くまもりNews
緊急事態宣言解除を受けて、よりパワフルに活動していきます
- 2020-05-26 (火)
- くまもりNEWS
いつも応援いただきありがとうございます。
新型コロナウィルスの感染拡大と緊急事態宣言に伴う社会、経済の混乱の中、大変苦しい思いをされている方々がたくさんおられるのではないかと心配をしています。
この間、熊森もテレワーク中心に切り替えざるを得ませんでしたが、活動を継続できたのは、ひとえに支えていただいている会員のみなさまのおかげです。改めて心からの感謝を申し上げます。
新型コロナウィルスにより、自然環境を破壊し、貧富の差を助長してきたグローバル化する世界の欠陥が浮き彫りになりました。
人がもっともっと自然や他生物に謙虚になり、彼らと共存できる、地域に根差した持続可能な社会をつくらなければならないという、日本熊森協会の活動は、今後いっそう重要になってくるはずです。
まだまだ感染対策が必要なときですが、感染防止を図りながら、①野外での自然保護活動、②感染対策をとった少人数での集まり、③インターネットを使ったWeb上の集まりなどに力を入れていきます。
1人1人の行動が社会を変えていく力となることはこれからも変わりません。
全国のみなさまとともに、自然保護を進めていけるよう活動に工夫をしたいと思います。ぜひ、できる形で、日本熊森協会の活動にご参加ください。
会長 室谷 悠子
◆活動報告会◆
全国大会ができなかったので、活動報告会を開きます。全国のみなさんにも、参加いただけるようにインターネット報告会の開催にもチャレンジします。詳細は、近日中にご連絡します。
7月5日(日) 14時~16時 芦屋市民センター本館401室
7月11日(土) 13時30分~ Zoomでのインターネット報告会
◆クマの乱獲の規制を求める署名◆
緊急事態宣言下でもたくさんの方にご協力いただき、現在、署名数はネットと紙の署名合わせて3000筆弱です。まだまだたくさんの方のご賛同が必要です。9月末までに2万人を目標に頑張りたいと思います。ぜひ、ご協力ください。
【署名用紙はこちらから】
http://kumamori.org/files/1515/8590/4188/20200403175627001.pdf
【ネット署名はこちらから】
【クマ署名プロジェクトチーム インターネット会議】
6月6日(土)13時30分~15時まで
署名をたくさん集めるためプロジェクトチームのZoomでのインターネット会議を開催します。スマホ、パソコンで全国から参加できます。参加を希望される方は本部までご連絡ください。
◆最新情報はブログ・Facebookで◆
クマのこと、森のこと、日々の活動を随時発信しています。シェアして、活動を広めていただくことも応援になります。
【ブログ】 http://kumamori.org/news/
【Facebook】https://www.facebook.com/JapanBearForestSociety/
◆小冊子「クマともりとひと」売れています◆
2007年1月の刊行以来54万部を発行してきた1冊100円の小冊子の売れ行きが好調です。
最近も有名なブログで小冊子をとりあげていただいたこともあり、本部に問い合わせや注文が相次ぎ、たいへん好評を集めています。
社会を動かすにはさらに多くの会員数が必要です。身近なお知り合いにぜひ小冊子を配っていただき、それぞれのみなさんが1年に1人でも2人でも会員を増やしていけるとうれしいです。
http://kumamori.org/subcategory/books/booklist/moriyama-kuma/
5月26日動物の餌場づくり(兵庫県豊岡市)
緊急事態宣言が解除されて初めての野外活動。雨の中、本部スタッフ4人が苗木の植樹や 、鹿よけ柵の補修にあたりました。
富山市の事故例から:ツキノワグマによる人身事故を減らす方法
富山県で、クマによる人身事故が発生しました。
お怪我をされたお二人の方に、心からお見舞い申し上げます。
それにしても、どうして人身事故が発生してしまったのでしょうか。
このクマを生かして山に返してやることはできなかったのでしょうか。
<以下、報道から>
警察や市によると、5月17日(日)朝8時28分に「高速道路ののり面にある繁みに1頭のクマがいる」という目撃情報が入りました。
午前9時25分ごろ、同市石田の無職、Kさん(92)が自宅の家庭菜園で作業していたところ、クマに遭遇。驚いて転倒し、左脚の骨を折りました。約5分後に、近くの畑で農作業をしていた同市小杉の飲食店経営、Iさん(84)がクマに右腕と右脚をかまれました。2人とも県立中央病院に運ばれましたが、命に別条はありませんでした。
午後1時15分、クマは民家の庭に逃げ込んだところを警察官立ち合いの元、猟師が銃で射殺しました。若いメスグマでした。
現場は北陸自動車道の南側で、富山地方鉄道上滝線の布市駅に近く、周辺には住宅地があります。
熊森から
富山市の担当者に電話で聞き取ったところ、現場周辺にはクマを引き寄せるものは何もなく、どうやってそこまでクマが来たのか、経路もわからないということでした。胃の内容物は草だったそうです。
熊森としては、現場近くの地理的特徴から、このクマは人目に付かない時間帯に、河川敷に沿って草を食べながら山から出てきたのだろうと思います。その後、山に帰りそびれたクマは川の繁みを伝って移動していたのではないでしょうか。その際、何らかのきっかけがあって(障壁があった、あるいは人を避けたなど。ちなみに現場の近くにある富山空港は、神通川の河川敷が滑走路になっています)北陸道ののり面に出てしまったようです。一般に、ツキノワグマは、人をとても恐れています。今回のメスグマも。人に見つかって恐怖におののいたと想像できます。
目撃情報を得て、日曜返上で、市担当者、県担当者、猟友会、警察など皆さんが現地に駆け付けられ、クマの捜索に当たられたそうですが、クマは見つからなかったそうです。クマは、これらの人間の動きを息を潜めてそっと見ていた可能性があります。
捜索中も、一般市民から、クマを見かけたという情報が次々と入り続けていたそうです。
多くの人間がクマを追いかける。多くの市民が屋外にいる。この状況が人身事故を誘発するのです。
何とか改善願いたいものです。
このクマは、人間から逃げようと走り回った結果、次々と人間に見つかるはめになり、もうどうしていいかわからず、パニックになってしまっていたのでしょう。
必死で逃げているときに、急に目の前に現れた人を攻撃して逃げきろうとするのは、人もクマも同じです。こうして、また、人身事故が発生してしまったのだと思われます。
先進的な海外では、このような場合、行政は住民に屋内退避を指示します。全員でクマをそっと見守って、クマが逃げて帰るまで待つと聞いています。「クマ1頭のために、人間活動が制御されるのはおかしい」という考えもあると思います。しかし、人身事故を起こさず、クマの命も守るためにはとても有効なやり方ではないでしょうか。
奥山生態系の保全・再生に取り組んでいる熊森は、日本最大のクマの保護団体でもあります。熊森として、いつも一番恐れているのは人身事故の発生です。
ひとたび人身事故が発生すれば、人も大変です。クマはその場で殺されてしまいます。
本来、平和愛好者であるはずのクマが、マスコミによって人を襲う恐ろしい動物のような誤ったイメージに、あおりたてられて、独り歩きしてしまっています。
どうして人身事故が発生したのか。事故が起こるたびに熊森は調べ、考えます。
人身事故を起こしたクマは、射殺されて当然という声もあると思います。しかし、今回のクマも、人身事故など起こしたくなかったと思います。
海外のように、クマが山に帰りましたという放送があるまで人間が全員家に入っていたら、人身事故は起きませんでした。警察や行政にも責任はあると考えます。
このクマにいつの時点で射殺決定が下りたのかはわかりませんが、富山市は緊急の場合のために、あらかじめ3頭のクマ駆除枠を取ってあるそうです。今回のクマはこの駆除枠を使って射殺したのではなく、警察官職務執行法によって射殺したそうです。
富山県は、県職員が麻酔銃でクマを捕獲する体制が整備されているということで、すばらしいと思います。この体制を使って、民家に逃げ込んだクマを捕獲して山に返してやれなかったのでしょうか。
クマが最後に植物で覆われた民家の庭に逃げ込んだのは、人間たちに追いかけられて、どこかに逃げ込みたい一心だったのだろうと思います。銃を構えた多くの猟友会員に囲まれて、このクマはもう人身事故を起こして逃げおおせる可能性は消えていたと思われます。
現場で対策に当たられたみなさんは、使命感を持って頑張られたと思いますが、初めてのミスで人間の所に白昼留まってしまったこのクマを麻酔銃で捕獲して山に返してやることもできたのではないでしょうか。他生物にも思いやりある優しい社会を作っていきたいものです。
P.S 熊森からの質問に対して、お忙しい中で隠すことなく丁寧に答えてくださった富山市の担当者に感謝します。
暑くなったね、とよにたらい
- 2020-05-02 (土)
- _クマ保全 | くまもりNEWS | 大阪府 | 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
本日の最高気温は27℃。一気に、汗ばむ陽気となりました。
プールが大好きなとよは、なんと先日、暑さにたまりかねてか、水飲み用のステンレスバケツに、足を突っ込んでいたそうです。
そこで、プール改修が終わるまでの間、これで我慢してもらおうと、本日、昔洗濯に使っていた大きなたらいを持参しました。
大きなたらいと思ったのですが、とよの前では本当に小さく見えました。
右前足を入れたら、もう一杯です。
何とか水に触れたいトヨが、この後、どうしたか。動画で見てください。
両前足とお顔の半分下をつけたらもう限界。でも、楽しんでくれたようでした。
お寺やお世話隊の愛情をいっぱいに受けて、今ではとよは、人間を信頼しきって生きています。
久しぶりにとよに会って、しばらくお互いに見つめ合いました。
クマがこんなに穏やかでこんなに人の心をいやしてくれる動物だなんて。
テレビ局が撮影に来てほしいな。
家族連れが次々ととよ会いに来てくれました。
とよを見始めると、みなさんのお顔がみるみるゆるんでいきます。
みなさん、ニコニコ顔になって帰って行かれました。
とよの力、すごいね!
プール改修、急ぐね。(完)
NHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見て
以下、会員からのメールです。
昨晩のNHKスペシャル【ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる】を見ました。
老漁師が大声でコラッとかこの野郎とか言ってヒグマを遠ざけながら漁をしていました。
見ていてヒグマと共存というより、私にはヒグマを虐待しているように見えました。
なぜなら、ヒグマは人が見えるところに来ただけで、大きな声で追い払われているのです。何も悪いことはしていません。
・
番組のなかで、ここまでヒグマと共存できているのは、この知床だけだというようなことを言っていましたが、そうではありません。
ロシアでは(場所は記憶していませんが)、猟師のすぐそばで何頭もの大きなヒグマが、漁師から捕った魚を分け与えてもらって食べている場所があります。
漁師たちもヒグマも、どちらも互いを恐れてはいませんでした。
・
しかし、この知床では漁師が捕った魚は1匹たりともヒグマには与えないと言っていました。
だから飢えてやせ細ったヒグマの親子は弱り果て、子熊は死んでしまいました。(多分あの母熊も死んでしまうでしょう)
そんな状態のどこが共存なのでしょう。
人間がまるで海の幸は自分たちだけのものだと言わんばかりに独り占めして、ヒグマを見殺しにする自然遺産なんて変です。
NHKは、ヒグマと人が共存しているこの場所は何と素晴らしいのかと称賛しているようですが、違うと思いました。
別の方法で共存する方法があると思います。
ユネスコ自然遺産の調査団は、漁師の都合で作った道路とダムを撤去するように要請しました。
熊森から
番組は見ておりませんが、あの場所は有名です。
あの場所は特別保護区で、普通の人は入れません。
入れるのは許可を得た特別な研究者と環境省のレンジャー、番屋の漁師だけだと思います。ああそれと、NHKのカメラマン。最果ての地です。
残念ながら、日本でヒグマが殺されないのは、あの場所だけです。
北海道に行って驚くのは、海にびっしりと張り巡らさせた定置網が延々と続いていることです。
これでは、戻ってきたサケやマスが、川を上る前にほとんど人間に捕獲されてしまうのではないかと危惧します。
それでも、ヒグマを殺さないという一点だけで言えば、知床のあの場所は、ヒグマにとっては奇跡のような唯一の天国だと思います。
その点では、ヒグマを殺すことを止めて50年という老漁師さん(84歳)はすごいと思います。
しかし、人間も含めた全生物のために、入らずの森や開かずの森を取り戻したいと考えている熊森としては、あのような最果ての場所は、将来的には海岸の定置網を除去して、漁業も撤退して、人間が入らないヒグマの国に戻すべきだろうと思います。
イノシシ罠に誤ってかかってしまったクマをどうしますか
ツキノワグマの生息地域であって錯誤捕獲のおそれがある場合については、地域の実情を踏まえつつ、ツキノワグマの出没状況を確認しながら、わなの形状、餌付け方法等を工夫して錯誤捕獲を防止するよう指導する。また、ツキノワグマの錯誤捕獲に対して迅速かつ安全な放獣が実施できるように、放獣体制の整備に努める。
これまで、錯誤捕獲されたクマは法律通りきちんと放獣してきた岡山県なのに、どうなってしまったのでしょうか。
・
尊厳されるべきは人間の命だけという間違った方向に日本社会が進んでいることに、熊森は大変危機感をおぼえています。すべての生命が尊厳される社会でなければ、自然も、地球環境も守れません。
・
熊森は自然保護団体として、どこまでも、全生物の生命尊厳を訴えていきます。
クマはなぜか、簡単に罠にかかってしまう動物です。
「令和元年、市区町村における森林環境譲与税1年目の使途計画」を調査してみて思うこと
2019年に成立した「森林環境税・譲与税法」の付帯決議には、この税は「放置人工林の天然林化」とそのための体制づくりにも使えるという条項が入りました!
熊森のロビー活動の成果です。(既報)
熊森は、この付帯決議が効果を発するよう、まず、全国市区町村議会に「放置人工林の天然林化」に取り組んでいただきたいという請願書を送りました。次に、室谷悠子会長以下本部スタッフや各支部長以下支部員らが直接訪問または電話をかけるなどして、これはと思う市区町村の首長、議員、担当職員に精力的にお願いして回りました。(これまでの活動は、当協会ブログのキーワードに「森林環境譲与税」を入れて検索ください)
また、会員や大学生アルバイトにも手伝ってもらって、これまで数百に上る全国市区町村の使途計画調査を行いました。(大変なエネルギーを要しました!)
群馬県、東京都、静岡県、岐阜県、愛知県、大阪府、兵庫県、岡山県、福岡県、石川県、埼玉県は、全市区町村の聞き取りを終えました。
結果、残念ながら、人工林の広葉樹林化に使おうと考えている町は、まだ例外的なわずかさでした。
日本では奥山荒廃報道がなされないため、森からの湧き水の激減や、生息地を失った野生動物たちの悲鳴に気づいていない行政マンがほとんどで、危機感がないのかもしれません。
以下の円グラフは、使途計画調査の結果です。
<令和元年、市区町村に於ける森林環境譲与税の使途計画>
都府県別の円グラフも作成済みです。せっかくの調査結果ですから、マスコミの皆さんにもデータを活用していただきたいです。
注:森林環境譲与税の使途報告は、1年後に、全国市町村によって公表されます。
熊森から
(1)税の「人口」配分比率に見直しが必要
森林がない又は少ししかない都市部であっても、人口が極端に多いと多額の税が配分されます。その結果、森林整備に使うことと限定されているこの税の使い道が思い浮かばないなど、ありがた迷惑に思っている担当部署もありました。
また、反対に、荒廃した森林は多いが人口が少ないために税の配分が少なくなっている郡部では、この程度の税額では思い切った森林整備に取り組めない。むしろ従来県が徴収してきた森林税の方がけた違いに大きく、今後も林業整備費用はこちらに頼りたいという声もありました。
現在、森林環境譲与税は、50%が「私有林人工林面積」、20%が「林業就業者数」、30%が「人口」の比率によって配分されています。
至急、税の配分比率を再検討すべきであると思います。
(2)都市配分税を、水源の森となる郡部の市町村に回す
当面は、都市部に過剰に配分された今回の森林環境譲与税を、その都市の水源の森がある川上の郡部市町村の森林保全に一定量回すことを、熊森は提案しています。
(3)いまだに森林整備=林業整備という認識の市町村
熊本県の代々の林業家であった平野虎丸くまもり顧問は、森林保全と林業整備を完全に分離しないかぎり、日本の森は再生しないし守れないと主張されています。
これまで我が国における森林整備予算は、林業だけに使われてきたと言っても過言ではありません。(経済第一、人間至上、自然生態系無視、森林で暮らす生物無視)
今回の調査で、いまだ多くの市町村が、森林整備予算=林業整備という発想から抜け出せていないことがわかりました。
平野顧問は、そもそも、業というのは、農業、漁業、工業、商業、全て民間がやることであり、どこの省庁に、業に取り組んでいるところがあるというのか。民間の林業者のためにも、国土保全のためにも、林野庁は、林業から撤退して、本来の行政としての仕事だけに取り組むべきとも強く訴えておられます。
結構多くの市区町村担当職員から、都道府県や林野庁の使途説明会に、「人工林の広葉樹林化」の使途などなかったという声がありました。しかし、林野庁に問い合わせると、きちんと説明したということです。今後、都道府県や林野庁には、この税が広葉樹林化にも使えることを印象付ける積極的な説明をお願いしたいです。
より多くの市区町村が、森林環境譲与税を林業だけではなく人工林の広葉樹林化にも使ってくださるように、熊森は今後も粘り強く全国市区町村にアタックしていきます。
みなさんもぜひ、お住いの市区町村長さんや担当職員に声を届けてください!
<スギ・ヒノキ人工林の広葉樹林化に取り組もうと思われるみなさんへ>
広葉樹林に戻すにはコツがあります。長年取り組んできた熊森がノウハウを全てお伝えしますので、お知りになりたい方は、当協会までご連絡ください。
森造り先進市事例紹介
(2020年3月30日発行くまもり通信102号特集より)
林野庁「森林・林業白書」の目標とする森林の状態を見て絶望です 熊森の見解を知りたいです
(以下、会員からの手紙)林野庁の「森林・林業白書」を読んでみました。「森林・林業基本計画」における森林の有する多面的機能の発揮に関する目標を見て、国が今後、天然林をますます減らそうとしていることを知り、絶望的になりました。これでは日本の野生動物たちは生き残れません。熊森の見解を教えてください。
・
以下の表は、令和元年林野庁「「森林・林業白書」から
<林野庁の回答>
奥山原生林に手を入れることは今後もうありません。今残されている奥山天然林は、今後も手つかずで保全します。
天然生林というのは、原生林だけではなく、放置された里山や竹林も含まれます。要するに人の手が入っていないということです。
この表が示しているのは、放置されて密生している里山を、昔のような野生動物との緩衝帯になるように間伐したり、広がり過ぎた竹林を伐採するなどして、里山整備を行っていきますという意味です。その結果、すっきりした広葉樹林が誕生します。人の手が入って様々な年代の木が育っていれば、全て育成複層林です。
複層林というと、一般的には、林業用に年代の違うスギやヒノキを植林した人工林のことと思われますが、このような広葉樹だけの里山の育成複層林もあるわけです。
・
この計画で今後、我が国の広葉樹林面積が今より減ることはありません。
荒れた里山に人の手が入るんだな、育成単層林(スギやヒノキだけの一斉植林)がどんと減って、年代が違うスギ・ヒノキの複層林や針広混交林、または広葉樹の複層林を増やそうとしているのだなと読み取ってください。
熊森から
熊森もかつて、この資料を見たとき、ぎょっとして林野庁に説明を求めました。
お役所言葉は、一般国民には本当にわかりづらいです。「森林・林業白書」の中に、将来の森林想像図が出てきますが、その絵は林業が前面に出ており、将来もスギやヒノキの人工林でいっぱいです。
熊森としては、説明と絵が一致していないとして、林野庁に改善を求めているところです。
熊本県在住の平野虎丸氏(熊森顧問82歳)もずっと指摘してこられたように、森林保全と林業は全く別物なのです。戦後、林野庁が林業に乗り出したことで、森林保全作業と林業整備作業をごちゃまぜにしてしまった。これが、わかりにくさの原因です。森林整備と言いながら、実際に林野庁がやっているのは林業整備であることがほとんどです。きちんと分離して書くべきです。
ちなみに、平野氏は、林野庁は一刻も早く林業から撤退すべきであり、日本の森や野生動物を守るためには、他の省庁のように行政機能一本に戻るべきであると主張されています。
バッコヤナギに親子グマの映像 宮城県仙台市
21日午前8時ごろ、仙台市青葉区大倉ダム近くで鳥獣被害対策実施隊(猟友会)が6頭の親子を目撃しました。 クマの体長は2頭が1メートル以上、別の2頭は70センチほど、 残りの2頭が50センチほどで2組の親子と みられています。 クマたちはこの後、バッコヤナギの新芽を夢中で食べていたということです。
動画がアップされている間に、みなさん、ぜひ見ておいてください。見とれてしまいますよ。
TBC東北放送より
花火で脅すと、別の木に移り、再び食べ始めたそうです。
釣り人が来ていたので、クマが出ていますと伝えると帰られたそうです。
午後3時ごろに宮城総合支所の職員が注意を呼びかける看板を設置したりして周辺に注意を呼び掛けました。
食べ終わったら移動するだろうということで、行政として捕獲などは考えていないということです。
熊森から
人間がここにダムを造らなければ、見つかっていなかったクマたちの春の生態です。
あの重い体で枝が折れないのかとハラハラします。
クマのため、全生物のため、人のため、このような場所を未来永劫に日本各地に残していきたいです。
私たち熊森の使命でもあります。
C.W.ニコルさんの死を悼む 作家・ナチュラリスト 79歳
自らをウェールズ系日本人と呼ぶC.W.ニコルさんは、1995年に日本に帰化され、自然に生かされていることが全く分からなくなってしまって自然を守ろうとしない私たち日本人に、クマの大切さ、森の大切さ、生物多様性を守ることの大切さを語り続けてこられました。
熊森は生前つながることができませんでしたが、4月3日にご逝去されたとの報に接し、心から哀悼の意を捧げます。
クマが大好きでクマのすばらしさを知っているC.W.ニコルさんによって、クマの棲む森を守り残すことの大切さを知るようになった日本人が多くおられると思います。
ニコルさんのすごいところは、森の再生を口で語るだけではなく、長野県北部の黒姫にある34ヘクタールの荒廃した里山を買い取り、アファンの森と名付け、実際に森再生を実践されたことです。
34年目の今、アファンの森は生物多様性に溢れる森となっているそうです。「豊かな森は人の心も豊かに育む」と言われていたそうですが、まさにその通りだと思います。ニコルさんと熊森は、すべて考えが一致していたわけではありませんが、一致点は多かったと思います。
奇しくも、4月1日、2日、4日と神戸新聞にニコルさんの「猟を語る」という取材記事が連載されていました。
狩猟者であったニコルさんが最後に応じられた取材だったかも知れません。
この記事はクマ狩猟を始めようとする記者がインタビューしたもので、ニコルさんが狩猟や罠猟について語っています。
以下、抜粋
「私はわなは大嫌い。ものすごく嫌いです。アフリカの国立公園長をしていた時、わなを使う人たちを逮捕していたから。わなは密猟者の道具。動物に恐怖と苦しみを与えてはいけない。大半の国でわなは違反です。特にワイヤロープ(くくりわな)。あれは無差別です。シカ以外の生き物もかかってしまう。でも(日本)政府はわなを勧める。それは日本の恥です。
ハンターの誇りはすごく奥深い。一発の弾で即死させられる腕がないとだめ。痛みを与えないよう一瞬で命を奪う。そうでないと動物虐待になる。散弾銃はとんでもない。一発に弾が9個入っていて、どこに当たるか分からない。シカの数を管理しないと森の生態系が変わる。自然を守るのが本当のハンターの仕事です」
熊森から
昨年熊森が話を聴いた猟師は、一人で罠を100個かけていると言われていました。かかった動物は、槍や包丁で何度も突いて殺すそうです。罠があれば、銃など不要と言われていました。銃を持って山の中を動物を追って走り回るより、罠の中に誘引物を入れておいて、動物がやってくるのを待っていた方が楽に決まっています。銃と違って罠は野生動物を大量に捕獲できるのです。
くくり罠の場合は、シカやイノシシを獲るという名目で許可を得たものであっても、キツネ、タヌキ、クマ・・・、もういろいろな動物がかかります(シカやイノシシなら、くくり罠で獲っても良いと言っているのではありません)。
くくり罠で錯誤捕獲された場合、罠を外してやろうと思って近づいても、動物たちは殺されると思って必死に暴れるため、罠を外してやれません。そこが、鉄格子でできた箱罠と違います。結局、くくり罠にかかった動物は、みんな殺すしかないのです。しかも、罠にかかった動物は、強力なワイヤーで締め付けられて、苦しみと痛み恐怖のうちに殺されていきます。
日本は今、環境省の指導により、無数の罠で毎年野生動物を大量に殺処分しています。山の中は罠だらけ。全国民にこの実態を知っていただきたいです。国民が地元の人たちや野生動物たちの悲鳴に無関心だから、こんな残虐なことが許されていると思います。環境省の担当者は、野生動物の捕獲許可権限は都道府県に全て移譲してしまっており、現地に出向くことはないと言われていました。法律を作るのは環境省ですから、環境省の担当者は部屋から出て、現地を見て回っていただきたいと思います。
罠猟は日本の恥、ニコルさん、よく言ってくださいました。
熊森は今、罠の規制を求める署名を開始しています。
くくり罠のような残虐な罠は使用禁止にするようにと、以前、熊森は環境省に何度も必死で働きかけたことがあります。
しかし、数が少なすぎて、ほんの一部の者の声であるとされ、環境省を動かすことができませんでした。
とりあえず、無差別捕殺となる「くくり罠は日本の恥」を使わせてもらおうと思います。
今度はたくさんの署名を集めたいです。
罠捕獲に強力な規制を!
みなさん、どうか署名の件、拡散をよろしくお願いします。
クヌギが花盛り 雌花と雄花がわかりますか
4月17日、庭のクヌギが花盛りなのに気づきました。
あまりにもきれいなので、見に来ませんかと熊森スタッフに声をかけた次第です。
ところが、2日後の19日に見ると、もう花期が終わってしまったようです。
自然界の移ろいのあまりのはやさに驚きつつ、あわてて写真に撮りました。
クヌギは風媒花だからいいものの、虫媒花だったら、こんな花期の短い花は困りますね。
ちょっと昆虫の訪花の日がずれたら、もう受粉できなくなってしまいます。
4月19日のクヌギの雄花
無数に垂れ下がっている紐のようなものに雄花がびっしりついています。
クヌギは、花と言っても、めしべとおしべがあるだけで花びらはありません。
手前の茶色っぽい雄花はもう花粉を出し終わった感じです。
2日前には写真奥の雄花のようにきれいな黄緑色でした。
雄花をアップで撮影しました。
一つの雄花に、おしべが4本付いています。
びっしり咲いた?雄花
雌花は小さすぎて撮れないので、ネットから写真を探し出しました。
新枝の葉の根元についている2ミリのものが雌花です。
雌花と言っても3つに裂けた柱頭があるだけです。
今年の雌花
クヌギは2年成のドングリなので、今春受粉した雌花がドングリになるのは、来年の秋です。
去年受粉した雌花は、この時期3ミリぐらいになっています。
下の写真が去年受粉した雌花です。
今年の秋には大きなドングリに成長していますよ。
去年の雌花
このクヌギは、熊森協会ができる前の年の秋、山に行った時、あまりにも大きなドングリを見つけて一つ持ち帰り、庭に植えたものです。
数年後には実をつけ始めました。
17年後、胸高直径18センチにまで育ちました。
2013年撮影17年目のクヌギ
この年、このクヌギの木から落ちたドングリの2分の一量の重さを図ってみました。
スーパーのビニール袋がいっぱいになりました。
重さは5キログラムありました。
1本のクヌギから合計10キログラムのドングリが落ちたことになります。
クヌギのドングリ
現在保護飼育中のツキノワグマ「とよ」も、クヌギのドングリは大好きです。
秋の食い込み期には、「とよ」は1日に10キロのドングリを平らげますから、このクヌギの木1本で1日分の食料を得ることができます。
冬ごもりに備えてのツキノワグマの食い込みは、7月末から始まります。
もし、この大きさのクヌギのドングリだけで、1頭のクマが冬ごもりしようと思ったら、このような木が山の中に150本点在していることが必要です。
クマが生息するために、どれだけ広い山が必要か想像すると、気が遠くなりそうです。
クマが生息する自然が残されているということは本当はすごいことで、自慢すべきものなのですが・・・
クヌギの樹液はカブトムシやクワガタ、オオスズメバチなど、葉はウラナミアカシジミ(チョウの一種)の幼虫など、ドングリにはゾウムシなど、もう数えきれないほどのいろいろな動物が、クヌギの木で命をつないでいます。
狭い庭に、クヌギの大木は無理なので、2015年に植木屋さんに伐ってもらいました。
しかし、10日後には切り株から青々とした新芽が出てきて、今また元の大きな木に戻ってしまいました。
切り株から新芽(伐採後50日目に撮影)
クヌギは、青森を除く本州と九州、四国に分布しています。
クヌギは昔から、炭やシイタケのほだ木などに広く利用されています。
古文書を読まれた先生によると、祖先が摂津などから苗木を取り寄せて各地にクヌギを植えて回ったことがわかるそうです。
よって、分布は全国に連続しており、クヌギに地域固有の遺伝子はありません。
皆さんの所では、ドングリの花は終わりましたか?
それともこれからですか?
日本にドングリの種類は21種あります。
クヌギ以外のドングリも春に花が付きます。
ドングリの雌花や雄花をまだ見たことがない人は、ルーペでいつか見てください。
命の不思議さを感じますよ。(完)