は残り僅か35頭ぐらいとされ、絶滅危惧種となっています。(近年の神奈川県によるツキノワグマの生息数調査なし。行政担当者によるとほぼ横ばいではないかとのことです)

 

神奈川県のツキノワグマは、昨年度4頭殺処分、3頭放獣。そして、今年は今回の相模原の1頭殺処分です。

 

行政担当者によると、今回、通報を受けて現地に行くと、足首がすっぽり罠にかかってしまったクマがいたそうです。

(きっと、べそをかいていたことでしょう)

翌朝、クマの放獣業者を連れて再び現地に行くと、クマはまだ生きていたそうです。

住民が反対するので放獣場所がなく、麻酔をかけてから薬殺したそうです。

 

畑にも誘引物はなく、このクマはたまたまここを通りかかって、くくり罠に掛ってしまったのだろうということでした。

クマの通り道ならば、また、くくり罠に錯誤捕獲されるクマが出る恐れがあります。12cm真円規制をかけるとか、この辺りでくくり罠をかけるのを禁止するとか、相模原市には何らかの対策を講じていただくようお願いしました。

また、放獣場所についても、ふだんから何か所か確保しておくべきで、林野庁と協議の上、国有林に放すこともできるようにしておいていただきたいです。

 

行政担当者の皆さんには、神奈川県のツキノワグマを絶滅させないぞとの使命感を持って、緊張して事に当たっていただくようお願いしました。

新たに無害のクマを殺処分することがないよう改善策を要望しておきましたので、しばらくしたらどのような改善策が取られたか、また電話してみようと思います。

 

シカ・イノシシ捕殺用のくくり罠には、クマ以外にもキツネやタヌキなどいろいろな動物たちが錯誤捕獲されます。神奈川県では、上から網をかけて動けないようにしてから、罠を外して逃がしてやっているとのことでした。錯誤捕獲はクマ以外はふつう放置と聞いていたので、これには少しホッとしました。

 

環境省鳥獣保護管理室に電話して、今回の相模原市の錯誤捕獲グマ殺処分問題に対する見解を聞いたところ、「そのようなことがあったのを知らない。都道府県がその都度報告する仕組みはありません」とのことでした。

ああ、環境省よ、法違反がないように、絶えず目を光らせ、その都度、都道府県をご指導願います。

 

他生物に共感し、彼らの生命を尊厳できない文明は、自然を守れません。(完)

 

春の戸倉植樹地メンテナンス~くまもりボランティア大活躍~

雪融けを待って植樹地へ

4月21日、27日の2日間に渡って、熊森のフィールドボランティアチームが、兵庫県宍粟市戸倉にある植樹地のメンテナンスを行いました。

戸倉は豪雪地帯で、毎年大量の雪が山を覆い尽くします。植樹地はシカなどに苗木を食べられるのを防ぐためにネットで囲いをしていますが、雪の重みでネットをかけている支柱が倒れたり、折れたりしてしまいます。雪が積もっていると作業できないので、春が来て雪融けとともに修復作業を開始しています。

今回はボランティアの女性3名が作業してくださいました。

 

1日目

戸倉トラスト地には5か所の植樹地があります。21日は3か所の修復作業を行いました。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

壊れた囲いが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この通り!

 

苗木の生育状況の確認も行いました。戸倉は苗木がうまく定着せず、なかなか大きく育ちません。今後さらに試行錯誤を続けていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苗木から新芽が!順調に育って欲しいですね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

移動中にシカの角を発見!

 

2日目

27日は残りの2か所をメンテナンスです。

太陽が照り付け少々暑い中、皆さん頑張ってくださいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

丁寧にネットをかけていきます

 

野生動物はちょっとした隙間も見逃しません。ネットがたわんでいないか、破れている部分はないかなど、細かいところまで気を配って作業を進めます。

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての囲いの修復が完了!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余った資材を確認して作業終了です!

 

2日間で5か所全ての囲いが修復できました。苗木や外から入ってきた植物が無事に大きくなり、少しでも早く広葉樹林が再生されることを願うばかりです。野生動物が安心して暮らせる山になるといいですね。

今回は女性のみのチームでしたが、大変な作業を根気強く頑張ってくださいました。作業してくださった方々本当にありがとうございました。

日本熊森協会はこれからも人工林の広葉樹林化を目指して、地元の方々やボランティアの皆さんと手を取り合って頑張っていきます!

熊森の活動やボランティアに興味のある方は、ぜひご連絡ください!

くまもり全国支部長研修会 1泊2日:座学+青山高原現地視察

4月15日(土)の全国大会が終了すると、支部長たちは直ちに新大阪のユースホステルに移動し、恒例の1泊2日の全国支部長研修会に参加しました。全国大会に都合で参加できなかった支部長たちは、オンラインでこの研修会に参加しました。

 

1日目夜

15日 19時30分~ 支部から18名、zoomで6名が参加

室谷会長から、今後もどこにも気兼ねなく物言える自然保護団体であり続けたいとして、熊森の現在と今後についての話がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

2歳の長男と支部長研修会に参加された室谷会長

 

特別講師として、宮城県丸森町からご夫婦で参加してくださり全国大会で10分間理路整然と熱のこもった発表をしてくださった義高光氏が、森林伐採を伴うメガソーラー建設計画からどうしたら地域や森を守れるか、実体験に基づいたリアルなお話を30分間語ってくださいました。

目を見張る内容でした。参加した本部スタッフたちはもちろん、支部長の皆さんも圧倒されたと思います。

 

支部長研修会でお話をいただいた内容は一般公開を前提としていないので、公開はできませんが、義高さんが全国大会で発表された内容については、ユーチューブで公開させていただいています。

 

第26回くまもり全国大会での義高光氏の発表

 

支部長発表

リンパ癌と壮絶な闘いをされていた熊本県支部の上田支部長は、見事に癌を克服され、今回の研修会に元気な姿でお越しくださいました。癌との闘いの日々や熊森活動への熱い想いを語られました。

今や、日本人の半分が癌にかかる時代です。明日は我が身。参考になりました。上田支部、貴重な克服体験をありがとうございました。熊森は今も昔も、みんなで信頼し合いお互いに思いやり励まし合う温かい家族です。

 

その後、各支部長から支部活動報告があり、課題の共有が行われました。

 

支部活動の歴史が一番長い滋賀県支部の村上支部長の発表には、目を見張りました。すごく大きく活動されているな、すばらしいなと思いました。

本部同様、どんな活動も一朝一夕に実るわけではなく、息の長い粘り強い活動を根気強くみんなで仲良く続けた者たちだけが、ついに大輪を咲かせるのだと感銘を受けました。

 

22時から24時までは、開放された食堂での自由時間。支部長間の親睦が深まったと思います。

 

2日目

16日朝 9時30分~10時30分 支部から17名、zoomで8名が参加

室谷会長と本部職員から支部活動や支部の運営等に関しての話がありました。

 

最後に、再エネ森林破壊問題を担当している本部スタッフより、この日の午後から見学する予定となっている三重県青山高原の風車群についての事前説明と見学ポイントのレクチャーがありました。とてもよくまとまっているので、皆さんも動画でご覧になってください。

 

三重県青山高原の風車群について

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レクチャー中のスタッフ

 

 

巨大風車の巣窟「青山高原」

 

16日午後からは支部代表13名や新城市の市議会議員の方々、本部スタッフらで三重県の青山高原を訪れました。案内してくださったのは、地元で風力発電の反対運動を長年続けておられる武田恵世氏です。

 

国定公園である青山高原には現在89基の風車が建っており、異様な光景が広がっていました。風車はメカ上とても故障しやすいそうで、故障しては直すを繰り返しています。一番古い風車群は20年を経過しており、新しい風車に置き換えるために停止していました。

 

 

 

 

 

 

青山高原に居並ぶ異様な風車群

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青山高原の現状を見学

 

異音を放つ巨大風車

 

古い型の風車だからでしょうか。ブレードは回転するたびに「ブーン、ブーン」と大きなローター音を響かせます。加えてブレードが時速200km以上のスピードで空気を切り裂く音が重なります。とても居心地の良い場所ではありません。参加者の中には早くも体調不良を訴える方が数名出ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大風車

 

健康被害もさることながら、切り開かれた高原はあちこちで崩れてきており、環境への悪影響は計り知れません。事業者は、崩れた個所はその都度修理していると言いますが、過去に斜面崩壊が起きた箇所の修復工事は応急的なもので、今後また崩れてしまうだろうと感じました。野生動物たちはこんな環境では、とても暮らせないだろうと感じました。生物多様性の喪失です。

 

 

 

 

 

 

 

 

あちこちで斜面崩壊が起きており、国定公園なのに林道使用不可

 

 

百聞は一見に如かず。参加された皆さんは風車が建設されるとどうなるか、実感できたと思います。(完)

 

 

初めて参加された支部長の感想 要旨

 

青森県支部長  石戸谷 滋

 

4月14日の午後から日本熊森協会の全国大会、同日夜と翌日午前には支部長研修会、午後からは三重県青山高原の風力発電現場の視察、私はそのいずれにも参加しました。

 

全国大会は、尼崎市の「ホテルヴィスキオ尼崎」で行われました。大会には各県の支部長の他に数名の国会議員も来賓として出席されており、これが熊森がその存在を世間に訴える場なんだなあと感じました。今年の大会は「東北地方の森林破壊型再エネ事業の阻止」をテーマとしていて、宮城県の代表たちの他に、私も「みちのく風力発電事業」の現在の状況を伝える5分間程度のスピーチを行いました。

 

全国大会終了後、本部スタッフと支部長たちは「新大阪ユースホステル」に移動、そこで支部長研修会が開かれました。対外的な宣伝の場である全国大会から、実質的な打ち合わせの場である支部長会議に移ると、会場も質素なユースホステルに変わったわけです。関西らしいと思いました。

 

支部長研修会では、何と言っても、宮城県丸森町耕野地区で大規模太陽光発電事業に反対する本気の運動を繰り広げている義高(よしたか)光さんのレクチャーに圧倒されました。

 

義高さんはまず「事業者に正面切ってのイデオロギー論争を挑んでも、勝ち目はない」と言い切りました。彼らは反対運動の論点を知り尽くしていて、最初からそれを無視するつもりでいるからです。ならばどうすればいいかということを、経験をもとにおはなししてくださいました。

(内容非公開)

 

勉強になりました。

 

支部長交流会で得たもの

(省略)

 

翌16日、一行は三重県の「青山高原ウインドファーム」を見学しました。案内してくれたのは、地元で風力の反対運動を繰り広げている武田恵世さんという歯医者さんでした。この人がまた徹底して風力のことを調べているのです。(「自然エネルギーの罠 化石燃料や原子力の代わりになり得るエネルギーとは何か」という著書もあります。)

 

青山高原風力発電所には、現在91基の風車が設置されています。建設後20年以上が経つ750kWの小型のものから、5年前に建てた2,000kWのものまで、混在しています。

 

見学当日は、私にはかなり強い風が吹いているように感じられ、風車もよく回っていました。でも、この程度の風では、発電はするものの、送電にまでは至らないだろうと武田さんは言います。少々の発電では、送電する意味がないのだそうです。つまり、この日のような風の弱い日は、このウインドファームの出力はゼロになります。ではどのぐらいの風が吹けば送電できるの? 傘がさしにくいぐらいの風が必要だが、それはめったに吹かず、1週間にせいぜい1日半ほど、設備利用率は20%以下で、しかも2,000kWという定格出力で発電する時間はさらにその10~20%程度に過ぎないのだそうです。

 

業者はどこも発電実績を非公開としています。あまりに低すぎることがバレないようにでしょうか。そして、対外的には、定格電力で発電しているとして数字を出しているようです。こんなカラクリがあったのかあ。

 

では中部電力の子会社はなぜこれを建てたのか? 「うちはクリーンエネルギーに力を注いでいます」という宣伝をして建設するだけで儲かるからです。再エネの裏側を見せられ、ちょっとばかばかしくなりました。

 

この発電所の敷地および取付道路の風化も見てきました。そこは毎年いくつもの小さな土砂崩れが起きているそうで、10年、20年というスパンで見るとひどい劣化になっています。風力事業者の説明会のとき、副社長が「風車を建設すると確かに自然破壊が起きるが、それは建設するときだけの話だ」と言いましたが、ああ、あれは嘘だったのかあ・・・。山を削って何か大きなものを造るとき、そこでは継続的に自然破壊が進むのですね。

 

再エネを規制する条例について。現在、太陽光発電を規制する条例が全国で約200件、太陽光と風力の両方を規制する条例が数十件できているそうです。弁護士でもある室谷会長によると、「条例で再エネを規制するのは違法ではない」そうです。

ドイツやデンマークなどは概して日本よりも風が強く、山地が少ないため、日本より風車の発電に適しているそうです。洋上風力発電も、海が遠浅であることで、比較的造り易い。けれども、ヨーロッパでも再エネ発電が成功しているとは言い難いそうです。

メディアを使っての大々的な(自然にやさしいという美しくてきれいな)キャンペーンによって、再エネの本当の姿が市民には見えにくくなっている感じがする、と室谷会長。

いま無理やり進めている再エネ化のしっぺ返しがいずれ来ると思っておいた方がいいかもしれません。

 

 

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