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自動撮影カメラの電池とSDカードの交換にボランティア大活躍:兵庫県波賀町

9月1日、熊森本部職員羽田はボランティアさん4名と共に、兵庫県宍粟市にある(公財)奥山保全トラスト所有の戸倉トラスト地に赴きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤線内がトラスト地  土色部分はスキー場

 

熊森がトラスト地内の動植物の調査を17年間継続中

 

2006年に購入したこのトラスト地は、東西に細長くて、一番上は鳥取県と兵庫県の県境に位置する赤谷山山頂1216メートルです。面積は広大で120ヘクタールもあり、購入当時から日本熊森協会の調査研究部が、動植物の生息調査を続けてきました。

 

山の下の方はコナラやクリが中心、上の方はブナやミズナラ、トチを中心とした生物の多様性が保たれた原生的な巨木の森でした。森からの大量で清らかな湧水が印象的でした。

 

周りの山々は戦後のスギの人工林で埋め尽くされてしまった感じですが、この山主さんは若くして大阪に出られていたので、山の下の方の一部を植林されただけで、奇跡的に?自然の森が残されたのです。

 

初めて山主さんにお会いした時、「どんな動物が棲んでいますか」と聞いたら、「クマさん!」とうれしそうに答えられたのを思い出します。

 

購入当時は、まだふもとの集落に多くの方が住んでおられ、ナショナル・トラストって何だい?別荘を建ててもうけるんかなど色々といぶかしがられたものです。それでも、秋になると谷がモミジなどの紅葉で赤くなること、谷川には30センチくらいのヤマメがいて、女でも手づかみで捕まえられたことなどいろいろお話しくださいました。なつかしい思い出です。

 

そんな集落の皆さんでしたが、雪が年々少なくなってきて、スキー場経営(戸倉スキー場)も苦しくなられたもようで、だんだんと集落に空き家が目立つようになっていきました。

 

森の方も、温暖化の影響か、ナラ枯れが進み、ササが消え、年々急速に劣化していきました。今や、森がスカスカになってしまって、見るも無残な姿になってしまいました。

 

森購入当時は動物たちも多くいて、クマの糞や足跡も簡単に見られましたが、今は見られなくなってしまいました。

 

現在、戸倉トラスト地内には10台のカメラが設置してあります。今回は、川沿いに設置した手前の4台に絞って、電池とSDカードの交換を行いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チシマザサが消えた林内

 

 

この日は気温26℃。景色もなんだか涼やかに見えました。

 

ボランティアの方々と作業

カメラ1台につき、8本の単三形電池と1枚のSDカードが必要です。ボランティアの方々にカメラの説明をしながら、順番に1台ずつ交換作業を進めていきます。

電池の向きやカメラスイッチのONとOFFなど、間違えてはならないポイントがいくつかあるので、注意力を集中させねばなりません。皆さん真剣に根気強く取り組んでくださいました。

熊森はボランティア団体なので、会員の皆さんがこうやって無償で手伝ってくださいます。本当にありがたいことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作業中のボランティアさんたち

 

この日は雲がかかってやや涼しい日でした。カエルなど水辺の生き物がたくさん見られた一方で、ヤマビルがものすごい数いました。長靴とズボンの隙間をガムテープで塞ぐなど、万全の対策をして臨んだので、誰一人血を吸われずに済みました。

 

 

回収したSDカードの中をチェック

シカとイノシシが少し写っているだけでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オスジカ

 

以前はクマをはじめ野生動物たちが多く映っていたそうで、少し悲しい結果ですが、これからも調査を続けます。

 

山からの湧水の量も年々激減してきています。

日本の山の荒廃は、

1,人工林を造り過ぎたことだけではなく、

2,クマたちが生息していた1級の天然林も急速に温暖化で劣化していっている事実

を、マスコミは国民に伝えるべきです。

でなければ、最近なぜクマが山からどんどん出て来るようになったのか、奥山調査などしない国民には理解できません。

その結果、人間活動の被害者であるクマが、まるで加害者のように誤って報道されています。(完)

二酸化炭素地球温暖化説は本当ですか 後半

地球温暖化説を唱える方々が出すグラフは、以下です。

 

 

 

 

 

 

 

このようなグラフを見たら、多くの人は大変な事態が進行していると感じますよね。このような資料の出し方は、政策者であって科学者とは言い難い。政治家もマスコミも、このような資料提示に何の疑問も持たずにさっと受け入れてしまうのかと思うと、とても怖いと思いました。世界の多くのリーダーたちまでもが受け入れています。

学校で習ったことを思い出してして考えると、以下の予測もできます。

地球の気温は、温暖と寒冷を繰り返してきました。以下は、42万年間にさかのぼる空気中の二酸化炭素濃度と気温の変化です。

二酸化炭素は炭酸水でわかるように、気温が上がると海水中に溶けていたのが空気中に出てきますから、温暖期の空気中の濃度は高くなります。気温が下がると二酸化炭素は水によく溶けますから、海水によく溶けて氷期の時の空気中の二酸化炭素量は減ります。それだけのことです。氷期と間氷期の気温差は10度もあります。これが私たちの地球の姿なのです。これによると、地球は今後、氷期に向かうことが予測されます。

 

 

 

 

 

 

 

地球のことは、まだまだ人間にはわからないことでいっぱいです。皆さんは二酸化炭素地球温暖化説をどう思われますか。

熊森にもいろいろな考えの人がいますが、多様性を大切にしたいと思います。この問題については、わからないことが多いので、これからも見ていきたいと思います。

熊森本部に送られてきた雑誌の記事を以下にご紹介します。私と同じようなことを感じられた方がいるようです。

『週刊金曜日2022年12月2日号』の記事だそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再エネ事業者の皆さんは、再エネ事業で利益を出すことしか考えておられないように見えますが、地球温暖化説をどう思われているのでしょうか。もう日本は、十二分に自然を破壊してきました。人間が今後もこの国で生き続けたいのなら、湯水のようにエネルギーを使う今の生活を見直すこと、自然破壊型の再エネがどうしても必要なら、すでに自然を破壊し尽してしまった都市で行うことです。

これ以上、自然を破壊し続けると、水源や生物の多様性を失って、日本もかつて滅びた文明と同じ道をたどることになります。みんなで自然破壊ノーの声を上げましょう。

(完)

 

二酸化炭素地球温暖化説は本当ですか 前半

年や地方によって違うのでしょうが、最近、昔より温かくなったと感じます。戦後、人類が発電や暖房などに天然ガスや石炭、石油を大量に燃やしだしたから、その燃焼による熱だろうと思っていました。

 

そのうち、二酸化炭素地球温暖化説が叫ばれるようになってきたので、空気中に排出された二酸化炭素が地球温暖化にどうかかわっているのか、一度きちんと勉強しておきたいと思うようになりました。数年前、この説の第一人者の講演が大阪であると知って、まず講演から入ろうと聞きに行きました。

 

私は二酸化炭素濃度が地球の気温にどう関係するのか、どのような実験をして確かめたのか興味津々だったのですが、そのような話しはなく、空気中の二酸化炭素濃度の増加を一刻も早く抑えないと、地球は灼熱地獄になってしまうという内容のものでした。

 

現在、二酸化炭素濃度は400ppmを超えたということですが、3億年前は2000ppmを超えていたはずです。しかし、地球は恐竜が繫栄していたいい時代でしたから、別に灼熱地獄でも嵐の連続でもなかったんだろうと思います。400ppmを超えたことがそんなに恐ろしいことなのでしょうか。地球の気温変化は太陽の活動をはじめとするいろいろなことと密接に関係しているはずなのに、気温変化の原因として二酸化炭素濃度しか取り上げられていませんでした。

表示されたグラフは、二酸化炭素濃度が増え続けている産業革命以降のもの。地球の歴史がわかるもっと長いスパンの資料を出してほしいと思いました。

このような資料のつくり方は、ワイルドライフマネジメント(野生鳥獣の保護管理)の必要性を示す際にも用いられており、大いに疑問です。生息推定数が増加し続けている近年の短いスパンだけをグラフ化して、野生動物の数が激増し続けています、頭数調整捕殺を実施しなければならないと結論付けるのです。長期的に見れば、これだけ自然を破壊し続けてきた日本ですから激減しているはずですが。二酸化炭素地球温暖化説も同じ手を使うのかと不信感を持ちました。

 

講演後の質疑応答の時間に、参加者が、「一刻も早く、二酸化炭素の排出量を押さえねば大変なことになるということがよくわかりました」と、口々に述べられていました。この講演だけで、そんな結論は出せません。

私は場違いを感じて、会場での質問を遠慮し、会が終わってから講師に個人的に質問してみました。「先生、空気中の二酸化炭素が地球温暖化にどう関係しているか、どんな実験をされて確かめられたのか知りたくて来ました。どんな実験をこれまでされたんですか」

すると、講師の答えは、「私の本を読んでください」。実験して確かめた話はありませんでした。二酸化炭素地球温暖化説は、科学実験した結果の説ではないということなのかと感じました。

 

空気中の過去の二酸化炭素濃度は、木の年輪などいろいろなものを使って測定できるようですが、大体、以下のグラフのような形になっています。週刊エコノミストの資料に、当方が恐竜時代、大森林時代、魚類出現の3つを加えてみました。これは、古土壌を用いた推定値だそうですが、現在の二酸化炭素濃度は、6億年間までさかのぼってみると今はかなり低いことがわかります。後半へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日弁連が山林破壊型再エネ問題シンポジウムin東京

2022、12、5

日本弁護士連合会の再エネ問題オンラインシンポジウム

12月5日(月)午後、4時間にわたる日弁連主催の再エネ問題オンラインシンポが開催されました。平日の午後で長時間にもかかわらず、約350名の方が参加され、関心の高さがうかがえました。

 

左上が熊森、室谷悠子会長。日弁連のプロジェクトチームの委員として、コーディネーターを務めました。

 

熊森の室谷悠子会長は2時間に亘るパネルディスカッションのコーディネーターを務めました。

 

パネルディスカッションでは、様々なテーマが議論されました。

 

熊森から

日本では、土地所有者の「財産権」を守ることが重要視され、住民の生命や健康をおびかす開発規制が十分にできてこなかった経緯があります。「財産権」は、国民の持つ権利の中で一番下に位置するもので、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利である「生存権」より優先されてきたのはおかしな話です。

 

また、地方自治体が弱腰で、事業者から訴えられることを恐れ、住民の「生存権」より、問題のある事業を認可する方を選択してきた実態が浮き彫りになったように思います。住民や国民は、国民の権利の一番上にくる「生存権」を堂々と主張して、もっともっと強く声をあげていく必要があります。地方自治体は、業者の利益のために存在しているのではなく、住民のために存在していることを、今一度自覚していただかねばなりません。

 

たとえ財産権が国民の権利であったとしても、森林や自然生態系が私たちにもたらす、水源保全、災害防止、生物多様性保全、温暖化防止などの恩恵を考えれば、これらを破壊する事業を規制することの方が優先されるべきで、法的にもそれで問題はないと、パネリストたちの見解も一致していました。

 

国土大破壊をもたらしている再エネ名目の乱立投資事業から国土をどう守るか、令和を生きている私たち全国民の大人の責任は限りなく大きなものです。

 

私たち国民から毎月天引き徴収されている再エネ賦課金が、これらの投資家のもうけとなる仕組みを知れば、全国民が再エネ国土大破壊に声を上げる権利があります。

兵庫県クマ生息地の氷ノ山調査

2022年11月4日(金)、熊森の若い職員らが、主原顧問と共に氷ノ山(ヒョウノセン)の調査を行いました。

氷ノ山は兵庫県と鳥取県の県境にあり、標高1510メートル、兵庫県の最高峰で、兵庫県のクマ生息地の中心です。現在山の状態がどうなっているのか調べて、今後の熊森活動に反映していくのが目的です。

 

氷ノ山の植生

1、原生林

天然スギ、ブナ、ミズナラなどの巨木の森です。

この時期、葉が落ちてしまっているのはブナ、葉が赤くなっているのがミズナラです。緑色は天然スギです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原生林

 

クマの痕跡を探してみましたが、古いクマ棚が一つ見つかっただけです。主原先生によると、クマは古い巨木よりも、登りやすいもう少し新しい木に登るとのことでした。

 

2、伐採跡の人工林と2次林

入らずの森だった氷ノ山ですが、戦後、人間がどっと入り込んでパルプ材を作るために大量の樹木を皆伐しました。その結果、頂上付近は、ササ原になってしまいました。自然界では、親木が倒れた空間に、親木の下で長年待っていた稚樹が突然成長し始めて、元の森に戻ります。しかし、皆伐されると、ササが優勢になってしまい、樹木が戻らない場所が生まれるのです。皆伐跡地にスギが植えられた場所は、人工林として今に至っています。伐採後、植林されなかった場所にはコナラなどが入って落葉広葉樹林が形成され、下の写真の姿になったところもあります。人手が入った山と原生林の見分け方がわかりました。

コナラは薪炭材として古くから利用され、炭の原料となりました。東北ではコナラを使って白炭を作るそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

濃い緑色はスギの人工林、他は紅葉が鮮やかなミズナラやコナラの2次林

 

氷ノ山の中間温帯はケヤキ、シラカシが多く、ミツマタは和紙の原料として利用されます。

そこから標高が高くなって冷温帯に入るとウラジロガシ、ミズナラ、ブナに変わっていきます。中間温帯とは暖温帯と冷温帯の間に位置する気候帯の事です。

ブナの落葉は早いので、この時期は他の木と見分けやすくなります。氷ノ山のミズナラは、ナラ枯れと言って、カシノナガキクイムシという小さな虫が持ち来むタフリナ菌で多くが枯死してしまいました。

カエデ類の種類をみることによって標高帯を分けることができます。カエデの種類によって生育できる場所が違うからです。冷温帯では山の下の方からヤマモミジ→ハウチワカエデ→イタヤメイゲツと変わっていきます。

 

3、ドングリについて

①ミズナラ(落葉)

このドングリはタンニンが多く含まれているので、動物の中でもそれを分解できるツキノワグマしか食べることができない。ネズミなどのげっ歯類は食べるとタンニンを分解できずに死んでしまう。

②ウラジロガシ(常緑:葉の裏が白い)

隔年成熟なので、1年ごとにドングリが実る年と実らない年を繰り返す。

③シラカシ(常緑)

今年ハイイロチョッキリというゾウムシによって実が落とされている。

ウラジロガシとシラカシのドングリの違いは、ドングリの先端の細いのがウラジロガシで太いのがシラカシ。

 

 

 

 

 

 

 

 

左がウラジロガシ、右がシラカシ

 

 

4、ショックだったササ枯れの発生

氷ノ山はまだ林床にチシマザサが生い茂っており、良かったと安心したのですが、よく見るとあちこちでササが枯れて茶色の葉になっていました。春、チシマザサのタケノコであるスズコはクマの貴重な食糧で、スズコのあるところ必ずクマが食べに来ていると言われるぐらいです。ササが失われることは、クマには致命的です。

ササが部分的に枯れるなど今までなかったそうで、原因は地球温暖化のようです。

ササが消えると土壌が水分を維持できなくなってしまいます。そうなると、乾燥に弱いブナが枯れだすことも考えられます。

ミズナラも枯れていますから、この上ブナ林までが消えると、秋のクマの食料が不足し、大変なことになります。冬、ササは雪に埋まり、―15℃で休眠状態に入ります。春先に休眠状態が解除されたあと、再び突然気温が下がるとあっけなく枯れてしまうそうです。昼夜の大きな温度差についていくことができずに枯れてしまう凍害も併せて起きているようです。ササはわずかな気温の変化によって、枯れるというダメージを受けることがわかりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

黄色い部分がササの枯死

 

5、シカ

兵庫県はシカの生息数が多いため、多くの地域でササをはじめとする森林の下層植生がシカに食べ尽くされています。

しかし、全てシカが悪いわけではないと思います。山の自然林を伐採して一面スギ・ヒノキの人工林に変え、野生動物たちの食べ物を奪ってしまった人間に大きな責任があるのではないでしょうか。

シカが多く生息する地域ではせっかく広葉樹の苗木を植樹しても、すぐシカに食べられてしまい、苗木が育たないケースがほとんどです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ササがシカに食べられた痕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シカが多い所では、下層植生がほとんど消えている

 

6、兵庫県のクマ対策である柿もぎ

兵庫県はクマとの人身事故を防ぐために、地元の人たちに柿の実を早く収穫するか、柿の木を伐るように指導してきました。みごとに山裾から柿の木が消えましたが、、集落の柿の木が残っていると、クマは集落に入っていきます。山里の人たちの中には、「クマが柿を食べに来るのは昔から当たり前で、クマが来ている時は家から出ないようにする。昔からそうして共存してきたから、クマが来ても問題ない。」と言って、柿を残しておく方もたくさんおられたそうです。

 

 

7、今回、進む山の劣化に危機感

氷ノ山はクマが棲んでいるだけあって豊かな森です。しかし、確実に山の衰退は始まっていました。クマをはじめとする野生動物たちが生息地や食べ物に困って、山から出て来ることは避けられないと思いました。戦後、原生林を大規模伐採したことや、奥山にまで人が入り込んで道路を造り続けたこと、原因は皆人間が作っています。これ以上山が劣化すると、野生動物と人間の共存はより難しくなってしまうかもしれません。

何とか野生動物の生息地を復元し、山の劣化を防いでいきたい。熊森はがんばります。(羽田)

宮崎県高千穂での森再生過程を知るため、トラスト地で方形調査

10月8日(土)

(公財)奥山保全トラストが所有する宮崎県高千穂トラスト地で、奥山保全トラストと日本熊森協会が合同で、皆伐跡地で自然林の再生がどのように進んでいるのか調査することになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トラスト地看板

 

高千穂は天孫降臨の地ですが、この辺りの山は戦後の拡大造林政策によって、今やスギの人工林で埋まっています。

この地をなんとか少しでも元の保水力豊かな自然林に戻せないものかとの思いから、2009年、奥山保全トラストが、標高500-600mにある約2ヘクタールの人工林の皆伐跡地を購入しました。

皆伐跡地の頂上部には自然林が少しだけ残されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白破線内が購入当時のトラスト地

 

この年、さっそく購入した山の下の部分に、実のなる木の苗を植樹しました。2010年の夏には下草刈りも実施しました。しかし、よく見ると、植えた覚えのない多様な芽生えが苗木よりも元気に育っていました。この地域では植樹などしなくても自然再生で森に戻るのではないかと思い、植樹をやめて様子を見ることにしました。

 

あれから12年が経ちます。

 

今回の調査参加者は、指導してくださる広島フィールドミュージアムの金井塚務先生、両団体の職員、日本熊森協会本部応援隊、宮崎県支部(チームくまもり)のボランティアの方々、計8名です。

 

方形調査とは正方形の調査区画を設定して、その中で生育している植物の状況を記録するものです。年単位で継続して行うことで、年ごとの植生変化を明らかにし、森を再生する過程で何がどう変わったか明らかにするのが狙いです。

まず初めに、金井塚務先生に、調査のやり方や植物の種類判別を現場で教えて頂きました。

 

赤線内が現在のトラスト地

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場は想像していたより遥かに急斜面!

そこを杭などの道具を持って上がるのはとても疲れました。

移動しながらの測定調査では、気を抜くと斜面を転げ落ちてしまいます。

時には滑り落ちながらの調査となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斜度、38度!

 

方形作り

 

基準点を決めて杭を打ち、GPSに記録。基準点からコンパスグラスを使い、最初に張ったロープから角度90度の位置を定め、そこに杭を打つ。

これを繰り返して15m×15mの正方形を作り、その中で5m×5mの合計9区画のメッシュを作成し、杭を打ってロープを張る。

場所を変えてこれを2か所作ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い杭を打ち(左図)、ロープを張っていきます(右図)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロープで正方形を作る

 

調査

各5mメッシュ内の胸高直径1cm以上の木本を調査対象とする。

樹木の位置、樹種、太さ、高さ、その他気づいたことを記録用紙に書き込む。

樹木の種類を同定する必要があるので、図鑑が必要。分からない場合は写真を撮り、位置を明確に記録して後で調べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹木の太さを測定しています

 

今回は上部と斜面下部の2ヶ所で調査を行いました。

 

斜面上部

元々自然林だった場所で、シイ類・カシ類など常緑の広葉樹が優占種。大部分がアラカシで、シラカシ、ウラジロガシ、スダジイなどが混ざっており、この地域の本来の植生と思われます。他にツバキとケヤキも生育していました。下草はほとんどありませんでした。

 

斜面下部

皆伐跡地には既に人間の背丈を超える高さにまで木々が育っており、アカメガシワが優占です。他にタラノキやカラスザンショウが生えてきていました。皆、皆伐跡地にいちはやく入ってくるパイオニア種(先駆種)である落葉広葉樹です。その間にハンノキ、エゴノキが入り、林床にはアオキが多く生えていました。やがてこの場所も、上部と同様、常緑の広葉樹林に遷移していくものと思われますが、地球温暖化が進む今、森の遷移はこれまでと違ってくることも予想されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記録用紙

 

今後はデータロガーを用いて温湿度、水温を記録し、植生との関連等を考察したり、自動撮影カメラを設置して、この地に生息する野生動物を撮影して、森がどのように再生されていくのか継続調査していくことになりました。

最後に、今回の調査に参加してくださったみなさんと、地元のすばらしい林業家である興梠さんを訪問し、お話を聞かせていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

左から2人目が興梠さん

調査に参加してくださったみなさん

今後、岡山県若杉天然林で原生林ツアーは可能か

熊森結成以来25年間、毎年夏に本部が実施してきた若杉原生林(岡山県西粟倉村)ツアー。

 

この原生林では炭焼き窯の跡が発見され、200年前に一度ブナが伐られてタタラ製鉄用の炭に利用されたことが近年判明しました。(若杉天然林に名称変更される)しかし、その後は幕府によって森が守られてきたのでしょう、200年のブナの巨木群が繁る原生状態の生物の多様性が保たれたすばらしい冷温帯の森83haです。(でした。)

 

今年の若杉天然林ツアー。

入り口前駐車場に到着。周辺は、よく手入れされた裏スギの人工林です。間伐が行き届いているため、下層植生も育っています。

トイレ周辺は、他所から持ってきたドウダンツツジ、ヤマボウシ、ナナカマド、イロハモミジなどの植栽木が育っています。

 

天然林内に入ります。

入ったところのビニールシート群には、ぎょっとさせられます。

ナラ枯れの直接の原因である約5ミリの昆虫、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が拡散しないよう、枯れたミズナラの木を伐って虫ごとビニールシートで覆ってあるのです。なぜ、カシナガが冷温帯で大繁殖しだしたのか、原因はよくわかりません。各地でいろいろなカシナガ対策が取られましたが、現在、有効手段がありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カシナガが拡散しないように、枯れたミズナラの木を小さく伐って厚いビニールシートで虫ごと覆ったもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳を澄ませて谷川の音を聞く。原生林・天然林は、私たちの水源の森です。

 

 

 

 

 

 

 

湧き水

 

夏なのに谷川の水が冷たいのは、雨水ではなく湧き水だからです。

例年の水温測定で、以前は17度でしたが今年は19度。

 

 

 

 

 

 

 

 

老木が倒れてできたギャップ。日光が入り次の芽生えを育てます。原生林の特徴です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熊森職員がわずかな生き物としてアオダイショウの若者を一匹だけ発見 観察後逃がす。

 

 

熊森協会を結成した25年前と比べると、森の劣化が著しい若杉天然林ですが、それなりに参加者のみなさんは楽しみ感動してくださっていました。

一方、長年この山を見てきた私たちは、谷川の水量や動植物の姿がますます減ってきたなあと、変化に驚いています。

もう、これが生物の多様性が保たれた天然林ですとは言えないと思いました。

 

怖いのは、かつての森を知らない今の若い人たちが、生き物たちが消えたこの森を見て、これが天然林だと何の疑問もなく受け入れてしまうことです。

森に種の大量消滅という大異変が起きていることに、誰も気づかないことです。本当の森にはこの時期、昆虫などが無数におり、数など数えられません。

 

1997年に第1回の原生林ツアーを実施したときは、クマがアリの巣をあばいて食べた後や、看板に付けた好奇心によるひっかき傷などが生々しかったです。1998年実施時には、ミズナラの巨木群にクマ棚が延々と続き、皆で大感動しました。テレビ局にも取材をしてもらいました。コエゾゼミの背中の模様がアイヌの着物の模様とそっくりで驚きました。今では何もかもが、消えています。

 

ナラ枯れには、松枯れ防止用のヘリコプターによる薬剤散布?、酸性雨(霧)?、地球温暖化?シカ増加説?いろいろな説がありますが、原因は不明です。いずれにしても、人間活動の何かが原因だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥山冷温帯から始まり、最近は里山に下りて来たナラ枯れ

クヌギなどのドングリ類がひと夏で枯れ、山々が赤く見える(中国自動車道周辺)

 

原生林や天然林は本来、生物の多様性が保たれた森です。参加者は、野生生物の姿や痕跡を見たかったと思いますが、もはや奥山にほとんど生き物がいません。以前、あんなにびっしり生えていた林床のチシマザサもスカスカです。昆虫に詳しいスタッフが、これなら明石市の公園の方が、ずっと生き物がいろいろ見れますよと明かしてくれました。(ガックリ)

 

来年から原生林ツアーの実施場所を、まだ自然が残っている石川県白山とかに変えた方がいいのではという提案がありました。西日本にはもう他に残されていないからです。森に何かとんでもないことが起きていることを、私たち人間は他生物の大量消滅から気付かねばなりません。いずれ、私たち人間にも、大変なことが起きてくると思います。そのときにあわてふためいても、もう手遅れです。

 

未来を決めるのは今なのです。

 

比べてみよう

1998年7月26日第2回若杉原生林ツアー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の背丈を超える下層植生がびっしり繁り、森の中が見通せない。クマが棲める。

 

2022年7月31日第25回若杉原生林ツアー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下層植生が著しく衰退しており、林内が見渡せる。クマは棲めない。目撃多数となる。

 

本末転倒の再生可能エネルギー問題を参議院選挙の争点に

以下は、6月16日奈良新聞記事 クリックで拡大します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下は、ISEP作成の日本の電源構成(2019年) です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

熊森から

 

現在の私たちの清潔で豊かな生活は、電気エネルギーによって大きく支えられています。

しかし、近年、天然ガス、石炭、石油は二酸化炭素を出して地球温暖化をまねくから使わないようにしようという流れになってきました。

では、何で電気を作るのか。

熊森もかなり勉強していますが、ものすごく難しい問題です。答えが出ません。

原子力も、太陽光も、風力も、現在、廃棄物の処理法がありませんから、次世代に大量のゴミという負の遺産を残すことになります。

 

 

ただ、言えるのは、現在の森林伐採型・自然破壊型のメガソーラーや風力発電は絶対にダメだということです。

二酸化炭素の吸収源を破壊しているのですから、よけい空気中の二酸化炭素を増やすことになります。

これを、本末転倒というのです。

何をやっているのか、ばかばかしい限りです。

しかも、被害者が累々と出ます。

とりあえず、メガソーラーや風力発電は、森、草地、池、海などの自然界では行わない、設置場所をそれ以外に限定すべきです。

 

第1次被害者は、自然界の生き物たちです。自然を破壊されてしまえば、生き物たちは死ぬしかありません。

そのことを何とも思わない人は、人間至上主義という誤った考えにおかされてしまっている人です。

学校で習った「全生物と共存しなければ人間は生き残れない」という自然界の仕組みを忘れてしまった人です。

 

第2次被害者は、地元の皆さんです。森林伐採や自然破壊によって、必ず災害や健康被害が生じるからです。

地元の方々は安全な場所で安心して生活したいですから、全国各地で森林伐採型・自然破壊型の再生可能エネルギー工事を止めようと必死で闘っておられます。

しかし、地元は過疎化高齢化しているので声を上げづらいし、声を上げても少人数ですから、多くが無視されてしまいます。

 

第3次被害者は、将来、水道の水が出なくなって悲鳴を上げることになる絶対多数の都市市民です。

水源の森が失われるます。水道が出なくなってから声を上げても手遅れです。

 

たった20年間だけの発電のために水源の森を伐採し、20年後は業者が原状復帰させるとなっていますが、原状復帰など100%不可能です。

経産省の皆さんは、本気で原状復帰が出来ると思っておられるのでしょうか。ならば、あまりにも自然界に無知すぎます。

植林したところで、水源の森が再生されるにはうまくいって数百年かかりますし、いったん破壊した森は何千年たっても二度と戻らないことも多いのです。(かつて、森林伐採により滅びた文明の跡地を見ればわかる)

第一、FIT法に守られて確実にもうかる20年が経過すれば、業者は発電をやめて一斉に撤退するのですから、その後の我が国の電気は一気に激減して、社会は大混乱に陥ります。小学生でもわかることです。

 

熊森が今言えることは、森林伐採型や自然破壊型の再エネを一気に推進しようとする国策には、とりあえず乗らないようにしようということです。

熊森はたとえ国策であっても、間違っていることは間違っているとこれまでもはっきり言ってきました。

かえって二酸化炭素を増やすだけではなく、もっと悪いこと、災害の多発、健康被害、生物の多様性や水源の喪失が起こってしまいます。

参議院選挙には、とりあえずこのことだけでもわかる人を選びたいと思い、立候補者にアンケートを送っています。

政府が太陽光発電を山林から平地に誘導への検討会開始 夏までに対策

以下、日経4月19日記事

政府は太陽光発電のさらなる導入拡大を狙い、省庁横断の検討会を近く立ち上げる。山林を切り開く乱開発を是正し平地や建物の屋根に誘導する。環境破壊や土砂災害の懸念を払拭し、住民の理解を促す。2030年度までに温暖化ガスの排出を13年度比で46%減らす政府目標の達成に向け、省庁間の連携を強化する。

経済産業省と環境省、農林水産省、国土交通省の4省が共同で事務局を務める。21日に初会合を開き、今年夏ごろに太陽光発電の特性に合った用地を確保するための基本的な考え方を取りまとめる。

固定価格買い取り制度(FIT)の開始以降、山林を切り開く太陽光発電の開発や豪雨などによる崩落事故などが発生している。例えば、貯水機能が不十分となり、国交省や都道府県が法令違反と判断しても、経産省が把握できなければ売電収入を継続して得られる。関係省庁が協力し、早期に対応できる体制を整える。自治体との連携も課題になる。

政府は30年度に、発電量の36~38%を再生可能エネルギーでまかなう目標をかかげる。太陽光や風力などは景観の悪化や土砂災害の懸念、不法投棄などで地域住民らとトラブルになるケースもある。条例で設置に規制をかける自治体も増えてきた。太陽光パネルなどの設置に適した用地が限られるなかでの導入加速が課題となっている。

熊森から

こんなに政治を心強く思ったことは初めてです。

わたしたち全国再エネ問題連絡会のメンバーは、あらゆる政党、関係省庁に、

「再エネ事業でふるさとの山が壊される。

助けてほしい。

業者は合法だとして住民の声など全く聞かない。

法規制をかけてほしい」

と訴え続けましたが、なかなか国の動きは見えませんでした。

早く法規制をかけてくれないと、森林伐採が始まってしまう。

山が切土、盛土されてしまう。

私たちは、焦りました。

そんな中、国土保全のために、政権与党の責任で、法規制をかけようと決意してくださった国会議員が現れました。

どんな活動も、どんな行動も、最初は一人から始まる。やっぱり大事なのは最初の一人の一歩踏み出す勇気です。

与党議員が決意するとこんなに早くことが進むのかと、今回、思い知らされました。

夏に規制がかかるまで、地元の皆さんはどんなことをしてでも、森林伐採型・自然破壊型の再エネ工事を阻止し続けてくださいとのことです。

次世代のために、全生物のために、大人住民は責任をもって水源の森保全のため、自然環境保全のための行動を!

今だけ・金だけ・自分だけの業者に、泣き寝入りする必要なし!

再エネ問題で困っている地元の皆さん、全国再エネ問題連絡会の旗のもとにお集まりください。

検討委員の皆さん、森林伐採型風力発電の法規制もよろしく。

参考フェイスブック:風力発電の資料室:新温泉町からのメッセージ

自然?クリーン?再生可能?どこが①

長周新聞の再生可能エネルギーに関する記事から、学ばせていただくことが非常に多いこの頃です。
以下、長周新聞2021年1月19日より
映画『プラネット・オブ・ザ・ヒューマンズ
(Planet of the Humans、人類の惑星)』

ユーチューブが削除し逆に注目高まる

 

マイケル・ムーア

アメリカの映画監督マイケル・ムーアが総指揮し、ジェフ・ギブスが監督したドキュメンタリー映画『プラネット・オブ・ザ・ヒューマンズ(Planet of the Humans、人類の惑星)』が注目を集めている。この映画は、「CO2による地球温暖化、気候変動によってわれわれの未来が脅かされている」「石炭や石油などの化石燃料に頼ることをやめ、クリーンエネルギーへの転換を」と声高に叫ぶ環境保護運動のリーダーたちが、実はウォール街の投資家や億万長者にとり込まれて、再エネ・ビジネス推進の道を掃き清めている事実を描き、真剣な論議を呼びかけたものだ。ところがこの映画がユーチューブで公開されて900万人が視聴するなど大きな反響を呼び始めると、わずか1カ月で「著作権侵害」を理由に削除された。この映画を観ていた記者たちで、映画はどんな内容だったのか、なにを問題提起しているのか論議してみた(写真は映画の一場面)。

 

 映画がユーチューブで公開されたのが昨年4月で、ちょうど全国で海でも陸でも風力発電の建設が目白押しになっていたので注目して観た。風力や太陽光など再生可能エネルギーは「原発と違ってクリーンなエネルギー」というイメージを持っている人も多いと思うが、映画を観るとそれを覆す事実が次々と出てきた。

 

ジェフ・ギブス監督

監督のジェフ・ギブス自身、小さい頃から環境保護主義者であり、絶滅危惧種、生態系の破壊、持続可能な社会について多くの文章を書いてきたジャーナリストでもある。社会が化石燃料に頼っているのに疑問を持ち、クリーン・エネルギーの運動に身を投じてきた。その監督自身がカメラを担いで再エネの現場を取材するなかで、これはなにかおかしいぞと気づいていく。映画は彼の受けた衝撃や葛藤をはさみつつ進行する。

 

バーモント州での環境保護団体の「太陽祭」。照明もバンド演奏も100%太陽エネルギー使用とうたったが、そこに雨が降り出した。舞台裏に回ってみると、バックアップのために電力会社の電気を引き込んでいた。

 

ミシガン州では、ゼネラルモーターズがCO2を排出しない電気自動車シボレーボルトを製作した。その製作発表会。「電気自動車のバッテリーを充電している電気はどこから?」と聞くと、女性の担当者は「え?建物からよ。市が提供しているからわからない」。別の担当者は「残念ながらほとんどが石炭。太陽光や風力ではない。夜に充電できると宣伝しているが、夜は太陽はありません」としぶしぶ認めた。

 

ミシガン州北部には森林を伐採してつくった風力発電所がある。同州最大で高さ150㍍の巨大風車には、コンクリートが521㌧、銅が140㌧も使われている。巨大なブレード(羽根)はグラスファイバーとバルサ(木材)でできており、重さは16㌧。化石燃料を使ってつくられたこの巨大な機械が、わずか20年で捨てられ、風車群の残骸となる。

 

錆び付いて動かなくなり放置されている風車群(米国)

太陽光発電も同じだ。バークレー大学の研究者はいう。再エネ事業者は「ソーラーパネルの主成分はシリコン、つまり砂です」と宣伝しているが、砂は不純物が多すぎて使えず、高純度の石英が必要だ。そして鉱石から石英をとり出すためには、石炭を使って大型の電気オーブンで1800度まで熱しなければならない。するとシリコンと大量のCO2が得られる。

 

カリフォルニア州の砂漠に世界最大の太陽光プラント(37万7000㌔㍗)「イヴァンパ」が完成した。しかしこの太陽光発電所は、毎朝およそ数時間も天然ガスを燃焼させて起動する。また施設全体はコンクリートからスチールミラーまで化石燃料を使ってつくられている。「太陽は再生可能だが、太陽光発電所は再生可能ではない」「化石燃料をこれらの“幻想”をつくるために使うのではなく、燃料として燃やした方がよかったのに」とは研究者の意見だ。

 

次に米国で最初に建設された太陽光発電所に行ってみると、そこは大量の壊れたソーラーパネルがそのまま放置され、墓場のようになっていた。ソーラーパネルを販売する業者は「一部のソーラーパネルは寿命が10年程度に設計されています」といってはばからない。

 

再エネ企業の女性エンジニアにインタビューしてみる。すると彼女は、「太陽光や風力は不安定な電源だ。雲がかかると発電量は下がるし…。それに応じて火力発電をオンにしたりオフにしたりするたびに大きなロスが生まれる。車を始動するときのように」という。だからバックアップの火力発電を休止できない。

 

映画はこうした再エネ・ビジネスが、オバマ大統領が登場してグリーン・ニューディールという景気刺激策をうち出したことで一気に花開いたことを、当時のニュース映像とともに振り返っている。

 

オバマはグリーン・エネルギー事業のための1000億㌦を含む1兆㌦の「環境保護」予算を組んだ。このときオバマは環境活動家のヴァン・ジョーンズを抜擢し、数万基の風力発電所の設置、何百万台のソーラーパネルの設置を計画した。その後、次々と投資家があらわれた。

 

億万長者で航空会社のオーナーであるリチャード・ブランソンは、オバマに「地球温暖化とたたかうために30億㌦を投資する」と約束した。元副大統領のアル・ゴアは『不都合な真実』という映画をつくって地球温暖化の恐怖を煽ったが、それはみずから再エネの投資会社を立ち上げて投資を呼び込むためだった。そのゴアとブランソンの2人がテレビ番組に出演し、もうかってたまらないといわんばかりに下品に大笑いするシーンは、「そういうことか!」という憤りなしには見られない。

 

そして、このとき登場するのが、米国でもっとも有名な環境保護活動家の一人、ビル・マッキベンだ。彼は「350.org」という環境保護団体をつくり、世界的なCO2削減運動の旗振り役となった。

 

環境保護運動のリーダー、ビル・マッキベン(左)

熱帯雨林根こそぎ伐採 ギガプラント作る為

 

 この映画の中で、ソーラーパネルやウインドタービン、電気自動車はどのようにしてつくられるかと問うて、それを映像で初めから終わりまでをたどる場面が印象的だった。

 

電気自動車テスラの創設者であるイーロン・マスクは、自身のギガファクトリーは太陽光と風力と地熱発電で100%まかなっているといった。しかし、電気自動車、風力タービン、ソーラーパネルをつくるには、リチウムやグラファイトなどの希少金属が不可欠だ。それはアフリカなどの鉱山から採掘されるが、採掘は子どもたちを含む現地の人々の奴隷的な労働で成り立っている。希少金属を得るために熱帯雨林を根こそぎ伐採し、山を爆破し、地中深く掘り進む多国籍企業。しかも希少金属を抽出するとき、放射性物質のウランを環境にまき散らしている。

 

コンクリートや銅やニッケルもそうだが、こうして米国の工場でテスラが組み立てられるまで、風車やソーラーパネルができるまでにいかに地球の裏側の自然を破壊し、先住民や動物たちを住めなくしているかを目に焼き付ける。大量生産・大量消費という資本主義の犯罪だし、そのことを映画のなかで幾人もの科学者が指摘している。

 

バイオマスもそうだった。バーモント州のバイオマス発電所では、地域の森林を大量に伐採して、それを化石燃料である天然ガスで燃やしている。大量の木を伐採したり運搬したりするためにも多くの化石燃料が必要だ。環境保護団体は「CO2を出さない」というが、実際には年間40万㌧以上のCO2を排出しているという。

 

バイオマス発電所の木材は大規模な森林伐採によって集められている(米国)

ミシガン州のバイオマス発電所は、木材チップを燃やすだけではなかった。地元の女性が訴えている。「保育園や小学校、高齢者のための施設にとても近く、小学校には雪が降り、幼稚園は黒い煤(すす)で覆われている。調べてもらうとタイヤの粒子だった。タイヤを加工した燃料を加えて燃焼温度を上げているのだ。緑や湿った木はあまり燃えないから」。にもかかわらず事業者は、「再生可能」というラベルを貼ることで1150万㌦もの助成金を受けとっている。

 

投資家と活動家の癒着 注がれる投機マネー

 

 映画の後半では、環境保護活動家とウォール街の癒着というタブーを正面から描き出している。ミシガン州立大学の学生たちが「350.org」に触発されて気候変動問題を考える集会を組織した。「未来のクリーンエネルギーを支持します」と訴える彼らは純粋だが、この運動はバーモント州のミドルベリー大学から始まっている。そして、この大学には新しいバイオマスガス化システムができていた。大学で講演するのは、有名な環境保護活動家ビル・マッキベン。

 

ビル・マッキベンや環境保護団体が支持する法案は、ミシガン州の電力の25%を2025年までにバイオマスでまかなうというものだった。このバイオマスプラントを米国中に、さらには世界中に広げるのが彼らの役割だ。ところが、環境保護集会に参加した人にインタビューすると、ほとんどの参加者が森林伐採に反対し、バイオマスに疑問を呈していた。ただ、リーダーである環境保護活動家のなかにはまともに答える人がいない。

 

再エネに巨額の資金を投資する億万長者、銀行家、大企業のCEOが次々と画面に登場する。そのなかにコーク兄弟がいる。ソーラーパネルの製造やソーラー発電所の建設に必要な資材の多くを、米国最大のコングロマリットの一つであるコーク・インダストリーズがつくっているのだ。ところがこのコーク兄弟は、石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー産業を操り、環境保護運動が「悪魔」と呼ぶ人物だ。

 

ブラジルでは多国籍企業がアマゾンの広大な森林を破壊してサトウキビ畑をつくり、サトウキビからバイオエタノールを生産している。ゴールドマン・サックスの元CEOデビッド・ブラッドはいう。「森林を利益に変えるというアイディアに夢中になりました」。そのためには何十兆㌦もの投資が必要だ。テレビ番組の司会者が「その金を調達するのを手伝ってくれたのは誰ですか?」と彼に質問する。「それは環境保護活動家ビル・マッキベン」。映像はウソをつかない。

 

多国籍企業の土地接収に抗議するアマゾン先住民。そこはバイオ燃料を生産するトウモロコシ畑に変えられる(ブラジル)

「化石燃料からの離脱を」と訴えるマッキベンと「350.org」はどこから資金を得ているのか? アメリカ証券取引委員会のファイルを調べると、世界の食肉消費を促進する主要企業の一つ・マクドナルド、プラスチック汚染の主な生産者であるコカコーラ、地球上の森林破壊の主な投資家であるブラックロック…などの名前が浮かび上がる。

 

別の番組では女性キャスターがマッキベンに「資金はどこから?」と聞く。彼は少し口ごもり、ごまかそうとし、「ロックフェラー?」といわれると「ロックフェラーは一番最初からの同志だ」と答えた。

 

アマゾンの先住民が多国籍企業に抗議する映像が浮かび上がる。自動車や航空機を動かす、石油の代替としてのバイオ燃料をつくるために、アマゾンの森林は破壊され、先住民は田畑を奪われて力ずくで追い出されている。先住民の女性が「私たちはただ人間として生きたいだけだ」と涙を流して抗議している。

 

原子力発電所を建設してきた世界最大の総合電機メーカーGEは、今風力発電の建設に力を入れている。そのGEの研究所では、海中の海藻を大規模にとってバイオ燃料にする研究が進んでいる。画面に映し出された豊かな海藻群は、しばらく後には根こそぎとられてなくなっていたという。彼らの強欲はとどまるところを知らない。

 

映画の最後の場面で、すべては覚えていないが、「資本主義による環境運動のハイジャックは終わった。環境保護主義と資本主義は融合した」「本来の環境運動をわれわれの手にとり戻し、億万長者が盗んだ私たちの未来をとり戻せ」というメッセージは鮮烈だった。

 

私益のために情報統制 現代版のファシズム

 

 この映画を観て印象に強く残るのは、再生可能エネルギー・ビジネスのインチキだ。そもそも風力にしろ太陽光にしろバイオマスにしろ、化石燃料を使わなければつくることも稼働することもできないし、そうした再エネをつくればつくるほど、地球の裏側ではアフリカの熱帯雨林やアマゾンの森林をますます破壊し、自然の生態系も破壊し、そこで暮らす人々を生きていけなくしている。なにが「再生可能」か、なにが「地球に優しい」かだ。この強欲さが、日本全国で風力発電をつくるやり方にもあらわれていると思う。

 

もう一つはウォール街と環境保護運動のリーダーとの癒着、一体化を遠慮会釈なく暴露していることだ。環境保護運動といえば、今の体制に反対する革新側と見られがちだが、実はそのなかに権力側と裏で手を握り合っている者がいる。そして「CO2削減」とか「気候変動」とかいって再エネがクリーンであり進歩のようにいいつつ、もっと大事な問題から目をそらせ、その働きで利益を得ている。これまでも原発や捕鯨問題などで指摘されてきたが、映画でここまであからさまに描いたのははじめてではないか。

 

 だから、「著作権侵害」を理由にユーチューブから削除されるということも起こった。事実経過を見ると、米国の映画監督で環境活動家のジョシュ・フォックスが「映画を削除すべし」と呼びかけるメールを、環境保護運動のリーダーでこの映画で何度も登場するビル・マッキベンに送り、それに呼応して環境写真家トビー・スミスが「自分の作品が映画のなかで四秒間流れた」ことを理由に訴訟を起こしたことがきっかけのようだ。つまり、再エネ推進側から見るとそれだけ一番痛いところを突かれた、図星だった、ということだろう。だから大慌てで削除したのだ。

 

マイケル・ムーアは「おかげでさらに多くの人が観るようになったよ」といっている。日本でももう少し翻訳に手を入れて、多くの人が観られるようにできないかと思う。

 

 そもそも「CO2(温室効果ガス)による地球温暖化」という評価は、アル・ゴアが『不都合な真実』で衝撃的に打ち出し、国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)がそれを支える形をとって、各国のメディアがくり返し報じてきたものだが、それ自体が科学的な評価ではないと世界の科学者がいっている。

 

米国のジャーナリストであるマーク・モラノ氏は、多くの科学者の学説やデータをもとに「地球温暖化」論のウソをあばいている(『地球温暖化の不都合な真実』)。IPCCは「温暖化で北極の氷が解け、シロクマが絶滅する。南極の氷も解けて、海面上昇によって2000年までに多くの国の沿岸の主要都市が水没する」といってきた。だが、現在シロクマは20年前の20倍になっているし、NASAの衛星観測によれば南極の氷も増え続けて年ごとに最高記録を更新しているし、加速度的な海面上昇は起こらず、ツバルなどミクロネシアの島々は面積を広げている。

 

2009年には、IPCCの科学部門を統括する「公正な権威ある機関」の中枢にいる科学者が、地球温暖化を印象づけるために、データをねつ造したり都合の悪いデータの公表を抑えるためにやりとりしたメールが大量に流出して、そのウソがばれた(クライメートゲート事件)。

 

IPCCの第一次報告書(1990年8月)は、今後もCO2の規制がなければ地球の平均気温は2025年までに約1度C、21世紀末までに3度Cの上昇が予測されるとし、IPCC初代委員長は「2020年にはロンドンもニューヨークも水没し、北極圏のツンドラ帯は牧場になる」といった。この第一次報告書作成の作業部会にかかわった西岡秀三氏(国立環境研究所)は、「ここでは科学の論理は通用しない。出席者は政府を背負う外交官であり、ロビイストであり、NGOである。部会に参加した多くの研究者が、嫌気がさして二度とIPCCには出ていかないと宣言している」とのべている。

 

 結局、再エネを推進する側の目的は、CO2を減らして地球を救うことではなく、再エネ・ビジネスでもうけることだ。大量生産・大量消費・大量廃棄という今のシステムを転換するものではなく、逆にもっとやりたい放題にすることだ。

 

今米国ではバイデンが新大統領に就任し、温暖化防止の国際的枠組みであるパリ協定への復帰、2050年までのカーボン・ニュートラル(CO2の排出と吸収が相殺される状態)、4年間で2兆㌦の環境投資を打ち出した。これに呼応して菅政府も、2050年までに「カーボン・ニュートラル」を実現し、再エネを電力の50~60%に引き上げる方針を表明している。脱炭素革命というけれど、実体は風力や太陽光やバイオマスの発電所を増やすことであり、石油の替わりに電気やバイオ燃料で車を動かすことだ。このカーボン・ニュートラルを2050年までに米国、EU、日本、中国で実現しようとすると、この4地域だけで8500兆円の投資が必要、といった予測が出され、各国の投資家が色めき立っている。

 

熊森から

ユーチューブでこの映画が無料で見れます。

字幕で日本語を選ぶと、日本語字幕が出てきます。自動翻訳したままのようなわかりづらい日本語ですが、映像とともに見るとだいたいの内容はつかめます。

誰の主張が真実なんだろうかと考えてみるのに、役立つ映画だと思いました。必見です。

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