くまもりNews
水源の森の保水力と野生鳥獣の生息との密接な関係
- 2016-12-21 (水)
- くまもりNEWS
一度人間活動によって失われた水源の森の保水力を取り戻すことは、並大抵のことではありません。
何百年もかかるのです。
山からの湧水が消えた!このような取り返しのつかない事態を招かないように、ふだんから誰にでもできる簡単な水源の森の健全性をチェックするポイントがあります。
それが、当協会がシンボルにしているクマをはじめとする野生鳥獣の生息状況です。
野生鳥獣が豊かに生息している山は、保水力豊かな森で覆われている健全な森です。
日本で最高の保水力を誇る森は、熊が生息している森です。
以上が、だれにでもわかる・できる簡単なチェックポイントです。
以下、当協会顧問で水ジャーナリストの橋本淳司先生のブログからです。
日本の水道普及率は97.5%(平成22年)です。 都道府県別に水道普及率を見ると、100%普及している東京都、沖 縄県などがある一方で、熊本県の86.1%、福島県の89.6%と低い 地域もあります。単純に考えると約300万人が水道の通っていない 地域に住んでいることになります。 そういうと、こんな反論を受けます。 「だからといって水が飲めないわけではないだろう。そうした地 域の多くは山村にあって、沢水や湧き水や地下水などに恵まれた 地域なのだから」 たしかにそうなのです。いや、そうだったというべきでしょうか。 じつは最近になって事情が変わってきているのです。 数年前、宮崎県北郷町(現日南市)で沢から水が消えたことがあ りました。 ここは鰐塚山地の東端部にあたり、町全体が山地となっています。 町の総面積の約88パーセントが森林で、その大半は飫肥杉(おび すぎ)の人工林です。 沢水に頼っていた稲作は、新たに農業用水を利用せざるをえなく なりました。 町の人は水が消えた理由をこう言います。 「山を人工林に変えてしまったから、こんなことになったんだ。 もっと早くに気づくべきだった」 四国山地の中腹にある高知県大豊町でも、同じようなことが起き ました。沢水やわき水に頼って暮らしていた人たちから「水が涸 れた」という訴えが相次いでいるのです。 「ちょっと前まで山のわき水をホースで引いてタンクにためて飲 料水にしていた。それがどんどん減り始めた」 こんこんとわいていた清水の量は2000年頃から減り始め、ついに タンクに水がなくなり、町の水道を引かざるを得なくなりました。 どちらの町の関係者も、山の保水機能がなくなったためと考えて います。 放置された人工林は、遠くから見ると樹木が整然と立ち並び、緑 に輝く立派な山に見えるのですが、一歩踏み入れると、真っ暗で 地面にはほとんど草が生えていません。 かつてスポンジのように水を保つ力のあった土壌は、植え替えら れたスギやヒノキが放置されるようになると、カチカチのコンク リートのようになりました。水をためる力はなく、降った雨は山 にとどまることなく、すぐに低いほうへと流れていきます。 日本は世界でも雨の多い地帯であるモンスーンアジアの東端に位 置しています。国土の四方を海に囲まれ、あらゆる方向から湿気 をおびた風が吹き込み、それが日本列島の背骨である山脈にぶつ かり、雨をもたらします。 ただし日本列島を、仮に東西に切断してみると、その断面は先の 尖った三角形のようであり、三角形の頂点である山から、海に向 かって勢いよく水が流れていきます。 もしも手近に三角柱の積み木があったら、コップから水を注いで みてください。水は勢いよく流れていってしまうでしょう。次に 積み木におしぼりをかけてください。ここにコップの水を注いで もすぐには流れていかないでしょう。このおしぼりこそが森なの です。森が保水力を失えば、山に降った雨は一気に海まで流れて いってしまうでしょう。 生活に使っていた清水は、雨のたびに濁ってしまったり、枯れた りしているのです。
(熊森から)
今年も山からどんどん野生動物たちが出て来ました。当然のことながら、地元のみなさんは悲鳴を上げられ、役場に何とかしてほしいと訴えられました。一番簡単な解決法は、野生鳥獣を殺すことです。こうして、今年も大量の野生動物たちが殺されました。
しかし、こんな見方はできないでしょうか。
野生動物たちは、「山が荒れて棲めないよ!近々、湧水が消えるよ」ということを人間に伝えてくれている大切なメッセンジャーだということ。
私たち熊森のミッションは、人間活動によって動物たちが棲めないまでに荒廃した山を、動物が棲める豊かな森に再生させ、動物たちが昔のように山へ帰れるようにして、人間との住み分けを復活させることなのです。
兵庫県 クマによる人身事故3件目、発生現場に本部が急行
- 2016-12-20 (火)
- くまもりNEWS
12月15日、残念ながら兵庫県で今年クマによる3件目の人身事故が養父市で発生しました。
2016/12/15 神戸新聞NEXTより(下記URLをクリック)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201612/0009752927.shtml
本部スタッフは前2件の時と同様、すぐに現地へ急行し、ケガをされた方から当時の状況を詳しくお伺いしました。
現地は、山すその集落で、中学校にも隣接している場所です。
【以下、けがをされた方の証言】
〇事故前日に家の裏に置いてあった生ごみのごみ箱が消えた
「12月14日に、ごみ箱がなくなっていることに気づいた。ごみ箱があった場所から山のほうへごみが点々と落ちていたので、後をつたって裏山の急斜面を登って行くと、家から10数m離れた所にごみ箱が放置されていた。そのときは、まさかクマの仕業だとは思わなかった」
〇ペットフードもなくなっていた
「他にもなくなっているものがないかと、倉庫の中を調べると犬用のペットフード(6.5kg)が袋ごとなくなっていた。
〇人身事故発生
そして翌日12月15日の朝9時頃、なくなったペットフードを探しに裏山へ登って入ったところ、昨日ごみ箱が落ちていたあたりで、ササの繁みからクマが突然飛び出してきた。鼻息を立ててすごい勢いで向かってきた。クマを見たとき、あまりにも驚いてしりもちをついてしまった。クマが太ももの内側にかみついた。すかさずクマの鼻のあたりを3回蹴ったら、クマは少し引いたので、そのすきに一目散に家に逃げ込んだ。クマは、追いかけてこなかった。家の人に救急車を呼んでもらったり、警察などへ電話をしてもらったりした。
今思えば、ごみ箱とペットフードを山へ持って行ったのはクマだったんだと思う。今後クマが来ないよう、生ごみは家の中で管理することにした。
事故後すぐに、県や市の職員がきてくれて、散らばっていた生ごみを片付けてくれた。森林動物研究センターの職員も来てくれて、花火や声でクマを追い払ってくれた。
ペットフードはまだ見つかっていないが、たぶんクマが飛び出してきたあたりにあると思う。あのクマが近々またペットフード食べに裏山まで来るだろうと思うと怖い。」
〇くまもりが、裏山のササ原を刈り払う
12月16日、熊森は、ケガをされた方から詳しい状況をお聞きした後、大声を出して、クマに人間が来たことを知らせながら、事故現場となった裏山の急斜面を登っていきました。人の背丈ほどのササがあたり一面に生い茂っており、見通しが悪い環境でした。2時間ほどかけて刈払機で刈り払いを行いました。途中、クマが食べかけていたと思われるペットフードの袋がササ藪の中から出てきました。
中身が半分程減っていました。そこはクマが出てきた場所とほぼ一致していたので、事件発生当時、クマはペットフードを食べていたのだろうと思われます。このペットフードは、今後、家の中に保管して次のごみの日に捨てることになりました。
クマが現れた現場、ササが生い茂っており見通しが悪い
今年、兵庫県でこれまでに起きたクマによる2件の人身事故後、現地に捕獲罠が仕掛けられ、2頭のクマが捕殺されました。今回の事件を受け、県と市は、ここにもクマ捕獲用の檻を設置しました。命だけは助けてやってほしいとお願いしましたが、聞き入れられませんでした。蜂の巣が入っていますから、たぶん捕殺されるでしょう。
(熊森から)
山の実りが悪い今年、嗅覚が優れているクマは、野外に置いてある生ごみまで探し当てて食べようとしました。しかし、哀れにも、それが自らの命を奪われることになるのです。
クマが山から出て来なくても生きられるように、わたしたちはスピード感を持って、何とかもう一度山を動物の棲める豊かな森に戻していきたいです。みなさん手伝ってください。
兵庫県、今年度、クマ特別捕獲隊結成の計画なし
- 2016-12-18 (日)
- くまもりNEWS
以下に、12月13日井戸知事の定例記者会見の大意を記します。
記者:
クマ被害対策:今年は集落での目撃情報も頻繁にありました。捕獲以外の対応も検討が必要かと思います。クマを寄せ付けない対策(電気柵、緩衝帯)も何か取り組みのお考えがあればお聞かせください。
知事:
来年の取扱いは決まっていませんが、まだ、4頭しか捕獲できていません。いわゆるクマ狩猟解禁の800頭以上の実情が続いています。やはり猟に慣れていないというのが一番の理由だと思います.狩猟技術を磨いていただくような機会を作っていくということが、すぐに考えられる対応なのではないでしょうか。
ただ、出没件数は、解禁前は1か月に150件程度だったのが、解禁後は3分の1の50件程度に減っています。つまり、狩猟者が山に入っていただいたおかげで、クマが里に出てこないで山奥に隠れるような行動をとったのではないかと考えられます。
いわば、クマの生息域と集落の棲み分けが図られたという風に評価できるかと思っています。そのような意味で今後の課題は、頭数管理を徹底しないといけないということと、人家の周辺への出没抑制を行わなければいけないということです。
そのためには、周辺での有害捕獲や山中での狩猟による捕獲に加えて、集落を囲む里山で捕獲を検討する必要もあるのではないかと考えています。
それから、もう一つは、集落周辺でクマを誘引する果樹などを減らしてもらう、追い払いのための資材を準備していただいて、身を守っていただくようなことをするなどの工夫を狩猟とは別に行っていきたいと考えています。
(熊森から)
今年も、暖冬が続いています。兵庫県北部の熊生息地では、やっとのことで一部の地域に少し積雪が見られるようになりました。
11月21日の知事定例記者会見でのハンターによるクマ特別捕獲隊の編成案には、肝をつぶしましたが、県庁担当部署に確認すると、今年度は、そのような計画はないということです。ひとまずほっとしました。
しかし、それにしても、今回の知事の答弁を読ませていただいて、知事にいかに正しい情報が届けられていないかがわかり、愕然としました。
例えば、今年10月15日 ~11月14日までのクマの目撃数と、 11月15日 ~12月14日までのクマの目撃数を比べると、後者の方が激減していますが、これは、毎年のことで、今年クマ狩猟を再開したこととは無関係です。
南アルプスの豊かな森を守れ!12月9日第2回ストップ・リニア訴訟口頭弁論(東京地裁)にくまもり出席
- 2016-12-18 (日)
- くまもりNEWS
12月9日、ストップ・リニア!訴訟の第2回口頭弁論に行ってきました。
多くの方が傍聴希望者列に並び、抽選で入場者を決めました。おかげさまで、傍聴席は今回も満席でした。
日本熊森協会を代表してひとりが原告席のひとつに座り、東京、愛知、長野などから来てくださった会員の皆さんは傍聴席に座っていただきました。
今回からいよいよ実質的な被害を訴えていく段階となり、神奈川県相模原市の鳥屋(とや)に居住し、山林を所有する栗原氏が意見陳述を行いました。
栗原氏は陳述で、鳥屋では工事車両が一日1000台以上も走行することや、歩道が未整備の場所が多いことから、安全上の問題、騒音、振動、排気ガスなどの環境問題などが多く発生することが予測されると陳述されました。
このようにリニア工事は住民の生活に大きな負担をかけることになるにもかかわらず、JR東海の工事説明会では、工事対象地域や、当事者が誰なのかなど具体性に欠ける説明だったということです。
JR東海による説明会の不誠実さぶりは各地で耳にしてきましたが、地域住民に工事対象地域を知らせずに、説明会を持ったと言えるのでしょうか。
原告代理人の和泉弁護士がその後意見陳述をされ、鳥屋は、景観が美しく、ぜんそく治療のために移住される人がいるほど自然環境に恵まれた場所であることを述べてから、鳥屋の標高310mに建設予定の長さ2km最大幅350m(面積50ヘクタール)という巨大な車両基地について、図を用いて説明されました。
この施設が建設されることで、鳥屋地域の気候が変わってしまうことや、地域が分断される被害などについて述べられました。
図を見せて頂いたことで、いかに巨大で圧迫感のある建物なのかがよく分かりました。
第3回~5回の東京地裁での口頭弁論期日は以下のとおりです。傍聴希望の方は、14:00から傍聴席の抽選が始まります。是非傍聴にご参加ください!
<口頭弁論期日>
第3回2017年2月24日(金)14:30~
第4回2017年4月28日(金) 14:30~
第5回2017年6月23日(金) 14:30~
以下のサイトで、訴訟に関してのより詳しい報告を読むことができます。
ストップ・リニア!訴訟原告団&リニア新幹線沿線住民ネットワーク
http://linearstop.wixsite.com/mysite
記事の裏だって伝えたい(フリージャーナリスト樫田秀樹氏のブログ)
http://shuzaikoara.blog39.fc2.com/
儲けにならないリニア問題の取材を続けておられる樫田氏は、取材のための交通費も用意できないほど、現在、経済的に困窮されています。少しでも余裕のある方は、カンパしてあげてください。
わたしたちは、子や孫、全生物に、お金よりも、不要なまでの便利さよりも、命を支える保水力豊かな国土を残してやりたいと強く願っています。
ぜひ、上記、ホームページをご覧になってください。
兵庫県井戸知事、それはないでしょう?!
- 2016-12-15 (木)
- くまもりNEWS
今回の大誤算、兵庫県の大恥に終わった兵庫県クマ狩猟再開結果に対する井戸知事のコメントを読んで、信じられない思いです。
井戸知事の発言要旨:
一定数のクマを狩猟できなかった場合、次なる対応を検討する。ハンターの方々に、クマ特別捕獲班を結成して協力いただく。クマが冬眠に入ってしまうので、その辺を検討した上で対応。
目標の140頭に対して4頭しか狩猟できなかったが、クマ狩猟を再開したおかげで、クマの目撃数が減ったから、一定の効果はあった。
井戸知事は、本来、やさしくて非常に賢明な方です。
失敗した政策にここまでむきになってこだわっておられるなど、誰かの入れ知恵でもない限り、考えられません。トップに立つ者にはあらゆる情報が入って来るので、いちいち真偽を確かめる暇はありません。取り巻く人達の人選には、厳しい審査が必要でしょう。
「知事、兵庫のクマが爆発増加して940頭になっています。狩猟を再開して140頭獲りましょう。そうすれば、環境省が決めている、安定個体群(注)800頭になってちょうどいいです。」
知事にこんなことを垂れ込んでその気にさせたのは誰なんですか。生き物への愛情が全くないおかしな人たちのいうことをまだ聞かれるのですか。クマの被害軽減のために必要なのは、生息地復元、被害防除、共存教育です。クマを殺すよりこちらの方が効果があります。今年起きた2件の人身事故でも、被害者が鈴をつけて歩いていたら、もうそれだけで起きなかった事故なのです。生息地の全戸に熊鈴を配っていただいたらどうでしょうか。
毎年11月15日に狩猟が開始されたら、クマの目撃数はどんと減っています。当然のことです。
担当者に、10月15日~11月15日までと、11月15日~12月15日までの、クマの目撃数の増減を過去にさかのぼって提出させてみてください。
今年、11月になって目撃数が減ったのは、クマ狩猟を再開したからでは決してありません。
こんな嘘を知事の耳のタレ込んで、自分たちの予測ミスをごまかそうだなんて、人間として恥ずかしいことだと思います。
(注)環境省は、成獣800頭と決めてちゃんとそう書いてあるのに、兵庫県にクマ狩猟再開の入れ知恵をした人は、どうも成獣という文字を見落として、兵庫県に伝えたようです。
熊森が、兵庫県クマ狩猟再開にあたって、成獣クマは800頭もいないので狩猟再開はおかしいと県に訴えたので、県は困ってしまわれたと思います。この件については環境省からも、兵庫県に質問が入っているはずなので、次回お会いした時に、県から説明していただこうと思っています。
県は、11月2日3日のクマ狩猟安全講習会において、「来年もクマ狩猟をおこないます」と宣言されたようですが、協議会や審議会無視の勇み足だと思います。この点も今後お会いした時にたずねようと思います。
ハンターたちがクマ狩猟をしたくないと言っているのに、殺生を勧めるなど大問題です。
兵庫県大誤算4頭、大恥の20年ぶりクマ狩猟終了 しかもクマ狩猟免許者誤射による死者1名発生
- 2016-12-15 (木)
- くまもりNEWS
例外的なほんの一部の人間の遊びのために殺されるなんて最低、犬死だ。どうか、兵庫県のクマたちよ、逃げ通してくれ。
狩猟中止要請署名に署名してくださった非会員の皆さんや全国の多くの会員が、祈る思いで不安な日々を過ごした兵庫県の20年ぶりクマ狩猟の1か月間が終了しました。この間、私たちが受けた精神的苦痛は相当なもので、私たちの訴えを無視してクマ狩猟を強行した兵庫県に、慰謝料を請求できないものかと思います。私たちは、自動撮影カメラを通して親しくなった兵庫のクマたちが撃ち殺されることに、強い心の痛みを感じる者です。
兵庫県の狩猟目標140頭、結果はなんと4頭!兵庫県の大誤算、大恥に終わりました。
県庁担当者のみなさんとはこれまで何度か交渉でお会いしてきましたが、みなさん仕事熱心できちんとした方々です。彼らが計画、実施していたなら、ここまでの誤算はなかったと思われます。悲しいかな、彼らは公務員で、部署を転々と異動させられている運命であり、現担当者もこの部署は、今年からなのです。クマ問題に関しては、24年間もやってきた私たちと違い、完全に素人なのです。
今回の大誤算は、県庁新担当者にレクチャーした研究者の責任と言っていいでしょう。
こんないい加減な政策を県に勧めて兵庫県に大恥をかかせた研究者こそ、責任を取らねばなりません。こんな研究者を県の研究者として雇った責任が県にはありますが。
しかしまあ、自然界は本当に人間の頭では把握などできない複雑な世界ではあります。
今回のクマ狩猟再開にあたって、私たち熊森が、
・兵庫県のクマの生息数が兵庫県森林動物研究センターの研究者が言うように、20年前の60頭と比べて15倍の940頭に爆発増加したなどあり得ない。
・多くのクマは大荒廃した山に棲めなくなり、人里近くにいる。自動撮影カメラで確認している。
などと、何回も県や知事にお伝えしましたが、みなさんは肩書につられて、兵庫県立大学教授の言うことの方を信じて政策を組み、実施されました。
肩書のある人が言った事でも、こんなに外れることがあるということを、今回、身を持って知られたと思います。もちろん、肩書のある人はそれなりに優秀なのですが、自然を見る目に関しては劣っていたということでしょう。熊森は、もう少し自然を正確に見ることができる研究者をご紹介できますが。
それにしても、4頭。
届け出しない人や密猟者が必ずいると思われますから、+アルファはあるでしょう。
それにしても、わたしたちにも意外な結果でした。
私たちはこの間、兵庫の山中にいて、何も悪いことをしていない無実のクマが撃ち殺されないように、逃げろと祈ることしかできなかったのです。天が私たちの強い祈りを聞いて、味方してくれたのでしょうか。
私たちが恐れていたのは、ハンターが集落近くで猟をすることでした。そこには一定数のクマがいます。
ハンターは、危険を察知して、集落近くでは狩猟をしなかったのでしょうか。
なぜ、4頭の犠牲で済んだのか?
県の担当者とも、お互いの向上の為に、この後いろいろ意見交換をしていきたいと思います。
<予想される推察>
・そもそも940頭にクマが爆発増加しているという推察が間違っていた。(研究者の責任)
・そもそも、山の中はクマでいっぱいという予測が間違っていた。(研究者の責任)
・猟友会の方が会議で言われていたように、そもそも兵庫県でクマを獲りたいハンターなどほとんどいなかった。
・手負いのクマを作ってしまうと責任問題に発展するから、ハンターが撃たなかった。(県も、確実に殺せるときしか撃たないようにと指導されていました)
・今年は山の実りが凶作でしたが、多くの集落で、柿も不作だったので、秋に人目に付くところにクマが出なかった?
等々、もっと考えてみます。
ブログを読んでくださっているみなさんは、何が4頭だけの原因だったと思われますか。
それにしても、人間に生息地を破壊されたままの何の罪もない絶滅危惧種4頭が、無駄に殺されたのです。これはおかしい。
銃で撃たれて痛かっただろうな。
クマは体が大きいぶん、すぐに死ねずに苦しんだだろうな。
4頭の詳細な情報を県から貰ったら、お墓を作ってやりたいです。(合掌)
それにしても、狩猟期間が終わりかけの、11月11日に兵庫県佐用町で起きた誤射死亡事件には、関係者一同震え上がられたと思われます。
あれだけ熊森が、土地勘のない他府県のハンターをクマ狩猟に呼び込むべきではない。事故を起こすと訴えたのに、止めなかった県の責任はどうなるのでしょうか。熊森が事故ニュースを聞いてすぐに警察に確認したところ、誤射事件を起こしたのは、兵庫県のクマ狩猟許可を受けて入山していた大阪府のハンターだということでした。
県としてはこの事実はなんとしても隠したい事実でしょうが、こんなときこそ隠さずに、きちんと公表すべきで、そうすることによって信頼が生まれるのだと思います。
多くのマスコミ報道を見ると、この事件が単なる誤射死亡事件として報道されています。これまでも、クマ問題に関しては、県の並々ならぬ報道規制圧力を肌で感じてきました。マスコミのみなさんも、県を忖度してますます自主規制が強まっていると感じます。
しかし、報道は、自己保身のためにあるのではありません。少しでもいい世の中、正義感倫理感のある世の中を作っていくためにあるのですから、今回の佐用町の誤射事故も、どうしてこんなことになったのか、今回の無謀としか言えない兵庫県クマ狩猟再開問題と絡めて、きちんと報道してほしいです。
とにかく、兵庫県の皆さん、来年以降、こんな意味のないクマ狩猟はもうやめましょう。21世紀には時代遅れです。
奥山生息地を復元して、クマが山に帰れるようにして棲み分けを復活させ、西洋文化をまねるのではなく、祖先のすばらしい共存文化を取り戻していきましょう。
とよ君、冬籠り前の食い込み完了
- 2016-12-06 (火)
- 豊能町誤捕獲クマ「とよ」
かわいいさかりの元野生グマの「とよ」6歳。
ふだんはお寺の住職さんや副住職さん、くまもりお世話隊は毎週木曜日、みなさん愛情いっぱいに「とよ」のお世話をし続けてくださっています。
今年8月初め、とよは突然エサを大量に食べ始めました。冬籠りのための食い込みが始まったのです。あわててクマフードを追加注文しました。
8月の「とよ」
9月になると、秋の果物がどんどん入ってくるようになりました。
立って、木に吊られたブドウを食べる「とよ」9月1日
今年は去年より1か月早く、9月の末から地元のお店にお願いし、箱を置かせてもらうなどして、クヌギ、アベマキ、コナラのドングリを集めていただきました。(元野生グマのとよは、マテバシイやアラカシなど、暖地性のドングリは食べません)
(地元協力店)デイリーカナート光風台店・コープこうべ光風台店・ショッピングセンターときわ壱番地
おかげさまで今年は豊能町内で400キロ近いドングリが集まりました。みなさん、ほんとうにありがとうございます。
本部に集まった200キロと合わせて、600キロのドングリを入手することが出来ました。
とよは、クリやドングリを与え始めると、これまで食べてきたリンゴや柿には見向きもしなくなって、1日中、クリとドングリだけを食べ続けていました。
いったんドングリを口に入れ、殻をすばやく外にはき捨てて食べていきます。
9月29日 この時期、クリとドングリ以外はほとんど食べない
10月は、毎日10キロのドングリを平らげ、1日に出す糞は、大きな塊が12個。
「とよ」の好きなもの10月順位が出ました。
1、クリ 2、ドングリ 3、ブドウ(ヤマブドウ) 4、洋ナシ(ヤマナシ) 5、キウイ(サルナシ)
食べない物 ×カキ ×リンゴ
11月になると、1日に食べるドングリの量が7キロに減ってきました。
もうドングリを十分に食べ、冬籠りに必要な脂肪の貯えも終わったようです。
すると、以前のように再び柿やリンゴも食べるようになってきました。
水が好きですから、冬でも1時間に3~4回、プールに入って楽しんでいます。
兵庫県クマ狩猟再開を前に、テレビ局の取材陣が次々ととよを訪れました。とよは大活躍で、人々のクマへの偏見を是正する、重要な役を担ってくれました。
相次いだテレビ取材
そして、12月になった今、十二分に皮下脂肪を貯え終わり、動きも緩慢になってきました。最高気温が7℃以下になる日が来たら、もういつでも、冬籠りに入れます。毎日のドングリを食べる量は5kgまで減りました。
今年のとよの変化は、お世話隊の人達に急速に心を許し始めたことです。お世話隊の人が横にいても気にせずに食事をとるようになったし、じっとしてお世話隊の人にブラシで毛をすいてもらったりするようになりました。
12月1日の「とよ」 丸々と太っている
獣舎に藁を入れてやりました。
ツキノワグマ報道の功罪
- 2016-12-05 (月)
- くまもりNEWS
私の住む岩手県では、マスコミや行政によって多くの県民に「ツキノワグマ=凶暴生物」という図式が浸透し、本来の生息地であっても見かけただけで通報するという行動様式が定着しています。そのために年々「出没件数」が増加し、「有害」駆除されるクマが増えています。
私自身は、本格的にツキノワグマの生態記録を始めてから10年以上になります。これまで多くのクマと様々な出会い方をしてきましたが、ツキノワグマが危険な生物であると感じたことはありません。
むしろ、とても用心深い臆病者で人間のことをよく見ている知的レベルの高い(犬よりずっとかしこい)動物であると確信するに至っています。
ツキノワグマをはじめ多くの動物は、人間と生息域が折り重なったり隣接したりしています。人間は経済活動によって自らの生命を維持していく生き物ですから、野生動物の生息域でも資金を得るためには遠慮無く侵入していきます。そのために彼らとの軋轢が生じ、人の側が不利益を被ると「被害」を受けたと喧伝します。
今年の初夏に起きた秋田での悲劇(人にとってもクマにとっても)はその象徴であると私は思います。ちなみに、例年、クマとの遭遇により命を落とす方の数は、スズメバチに襲われて死亡する方よりかなり少なく、クマの事故がことさらにセンセーショナルに扱われる理由が何なのか、理解に苦しんでいます。
今夜のテレビ番組でツキノワグマがどのように扱われるかはわからないのですが、これまでも多くの報道番組に映像を提供してきた経験上、だいたいの想像はつきます。
番組制作に関わるほとんどの方々は、出会うことすら難しい生き物であるツキノワグマを実際に観察したり見たことがありません。そのような方たちが作る報道番組がツキノワグマの真の姿に迫ることは困難であると思います。
そのような番組に、おまえはなぜ映像や画像を提供しているのか、という声が聞こえてきそうですが、その生態のごく一部に過ぎないものの、人を避け、山野に懸命に生きるツキノワグマの姿を知っていただくために続けています。担当者の方とのやりとりも、クマについての認識を変えていただくことに少しは役立っていると考えています。
マスコミ関係の皆様には、「凶暴、殺人」などの用語や不安感を煽るような音楽の使用を控えていただき、クマという生き物に対する正しい認識を持つ方々の知見を重視し、正しく反映した報道を切望しています。
毎年、数千頭のクマの命が奪われている状況を当たり前のように受け入れている国民感情を作り出している原因の一端は、報道の在り方にあるからです。
クマとはどんな動物か アイヌ最後のクマ撃ち 姉崎 等 氏
- 2016-12-05 (月)
- くまもりNEWS
<※姉崎等氏の著書「クマにあったらどうするか」から要約>
クマは怖い動物ではない。元々臆病な動物だ。クマは人間が怖い。
クマが人を襲うのは、クマが人に襲われると思った時で、本来は人を襲わない。どっちかというとクマはおとなしくて平和主義者です。
(共存するための棲み分けラインを)クマは守ってきたけれど、人間は守らなかった。ルールを守るのはクマ、守らないのは人間だ。
今は、山菜採りだとか渓流釣りだとかで、人間がクマのエリアに大勢入り込むようになり、クマがかわいそう。クマが悪いんじゃなくて、人間が全部原因を作っておきながら、クマを悪者にしている。クマは危険なものだという考えを改めないといけない。
クマは確かに腕の力も爪の力もすごくて、その気になれば一撃で馬も倒せる。それによって、獰猛だというイメージが作られているけど、人間を食おうなどとは考えてもいない。一番悪いのは、知ったかぶりしてクマは獰猛という人間だ。
クマが死体を食べるのは、動物の本能。
クマはクマなりの存在価値があって、この世になくてはならないものだと思う。
<片山龍峯氏のあとがきより>
(クマなどいなくてもいいというヒトがいるが、)一撃でヒトを倒すことのできる強烈な力の持ち主がこの世に存在することを知ること、ヒトがそれに畏れの心を抱くこと、それはヒトが思い上がり、暴走するのを抑制するのにどれほど役立つことだろうか。
2016年 ツキノワグマが大量に殺処分されていた
- 2016-12-05 (月)
- _野生動物保全
今年は、山の実りが悪いと言っても、近年に過去3回あったような、ありえないまでの異常凶作年ではありません。であるのに、熊森本部の全国都道府県への電話聞き取りでは、現時点でわかっただけでも、秋田県の470頭を筆頭に、全国で有害捕殺数されたツキノワグマの数は、合計2924頭にものぼっています。この時期、秋の有害捕殺数集計がまだ出ていない県がいくつかありますから、捕殺総数は、まだまだ増えるものと思われます。
今年の春、秋田県のネマガリダケ採取現場で起きたクマによる死者4名の事故が、「クマは凶暴、殺すべし」という流れを全国に作ってしまったのでしょうか。
<西日本での2016年クマ有害捕殺数>単位:頭
滋賀県0、京都府54、兵庫県29、鳥取県69、岡山県10、
広島県46、島根県94、山口県21
今春の秋田の事件の時、クマ研究者を名乗るコメンテーターの人食い熊、殺人熊、凶暴グマなどという言葉を、裏付けも取らずにセンセーショナルに全国に流したマスコミの責任は大きいと思います。これらの報道が、本来の臆病で平和的なクマ像を、すっかりゆがめてしまいました。
神のみぞ知るですが、わたしたちは、秋田で今年、人食い熊や殺人熊、凶暴グマが誕生したとはとても思えません。
人間が至近距離にいるのに気づき、クマが恐怖のあまり逃げようとして一撃をくらわしたら、人が亡くなったということも考えられるのではないでしょうか。その後に、現れた別グマが、死体を見つけ、森の掟に従って、片付けようとして食べた。こんな推理も成り立つのではないでしょうか。(現地近くで射殺されたメスグマの胃内容はほとんどがタケノコで、少し人肉が入ってたという報道から想像)
シカの死体を食べるクマ
山に放置されたシカの駆除死体のそばに自動撮影カメラを掛けると、クマを初め、イノシシ、キツネ、タヌキ、テンなどいろいろな森の獣、猛禽類、ハチなどの虫たちが次々とやってきて食べ、片付けてしまいました。大昔から連綿と続いてきた森の掟です。
クマは現在、草食動物に近い食性となっていますが、シカなどのように完全な草食動物ではなく、本来は人間と同様、雑食動物です。他の動物の死体はもちろん、川魚などが豊かであった昔は、魚も採って食べていたと思われます。