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2012-09

9/15 くくりわなに誤捕獲された子グマから離れぬ母グマ、哀れ母子とも射殺 栃木県

新聞記事より 9月15日

15日午前11時ごろ、塩谷町下寺島の田んぼ脇のあぜ道で、イノシシ捕獲用のわなにツキノワグマ1頭が掛かっていると、同町役場に届け出があった。

矢板署によると、現場近くで母グマとみられるクマも1頭発見。近くに人家があるため、同役場から依頼された地元猟友会が午後3時25分ごろ2頭を射殺した。クマは体長81センチ、体重約20キログラムと、体長108センチ、体重約60キログラム。

–以上–

 

●熊森栃木県会員が、この事件に対して関係者から電話で聞き取った結果が、熊森本部に届きました。大変胸の痛む事件であり、本部からも、関係者に電話をしました。関係者の方は、大変良心的で、質問に対して包み隠さず話してくれました。

 

<関係者の話>

田んぼのあぜ道に埋め込んでいたイノシシ用くくりわなに、子グマがかかっており、近くに母グマがいるという通報が入りました。放獣しなければならないと思いつつも、栃木県ではクマの放獣体制が整っておらず、専門家もいないので、どうしたものかと思いつつとりあえず現地に行ってみました。川を挟んで30メートルほど離れた対岸の田んぼのあぜに、後ろ足がくくりわながかかった子グマがおり、5メートルほど離れたところで、母グマがうろたえていました。人間たちがやってきたことに気づいていると思うのですが、母グマはその場から離れようとしませんでした。

私たちは、花火や空砲で母グマを驚かしてしばらく遠くに追いやるというような試みは、行いませんでした。母グマがそばにいるから放獣できないとして、まず母グマを射殺しました。次に、罠にかかっていた子グマも射殺しました。その後でそばに行ってみると、もう1頭の子グマがいましたが、そのうちどこかへ行ってしまいました。

 

(熊森から)

環境省は、残酷で誤捕獲動物を多く生む、くくり罠を禁止すべきです。

くくり罠は、強力なばねで足にかかったワイヤーを締め付けるため、四足動物の足が3本になってしまいます。2本足になった犬を見たこともあります。残酷な上、獲ろうとした動物と違う動物が誤捕獲されることが後を絶たず、結果的には何の被害も出していない動物まで、今回のように殺してしまうことになります。いったんくくり罠にかかると、外してやろうと思っても、動物が暴れるため、全身麻酔をかけない限り外すのがとてもむずかしくなります。

誤捕獲の実態は、普通は報告されないので、闇から闇に、絶滅危惧種の動物も含め大量に誤捕獲され、殺されています。環境省は、くくり罠の直径を12センチ以下とする規制をかけたから、クマはかからないと言っていますが、今回のように子グマにはかかるし、成獣グマでも指等がかかる例が、後を絶ちません。その上、罠をかけた人が直径12センチを守っているかどうかチェックする部署が、この国には実質上ありません。

●子グマと子グマを思う母グマの心を思うと、今回のような場合、人間としては本来、絶対、殺せないはずです。豊かな森を造ってきてくれた森の動物たちへの感謝を忘れていませんか。熊森はもっともっと大きくなって、現地に直行して罠を外せるように、早くなりたいです。

●誤捕獲されたクマを殺すのは、鳥獣保護法違反です。誤捕獲された動物は、その場で逃がさねばならないことになっています。この点に対しては、兵庫県行政を見習って下さい。兵庫県行政は、誤捕獲グマは、全て放獣してくださっています。

●栃木県はクマの放獣体制を整えるため、早急に、専門家の育成をはかり、もしくは、放獣できる団体や業者と連携してください。

県庁に問い合わせると、大型獣を扱っておられる獣医さん3名が、平成15年度から、クマ放獣時の麻酔に本格的に携わってくださっているそうです。しかし、放獣地を自分の市町内に持っているのは、県内では日光市と那須塩原市だけで、残りの市町は、放獣地をまだ見つけていないので、放獣できないということでした。くまもりとしては、必ず元棲んでいた山があるのですから、そこへ帰してやるべきだと思います。

●全国都道府県の熊森会員は、1頭1頭のクマ事件に関して、電話で聞き取りをしたり、現地を訪れたりして、どうしたら集落にクマが出て来なくなるか、どうしたらクマが殺されなくなるか、考えたり、現地でアドバイスをしたりしてください。

 

以下は栃木県塩屋町の産業振興課がインターネットで公表している、クマのパンフレットです。これはとてもよく作られています。
・・・・・・・・・・

クマとの事故を防ぐために

クマとの事故を防ぐための注意事項(クマ出没情報を含む)

栃木県にはツキノワグマがすんでいます。
普段はおとなしい動物ですが、時には人が襲われることもあります。
私たちが気を付ければ、多くの事故を防ぐことができます。

 

クマに出会わないために

(1)クマに襲われないためには、クマと近くでばったり出会わないようにすることが最も大切です。
・クマがいそうな場所には行かない
・早朝や夕方は特に注意
・一人での行動は避けよう
・音を出しながら歩こう(鈴やホイッスル)

(2)農作業を行う際に注意すべきこと
・作業中にラジオなど音の出るものを携帯して、自分の存在をアピールする
・クマの出没情報に留意し、行動が活発になる早朝・夕方は周囲に気を付ける
・森林、斜面林などのそばの農地はクマの出没ルートになりやすいので特に注意し、周囲の刈り払いなどを行う
・頻繁にクマが出没する地域においては、できるだけ単独での作業は避ける

(3)誘引物の除去
・クマを誘引する生ゴミや野菜・果実の廃棄残さなどを適切に処理する
・果樹園が最も被害を受けやすいので、収穫後の放置果実は適切に処理する
・クマは収納庫等に入り込むことがあるため、収納庫はきちんと施錠するなど管理を徹底する
・草刈り機などに使われるガソリンなどもクマの誘引物になるため、保管場所に注意する

 

もしもクマに出会ったら・・・

クマが人を襲う理由の多くは、自分の身や子グマを守るためなので、クマを刺激しないことが大切です。
・静かにゆっくりとクマから離れる(大声を出さない)
・クマに背中を向けない、走って逃げない
・グループで固まる
・子グマには絶対に近づかない(近くに親グマがいる)

 

ツキノワグマの特徴

・臆病でおとなしい
・嗅覚がするどい
・木登りがうまい
・人より足が速い
・食べ物のほとんどは植物の実や芽、葉。ハチやアリ、(最近は)死んだシカなども食べる。
・体重はおとなのオスで80kg程度、メスで60kg程度。
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奥山研究者の発掘と育成をめざした日本奥山学会が第1回研究発表会を持ちました

今年8月26日、元広島大学教授西川節行先生のご指導を受け、奥山における生物大量消滅の現状調査や原因究明、奥山復元・再生方法の研究などに取り組む研究者の発掘・育成をめざして設立された日本奥山学会が、大学の教室を借りて、第1回の研究発表会を持ちました。

 

3名の研究者のみなさんが、それぞれすばらしい発表をしてくださいました。また、熊森協会のスタッフたち3名も、これまでの活動報告を短くまとめて発表させていただきました。

 

奥山生態系の大荒廃と復元・再生に関する研究発表の場を設けさせていただいたことによって、研究対象物に負担をかけないという研究者としての倫理観をしっかりと持ち、中立の立場で、自身の良心に従って正義感いっぱいに自由に奥山研究をすすめる研究者が発掘・育成されることを願っています。

兵庫県のクマ生息地のみなさんへ…9月14日作成の参考資料

兵庫県森林動物研究センターのHPの資料は、行政担当者のみなさんが、現地を飛び回るという大変な活動の合間に作成してくださっている貴重な情報です。 行政担当者のみなさん、ありがとうございます。

 

2012年8月1日~9月7日の、計145件の目撃情報(9月14日現在)を、くまもりインターンの高校生がグラフ化してくれました。兵庫県のクマ生息地のみなさん、ご参考になさってください。

 (1)

(2)兵庫県担当者によると、大凶作年だった2010年は、クマたちが7月から集落の青い柿の実に来たが、今年は8月から来た、ということです。

 

 (3)

 

 

④集落でのクマ目撃情報の聞き取り

山の中がクリ以外、いかに不作、凶作か調べてから、ふもとの集落を回りました。今年は、かなりのクマが人間の所に出ているのだろうと思って、恐る恐る聞き取りを始めました。

果樹園をされている所では、シカ、イタチ、タヌキ、カラスに悩まされているが、クマは出ていない。サルは元々いない。シカが出始めたのは、2004年の大災害のあとからとか、いろいろ教えてくださいました。

貸し出し用電気柵を持って行きましたが、すでにみなさん電気柵を使用されていました。兵庫県は、東北地方と違って、山から動物たちが出て来ないように、山裾を金網で延々と囲い、田畑では、至る所に網や電気柵が張り巡らされています。

山裾のカキの木に、今年、クマが来たという所が1カ所ありました。横の金網をよじ登って出て来たのでしょう。まだ、緑色をした柿を食べて帰っていました。よほど食べ物に困っているのでしょう。哀れでした。

この集落の正面の山は、100%が人工林でした。昔はクマが出て来なかったと言われるので、わけを聞くと、人工林にする前の山の中には、柿の木がいっぱいあったからという答えでした。

 

クマが山裾の網を乗り越えて?まだ青い柿の実を食べてしまった

あと3カ所で聞き取りした所、「2010年はすごかったけれど、今年はクマは出ていないよ」と、いうことでした。しかし、今回は全地区で聞き取る時間がなかったので、全体像が見えませんでした。今後は全地区で聞き取りを行って状況をつかみ、行政によって大量捕殺されないように対策を練っていかねばなりません。

 

当協会は微力ではありますが、奥山人工林の間伐や広葉樹の植林を進めています。年月はかかりますが、昔のように山で動物たちが再び棲めるようにするためです。森が復元・再生できたら、クマだけでなく全ての動物たちが、再び山で暮らせるようになります。動物たちが棲んでいた森を壊したのは人間です。その人間が反省して謝罪し、森を復元・再生させる活動に取り組むことで、責任感を持った人間が育ちます。是非、この活動を、教育に取り入れていただきたいと願っています。

一方、生きられなくなって山から出て来た動物たちに対しては、殺さないで問題解決する道を追究し続けています。全ての動物には手が回らない為、絶滅危惧種のクマに焦点を当てて取り組んでいます。

全生物に畏敬の念を持ち、共存しようとする試みは、人間社会をやさしくするだけではなく、自然を守り再生し、人類の生存環境を保証することになると考えます。

③山の中は昆虫が激減し、不作や凶作。クマたちは夏の間に山を出てしまっていた

今回調査した所は山々が低く、数百メートルしかありません。ドングリの仲間としては、アベマキとコナラの本数が断突に多く、少しミズナラも混ざっていました。ブナはありません。一口に兵庫県のクマ生息地と言っても、地域によって、このように山の植生はコロッと変わります。

この地域は観光地ではないので、林道を走る車はほぼ皆無でした。今でも、クマたち動物は、結構この山に安心して棲めるのではないかと思いました。人が入ってこないということは、野生動物たちにとってはこの上もなく棲みやすいということです。昔、林道がなかった頃は、もっと、動物たちは、棲みやすかったと思います。

もし今でも、アベマキやコナラが豊作なら、この山は、秋、何頭かのクマたちを養えるだろうと思いましたが、残念ながら、今年は、どの木もほとんど実をつけていませんでした。(アベマキ実り×、コナラ実り×、シラカシ実り×、ソヨゴ実り×、ミズキ実り×)

   

 

昔を良く知る人に聞くと、以前は、このアベマキは実がついていないが、隣のアベマキにはよく実がついているというように、ドングリの豊凶にすごく個体差があったそうです。ところがなぜか最近は、今年、アベマキに実がついていないとなると、その山中のどのアベマキにも実がついていないというように、一斉反応を示すようになっています。そのため、不作年や凶作年になると、とたんにクマたちは、もう山では生きていけなくなります。気候と同じように、変化が極端になって来ているようです。

 

あるアベマキの木の下に、未熟で小さなドングリがいくつか落ちていました。生理落下です。夏、暑すぎたり雨が少なすぎたりすると、実らせることが無理にな るので、親木は実が小さいうちに落としてしまうのです。今夏、単なる凶作年ではなく、生理落下もあったことが分かりました。

 

山の中に放置されたクリ園がありました。クリの木が約120本ぐらいありました。

痕跡から、大凶作年だった2010年には、ここの3本のクリの木にクマたちが来ていたことがわ かりました。

 

このクリ園をていねいに調べてみると、クリタマバチにやられている木も多く、胴枯れ病になって、20本は枯れており、40本は実がゼロでした。32本には 実が少しついていました。そして、29本には、豊作とは言えませんが、平年作の実がついていました!

この地域のクマたちは、このクリを食べに来たらいい。しかし、今年、クマが来た形跡は全くありませんでした。これからは、イガが固くなるので、もうクマが木に登ってイガごとクリを食べることは無理です。下 に落ちてきたクリを食べるしかないのですが、ここはシカが多いため、シカに先に食べられてしまい、クマたちの口にクリが入ることは難しいでしょう。どうして29本にも実がついているのに、今年、このクリの木にクマが登ってこれまでにクリの実を食べておかなかったのか。2010年の大凶作年に、ここに来ていたクマたちが山から出て行って、捕殺されてしまったからと、私たちは推察しました。

 

クリ園を登って行くと、稜線にワイヤ入りの高価なシカよけ網が張ってありました。こんな高価な網を使うのは、分収造林です。網の向こう側には、小さなヒノキノの苗が植えられており、まわりがササで覆われていました。下草刈りしていないので、苗は育たないのではないかと思いました。こんな奥地で、もう、分収造林はやめるべきです。ここは広葉樹の繁る水源地に戻しておかないと、人間も湧き水を失います。

 

それにしても、シカが入れる所と入れない所では、下草の有無が対照的です。クリ園だけをとってみれば、下草を刈らないと風通しが悪くなって、クリは枯れますから、シカの存在は人間の代わりに下草を無償で刈ってくれるので、助かります。しかし、全山の下草を食べてしまうと、夏、花の咲く草花がなくなってしまうので、夏の昆虫が消えます。すると、夏、主に昆虫食のクマたちは、生きられなくなります。こちらの方は困ったものです。

9月6日、この山に、クマたちの気配はすでにありませんでした。今回行ってみてわかったのは、ブナ・ミズナラの原生林より、この2次林の方が、まだ、草原の草花や虫、実りが、少しはあるということです。

②人間の所には、食料がいっぱい。花も咲き、虫もいて、実りもある。

初秋の今、車で道路を走りながら山を見ると、3種の花が目に飛び込んできます。タラ、ヌルデは木ですが、イタドリは草です。どれも白い花です。これらの花は、ハチにとって今年最後の蜜源です。これらの花の蜜を吸い終ると、ハチは冬眠に入ります。(写真はヌルデ)

 

クマ生息地に到着。集落の周りには、食料がいっぱい。田んぼではたわわに稲が実り、ダイズなどの作物もいろいろ実っていました。

 

耕作放棄地には、イネ科のエノコログサをベースに、ヒメジオンの白い花やゲンノショウコの赤い花、ノササゲの黄色い花などいろいろな草花が咲き乱れ、コジャノメなどのチョウやウスバキトンボなどのトンボ、バッタやイナゴ、いろいろな虫が飛び回っていました。ここにシカが来たら、喜んで草を食べ始めるでしょうが、柵で囲まれているので、入れません。(下が耕作放棄地の草原)

 

集落の近くのクリやカキには、新しい枝折れがあり、最近、クマが来たことがわかりました。青いクリをイガごと半分近く食べ、青い柿の実はなぜか2個だけ残して食べ尽くしてありました。幹には新しい爪痕がありました。(写真はクマが食べに来たクリとカキ)

先日調査した本来のクマ生息地のブナ・ミズナラ林には動物たちの食料が全くなかったのに、人里にはいろいろと食料がたくさんあります。この現実を知っている人はほとんどいません。一部猟友会と熊森ぐらいでしょう。このため、人里へ出て来た動物は、有害獣として簡単に殺されています。人間があまりにも傲慢になり過ぎていると感じます。悲しいことです。

かつての日本にもあった、輪廻転生思想などの宗教心も、自然を守るためには必要なのではないかと思いました。

兵庫県発表7月クマ目撃数過去最多→くまもり本部クマ生息地の山の実り調査・集落での聞き取りに出動①クマ捕殺への疑問と抗議

兵庫県森林動物研究センターのHPによると、2012年度の7月クマ目撃情報は73件で、過去最多年だった2010年の61件をさらに上回り、過去最高となっています。(8月分は現在未発表)

2010年は熊森本部にとっては悪夢のような年でした。私たちくまもりが止めるのも聞かず、兵庫県が絶滅危惧種のクマを70頭も、有害捕殺したのです。

以下グラフ参照  (2011年度の有害捕殺は6頭)

2010年度・・・8月末までの兵庫県クマ有害捕殺数は、11頭

2012年度・・・8月末までの兵庫県クマ有害捕殺数は、10頭

大変だ。また2010年のように、行政によって大量に捕殺されるかもしれない。

ちなみに、近隣府県の、今年8月末までの今年度ツキノワグマ捕殺数をたずねてみると、岡山県0頭、京都府0頭、滋賀県1頭、鳥取県11頭でした。

 

その年の行政担当者が誰であるかによって、絶滅危惧種に対する行政対応は、すっかり変わってきます。上記聞き取りからも、兵庫県と鳥取県が、クマ捕殺体制をとっていることがうかがえます。この2県は、県内のクマが大量に増加していると主張しているのですが、私たちにはその根拠が、まったく理解できません。

 

兵庫県森林動物研究センターの研究者は、当初、クマの自然増加率を22.3%としていましたが、クマの増加率がシカより高いなんてありえないという指摘を受けると、突然半分の11.5%に下方修正してしまいました。ますます、クマ大量増加説が信用できません。

 

人間活動によって奥山に大異変が起き、夏の昆虫が消え、秋の実りが消え、奥山にまで入り込んできたシカによって下草が消えています。クマが安定的に増加できる条件など、何一つないのです。食料がなく、空腹に耐えかねて、仕方なく夜こっそり食料を求めて山から出てきた哀れな絶滅危惧種であるクマたちを、一体行政は何の権利があって捕殺しているのでしょうか。

 

クマたち森の動物たちが、私たち人間の子供たちと変わらない高い知能や細やかな感情を持っており、喜び、悲しみ、恐怖、絶望など感じていることを御存じないのではないでしょうか。

 

地元の方たちが殺してほしいと言っているんだ。小さな子どもがクマに襲われたらどうするんだ。よく言われる言葉です。クマに人を襲う習性はありません。第一、何もしていないのにクマに襲われた小さな子どもが、過去にいるのでしょうか。

クマは、その臆病さのあまり、人間から逃げたい一心で、人と出会ってしまい距離的に逃れられないと悟ると、時には前脚で人をはたいて逃げようとします。相手が小さな子どもだと、クマには相手をはたいて逃げなければならない理由がありません。

 

もし、クマに人を襲う習性があるなら、力はすごく強いですから、真昼間にどんどん人里に出てくるでしょうし、毎年、全国で、クマによる死者が大量に出るはずです。

 

といって、クマのような大きな動物に、夜、家の横をうろつかれたら、人間も不安です。家の横に来ないでほしいという気持ちは当然理解できます。それならば、短絡的に殺してしまうのではなく、食料を求めて出て来ているのですから、奥山に広葉樹林を復元する一方、豊かな森が復活するまでの間、山の実りの凶作年には、山に食料を運んでやればいいのではないでしょうか。これは餌付けでも何でもありません。共存の知恵です。絶滅を止める知恵です。自分たちは運べないが、運んでくれる人がいるなら運んでやってもらっていいよという方は、日本熊森協会までご連絡ください。

 

今、キャベツが暴落して、大量に出荷停止になってしまっているそうです。人間の所には食べ物がいっぱいあるのです。キャベツはクマの好物ですから、廃棄するキャベツがあるのなら、せめて、絶滅危惧種の動物にだけでも分け与えるべきでしょう。また、果樹園に来たクマたちを殺す前に、果樹園を電気柵などで防除して、果樹園には廃棄処分する落ち果樹がたくさんあるのですから、それを外に出して与えてあげるといいと思います。兵庫県の原観光りんご園で地元の人たちが実施してみたところ、果樹園の外でクマが止まるようになり、木についた商品用りんごは守られたということです。

 

人手が足りないからできないという方がいらっしゃれば、日本熊森協会に是非お電話ください。落ち果樹運びボランティアに行かせていただきます。

せめて、絶滅危惧種だけでも殺さない国にしていきたいものです。

生物の大量消滅?沈黙の森・岡山県若杉天然林調査

9月2日、一度、本当の森を見てみたいという方を、熊森本部から一番近い所にある岡山県若杉天然林にご案内しました。

1997年に熊森協会を結成してから、毎年欠かすことなく、夏休みに「くまもり原生林ツアー」をこの森で実施してきました。この森は83ヘクタールあり、当初はクマ2頭が棲んでいました。クマの爪痕やクマ棚を見たり、シカなどの動物達の足跡を見たり、虫を見たり、小鳥の声を楽しんだりしたものです。林床には背丈を超えるチシマザサがびっしりと生い茂り、「すぐ横にクマさんいるかも」と言って、みんなでおどかしあったりしたものです。

 

あれから15年、年々、森の中がさびしくなっていきます。チシマザサはまばらになり、今や向こうが透けて見えます。

 

シカが大好物のハイイヌガヤは全て枯れてしまったし、林床に咲いていた可憐な草花もありません。ハチなどの昆虫も見当たらなくなったし、もちろんクマはもういません。他の生き物の姿も痕跡もほとんどありません。なぜか、奥山の原生的な森に生物の大量消滅という大異変が起きているのです。

 

ここはブナ・ミズナラなどのドングリ類の巨木が無数に生えている森ですが、今年は実を見つけることは出来ませんでした。ナナカマドの実までもがゼロなのには驚きました。頂上の若杉峠まで登る2時間の間に発見した実のついている木は、スイカズラ科のミヤマガマズミやゴマギがわずか5本あっただけです。実と言っても小さいし、これでは、クマたちの1日のおやつにしかならないでしょう。

 

生き物たちの気配はほとんど消えていました。途中、トガリネズミの巣(下写真)を見たのと、頂上で、小鳥の声を少し聞き、クモとカタツムリを1匹ずつ、アリを少々見つけたとき、生き物に会えたとほっとしました。

一体、奥山の原生的天然林の中で何が起こっているのでしょうか。この動物達の食料が消えた山を見れば、動物達が山から出てきたからといって、簡単に殺してしまえなくなるのではないでしょうか。昆虫が消えて行けば、近い将来、人間も食料を失う時が来るのではないでしょうか。

 

岡山県までの道中、虫媒花であるカキやクリを調べましたが、今年はこちらも実りが悪いです。

本部クマ部会のお誘い 9月7日(金)午後7~9時 於:熊森本部3階

2010年・・・昆虫が激減し、山の実りは全くありませんでした。クマたちは夏の間から人里に出て来てまだ青い柿の実を食べ尽くしてしまいました。こうして有害獣として多数のクマたちが夏・秋と、捕殺されていったのです。

今年2012年・・・クマたちは、夏の間からすでに人里に出て来て、多数が殺されています。また2010年のような大量捕殺が行われるのでしょうか。

どうすれば大量捕殺を止められるのか。いっしょにクマ問題について語り合いませんか。

 

参加しようと思われる方は、ご連絡ください。

会員・非会員を問いません。

祝 国内初、ダム撤去に着手 熊本県球磨川荒瀬ダム

(熊森より)遅ればせながらも、これからはダム撤去を公共事業にしていきましょう。

以下、毎日新聞

現場発:球磨川の清流、再生は不透明/河川法上で全国初

/熊本・荒瀬ダム撤去開始

2012年09月01日

8基の水門が全開されている荒瀬ダム。川上から見て右岸(写真左側)の水門から撤去していく=熊本県八代市坂本町荒瀬で
8基の水門が全開されている荒瀬ダム。川上から見て右岸(写真左側)の水門から撤去していく=熊本県八代市坂本町荒瀬で

日本三大急流の一つとして知られる、熊本県の球磨川。その中流にある県営荒瀬ダム(同県八代市)の撤去 工事が9月1日に始まる。河川法で定義されたダム(高さ15メートル以上)の撤去は全国初で、川にどんな影響を与えるか注目されている。同県は「清流」と たたえられたダム建設以前の自然環境復活を目標に掲げるが、上・下流にはまだダムや堰(せき)があり、地元の悲願「清流復活」が実現するかは不透明だ。 【取違剛】

ダムの撤去はこれまでに宮崎県都城市の轟(とどろ)ダムなど小規模水力発電用ダムで先例があるが、いず れも現在の河川法ではダムとみなされない小規模なもので、高さ25メートルの荒瀬ダムのような大規模ダム撤去は初めて。業界団体や学会の関心は高く、熊本 県には情報提供の希望が相次いでいるという。

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