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6月17日 京都でのナラ枯れ対策用炭撒きに同行

顧問の群馬県在住宮下正次先生が行われる京都でのナラ枯れ対策用炭撒きに本部調査研究部・京都府支部が同行しました。 (将軍塚、吉田山、建勲神社、下鴨神社)

京都では神社の景観問題などがありますが、人間への直接的被害が感じられにくいナラ枯れについては、あまり深刻な問題として捉えられていないようでした。(動物たちにとっては死活問題ですが)

地域を良く知る京都府会員たちのスムーズな誘導で、東山方面を車で移動。将軍塚に連れていってもらいました。京都盆地が一望のもとに見渡せ、感動でした。観光客が多く歩く道路際にも枯死木が数多く見られ、放置していると、いずれ倒れてきて危険なことになるのではと心配になりました。

神社のコナラやスダジイなどのドングリの木には、カシノナガキクイムシが侵入したあとが見られ、枯死・衰弱した木も多く確認することができました。宮下先生が、一見健全に見える樹木でも、見上げてよく観察すると、梢が枯れていたり、葉の量が少ない・葉の緑が薄い等、全体的に樹木が弱ってきている。虫によって木が枯れるのではなく、木が弱ってきたから虫が片づけに入ったと指摘されていました。なるほど、見上げてみると、京都の樹木にも、そのような弱った木々がたくさん見られました。

日本には、18種のナガキクイムシ科甲虫が生息していますが、大発生しているのはカシノナガキクイムシだけです。カシナガは5ミリほどの小さな虫ですが、ナラ菌と呼ばれる病原菌を幹の中に持ち込み、木を枯らしてしまいます。このカシナガが侵入した樹木には、様々な方法で防除が試みられていました。

プラスチック爪楊枝の挿入 カシナガの拡大を止めることは出来なかったそうです。

化学物質によるくん蒸処理 同行くださったナラ枯れ研究者が、昔の「森林家必携」という本を見ると、カシナガが拡大した時は、伐採してその場で燃やしてしまうようにと書かれているので、そうしたい。しかし、現在は法律で野焼きが禁止されてしまっているので、こんな手間なことをしなければならないと嘆いておられました。

ビニールシート被覆 カシナガは水分のあるところを好むので、幹の下の湿っているところだけ防除すればいいのです。

その他 カシナガの嫌いな臭いを出すクスノキやヒノキノの入った袋を幹の下の方に巻いて、虫が来ないようにする。これには、抜群の効果が見られるそうです。他に、集合フェロモンも合成されていて、これを使うとカシナガの大量捕殺ができるそうですが、ナラ枯れの拡大を止めることには役立たないそうです。

宮下正次先生の話によると、中国などからやってくる酸性降下物質の影響で各地の土壌のPH値が異常に下がっており、戦前に比べて土壌のミネラルも1/3になっている。植物の生育環境が悪化して木が弱っているということです。もう少し詳しく言うと、PH値が5.5以下になると土壌のアルミニウムが溶け出し、リン酸(植物の三大栄養素の1つで、開花・結実に作用する)と結びついてしまうため、植物がリン酸を吸収することができなくなり、カシナガがつかなかったとしても、いずれ衰弱・枯死に至ってしまうのだそうです。

対策として、炭撒き(特に竹炭が良い)による土壌の改善が効果的だと話されていました。炭を撒くことにより、半年から1年かけて徐々にPH値が中和され、土壌が改善し樹木の樹勢が回復するそうです。それにより樹木に抵抗力がつき、カシノナガキクイムシ等の虫に簡単に侵されなくなり健全な状態をとりもどすとのことです。しかし、この酸性説にも反論があるようです。

今回は3本のスダジイに計52㎏の粉炭撒きを実施しました。炭撒きの効果を見ていきたいと思います。

生物の多様性が保たれた森では、カシナガの嫌いな木もあちこちに混ざっている為、ナラ枯れが拡大しても、森は壊滅的な消滅には至らない。しかし、人間がカシナガの好きな木ばかり植えた山だと、ナラ枯れの拡大で一斉に木々が消え、大変なことになっているそうです。やはり、ここでも生物の多様性が大切であることがわかりました。

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