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三重県伊賀市長、現在の混乱は、三重県が原因 いなべ市での誤捕獲放獣グマの殺処分に強く反対

以下、6月6日クマニュースより

 

三重県がいなべ市で捕獲したツキノワグマを滋賀県多賀町の山中に放した問題で、三重県伊賀市の岡本栄市長は5日、クマを殺処分するという県の方針に電話で抗議したことを明らかにした。
ツキノワグマは、県のレッドデータブックで絶滅危惧1B類に指定。岡本市長は「減少しており、種の保存の観点から安易に殺処分してはならない」と持論を語った。

 

取材に対して岡本市長は、現地の住民生活に影響が出ていることに触れ、「一刻も早く生きた状態で捕獲し、適切な場所に放つか、保護するべきだ」との考えを示した。

 

さらに、現在の混乱を、「捕獲した県が、通告なく放したのが原因」と批判。「殺処分するという決定は、すべてをクマに覆いかぶせることになる。同じ行政に携わる者として不適切だと思う」と述べた。

滋賀県庁は、今回の三重県の誤捕獲放獣グマの殺処分に強く反対

三重県の猟友会を名乗る方から、熊森本部に、

①誤捕獲放獣グマを殺処分することになったのは、滋賀県に頼まれたからである。

②三重は殺さない方向も考えているのに、くまもりが三重が殺処分を決めたと言っているのは心外である。

③殺処分するなと言う前に、まずは、発信機を外してほしいとかそういう意見を言うべきではないか。

④三重の人間でもないのに口出しするな。

という、抗議がありました。

 

確認が大切です。

①さっそく滋賀県庁に問い合わせてみました。

くまもり「殺処分してほしいと滋賀県が頼まれたのですか」

滋賀県「そんなことを頼んだことは1回もないし、殺処分してほしいなど思ったこともない。加害個体と別の個体である可能性が大きいので、むしろ殺処分などすべきでないと考えている」

 

②次に、三重県庁に問い合わせてみました。

くまもり「どういう県や市の人達が集まって殺処分を決めたのですか」

三重県「言えません」

くまもり「会議ではどんな意見が出ましたか」

三重県「いろいろな意見が出ました」

くまもり「最終的に殺処分という結論を出されたのは、捕殺許可権限のある三重県ですか」

三重県「そうです。わたしです。」

 

③大いに同感です。熊森は三重県庁に、「誤捕獲グマに発信機を装着したのは失敗で、外してやるべきである」と、すでに申し入れています。

 

④本部より先に、三重県の支部長が三重県庁に、殺処分をしないようにと強硬に申し入れています。熊森は全国組織なので、本部が出ていく事には問題はありません。

熊森本部5名三重県庁へ出向く 放獣グマが無実とわかっても射殺するという三重県に反論

4日、熊森本部5名は、午前中の大事な予定を急遽キャンセルして、三重県農林水産部長に放獣グマを射殺しないように申し入れに行きました。熊森としては、命にかかわる問題を最優先させたわけです。

 

部長は会議中とのことで、獣害対策課の課長がひとり出てこられて対応されました。報道陣がたくさん来てくださって、本当にありがたかったです。

 

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三重県農林水産部獣害 対策課課長に捕殺中止を要請中の熊森本部 (於:三重県庁6階)

 

5月17日の三重県のクマ放獣が、全国に知れ渡るこんな大問題に発展し、ご心労はいかばかりかと思いましたが、意外と課長はお元気そうに見えました。

 

私たちが、5月27日に滋賀県で人身事故を起こしたクマと三重県が放獣したクマは別グマであるという根拠を伝えると、課長も、別グマではないかと思っていると言われました。

放獣したクマの血を採集しているということなので、なぜ、人身事故現場で採集した4種の毛と照合してDNA鑑定を急がないのかたずねると、採集した4種の毛は、そのあたりから拾い集めたもので、けがをされたおばあさんの体についていたわけでもなく、クマの毛かどうかもわからないというあいまいな話でした。

 

三重県は、放獣したクマと人身事故を起こしたクマが別グマであったとしても、放獣グマを捕殺する予定であると言われました。理由は、地元の人々が山にクマがいることを不安がっているので、不安を取り除くためであるということでした。

 

地元の人達の不安は、放獣グマが滋賀県で人身事故を起こしたクマであるかのような発表をした三重県側にこそ責任があるわけで、三重県が責任を持って報道内容を訂正すればよい話であると申し入れると、課長は煮え切らない態度でした。

 

熊森は、人里に出てきてひどい目に合い、山奥に戻ってひっそりと潜んでいるクマを撃ち殺すことは、倫理上、教育上、自然保護上、あらゆる面から間違っていると見解を述べました。

 

熊森は、誤捕獲グマ対応として、以下の4点を申し入れました。

 

①今後、イノシシ罠は、富山県のように、クマがかからないクマスルー檻にする。

 

②クマに負担をかけるので、放獣時発信機を装着したりお仕置きをしたりしないこと。どうしても発信機を付けなければならないときは、遠隔操作で短期間に外せるタイプのものにする。

(今回、三重県は一生外れない旧式の首輪発信器を付けたので、クマのストレスは大変なものになっている。何とか早く、外してやってほしい。)

参考:昨年度兵庫県の誤捕獲グマ87頭・・・放獣に際して一切発信機を装着していないし、お仕置きも全くしていない。

 

③県境付近で生息するクマについては、今後は各県で連携して広域行政で取り組む。

 

④このクマは人間を恐れており、慣れ親しんだ奥地の生活場所に戻ろうとしている。人間は、このクマが本来の生息地に戻ったことを確認したら、そっとして、もう追跡しないこと。

 

 

課長は、6月5日の午後の会議で、捕殺を進めるか中止するか、みんな(三重県、岐阜県、いなべ市、海津市、養老町、大垣市などの行政と猟友会)で決めることになっているとして、話を終わらせようとされました。

熊森としては、クマが現在三重県いなべ市の山奥にいるため、捕殺の許可権限は、三重県にあるはずだと、しっかりと三重県の責任を指摘しておきました。

 

三重県で錯誤捕獲され、放獣されたクマの補殺中止を文書で要請

本年5月17日に、三重県いなべ市で、イノシシ用捕獲檻に誤捕獲されたオスのツキノワグマ(140cm、80~100kg、成獣)が発信器をつけて放獣されました。その後、5月27日に、滋賀県多賀町でクマによる人身事故が発生し、三重県は、放獣されたクマが起こした可能性が高いとして、放獣されたクマの追跡し、殺処分する予定です。

 

しかし、三重県が放獣したクマが人身事故を起こしているなら、5月27日午前4時~5月28日14時の34時間に、23kmも移動していることになり、クマの通常の移動距離と著しくかけ離れており、別のクマであると考えられます。当協会顧問の北海道野生動物研究所所長、門崎允昭博士は別のクマだと断言しておられます。

 

誤って捕獲されたクマは、鳥獣保護法上、放獣されなければなりません。今回、放獣されたクマが人身事故を起こしたクマでないなら、再捕獲したり射殺する理由は全くありません。紀伊半島のツキノワグマは、環境省により絶滅の恐れのある地域個体群に指定され、三重県でも希少野生動植物種として保護の対象になっています。クマは、放獣後、人目に付かない山の中を移動しており、何の被害を出していません。このようなクマを補殺することは、あまりにも残酷で人間勝手であり、倫理的にも、希少種保護の観点からも大問題です。

 

6月3日、熊森は、三重県知事、滋賀県知事、岐阜県知事に対し、クマの追跡や補殺を一旦中止し、人身事故を起こしたクマかどうか確定してから方針を決めるよう文書で要請しました。

 

5月10日 「とよ」のクマ舎にヨシズはり

最近は、真夏のように暑い日があります。季節的には少し早いような気もしますが、この日、「とよ」のクマ舎にヨシズを張ってやりました。

クマさんを見ようと次々と家族連れなどが山の上まで登ってこられます。みなさんクマに大変好意的で、よくぞこのクマを殺処分から救ってやってくださったとお礼を言われ、喜んでくださいます。

大阪府民にとって、クマの生存が身近に感じられる場所になってきたことがわかりました。

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 訪問された方々に、クマの生態などについて説明する森山会長(白トレーナー)

 

食料庫をのぞくと、私たちがふだん買えないような高価な果物がずらりと並んでいます。「とよ」に食べさせてやってほしいと、匿名で府民がお寺に送ってこられるのだそうです。ありがたいことです。

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食料庫の一部

クマに何を食べさせてやっているのですかと、よく聞かれます。

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今のところ、動物園などで使っている乾燥クマフードに果物や野菜をそえて与えています。クヌギのドングリは食べますが、マテバシイのドングリは食べません。

何を与えるのがいいか、現在試行錯誤中です。

餌を入れる引き出しは、大阪市にあるステンレス鋼材を取り扱っている豫洲短 板産業株式会社が4つも作って寄付してくださいました。ステンレス製のどっしりとした素敵な容器です。大切に使わせていただきます。

 

さて、肝心のとよは、どうしているでしょうか。

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 なにかにとりつかれたように常動行動を繰り返しているとよ

 

相変わらず、東の端を、行ったり来たり、常動行動を繰り返しています。次々と人が訪れて、神経が休まらないのでしょうか。3日前にプールまでの道のりに敷いてやった芝生が 土だけになっており、芝生はもう見る影もありません。

プールは大好きです。飛び込んで気持ちよさそうにしていたり、プールの水を飲んだりしています。

しばらく一般公開を取りやめた方がいいのではないかという考えが、また浮かんできました。

クマ舎には自動撮影カメラをかけていますが、人が来ていないときは、ゆっくりと獣舎の地面に座って、寝室の餌箱から持ち出した果物などを食べています。

 

この日持たれた、お寺と熊森の「とよ飼育会議」で、いつもとよを見て下さっているお寺の方のお話から、この1か月間、とよなりにいろいろと学習していることがわかりました。最初の頃は、早朝であっても、登山客が訪れると、寝室から飛び出して行って威嚇していたようですが、最近は、人が来ても朝のうちは知らん顔で、遅い時は昼前まで寝室で寝ているそうです。人が来てもいちいち飛び出していかなくても大丈夫ということがわかってきたのだろうと思います。

獣舎に近づいてきた人に走って行って、フッという音を出して威嚇することも、ずいぶん減ってきたそうです。もう少し様子をみてみることにしました。

とよは、お寺のみなさんに大変大事にしてもらい、愛情をこめてかわいがってもらっていることが、この日の会議でも再確認できました。とよ、よかったね。

 

寝室に入っている時のとよは、とても落ち着いてリラックスしています。ここは自分の家で安全な所だと思うようです。寝室のわずかな隙間から覗いてみると、左足で右足裏をかゆそうにかいていました。足裏の傷が、治りかけてきたのかもしれません。目と目があいましたが、とよはゆったりとしたままでした。

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この日は、プールの水を全部抜いてプールをきれいに洗い、新しい水を入れてやりました。

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とよ、元気でね。また来るね。

 

 

 

 

 

植物の命はどこにあるのだろう・・・クヌギ傍芽のふしぎ

19年前に、我が家の庭に一粒の大きなクヌギのドングリを埋めました。

それが今では大木になってたくさんの実をつけてくれます。

しかし、都会の狭い庭にこんな大きな木は無理だと思うようになりました。

残念ですが、今年の3月末に伐採してもらいました。枝は1本も残っていません。

ところが、4月末に樹皮に何か丸い粒が出てきたのを発見しました。

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下は、伐採から50日目、5月9日の伐採クヌギの写真です。

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完全に伐られた木から、新芽がたくさん出てきています。傍芽(ぼうが)です。

クヌギは死んでいなかったのです。

植物の命はどこにあるのだろう。本当に不思議です。

今年、実はなるのでしょうか。みなさんはどう思われますか。

観察を続けていきます。

5月8日 本部・山梨県支部・神奈川県支部 リニア山梨実験線による水涸れ視察

5月8日、南アルプスの森と動物を守るための本部視察班は、朝6時に長野県の宿を出発して、山梨県に向かいました。この日の視察には、山梨県支部長と会員、神奈川県支部長も、現地で参加してくださいます。

山梨リニア実験線トンネル工事で起きた山梨の山の水涸れ状況をみて、JR東海と国に、南アルプスのトンネル工事を避けてもらうように申し出るのが狙いです。

 

午前9時前に、富士山の見えるところまで来ました。車中で歓声が上がります。本当にきれいです。毎日この山を眺めて暮らしておられる山梨県民のみなさんは幸せだなと思いました。

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この日は、地元の方々に案内していただいて、リニアトンネル工事によって水脈が切られ水が涸れた川を、何か所も見せていただきました。一部、ご紹介します。

どこを掘ればどこの川が干上がるか、地下水脈は大変複雑で、専門家でも予測不可能なのだそうです。掘ってみなければどうなるかわからないということでした。涸れた川は、どこも悲惨でした。

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 山の中

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 果樹畑

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山梨 リニア実験線

川が涸れた川がある反面、とんでもないところから水が噴き出しています。

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その水は、3面張りの深い側溝を通して、下流に流されていました。下流に流したからいいというものではありません。

 

大地は私たちの体と同じように生きています。母なる大地の体をずたずたに切り裂いて、コンクリートで固めていく。

昔の人達は、きっとそんなことをしたら、罰が当たるぞと言ったと思います。罰は当たらないのでしょうか。

 

今回、山梨日日新聞に今年折り込まれたリニア推進広告のひとつを見せていただき、びっくりしました。全紙4枚がくっついたリニア広告は、新聞ページ8枚分もあり巨大です。リニア工事を推進する側の物量作戦は破格の大きさです。どこからこんな金が出るのでしょうか。

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今回、県を上げてリニア工事推進をうたっている山梨県において、票が減るだけになるかもしれないのに、リニアが引き起こすであろうさまざまな問題について取り組んでおられる市議会議員さんたちが一部おられることがわかり、感動しました。

 

「夢の超特急、死ぬまでに1回は乗ってみたいな」だけでなく、冷静になって、リニアがもたらす取り返しのつかない負の部分も、しっかり検討していく国民でありたいと思います。水涸れ現場を案内下さった地元の皆さん、お忙しい中ご親切にしていただき、本当にありがとうございました。

 

5月7日本部 ついに あこがれの南アルプス視察 

南アルプスの森と動物を守るための熊森本部視察班6名は、5月7日早朝、兵庫県を車で出発し、リニア新幹線のトンネル貫通工事が予定されている南アルプス山脈(赤石山脈)に向かいました。

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11時過ぎ、ついに、南アルプス山脈が見えるところまで来ました。これが椋鳩十の「ツキノワグマ」の舞台となった赤石山脈か。

 

トンネル掘削工事が予定されている村へ向かいます。

小さくて美しい村でした。

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このあたりは中央構造線上にあるため、あちこちで山崩れが見られます。もし工事が実施されれば、村内道路を1日1700台のダンプカーがトンネル残土を10年間運び続けることになるそうです。町の環境は台無しになる上、水脈が切られれば、村民の生活を支えてきた川が干上がってしまうかもしれません。村人にとっては大変な脅威です。リニアが走っても、村には何のメリットもないということですから、トンネル工事を望む村民など、だれもいないのではないでしょうか。

 

中央アルプスや北アルプスには多くの人々が訪れますが、南アルプスを訪れる人は、その10分の1程度だそうです。その分、自然が残されています。

地元の女性にインタビューしてみました。山菜採りに山に入るとクマにも出会うが、クマがいつも先にさっと逃げていくそうです。クマがいて当たり前なので会うとうれしいと言われていました。

 

標高1000メートル以上まで車で上がってみました。ミズナラの新緑がとてもきれいです。ミズナラがたくさん残っていることにホッとしました。

本当に美しいところです。

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しかし、森の中をのぞいてみて、 ショックを受けました。

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下草植生が 消えています。シカがこんな高いところまで来ていることがわかりました。外から見ると、昔と同じように美しく自然豊かな南アルプスですが、内部では大異変が起こっているのかもしれません。クマをはじめとする森の動物たちの悲鳴が聞こえてきそうでした。

 

この日出会った地元の皆さんは、感謝の心でまっすぐ真面目に生きておられる本当にすばらしい方たちばかりでした。初めて会う自然保護団体である私たちに、親切にいろいろな所を見せて下さり、いろいろなことを教えてくださいました。今後の熊森活動に生かしていきます。本当にありがとうございました。

宿で夜、今日お会いした方々の事を思い出して大変幸せな気分になりました。

 

都市と郡部、国民みんなで力を合わせて、

全生物のために、次世代のために

自然に恵まれたすばらしいこの国の国土を守っていきたいと改めて思いました。

 

 

富山県奥地の森や動物の状況を町役場にたずねる

4月29日と30日にくまもりが調査した奥山が存在する町の役場に電話をして、担当者に森や動物の状況を聞きました。

 

熊森:先日、奥の山を調査しましたが、ミズナラが総枯れという感じでした。クマの痕跡が全くなかったのですが、今もあの山はクマの巣でしょうか。それとも、もうクマはいないのでしょうか。

町役場:クマは、平成22年がピークでした。

熊森:2010年は、奥山の実りがゼロという異常年でしたからね。

町役場:平成22年は、9月から11月まで、毎日のようにクマの目撃情報があり、2~3頭有害駆除しました。あれ以来、クマの目撃はぷっつりと途絶えています。昨年は、年間目撃数が1~2頭で、捕獲もゼロでした。里に出てこなくても、クマは山奥で元気に暮らしているのかと思っていました。

熊森:年間目撃数が1~2頭ということは、もう、クマがいないことも考えられますか。

町役場:昔からクマと共存してきた人たちは、いて当たり前で、クマを見ても届け出ませんから、目撃情報がないからと言って、クマがいないとは限りません。確かにナラ枯れはひどいのですが、みなさんが登られた山の隣の山に去年登りましたが、ミズナラも残っていて、クマ棚も見ましたよ。子グマにも会いました。

うちの町ではクマは問題になっておらず、今、イノシシとカモシカの被害に困っています。

イノシシは以前いなかったのですが、最近は結構います。本来イノシシは、深い雪となる富山の冬を越せないのですが、スギの人工林の中は雪が少ないので、そこに入り込んで冬を越しているのを見ました。

うちの町では、イノシシ捕獲檻の上部には、クマがかかった場合、自力で逃げられるように穴をつけています。その穴にクマの毛がついていたのを見ましたから、クマがゼロではないと思いますが…、移動したかもしれません。最近は、石川県との県境で、クマの目撃が増えているそうです。

ニホンジカの目撃情報もちらほらありますが、まだそんなに気にするほどの事はありません。

カモシカには困っています。下まで降りてきて、被害を出すのです。

熊森:私たちが調査した山にも、機会があれば登ってみてください。もし、クマの生息痕跡があれば、教えて下さいね。お忙しいところ、ありがとうございました。

 

<山形県佐藤さんからのアドバイス>

春のクマの餌は、山菜なんだけれど、クマっていうのは、同じところでごそっと食べたりはしない。チョッ、チョッとほんの少しだけつまみ食いして歩くので、山菜を調べて、クマがいるかどうか判断することは至難の業だ。ミズバショウを食べた時は、周辺に、クマの足跡が残っていたので、クマが食べたんだなとわかったけれどね。

滋賀県北西部の奥山調査 ふもとから頂上まで下層植生が完全に消滅 クマの最近の痕跡なし

滋賀県のクマ生息地というと、一番に思い出すのは北西部のこの大きな町です。十数年前に訪れた時は、ササでびっしりとおおわれた山中のいたるところに鉄格子でできたクマ捕獲罠がかけられており、次々とクマが捕獲されて殺されていました。役場の方に歯止めをかけてほしいとお願いしましたが、聞き入れられませんでした。

しかし、地元の研究者は、今やもうこの町にクマはいないと言われます。なぜいなくなったのかたずねると、みんなで獲り尽くしたからということです。悲しいです。

 

5月6日、熊森本部は、滋賀県支部のメンバーと、この町の広大な山を調査しました。

 

ふもとの山に到着。新緑の美しい山です。つい、この中にはいろんな生き物たちが暮らしているように思ってしまうのですが・・・

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登山開始。

 

滋賀県の人工林のスギは、雪国対応の裏スギでした。ふもとから頂上まで、全てのスギにクマ剥ぎ防止テープが巻かれていました。

本部のある兵庫県のクマは、スギの皮ハギをしない文化を持つので、この様な光景は見たことがありません。クマ剥ぎ防止テープが異様で、ギョッとしました。

それにしても、もうこの町のクマは殺し尽くされたのですから、クマ剥ぎ防止テープを巻く必要などないのです。巻いた訳は、補助金がもらえるからです。

私たちの税金が無駄に使われています。

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左半分が自然林、下草はシカの食べないアセビ。右半分はビニールテープを巻いた人工林のスギ

 

急な山道を登っていきます。この山のミズナラは枯れているのもありましたが、まだ残っているのもありました。良かった。しかし、下層植生はゼロです。

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 かなり急峻な山

 

それにしても、滋賀県の奥山の広大なこと。360度、見渡す限りの深い山々です。

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 どこまでも、山また山

 

今立っている山も対岸の山も、戦後の国策であったスギの分収造林地です。

しかし、手入れが行き届かなかったところは、本来の潜在植生である広葉樹に自然に戻って行って、まるで、針広混交林のようになってきています。

根の浅いスギだけが崩れ落ちたところが何か所かありました。

自然界が、スギに対して、ノーと言っているのが見えるようでした。スギに向かない所に植えられたスギもかわいそうです。

 

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針広混交林化したスギの分収造林地

 

800メートルを超える福井県境の尾根まで上がってきました。ブナの木がたくさん残っていましたが、まるでこの山は、公園状態です。姿を隠すものがなければこわくておれない臆病なクマは、とても棲めません。動物に出会うことはありませんでしたが、頂上まで、いたるところにシカの糞が落ちていました。シカ以外の糞は見つけられませんでした。シカが下層植生を食べ尽くしたことによって、クマは餌場も生息地を失ってしまいました。

京都府や兵庫県と同じ事態が起きていることがよくわかりました。

 

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頂上近くの尾根。尾根の向こうは福井県。

 

クマの棲む最高に豊かな森を残したい熊森としては、複雑な気持ちでした。下層植生を消したのはシカだとされていますが、わたしたちはシカのバランスを崩したのは人間活動だと思います。

 

対岸コースを歩いたグループは、クマの古い痕跡を少し見つけたそうですが、新しい痕跡はゼロでした。

滋賀県支部のメンバーによると、滋賀の別の地域には、まだクマが残っているところがあるということです。

今日1日見てきた滋賀の広大な山々は、野生生物の保全だけではなく、水源の森保全の観点からも危機的な事態です。

 

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