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今、ニホンジカが一体どうなっているのか 日本人が対面している自然保護上の難題

1977年の論文を読むと、ニホンジカは絶滅が心配されていました。

シカは、当時は郡部の人でも、奈良公園や宮島に行かなければ見ることの出来ない珍しい動物だったのです。

50センチ以上の積雪日が30日を超えると死亡個体が出始め、50日を超えると、死亡個体が多発するという報告もあります。雪深いところでは、シカは動くことができなくなり、生きられません。

ーーーあれから36年。

今や郡部では、シカが増えすぎた、殺しても殺してもシカが減らないと、悲鳴が上がっています。

いったい、この国のシカたちに、何が起きているのでしょうか。

 

 

そんななか、私たちがニホンジカについて得た情報を、以下にまとめてみました。

自然界には、人間にわからないこと、理解不可能なことがたくさん起きますから、断定はできませんし、どこまで正しいのかも、わかりません。

しかし、人間に翻弄されてきたシカの姿は見えます。

 

シカはどうなったのか 

江戸時代、シカは、林縁の平地に今よりもたくさん棲んでいたと思われます。奈良のように、神様としてシカを大切にする地域もありました。

シカ生息地域の農家は、農作物をシカやイノシシから守るため、柵を設置したり、追い払ったり、時には殺害したりしながらも、この国で共存してきました。

 

明治になって近代化が進む中で、西洋文化である狩猟が一般にも導入され、野生鳥獣が獲られるようになります。(我が国では、明治になるまでの1200年間、「殺生禁止令」が出続けていた)

日本人の人口爆発が起こり、農地化や宅地化がどんどん進んで、シカたちの生息地であった湿地や草原は次々とつぶされていきました。

本来、平地の草食獣であったシカは、山へ山へと追いやられていきます。(今、シカが高山にまで上がっていますが、それ自体が異常なのだそうです)

大雪の年には、シカは動けなくなって、大量に餓死しました。

昔、たくさんいた野犬<ノイヌ>に、絶えず襲われました。(昔、本州や九州にいたのはオオカミではなく、大神としての野犬であるという説による)

戦争中には、食料として人間に食べられ、絶滅寸前にまで追い込まれたところもありました。

 

絶滅の恐れが叫ばれるようになって、メスジカを狩猟対象としないように等と、シカ保護策がとられました。

野犬は東京オリンピックの時に徹底的に駆除したし、飼い犬の放し飼いも禁止されました。これによって、生まれたての子ジカなどを捕食していた動物がいなくなりました。

 

戦後の国策である拡大造林政策によって、スギ・ヒノキの苗木を植えるため、奥山原生林が猛烈なスピードで、皆伐されていきました。

伐採跡地は、一時、大草原と化しました。

草食動物のシカが山の中で増えだしました。

しかし、その後、植林苗が育って、スギ・ヒノキの木々が大きく育つようになると、林中は真っ暗になり、林床は砂漠化してきました。

シカは、生きられなくなって山から出て来始めました。

 

その存在を忘れるほど見かけなくなっていたシカが平成になって、突然人里に現れ出し、みるみる目撃数を増やしていきました。人に追われると、山奥まで造られた道路を通って、簡単に移動します。また、人間が造ったこれら林道の法面に吹き付けられた外来種の草々は、シカたちの格好の餌場となりました。柔らかい草を食べているうちに、気づくと人里に出ていました。

地球温暖化で雪が減り、シカの大量餓死があまり起きなくなりました。(ただし、2012年は大雪でした)

我が国が工業立国をめざしたため、農業従事者が減って、耕作放棄地が目立ち、今や、シカたちが本来の平地の生息地に戻ってくるようになった形です。

農業被害、森林被害、生活被害・・・地元の人たちが、シカ被害に悲鳴を上げ始めました。郡部では、過疎化高齢化が進んでおり、シカに対応する力がありません。

 

<注:以上の記述に新たな情報が入れば、当協会としては、その時点で書き換える予定です。>

 

行政は、保護策をやめて、とにかくシカ数を減らそうと、メスジカも積極的に獲るように、猟友会に依頼しました。現在国は、シカ1頭を獲ると、捕獲者に8千円の報奨金を出しています。市町村の上積みもあって、シカ1頭の捕獲報奨金が2万円となっているところもあります。しかし、獲っても獲ってもシカ数が減らないと言われています。

 

(熊森から)

環境省は、研究者を使って、シカ大量捕殺装置を開発したり、猟友会と連携してハンター養成事業に力を入れ、国をあげてシカ捕殺に躍起となっています。そこには、野生動物の命に対する尊厳など完全に吹っ飛んでいます。生きとし生けるものに対する共感など、もはやありません。研究者たちが唱える適正生息数(1平方キロメートルに3頭)になるまで、人間の力で被害が出ないようにシカ数を減らし、その後はその数を保持しようと考えているようです。

 

しかし、野生鳥獣の数は、自然界では著しく増減を繰り返しながら長期的に一定となるようバランスをとっていくものです。人間が、人力で生息数を思い通りに調整してやろうという発想自体に無理があるのではないかと私たちは思います。

また、今のような大量殺害一辺倒の対応で、「私たちは野生鳥獣とこの国で共存しています」と言えるのか、当協会としては疑問を感じるのです。人としての倫理上の問題もあります。

そこで、環境省の担当官と意見交換をしようと思い、10月17日、兵庫県本部から3名が上京しました。(次ブログに続く)

 

8月3日、宇都宮大学会場前で、熊森栃木県会員たちと環境省イベントに抗議活動

「すごいアウトドア」として、一般人にハンターになろうと呼びかける、「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」に対して、会場前で抗議活動を行いました。

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栃木県の会員たちも駆けつけてくれました。会場前で、

 

「野生動物の命を奪うことが、すごいアウトドアだなんて、わたしたちは認めない。シカ・イノシシによる被害問題は深刻だが、解決に向けて、環境省は、防除柵設置や、動物たちが帰れる森づくりに税金を使ってほしい。人間中心の現代社会だが、環境省だけは、自然や野生生物の側に立つべきだ」

 

と、みんなでチラシを配ったり、声を張り上げたり、総勢10名で、抗議活動を行いました。会員の皆さんは、本当に勇気を出してよくがんばってくださったと思います。

 

このイベントは、200席会場に275人が詰めかけるという盛況ぶりでした。さすが、市民団体と違って、環境省(=国)の力はすごいです。

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狩猟学の専門家と、銃と射撃の月刊誌のライターの方が、「狩猟のイロハ」という題で、対談されました。

この後、ワークショップがあって、参加者は、銃を持たせてもらったり、罠の実演を見たり、野生鳥獣肉を食べたりしていました。

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この時、このフォーラム開催とは関係のない問題なのですが、長野県など一部の県に引き続いて、山梨県が、環境省が決めたくくり罠の12センチ規制を緩和しようとしていることを思い出して、くくり罠の実演をしておられた栃木県の猟友会の方に、「シカやイノシシを獲るには、くくり罠の12センチ規制を緩和する必要がありますか」と尋ねると、「必要ないよ。12センチで十分獲れるよ」と、即答されました。

 

わたしたちは狩猟を全面否定しているわけではありませんが、レジャーやスポーツとして野生動物を殺すことには絶対に反対です。

 

人間がシカやイノシシを殺し続けない限り、かれらは増え続けるという理論が、このフォーラムの根底にあるわけですが、この理論が正しいかどうか、学問的には、誰にも証明されていません。

 

人間が、戦後、捕食者としてのヤマイヌを殺し尽くしたり、犬をつないで飼うように決めたことには、問題はなかったのでしょうか。

 

戦後、人間が、野生鳥獣の生息地であった広大な奥山に入り込んで開発したり、奥山原生林を東北六県分の面積皆伐して、いったん広大な草原にし、その後、1000万ヘクタールの山林(全国山林面積の42%)を針葉樹だけの人工林にして放置し、広大な奥山を荒廃させてしまったこと、化石燃料を燃やし続けて大気を汚染し、酸性雨や地球温暖化を招いて、今も自然生態系のバランスを狂わせている等々、人間側の反省点も多いはずです。

 

しかし、このフォーラムには、自然破壊や、第一次産業を軽視して、環境破壊、生態系破壊をし続けてきた人間側の反省は全くなく、「シカ、イノシシの数が増えた、みんなで殺してくれ」というだけで、人間として悲しくなりました。

しかも現在、狩猟対象となっている多くの野生鳥獣は、激減しています。環境省は、ハンターになった人たちに、カワウ・シカ・イノシシだけを獲れと指示するのでしょうか。

 

もっともっと大きな観点から、戦後、人間が自然界にしてきたことを総点検し、クマ・サル・シカ・イノシシ等大型野生動物問題の解決に向けて、第一次産業の重視も含め、国民的議論を呼び起こすべきだと思います。

野生鳥獣被害に困るようになったから、野生鳥獣を殺しておけという考え方は、あまりにも一方的です。

フォ―ラムに参加して、このような考え方では、野生鳥獣と共存する国など、とても望めないと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本部・石川県支部 白山トラスト地及び周辺の調査に入る 6月29日

6月29日、本部8人と石川県支部8人は、研究者と共に白山トラスト地22ヘクタール及びその周辺の山の調査に入りました。

当日は天気も良く、前回の岐阜県の奥飛騨トラスト地に続いて下層植生が生い茂り、多様性豊かな森を見ることができました。

s-ギャップ

トラスト地は、極相林に近い森です。100年たってもこの景観が保たれます。それぞれの遺伝的な木の高さをもった木が生えており、高木層、亜高木層、低木層、草本層という形できれいに光配分ができているので、一面が緑色でした。

s-ハイイヌガヤ

この山にはまだシカが入っていないこともあり、兵庫県ではもうほとんど見ることができないシカの大好物ハイイヌガヤの群生があちこちに残っていました。 s-虫の食痕

奥飛騨ではほとんど確認できなかった虫たちの食痕が、ここ白山では驚くほど多くの葉に見られました。

しかし、この時期は蝶々がたくさん飛んでいる時期であるにもかかわらず、ほとんど飛んでいませんでした。やはり、昆虫が豊かに生息しておれる状況ではなくなっているのかもしれません。

s-桑の実

 

クマが大好きな桑の実がたくさん実っていました。夏の木の実はクワぐらいしかなく、クマにとっては貴重です。

s-今年のクマハギ

今回、石川県支部スタッフの皆さんが、大雨の中で事前に調査をしてくださっており、みんなで今年のクマハギを見ることができました。白い部分がクマの歯跡です。

s-チシマザサ(グレード8)

ここにはササも多く生えていましたが、奥飛騨トラスト地でも一斉開花が始まってきているので、10年後にこのササが残っているかどうかは、研究者の先生にも分からないということです。

s-HPの画像

白山連峰にはまだクマが住めそうな場所がたくさん残っていると感じ、安心しましたが、地球温暖化や、酸性雨、農薬関連の化学物質などによって、地球環境が激変していっている今、10年後にこの森がどうなっているのかという気がかりも残りました。

 

また、白山では、場所によっては、2005年あたりから、ミズナラなどの広葉樹の巨木の枯れがすさまじく、森が消えてしまうんだろうかと心配していましたが、今回調べてみると、更新稚樹があちこちで育ってきていました。自然界はすごいです。

 

4月1日 今年の春は、早い

兵庫県西宮市では、今年4月1日、早や、桜が満開でした。あまりにもきれいなので、本部スタッフ一同、急遽、近くの公園に出かけて、桜を見ながら昼食をとりました。今年の桜は、4月9日の小中学校の入学式までも、持ちそうにありません。

s-画像-0004

兵庫県北部の豊岡市では、今年、3月9日に最高気温が25度を超える真夏日を記録しました。やはり地球温暖化なのだろうかと一瞬思いましたが、よく考えてみると、去年は寒い春でした。

よく行く山には、4月になっても70センチの雪が積もっていたことを思い出しました。

 

 

熊森が兵庫県築谷尚嗣環境部長と30分間面談

熊森は兵庫県庁を訪れ、築谷環境部長さんにお忙しい中、申し訳なかったのですが、30分間、話を聞いて頂きました。課長さん達も、同席してくださいました。

(結果)

兵庫県のクマは激増ではなく、2010年の大量捕殺によって激減しているのではないかという私たちの話は、森林動物研究センターの研究員から聞いている話と全く違うということで、一蹴されました。ただ一つ、野生動物育成林事業が、名目通り野生動物の餌場づくりになっておらず、県民への詐欺であると言う申し出に対しては、平成24年度からはきちんとやると約束してくださいました。

 

兵庫県にたくさんいると言われているクマたちが、どこにいるのか教えて貰おうと思って行ったのですが、やはりこれは、森林動物研究センターの研究員に聞かなければだめだと言うことが判りました。

 

熊森は、次、研究員に会いに行かせてもらって、いろいろ教わろうと思います。

 

30分はあっという間で、いろいろ聞きたいことも聞けずに帰ってしまいましたが、お忙しい中、お時間を取ってくださったみなさんには、お礼申し上げます。ほんとうにありがとうございました。

 

<以下は、兵庫県農林水産部築谷尚嗣部長に提出した要望書です>

 

 

要望書

日本熊森協会

●野生動物の命を大切にする兵庫県に 

今の兵庫県は、有害駆除や個体数調整、シカ肉有効利用など殺処分ばかり 推進しているようにみえる。これまで種の大量絶滅をもたらしてきた西洋文明手法を、日本の野生動物対応に取り入れないでほしい。野生鳥獣に生息地を保障し・生息地を再生し、防除を推進し、棲み分けによる共存を復活させるべきだ。動物たちに耐えがたい負担を与えている学術研究捕獲を止めること。

 

1、森林動物研究センターは兵庫のクマが激増というが、ドーナツ化現象を加味しているか。

・京都府のクマ捕獲数推移資料・・・クマが絶滅しかけているように見える。隣接県でこのような真逆の相違はあり得るのか。

・熊森の痕跡調査では、クマが激増しているとは思えない。集落周辺の痕跡は新しいが、本来の生息地には、古い痕跡が目立つ→本来の生息地に、なぜかクマが棲めなくなっている。

・2011年度のクマ推定生息数の訂正幅が大き過ぎる。科学的推定というのは、こんなにあいまいなものなのか。

・野生動物保護管理審議会に熊森を入れてほしい。

2、クマたち野生動物に安心して住める場を保障してやってほしい。

・人間が奥山に入り過ぎている。氷ノ山の入山制限を。

 

3、エサ場復元を本気でやってほしい。

①クマ生息地の人工林率が高過ぎる。奥山は強度間伐により広葉樹林に戻すべき

人工林率…宍粟市73%、養父市61%、朝来市66%、豊岡市43%、

香美町43%、新温泉町45%

ナラ枯れ対策  ミズナラやコナラが大量消失している。

③落葉広葉樹林における下層植生喪失対策  シカや温暖化により下草大量消滅

野生動物育成林事業の欺瞞性  1か所2千万円~4千万円。1か所につき、700万円が調査会社に渡っている。

実のなる木の植林が微小すぎる。<事業検証委員会に熊森を入れてほしい。>

 

4、読売新聞11月1日論壇主張のように動物管理官に予算を投入(=頭数調整=捕殺)するより、生き物たちの命を大切にする生息地復元や防除にお金を使ってほしい。

・ワイルドライフのマネジメントなど、人間には不可能。できると思っている人は、自然がわかっていないのではないか。

・第一、クマが何頭いるか絶対にわからない。

・適正頭数が何頭か、これも人間には絶対にわからない。

 

5、森林動物研究センターが知り得た情報を、保護団体に公開すべきである。

・当協会は、GPSからわかるクマ生息場所、捕殺されたクマの理由・詳細データなど欲しい。

・岡山、京都、滋賀は徹底したクマ保護体制をとっており、今年のクマ捕殺数はそれぞれ0頭、2頭、1頭なのに、兵庫のクマ捕殺数15頭、誤捕獲23頭(放獣)2012年10月末現在で、何故原則殺処分なのか。

 

6、外来動物の根絶殺害が無用の殺生になっている。防除に予算を回すべきだ。

2004年、ドングリ運びを指導して下さった研究者の家を訪問  <植物編>

2004年、ドングリ運びを指導して下さった研究者のおひとりの家を久しぶりに訪れました。

<熊森はなぜ、ブナやミズナラなどのドングリは運ばなかったのか>

先生は、全国各地のブナを栽培

階段の所に、全国各地のブナが栽培されており、先生はその違いを熟知されています。「これはどこどこのブナ。ここが違うでしょう・・・」花、芽吹き時期、実・・・等いろいろ違うのですが、黄色に色づいたブナの葉だけでも、よく見ると違いが少しずつあるといわれます。説明を聞いていると、だんだん疲れてきました。そんなわずかな違いを教わっても、わたしたちには覚えられません。要するに、ブナは地域によってDNAが違うのです。

 

ブナは、年平均気温が6度~12.5度の範囲で生育可能です。

 

 

 

 

 

先生は各地のミズナラを栽培

 ミズナラはブナと違って、生育するための年平均気温の幅が大きく、ブナが育たないような暖かさや寒冷地であっても生育できます。垂直分布で見て行くと、ミズナラ、ブナ、ミズナラとなっていくそうです。このブナの上に位置する寒冷地型ミズナラは、秋になると何と葉が茶色ではなく赤に色づくのです。(写真)

このため、ブナより下で育つミズナラか、上で育つミズナラかは簡単に見分けられます。

 

 

 

 

 

<熊森はなぜ、クヌギやマテバシイなどのドングリを運んだのか>

 

先生は全国のドングリ類をすべて栽培し研究

熊森スタッフは、さすがに21種のドングリの名前ぐらいは覚えていますが、よく似たのもあり、ドングリの実だけ見せられても、葉や樹皮がないと、未だに判断に迷うドングリもあります。もちろん先生は、即判定されます。こんなことが出来る人は、他におられるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 これは、育てておられる17年目のミズナラに、今年付いた約3000個のドングリです。先生はこうやって、実にいろいろなデータをとっておられます。

 

2004年に熊森が、「クマたちの捕殺を止めるため、どこよりも自然生態系を守りたい団体として、どうやってドングリを運べばいいですか」と、ドングリ運びの相談を持ちかけた時、ドングリ種の分布図や、全てのドングリの発芽温度と生育温度の一覧表などを先生は見せてくださいました。運んでも生態系が攪乱される心配がないドングリ種と、どんなところに運べば大丈夫かなど、こまごまと先生が指導して下さり、一緒に運んでくださったことを思い出しました。

 

あの時の、全てのドングリの発芽温度と生育温度の一覧表はどこで入手されたのか、思いだすと懐かしくなり、たずねてみました。なんと、全て、先生の気の遠くなるような実験データだったとわかりました。先生は、膨大なデータを持ちながら、どこにも発表されません。発表することに等、関心はないのです。自分が知りたいから調べておられるのであって、人に認められたいから調べておられるのではありません。

こんな研究者は、他におられるでしょうか。ドングリの話だけでも、無限に続きます。これまで私たちはドングリについても、実にいろいろ教わり自分達でも学んできました。

 

その後、地球温暖化が進んだためか、特別暖かい冬があり、熊森がここでは発芽しないと思って運んだドングリ種が一部発芽したことがありました。生育はしませんでしたが。そのたびに先生に相談しに行きました。自然界のことは元々人間にははかりしえない部分がほとんどです。しかも今、急速に自然界が人間活動により変化しており、予測できないことが次々と起こっています。

 

今や人間は、奥山の生態系まで、スギだけにしたり、果樹だけにしたり、韓国産のドングリ苗を植えたり、生態系の攪乱どころか、生態系を確実に完全破壊していっています。やりたい放題です。林道の横の崖に吹き付けた草は外来種のオンパレード。融雪剤などの化学物質もどんどん山に持ち込みます。せめて、奥山の生態系だけは手つかずにしておいていただきたいのですが、人々は無批判です。

 

 

 

 

 

京都府のクマたちは生きていけなくなっているのではないか

(1) クマ捕獲数の推移グラフ    (昭和43年~平成22年度)

以下は、京都府におけるクマ捕獲数の推移グラフです。白が狩猟による捕殺数で、黒が有害駆除による捕殺数を表しています。尚、このグラフには記載されていませんが、平成23年度の有害捕殺数は4頭で、平成24年度の有害捕殺数は2頭です。

現在、京都府では、クマの狩猟は禁止されています。

(グラフをクリック頂くと拡大されます)

 

 

 

 

 

 

 

ふつうこのようなグラフは、平成以降だけが提示されますが、昭和43年からが提示されていることによって初めて見えてくるものがあります。クマの捕殺合計数が激減していっているのがわかります。

最後の平成22年度は、夏の食料である昆虫も、秋の山の実りもないという異常年で、食料を求めて人里に出て来た54頭のクマが、有害捕殺されています。

この異常年を除いてみると、クマがますます激減しているようすがうかがえます。しかし、グラフの解釈はいろいろにできますから、これだけでは断言できません。

実際の京都のクマの生息地を訪れてみました。

 

(2)芦生原生林五波峠 (2012、11、7)

少し前まで人間の背丈を越えるササで覆われていた林床ですが、温暖化で枯れたり、シカによってきれいに食べ尽くされたりして、原生林が、まるで都会の公園状態になっていました。臆病なクマは、姿を隠せなくなったこのような所には棲めません。

広大な山が公園状態 → ここではもう臆病なクマは棲めない。

 

 

 

 

ナラ枯れで枯れたミズナラの巨木が、撮影地点の周りを見回しただけで約30本倒れていました。1本の木で、1万個ほどのドングリが実っていたと予測されますから、クマたちは冬ごもり前の食い込み用食料を、もはや原生林で以前のようにはとれなくなってしまっています。

下に生えている緑色の植物は、エゾユズリハやヒメユズリハで、毒性があるため、シカが食べません。

→ ここではもうクマが棲めない。

 

 

 

 

 ほとんどのスギの木に、クマハギの跡がありましたが、最近のものはゼロでした。

→ ここには、もうクマがいない。

 

 

 

 

 

 

ここの原生林には、クマの痕跡はゼロであるばかりか、他の動物たちの痕跡もほとんどありませんでした。2012年度はここでは、シバグリ、ミズナラ、コナラのドングリは、並の下ぐらいの出来で、1平方メートルに30個ぐらい落ちていました。そこそこ落ちているという感じでしたが、食べに来ている動物がほとんどいませんでした。テンの糞がたった2ヶ所、シカの糞が少し。シカも、ここで食料を食べ尽くしたので、里の方へ移動しているのではないでしょうか。トガリネズミの掘った穴2ヶ所。あとは何もない山でした。アカネズミ、ヒメネズミ、ヤチネズミの巣穴見つからず。

クマノミズキを食べたテンの糞。

(クマがクマノミズキを食べると、種子まで噛み砕く 。)

 

 

 

 

 

 

 

<考察> 人工林、ナラ枯れ、昆虫謎の消滅(温暖化?)、シカの食害・・・本来の安心して身を隠せた奥山生息地と食料を失ったクマたちに今必要なのは、

研究者や業者が主張しているような、クマの出没予防専門官の育成でも、「野生動物管理システム」という名の捕殺を含めたクマいじくりまわしでもなく、「昆虫がいて下草の生えた森を取り戻す森復元・再生事業」であると、熊森は思います。

 

さらに大事なことは、人間が1歩も2歩も下がって、彼らの生息地に入らないようにすることです。平地をすべて取った人間は、奥山だけでも、動物たちに返しましょう。これが、21世紀に人類が生き残る唯一の道です。

 

京都府行政は、今年、クマの目撃が多かったにもかかわらず、捕殺を2頭と、最少に押さえておられます。自然保護団体として、熊森は、京都府のクマ対応を高く評価します。

 

7/23、24 東北で進む山林への農地開発とすさまじいナラ枯れ、安易なクマ駆除の実態を視察して唖然②

すさまじいナラ枯れ

兵庫県でもナラ枯れは脅威であるが、兵庫県の山はここまでは枯れていない。

東北の山々のナラ枯れはすさまじく、山がもうスカスカだった。ブナもナラも実がまず付いていなかった。なぜ、こんなことになるのか、諸原因説あるが、わたしたち人間にはどれが本当なのかわからない。地球温暖化、酸性雨、農薬…?いずれにせよ、人間がやったことで、野生鳥獣の豊かだった生息地が壊されていっているのであろうと察せられる。

世界中から食料を集め、食べ残している今の飽食の日本人には、動物たちが食料を失い苦しんでいることを、もはや思いやることすらできないのであろうか。地元では、山から出て来た動物対策として、捕殺しか考えていないようにみえた。

 

枯れ残ったミズナラにも、今年、実がついていない。

 

野生鳥獣が山から出て来てもらっては困るのなら、人間が山の中に、野生鳥獣の餌場づくりをしてやらなければならない時代になっているのではないかと感じた。

 

ちなみにスギなど針葉樹だけの人工林率は、福島37%、山形29%、

宮城50%、岩手44%、青森42%、秋田50%である。

この中には基本的に、動物たちの餌はない。

 

7/23、24 東北で進む山林への農地開発とすさまじいナラ枯れ、安易なクマ駆除の実態を視察して唖然①

(今回の東北調査のいきさつ)

環境省発表によると、今年、東北でのクマの目撃数が、昨年の3倍に増加しているという。山に食料がないのだ。山から出て来たクマたちは、罠にかけられ安易に捕殺され続けている。

このことに胸を痛めた数名のクマ愛好家(非会員)らが、現地に駆け付け、捕殺ではなく、捕獲して奥地に放獣してやってもらいたいと、地元農家らと交渉を開始し、保護活動を展開し出した。

その過程で、熊森も出て来てほしいと強い要請があり、本部が現地に急行し、彼らの案内で、東北の山々や、クマ捕獲の実態を見て回った。その結果、唖然とする実態があった。

 

(1)規制なく進んでいく、東北での山林への農地開発 

その1果樹園

地球温暖化がこのまま進むと、近い将来、東北の平地ではりんごなどが実らなくなるだろうなどと言われているそうだ。果樹農家は、今、競って果樹園をより涼しい所、山の上に移動させ始めたという情報を、これまで地元会員から得ていたが、行ってみてびっくり。

あちこちの山が白く光っている。

車窓から

見渡す限りのブドウのビニールハウスだった

 

最近、これまで見かけることもなかったクマやサルたちが、山から出て来るようになったと地元の声。野生動物たちの生息地を人間が次々とつぶして果樹園にしていっているのだ。野生動物たちが生きられなくなって出て来るのは当然だ。

 

(2)規制なく進んでいく、東北での山林への農地開発 その2畑

クマの生息地と思われる山の中に入っていくと、突然ブルトーザーで平地にされた空間が現れる。ここは最近まで、クマたちの国であったはずだ。米どころ東北の平地は、水田で埋まっていた。畑は山の中に移動させるのだろうか。

 

(3)人間のためにも、山林開発に規制を

県行政に、山林の開発規制をたずねたところ、伐採申請をすればだれでも開発できるという。地元の行政の方は、人間が生きるためだから仕方がないと言われるが、山の斜面を単一植生で覆うと、大雨の時、崩れてくる。山まで果樹園や畑にされて、まず困るのは 餌場や生息地を失った野生動物たちだが、いずれ、人間にも必ずしっぺ返しが来る。

 

昨年の紀伊半島集中豪雨での山崩れ、今年の九州での大雨による山崩れ。山を単一植生で埋めるとどうなるか。教訓 にしてほしい。

 

しかも、国土をすべて人間が取ってしまうのは、まちがいである。もうこれ以上生息地を野生鳥獣から奪ってはならない。人間が生き残るためにも、人間が優しい人間社会を作るためにも。県知事さんに、手紙を書こうと思う。

 

このあたりの山々から、近年、動物たちが出て来始めた理由が、現地に行ってみてはっきりわかった。

兵庫県が「第3期ツキノワグマ保護管理計画案」に対するパブリックコメントを募集中!1月31日締切

兵庫県は、これまでのツキノワグマ保護体制を180度転換し、大量捕殺を可能にする「第3期ツキノワグマ保護管理計画案」(平成24~28年度適用)を作成しました。

◆計画の内容は、
――――――――――――――――――――――――――

1、兵庫県内のクマが7年間で6.5倍に増加した(年間増加率30%)等と、目撃数と捕獲数の増加 を2大因子とする(注)偏った推定計算に基づき、(注:兵庫県は、クマ生息地住民に集落周辺でのクマ目撃を報告するようにと最近再三呼び掛けており、報告に基づいてハチミツ入り捕獲罠を多数設置するようになってきています。このような状況下では、近年、集落周辺に棲むことを余儀なくされているクマたちにとって、目撃数と捕獲数が増えるのは当然で、その数から生息数を推定すると、クマ数が激増したことになってしまう)
2、クマが中間値650頭にまで増加していると推定して、今後は捕獲したクマを原則殺処分し、
3、生息推定数が800頭を超えた時点で狩猟禁止を解除する。
―――――――――――――――――――――――――――
という、恐ろしい内容になっています。

戦後の①拡大造林による奥山生息地の広大な喪失や、近年著しく進む残された②自然林の原因不明の劣化(酸性雨?温暖化?)によるクマたちの食料不足(自然林内の虫、魚などの大量消滅、木々の実りの不調)などの環境悪化については一言もふれておらず、クマが山から出てくるようになったのは、ただ単にクマが大量増加したからだとしています。生きられなくなって奥山から出て来て、集落近くに集結しているクマたちのドーナツ化現象を理解されていないようです。
ツキノワグマの捕殺を推進し絶滅させかねない、兵庫県の計画案の見直しを求めるため、心あるみなさんにパブリックコメントに応募していただきたいです。兵庫県民以外でも、どなたでも応募できます。

◆熊森の見解

この計画案は、クマの人里出没の原因である奥山生息地の喪失や荒廃などによる食料不足について全くふれていないばかりか、「兵庫の山は食料が豊か」と事実誤認している。さらに、科学的根拠を欠く推定生息数に基づき、ツキノワグマが異常増加したとして、捕殺を推進するものとなっており、とうてい認めることはできません。

このような、ツキノワグマの絶滅に拍車をかける計画案を根本的に見直すことを求めます。

【パブリックコメントについて】
Q1「兵庫県第3期ツキノワグマ保護管理計画案」は、どこで見られますか?
A 兵庫県庁のホームページで見られます。

Q2 意見はどうやって、どこに提出すればいいのですか?
A 記載様式は自由です。郵送、メール、FAXでご送付下さい。
【送付先】〒650-8567 神戸市中央区下山手通5-10-1
兵庫県農政環境部環境創造局自然環境課野生鳥獣係
Fax:078-362-3069
e-mail:shizenkankyo@pref.hyogo.lg.jp

Q3 保護管理計画案を読んでみましたが、むずかしくて分かりにくいのですが?
A 分かりにくく書かれていますが、思ったことを素直に書いていただいたらそれで大丈夫です。一行でも声を届けることが大切です。
【住所】 【氏名】 【電話番号】が必要です。

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