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2017-07-07
第5回ストップ・リニア!訴訟(東京地裁)参加報告ーJR東海の環境影響評価のずさんさが鮮明にー
- 2017-07-07 (金)
- くまもりNEWS
昨年5月、国交大臣のリニア工事認可の取り消しを求めて738人が原告となり起こした「ストップ・リニア!訴訟」。
現在、リニア沿線予定各地で起きている、またこれから起こるであろう深刻な事態について、原告の県陳述が続いています。
これまで岐阜県、山梨県の原告の皆さんが意見陳述をしてきました。
2017年6月23日、第5回口頭弁論が東京地裁で開かれ、全国から約200名の傍聴希望者が集まり、入廷者の抽選が行われました。
熊森は毎回、本部リニア担当者をはじめ、何人かの会員が参加しています。
<原告の陳述>
今回の陳述県は長野県で、リニア中央新幹線の中でも最も難関工事になると言われている南アルプス貫通トンネル掘削の最前線にいる大鹿村釜沢集落で自治会長を務める谷口昇さん、その西側の出口となる松川町在住「飯田リニアを考える会」の米山義盛さんが意見を述べられました。
<JR東海の不誠実な態度と環境影響評価のずさんさ>
「水が抜けて一体誰が損害を受けるんですか」
上は、谷口さんが、長野県大鹿村がリニア工事によって受ける水源の水量変化について質問した時にJR東海側が発した言葉です。
口頭弁論の中で、谷口氏は、JR東海の自然環境や住民に対する姿勢の不誠実さを述べられましたが、まさにその通りだと感じました。
また、JR東海による環境影響評価のずさんさは、これまでも何度も指摘されてきましたが、今回の口頭弁論では、その点がさらにはっきりとしました。
長野県内の地図を見せて金枝弁護士が陳述されましたが、JR東海の計画には、変電施設も保守基地も非常口も、駅もすべて「概ね」の位置が、同じ大きさの丸印で記されているだけなのです。具体的な形状も大きさも何もわかりません。このような計画で、環境への影響評価ができるとは到底思えません。
大鹿村では、小日影銅山跡があります。リニアのトンネル掘削工事が鉱脈にあたる恐れがあり、そうなれば、周辺の土壌や水質汚染が危惧されるとして長野県環境影響評価技術委員会が事後調査の要請をしていましたが、評価書には反映されていませんでした。JR東海は、住民だけではなく、長野県に対しても不誠実であることがわかりました。
<口頭弁論後、訴訟1周年記念講演とシンポジウム>
ジャーナリストの斎藤貴男氏が「暴走するリニア新幹線」という題で講演され、リニアがいかに国策にかかわっているのかといった大変重要なお話をされました。この講演は別の回でブログに掲載します。
<残土問題>
リニア中央新幹線工事は、日本のど真ん中に延々と巨大なトンネルを掘るわけですから、水脈分断以外に今後大きな問題となるのが、残土の行先です。行先が決まらなければ掘り進められません。各地で、残土置き場候補地が挙げられてくるはずです。昨今の集中豪雨に見舞わわれれば、残土置き場が崩れるのは明らかです。自分の地域が残土置き場対象となった時、いかに反対を訴え、阻止するかが、今後の鍵になるということでした。
この集会には、日本自然保護協会の辻村千尋氏やJR労組からも出席があり、それぞれ、国際自然保護連合の決議により、他県への土砂移動ができなくなっていることや、コストカットや人員削減が進んで、地上でさえ安全輸送に不安があるのに、リニアの場合の事故は地下深くで起きるので、安全輸送は一層難しくなる等述べられました。熊森本部は、リニア工事によって森林破壊や森林劣化が起こり、水源の森が失われ、野生生物は生息地をますます奪われ、ますます殺されると訴えました。
事故があっても地域住民が困っても、国が原発やリニアを推進する理由を解明 斎藤貴男氏講演
- 2017-07-07 (金)
- くまもりNEWS
リニア中央新幹線を走らせるためのすさまじい国土破壊を初めて知ったとき、この計画は経済大国日本の繁栄を快く思わないどこかの国が、日本が二度と繁栄できないように国力を落としてやろうと仕組んだのではないかと、一個人として感じました。黒幕はアメリカか?などとも考えてしまいました。
祖先から受け継いだ私たちの生存基盤であるかけがえのない自然豊かな国土を、修復不可能なまでに破壊する、そんな事業を日本人が進めるはずがないと思ったからです。
6月23日、衆議院第一議員会館で行われたジャーナリストである斎藤貴男氏の講演「暴走するリニア新幹線」で、斎藤氏は、何があっても原発やリニアを動かそうと考えている人たちの思考を解明してくださいました。もし、これが本当なら、私たち一般国民にも責任があるような気がしてきました。
<原発やリニアを動かさなければならないと考える企業人たちのその理由>
(斎藤氏講演の要約)
我が国では、今後、間違いなく少子高齢化が進みます。
どんどん人口が減り、空き家でいっぱいになっていきます。
日本国内に本社を置く大企業にとって、確実に内需が減ってきます。
企業規模を小さくすればいいのですが、企業人は絶対にそんなことは考えません。
内需がダメなら外需です。
今もたくさん輸出していますが、これからは、今程度の輸出量ではやっていけない時代が訪れます。
内需が減っても大企業がさらに売り上げ規模を拡大して成長し続けるには、他の先進国と競い合ってでも国を挙げて国外の需要を獲ってくる必要が生じます。
それが、インフラシステム輸出という国策なのです。
開発途上国に、鉄道・道路・橋・ダム・発電所こういう社会資本、すなわちインフラをコンサルティングの段階から、つまり極端な話、どこに首都を作って、どこに第2の都市を作って、都市計画はどうで、高速鉄道や高速道路で結び、どこに発電所を作り、どこに工業地帯を作り、通信網をどうするかなど全部を、設計・施工・施行に使う資材の調達や完成後の運営メンテナンスに至るまで、全て、官民一体のオールジャパン態勢で獲っていこう。これが安部ノミクスの柱のひとつで、民主党も推進してきた政策です。
このようにして海外を市場として日本企業を成長させ続けていくには、①海外における資源権益の確保 ②在外邦人の安全対策が必要となってきます。日本企業が海外でテロに巻き込まれる恐れも生じてきます。そのような場合、政府は、お国のために身を挺して闘ってきた企業戦士を軍隊で守ってやらねばならないと考えています。よって、集団的自衛権行使容認や憲法改正が必要となってきます。
民主党の管首相も、海外に原発を売り歩きましたが、安倍首相も同様にしています。この原発と密接な関係にあるのがリニア中央新幹線です。リニアの消費電力量は新幹線の3倍と言われていますが、ピーク時の消費電力は40倍だそうです。これだけの電力をどうして手に入れるか。原発です。
リニア関西延伸の前倒しが決まりました。名古屋まで2027年、大阪までが2045年となっていましたが、この度2037年と短縮されました。そのために国は財政投融資3兆円を手当てすると決めました。なんとか東京オリンピックまでに東京ー甲府間のリニアだけでも開通させたいと言っている代議士もいます。オリンピックで外国人要 人がたくさん来る。リニアに乗ってもらいその素晴らしさを体感してもらって、輸出につなげたい。原発だけではなくリニアの輸出もやりたい。すでにJR東海の葛西さんはアメリカへのリニアの売り込みを進めています。もしうまくいけば世界に売り込める。原発を次々と再稼働させているのはそのためです。
反原発の人は、原発が止まっていても電力がちゃんと足りた、夏のピーク時だって乗りきった、これからますます少子高齢化なんだから原発なんかいらないよと言います。その通りなのですが、リニアを動かすためには増やさなければなりません。原発をインフラ輸出していくためには、我が国では危ないから動かしていませんでは、買ってもらえません。福島第一原発事故があっても原発は安全ですという説明をするためには、日本国内でちゃんと動かせていなければならないのです。企業人たちにとって、日本国というのは、原発やリニアを売り込むためのショウルームなのです。誰もこういうことをはっきり言っている訳ではありませんが、私はそう実感します。
(熊森から)
原発もリニアも、狭い日本には必要ないのに、なぜ推進しようとするのか疑問でしたが、インフラシステム輸出のためと言われたら、納得できます。
戦後、もっと速くもっと便利にもっと豊かにと、国内をコンクリートで固めて自然を破壊し続け、日本は大金持ちの国になりました。自然破壊ほどもうかる仕事はありません。今後はこれを海外でも展開していくということです。海外の自然を破壊して、日本企業が儲けて成長していこうとしているのです。
折しも7月6日の産経新聞に、<「いずれ橋は落ちる」老朽化したインフラの崩壊リスク>という大切な記事が一面トップに掲載されていました。20年後、7割の橋が建設50年を超えるそうです。コンクリートの寿命は100年と言われます。そのうち、一斉に橋が落ち、トンネルが崩れる時代がやってきます。少なくなった人口で、全てをメンテナンスなどできません。私たちが1回も経験したことのない、コンクリート崩壊の恐ろしい時代がやってくるのです。リニアも、やがて大深度地下で崩壊し始めるときがやってくることでしょう。事故が続出し、分解不可能なコンクリートごみの山だけが国中に残ります。現代文明は優れているようでも、いいのは今だけ、100年後は最悪の世の中となります。
将来世代のことを考えると、インフラシステム輸出までして日本企業は儲ける必要などなく、人口減に合わせて企業規模を縮小していくしかありません。儲けるために海外に出て、テロや戦争に巻き込まれるよりずっといいと思います。私たち国民も、成長神話を企業に求めてはならないのです。
これから日本がめざさなければなら文明は、つつましやかだがみんな幸福というブータンのような幸福度No1で持続可能な文明でしょう。