くまもりNews
福井大学助教授のドングリ運び批判はどこがおかしかったのか①
- 2021-03-09 (火)
- くまもりNEWS
これまで熊森のどんぐり運びをきちんとした文章にまとめて批判した人は、保科英人氏(2004年当時福井大学助教授32歳)ただひとりです。保科氏は当時、熊森に対して、自らの立場も明かして実名でドングリ運びをメールで批判してこられました。匿名で立場も明かさず保科氏の言葉を利用して熊森批判を楽しんでおられる人たちよりずっと立派だと熊森は思います。
問題の文章は、福井市自然史博物館に投稿された研究報告文で、今もネットから検索可能です。
「野生グマに対する餌付け行為としてのドングリ散布の是非について」
~保全生物学的観点から~
福井大学助教授 保科英人
福井市自然史博物館研究報告 第51号:57−62(2004)
あれから16年、未だにこの分類学者の研究報告文に影響を受ける人がいることがわかったので、若い研究者の日本の森林生態系に対する知識不足と実証なき憶測が引き起こしたドングリ運び批判の間違いを、きちんと総括しておきたいと思います。
この研究報告文について、当協会の研究者である京都市在住主原憲司先生2004年当時56才(森林生態学:専門はブナ科に付く昆虫)のコメントをお伝えします。
まず最初に、主原先生の簡単なご紹介をさせていただきます。
先生は、中学1年生の時、鱗翅学会の会員になられました。中学生の学会員など前代未聞であったと思われます。先輩の研究者たちに大変かわいがられて、教授陣からの誘いで中学1年生の時から近くにあった京都大学の研究室に通われるようになり、素晴らしい先生方から薫陶を受け、研究を深めていかれました。
先生は23歳の時、中学時代から調べ続けていた生態不明の最後のゼフィルスと呼ばれた「ヒサマツミドリシジミ」というチョウの生態を解明し、国際会議場で開催された鱗翅学会で論文を発表されました。
その結果、この蝶を採集しようとする人たちが現地に殺到して乱獲、この蝶が絶滅するのではないかという大変な事態に陥りました。この時、先生は、もう二度と研究したことを論文に発表しないと誓われました。
以後先生は、庭にブナ科の各種樹木を植えられたり、ブナ科に付く各種の虫を飼育されたりして、オリジナルの研究に没頭されていきます。
また、奥山生態系に関しては、小学校6年生の時に一人で石川県白山に登られて以来、北海道を除く全国の山々や海岸を調査のために歩かれ、各地の森林生態系を長年にわたって観察調査されてきました。いくつものブナ科に付く虫の新種も発見され、以後、何冊もの本になるような膨大な研究データをお持ちです。しかし、論文は発表されません。
以下、保科氏の研究報告文に対する主原先生のコメントです。
保科氏のドングリ運び批判の問題点
①「種内の多様性」の欠落
保科氏の主張は、ドングリを他の地域に運ぶとドングリやドングリに付いている虫などの遺伝子の交雑が起こるので運んではならないということですね。この主張に、保全生物学的観点からという副題を付けることは、保全生物学に対する冒涜です。
保全生物学は、生物の多様性を守ることが最も大切であるとする学問です。生物の多様性には、以下の3つがあります。
1,生態系の多様性
2,種の多様性
3,種内の多様性=遺伝子の多様性
生物の多様性というと、1番や2番だけを思い起こす人が多いと思われますが、3番目の種内の多様性もとても大切です。現在地球上に存在する生物種が、様々な環境変化にもめげず種を存続して来られたのは、種内の多様性のおかげです。種内の多様性は遺伝子の交雑によって生じるもので、遺伝子が交雑することは 種の存続に絶対に必要です。保科氏は、保全生物学の名を使いながら、保全生物学の3つめの多様性を知らない人だったと言われても仕方がありません。
くまもりのドングリ運びに際しては、私がこれまで調べてきた各種ドングリの発芽温度、生育温度などを元に、どのようなところに運べば発芽生育が起きないか置き場所を指導しましたから、ドングリとドングリや虫と虫が交雑する可能性は ほぼないと思います。しかし、もし万一交雑するようなことがあったとしても、種内の多様性が増え るだけのことで、何の問題もありません。これは熊森がドングリを運ぶ運ばないにかかわらず自然界でも起こっていることです。交雑種が環境に合えば増えていくでしょうし(雑種強勢)、環境に合わなければ消えていきます。(雑種弱勢)種内の多様性が増すことを否定されるなら、その種は滅びてしまいます。
保科氏は研究報告文でブラックバスやマングースの例 を出して、ドングリ運びはドングリやドングリに付いている虫の遺伝子を攪乱させ自然破壊につながる危険な行為であると自然生態系への脅威を訴えておられますが、これらは元々日本にいなかった動物種です。ドングリ運び批判の引き合いに出すべきものではありません。お門違いの批判です。ちょっと勉強した人なら、保科氏の報告文を読んで、すぐにおかしいと気付くと思います。
保科氏の研究報告文の次なる問題点は、森林生態系を歴史的に見る目の欠如です。
次回に続く。
熊森から
熊森を目の敵のように批判され続けておられる方々がいます。かれらは遺伝子の交雑を、遺伝子の撹乱とか遺伝子の汚染とか遺伝子の純潔を守れとかおどろおどろしい言葉で表現されるため、一般の人々は、遺伝子が交雑することはそんなに悪いことなのかと勘違いされてしまいます。このような言葉は学問ではなく思想だと思います。
長野県小諸市が足くくり罠への錯誤捕獲の実態を発表 2020 日本哺乳類学会
- 2021-03-07 (日)
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長野県小諸市の取り組みをもっと詳しく知りたい方は、小諸市産業振興部農林課の竹下毅氏が、2020 日本哺乳類学会で発表された以下の報告文をお読みください。
他の参考資料
・(長野県小諸市に於ける)「中型哺乳類における錯誤捕獲の現状と課題」
(カモシカ以外に錯誤捕獲されている野生動物たちの実態)
くくり罠を使用しないシカ捕獲に取り組んでおられます。
2020年日本哺乳類学会発表
山﨑 晃司(東京農業大学) 1,小坂井千夏 2,釣賀一二三 3,中川 恒祐 4,近藤 麻実
・クマ類の保護及び管理に関するレポート(平成 26 年度版)
環境省 テーマ:クマ類の錯誤捕獲への対応
3月6日開催オンラインシンポジウム「クマとの共存のために今、何が必要か」は、130名の方々にご参加いただきました!
- 2021-03-08 (月)
- くまもりNEWS
熊森は講演会の開催が困難なコロナ渦でも積極的に、日本の奥山と野生動物の現状を多くの方々にお伝えしていこうと、昨年7月からZoomを使用したオンライン学習会を行ってまいりました。初期は、一般対象の講演会を行っても30名~40名が限界でしたが、2021年に入ってから、50名、70名と増え、そして今回は120名を超える方々にご参加いただきました。
かつては、年間100回以上もの講演会を各地でセッティングし、当時の会長、スタッフはほぼ毎日のように全国を駆け回っていましたが、現代ではインターネットを活用し全国の多くの方々に私たちの情報をお伝えできます。これからの時代は、ウェブ配信が主流になっていくのだと感じております。
今回のオンラインシンポジウムでは、ここ2年間での全国のクマ駆除数は6000頭を超え、狩猟による捕殺以外に、1468頭のヒグマ、1万1078頭のツキノワグマが許可捕獲により殺処分され、このような捕殺を続けていたらクマが絶滅するのは時間の問題であり、この危機感を130名の参加者の方々と共有いたしました。
【以下はシンポジウムの内容要旨です】
第1部「今、共存へ舵を切らなければ、手遅れに」
一般財団法人 日本熊森協会会長 室谷 悠子
近年、本州ではナラ枯れや昆虫の消滅が一気に進み、猛スピードで山が劣化しています。また人工林の中は日光が入らず真っ暗で動物たちのエサとなるものは全くありません。食料を求めて山から出てきたクマたちは、熊森の必死の駆除阻止活動にもかかわらず、片っ端から駆除されてしまいました。昨年では11の県で、捕殺の上限を上回る数のクマが殺されました。クマが絶滅しないように大切なことは、「奥山の再生」、「捕殺の抑制」、「捕殺に頼らない被害対策」です。クマと棲み分け、共存できるように、手遅れになる前に今自分たちができることをしっかりやっていきましょう。
第2部「クマを養えなくなっている奥山~西中国山地のツキノワグマ生息地で何が起きているのか」
広島フォールドミュージアム代表 金井塚 務氏
(西中国山地ツキノワグマ保護対策協議会 科学部会委員)
西中国山地のツキノワグマ地域の個体群は中核地域で数を減らし、生息域が周辺に拡大してドーナツ化現象を起こしていると考えられます。本来の奥山生息地ではエサが採れなくなってきたため、クマは生きるためにやむなく生息域を里に移し、フルーツや農作物など野生種ではないようなものを食べ始めるようになりました。人身事故が危ぶまれるような人里にクマがいて、奥山からはいなくなってきている。今後は、人間が奥山の生息場所を本来の豊かさを取り戻して、クマたちを奥へと地道に帰していけるように取り組むしかありません。
第3部「生息数推定では、クマは守れない~各地の生息推定数の検証から~」
日本福祉大学教授 山上 俊彦氏(統計学)
クマが何頭いるのか、正確な数を出すことは不可能ですし、どんなやり方でも誤差は必ず出ます。全国の自治体のクマの生息数推定の計算クマが何頭い方法を検証していますが、計算過程を非公開としている科学的検証にたえないものや、目撃や捕獲数が増えれば数が増える数理モデルとなって生息数が過剰に推定されていると考えられるものが多くあります。生息推定数は、それを使う人がどう使うかが大切で、あくまでも推定で、真実はわからないことを前提に使うべきです。どのような指標をもとにどのようなモデルで計算しているのかの外部検証が不可欠です。生息数推定に用いたデータ・モデル式・プログラミングを全て公表すべきです。
第4部「大型野生動物との棲み分け共存」
日本熊森協会 主任研究員 水見 竜哉
熊森では、古来より守ってきた野生動物と人間の棲み分け、共存文化をもう一度取り戻したいと活動を行っています。その取り組みの1つは、「奥山保全と再生」です。多くの命が支えられている水源の森は、山林を購入してトラストしています。放置された人工林を、実のなる木を植えて自然林に戻していっています。次は、「被害対策」です。兵庫県を中心にクマの被害に困っている40の集落で活動を行ってきました。電気柵や防護網を張ったり、クマが潜みやすい場所の草刈りをしたり、地元の方や都市からのボランティアの方たちと協力し、被害対策に取り組んでいます。また、学校や保育園での環境教育にも力を入れています。野生動物の生息地の危機的状況を子どもたちに伝え、子どもたちに考えてもらう学習プログラムです。
熊森でも、現地に足を運ぶ活動も続けながら、インターネットでの情報発信にも力を入れてまいります。今回は時間の都合により質疑応答の時間を持つことができませんでしたが、メールにて質問や感想などお送りいただけると幸いです。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
ご覧いただけなかった方には、近日中に本日の録画をくまもり公式のYOUTUBEチャンネル「くまもりチャンネル」にて配信する予定です。是非ご覧ください。(チャンネル登録もお願いします)
くまもりの会員数が増えればもっと多くのクマが守れます!ぜひ、会員に! https://congrant.com/project/kumamori/2662
大日本猟友会がくくりわな最大径12cm規制を早急にと環境省に要望
- 2021-03-05 (金)
- くまもりNEWS
令和3年3月3日にWEB開催された、環境省の鳥獣の保護及び管理のあり方検討小委員会に、(一社)大日本猟友会の佐々木洋平会長が、くくりわなによる人身事故・錯誤捕獲の増加に対する措置として、
くくりわなは、本来の趣旨に基づき、早急に最大径12cm以内とすべきと提言されました。
くまもりは、あまりにも残酷すぎるくくりわなに対して、これまで何度も環境省に強く使用禁止を求めてきました。強いくまもりの要望に対して、当時の環境省担当者は、シカやイノシシを大量に獲らなければならないので、使用禁止にできませんでした。その代わりに、直径12cm規制をかけさせていただきます。今回はこれでこらえてください。これで少なくとも成獣グマが誤捕獲されることはなくなりますと、説明されました。
しかし、すぐ後に、まず長野県が12cm規制の撤廃を発表。他府県も、いつの間にか、短径が12cmであればいいという規制緩和を次々と行いました。一人30個までのわなかけが認められ、山の中はくくりわなでいっぱいになりました。一人で100個のくくりわなをかけている猟師もいました。
その結果、成獣グマはもちろん、ニホンカモシカ、キツネ、タヌキなど、シカやイノシシ以外の哺乳類の誤捕獲が日本の山中で相次いでおり、時間の問題ですべての哺乳類がくくりわなにかかっていく勢いです。
くくりわなにかかった動物からわなを外してやることは麻酔でもかけない限り不可能なため、法違反と知りながら、ほとんどの誤捕獲動物がそのまま撃ち殺されています。(動物たちは、山の中にいるだけで殺されていくのです。なんという国だ!)
森林生態系の構成要素が消えていくと、水源としての森も荒廃していきます。日本人には、どうしてこんな簡単なことがわからないのだろうか。昨年末も、くまもりは環境省の担当官に、くくりわなのもう予断を許さないひど過ぎる実態を訴えに行きました。今回の、大日本猟友会の提言に感謝します。
小委員会の専門委員は、坂田宏志氏、羽山伸一氏、三浦慎吾氏です。
よろしくお願いします。
日本の自然を守るために、熊森がこの専門委員になりたいです。
熊森の主張
まず、くくりわな12cm規制を、きちんと元に戻す。それでも成獣グマの指や子グマの足を初め、多くの動物が誤捕獲されます。少なくとも誤捕獲された動物は逃がせるよう、トラばさみやくくりわなの使用を全面禁止し、わなは、箱わなや囲いわなに限定すべきです。訴え続けていきます。
賛同してくださるみなさん、ぜひ会員になってください。会員数が多くないと、私たちの願いは実現しません。無料で森づくりを行ってくれている野生動物たちに代わって、私たちが声を上げないと世の中は変わりません。
臨時HPのご案内と当面の諸連絡 注:ブログ以外の全ページ故障中
- 2021-02-28 (日)
- くまもりNEWS
現在、日本熊森協会のホームページに不具合が生じており、トップページを初めどのページも更新不可能、閲覧不可能になっています。なぜか、ブログページのみ稼働できています。ご迷惑をおかけしております。
ご入会等は、当分の間、急遽、臨時に作成しました臨時の簡易版ホームページをご利用ください。
ネットからのご入金は現在できなくなっています。
ご不便をおかけして誠に申し訳ございません。
修理が終わるまで、今しばらくお待ちください。
3月6日(土) 15:00~17:00 オンライン開催
【参加申し込み)】お名前、お住いの都道府県を記載の上、下記までメールをお送りください。
E-mail:event@kumamori.org
・
2019年、2020年とクマの捕殺数は膨大で、2年連続で過去最多となりました。クマは一気に絶滅に向かっています。クマ出没や人身事故は連日ニュースになりましたが、クマの生息地の奥山が、放置人工林、ナラ枯れ、林道開設によるシカの下層植生の食害、地球温暖化による昆虫消滅などの人為的な原因により急速に劣化していることは、熊森以外に研究しているところがなく報道もされません。
・
クマなどの大型野生動物のつくる森は私たちの水源の森です。現状を知り、手遅れになる前に共存へ向けて動き出しませんか? 豊かな自然を守り、全ての生きものとの共存を願う方、ぜひ、ご参加ください!3蜜を避けて、どこかの会場やどなたかのご自宅に集まって視聴することも可能です。
奈良県平群町のメガソーラー開発にストップを!
- 2021-02-26 (金)
- くまもりNEWS
万葉の里の森林48haが伐採の危機
裁判提起をめざし、平群のメガソーラを考える会が原告を募集しています
2020年の東北地方クマ大駆除の嵐の中で
東北地方のクマ生息地に住む方と、電話でお話ができました。以下は概要です。
去年の秋はとてもつらかったです。たくさんのクマたちが次々と山から出てきました。よほど山に餌がなかったんだと思います。あっちでもこっちでもクマを撃つ銃声が身近に聞こえて、胸騒ぎし通しでした。おなかがすいてたまらなくなって出てきているだけなのに、行政の人は何も感じていないようで、罠を仕掛けてはクマを獲り続けていました。何回クマを撃ち殺す鉄砲の音を聞いたかわかりません。報告しているよりずっと多くのクマを殺していると思います。
11月、我が家から50メートルぐらい離れたところにあるカキの木の枝がボキボキに折られて柿の実が食べられていました。クマかもしれない、撃たれるといけないと思って、証拠隠滅のためにすぐ枝を片付けに行ったら、根元に大きな糞がありました。クマだと確信しました。こんな家のそばまでクマが来たことはこれまでありません。よほど餌に困っているんだなと思いました。見回してみるも、明日からの食料になるようなものはもう何もありません。かわいそうになって、米ぬかを運んでやったらどうかと思いつきました。
もっと奥に雑草が生い茂っている空き地があるので、そこの地面に一輪車いっぱいの米ぬかを運んでやりました。次の日見に行ったら、ぬかがなくなっており、よくぞここまでと思うくらい地面がなめ尽くされていました。かわいそうに、飢えて冬眠できないんだと思って何度もぬかを運んでやりました。東京の友達にこの話をしたら、ドングリをあげたらいいと言って、すぐに段ボール2箱のドングリを送ってくれました。中を開けたら、3分の1はマテバシイのドングリであとはクヌギのドングリでした。マテバシイは食べないだろうと思ったけれどぬかの跡に運んでやりました。次の日見に行ったら、一粒の殻もなくきれいになくなっていました。マテバシイでも食べるんだとわかりました。今年のクマは飢えすぎて、殻も食べてしまったんだろうと思いました。
ドングリがなくなったので、また米ぬかにもどしました。米ぬかばかりだとかわいそうなので、米ぬかの中にカキの実を3つぐらい忍ばせてやりました。12月になって、やがて雪が降りだしました。ある日見に行くと、与えたエサがそのままになっていました。無事冬ごもりに入れたんだと思いました。私は去年1頭だけだったけどクマの命を助けたと実感しています。集落の人たちは、私がクマに餌を運んでいることを感づいていると思いますが、誰も役場に届けないでいてくれました。地元の人たちは、かわいそうに、クマは餌がないんだという感情を持っていますから。
しかし、行政の人たちは違います。行政は、クマが出たときくと、罠かけて殺すことしか考えていません。。早くことを片付けて終わりたいだけです。行政で、クマは餌がない、山に実のなる木を植えて餌場を作ってやろうというようなことを考える人は一人もいません。柿の木を伐れ、実をもいで捨てろ。行政が言うのはこれだけ。クマの絶滅を止めようと思えば、この行政を何とかしなければならないと思います。
2年前からイノシシが出だしました。みんな、田畑に電気柵を張ったり、いろいろと防除し始めています。大変です。サルは前から多い。シカはまだだけど、これでシカが登場したらどうなるのかと思います。過疎化高齢化した集落に子供たちが帰ってくることはありません。私たちの集落はこれからどうなっていくんでしょうか。
1年間に生息推定数の1割以上を殺すと、絶滅に向かうと言われています。
この2年間に殺されたクマ数を、wクリックして見てください。
実際はもっと多く殺されていると思われます。
小泉大臣にすぐ動いてもらわないとだめですね。
推定生息数の真偽は不明です。
熊森から
東北の人たちが、いくら何でもここまでクマを殺したらクマが絶滅するのではないかと感じていることが伝わってきました。生きとし生けるものへの畏敬の念こそ、日本人の自然観であり、保水力抜群の豊かな水源の森を残すことに成功した奇跡の日本文明なのです。
それが今、行政付き研究者や行政が、生き物の命をものとしてしか見ない西洋の自然観を地域に持ち込んで、日本を変えてしまおうとしていると感じます。熊森は、危機感でいっぱいです。このような人間中心主義は種の大量絶滅をもたらし、人類をも滅ぼします。
日本でクマの大駆除が可能になったのは、1999年に当時の環境庁が、西洋手法のワイルドライフマネジメント(個体数調整捕殺)を導入したからです。行政から予算を付けてもらった研究者が、クマが増えていると言えば、何の被害も出していないクマでもどんどん殺せるようになるのです。
当時、熊森は、こんなものを導入したらクマが滅びるとして、この「鳥獣保護法改正案」を廃案にするために国会に一番乗りして国会議員に何度もレクチャーし、命を懸けても阻止しようと闘いました。日本野鳥の会、日本自然保護協会、WWFジャパン、アライブなど、日本中の自然保護団体、動物愛護団体が一致団結してみんなで個体数調整捕殺の導入に猛反対しました。賛成したのは、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦氏らです。
西洋のクママネジメントというのは、東ヨーロッパでは狭い自然界にクマを高密度で放し、給餌して増やし、ハンターに高額料金でハンティングさせてやってもうけ、その収益でクマの餌を買うやり方です。西ヨーロッパはわずかな孤立個体群しかもういない。
(参照「世界のシカ・クマ保護管理の現状と北海道の将来方向」1990年野生動物情報センター発行)
現在、日本は、この西洋型共存を最良として真似しようとしています。しかし、このような共存より、祖先の棲み分け共存の方がずっと優れています。残念ながら、政治的な圧力が働き、この法案は成立してしまい、今日に至っています。熊森は、個体数調整捕殺の導入の撤回をめざし、とりあえず、狩猟と有害駆除以外はクマを殺せないというところまで制度を戻そうと考えています。
クマが滅びる前に、何度でも言う。環境省は、個体数調整捕殺の導入を撤回せよ。
熊森はこれまで都道府県の鳥獣行政担当者に会報を送り続けてきましたが、熊森をもっと大きくして、1000以上ある市町村の鳥獣行政担当者にも会報を送ることができるようになりたいです。戦後わたしたち人間が破壊した奥山自然林を早急に再生させて、大型野生動物たちとの棲み分け復活をめざすよう、行政担当者のみなさんに伝えて歩かねばならないと思いました。
みなさん、ぜひ熊森会員を増やして、熊森をもっと大きくしてください!行政はクマが増えているという行政付き研究者たちの言うことばかり信じていますが、山の餌がなくなっているのに、増えられる要素など何もありません。クマの絶滅を止められなくなってきたと熊森は感じてあせっています。
現在、熊森のHPが故障しており、回復のめどが立っていません。
当面の簡易版ホームページを作りました。しばらくはこちらをご利用ください。
ご参加ください! くまもり オンラインシンポジウム
- 2021-02-19 (金)
- くまもりNEWS
「クマとの共存のために、今、何が必要か」 3月6日 15時~
2019年、2020年とクマの捕殺数は2年連続で過去最多となりました。出没や人身事故は連日ニュースになりましたが、クマの生息地の奥山が急速に劣化していることが背景にあることは報道されません。
クマなどの大型野生動物のつくる森は私たちの水源の森です。現状を知り、手遅れになる前に、共存へ向けて動き出しませんか? 豊かな自然を守り、全ての生きものとの共存を願う方、ぜひ、お集まりください!
【日時】2021年3月6日(土) 15:00~17:00
【参加費 】無料 (定員100名)
Zoomウェビナーにてオンライン開催
【参加申し込み)】お名前、お住いの都道府県を記載の上、下記までメールをお送りください。
E-mail:event@kumamori.org
【プログラム】
(挨拶)「今、共存へ舵を切らなければ手遅れに」
質疑・意見交換 |
東北猟友会員の訴え 大駆除現場は違法だらけ クマが絶滅する 山にすぐ餌になる物を植えよ
クマ猟期最終日の2月15日、ネットでクマの保護団体を探して熊森協会を見つけたという猟歴25年の東北地方の猟友会員から、2時間に及ぶ長い告発電話が熊森本部にありました。以下に、彼の話をまとめます。
現場では皆殺し
自分は駆除隊の隊員だが、熊森に電話したのは、もうこれ以上、クマを駆除するのが嫌になったから。いくらなんでもひどすぎる。うちも農家だが、農作物を守るというのだったら、追い払うとか電気柵を張るとか、殺す前にまず人間としてしなければならないことがあるはず。そういうことは一切せず、クマが山から出てきたら、みんなで大騒ぎして即、箱罠やドラム缶檻をかける。クマはすぐかかる。去年は、殺しても殺してもクマが出て来た。だからといって、いくらなんでも殺し過ぎだ。日本人のしていること、おかしくないか。もう、クマが絶滅するぞ。
届け出があっただけでも、2年間にこれだけ膨大な数のクマが殺された。海外では考えられない。
(グラフは熊森資料:作成熊森協会)
ツキノワグマ捕殺数、5位まで (ダブルクリックで拡大してご覧になってください。)
1、福島県 2、秋田県 3、新潟県 4、山形県 5、群馬県
山にクマの餌がない
どうしてこんなに多くのクマが山から出てくるようになったのかというと、山に餌がないの一言に尽きる。東北はどんぐりの種類も少なく、昨年はブナ大凶作、ミズナラはナラ枯れで大量に枯れてしまっているから、豊凶発表など意味がない。実がなっていたのはクリだけだった。冬ごもり前の食い込み用の食料が山にないのだ。生き残るためには、クマは里に出てきて集落のカキやクリを食べるしかなかった。ハチも減っているから、虫媒花も実らない。
本当はもっと殺している
環境省に届けられた自分の県の有害駆除数を見て、本当はもっと多いのにと思った。届け出ない駆除が結構あるから。駆除したクマは土に埋めることになっているが、誰もそんなことはしない。解体してみんなで肉を分け合って持ち帰り、食べている。
違法だらけの現場
最近は山にシカやイノシシを獲るためのくくり罠が無数にかけられている。一番多くかかるのはイノシシ。罠に掛かったイノシシは逃げようとして大暴れする。そのうち、罠のワイヤーが関節にはまって、そこを強力ばねで締め上げるから、足先が壊死する。足先のないイノシシがいっぱい誕生している。
クマが誤捕獲されないよう、くくり罠12センチ規制は守っているが、真円12センチではない。横にはいくら長くてもいいとして緩和されているので、子グマはもちろん、成獣グマも結構かかってしまう。
法律では誤捕獲された野生動物は放獣するとなっているが、くくり罠に掛かった動物には、麻酔をかけない限り危なくて近寄れない。
クマを放獣できる人など県内に誰もいないから、誤捕獲されたらみんな黙って撃ち殺している。県内で1頭だって放獣された誤捕獲グマはいない。
キツネやタヌキも誤捕獲される。めんどくさいから、みんな撃ち殺している。誤捕獲放獣の法律なんか誰も守っていない。日本には監視人がいないし、行政も何も注意しないから、現場は違法だらけ。これが日本の実態だ。
(環境省や小泉大臣は、この現実を知らない。地元では野生動物を守ってやろうという声がだしづらい)
クマの餌場づくりを(山中編)
戦後、山にスギばかり植えた、あれ失敗だった。クマの餌が山にもうない。ブナは近年実を付けないし、ミズナラはナラ枯れで枯れている。山奥にクマのえさ場を造ってミズナラにかわる木を植えてやるべき。しかし、木の実は実るまでに何年もかかるので、去年クリを食べて生き残ったクマが今年もう殺されないようにするには、木だけでは間に合わない。今年、すぐ食料になる物を植えることが必要だ。
クマの餌場づくりを(山裾編)
山裾と集落の間には、クリやカキをびっしり植えて、クマが山から出て来ないようにすべき。人とクマの棲み分け境界をはっきりさせることが必要。
亡くなった父親の言葉
これまで猟で40頭ぐらいのクマを獲ってきた。でも、もう今年からはクマは獲らないと決めた。最近、亡くなった親父の言葉がやけに思い出される。親父は自分が猟をしていることを嫌がっていた。「せっかく山で喜んで遊んでいるクマやヤマドリをなぜ撃つのか」と、いつも言っていた。最近なんだか、親父の言っていたことが分かるようになってきた。
クマは怖い動物ではない
自分は元々山歩きが好きだった。ある時、猟をしないかと人に誘われて、猟師になった。ヤマドリでも撃ってやろうかと初めて山に入ったら、クマの足跡を見つけた。跡をつけて行ったら、穴の中にクマがいた。無抵抗のクマを撃ち殺した。子グマが穴の中にいたので、これも撃ち殺した。あの後、何頭もクマを撃ってきたけど、一番最初に撃ったあの親子グマのことが今もなぜか目に浮かぶ。
みんなはクマが出たら怖い怖いという。しかし、クマは、本当は怖い生き物ではない。すごく臆病。いくらクマが力が強いと言っても、人間の銃の前には勝ち目なんかない。完全に人間の勝ち。これまで何回も山の中でクマに会ってきた。自分はいつでもクマを撃つわけではない。1年に1~2頭。その年は、それでやめる。クマは、人間に会った時、撃たれるか撃たれないかとっさに運命がわかるようだ。今日はクマは撃たんと決めていると、自分に会っても何もしない。
キツネやタヌキは撃ったことがない。近くに稲荷神社があって、ここらではキツネは神様だから。
国民が力を合わせる
駆除現場は違法だらけだけど、行政は絶対動かん。みんな自分の保身しか考えてないからね。あの人たちはそういう人たち。誰がこの国を変えていくのか。自分たち国民しかない。国民みんなが力を合わせないとだめだ。でも、日本人は動かん。オリンピックの会長の問題のように、海外からバッシングしてもらわないと、日本人て自分たちでは何も変えていけないのかな。「クマを駆除するなんてなんと野蛮な、恥を知れ」と外国から言ってもらわないとだめなのかな。保護の声が全くあがらない国、日本。遅れ過ぎ。日本人は自然を守ろうと思わんのかな。
熊森から
個体数調整捕殺の導入を白紙撤回すべき
クマの駆除は、今や、例外県以外は大虐殺になっています。こんなことになったのは、学生たちの就職口を確保したかった当時の大学の動物学教授たちの主張を信じて、1999年に環境庁が鳥獣保護法を改訂して<個体数調整捕殺>を導入したからです。これによって被害が出ていなくても、<個体数調整>という名で、簡単に野生動物が殺せるようになりました。これを白紙撤回して、狩猟と有害駆除以外に野生動物は殺せないというところまでまず戻さなければ、絶滅は止められません。
くくり罠の使用禁止を!
トラばさみ同様、くくり罠はこの上もなく残虐な猟具です。最近、3回くくり罠に掛かったらしく、足が一本になってしまったニホンカモシカを見たという情報が入りました。(見てしまったら、くまもりは余りの哀れさに号泣してしまいそうです)
熊森はこれまで、くくり罠の使用禁止を求めて運動してきました。くくり罠が廃止されるまで、訴え続けていきます。このような残虐な殺し方を認めていたら、人間がダメになってしまうと思うのです。
増えたり減ったりが自然
毎年、研究者が行政から多額の予算を取って野生動物の生息数を推定計算しています。目撃数や捕獲数などを行政が伝えれば、研究者たちは一回も山に入らなくても生息推定数が計算できるそうです。群れで動くサル以外は、こうやって出された生息数が、どこまで信頼できる数なのか誰にもわかりません。増えているか減っているか、数ばかりが議論の対象になっています。研究者が増加傾向にあるというので、今、どこでもクマ駆除を促進しているのです。研究者の責任は誠に大きいです。野生動物の捕殺がゲームになっています。奥山生息地を人間に破壊されたため、生きるために仕方なく人前に出てきただけで、増加傾向にあるように見えるが実は絶滅寸前だったということも十分考えられます。
野生鳥獣の数は、増えたり減ったりするのが自然で、山から出て来なければ、増減など実はどうでもいいのです。(個体数調整のための捕殺利権に群がっている人達にとっては、増減が大事です)
奥山再生国家プロジェクトを
戦後、人間が動物が棲めないまでに荒らしてしまった山を、もう一度人間が再生する義務があります。林野庁は至急、このための国家プロジェクトを提示すべきです。奥山の道路を閉鎖して人間が一歩下がり、野生動物たちに生息地を返す。祖先がやってきたことを復活すればいいだけのことです。
日本の野生動物たちは泣いている
こんな子供でもわかることをしないで、残虐な駆除を大暴走させている日本。国民の無関心さに、日本の野生動物たちはみんな泣いていることでしょう。
水源の森は野生動物たちが造っている
自然界からすっかり離れて暮らすようになってしまった現代人は、近い将来、山からの湧き水が消えたとき、はじめて慌てふためくのだと思います。その時初めて、他生物に畏敬の念を持ち、かれらと共存しなければ人間も生き残れないという自然界のしくみに気が付くのでしょうか。あまりにも愚か過ぎます。
猟師と熊森の共通点
熊森協会の初代副会長は兵庫県の猟師でした。熊森と話が合う猟師が意外と多くいます。共通点は、どちらも、現場を見ていることです。狩猟の狩とは、獣へんに守ると書きます。本当の猟師は、熊森の奥山えさ場復元に協力していただけるものと信じます。優しい文明が一番優れており、持続可能なのです。(完)
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- 2021-02-16 (火)
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