くまもりHOMEへ

ホーム > くまもりNEWS

カテゴリー「くまもりNEWS」の記事一覧

中檻を外し、プールも解禁 大阪府元野生グマ「とよ」しばらく両後肢の様子を見ていきます

昨年夏、突如、原因不明で両後肢マヒとなったとよ。

一時は再起不能かと思われるほど大変でしたが、お世話隊の熱い介護を受けて、1か月後、再び四つ足で立てるようになりました。

しかし、足取りはおぼつかなく、獣医さんからは、運動制限のアドバイスをいただきました。そこで、獣舎内に中檻を設置して、鉄格子に登ったり、プールに入ったりできないようにしてきました。

 

今年の冬ごもり明けから、毎週お世話日に来てくださるボランティアさんたちや日々エサやりに行ってくださるパートさんたちと皆でとよの後ろ足の動きを観察してきました。おかげさまで、まだ完全ではありませんが、ふだん両後肢を使って歩けるようになっています。

 

プールの中に階段を造る、スロープを付けるなど、とよの足に合わせたプールの改造計画を、これまで何パターンも考えてきましたが、わざわざ改造しなくても、今の足ではもう自力でプールに出入りできるのではないかという結論となりました。

一刻も早く大好きなプールに入れてあげたい。

 

その機会を、ずっと考えてきました。5月31日、小雨の中、ついに狭い中檻を外してやり、10か月ぶりに大好きなプールも入ることができるようになりました。プールの内側にあく抜きブロックを積んで階段を造っただけで無改造です。

 

 

 

 

 

 

 

 

中檻外し、作業開始

 

中檻を外し終わる

 

広くなった獣舎にとよを出しました。

とよがどんなに喜び感激するだろうかと思い、みんなでその瞬間を撮ろうと、カメラとビデオを構えました。

しかし、寝室から出てきたとよは、ミズを食べることに夢中で、獣舎が広くなったことや、プールにきれいな水が張られていることを見ようともしません。「あれえっ」。一同期待外れでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミズを食べるのに夢中のとよ

 

とよが、プールを見ないようにして避けているのが、ありありと伝わってきます。

昨年、両後肢が悪かった時、大好きなプールに入ったものの上がることができなくなって、もがき続けた怖い経験を思い出したのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

お世話隊のボランティアたちに、自ら顔を近づけて嬉しそうに寄っていくとよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お世話隊の皆さん、いつもありがとうございます。

 

とうとうこの日は、とよは広くなった運動場を見てクンクンにおいをかいでまわっただけで、プールにも入らず、獣舎の鉄格子にも登りませんでした。

帰り際に、副住職さんに報告すると、「なに、今日は気温が低いからねえ。気温が上がってきたら入るよ」と、全く気にされていない感じでした。お世話隊の私たちは心配し過ぎなのかもしれません。しばらくは、この環境でのとよの足の様子を見ていきたいと思います。(完)

 

今どきの新聞 誤報を指摘されたら「ツキノワグマ 大人の雄は『肉食』」記事の問題 中間報告

(その1)5月27日、ある新聞社の夕刊全国版に、明らかに学術的に間違った記事見出しが掲載されました。すぐに記者さんに教えてあげなくてはと、翌日、新聞社本社に電話をしました。

 

かいつまんで話すと、電話に出られた方の答えは、

「記者に電話をつなぐことはしておりません。記事に関するご意見は、読者窓口しか受け付けません」という杓子定規な答えで、とりつくしまもありません。誤報を出してしまったショックや慌てふためきは何もないようです。

 

執筆した記者にとっては、28年間クマ問題に取り組んできた熊森とつながれるまたとない良い機会だと思うのですが、これでは記者の取材網も広がらず、記者の成長も見込めないのではないでしょうか。

 

仕方なく、読者窓口に電話をしましたが、時間を変えて6回かけてもいつも話し中でかかりません。

読者窓口に何台の電話を設置されているのか知りませんが、読者の声など聞く気はないということでしょうか。終了時間直前にやっとかかりました。

「伝えておきます」との定型対応のみです。

「伝えておくだけではなく、訂正記事をだしてほしいのですが」

「伝えておきます」

ウ~ン、今はこんなことになっているのか。

これでは国民の新聞離れが一層進むと思いました。

第一、真実を伝える新聞の使命を投げ捨ててしまっています。

 

問題記事は以下です。クリックで大きくなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(その2)ツキノワグマもヒグマも、人間同様、雑食動物です。

人間によって長い間、奥山に閉じ込められてきたクマは、まるでベジタリアンの様な食性になってしまいました。学術書には98%草食で、残り2%は昆虫食となっています。以前、川にダムがないころは、奥山まで遡上してきたサケにありつけたクマも多かったでしょうが、今はそのようなことはほとんど望めません。

 

平成になって、奥山でシカの餓死個体や駆除個体が多く見られるようになってきました。クマは雑食ですから、死肉があれば食べます。そんな中、地形的に特殊な地域である栃木県足尾で、生きたシカを襲って食べたクマが出現しました。

 

研究者がどのような統計の取り方をされたのか不明ですが、現在、この地域のクマ成獣オスの15%の食料がシカ肉であったとしても、だからと言って、「肉食」と決めつけるのは大きな誤りです。あくまでクマは大きく草食に偏った雑食動物です。

 

若い研究者の発表がどのようなものであったかも気になって、大学に電話しました。事務職員に、いくら遅くなってもいいので、特任助教という先生に電話をお願いしたいと強くお願いしましたが、何日待ってもいまだに電話がありません。

 

この国のマスコミと研究者の在り方に、ぞっとしてきました。これでは真理の追究、真実の報道がなされない国になってしまいます。人間だれしもミスがありますが、指摘されたときに、真摯に聞く、改めて見直す、間違っていたとわかったら訂正する。こんな当たり前の以前できていたことができない国になってきているんですかね。

 

仕方がないので、新聞社の東京本社編集局長あてに、手紙を出し、以下の2点を要望しました。

 

1、誤った記事見出しの訂正。

訂正していただかないと、クマなんかこの国から殺し尽くしてしまえという誤った世論をいっそう形成してしまう有害性のある見出しです。

訂正見出し例:「足尾の雄成獣グマの食性の15%はシカ肉」

 

2、電話1本でいいので、クマの写真無断使用に対する謝罪。

この記事にあるクマの写真は、熊森協会が5年前から大阪府で保護飼育している元野生のツキノワグマのオスで推定10歳のとよ君です。山菜、果物、ドングリなどが主食で、昆虫の代わりに時々小魚を与えていますが、ほぼ草食に偏った雑食です。今も元気で大変穏やかに暮らしています。間違った肉食記事に無断使用されて、お世話隊のボランティア一同大変ショックを受けています。

 

熊森は、新聞社や記者への個人攻撃は一切考えておりませんので、固有名詞は外しました。真実を伝えていただきたいだけです。

新聞社編集局長からのお返事が来たら、ブログ読者の皆様に再度お伝えします。(完)

 

ウワバミソウがホント好きだね とよ君

5月24日、庭に実った大量のクワの実を、大きな容器いっぱいに採って、とよに会いに行きました。

クワの実、サクランボ、バラの花、あっという間に与えた餌を平らげてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

この後、お世話隊の0さんが買って送ってくださった、段ボールいっぱいのウワバミソウ(別名ミズ:イラクサ科の山菜)を、獣舎に広げて与えてみました。

 

 

とよが、どんなにウワバミソウが好きかわかりました。完食!

カラムシというイラクサ科の山菜も大好きだと、お世話隊に教えていただきました。

この時期は、とよはリンゴを与えてもあまり喜びません。

クマは、時期によって食べたいものが変化していくようです。

京都府ツキノワグマ、昨年過去最多170頭捕殺、熊森のコメントが京都新聞に掲載される

熊森本部と熊森京都府支部は、昨年9月に京都府庁を訪れ、京都府がそれまでの保護計画を一転させ、兵庫県の間違ったクマ対応をまねて、2017年より開始した非人道的なクマの捕殺(まだクマが出てもいない春の時点からクマ捕殺許可を出し、集落周辺の箱罠・くくり罠にかかったクマは、シカ・イノシシ罠への誤捕獲も含めてすべて殺処分)を中止するように要望しました。

詳細は、熊森NEWS 2019.11.10参照

 

しかし、京都府は全く聞き入れず、昨年度、過去最多となる170頭ものクマを大量駆除しました。

 

いくらなんでも殺し過ぎではないかと疑問に思われた新聞記者から、熊森本部に電話取材が入りました。

 

以下は、5月29日の京都新聞記事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<以下が、記事の内容>

京都府が殺処分したツキノワグマが2019年度、過去最多の170頭に上った。府北部ではクマの出没が相次いでおり、住民は殺処分の件数を評価する一方、自然保護団体は「捕り過ぎで絶滅の恐れがある」と批判している。

 

 府によると、ツキノワグマは府レッドデータブックで絶滅寸前種とされ、生息数は由良川西側の丹後個体群が約900頭、東側の丹波個体群が約500頭と推定されている。

 170頭の内訳は京丹後市42頭、舞鶴市39頭、宮津市22頭、綾部市16頭、福知山市15頭、京丹波町12頭、南丹市9頭など。丹波個体群では、府の捕獲上限40頭を上回る83頭を専門家の意見を聞いた上で殺処分した。目撃件数は1460件で、府農村振興課は「ナラなどの実が凶作で出没が多かった。生息数や民家周辺での出没が増えており、人身事故を防ぐために捕獲している」と説明する。

 府は02年度からクマの保護を目的に狩猟を禁止し、従来はシカやイノシシのおりに捕まったクマは奥山に放つ学習放獣で対応してきたが、17年度以降は人的被害を防ぐため、集落近くで捕獲されたクマは殺処分を可能とし、17年度86頭、18年度103頭の殺処分した。

 舞鶴市の大浦半島は出没が多く、住民団体が府にクマ対策を要望。同市河辺中の会社員男性(64)は「家の中にクマが入ってきた話も聞く。出没が過疎化に拍車をかけている」と語り、同市佐波賀の農業女性(81)は「クマが家の柿の木に来て、家族が夜に軒下にいるのを何度も見た。危害を加えられるかもしれず、殺処分は仕方がない」と話す。

 一方で府によると、17年度以降、府内でクマの人身事故は発生していないという。

 

保護団体「日本熊森協会」(兵庫県西宮市)の水見竜哉研究員は「生息数は正確な数字ではなく、人間が一気に捕獲すると秩序が崩れて絶滅に向かう恐れがある」と懸念する。

クマが本来住む奥山がナラ枯れなどで生息できない環境となり、シカやイノシシをおりにおびき寄せる米ぬかなどの餌が出没を増やしている可能性も指摘。「奥山の状況を調べた上で捕獲を見直すべき。クマは人間を恐れており、音の鳴るものを身につけたり、民家近くの柿の木を切り、クマが潜みやすい茂みを刈ったりする対策も必要」と説明する。

 

熊森から

クマ生息地の奥山を地道に23年間調べ続けてきた熊森協会の声を取り上げてくださった記者さんに、心から感謝申し上げます。

 

先日、京都府に隣接する兵庫県豊岡市の山を調査したところ、新たなクマの痕跡が激減しており、ぞっとしました。京都府や兵庫県がクマを大量駆除しているからかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稜線の向こうが京都府のスギ人工林、手前は熊森がかつて植林した広葉樹

 

奥山を広葉樹林に戻したり人間が立ち入らないようにしたりして、クマたちに生息地を返してやることもせず、人間に生息地を破壊され、空腹のあまりエサを求めて出てきたクマをこのまま捕り続ければ、クマは絶滅に向かいます。日本が批准している生物多様性条約にも違反しています。

 

 

記事を読んだ、熊森京都府支部員からのコメントです。

Cさん:思ったよりも大きく取り上げられていました。京都府でクマによる人身事故が無くなったのは、クマを殺し過ぎたからではないでしょうか。

Kさん:地域の方の中にも、クマを殺すのはおかしいと思っている方たちがいます。クマが奥山に帰れるよう、生息地を復元したいです。

 

京都府民の力で、どうか捕殺一辺倒の京都府のクマ対応を方向転換させてください。

 

京都府農村振興課

住所:〒602-8041 京都府京都市上京区 下立売通新町西入藪之内町

TEL:075-414-5036 FAX:075-414-5039

mail:noson@pref.kyoto.lg.jp

 

 

北海道古平町の山菜採り男性行方不明事件で、ヒグマ研究50年の熊森顧問門崎允昭氏がコメント

以下、北海道新聞より

山菜採りの71歳男性、所持品残し不明 クマに襲われたか 古平

【古平】5月15日午後4時45分ごろ、後志管内古平町浜町の無職男性(71)が山菜採りに出かけたまま帰宅しないと、妻から余市署に通報があった。

 同署などによると、男性は15日昼前に「タケノコを採りに行く」と妻に書き置きを残し、1人で乗用車で出かけたとみられる。通報を受け、同署や消防、猟友会などが16日、約50人態勢で自宅近くの山中を捜索。酒井さんの携帯電話や長靴、リュックサックが見つかったが、本人は見つからず、午後5時に捜索を終了した。

 同署などは、現場の状況から、ヒグマに襲われた可能性もあるとみている。

事件現場近くの様子(2020.5.19 NHKNEWS web より)

 

事件現場で罠の見回りをする猟師と、ヒグマ捕獲用箱罠(古平町公式Facebookより引用)

 

古平町の担当者は、北海道立総合研究機構エネルギー・環境・地質研究所の間野勉専門研究主幹の「地域の人が気軽に裏庭のように行く集落の目と鼻の先に危険が潜んでいる。同じクマが2年続けて襲ったこともあり、人間をおそれないクマも現れている。今後も人を襲うおそれがあり、問題のクマを早く駆除する必要がある」というアドバイスをもとに、現場への立ち入りを禁止するとともに、ヒグマを捕殺するための罠を山中に11月まで3基設置しており、かかったら殺処分するそうです。

 

北海道のヒグマの生態とクマの人身事故のメカニズムについて、50年間研究されてきた、北海道野生動物研究所所長の門崎允昭先生は、今回の事件について以下のようにコメントされています。

 

羆が人を襲った場合の羆の行動特性

1、羆が人を襲った現場には、必ず最低でも半径数㍍の範囲に人と羆が抗争した痕が残ります。

2、人が羆に襲われて、人が羆から逃れて走り逃げた場合にも、必ず、走り逃げた、はっきりとした痕が残ります。

3、羆が人を襲い、人を倒し、羆が己が安心し得る場所に口で衣服や人体を咥えて、移動させる

場合がありますが、その場合は、最遠で90mでした。ですから半径90mの範囲を探すと、人体を見つけ得る事ができます。鹿の死体を300m移動させていた事例が有りますから、半径300mの範囲を、探すのが、最善です。遺体を羆が食べ尽くしても、衣服は残ります。頭部を必ず食べ残します。

4、半径300mの範囲を精査しても被害者の死体が見つからない場合には、被害者が(羆が原因とした場合)発見し得ない場合には、遺留品が有った場所ないしその付近で羆に襲われたとは断じ得ません。

5、檻罠を3個も仕掛けて羆を獲り殺そうという発想を持つこと事態、研究者にあるまじき事です。

 

熊森から

北海道のヒグマは自分の生息地かそうでないかをきちんと認識しており、人の住む町に出てきた場合、人間を襲うことは皆無です。

しかし、自分の生息地である森に人が入ってきた場合、何か不都合があったのか、年平均約1件の人身事故を発生させています。(たった1件!と意外に思われる方が多いと思いますが、事実です)ヒグマ猟のハンターに対する人身事故は、年平均0.5件です。

 

怖がりのツキノワグマと違い、ヒグマはまず人身事故を起こさない動物です。にもかかわらず、恐ろしい動物として、北海道で手あたり次第人間に殺されているのが現実です。2019年度捕殺されたヒグマは、711頭にものぼりました。

 

ヒグマの人身事故に関する門崎先生の知見は、さすが徹底した現場調査を続けられてきただけあって、すごいと思います。

 

古平町の担当者によると、半径100mをしっかり調べをてみたが、人体が引きずられた跡や衣服などなかったということです。ただし、長靴にクマが噛んだような跡があり血が付いていたり、現場近くにクマの糞と思われるものがあったそうです。この事件はミステリーです。

 

不明男性の捜索は1週間で終わってしまいました。

 

この場所は、ヒグマの国です。当然、ヒグマによる人身事故は考えられますが、1週間捜索して何も発見できなかったということから、別のことも考えられます。少なくとも、この場所で事故が起きたわけではないようです。

 

今回、熊森が問題にしたいのは、古平町がこの場所に誘引物を入れた捕獲罠を長期間設置していることです。またしても無実のヒグマを捕獲して殺人の罪を着せ、殺そうというのでしょうか。許されないことだと熊森は思います。

 

みなさん、捕獲檻を撤去していただけるよう、古平町にお願いしませんか。

 

古平町産業課農林係 住所:〒046-0121 北海道古平郡古平町大字浜町40−4

TEL:0135-42-2181 メール:こちらをクリック→古平町お問い合わせフォーム

全国各地で投資目当ての外資メガソーラーが日本の山野を食い物に 奈良県平群町建設予定地視察

兵庫県の緊急事態宣言が解除された翌日の2020年5月22日。森山まり子名誉会長が出かけて行ったのは、「たたみごも平群の山」と『古事記』や『日本書紀』、『万葉集』にもうたわれた奈良県生駒市平群町です。

 

今、この町で、アメリカに本社がある投資会社によって、平群の起伏に富んだ山野を48ヘクタールも切り崩し、谷を埋め、一枚の巨大な斜面にして、太陽光発電パネル6万枚のメガソーラーを作る計画が持ち上がっています。

 

何とかこの計画を阻止しようと、今、地元熊森会員らが「平群メガソーラーを考える会」を結成して、反対運動を繰り広げています。少しでも力になれないかと森山名誉会長が出かけて行った次第です。

 

熊森は太陽光発電を否定しているわけではありません。しかし、山野を大がかりに切り崩しての太陽光発電は絶対に認められません。もう我が国は十二分に山野を破壊してしまいました。今残されている山野はいずれも大変貴重であり、そこは人間によって肥沃な平地から追い立てられた様々な生き物たちが、最後の命を輝かせている場所なのです。

しかも、山野の複雑な地形にはすべて自然界としての意味があるのです。それらを無視した造成では、野生生物だけではなく必ず人間にもしっぺ返しが来ます。山崩れなど、どれだけの人災が起きたら人間は目が覚めるのでしょうか。

 

 

赤い線で囲まれている山林部分が開発予定地です

 

近鉄生駒線終点の東山駅で落ち合い、まず最初に開発されるという森を、考える会の皆さんに案内していただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開発予定地の山林です

 

近くには万葉集に登場する竜田川が流れ、古墳時代、奈良時代など、いにしえの貴重な遺跡をあちこちに残す由緒ある土地です。人工林の率が極めて高い奈良県にあって、なぜか平群町は、人工林率20%程度。ほとんどが自然林なのです。生い茂るアベマキやコナラの巨木群がフラワーロードという大きな農道沿いから見えます。桐の花がきれいに咲いていました。シカがいないのでしょうか。下草もびっしり繁っています。鳥の声があちこちから聞こえてきます。

コンクリートジャングルの中で日々暮らしている都会の住民としては、平群の自然豊かな山林は全て歴史的景観として傷つけず保存しておきたくなります。

 

目先の金もうけにしか関心のないような外資系企業に、なぜ、私たちの国土を売り渡さなければならないのかと憤りを覚えます。残念ながら、今の所、規制する法律はありません。すでに平群の山野は、何カ所かが残土処理場にされており、農道には埋め立てなどのためトラックが行きかっていました。すべて、目先のお金目当てなのです。胸が痛みました。

 

この山野の谷を埋め立てるとどうなるのか。大雨で崩れてしまうことは小学生でもわかることです。しかし、開発業者は、小さな調整池を三つ作ることで安全性は確保されると主張しているそうです。木々や下草がしっかりと根を張り、山が水を吸収する健全な森以上に確かな防災はないのですが。

 

実際の開発にあたる東京の子会社を調べると、マンションの一室が事務所で、その部屋には他にも650社が名を連ねているそうで、実態が何かさっぱり見えないペーパーカンパニーのようです。これらの会社の資本金は1円とか10円とか多くても10万円だそうです。もし開発後、災害が起きたり何か不都合なことがあっても、弁償する能力があるのでしょうか。どうして国は、このような実態が不明確な会社に、貴重な自然を破壊し、地域に災害をもたらす恐れのある巨大開発を認めるのでしょうか。

 

「平群メガソーラーを考える会」のブログ

 

視察後、事務所で、考える会の5人の方々と長時間懇談しました。

 

最初に森山名誉会長が「本気の3人がいたらどんな運動も勝てる。日本の自然が守れないのは、大人がみんな弱虫だから」という恩師の言葉を紹介しました。その後、何らかを参考にしていただきたいとして、行政も裁判所も開発を止めることはできないなかで、どうやって住民運動で無茶な開発を止めたか、体験談を話しました。

考える会の皆さんからは、行政と協定書を交わしたはずの開発企業がいつの間にか消え、別の開発企業に変わっていく、住民説明会に参加したが、業者が質問に明確に答えないなど、様々な不安が出されました。

うかがった話の中で一つ、希望のある話が聞けました。

岩手県遠野市の条例です。遠野市はすでに山野を削ってメガソーラーが建設されてしまいましたが、その後、大雨で山から濁流が噴き出すなどの被害が出るに及んで、1ヘクタール以上のメガソーラーを作らないという市独自の条例を制定したのです。

この遠野市の条例を、日本全国に広めなければならないと思いました。

 

遠野市広報(濁水写真)

 

 

 

 

 

 

 

今回お会いした皆さんは、熊森の小冊子「クマともりとひと」を読んで「とても感動しました」「知り合いや子どもに読ませたい」とおっしゃってくれていました。

いろんな人生がありますが、次世代に責任を持ち誠実に生きようとする人間なら、最終的にはみんな同じところに集まってくるのではないかと思いました。

社会を動かし、世の中を変えるには会員数が必要です。ぜひ皆さんに、次々と生き物や森を守っていっているくまもりの会員になっていただきたいです。

(くまもりへの入会はこちらから)※年会費1000円から入会できます。

 

筆者は、新入職員として初めてこうした集まりに同行しました。

思ったことを以下に書きます。

①住民として、災害が起きた後の補償を企業に求めるのではなく、災害が起きると予測される開発を企業に絶対にさせないことが大切。濁流にのまれた家や命は、たとえ大金を積まれたところで、元に戻るものではありません。

②人間が手を入れ続けないと山林が荒れるという誤解を振り払う必要があります。考える会の人たちの中にも「自分たちも高齢になってきたので、山林を維持できなくなるのでは」という不安を持っておられる方がいました。人間が手を入れ続けなければ荒れるのは、人工林です。スギやヒノキの単相林や、昔の里山のように人間が作り上げたマツタケ山やクヌギ・コナラ・などの落葉広葉樹は、確かに人間が手を入れ続けなければ保てません。しかし、放っておけば一時期バランスを崩したとしても、その土地の気候風土にあった健全な森に移行していき安定します。

人間が手を入れて荒れる自然はあっても、人間が放っておいて荒れる自然などありません。

もう今は少なくなりましたが、未開の地を見ていただければ一目瞭然です。

 

平群のメガソーラーが、住民の力で白紙撤回されるよう心から祈ります。

これまで熊森は、尾根筋の風力発電問題に取り組んできましたが、今後は、自然保護団体として、山野を削るメガソーラー問題にも取り組んでいきます。

緊急事態宣言解除を受けて、よりパワフルに活動していきます

いつも応援いただきありがとうございます。

新型コロナウィルスの感染拡大と緊急事態宣言に伴う社会、経済の混乱の中、大変苦しい思いをされている方々がたくさんおられるのではないかと心配をしています。

この間、熊森もテレワーク中心に切り替えざるを得ませんでしたが、活動を継続できたのは、ひとえに支えていただいている会員のみなさまのおかげです。改めて心からの感謝を申し上げます。

 

新型コロナウィルスにより、自然環境を破壊し、貧富の差を助長してきたグローバル化する世界の欠陥が浮き彫りになりました。

人がもっともっと自然や他生物に謙虚になり、彼らと共存できる、地域に根差した持続可能な社会をつくらなければならないという、日本熊森協会の活動は、今後いっそう重要になってくるはずです。

 

まだまだ感染対策が必要なときですが、感染防止を図りながら、①野外での自然保護活動、②感染対策をとった少人数での集まり、③インターネットを使ったWeb上の集まりなどに力を入れていきます。

 

1人1人の行動が社会を変えていく力となることはこれからも変わりません。

全国のみなさまとともに、自然保護を進めていけるよう活動に工夫をしたいと思います。ぜひ、できる形で、日本熊森協会の活動にご参加ください。

 

会長 室谷 悠子

 

◆活動報告会◆

全国大会ができなかったので、活動報告会を開きます。全国のみなさんにも、参加いただけるようにインターネット報告会の開催にもチャレンジします。詳細は、近日中にご連絡します。

7月5日(日) 14時~16時 芦屋市民センター本館401室

7月11日(土) 13時30分~ Zoomでのインターネット報告会

 

◆クマの乱獲の規制を求める署名◆

緊急事態宣言下でもたくさんの方にご協力いただき、現在、署名数はネットと紙の署名合わせて3000筆弱です。まだまだたくさんの方のご賛同が必要です。9月末までに2万人を目標に頑張りたいと思います。ぜひ、ご協力ください。

 

 

【署名用紙はこちらから】

http://kumamori.org/files/1515/8590/4188/20200403175627001.pdf

 

【ネット署名はこちらから】

http://chng.it/yS4f8FF2

 

【クマ署名プロジェクトチーム インターネット会議】

6月6日(土)13時30分~15時まで

署名をたくさん集めるためプロジェクトチームのZoomでのインターネット会議を開催します。スマホ、パソコンで全国から参加できます。参加を希望される方は本部までご連絡ください。

 

◆最新情報はブログ・Facebookで◆

クマのこと、森のこと、日々の活動を随時発信しています。シェアして、活動を広めていただくことも応援になります。

【ブログ】 http://kumamori.org/news/

【Facebook】https://www.facebook.com/JapanBearForestSociety/

 

◆小冊子「クマともりとひと」売れています◆

2007年1月の刊行以来54万部を発行してきた1冊100円の小冊子の売れ行きが好調です。

最近も有名なブログで小冊子をとりあげていただいたこともあり、本部に問い合わせや注文が相次ぎ、たいへん好評を集めています。

社会を動かすにはさらに多くの会員数が必要です。身近なお知り合いにぜひ小冊子を配っていただき、それぞれのみなさんが1年に1人でも2人でも会員を増やしていけるとうれしいです。

http://kumamori.org/subcategory/books/booklist/moriyama-kuma/

 

5月26日動物の餌場づくり(兵庫県豊岡市)

緊急事態宣言が解除されて初めての野外活動。雨の中、本部スタッフ4人が苗木の植樹や 、鹿よけ柵の補修にあたりました。

5月22日奈良県平群メガソーラー建設予定地視察

富山市の事故例から:ツキノワグマによる人身事故を減らす方法

富山県で、クマによる人身事故が発生しました。

お怪我をされたお二人の方に、心からお見舞い申し上げます。

それにしても、どうして人身事故が発生してしまったのでしょうか。

このクマを生かして山に返してやることはできなかったのでしょうか。

 

<以下、報道から>

 

警察や市によると、5月17日(日)朝8時28分に「高速道路ののり面にある繁みに1頭のクマがいる」という目撃情報が入りました。

 

午前9時25分ごろ、同市石田の無職、Kさん(92)が自宅の家庭菜園で作業していたところ、クマに遭遇。驚いて転倒し、左脚の骨を折りました。約5分後に、近くの畑で農作業をしていた同市小杉の飲食店経営、Iさん(84)がクマに右腕と右脚をかまれました。2人とも県立中央病院に運ばれましたが、命に別条はありませんでした。

 

午後1時15分、クマは民家の庭に逃げ込んだところを警察官立ち合いの元、猟師が銃で射殺しました。若いメスグマでした。

 

現場は北陸自動車道の南側で、富山地方鉄道上滝線の布市駅に近く、周辺には住宅地があります。

 

聞き取り、メディア情報より熊森作成

 

クマを追う、現場関係者 北日本放放送2020.5.17より

 

熊森から

富山市の担当者に電話で聞き取ったところ、現場周辺にはクマを引き寄せるものは何もなく、どうやってそこまでクマが来たのか、経路もわからないということでした。胃の内容物は草だったそうです。

 

熊森としては、現場近くの地理的特徴から、このクマは人目に付かない時間帯に、河川敷に沿って草を食べながら山から出てきたのだろうと思います。その後、山に帰りそびれたクマは川の繁みを伝って移動していたのではないでしょうか。その際、何らかのきっかけがあって(障壁があった、あるいは人を避けたなど。ちなみに現場の近くにある富山空港は、神通川の河川敷が滑走路になっています)北陸道ののり面に出てしまったようです。一般に、ツキノワグマは、人をとても恐れています。今回のメスグマも。人に見つかって恐怖におののいたと想像できます。

 

目撃情報を得て、日曜返上で、市担当者、県担当者、猟友会、警察など皆さんが現地に駆け付けられ、クマの捜索に当たられたそうですが、クマは見つからなかったそうです。クマは、これらの人間の動きを息を潜めてそっと見ていた可能性があります。

 

捜索中も、一般市民から、クマを見かけたという情報が次々と入り続けていたそうです。

多くの人間がクマを追いかける。多くの市民が屋外にいる。この状況が人身事故を誘発するのです。

何とか改善願いたいものです。

 

このクマは、人間から逃げようと走り回った結果、次々と人間に見つかるはめになり、もうどうしていいかわからず、パニックになってしまっていたのでしょう。

 

必死で逃げているときに、急に目の前に現れた人を攻撃して逃げきろうとするのは、人もクマも同じです。こうして、また、人身事故が発生してしまったのだと思われます。

 

先進的な海外では、このような場合、行政は住民に屋内退避を指示します。全員でクマをそっと見守って、クマが逃げて帰るまで待つと聞いています。「クマ1頭のために、人間活動が制御されるのはおかしい」という考えもあると思います。しかし、人身事故を起こさず、クマの命も守るためにはとても有効なやり方ではないでしょうか。

 

奥山生態系の保全・再生に取り組んでいる熊森は、日本最大のクマの保護団体でもあります。熊森として、いつも一番恐れているのは人身事故の発生です。

ひとたび人身事故が発生すれば、人も大変です。クマはその場で殺されてしまいます。

本来、平和愛好者であるはずのクマが、マスコミによって人を襲う恐ろしい動物のような誤ったイメージに、あおりたてられて、独り歩きしてしまっています。

どうして人身事故が発生したのか。事故が起こるたびに熊森は調べ、考えます。

 

人身事故を起こしたクマは、射殺されて当然という声もあると思います。しかし、今回のクマも、人身事故など起こしたくなかったと思います。

海外のように、クマが山に帰りましたという放送があるまで人間が全員家に入っていたら、人身事故は起きませんでした。警察や行政にも責任はあると考えます。

 

このクマにいつの時点で射殺決定が下りたのかはわかりませんが、富山市は緊急の場合のために、あらかじめ3頭のクマ駆除枠を取ってあるそうです。今回のクマはこの駆除枠を使って射殺したのではなく、警察官職務執行法によって射殺したそうです。

 

富山県は、県職員が麻酔銃でクマを捕獲する体制が整備されているということで、すばらしいと思います。この体制を使って、民家に逃げ込んだクマを捕獲して山に返してやれなかったのでしょうか。

 

クマが最後に植物で覆われた民家の庭に逃げ込んだのは、人間たちに追いかけられて、どこかに逃げ込みたい一心だったのだろうと思います。銃を構えた多くの猟友会員に囲まれて、このクマはもう人身事故を起こして逃げおおせる可能性は消えていたと思われます。

 

現場で対策に当たられたみなさんは、使命感を持って頑張られたと思いますが、初めてのミスで人間の所に白昼留まってしまったこのクマを麻酔銃で捕獲して山に返してやることもできたのではないでしょうか。他生物にも思いやりある優しい社会を作っていきたいものです。

 

P.S 熊森からの質問に対して、お忙しい中で隠すことなく丁寧に答えてくださった富山市の担当者に感謝します。

 

暑くなったね、とよにたらい

本日の最高気温は27℃。一気に、汗ばむ陽気となりました。

プールが大好きなとよは、なんと先日、暑さにたまりかねてか、水飲み用のステンレスバケツに、足を突っ込んでいたそうです。

 

 

 

 

 

 

 

そこで、プール改修が終わるまでの間、これで我慢してもらおうと、本日、昔洗濯に使っていた大きなたらいを持参しました。

 

 

 

 

 

 

 

大きなたらいと思ったのですが、とよの前では本当に小さく見えました。

 

 

 

 

 

 

 

右前足を入れたら、もう一杯です。

何とか水に触れたいトヨが、この後、どうしたか。動画で見てください。

 

 

両前足とお顔の半分下をつけたらもう限界。でも、楽しんでくれたようでした。

 

お寺やお世話隊の愛情をいっぱいに受けて、今ではとよは、人間を信頼しきって生きています。

久しぶりにとよに会って、しばらくお互いに見つめ合いました。

クマがこんなに穏やかでこんなに人の心をいやしてくれる動物だなんて。

テレビ局が撮影に来てほしいな。

 

家族連れが次々ととよ会いに来てくれました。

とよを見始めると、みなさんのお顔がみるみるゆるんでいきます。

みなさん、ニコニコ顔になって帰って行かれました。

とよの力、すごいね!

 

プール改修、急ぐね。(完)

 

 

NHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見て

以下、会員からのメールです。

 

昨晩のNHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見ました。

 

 

 

 

 

 

 

老漁師が大声でコラッとかこの野郎とか言ってヒグマを遠ざけながら漁をしていました。

見ていてヒグマと共存というより、私にはヒグマを虐待しているように見えました。

なぜなら、ヒグマは人が見えるところに来ただけで、大きな声で追い払われているのです。何も悪いことはしていません。

番組のなかで、ここまでヒグマと共存できているのは、この知床だけだというようなことを言っていましたが、そうではありません。

ロシアでは(場所は記憶していませんが)、猟師のすぐそばで何頭もの大きなヒグマが、漁師から捕った魚を分け与えてもらって食べている場所があります。

漁師たちもヒグマも、どちらも互いを恐れてはいませんでした。

しかし、この知床では漁師が捕った魚は1匹たりともヒグマには与えないと言っていました。

だから飢えてやせ細ったヒグマの親子は弱り果て、子熊は死んでしまいました。(多分あの母熊も死んでしまうでしょう)

そんな状態のどこが共存なのでしょう。

人間がまるで海の幸は自分たちだけのものだと言わんばかりに独り占めして、ヒグマを見殺しにする自然遺産なんて変です。

NHKは、ヒグマと人が共存しているこの場所は何と素晴らしいのかと称賛しているようですが、違うと思いました。

別の方法で共存する方法があると思います。

ユネスコ自然遺産の調査団は、漁師の都合で作った道路とダムを撤去するように要請しました。

 

熊森から

番組は見ておりませんが、あの場所は有名です。

あの場所は特別保護区で、普通の人は入れません。

入れるのは許可を得た特別な研究者と環境省のレンジャー、番屋の漁師だけだと思います。ああそれと、NHKのカメラマン。最果ての地です。

残念ながら、日本でヒグマが殺されないのは、あの場所だけです。

北海道に行って驚くのは、海にびっしりと張り巡らさせた定置網が延々と続いていることです。

これでは、戻ってきたサケやマスが、川を上る前にほとんど人間に捕獲されてしまうのではないかと危惧します。

それでも、ヒグマを殺さないという一点だけで言えば、知床のあの場所は、ヒグマにとっては奇跡のような唯一の天国だと思います。

その点では、ヒグマを殺すことを止めて50年という老漁師さん(84歳)はすごいと思います。

しかし、人間も含めた全生物のために、入らずの森や開かずの森を取り戻したいと考えている熊森としては、あのような最果ての場所は、将来的には海岸の定置網を除去して、漁業も撤退して、人間が入らないヒグマの国に戻すべきだろうと思います。

フィード

Return to page top