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2017-05-12
「秋田に人食いグマがまだ3頭生き残っている」は、米田一彦氏の毎度のお騒がせネタです
- 2017-05-12 (金)
- _クマ保全
日本ツキノワグマ研究所理事長を名乗る米田一彦(まいたかずひこ)氏が、表題にあるような、またまたのとんでもないお騒がせネタ(ガセネタ)を放たれました。
人食いグマなど、この世にいません!
マスコミが取り上げるから調子に乗っておられるのでしょうが、ほんとうに許せない偽情報です。
米田氏の、世の注目を浴びたい一心の無責任発言のために、どれだけ多くの国民が惑わされ、どれだけ多くのクマが無駄に殺されてきたか、はかりしれません。本当に氏のしていることは罪深いと思います。その一方で、「日本一、クマの心がわかる男」などと、まるでクマ保護派と間違われるようなことを吹聴されるものですから、当協会の会員のなかにも、まんまと引っかかってしまう者がいます。
マスコミのみなさんが権威や肩書に弱いのはわかりますが、一度、現地に行って、名前だけはすごく大きい「日本ツキノワグマ研究所」を訪ねられたらいいと思います。実態を確認してみてください。
今回のお騒がせネタ(=ガセネタ)は、米田一彦氏が読売新聞<深読みチャンネル>に投稿されて掲載された文が発端のようです。
今回、NHKまでもが、取り上げたということですから、米田氏の文章力は、そういう意味では毎度のことながらセンセーショナルで、人々をギョッとさせる、いわゆるマスコミが飛びつくという面では大変優れているのでしょう。
昨年度の秋田県鹿角市でのクマによる死者4名事故を、「十和利山クマ襲撃事件」と名付け、現場近くで目撃された雄グマを「スーパーK」と名付けて作っていく物語は、小説家としては天才的かもしれません。
しかし、マスコミのみなさんに熊森が言いたいのは、
そのネタに真実性がありますか?
ということです。おもしろかったらなんでも報道するというのでは、世の中が無茶苦茶になってしまいます。
米田一彦氏は、元、秋田県庁自然保護課の職員です。
米田氏の発言を報道する前に、秋田県庁自然保護課に電話して、問い合わせられたらどうでしょうか。
米田さん、あなたは以前、クマ捕獲罠を仕掛けて忘れてしまわれたことがありましたよね。思い出して見に行ったら、罠の中にクマの白骨死体がありましたよね。その時、もう、クマにかかわらないと世間に向けて宣言されたじゃないですか。宣言されたことを守られるべきだと思います。今のあなたのクマに対する発言は無茶苦茶です。一般国民はだませても、ちょっとクマを研究した人なら笑ってしまう内容ではないでしょうか。
関心のある方は、米田一彦氏が読売新聞深読みチャンネルに寄せた以下の長文を読んでみてください。
警戒せよ! 秋田の「人食いグマ」は3頭生き残った : 深読みチャンネル …
彼の文章は全くの彼の推測なのですが、うまいのは、推測に過ぎなかったことが、いつの間にか文が断定文に変化していき、まるで真実のように話が展開していくことです。
昨年度の秋田県鹿角市のクマによる死者4名事件については、当時、熊森のブログに何度も熊森見解を書かせていただいたので、それを読んでいただきたいです。
要するに、人間を好き好んで食べたいと願っているクマなどこの世にいません。
もし、そのようなクマがいたとしたら、その地域で様々なことをしている人たちが次々とクマに襲われることでしょう。
昨年度の死者4名は、全員がネマガリダケを採りに入っての事故です。
非常に力の強いクマがいて、ネマガリダケを採りに来た人間と出会い、排除しようと一撃を加えたのでしょう。
一旦死体となったものに対してはそれがカモシカであろうと人間であろうと、草食動物以外は、みんなで食べて片付けてしまいます。
これが森の生態系なのです。自然界の循環の仕組みなのです。
クマは、環境の変化で今は草食に近い生活をしていますが、本来は雑食動物ですから、地面に死体があれば食べてしまいます。
熊森本部が兵庫県で、自動撮影カメラを山中に棄てられたシカの死体の近くに掛けたところ、クマはもちろん実にいろいろな獣や鳥や虫が食べに来ている映像が撮れました。これを人食い熊と呼ぶなら、日本中の熊全部が人食い熊であり、全部が人食いイノシシであり、全部が人食い狐であり、全部が人食いテンであり、全部が人食い鳥、全部が人食い虫になってしまいます。米田氏に言わせると、警戒せよ!の対象です。
そんなことはないわけで、当時射殺したクマの胃の中に人肉が入っていたからといって、そのクマが今後、人間を見たら襲い掛かって食べてやろうとするとは思えません。秋田のクマはやはり、6月に食べたいものはネマガリダケのタケノコのはずです。
人食い熊も人殺し熊も、誕生などしていなかったのです。
しかし、米田氏が昨年、人食い熊誕生!人殺し熊誕生!と騒いでマスコミの寵児になったため、昨年度秋田県で、476頭という生息推定数の約半分にあたるクマが、主に昨年の6月~8月に殺されてしまいました。秋田県庁によると、集落周辺に出てきたからやむおえず駆除したということですが、秋田の人達が、人食い熊誕生!人殺し熊誕生!を聞いて過剰防衛に走ったことが十分に考えられます。
秋田県庁担当部署に聞くと、昨年の秋田県の秋の山の実りは、ブナ凶作、コナラ・ミズナラ並作で、クマの餌としては足りたということです。その証拠に10月以降のクマの目撃は、たった28件だったそうです。人食い熊誕生!人殺し熊誕生!のデマによって、殺されなくても良かったクマが夏場に大量に殺されたのです。
クマ危険!と社会をあおった米田氏とマスコミの責任は誠に大きいものがあります。済んでしまった事は仕方がありませんが、マスコミは猛反省を願います。熊のことを記事にするのであれば、一人の投稿文に飛びつくのではなく、日本熊森協会やJBNをはじめ、いくつかの団体や人の声を聴いてからにしてください。もちろんこのことは、クマ問題に限ったことだけではありません。
国民のみなさんは、間違った報道に躍らせられることのないよう、一方的な意見しか報道しないマスコミにはくれぐれも注意してください(完)