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2017-05-04

「くまもり20年を振り返って」 全国大会森山まり子会長挨拶より

「くまもり20年を振り返って」森山まり子会長挨拶

 

挨拶する森山会長

 

みなさんよく来てくださいました。

みなさんのご賛同、ご支援を得まして、日本熊森協会、設立以来20年間、全くぶれることなくまっすぐ歩み続け、今日ここに、20周年の記念すべき全国大会を迎えることができました。

みなさんと拍手で、心から共に祝い合いたいと思います。

 

くまもりがここまでこれたのは、私たち中心者の揺らぐことのない固い決意はもちろん、今日この会場にお集まりくださったみなさんをはじめ、これまで私たちをご指導してくださったみなさん、共に動いてくださったみなさん、会費などで支えて下さったみなさん、本当に多くの皆さんのおかげであり、亡くなられた方も含め、熊森にかかわってくださった全てのみなさんに心から感謝申し上げます。みなさん、本当にありがとうございます。

 

クマのため、全ての生き物たちのため、そして私たち人間のため、奥山にもう一度、広葉樹の水源の森を復元しようという熊森運動20年のあみを、ここで振り返ってみたいと思います。

 

ここで、「熊森20年のあゆみ」(1992年のツキノワグマ絶滅の恐れという新聞記事や、中学生たちによる当時の兵庫県貝原知事への直訴、1997年の日本熊森協会の設立で、①まずクマ捕殺数の一番多い地元を訪問、②1泊して、崩壊した人工林の内部や、動物が夜、田畑に被害を与える様子を視察したこと、③次の日、地元の人達と公民館で長時間懇談して意気投合したこと、ここから始まり現在に至るまでの熊森活動)を、約10分間の貴重な映像や歴史的写真で見ていただきました。

 

また、その中で、荒廃する人工林を自然林に再生しようとして始まった熊森の奥山再生運動だが、行政が全くと言っていいほど過剰人工林問題の責任を放棄し続けていること、さらに、増えたシカなどの影響で自然林の再生が非常に困難な状況になったこと、残された自然林まで一気に荒廃し始めたことなど、20年前には予想もしていなかったこのような新たな問題にも出会い、ますます問題解決がむずかしくなっており、熊森のような民間団体が啓発を繰り返して国を動かすようにもっていかなければならない等の方向性も示しました。

 

 

日本熊森協会はこの20年間、野生動物の命の尊厳を訴えてまいりました。野生動物の命の尊厳がわかるようになれば、残された自然を守り、壊し過ぎた自然を再生しようと思うようになるはずです。この熊森運動のバックには、全ての生き物たちと共に生きてきた祖先の文明を取り戻さなければ、近い将来、水源の森を失うばかりか、他者を思いやる優しい人間社会まで失い、日本文明が滅びてしまうという、私たちの強い危機感があります。

 

しかし、現実には、20世紀半ばから科学技術の驚異的な発展によって、地球上で唯一最強のの支配者となった人類は、他の生き物たちのことなど考えもせず、ますます大規模に自然を破壊する方向へと進んでいます。原発再稼働しかり、リニア中央新幹線しかり、辺野古の埋め立てしかりです。

 

この20年間に我が国の国会に出された奥山関連法案は、どれもこれも人間のしたことを棚に上げて、里に出て来るようになったからと野生動物たちを害獣視し、かれらの大量殺処分を促進するものばかりでした。戦後人間が壊した奥山を、野生動物たちのために復元・再生してやろうという法案など皆無でした。どうしてこんなことになるのか。原因はただ一つ、余りにも現代人がジコチューなのです。人類がこの自己中心主義を克服しない限り、他の生き物たちはもちろん、人類にも未来はありません。

今のようなことを続けていたら、やがて近い将来、私たち人間も滅びてしまう、そんな簡単なことさえ分からなくなるほど、現代人は狂ってしまっています。

 

この20年間を振り返ってみて、もし熊森がこの国になかったら、物言えぬ弱者である野生生物たちの立場に立ってものを言う人など誰もいないところだったという場面が多々ありました。

 

人間は何をしてもよいという欲望全開の破滅型物質科学文明の大きな流れに真っ向から対抗するこのような完全民間の自然保護団体が、会員の会費と寄附だけで運営され、分裂もせずここまで育ってきたこと、みなさん、これをあたり前と思わないでください。ありえないことなのです。

私たちは、熊森の発展は、21世紀に起きた日本国の奇跡の一つだと思っています。何度も何度も奇跡が起きて、奇跡の連続でここまで来れたことを思い返すと、今、この会をつぶしてしまったら、もう2度と誰にもこんな会は作れないのではないかと思ってしまいます。みなさん、絶対にこの会をつぶさないようにしてください。この後の20年も、そして、未来永劫にこの会を私たちの力で発展させましょう!

 

また、熊森には、報酬ゼロが条件の熊森の会長をやりますという若い2代目会長候補が育っています。これも当たり前と思わないでください。まず、ありえないことなのです。2代目会長候補は、本日午後からのプログラムの初めに、登壇いたします。

 

今の日本人は余りにも声を上げない人が多過ぎます。多分、自信がないのでしょうが、熊森会員のみなさんには、自分たちの言動が、全ての生き物と人類の未来を形づくっていくのだという気概を持って、家族、友人、同僚など、まわりの方々に熊森を語っていっていただきたいです。そして、私たちがそうであったように、一人の本気の人間が持つ力のすごさをご自身で確認していただくことを願います。

 

本日の20周年記念くまもり全国大会、最後までお楽しみいただくと同時に、参加していただいたみなさん同士で交流もしていただき、これからのことにも考えをめぐらせる有意義な時間にしていただけたらうれしいです。では、本日、最後までよろしくお願いします。ありがとうございました。

 

(後記)

熊森は、最前線には青年を立てるという運動方針で20年間やってきました。20周年記念大会でも、青年たちが中心になって運営、発表、みんなよく育ってくれて頼もしい限りでした。

当日は195名のみなさんと、20周年を祝い合うことができ、盛会でした。本当は、全会員の皆さんにご出席いただきたかったです。20周年ということで、新潟県から長年の企業会員であるM株式会社の社長さんが初参加してくださったのをはじめ、全国大会は久し振り、または初めてといった参加者も何人かお見受けしました。20年会員の参加もあり、みなさんに支えられてここまで来れたことを再確認しました。感謝でいっぱいです。また、10名の子供や20才の会員たちの参加に未来を感じ、うれしくなりました。後日、「熊森会員を増やしてみようと思うようになった。小冊子を送って欲しい」など、うれしいご感想も届いています。今は、自然破壊や野生動物の大量殺害が拡大する一方で、自然や野生動物と共生する意外に人間は生き残れないことがわかっている私たちには苦しい時期ですが、こんな時だからこそ、会員一同、心を一つにして、喜びや希望をもたらす活動をいっそう進めて参りましょう。

来年の全国大会は、4月28日です。今からご予定ください。遠方の方は申し訳ございませんが、旅費を積み立てていただき、何年かに1回は、全国大会にお集まりいただきたいです。 

 

「アントロポセンに生きる」20周年くまもり全国大会プログラムより

アントロポセンに生きる            会長 森山まり子

現代人は利口なようにみえて、実はもっとも愚かなことをしています。私たちの生存に必須の清浄な空気と清らかな水、安全な食べ物を与えてくれる地球環境を、目先の欲や快適さのために、あらゆる科学技術を使って年々その規模を大きくさせながら破壊し続けているのです。

 

地球46億年の歴史の地質年代表を見ると、現在私たちは最終氷期を終えた約1万年前から始まった完新世という地質時代に生きていることになります。ところが最近、「現在はもはや完新世ではない。20世紀の中ごろから、人類という動物が、物理的にも化学的にも生物学的にも、地球を完新世とは全く別の惑星に作り変えてしまった。現代は、アントロポセン(人新世)と呼ばれるべきであり、もはや完新世の地球に戻すことは不可能である」という説が出されています。

 

熊森20年の活動を振り返って、私が確信するようになったことは、どんな最先端の科学技術をもってしても、人間に自然をコントロールすることは不可能であるということです。最初、奥山に、動物の棲める森を復元してやろう(!)と思って活動を開始しました。しかし、多くの人に参加してもらって何度実践しても、自然界は、人間の思うようになど何一つなりません。私の中で、年々人間というものが小さくなっていきました。人間が自然に対してできることは、破壊だけです。研究者が野生動物の数をコントロールしようとするのは、かれらが本当の自然を知らないからです。アントロポセンに生きる私たちは、このことを知って、自らの生存をかけ、地球上に最大限の手つかずの自然地域を残していくようにしなければなりません。

 

クマ類編パブリックコメントに対する環境省回答についての熊森本部見解

<環境省解答の主なもの>

 
①、錯誤捕獲が発生した際は、どの都道府県であっても放獣する必要がありますとの記述について。

→→ (くまもり)現実問題として、誤捕獲グマの多くをまたは全てを捕殺している県に対して、環境省はどう指導するのか?鳥獣保護管理法第9条第1項の許可(=都道府県知事の許可)があったですませるのか?

 

②2003年以降、全国的な分布調査が実施されていない為、奥山のクマ生息状況は不明である。よって、クマの生息域が拡大したとの記述を改め、分布の前線が前進したと修文してくださった件。

→→(くまもり)調べていないことを認めた非常に大きな修正であり、高く評価したい。林野庁は戦後の森林政策の失敗の責任をとって、奥山森林生態系の荒廃ぶりを調査発表すべきである。今、生息地を破壊されたままになっている奥山にかつて生息していた野生動物たちも、それによって少しは浮かばれると思う。

 

③クマ類による森林被害を林業被害に修文してくださった件

→→(くまもり)クマは森林に被害など、何一つ与えません。当然のことながら、修文して下さった担当者の謙虚さを高く評価します。

 

④個体数水準において、幼獣を考慮した数値をガイドラインに示すべきではなく、成獣の個体数を示すこととすると断言してくださった件。

→→(くまもり)高く評価したい。

 

⑤ドングリを山に運ぶことについては、野生動物は愛玩動物ではない、給餌は自然のバランスを失わせる、植生の遺伝的多様性を攪乱するにより行うべきではないという回答の件

→→(くまもり)奥山生態系を本当にご存じないのだなあ。いまだにこんな誤解をしている人がいるのかと驚いた。この回答者(たち)と、じっくりと意見交換する機会を頂きたい。

 

 

<環境省の担当者に、くまもりより>

以前は、パブコメに対して、「今後の参考にさせていただきます」のオンパレードだったので、読んでくださったのかどうかわからなかったけれど、今回は、一つ一つに丁寧に回答してくださっており、誠実さを感じました。大変だったと思います。ありがとうございました。

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