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シカによる森林消滅問題は、日本民族が初めて経験する深刻な問題 4/27くまもり全国支部長会③
今や、森林の奥にまで入り込んだシカが、所によっては、下草や低木、稚樹を食べ尽くしてしまい、山は天然更新もできなくなっている。他の虫や鳥や獣が餌場や隠れ場を失い、山に住めなくなっている。虫媒花は実らなくなる。所によっては、冬、シカが木の皮までかじって高木まで枯らしてしまい、森が消えたり、山が崩れたりしてきている。山の保水力が失われる・・・
シカによる森林消滅問題は、これまで日本民族が経験したことのない深刻な問題です。自然界では起きないことが起きているのであり、人間がやらかした事が原因としか考えられません。
チシマザサや低木、稚樹が消えてしまったブナ林。(兵庫県2013年5月17日撮影)
上の写真に対して、九州地区の支部長たちから、「下草を消したのは、本当にシカなのか。九州にもシカが多いが、九州では林床が裸地になどなっていない」という疑問が続出しました。同じこの山でも、7分の3は下草がまだ残っています。この町の人工林率は73%。奥地ほど、人工林率が高いのです。
また同じ長野県内でも、居住地の違いによって、シカが増えているかいないかでさえ、答えが違っていました。
「世界遺産をシカが喰う」という衝撃的な題名の本を読んだことがあります。あれ以来、シカを放置しておけば、どこでも森林が消滅に向かうのか、場所によって違うのか、調べに調べていますが、自然界のことは、わからないことがあまりにも多過ぎます。
しかし、今度の、民間捕獲業者を導入して、シカ・イノシシ・サル捕殺事業に当たらせよという「鳥獣保護法改正案」は、また、例によって、中央から出された同一指令となります。青森県や秋田県など、シカやイノシシのいない県もあります。みんながみんな、歩調を合わせる必要もないと思うのですが、その辺はどうなるのでしょうか。
どちらにしても、問題解決のためには、原因究明が必要です。原因の特定を誤ると、打つ手打つ手が全部外れてしまいます。
森林が消滅するのかとおもわれるほどシカの食害が増えたのはなぜか。様々な要因が考えられますが、原因を作ったのはすべて人間です。
1.人間に草地を取り上げられた。
芝生に覆われた奈良公園では、2008年調査によると502ヘクタールに1128頭の野生ジカが暮らしており、前年比で33頭減。有害駆除や個体数調整捕殺はしていないということです。(生存のオス262頭、メス695頭、子供171頭。1年間の死亡原因は、病気174頭、事故71頭、犬18頭)
2.捕食者がいなくなった?
(明治時代にオオカミを絶滅させた。東京オリンピックに備えて、野犬を一掃処分した。条例で犬を放し飼いにできなくなった。キツネなどが減った)
しかし、オオカミがいた頃、シカは今より多かったというのですから、よくわかりません。
2.拡大造林による奥山草原化や林道の法面に草の種を吹き付けて回ったことによる一時の餌増加?
シカの食生活のバランスを人間が崩したことは間違いないでしょう。
3.地球温暖化で積雪量が減ったことによって、大積雪一斉死があまり起きなくなった?
温暖化していなかった昔の北海道でも、エゾシカは今より多くいたそうですから、良くわかりません。
4.中山間地の過疎化高齢化?
縄文時代の人口は26万人だそうです。このころ、全国が過疎化していましたが、それによってシカが際限なく増え、森が消えたりはしていません。
今回の「鳥獣保護法改正案」は、シカ増加を、狩猟者が減ったことによるシカ捕獲数の低下によるものとして、あらゆる手段を講じてシカを大量に殺すための法改正案です。私たちには、狩猟者が今より少なかった戦前、なぜシカが爆発増加しなかったのかという疑問が残ります。
また、人間が、ある種の野生鳥獣の生息数など調整できるものではない。崩れてしまった自然界のバランスを取り戻す方向にもっていくべきだ。シカピルなどの非補殺対応も検討して欲しい。森林消滅を防ぐため、高山地帯やブナ帯から、シカを下の草原帯へ移動させてほしい。奈良公園のようなところが各地にできてもいいのではないか。などと、思います。どちらにしてもわからないことだらけで、どういう手を打つのが最善か、誰にもわからないという深刻な問題です。
ともあれ、シカのホロコーストを狙う「鳥獣保護法改正案」は、人間がさらに自然界に徹底的に手を入れていく方向に改正されるもので、いっそう取り返しのつかない事態を招く恐れがいっぱいです。④へ。
「狩りガール」を持ち上げるテレビ番組に苦言
いつの世でも、どこの国でも、国民の洗脳や国民の意識改革の宣伝に、効果的に利用されるのは、若くてきれいな女性です。
危険なものや間違ったことでも、「若い女性もやっています!」とプロパガンダされると、多くの国民は、警戒心を失い、同化されやすくなります。
若い女性は、間違ったことに利用されないように、本当に、何が正しくて何が善なのか、よく勉強して、慎重に行動して欲しいと思います。
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4月3日、毎日テレビ夕方6時過ぎからの放送「VOICE」で、「狩りガール」が、取り上げられました。
「VOICE」への意見は
→voice@mbs.jpまたは、FAX06-6359-3622
この番組は、近畿2府4県と徳島県の一部に報道されています。
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「狩りガール」報道は、今や国策プロパガンダ放送局に成り下がってしまったかのように見えるNHKテレビが、昨年10月に、「狩りガール」を持ち上げるニュースを流していましたから、別に、目新しいものではありません。しかし、本当にこんな方向に日本文化を進めていってもいいのか、全国民がしっかり考えねばならないと、今回のテレビ報道で改めて強く思いました。
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近年、環境省は、日本人は狩猟民族であるとして、「すごいアウトドア」というキャッチコピーで、若者たちにハンターになることを呼びかけています。そのポスターの真ん中には、猟銃を持った若い女性の絵が描かれています。縄文時代ならともかく、日本人は誰が見ても農耕民族です。たとえシカが増えすぎて困ったとしても、レジャーや遊びとして国民にシカを殺させるのは、間違っています。環境省の政策に大きな問題があることは、報道関係者ならば、ちょっと調べていただければ、すぐにわかることだと思うのですが。
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今回のテレビ報道では、銃という武器を持った圧倒的強者である人間(=若い女性)が、無抵抗の野生動物たちを、笑いながら撃ち殺していました。「野生動物たちが山から出てきて、農作物などに被害を与えたから、退治してやる」という、英雄気取りなのでしょうが、自分が被害を受けたわけでもないのに、ファッション感覚やゲーム感覚で、厳しい自然界の中で、人間の援助も受けず、一生懸命に生きている野生動物たちの命を奪うなら、人として許されるものではありません。冷静になり、慎重に考えなおしてほしいと思います。(この狩りガールと個人的に話し合ったわけではありませんから、彼女を深いところまで知って書いているわけではありません。ただ、報道の仕方に問題を感じたのです)
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「狩猟者を増やしたい。そのために、若い女性を使おう」
環境省の政策の後ろには、戦後の森林政策の失敗を覆い隠そうと躍起になっている人達の黒い企てと、研究という名で無数の元気な動物たちを解剖し続け、命の尊厳がわからなくなってしまい、一般人の感覚からはるかにかけ離れてしまった研究者の存在があると、私たちは感じます。
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「狩りガール」のみなさんは、かつて、野生動物たちが棲んでいた山が、今どうなっているか、奥まで入って一度検証してみてほしいと思います。
国策により、戦後、青森から福島まで、東北6県分の面積に等しい広大な原生林が伐採されました。その跡地などに、1000万ヘクタールの針葉樹一辺倒の人工林が奥山を中心に造られました。
しかし、林業の低迷で、今や多くの人工林は放置され、内部は砂漠化しています。広大な奥山人工林内には、動物たちの餌は何もありません。動物たちは本来の生息地では、生きられなくなっているのです。動物たちは、被害者です。
人間は、各地で、動物たちの欠席裁判を行い、死刑判決を下していますが、これは弱い者いじめです。こんなことをしていては、この国で、人と野生鳥獣との共存などできないでしょう。
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自然界のことは、人間の頭ではわからないことが多過ぎるのですが、戦後の拡大造林や東京オリンピック時に行ったヤマイヌ全頭殺害、地球温暖化など、様々な人間活動の結果、シカは生息数のバランスを崩して増えているのではないかと思われます。
すべて、人間の失敗です。人間が問題の原因を作ったのです。目の前の現象だけを見て、被害者である野生動物たちを加害者扱いし、山奥にまで入り込んで命を奪うという、相手の存在を全面否定する行為を、若い女性が、笑いながら軽々しくやってほしくはありません。まず、彼らがどこにいたらいいのか、生息地を保証してやるところから始めるべきでしょう。
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●狩猟行為は、山奥にはりめぐらされた林道、車や銃、犬があれば、女でもできるかもしれませんが、狩猟の後始末は、女性には一般的にむずかしいと思います。殺したシカやイノシシは、山に埋めるか、焼却場へ持って行くかしなければなりません。山中に放置すれば、クマを初めとする多くの野生鳥獣の餌となり、ますます山の生態系が狂ってしまいます。しかし、若い女性に、重いシカやイノシシを運ぶことなど、普通は無理です。
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●「狩りガール」を推奨している人たちに、なぜ若い女性を狩猟に巻き込むのかたずねてみました。
答えは、「若い男の狩猟者を増やしたいのだが、呼びかけてもなかなか増えない。罠猟免許を取る人は増えたが、銃猟免許者は減る一方だ。若い女性に目を付けたのは、若い女性が銃を持つと、彼氏が影響を受けて銃を持つようになる。そこを狙っている」と、いうことでした。
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私たち人間にとって命はたった一つしかない最高に貴重なものですが、野生動物たちにとっても同じです。なぜか、優秀な官僚のみなさんには、現在起きている野生動物問題を、野生動物を殺さないで解決しようという努力がまったく見られません。初めから、殺害ありきです。これは、恐るべき倫理観の欠如です。
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●動物用防除柵を作ったり、奥山の針葉樹一辺倒の人工林を広葉樹林に戻して生息地を復元したり、シカに関しては、人間が彼らから奪った草原や湿原を返してやったり、シカが増え過ぎないようにシカ用避妊薬を開発したり、シカの天敵であるヤマイヌやキツネなどを放して、人間が壊した生態系のバランスを自然の力で取り戻したりして、人間は、あくまで生命尊重思想の上に立って、非補殺対応をめざすべきです。
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●若くてきれいな女性には、生き物の命を大切にする、人にも生き物にも優しい人間であってほしいと願います。
●メディアのみなさんは、生き物の為にも、人間の為にも、慎重な報道を心掛けてほしいです。身の回りに、軽い気持ちで銃を持つ人が増えれば、銃を持たないわたしたちは、不安でたまらなくなります。
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神道や仏教の影響も大きかったのでしょうが、日本人は殺生を嫌い、物言えぬ弱者である野生鳥獣を大切にしてきました。このような文化を大切にしていかないと、自然破壊にいっそう歯止めがかけられなくなり、やがて日本文明は水源を失って滅びてしまうでしょう。
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メディアの皆さんは、番組制作にあたって、必ず、反対者、疑問者の声も同時に拾っていただきたいと思います。でないと、国民は、何が正しくて何が善なのか、考える力を失ってしまいます。
滋賀県支部第10回総会と画家ウィリアムズ氏による記念講演
3月2日、歴史を感じさせるすてきな建造物である大津市旧公会堂で、熊森滋賀県支部第10回総会と記念講演会がありました。滋賀県支部は、京都府支部に続く、熊森の第2号支部です。
滋賀県支部は、この10年間、村上支部長を中心にスタッフ一同が心を一つにして、熊森活動に励んでこられました。10年間変わらず、しかも、休むことなく活動し続けてこられた。これだけでも、みなさんが本気で本物であることがわかります。
村上支部長は、本業であるフルタイムのハードな仕事を持ちながらの熊森無償活動で、その大変さは、やったものにしかわからないと思います。この日、熊森滋賀スタッフのみなさんが、輝いておられるように感じました。
森山会長から村上支部長に花束贈呈。10年間の感謝とねぎらいのことばがありました。
去年度滋賀県支部は、琵琶湖西部トチノキ巨木群を伐採業者から守り、立木トラストすることに成功されました。今、滋賀県内における次なる大規模奥山トラストをめざして、動いてくださっています。
立木トラストに成功した、朽木のトチノキの巨木群展示写真
今回は、10周年を記念して、ブライアン・ウィリアムズ氏が講演をしてくださいました。有名な画家であるウィリアムズ氏が、地球の環境問題について、こんなにも勉強されていたのかと知って驚かされました。まるで専門家です。
ウィリアムズ氏は、ペルー生まれのアメリカ人で、世界一周写生旅行の途中に日本に立ち寄り、日本の風土や人情に魅了されて、大津市伊香立に定住してしまわれたのだそうです。家の窓から見える景色が、即、絵にしたくなる美しさだということでした。その感性の鋭さゆえに、人類が今のような生き方を続けるなら、地球温暖化問題をはじめ、近い将来、滅びざるを得ないことが見えておられるようでした。熊森同様、大変な危機感を持っておられました。
講演中のウィリアムズ氏
舞台には、曲面に描かれた巨木の絵がありました。魅了されて眺めていたら、ウィリアムズ氏が、私が描いた絵ですと言われました。一瞬、「えっ」と思いましたが、ウィリアムズ氏は、地球環境問題の研究者ではなく、本業は画家だということを思い出しました。ウィリアムズ氏は立体キャンバスに絵を描く画家としても有名なのだそうです。3次元の世界は、平面ではなく立体キャンパスに描いた方がいいという発想にも、驚かされました。
私が描いた絵ですと教えてくださったウィリアムズ氏
最後に、ウィリアムズ氏が、「自然保護を語っている人が多いが、よく聞くと、ほとんどが自然保護ではなく、人間保護。」と、苦言を呈しておられました。全く同感です。
この日、ウィリアムズ氏は、日本熊森協会の会員になってくださいました。それもこれも、滋賀県支部のみなさんのおかげです。
ウィリアムズ氏の講演を聞かせていただいて、ここまで日本の自然を守りたいと本気で思っておられる人は、めったにおられないだろうと思いました。その本気の人が、日本人ではなくアメリカ人というのは、なんか不思議でした。
「温暖化影響か 白神山地にブナの実食べる虫大発生」の新聞報道について
- 2014-04-02 (水)
- くまもりNEWS
3月に横浜で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の総会が開催されました。
この関連イベントで講演されたマタギの方が、世界自然遺産の白神山地で「象徴ともいえるブナの森に、地球温暖化の影響が表れている。気温が高くなったせいか、虫が大発生し、ブナの実が熟す前に食べられてしまう。」として、地球温暖化対策の強化を訴えられたそうで、新聞で大きく取り上げられました。
ブナの実を食べる虫というのは、ブナヒメシンクイ(蛾の一種)のことだと思われます。ブナの実を拾って食べようとしたら、よく、1ミリメートルぐらいの穴が1個あいています。(以下写真)
これは、ブナヒメシンクイの幼虫がブナの実を食べて、出て行ったあとです。
この報道内容が事実であるならば、大変タイムリーな発表です。しかし、私たちは、ブナヒメシンクイが大発生しているということを聞いたことがなかったので、さっそく、詳しい研究者に問いあわせてみました。以下、その回答です。
●ブナに付く虫は、300種類ほどあり、そのほとんどが、クワガタムシ、カミキリムシ、ブナハバチ、ブナハムシなど葉を食べます。
実を食べる虫は少なくて、代表的なものは、ブナヒメシンクイです。この虫の成虫は、春の開花時に、ブナの雌花に産卵し、やがて卵が孵ると、6月ぐらいから、幼虫はブナの実を食べ始め、やがて、ブナの実を落としてしまいます。
しかし、この虫は、終齢幼虫後、地面に潜ってサナギになります。その時、地面の中にいる菌の菌糸が体に付いてキノコに成長していくため、やがてこの虫は死んでしまいます。この虫は、地球温暖化によって大発生するタイプの虫ではありません。自然の力で、この虫の生息数はコントロールされているので、心配する必要はありません。
地球温暖化でブナが影響を受けるのは、中の実が実らず、シイナと称される殻だけの実が増えることです。この原因は、ブナが、光周性の植物であるため、日照時間は同じでも、気温だけが上がってしまうと、うまく実が作れなくなるためです。ブナは、年平均気温が、6℃~12.5℃の間で生育する植物で、白神では、標高80メートル~1200メートルがブナ帯です。
<熊森から>
地球温暖化に関しても、地球は今、温暖化しているという研究者がいる一方で、地球は今、寒冷化しているのだという研究者がいます。地球温暖化の原因は、空気中の二酸化炭素濃度が高まったことだという研究者がいれば、それは都市熱が原因であるにすぎないという研究者もいます。
過剰と思えるまでに情報が氾濫している時代ではありますが、自然界のことは複雑過ぎるので、全くもって、どれが真実なのか、判断に困ることが多々あります。どちらにしても、白神のブナの実が、クマたちを初めとする動物たちの口に入らなくなってきているのなら、困ったことです。実際はどうなのか、調べられた方は、教えてください。
大量捕殺推進一辺倒の環境省素案に、言葉を失う パブリックコメント② 熊森解説
- 2013-12-11 (水)
- くまもりNEWS
<鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき措置についての素案>への熊森解説
(素案全体について)
増加したシカによる農作物被害や森林被害が拡大し、地域によっては大変な問題になっているという現状認識は、熊森も同じです。
●しかし、物事にはすべて原因があります。問題を解決するには、原因を特定し、その原因に対して対策を取らねばなりません。ただし、自然界のことは、実際には、人間に原因がわからないことだらけなのです。
●素案では、ハンターの減少が、シカ増加の唯一の原因になっています。よって、この素案は、対策として、いかにハンターを増やし、いかにシカを大量に捕殺するか、そのこと一色になっています。
●熊森は、これまで何度も指摘してきたように、シカ問題は、シカが数的バランスを崩した結果であって、ハンター減少が原因ではないととらえています。
狩猟者数の変化 (黒色折れ線グラフ)と シカ捕殺数 (水色)
日本に狩猟が入ってきたのは明治からです。以前、今より狩猟者が少なかったとき、シカ捕殺数も少なかったのです。しかも、ハンター減少が原因なら、狩猟鳥獣のすべてが増加するはずです。よって、シカ捕殺推進一辺倒の素案にパブリックコメントをと言われても、根本から考えが違うとしかコメントのしようがありません。
こんなことになるのは、素案作りにかかわった検討小委員会の委員選びに問題があります。原因はハンター減少だという論者ばかり委員に集めて、検討会を持てば、幅広い意見は出ません。
本来、検討会や審議会は、多様な意見の者たちを集め、激論を戦わして真理に迫るべきなのですが、実際は、国が、国の森林政策の失敗や人間側の責任に触れない意見を言う、狭い範囲の人たちだけを集めており、大きな問題です。
しかも、この素案は、国民に、
・明治になるまでの1200年間、殺生禁止令が出ていた
・明治時代の初めに3000万人だった人口が、爆発増加し、現在4倍に増えた
・車社会が発達し、道路が奥山まで伸びて、人間は、かつて野生鳥獣の国であった国土まですべて自分のものにしてしまった
・戦後の林野庁の森林政策であった拡大造林策が行き過ぎて、日本の山は動物が棲めないまでに荒廃した
等の社会的背景や、シカは本来、豊かな自然生態系を我々に提供してくれる益獣であることなどを、全く知らせていません。それどころか、戦後、人間が行ってきた森林の大破壊には一切ふれず、森林劣化は全てシカが原因だと、シカに責任転嫁しています。
その上、シカの殺処分を「管理」「個体数調整」と表現し、大量に捕殺することは、「積極的な管理」などと表現し、読んだ一般国民に、国が何をしようとしているのか具体的なイメージが浮かばない書き方になっています。
●熊森が考えるシカ増加原因説
① 地球温暖化による冬季積雪量減少
②人間による シカ捕食者の消滅
③ 拡大造林による一時的な奥山草原化とその後の放置による奥山荒廃
④ シカの山奥移動を可能にした奥山開発や道路網の整備
⑤ 平地での過度の駆除による奥山追い上げ
⑥ 耕作地の放棄や林道壁面緑化による餌場提供
原因の一つ一つに対策を練っていくべきです。
・このような
このような人間活動によるさまざまな原因説が考えられますが、素案には、人間活動の反省や責任が全く書かれていません。
●自然界の生物数をコントロールできるのは自然の力だけなのに、殺処分の強化により、人間が自然界の生物数をコントロールできるかのように書かれています。一定以上の広い土地を野生鳥獣に返してやり、野生鳥獣が自然界のバランスを取り戻せるようにすれば、その中で、何頭いてもいいのです。
●野生動物の命のすばらしさや生命尊重が完全に抜け落ちています。
●非捕殺対応が、全く議論されていません。
●今、シカは、どこにいても、個体数調整という名で人間に殺されます。
シカたちはどこにいればいいのか、いてもいい場所をシカたちに示してやるべきです。
10月17日、 「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」の中止、または抜本改革の要請書を持って環境省へ
- 2013-11-02 (土)
- くまもりNEWS
環境省担当官と午後1時から3時までの意見交換会のアポが取れました。
今、全国を巡回している環境省主催「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」の内容があまりにもひどいので、とりあえずこれだけでもなんとか直してもらいたいと、熊森から、会長、副会長、調査研究員の3名が上京しました。
新橋からタクシーに乗って、「環境省まで」と告げると、運転手さんが、「ここで20年も運転手しているけれど、環境省までと言われたのは初めてだ。環境省ってどこにあるんだ」と言われました。これまでもタクシーに乗ったとき、何度か運転手さんに同様のことを言われました。地方から環境省を訪れる国民は、ほとんどいないのだろうかと思いました。
霞が関の中央合同庁舎に着きました。
環境省側からは2名の係官が出てこられました。ひとりは去年の春ここに来られた方で、もう一人は今年の春からここに来られた方でした。
日本の行政は、ふつう3年、短い人は1年で担当者が変わっていきます。
21年間も日本の森や野生動物、奥山の保全・再生に、寝ても覚めてもかかわってきた私たちとは、残念ながら、ほとんど話が合いませんでした。自然観や動物観が、私たちとかなり違うように感じました。
環境省担当官に、環境大臣石原伸晃様宛の要請文を手渡す森山会長
<熊森から環境省への主な要請>
①今、シカはどこにいても撃たれます。ここにいたらいいよという場所(=生息地を)を、まず決めてやってください。<生息地保証>
②捕殺対応だけではなく、被害防除、追い払い、避妊・去勢など非捕殺対応も検討してください。<非捕殺対応の検討>
③「すごいアウトドア!!」というキャッチコピーでシカやイノシシを殺すのは、他生物の生命への尊厳を忘れた恥ずべき行為なので、即刻このコピーを変えてください。<生命尊重思想>
④ハンター数が減少の一途をたどり始めた1970年以降だけのハンター数の推移グラフを見せて、ハンターが減ったからシカ・イノシシが増えたのですと世論誘導するのは、国民だまし。今や、環境省付き研究者たちの「ハンター減少説」は、完全に破たんしています。
地球温暖化等人 間が引き起こした地球環境問題が、現代のシカ問題を引き起こしているのに、まるで、シカがシカ問題を引き起こしているかのごとく、シカに全責任を負わそう とするのは、人間として恥ずかしい。即刻やめてほしい。
人間が狩猟によって野生鳥獣の数を減らし続けないと、野生鳥獣の数が増えすぎてしまうという学説な ど、どこにもない。自然界は、自らの力で、絶妙のバランスを保つ。人間が入っていない未開の地ほど、自然は豊かです。
<対症療法ではなく根治療法を。本当の原因を国民に知らせること>
⑤自然界や山が荒れ、多くの狩猟鳥獣が激減している。むしろ今、一般的な狩猟を禁止すべきである。
今、地元の人たちが困っている、シカ、イノシシ、サル、クマなどの大型動物問題に対応できる被害防除専門官などを育成すべきだ。
レジャーハンターやスポーツハンターなど増やしても、大型野生動物問題など解決しない。「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」は、単なるイベントであり、税金の無駄遣いである。若い女性をプロパガンダに使うのは恥ずかしいので、やめてほしい。
<環境省の答え>
①生息地保証は環境省の仕事ではない。
②非捕殺対応は考えたことがない。
③このキャッチコピーはすごく気に入っている。このコピーによって、「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」への参加者が増えたから、変えない。
④グラフの一部だけを提示することに問題はないと考えるが、(熊森が強硬に求めるので)、次回の福井県のフォーラムから、1970年以前のハンターが今より少なかったときのグラフも見せることにする。
⑤考えが違う。
<参考>環境省発表データをもとに熊森が作成したグラフ。
全国狩猟者登録数(黒の折れ線)とシカ捕獲数(水色)の推移
人
今、ニホンジカが一体どうなっているのか 日本人が対面している自然保護上の難題
- 2013-11-01 (金)
- くまもりNEWS
1977年の論文を読むと、ニホンジカは絶滅が心配されていました。
シカは、当時は郡部の人でも、奈良公園や宮島に行かなければ見ることの出来ない珍しい動物だったのです。
50センチ以上の積雪日が30日を超えると死亡個体が出始め、50日を超えると、死亡個体が多発するという報告もあります。雪深いところでは、シカは動くことができなくなり、生きられません。
ーーーあれから36年。
今や郡部では、シカが増えすぎた、殺しても殺してもシカが減らないと、悲鳴が上がっています。
いったい、この国のシカたちに、何が起きているのでしょうか。
そんななか、私たちがニホンジカについて得た情報を、以下にまとめてみました。
自然界には、人間にわからないこと、理解不可能なことがたくさん起きますから、断定はできませんし、どこまで正しいのかも、わかりません。
しかし、人間に翻弄されてきたシカの姿は見えます。
●シカはどうなったのか
江戸時代、シカは、林縁の平地に今よりもたくさん棲んでいたと思われます。奈良のように、神様としてシカを大切にする地域もありました。
シカ生息地域の農家は、農作物をシカやイノシシから守るため、柵を設置したり、追い払ったり、時には殺害したりしながらも、この国で共存してきました。
明治になって近代化が進む中で、西洋文化である狩猟が一般にも導入され、野生鳥獣が獲られるようになります。(我が国では、明治になるまでの1200年間、「殺生禁止令」が出続けていた)
日本人の人口爆発が起こり、農地化や宅地化がどんどん進んで、シカたちの生息地であった湿地や草原は次々とつぶされていきました。
本来、平地の草食獣であったシカは、山へ山へと追いやられていきます。(今、シカが高山にまで上がっていますが、それ自体が異常なのだそうです)
大雪の年には、シカは動けなくなって、大量に餓死しました。
昔、たくさんいた野犬<ノイヌ>に、絶えず襲われました。(昔、本州や九州にいたのはオオカミではなく、大神としての野犬であるという説による)
戦争中には、食料として人間に食べられ、絶滅寸前にまで追い込まれたところもありました。
絶滅の恐れが叫ばれるようになって、メスジカを狩猟対象としないように等と、シカ保護策がとられました。
野犬は東京オリンピックの時に徹底的に駆除したし、飼い犬の放し飼いも禁止されました。これによって、生まれたての子ジカなどを捕食していた動物がいなくなりました。
戦後の国策である拡大造林政策によって、スギ・ヒノキの苗木を植えるため、奥山原生林が猛烈なスピードで、皆伐されていきました。
伐採跡地は、一時、大草原と化しました。
草食動物のシカが山の中で増えだしました。
しかし、その後、植林苗が育って、スギ・ヒノキの木々が大きく育つようになると、林中は真っ暗になり、林床は砂漠化してきました。
シカは、生きられなくなって山から出て来始めました。
その存在を忘れるほど見かけなくなっていたシカが平成になって、突然人里に現れ出し、みるみる目撃数を増やしていきました。人に追われると、山奥まで造られた道路を通って、簡単に移動します。また、人間が造ったこれら林道の法面に吹き付けられた外来種の草々は、シカたちの格好の餌場となりました。柔らかい草を食べているうちに、気づくと人里に出ていました。
地球温暖化で雪が減り、シカの大量餓死があまり起きなくなりました。(ただし、2012年は大雪でした)
我が国が工業立国をめざしたため、農業従事者が減って、耕作放棄地が目立ち、今や、シカたちが本来の平地の生息地に戻ってくるようになった形です。
農業被害、森林被害、生活被害・・・地元の人たちが、シカ被害に悲鳴を上げ始めました。郡部では、過疎化高齢化が進んでおり、シカに対応する力がありません。
<注:以上の記述に新たな情報が入れば、当協会としては、その時点で書き換える予定です。>
行政は、保護策をやめて、とにかくシカ数を減らそうと、メスジカも積極的に獲るように、猟友会に依頼しました。現在国は、シカ1頭を獲ると、捕獲者に8千円の報奨金を出しています。市町村の上積みもあって、シカ1頭の捕獲報奨金が2万円となっているところもあります。しかし、獲っても獲ってもシカ数が減らないと言われています。
(熊森から)
環境省は、研究者を使って、シカ大量捕殺装置を開発したり、猟友会と連携してハンター養成事業に力を入れ、国をあげてシカ捕殺に躍起となっています。そこには、野生動物の命に対する尊厳など完全に吹っ飛んでいます。生きとし生けるものに対する共感など、もはやありません。研究者たちが唱える適正生息数(1平方キロメートルに3頭)になるまで、人間の力で被害が出ないようにシカ数を減らし、その後はその数を保持しようと考えているようです。
しかし、野生鳥獣の数は、自然界では著しく増減を繰り返しながら長期的に一定となるようバランスをとっていくものです。人間が、人力で生息数を思い通りに調整してやろうという発想自体に無理があるのではないかと私たちは思います。
また、今のような大量殺害一辺倒の対応で、「私たちは野生鳥獣とこの国で共存しています」と言えるのか、当協会としては疑問を感じるのです。人としての倫理上の問題もあります。
そこで、環境省の担当官と意見交換をしようと思い、10月17日、兵庫県本部から3名が上京しました。(次ブログに続く)
8月3日、宇都宮大学会場前で、熊森栃木県会員たちと環境省イベントに抗議活動
- 2013-08-24 (土)
- くまもりNEWS
「すごいアウトドア」として、一般人にハンターになろうと呼びかける、「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」に対して、会場前で抗議活動を行いました。
栃木県の会員たちも駆けつけてくれました。会場前で、
「野生動物の命を奪うことが、すごいアウトドアだなんて、わたしたちは認めない。シカ・イノシシによる被害問題は深刻だが、解決に向けて、環境省は、防除柵設置や、動物たちが帰れる森づくりに税金を使ってほしい。人間中心の現代社会だが、環境省だけは、自然や野生生物の側に立つべきだ」
と、みんなでチラシを配ったり、声を張り上げたり、総勢10名で、抗議活動を行いました。会員の皆さんは、本当に勇気を出してよくがんばってくださったと思います。
このイベントは、200席会場に275人が詰めかけるという盛況ぶりでした。さすが、市民団体と違って、環境省(=国)の力はすごいです。
狩猟学の専門家と、銃と射撃の月刊誌のライターの方が、「狩猟のイロハ」という題で、対談されました。
この後、ワークショップがあって、参加者は、銃を持たせてもらったり、罠の実演を見たり、野生鳥獣肉を食べたりしていました。
この時、このフォーラム開催とは関係のない問題なのですが、長野県など一部の県に引き続いて、山梨県が、環境省が決めたくくり罠の12センチ規制を緩和しようとしていることを思い出して、くくり罠の実演をしておられた栃木県の猟友会の方に、「シカやイノシシを獲るには、くくり罠の12センチ規制を緩和する必要がありますか」と尋ねると、「必要ないよ。12センチで十分獲れるよ」と、即答されました。
わたしたちは狩猟を全面否定しているわけではありませんが、レジャーやスポーツとして野生動物を殺すことには絶対に反対です。
人間がシカやイノシシを殺し続けない限り、かれらは増え続けるという理論が、このフォーラムの根底にあるわけですが、この理論が正しいかどうか、学問的には、誰にも証明されていません。
人間が、戦後、捕食者としてのヤマイヌを殺し尽くしたり、犬をつないで飼うように決めたことには、問題はなかったのでしょうか。
戦後、人間が、野生鳥獣の生息地であった広大な奥山に入り込んで開発したり、奥山原生林を東北六県分の面積皆伐して、いったん広大な草原にし、その後、1000万ヘクタールの山林(全国山林面積の42%)を針葉樹だけの人工林にして放置し、広大な奥山を荒廃させてしまったこと、化石燃料を燃やし続けて大気を汚染し、酸性雨や地球温暖化を招いて、今も自然生態系のバランスを狂わせている等々、人間側の反省点も多いはずです。
しかし、このフォーラムには、自然破壊や、第一次産業を軽視して、環境破壊、生態系破壊をし続けてきた人間側の反省は全くなく、「シカ、イノシシの数が増えた、みんなで殺してくれ」というだけで、人間として悲しくなりました。
しかも現在、狩猟対象となっている多くの野生鳥獣は、激減しています。環境省は、ハンターになった人たちに、カワウ・シカ・イノシシだけを獲れと指示するのでしょうか。
もっともっと大きな観点から、戦後、人間が自然界にしてきたことを総点検し、クマ・サル・シカ・イノシシ等大型野生動物問題の解決に向けて、第一次産業の重視も含め、国民的議論を呼び起こすべきだと思います。
野生鳥獣被害に困るようになったから、野生鳥獣を殺しておけという考え方は、あまりにも一方的です。
フォ―ラムに参加して、このような考え方では、野生鳥獣と共存する国など、とても望めないと思いました。
本部・石川県支部 白山トラスト地及び周辺の調査に入る 6月29日
6月29日、本部8人と石川県支部8人は、研究者と共に白山トラスト地22ヘクタール及びその周辺の山の調査に入りました。
当日は天気も良く、前回の岐阜県の奥飛騨トラスト地に続いて下層植生が生い茂り、多様性豊かな森を見ることができました。
トラスト地は、極相林に近い森です。100年たってもこの景観が保たれます。それぞれの遺伝的な木の高さをもった木が生えており、高木層、亜高木層、低木層、草本層という形できれいに光配分ができているので、一面が緑色でした。
この山にはまだシカが入っていないこともあり、兵庫県ではもうほとんど見ることができないシカの大好物ハイイヌガヤの群生があちこちに残っていました。
奥飛騨ではほとんど確認できなかった虫たちの食痕が、ここ白山では驚くほど多くの葉に見られました。
しかし、この時期は蝶々がたくさん飛んでいる時期であるにもかかわらず、ほとんど飛んでいませんでした。やはり、昆虫が豊かに生息しておれる状況ではなくなっているのかもしれません。
クマが大好きな桑の実がたくさん実っていました。夏の木の実はクワぐらいしかなく、クマにとっては貴重です。
今回、石川県支部スタッフの皆さんが、大雨の中で事前に調査をしてくださっており、みんなで今年のクマハギを見ることができました。白い部分がクマの歯跡です。
ここにはササも多く生えていましたが、奥飛騨トラスト地でも一斉開花が始まってきているので、10年後にこのササが残っているかどうかは、研究者の先生にも分からないということです。
白山連峰にはまだクマが住めそうな場所がたくさん残っていると感じ、安心しましたが、地球温暖化や、酸性雨、農薬関連の化学物質などによって、地球環境が激変していっている今、10年後にこの森がどうなっているのかという気がかりも残りました。
また、白山では、場所によっては、2005年あたりから、ミズナラなどの広葉樹の巨木の枯れがすさまじく、森が消えてしまうんだろうかと心配していましたが、今回調べてみると、更新稚樹があちこちで育ってきていました。自然界はすごいです。
4月1日 今年の春は、早い
- 2013-04-08 (月)
- くまもりNEWS
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