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クマに恨みはないとご遺族 長野県松本市

11月28日に起きた松本市のクマによる死亡事故のご遺族に、事故後何日かして、電話してみました。

いろいろとお話を聞かせていただきました。どれもこれも、胸を打つお話でした。

亡くなられた方のご冥福を祈って手を合わせに行きたい、また、長年、クマの「ペッペ」を大切に保護飼育してくださったことに対して、ご遺族にお会いして一言お礼を言いたいという気持ちが高まって、熊森は12月11日、室谷会長ら7名でご自宅を訪れました。

飼育されていた場所は、普通の車ではいけないような、想像以上の山奥でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

周りは行けども行けども延々と山

 

部屋に上がらせてもらっていろいろとお話を聞かせていただき、長時間お邪魔してしまいました。

また来ますねと言いたくなるほど打ち解けて、なんだか親しい親戚の家に来ているような感じでした。

 

ご遺族によると、クマは、赤ちゃんの時、山の中で弱って動けなくなっていたのを動物好きの男性が保護して「ペッペ」と名付け飼育していた。「ペッペ」はみんなに可愛がられ、地域でもアイドルだったそうです。

 

アルバムの「ペッペ」の写真をたくさん見せていただきました。

「ペッペ」の顔つきは、熊森が今お世話をしているクマたちとそっくりで愛らしかったです。

「ペッペ」がどんなに大切にされていたのか、飼育されていた方とどんなに深い信頼関係で結ばれていたか、一目でわかりました。

 

 

 

 

 

 

事故後も「ペッペ」は、ずっと檻の周りにおり、外に置かれていた食べ物を食べたりうろついたりしていたそうです。逃げ出そうとしたわけでも、男性を噛み殺してやろうとしたわけでもなく、最大の親しみを込めて抱きつき、いっぱい甘噛みしたら、男性が動かなくなってしまったので、戸惑っていたのだろうと思いました。

なぜ事故が起きてしまったのか、獣舎の中もいろいろと見せていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペッペ」のお墓には花が添えられていました。私たちも手を合わせました。

 

 

 

 

 

 

 

 

弟さんが、「兄貴は身体悪くして弱っていて『もう長くないと思うから遺影も撮った』なんて言ってた。あの世でもペッペのこと悪く言ってないと思うよ。向こうがじゃれてるつもりでも、クマの力はすごいんだから。こんなことになったけど、ペッペに怒りはないと思うよ」と話してくださいました。

 

熊森から

熊森は、クマを個人で保護飼育されている全国の方とつながり、情報交換したり、助け合ったりしたいという強い願いがあります。行政にクマを飼っている人を教えてほしいとお願いしたこともありますが、個人情報だからとどこも教えてくれませんでした。

全国でクマを個人的に保護飼育されている方がおられましたら、ぜひ、熊森までご連絡ください。

 

 

 

住民は巨大風力発電事業に付き合う義務もメリットもない 武田恵世氏講演 

以下、

 会場の宮崎福祉センターに約90人が集まった。武田さんは三重県の風力発電施設周辺で、睡眠障害を訴える住民が出た例を紹介。発生した土砂崩れへの事業者側の対応は今も不十分だと指摘した。

 さらに、近年の電力価格と資材費の高騰、インフレによる影響を懸念。「風力などの固定価格買い取り制度(FIT)は、売電価格が固定され、物価高騰の価格転嫁ができない。利益が見込めないと、風力発電施設が造成途中で放棄されることも警戒しないといけない」と指摘した。

 

 

 

 

 

 

 

会場

 

熊森より

森林生態系は人間の頭をはるかに超えた超複雑系です。

巨大風車設置のような人為的な破壊をいったん行うと、もう二度と元には戻せません。

風車設置で大もうけをしたい人は、自然大破壊というデメリットに目をつむり、尾根筋に整備された道路は地元の林業のために役立ちますなどという小さなメリットを必死で前面に押し出してきます。

しかし、武田先生は、林業は上から下へ材を降ろしていく仕事なので、尾根筋道路など林業には不要であると痛快に指摘されていました。

業者の甘言に惑わされて森林破壊をしてしまう前に、みんなが知っておかねばならない大切な知識が満載です。

日本環境法律家連盟、宮城県再エネ問題紛争地を次々と訪問、現地でシンポジウム

 

日本環境法律家連盟(JELF)は、環境問題に取り組む法律家約500名が所属する団体で、熊森の室谷会長もJELFに所属し、役員を務めています。
2022年11月11日~13日、池田直樹理事長をはじめとする様々な環境問題に取り組んでいる十数名の弁護士たちが、再エネ自然破壊を阻止しようと各地で地元の皆さんが業者と闘っておられる宮城県を訪れました。丸森町、加美町、大崎市のメガソーラー・風力発電開発予定現場を視察し、地域を守るため立ち上がっている住民のみなさんと交流しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

大規模メガソーラー建設が予定されている丸森町で住民の方々と意見交換の様子

 

大崎市鳴子温泉で地元の方から建設予定地について説明を受ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オオハクチョウやシジュウカラガン(絶滅危惧種ⅠA)など、渡り鳥たちが冬を過ごす伊豆沼で朝の飛び立ちを見るために午前4時に起床

 

 

 

 

 

 

 

あいにくの曇りながら、飛び立つガンや沼を泳ぐオオハクチョウなどを見ることができました。

 

12日には、地元加美町でシンポジウム「風力発電を専門家と考える会」を開催し、約100名の方が、ご参加くださいました。

シンポジウムの動画が公開されていますので、ご覧ください↓

 

 

 

 

 

長年にわたり森林開発阻止に取り組んでこられた札幌弁護士会の市川守弘弁護士や、生態学の専門家である広島県の金井塚務氏が講演。
室谷悠子会長も風力発電事業者と加美町の契約で、あまりにも業者有利となっている問題について発表しました。参加された地元の皆さんから、どこに問題があるのか見えてきたと大変喜ばれました。

 

河北新報2022.11.13 朝刊

石川県白山調査

2022年10月29日(土)、熊森本部職員、石川県支部のみなさん、奥山保全トラスト職員で白山トラスト地とその近くの釈迦新道の森を訪れ、熊森顧問の主原憲司先生にいろいろ教えていただきました。

 

白山トラスト地について

主原先生は小学生の時から白山に魅せられ、もう60年以上も白山に通い続けておられます。

先生は、日本で最後にツキノワグマが残るのは白山だと断言されます。白山は、それほどクマが棲むのにいい山なのです。

当時、NPO法人奥山保全トラストが白山の一角を購入することになり、主原先生に購入場所の地図をお見せすると、先生は目を丸くしてしばらく声も出ないほど驚かれていたそうです。

なぜなら、白山の豊かな森の中でも、特に豊かな場所があり、先生はいつもその場所に行くのを楽しんでおられました。購入予定場所が、まさにその森だったからです。

現(公財)奥山保全トラストが所有するその森の広さは22.3ヘクタール、白山トラスト地です。

 

教わったことの一部を以下にご紹介します。

 

白山トラスト地

この時期は紅葉真っ盛りで、周辺の山々も美しく色づいていました。ここは白山国立公園の一部であり、手取川をはじめ多数の河川を育む自然豊かな場所です。

 

赤い葉:光合成で作られた養分が気温の低下によって葉に溜まるようになり、やがてアントシアンに変わって葉が赤くなる。

黄色い葉:葉の葉緑素が分解されてキサントフィルという色素が浮かび上がることで、葉が黄色くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い葉と黄色の葉が美しい石川県白峰の白山トラスト地

 

マムシグサ

この時期、真っ赤な実がまとまってひときわ鮮やか。茎が毒蛇のマムシの模様に似ているのでこの名が付いた。赤い実や葉、球根に毒があり、人が食べると死に至る恐れがある。受粉はキノコバエという小さな昆虫。雌雄異株。

実が赤いのは鳥を呼ぶため。ヤマドリをはじめ鳥類の中にはこの実を食べるものがいるが、人間とは解毒の方法が異なるため、消化することが可能。

 

 

 

 

 

 

 

マムシグサ

 

マユミ

春に白い花を咲かせ、秋にはピンク色の実をつける。弓はかつて主要な武器で、マユミは弾力性に長けていて弓に適していたので、「真弓」と名がついた。孟宗竹が入ってきたのは江戸時代になってから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マユミの木

 

釈迦新道へ

トラスト地を出て北へ少し行くと、釈迦新道と呼ばれる道があります。この道は古いブナ林へと繋がっています。

この辺りは火山噴火による溶岩の影響を受けており、大きな岩があちこちに見られます。岩からコケ類をはじめとする植物が生えており、趣のある景色が楽しめました。

 

 

 

 

 

 

 

大きな岩の上に植物が

 

クマハギ

この地域のクマは5月から6月ごろ、クマ剥ぎをします。樹皮を剥ぎ取って、樹液を舐めたり軟らかい部分を食べたりします。剥ぎ取った木の幹に背中を擦りつけて、匂いで他のクマとやり取りすることもあるとのことです。

 

 

 

 

 

 

 

マツの幹に残されたクマ剥ぎの痕跡

 

タマアジサイ

アジサイといえば紫色の花が特徴的だが、寒さが厳しくなっていくと葉にも紫色の色素が表れる。花はガクアジサイに似ている。

 

 

 

 

 

 

 

黄緑色の葉も同じタマアジサイの葉

 

非常に豊かな下層植生

ササ、ハイイヌガヤ、シダ類と、下層植生が豊か。

 

 

 

 

 

 

 

草本、低木、高木が揃う豊かな階層構造

 

ハイイヌガヤ

シカの大好物。シカが多い所では食べ尽くされてなくなる。白山にハイイヌガヤがあるということは、まだシカが定着していないということ。秋には赤い実がつき、林床が鮮やかになる。

 

我が国では、野生動物が安心して暮らせる豊かな森は人間活動によってすでに大半が失われてしまっています。

国立公園や国定公園だからといって永久に自然が守られる保証もありません。私たち一人一人が自然の素晴らしさを体感し、森の重要性や野生動物との共存について考えることが必要だと思いました。(羽田)

2021年度北海道ヒグマ捕殺数1030頭!来春から親子狩りと穴狩りも解禁に

以下、北海道新聞2022.11.23より

 

専門家でつくる道の「ヒグマ捕獲のあり方検討部会」は11月22日、クマの市街地出没を減らす対策として、若手ハンターを育てるため、2~5月中旬の残雪期に特別に許可する「人材育成捕獲」を拡充し、これまで規制してきた親子連れの捕獲や冬眠中に捕獲する「穴狩り」を来年から解禁する方針をまとめた。冬眠明けのクマに人への警戒感を植え付ける狙い。

規制を設けずに奨励した残雪期の「春グマ駆除」(1966~90年)で生息数が激減したことを踏まえ、雌グマについては捕獲上限を定めてとり過ぎないよう管理する。また、穴狩りは人里周辺で行うとした。

 

なお、2022.12.20、上部組織の「北海道ヒグマ保護管理検討会」でも、この案が承認され、正式に決定された。(熊森)

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒグマの親子 北海道

 

熊森から

クマ狩猟とは、人間に何の被害も出していないクマを、人間が銃を持ってかれらの生息地に入り込んで撃ち殺す行為です。昔はクマ狩猟で生計を立てていた人もいますが、今はまずいないでしょう。

生き物を殺すことはいつも残酷ですが、来春から解禁されることになった親子熊や冬ごもり中の穴熊狩猟は、なかでも最も残酷です。

親子熊の場合、母熊は子供を守ろうと必死になりますし、子熊は母グマに必死ですがります。かわいそうで見ておれません。

穴熊が雌だった場合は、穴には赤ちゃんグマがおり、殺された母グマのおっぱいにしがみついていたりすると思います。

これらのいたいけない子グマまで殺すのです。

ハンターでも、やりたくない人が多いのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

駆除された母ツキノワグマのおっぱいに吸い付いている赤ちゃんグマ

 

現在、北海道では、ヒグマは年中大量に駆除されています。北海道内で2021年度に捕殺されたヒグマは、1030頭を超えました。門崎允昭先生によると、捕殺数が千頭を超えたのは1018頭だった1906年(明治39年)以来、115年ぶり。過去最高の駆除数です。(道庁ヒグマ対策課に電話すると、ヒグマ駆除の9割はシカ肉やハチミツを入れた箱罠にかけてからヒグマを撃つ。1割は銃で直接ヒグマを撃つ。シカ用くくり罠に錯誤捕獲されるヒグマは、年間数例だそうです)

捕殺数の内訳は市町村が道の許可を得て罠などをかけて行う「駆除」が9割以上を占め、ハンターが趣味で行う「狩猟」はわずか40頭台でした。

 

今回、北海道庁は、この狩猟数をもっと増やそうというわけです。

 

何のために?

 

冬眠明けのクマに人への警戒感を植え付ける狙いだそうです。

 

しかし、脅すだけならわかりますが、殺してしまうのですから、こんなやり方では人を恐れるクマなど誕生しないのではないですか。人の怖さを知ったクマは、即、この世から消されてしまうのですから。

 

いったいどういう人たちが、こんな対策を決めたのか。ヒグマと人との軋轢が起きているのはわかりますが、すべて、ヒグマに責任があるのでしょうか。殺さない解決法は思いつかなかったのでしょうか。委員に女性がいなかったのではないでしょうか。

 

委員名を調べてみました。

梶 光一(国立大学法人東京農工大学 名誉教授)

坂井 憲一(北海道猟友会千歳支部 支部長)

佐藤 喜和(酪農学園大学農食環境学群環境共生学類 教授)

釣賀 一二三(地方独立行政法人北海道立総合研究機構エネルギー・環境・地質研究所自然環境部 研究主幹)

藤本 靖(NPO法人南知床・ヒグマ情報センター 理事長)

三浦 直之(七飯町環境生活課 自然環境係長)

村上 裕(北海道猟友会北見支部 指導員)

山中 正実(公益財団法人知床財団 特別研究員)

 

うーん、この人たちが悪いというわけではありませんが、人選が偏り過ぎです。猟友会員が入っておられることは評価しますが、道民の半分を占める女性、自然保護団体、ヒグマの心がわかる動物愛護団体などを入れなければ、道民の声を代表した対応策にならないと思います。ヒグマ問題には、多様な道民の衆知を集めることが大切です。

 

今年3回開かれた「ヒグマ捕獲のあり方検討部会」の議事録を読んでみました。

膨大過ぎて読み切るのに苦痛を伴いましたが、全文読み終えました。

この案を正式に承認した「北海道ヒグマ保護管理検討会」のメンバーも調べてみました。

 

 

検討部会飯島 勇人(国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所野生動物研究領域 主任研究員)

佐藤 喜和(酪農学園大学 農食環境群 教授)

釣賀 一二三(地方独立行政法人北海道立総合研究機構 エネルギー・環境・地質研究所 自然環境部 研究主幹)

浦田 剛(占冠村農林課林業振興室 野生鳥獣専門員)

宮内 泰介(北海道大学大学院文学研究院人間科学部門地域科学分野地域科学研究室 教授)

山本 幸 (公益財団法人知床財団事業部 事業部長)

横山 真弓 (兵庫県立大学自然・環境科学研究所 教授)

 

うーん、この人たちが悪いというわけではありませんが、人選が偏り過ぎです。

学識経験者からなる委員ということですが、このようなことは学識経験者だけで決めてはならないのです。

しかも、学識経験者にもいろいろなタイプがありますが、道庁は持論に賛成してくれそうな人ばかり集めていると感じます。

私たちは北海道に住んでいないので、わからないことも多々あると思いますが、まず人選の問題について、北海道庁に改善を求めたいと思います。このような会には、自然保護団体を入れなければならないと決まっているのに入れていません。

 

部会のある構成員が、「北海道庁はヒグマ絶滅政策はやめたけれど、ヒグマ保護重視に転換したことなど一度もないと思う。狩猟数に上限はないなど世界的に見て異常だし、有害駆除に関しても、駆除申請して認められないことはほとんどない」と言われています。

 

これは私たちがずっと感じてきたことです。狩猟だけではなく、有害駆除にも上限が必要だと思います。多くの道民はまず殺すありきの北海道ヒグマの捕獲実態を知らないから黙っているだけです。知ればこれはひどすぎると声を上げる人たちが多く出ると思います。マスコミの皆さん、生々しいヒグマ捕殺の実態を、全道民や全国民に伝えてください。先住民であるヒグマを大切にできない北海道なら、人間も大切にされないと思います。

 

札幌市民がヒグマ対策話し合う場を、北海道大学が市に提言

環境省が管轄する釧路湿原国立公園内に太陽光発電建設ラッシュ 

釧路湿原国立公園内に、6,6haの太陽光発電施設が設置されています。
環境省の地元事務所に問い合わせると、国立公園内と言っても、普通地区ですからと気にしていない様子。
普通地区でもダメでしょう。
新聞報道によると、予定地の大半は、氷河期の遺存種である両生類・キタサンショウウオが生息する湿原です。
キタサンショウウオは今年1月には種の保存法の国内希少野生動植物にも加えられ、販売目的の捕獲が厳罰化されるほど絶滅の恐れが高まっている種です。
釧路湿原にすでにできてしまった太陽光発電6、6ha 釧路市民提供(毎日新聞)

明らかに自然環境に配慮できていないので、このメガソーラー、すぐに除去してもらおうと思ったのですが、なんと隣接地に、この60倍の面積にあたる400haの太陽光発電施設(ドイツ資本?)が新たに予定されているそうです。

ここは、市街化調整区域で、「市街地の拡大を抑制し自然環境に配慮した形で土地利用を図る」とされる場所で、地目は大半が原野。基本的には開発が規制されているはずですが、太陽光発電設備は「建築物」とはみなされないため、出力4万キロワット以上の巨大メガソーラー以外は、環境アセスメント(環境影響評価)の対象にならないのです。他にも建設予定があるそうです。

 

ソーラーパネルの中には有毒物質が含まれているため、何かの時にそれらがパネル外に出ることも考えられます。

 

国立公園内での再エネを禁止する法案も必要です。

 

こんなことまで私たち国民が心配しなくてもいいように、環境省が動いてください!

 

神奈川県絶滅危惧種ツキノワグマ イノシシ罠に錯誤捕獲され殺処分

  2022年12月15日神奈川県発表

令和4年12月15日(木曜日)午前7時半頃、清川村煤ヶ谷の集落近くの山林に設置されたイノシシ捕獲用の箱わなに、ツキノワグマが掛かっているのを、見廻りに来たわなの設置者が発見しました。
本年11月から近日にかけて、同地域内では同一個体と思われるクマによる出没が相次ぎ、追い払い、電気柵設置による防除及び捕獲檻を設置する等の対応を行っている中での発生でした。
当該クマを確認したところ、令和2年に同地域内で人里に出没を繰り返し、同年12月に捕獲檻にて捕獲及び学習放獣を行った個体であると判明しました。
こうした経緯から、当該クマは学習措置を行っても農作物等のある人里への執着は強く、地域住民の安全を図るため、やむをえず捕殺しましたのでお知らせします。

 

熊森から

神奈川県は、10月27日に伊勢原市で捕獲されたクマの時は、神奈川県内のツキノワグマは生息数が約40頭と非常に少なく、絶滅のおそれがあるとして放獣してくださっています。今回も放獣を考えてくださったと思いますが、どうして殺処分になってしまったのか、現地調査をしてみなければわからないと思いました。

 

ただ、県が発表しているように、2年前に学習放獣したのにまた出てきて今度はイノシシ罠にかかったから殺処分したというのでは、納得できません。今後もこのような考えで対処するなら、神奈川県のクマは確実に絶滅します。残り40頭という数は、何度でも放獣すべき数です。

 

第一、私たち人間でも、飢えれば、2年前痛い目にあっていたとしても、どこまで自制心が働くか定かではなく、その事実をもって学習能力のないクマと決めつけられないと思います。むしろ2年間も自制心を保てていたのなら、すばらしいクマだと思います。

 

12月16日「とよ」冬ごもりに

とよは、みなさんから送っていただいたドングリを食べ続け、丸々と太りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち葉を敷いて晩秋の感じにしてもらった獣舎の中でたたずむとよ

2022,11,29

 

 

今年は初雪がなかなか降らなかったため、いつ冬ごもりに入ろうかなと、とよは何日間か思案している感じでした。

雪は降りませんでしたが、高代寺山上の最低気温がマイナス4度になった日、とよは冬ごもりに入りました。

12月16日です。去年と全く同じ日です。

 

 

この後、飲まず食わずで3月末まで冬ごもりします。

お世話隊の活動は当分お休みですが、安否確認隊が時々そっとのぞきに行ってくださいます。

 

とよは、大阪府から放獣を禁止されたため、生涯、狭い獣舎の中ですが、愚痴や不満は一切なく、いつもお世話隊に感謝して幸せそうに暮らしています。本当に立派だと思います。訪れる人たちをみんな幸せな気分にさせます。クマはすばらしい動物です。

 

とよ、3か月後、また会いましょう。

 

少し早いですが、みなさんも、良いお年を!

 

兵庫県クマ生息地の氷ノ山調査

2022年11月4日(金)、熊森の若い職員らが、主原顧問と共に氷ノ山(ヒョウノセン)の調査を行いました。

氷ノ山は兵庫県と鳥取県の県境にあり、標高1510メートル、兵庫県の最高峰で、兵庫県のクマ生息地の中心です。現在山の状態がどうなっているのか調べて、今後の熊森活動に反映していくのが目的です。

 

氷ノ山の植生

1、原生林

天然スギ、ブナ、ミズナラなどの巨木の森です。

この時期、葉が落ちてしまっているのはブナ、葉が赤くなっているのがミズナラです。緑色は天然スギです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原生林

 

クマの痕跡を探してみましたが、古いクマ棚が一つ見つかっただけです。主原先生によると、クマは古い巨木よりも、登りやすいもう少し新しい木に登るとのことでした。

 

2、伐採跡の人工林と2次林

入らずの森だった氷ノ山ですが、戦後、人間がどっと入り込んでパルプ材を作るために大量の樹木を皆伐しました。その結果、頂上付近は、ササ原になってしまいました。自然界では、親木が倒れた空間に、親木の下で長年待っていた稚樹が突然成長し始めて、元の森に戻ります。しかし、皆伐されると、ササが優勢になってしまい、樹木が戻らない場所が生まれるのです。皆伐跡地にスギが植えられた場所は、人工林として今に至っています。伐採後、植林されなかった場所にはコナラなどが入って落葉広葉樹林が形成され、下の写真の姿になったところもあります。人手が入った山と原生林の見分け方がわかりました。

コナラは薪炭材として古くから利用され、炭の原料となりました。東北ではコナラを使って白炭を作るそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

濃い緑色はスギの人工林、他は紅葉が鮮やかなミズナラやコナラの2次林

 

氷ノ山の中間温帯はケヤキ、シラカシが多く、ミツマタは和紙の原料として利用されます。

そこから標高が高くなって冷温帯に入るとウラジロガシ、ミズナラ、ブナに変わっていきます。中間温帯とは暖温帯と冷温帯の間に位置する気候帯の事です。

ブナの落葉は早いので、この時期は他の木と見分けやすくなります。氷ノ山のミズナラは、ナラ枯れと言って、カシノナガキクイムシという小さな虫が持ち来むタフリナ菌で多くが枯死してしまいました。

カエデ類の種類をみることによって標高帯を分けることができます。カエデの種類によって生育できる場所が違うからです。冷温帯では山の下の方からヤマモミジ→ハウチワカエデ→イタヤメイゲツと変わっていきます。

 

3、ドングリについて

①ミズナラ(落葉)

このドングリはタンニンが多く含まれているので、動物の中でもそれを分解できるツキノワグマしか食べることができない。ネズミなどのげっ歯類は食べるとタンニンを分解できずに死んでしまう。

②ウラジロガシ(常緑:葉の裏が白い)

隔年成熟なので、1年ごとにドングリが実る年と実らない年を繰り返す。

③シラカシ(常緑)

今年ハイイロチョッキリというゾウムシによって実が落とされている。

ウラジロガシとシラカシのドングリの違いは、ドングリの先端の細いのがウラジロガシで太いのがシラカシ。

 

 

 

 

 

 

 

 

左がウラジロガシ、右がシラカシ

 

 

4、ショックだったササ枯れの発生

氷ノ山はまだ林床にチシマザサが生い茂っており、良かったと安心したのですが、よく見るとあちこちでササが枯れて茶色の葉になっていました。春、チシマザサのタケノコであるスズコはクマの貴重な食糧で、スズコのあるところ必ずクマが食べに来ていると言われるぐらいです。ササが失われることは、クマには致命的です。

ササが部分的に枯れるなど今までなかったそうで、原因は地球温暖化のようです。

ササが消えると土壌が水分を維持できなくなってしまいます。そうなると、乾燥に弱いブナが枯れだすことも考えられます。

ミズナラも枯れていますから、この上ブナ林までが消えると、秋のクマの食料が不足し、大変なことになります。冬、ササは雪に埋まり、―15℃で休眠状態に入ります。春先に休眠状態が解除されたあと、再び突然気温が下がるとあっけなく枯れてしまうそうです。昼夜の大きな温度差についていくことができずに枯れてしまう凍害も併せて起きているようです。ササはわずかな気温の変化によって、枯れるというダメージを受けることがわかりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

黄色い部分がササの枯死

 

5、シカ

兵庫県はシカの生息数が多いため、多くの地域でササをはじめとする森林の下層植生がシカに食べ尽くされています。

しかし、全てシカが悪いわけではないと思います。山の自然林を伐採して一面スギ・ヒノキの人工林に変え、野生動物たちの食べ物を奪ってしまった人間に大きな責任があるのではないでしょうか。

シカが多く生息する地域ではせっかく広葉樹の苗木を植樹しても、すぐシカに食べられてしまい、苗木が育たないケースがほとんどです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ササがシカに食べられた痕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シカが多い所では、下層植生がほとんど消えている

 

6、兵庫県のクマ対策である柿もぎ

兵庫県はクマとの人身事故を防ぐために、地元の人たちに柿の実を早く収穫するか、柿の木を伐るように指導してきました。みごとに山裾から柿の木が消えましたが、、集落の柿の木が残っていると、クマは集落に入っていきます。山里の人たちの中には、「クマが柿を食べに来るのは昔から当たり前で、クマが来ている時は家から出ないようにする。昔からそうして共存してきたから、クマが来ても問題ない。」と言って、柿を残しておく方もたくさんおられたそうです。

 

 

7、今回、進む山の劣化に危機感

氷ノ山はクマが棲んでいるだけあって豊かな森です。しかし、確実に山の衰退は始まっていました。クマをはじめとする野生動物たちが生息地や食べ物に困って、山から出て来ることは避けられないと思いました。戦後、原生林を大規模伐採したことや、奥山にまで人が入り込んで道路を造り続けたこと、原因は皆人間が作っています。これ以上山が劣化すると、野生動物と人間の共存はより難しくなってしまうかもしれません。

何とか野生動物の生息地を復元し、山の劣化を防いでいきたい。熊森はがんばります。(羽田)

風車からの低周波音と風車病について、環境省担当者に電話でききとりました

環境省ホームページには組織別の詳しい部署や内線番号が掲載されていないので、環境省代表番号から電話し、水・大気環境局・大気生活環境室が窓口でした。

 

以下に、その時のやり取りがどのような感じだったかを思い出して、感じが伝わるようにまとめてみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

熊森:風力発電から出る低周波音について聞きたいのですが。

担当官:そのようなものは出ません。

熊森:出るんですよ。そんなこと誰でも知っていますよ。

担当官:業者は否定しています。

熊森:どこの業者ですか。

担当官:お教えできません。

熊森:測定器を持って行けば一目瞭然ですよ。測定されたことはないんですか。

担当官:ありません。

熊森:その低周波音が原因で風車病になり苦しんでいる人がいるのです。あなたも現場に行って測定してみてください。

担当官:風車病は認められていません。

熊森:ドイツのテレビ番組をユーチューブで見たのですが、風車から出る低周波と風車病の関係はもう科学的に解明されていますよ。あなたも一度見られませんか。

担当官:そういう声があったということはお聞きしておきます。

熊森:風車から出る低周波音や風車病について、論文を読んだりシンポジウムに出たりして勉強されていますか。

担当官:個人的なことはお答えしかねます。

熊森:いつからこの部署に。

担当官:今年4月からです。

熊森:ならば、いろいろと勉強してほしいです。風車病に苦しんでおられる方たちは悲鳴を上げておられます。業者が風車病は存在しないと言ったから環境省の見解も存在しないでは困ります。風力推進業者の言葉を丸のみしないでください。

担当官:風力推進業者ではなく環境省が調査を依頼した会社の調査結果です。

熊森:あなたも風車の近くに行って低周波音を測定したり、風車病に苦しむ人たちの声に耳を傾けたりしてください。真実がわかってきますから。

担当官:そういう声があったということはうけたまわっておきます。

熊森:この部署にいるんですから、積極的に低周波音や風車病について勉強してほしいです。

担当官:そういう声があったということはうけたまわっておきます。

熊森:調べてくれそうにない感じですね。あなたどんな仕事をしているの。

担当官:指針を作っています。

熊森:指針を作る前に、現地に行っていろいろ調べて、困っている人たちの声を聞くべきでしょう!業者の調査結果だけ見ていい指針など作れないでしょう。

担当官:そういう声があったということをうけたまわっておきます。

 

 

熊森から

何かおかしくないですか。

環境省は国民のためにあるはずではないでしょうか

これでは、風車病に苦しむみなさんは浮かばれません。

どんな仕事であっても現場に出ないといい仕事ができないと思います。

私たち国民がもっと声をあげ、声を届けないとダメだと思いました。

 

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