くまもりNews
「第11次鳥獣保護事業計画の基本指針(案)」へのパブリックコメントに声を届けよう!
現在、環境省では「第11次鳥獣保護事業計画の基本指針(案)」へのパブリックコメントを募集しています。この中身をじっくり読んだ結果、この指針が政策に反映されると、野生動物やその生息地の保護は不可能である、ということがわかりました。くまもりが考えるこの基本指針への意見をまとめましたので、これに一項目でも賛同していただける方は、ぜひ環境省へ声を届けてください。締め切りは6月10日(金)までとなっています。すぐに締め切りが来てしまいますが、一人でも多くの方に声をあげていただくことが力になります!よろしくお願いします。
「鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針」(案)に関する意見の募集(パグリックコメント)について(お知らせ)
環境省による「第11次鳥獣保護事業計画の基本指針(案)」への意見
2011年6月9日 日本熊森協会
<全体として>
・ この事業計画の名は「鳥獣保護事業」ではあるが、中身は正反対で「鳥獣大量捕殺事業」の推進となっている。
・ 他生物の命に対する尊厳や畏敬の念が見られないことに疑問を感じる。
・ 鳥獣保護にとって一番必要な生息地の保全・復元・再生について、具体的な方策言及が全くないことに疑問を感じる。
・ 人間の人間による人間のためだけの野生鳥獣捕殺=ワイルドライフマネジメントになっており、人間中心主義を脱却できていない。
・ 自然観や狩猟観に多くの誤りが見られる。
(結論)このような基本指針の元に政策が実施されれば、鳥獣の大量捕殺をいっそう推進することになり、野生鳥獣やその生息地の保護は不可能である。
<用語について>
意味が不明確な言葉が多すぎる。国が何をしようとしているのかわからないようにするために、このような言葉を使っているのかと思えるほど、まやかしや不明確な言葉が多用されている。一般国民に、国が何をしようとしているのか、はっきり実態がわかる言葉に直すべきである。
1.保護管理→人間の生活を害しない程度まで野生動物の個体数を低減させるために捕殺を行うこと。
2.捕獲→捕殺
3.個体数調整→個体数を低減させるための捕殺
<誤った自然観>
1.有害鳥獣という考え方について
有害鳥獣など、この世に存在しない。鳥獣は、いずれも豊かな自然生態系を構成する貴重な生物種である。彼らの生存があってはじめて、私たち人間が生存できる。国は、有害鳥獣などという間違った言葉を使用すべきではない。
2.人が特定鳥獣の個体数を調整することについて(保護管理、個体数調整)
自然界は、無数の生物種が密接にかかわりあって絶妙のバランスの上に成り立っており、生態系の中のある特定の鳥獣数だけをコントロール(管理)することなど、人間には不可能である。生態系丸ごとの保護しかありえない。
そもそも、人間が自然界の生物数をコントロールしようと、何の被害も出していない鳥獣を個体数調整捕殺したり、ワイルドライフマネジメント(=日本語訳「保護管理」)しようとした「鳥獣保護法」1999年の改変自体が誤りである。私たち日本人の祖先が行ってきた「棲み分け」や「防除柵」などによる、人と野生鳥獣との真の共存策を見直し、速やかに実施すべきである。
<基本指針案についての意見>
1.狩猟
P9「狩猟が、鳥獣の個体数調整の手段として、鳥獣による被害の未然防止に資する役割を果たしている」
P42等、各所に同様の記述がある。
(反対意見)本来、自然界では自然の力により、鳥獣の個体数は増減を繰り返しながら長期的に一定という調整がなされており、狩猟は必要ではない。北海道の大雪山国立公園では、狩猟も有害駆除も個体数調整もこれまで一切行ってこなかったが、何の問題も起きていない。生物の個体数を決めることができるのは、自然だけである。鳥獣による被害の未然防止は、棲み分けや、柵、おどしなどの被害防除対策によらねばならない。
2.鳥獣保護区での個体数調整捕殺 ・ 休猟区での狩猟の特例
P11「鳥獣保護区においても、特定鳥獣の個体数調整の取組などにより~被害の軽減を図る必要がある」
P16「休猟区での狩猟の特例を図るものとする」
(反対意見)鳥獣保護区内や休猟区内での、狩猟、有害捕殺、個体数調整捕殺は、一切すべきではない。鳥獣の保護のためには、鳥獣が安心しておれる場所を設定しておくことが必要である。なお、狩猟、有害捕殺,個体数調整捕殺等において、捕獲予定外の鳥獣が大量に罠に誤捕獲されて殺されていっている現状を、国は知っているのか。
3.鳥獣保護員
P12「鳥獣保護員の新たな役割として鳥獣保護管理についての~」
(要望意見)鳥獣保護員の実態は、多くのところで100%またはそれに近い割合でハンターが任命されており、実質は監視体制をなしていない例を多々見てきた。鳥獣保護員には、自然保護団体や動物愛護団体などの非ハンターも入れるよう、指針を出すべきである。今後、西洋の様な密猟監視人制度などしっかりした制度を作るべきである。
4.狩猟
P12「狩猟者については減少傾向にあり」
(反対意見)国は狩猟者数の減少が始まった1970年以降のグラフをしばしば表示して、狩猟者数の減少と鳥獣被害の増大が関連しているかのごとく見せているが、1970年以前の狩猟者数は、反対に今以上に減少している。都合のいいようにデータの一部だけを提示して世論を操作することは止めるべきである。わが国に狩猟が入ってきた明治初期からの狩猟者数の変化を提示すれば、現在の鳥獣被害の増大が、狩猟者数の減少と無関係であることが一目でわかる。鳥獣被害増大の主要原因の一つは、人間による戦後のすさまじい奥山生息地破壊が鳥獣を里に押し出してきているものと思われる。
5.鳥獣の捕獲
P12「地域ぐるみで有害鳥獣の捕獲の充実を図るため~鳥獣行政と農林水産行政のいっそうの連携が求められる」
(反対意見)鳥獣行政は、行政内で唯一、野生鳥獣の立場に立って野生鳥獣の保護に努めるところであり、農作物等の被害軽減のために野生鳥獣の捕殺に努めている農林水産行政と一体となって、野生鳥獣捕殺に走るべきではない。鳥獣行政は、以前のようにあくまで鳥獣保護係に戻り、鳥獣保護の立場に立って必死に発言し、行動すべきである。
6.鳥獣の流通
P14「鳥獣の流通」
(要望意見)有害駆除個体は狩猟ではないのだから、利用できないように厳しく監視すべきである。有害駆除した熊の胆(クマノイ)が、高価格で流通しているというハンターからの情報を多々得ている。厳罰を持って取り締まってもらいたい。でなければ、殺す必要などないクマを有害にしたてて、有害駆除の名で狩猟するハンターをなくすことができない。
7.シカ
P16「シカ増加による植生被害や裸地化で、生物多様性が損なわれる恐れがあると明記する」
(疑問意見)シカが原因で生物の多様性や森が損なわれるのなら、とっくにこの国から生物の多様性は失われているし、森はなくなっているはずである。シカ増加とは、いつと比べてなのか。明治には、今よりもっとシカがいたという説もある。シカが植物を食べるのは当たり前のことで、この行為が本当に生態系に回復不可能な被害を与えたことになるのか。今起きている裸地化は、一時期絶滅寸前まで追い詰められていたシカが、生息数を回復する過程で避けられない一時的なものではないのか。現在のシカ問題を、明治まで遡って人間による生態系改変と関係付けて説明している研究者もいる。シカ異常増加説やシカ悪者説には、疑問を感じる。もっと多様な研究者の声を聞くべきである。
8.生息環境の整備
P16「生息環境の整備等による保護管理の取組が必要である」
(感想)どのようにして、誰が、生息環境の整備を行うのか、具体策の記述が全くないため、実効性はゼロと思われる。鳥獣保護にとって一番大切なこの部分にこそ、多くのページを割くべきである。
9.希少鳥獣としての取り扱い
P19「絶滅の恐れのある地域個体群についても必要に応じて希少鳥獣として取り扱う」
(賛成・提案意見)賛成。鳥獣保護は、国内絶滅レベルで保護の手をかけても遅い。地域個体群の絶滅レベルで、「種の保存法」の対象種として、手厚い保護の手を差しのべねばならない。各地で絶滅を迎えていると思われるヒグマ・ツキノワグマに、「種の保存法」を用いて早急に保護の手を差し伸べるべきである。
(ただし実態は・・・)クマなどの動物は、「地方分権一括法案1999年」により、駆除の許可権限が国の管轄から外されて、現在、それは都道府県や市町村に降ろされている。国にクマの保護を訴えても、管轄外として取り合ってもらえないのが現状である。その結果、残り数頭といわれながら、いまだにクマが狩猟対象獣のままになっている県などもあり、保護体制が取れていない。クマの駆除許可権限を、至急、国に戻さなければ、この項は絵に描いたモチで終わる。現状では、県境を越えて広大な山地を利用するクマの保全など、この国では不可能である。
10.外来鳥獣
P22「特定外来鳥獣を根絶または抑制するための積極的な狩猟及び有害鳥獣捕獲を推進する」
(反対意見)外来鳥獣のペット飼育用輸入を、一切止めるべきである。いったん日本の野に捨てられ各地で繁殖が始まりだせば、もはや、根絶殺害は不可能。外来鳥獣が自然生態系に取りこまれて落ち付くのを待つしかない。にもかかわらず、外来種であるということだけで根絶を目指して殺害を進めるのは、残酷なだけで、無用の殺生であり、倫理面、教育面、費用対効果等あらゆる面からおかしい。至急中止すべきである。在来種も外来種も命は同様に尊ばれねばならない。被害対策は、在来種と同様に行うべきである。
11.広域協議会の設置
P29「広域協議会は、対象とする地域個体群の分布域に関係する関係省庁、都道府県、利害関係者、自然保護団体等の、鳥獣保護管理事業の実施に必要な関係機関及び関係者により構成されるように務めるものとする」
(要望意見)現在、ほとんどの鳥獣保護管理事業関連の協議会や検討会は、人間の立場から発言する人ばかりが集められ、鳥獣の立場に立って発言する人がゼロの状態で進められている。鳥獣の保護のためには、必ず、鳥獣の声を代弁できる人たち(自然保護団体、動物愛護団体)を一定数以上委員に入れることを義務付けるべきである。また、そのような団体が、国内でほとんど育っていない現実に即して、そのような団体が存在しない地域では、団体でなくとも個人でもいいので、鳥獣の声を代弁できる人たちを一定数、委員に入れるよう義務付けるべきである。でなければ、鳥獣の大量捕殺暴走という現状に歯止めがかけられない。これでは、自然も人心も荒れていくのみであり、日本文明が崩壊していくであろう。
12.わなの使用にあたっての許可基準
P80「ツキノワグマの生息地域であって錯誤捕獲の恐れがある場合については、~を指導するものとする。また、ツキノワグマの錯誤捕獲に対して、放獣体制等の整備に努めるものとする」
(要望意見)クマをわなで狩猟することは禁止されているが、有害駆除名目では、くくりわなや箱罠、ドラム缶檻が使用できる。狩猟、有害捕獲にかかわらず、とらばさみやくくりわなのような残虐な捕獲方法は、文明国として即刻禁止すべきである。
ツキノワグマの錯誤捕獲を避けるため、国がイノシシやシカ用のくくりわなの直径を12センチ以下にする規定を以前設けたが、実態は、行政や保護団体からの監視人もなく、規制緩和申請もいくつかの場所で認められて、意味をなさなくなっているところもある。現在、イノシシ捕獲用の箱わななどの罠設置が推進されており、クマの錯誤捕獲が激増している。クマ生息地での箱わな使用には、クマの誤捕獲を避けるため直径40センチ程度の穴を上部に開けたクマスルー檻の導入を義務付けるべきである。
また、環境省は、狩猟数、有害駆除数だけでなく、錯誤捕獲数やその後の放獣実績を正確に都道府県から申請してもらい、統計発表すべきである。錯誤捕獲されたクマは、放獣場所がないなどの理由で、希少種であっても殺処分されているのが一般的であり、全国の国有林を放獣場所に開放するなど、国が積極的な放獣対策をとるべきである。
13.捕獲許可の考え方
P75「鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害の防止を目的とする場合鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害(以下第四において「被害」という。)が現に生じているか又はそのおそれがある場合に、その防止及び軽減を図るために行うものとする。」
(反対意見)捕獲された鳥獣は弱ってしまう可能性が大きいので、捕獲は禁止するべきである。生活環境、農林水産業の被害防止には、追い払いで対応できる。やむを得ずツキノワグマの捕獲を実施する場合は、唐辛子スプレーや発信器の取り付け等、クマの負担になることは禁止すべきである。捕獲されることでただでさえ、人間には想像もつかない恐怖を感じているクマに対して、それ以上の負担を与える必要は全くない。
(最後に)
①どの項目にも言えることだが、務めるものとするなどというあいまいな文末表現では、いくらいいことを言っても実効性はないと見るべきである。駐車禁止でもわかるように、人は義務付けられ罰則を設けられなければ、規則を守りがたい動物である。本当に守ってもらわねばならない項目は、文末に強制力を持った言葉を使用すべきである。
②同じことを指摘をしなければならない個所が随所に出てくるため、このようなパブリックコメントの取り方は、私たち国民にとって、とてもやりづらい。再考をお願いしたい。
以上です。ありがとうございました。
さらなる野生鳥獣の捕殺促進拡大をはかる、環境省「第11次鳥獣保護事業計画の基本指針(案)」に対するパブリックコメント 6月10日締切
- 2011-06-04 (土)
- _野生動物保全
環境省が、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(略称「鳥獣保護法」という名の狩猟法)に基づいて、平成24年度から5か年間実施されることになる「第11次鳥獣保護事業計画の基本指針(案)」(以下「基本指針」という。)の改定について、形だけだと思われますが、一応意見募集を行っています。
この「基本指針」は、環境大臣名で作成され、都道府県が作成する鳥獣保護事業計画に関する事項などを定めるものです。
環境省パブリックコメント募集要領
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13766
意見は、「意見募集要項」に沿って郵送、FAX又 は電子メールにて提出することになっています。
この案は、環境省が平成22年に原案を中央環境審議会野生生物部会鳥獣保護管理小委員会◆委員名簿に諮問してまとめたものです。
期間:平成23年5月12日(木)~6月10日(金)
環境省自然環境局 野生生物課鳥獣保護業務室
電話 03-5521-8285(直通)
●くまもり感想
「基本指針(案)」[PDF 454KB]は、毎度のことながら膨大で、144頁もあります。一般国民にとっては読むだけでも大変です。苦労して読んでパブリックコメントに応募しても、これまでの例だと、環境省の答えはほぼ「今後の参考にさせて頂きます」だけに終始し、ほとんど何の変化もなし。むなしい限りです。
今回の改定内容は、これまで以上に野生鳥獣の保護管理(=ワイルドライフマネジメント=殺害)や個体数調整(=殺害)という名の殺戮を促進拡大するもので、人間が野生鳥獣の生息地であった森や自然を大幅に壊してきたことは棚に上げ、哀れにも生きられなくなって人里に出て来た野生鳥獣が引き起こした農業被害ばかりに目くじらを立てるもので、ここまで人間は無責任で自分の利益しか考えられないのか、ここまで動物たちの命を軽んじ残酷になれるのかと信じられない思いです。
出された意見は一応記録には残りますので、意見を出せる人は是非出してください。
●第11次鳥獣保護事業計画の基本指針の主な変更点と、<>内は熊森解説
1 生物多様性の保全
○ シカの増加の影響によって植生被害や裸地化等のように、生物多様性が損なわれるおそれがあることを明記
<シカは増加しており、生物の多様性を損なう恐れがあるとして、鳥獣保護事業(=捕殺事業)を呼びかけている>
○ 外来鳥獣の捕獲促進のため、有害鳥獣の捕獲許可等において外来鳥獣等については捕獲数の見直しを行うなどの措置を行う。
<外来鳥獣の捕殺促進を呼びかけている。>
2 特定鳥獣(クマ・サル・シカ・イノシシなど)の保護
管理の推進
○ 鳥獣保護管理をめぐる現状と課題に、「有害鳥獣の捕獲」の項を設け、地域ぐるみで有害鳥獣の捕獲を図るために、狩猟者と地域住民との連携・協力や、狩猟者による技術指導等を一層推進することが重要であること、鳥獣行政と農林水産行政の一層の連携が必要であることを明記
<みんなで力を合わせて、有害鳥獣をどんどん捕殺しようと呼びかけている>
○ 狩猟者の確保に努めるとともに、狩猟者のみに頼らない個体数調整の体制についても検討を進めることを明記
<狩猟免許のない人も、野生鳥獣をどんどん捕殺しようと呼びかけている>
○ 効果的な個体数調整のための捕獲技術について検討及び情報収集を行い、技術ガイドライン等により普及を図ることを明記
<野生鳥獣を一網打尽に殺すための捕獲技術を広めようと呼びかけている>
○ 確保を図るべき人材として、地域に応じた高度な捕獲技術を有する人材を加筆
<捕殺者の確保をはかろうと呼びかけている>
○ 都道府県の鳥獣部局と、鳥獣被害防止特措法に基づいて被害対策を実施する市町村が連携を図る旨を明記
<鳥獣係は鳥獣の保護をやめて、被害対策としてみんなで鳥獣を殺そうと呼びかけている>
○ 鳥獣保護区における農林業被害対策のための捕獲を適切に実施することを明記
<鳥獣保護区でも鳥獣を獲っていこうと呼びかけている>
○ 複数人により、銃器を用いないで有害鳥獣捕獲を行う場合において、その従事者の中に狩猟免許を有しない者を含むことを認める規定の追加
<狩猟免許がない人でも、鳥獣を獲れるように参加協力しようと呼びかけている>
○ 空気銃による有害鳥獣捕獲、個体数調整のための捕獲の対象鳥獣の拡大
<捕獲対象鳥獣を拡大しようと呼びかけている>
{熊森結論}以上のような鳥獣捕殺一辺倒を望む国民は、ほとんどいないでしょう。国民は、野生鳥獣の生息地を
復元してやり、野生鳥獣が人間の所に出て来なくていいようにして、かれらとこの国で共存することを望んでいます。
近々、熊森本部からのパブコメを発表します。
5月22日 森山会長の岩手県訪問、岩手県会員らと陸前高田市にも
- 2011-05-31 (火)
- 東北大震災・福島原発
東北応援くまもり基金が90万円を超えたので、各地に仕送りを始めました。福島県・宮城県と小分けして、人のため動物たちのために仕送りしましたが、岩手県にはまだ1件も送れていません。森山会長は、このたび盛岡に行く機会を得たので、岩手県会員らと被災地の訪問もおこなってきました。
岩手県で一番多くクマが出ているという盛岡のリンゴ園を見に行きました。リンゴの白い花がたくさん咲いていて、とてもきれいでした。リンゴ園の裏山は、頂上までスギの人工林でした。岩手の人工林率は県平均44%で、兵庫県より多いのです。国策というのはこんな北の地にまで及ぶ。すごい力だと思いました。これではクマは、リンゴ園に出て来ざるを得ないと感じました。地元のお料理屋さんのお店には、「クマともりとひと」の小冊子が置かれていました。そこのご主人が、「岩手県人は、だれもクマなど殺したいと思っていないよ。早く、岩手県にも熊森が広まればいいな」と話されていました。
岩手大学で、「森は海の恋人」で有名な畠山重篤さんの講演を聞かせていただきました。気仙沼在住の畠山さんですが、祖先の言いつけを守って小高い山の上に家を建てて漁業をしていたので、今回の震災でも家は残ったという事でした。祖先の言い伝えは大事だと思いました。自然林を伐ったことで、フルボ酸が海に流れ出なくなり、海が貧血になって海の生き物たちが大変なことになっているという興味深いお話でした。6月1日に、「鉄は魔法使い」という本を出版されるそうです。ぜひ買って読もうと思いました。
最後、陸前高田市は、テレビで見たよりずっと悲惨でした。こんな状態が、岩手県だけでも北に250キロ続いているそうです。見に行きますかと岩手県会員たちに聞かれましたが、耐えられないと思い、断りました。どれだけたくさんの子供たちが、突然、親を失ったことだろうと思いました。岩手県では、親を失った子供たちに、東北応援くまもり基金をつかえないだろうか。今、岩手県会員に、送り先を探してもらっています。
5月20日 東京の高校1年生523人に今年も森山会長講演
- 2011-05-31 (火)
- 会長講演会
この高校は去年も、新入学の高校1年生全員に、森山会長講演会をセットしてくださいました。
校門を入ったところに、菩提樹の木が植えてあります。ちょうど、菩提樹の花が咲いていました。去年初めて訪れたとき、「菩提樹ですか、仏教みたいですね」と言うと、案内役の先生が「仏教系の学校です」と教えて下さいました。知らなかったのでびっくりしました。躾がきちんとできているのでしょう、長時間の講演にもかかわらず、生徒たちは堅い体育館の床の上に座って、最後までしっかり講演を聴いてくれ、感激でした。
講演後、校長先生をはじめいろんな先生方と校長室で長時間意見交換をしました。教育方針に感銘を受けました。学校側も、熊森協会を深くご理解くださったように思います。若い理科の先生が、都会育ちの生徒たちが全生物の生存を支えている森の保全に目が向くように、実践活動も取り入れてがんばっておられました。
今年は講演も2年目ですから、登校中の生徒たちにも親しみが持てました。
今年も、新入生523名が、100分間にもわたる長時間講演をしっかりと聴いてくれました。みなさん本当にありがとうございました。
講演会が終わってから先生方と控室で、社会問題も含めて最近のいろんなことがらについて懇談しました。先生方が、より良い教育を行い、より良い社会を作ろうと燃えておられるのが強く伝わってきました。最近、私立高校はどこも入学生徒が減ってきて経営困難に陥っていると聞きますが、この学校は反対に生徒数が増えているという事でした。先生方の熱意が、生徒たちや保護者の方たちに伝わっているのかなと思いながら、今年もさわやかな気持ちで学校をあとにしました。
本日5月30日23時~ CBCラジオが愛知県のクマ問題を特集
本日、5月30日23時より、CBCラジオ番組(AM局)「命のしずく」にて、愛知県のクマ問題が特集されます。
昨年、熊森は愛知県で、当時推定生息数が残り6頭だった、ツキノワグマの救出に奔走しましたが、その内容なども取り上げられる予定です。
中部地方および近隣県の皆様、どうぞお聴き逃しなく!
5月15日 自然農塾③ 苗床の草とり
- 2011-05-28 (土)
- _自然農
参加者の方から、感想が届きました(以下)。ありがとうございます。
・・・・・
5月15日(日)初夏を思わすようないいお天気でした。
先月より木々は緑深く、すでに慣行農法の田んぼでは田植えを終えた、田園風景が美しかった。道中の四季折々の変化を眺めるのも、自然農参加の楽しみのひとつです。
さて、現地では、田んぼの生き物の調査隊の方々もお見えになっていて、豊かな生態系を夢中になって調査しておられました。
くまもり田んぼはもう生き物でいっぱいです。写真はコオイムシ(左)、ニホンアマガエル(右)。コオイムシは、雄が卵を背負います。
私たちの今日の作業は、苗床の草取りと柵を完成させること。
新芽は顔を出しているでしょうか?ドキドキです。
残念ながら、新芽を見つけるのがむつかしい位、今回は芽出しが遅く発芽率も悪いようです。今回はこれまでとは別の場所に苗床をつくったのですが、「種もみが、なめくじに食べられてしまったのかもしれません」と、アドバイザーの土出さん。場所によっては、そのような事もあるそうです。苗床には、殻だけ残った種もみがたくさんありました。
また、昨年は収穫がなかったので、一昨年の種もみを蒔いたことや、気温の低かったのも、理由の一つでしょうか。
(出ていた稲の芽)
「田植えまで一ヶ月。頑張って芽を出して大きくなって下さい。今年の収穫米は東北の方々に食べて頂くのだから。」そんな想いを込めて草を刈りました。
土の層をこわさないように。そーっと そーっと。
休憩所の庭では、地元アドバイザーの岸本さんが、箱植えビニールマルチで予備の苗を育ててくださっていました。こちらはもう5㎝位になっていて、順調に育っています。
昼食後、自己紹介。小学生から熟年まで。前回はフランスの方や80代の方もおられました。
老若男女、自然だけでなく、人も多様なのが、くまもり自然農の魅力です。
午後は昨年の失敗を教訓に、立派な柵も出来上がりました。みなさん、おつかれさまでした。
・・・・・
次回6月5日(日)はあぜ塗り。土に思い切り触れることが出来る、大変ですがとても楽しい作業です。
本部 太朗と花子のファンクラブ
- 2011-05-27 (金)
- 太郎と花子のファンクラブ
2011年5月22日(日)、あいにくの大粒の雨の中、3頭の大好きな食べ物を用意して、太郎と花子とイノシシのちーちゃんのお世話に向かいます。
獣舎に着くと早速3頭からのおねだり攻撃!花子とちいちゃんに会員さんの特製ごはんを、太郎には大好きな人参を10本あげました。
そして、私たち人間も大雨からの避難をかねて先にご飯を頂きました。そうしているうちに小雨になり、早速掃除を始めます。寝床のワラの汚れた所を取りだし、プールもピカピカに磨きます。小さな草原のようになった花子の庭は、草を刈ってスッキリ綺麗に。
掃除の後はお待ちかねのふれあいタイム。参加者からおいしいイチゴやサクランボ、イワシをたっぷり貰ってご満悦です。
そこへ、小指ほどの太さのミミズを見つけた一人が、当然喜ぶだろうと太郎の獣舎に持って行きました。太郎は鼻を近づけクンクンと臭いをかいで観察しています。そして、ミミズがニョロッと動くたびにビクビクっ!!「何これ~!?」と世にも不思議なものを見たという様子で、目をまんまるにしてただ見ているだけです。
そこで花子の方へ持って行くと、太郎と同じくまずクンクン…。そしてミミズがニョロニョロ動き出した途端、ビックリして飛び上がり、部屋へ走って行ってしまいました。 会員たちはその様子に大笑い。
でも、本来野生では、重要なタンパク源であるミミズはクマの大好物のはずです。そんな事も母グマから教わる間もなく、人間に親を殺され、その人間に育てられた2頭の境遇を思うと、改めて「太郎と花子のようなクマが増える事のないよう祈り、活動しなければ。」という思いが強くなります。
この日は獣舎の前の藤の花が満開で、雨上がりに紫が美しく映えていました。
5月21日 本部第4回森再生チーム活動 スギ人工林の皮むき間伐 (兵庫県但東町)
- 2011-05-23 (月)
- _奥山保全再生
荒廃した人工林を、野生鳥獣のため、農家をはじめとする地元住民のみなさんのため、広葉樹の自然林に戻そう!
木々の緑も濃くなり、放置人工林の皮むき間伐をするのに最適な時期がやってきました。木が活発に水分を吸い上げるこの時期から、樹皮がはがしやすくなるのです。皮むき間伐なら、チェーンソーを使えない方々や子どもたちでも、簡単に間伐できます。一般市民がボランティアで取り組む間伐法として、この方法はとてもよい方法です。
今回は、地元の方やお子さん、法人会員として応援して下さっている「クレコスいのちの森倶楽部」のみなさん(25名)ら、総勢42名で、兵庫県豊岡市にて皮むき間伐をおこないました。
スギ人工林の手前の日当たりがよい所には、たくさんの草が生えていますが、奥の人工林内は、内部が暗く、草も生えず土がむき出しです。
昨年3月に皮むきしたスギが枯れ、葉の色が茶色に変わっていました。今後は枯れた葉や枝が落ち始め、林内に入ってくる光が徐々に増えてくることでしょう。自然界には、このゆっくりした変化がいいのです。
スギの太さに応じて、一定面積(半径4mまたは半径5.65mの円)内に残す本数を決め、なるべく太いのを残すようにして、残すスギに赤いテープを巻いていきました。
印をしていないスギの皮を、むいていきます。ここは太く立派なスギが多く、「皮をむいて枯らしてしまうのはかわいそう」という声も出ました。しかし、このままだと、山は荒れていく一方で、野生鳥獣の食料はなく、そのうち災害を起こします。皮むきする前や、むきおわった後に、話しかけるように静かに木と向き合っている人たちの姿がありました。
樹皮をむいた部分は水分がたっぷりで、なめると甘いです。木が生きていることを実感します。
皮むき間伐後の林内のようす。今回は、約60本のスギの皮をむきました。
みなさん、おつかれさまでした。
今後、ここがどのように自然の森に変化していくのか、楽しみですね。熊森本部では、変化記録をとっています。
午後は、近くにある熊森植樹地の見学。
シカよけ金網で囲った、植樹後4年目を迎えた植樹地です。今年の冬、2mの大雪で金網柵が倒れてしまったため、応急処置をしたばかりです。ドングリ類や、ナナカマド、ヤマボウシなどの苗木が順調に新芽を出してきていました。木イチゴなどのひとりばえもたくさん見られました。4年前、記念にと植えた3本の大きな桜の木の苗木には、赤い実がたくさんついていました。鳥たちが大喜びしていることでしょう。
こちらは、スギ皆伐地跡に、2003年から、苗木をチューブで覆い(大きくなるまでシカに食べられないように)植樹した場所。
100本ほどの苗木が立派に育っていましたが、今年の雪で倒れてしまった苗木もたくさんありました。また、地面には、シカが食べないミツマタやアセビ、シロダモ、ススキやアカマツなどが自然にどんどん育ってきています。
次回の本部森再生チーム第5回活動は、6月4日(土)です。ここの倒れた苗木を起こす作業をします!お時間の都合のつく方、ぜひ参加のお申し込みをお願いします。
帰り際、ヤマボウシの花が咲いているのを見つけました。秋に赤く色づく果実はクマの大好物。今日皮むきした林や見学した植樹地が、動物が生きられる森に再生され、災害に強く保水力の高い山に戻りますように。人と野生鳥獣とが共存する国に戻すことを夢見て、現地を後にしました。
山形県支部 6月の活動見合わせのお知らせ
山形県支部は6月に、植樹を行なってきた国見町で植樹地見学、標識付け軽作業、ハイキングを行う予定でした。
しかし、この度の震災で国見町役場も被害を受け、別の場所に役場を移して作業をされている状況ですので、6月の行事は見合わせることになりました。
6月以降の活動は、事態の推移を見ながら検討し、随時お知らせ致しますので、よろしくお願いします。
5月20日夕~5月22日夕 森山会長岩手県に滞在
- 2011-05-19 (木)
- くまもりNEWS
森山会長が、岩手県盛岡の会員の誘いで、急遽、岩手県を訪れることになりました。
5月21日(土)岩手大学総合教育研究等2階北桐ホールで午後1時~3時まで予定されているNPO
法人「森は海の恋人」代表の畠山重篤氏の講演会に参加します。
5月20日21日は、盛岡に宿泊します。22日は丸1日被災地に行く予定です。
急ですが、会員の方でお会いできそうな方がおられたら、本部までご連絡下さい。