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9月23日 岡山県のクマ狩猟再開を考える緊急集会 岡山のクマはもはや山にいないとの猟師発言

 今回の緊急集会を開催したことで、山陽新聞に森山会長の長文のインタビュー記事が掲載されました。

9月27日山陽新聞←クリックしていただけると読めます。

 

 

午後5時からの集会を企画していたので、会場設営のため岡山国際交流センター4階会場に4:30に入りました。

駅近くのいい会場でしたが、私たちとセンターの間に行き違いがありました。

センター職員から、「5時以前の入室は一切認めない。主催者は1階で5時まで待ってもらう」という厳しいお達しが出て、5時まで1階ロビーに足止めされました。

その結果、せっかく参加者の皆さんが来てくださっているのに準備が間に合わず、開始が遅れてご迷惑をおかけしてしまいました。
5:30開場とすべきでした。お詫び申し上げます。
何時から入室できるのか、会場を借りる場合はしっかり確認しなければならないと改めて反省した次第です。

 

5時に会場に行くと、新聞のお知らせ欄を見て初めて来られた方々や、熊森岡山県支部の方々が、すでに席についておられました。

講演中の森山会長

 

熊森岡山県平井支部長のあいさつの後、森山会長が以下の話をしました。

①日本熊森協会は、クマのため人のため全生物のために、奥山保全・再生に取り組んでいる民間の実践自然保護団体で、これまで奥山にクマたちの餌場を復元してきました。今年もクマたちが食べに来ていますが、今後は法整備して国を挙げてこのような事業を行うべきです。

熊森植樹地の2002年植樹のクリの木にできた熊棚 2017.9.16撮影(豊岡市の奥山)

 

②クマと共存すべき理由は、クマたち野生動物が存在するのが自然だからです。彼らによって豊かな水源の森・災害に強い森が造られます。

③クマとはどんな動物か、ご紹介します。

④ある民間株式会社がベイズ推定という統計学を用いて計算したところ、岡山県のクマが爆発増加しており、生息推定数の中央値:205頭(90%信頼区間:102~359頭)と発表しました。

この数字に基づいて、今回の岡山県のクマ狩猟が再開されることになりました。

しかし、現在クマの生息数を推定する方法は確立されておらず、どこまで本当の数字なのかわかりません。

過大推定すぎると反論している統計学者もいます。

兵庫で昨年度、同じ理由からクマ狩猟が再開されることになった時、餌場もすみかも奪われたクマを遊びで撃って楽しむのは、生態系保全上からも、人道上からも、倫理上からもおかしいとして、兵庫県知事やマスコミに会って中止を訴えたり、狩猟再開に反対する署名運動を起こしたりしました。

⑤今回のクマ狩猟再開問題は、岡山県の問題というより、環境省のスポーツハンティング奨励政策にあります。人間が戦後大破壊した森の復元など一切せず、「すごいアウトドア」というキャッチコピーで、野生動物を殺すことを遊びやスポーツとして若者に勧めており、環境省は今年もキャンペーンを全国展開しています。正気とは思えません。

2017年度用、広島県作成チラシ

 

この環境省の政策に反論している猟師もいます。

狩猟歴30年の猟師からの反論「ひどいアウトドア」→銃を持つということは、自分だけではなく周りの人達にも大変危険なことだ。まるで遊び感覚で獣が持てるかのような環境省のチラシの書き方は、許せない。気軽に誰でも狩猟者になれると思わせるこのようなPRは危険すぎる。狩猟とは、野生動物の大切な命を頂くということである。それがどうして「魅力」になりうるのか。理解に苦しむ。このようなキャンペーンはやめていただきたい。

 

次に、本部クマ保全担当の水見研究員が、多くの資料を提示しながら、以下の話をしました。

①岡山県のクマ生息地を調査したところ、過大な人工林、開発、自然林の劣化で山が大きく荒廃しており、クマの痕跡が見つかりませんでした。

②岡山県のクマ狩猟再開の問題点は、山に潜んでいるわずかなクマを殺してみたところで、里の被害は減らないため無用の殺生になること、岡山県の山やクマの実態を無視して、深い森が残りクマもたくさん生息している他県に合わせた全国一律の環境省のクマ狩猟規定に機械的に数字合わせをしているだけのため、岡山では無謀すぎる狩猟となることなどです。

 

熊森本部の調査ルートを、自然状況がわかりやすいように4月のグーグルアースに合わせた図

 

この後、岡山県会員の司会で、会場からの意見交換会となりました。

新聞を見て参加してくださった猟師さんが、「(熊森は)このような緊急集会を開催してクマ狩猟再開を心配しているが、兵庫と同様、岡山にはクマを狩猟する猟師などいない上、岡山のクマは山に餌がないのでほとんどが中国自動車道近くにまで下りてしまっており、山中で狩猟を再開しても、狩猟数ゼロで終わるのではないか」などと、現場を知り得た者にしかわからない情報を、いろいろと出してくださいました。ご参加いただき本当にありがたかったです。

 

また、他の参加者からも、質問や意見がいくつも出ました。まだまとめていませんが、近いうちにまとめようと思います。

 

(反省点)

狩猟、有害捕殺、錯誤捕獲、放獣など、熊森本部スタッフにとっては当たり前の用語を多用して説明しましたが、会場からの質疑を聞いていて、一般の参加者にはその違いが判っていなかったことに気づきました。

次回からは、用語の説明をしてから話さなければならないと反省しました。

今後どうしていけばいいのか、行動計画まで立てたかったのですが、この問題についての初集会では、なかなかそこまではいけませんでした。

 

ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。終了時間も伸びてしまい、いろいろと不手際がありました。お詫び申し上げます。

第6回ストップ・リニア訴訟 南アルプスを愛する登山家が、物言えぬすべての命に代わって訴え

9月8日、熊森としてストップ・リニア!訴訟の第6回口頭弁論を傍聴するため、東京地裁に行ってきました。

傍聴の抽選には173名が並びました。

今回は、服部隆さん、林克さん、西ヶ谷弁護士から、静岡県のリニアトンネル工事についての陳述がありました。

 

服部さんは、登山歴46年のベテラン登山家です。

 

 

以下、服部氏の訴え

 

「登山歴46年、私たち岳人は、リニア・トンネル工事による南アルプスの自然破壊に対し深く憂慮しています。

本日、私は登山者の代表として、また物言えぬすべての命に代わって、裁判官各位に訴えます。

 

<トンネル掘削によ地下水脈分断について>

 

静岡県の北端でリニア路線が横切る地域を「南アルプス南部」と呼びます。

頂点は3000メートル峰で、そこから駿河湾に流下している130キロメートルの大井川。

その最上部地下をリニアが貫通します。

 

 

静岡県におけるリニア問題は、ここ大井川最上流部に集中しています。

この拡大図を見ると、まるで毛細血管のように無数の枝沢=谷が本流に注ぎます。

この無数の支流が減水、ないし枯れる恐れがあるのです。

資料によれば「二軒小屋」付近が毎秒2トン強の減水予測で、ここは登山基地です。南アルプスの真っ只中です。

毎秒2トンは冬の渇水時は本流が干上がることになり看過できません。

 

保全策として、JR東海は「導水路トンネル」を計画。

トンネル内にあふれ出した水を集めて11.4キロメートルほど下流の椹島(さわらじま)で本流に放水、「水を戻す」という案です。

しかしこれでは根本解決になりません。水が戻るのは椹島より下流のみ、上流部には一滴の水も戻らないのです。

すなわち「人間の都合」しか考えていない保全策です。

 

 

「隣に似たような谷があるから大丈夫」?!

環境アセス書でJR東海は「周辺に同質の環境が広く分布するから影響は小さい」と記述していますが、そんな単純な話ではありません。

その谷に棲む水生生物、魚、植物はどうやって移動するのでしょう。

また簡単に「重要種の移植」を持ち出すのも、水を戻さず見捨てるという宣言であり、この言い訳は免罪符にすぎません。

そもそも重要種とそうでない命をどうやって決めるのか?

厳しい自然条件の中で南アルプスに生きる命への敬意のみじんもなく、心の震えが止まりません。

 

生き物の生息場所には皆理由があり、安易に「移植」などすべきではありません。

この7月に奥西河内(おくにしごうち)の水源調査に行って、2.350メートル地点の谷筋でツキノワグマの糞を発見しました。

山は彼らのものです。

彼らが生きる場所です。

この谷は彼らが命をつなぐ場所なのです。

この谷水を減らしては、枯らしては決してなりません。

 

「上流部の谷に水を戻せないなら、工事は中止してください」これが、南アルプスに生きる生き物と私たち登山者の思いです。

ずさん極まりない、甘すぎるアセスメントを追認した国土交通省の、リニア工事計画認可の取り消しを求めます。

 

 

(熊森から)

大井川下流

 

リニア工事によって大井川の水が毎秒2トン減少することはJR東海も認めており、その保全策として、導水路を引いて水を戻すとしています。

しかし、この保全策にはそこに生息する動植物への配慮が全くありません。

トンネルを掘るのは大井川最上流部にもかかわらず、JR東海が保全によって水を戻す場所は11.4km下流であり、大井川中下流域住民のための利水対策にすぎません。

大井川上流におけるリニアトンネル工事は、上流に生息する「谷の水を生きる糧としている多くの動植物の減少そして死滅を意味」します。

山を知り尽くした登山家が物言えぬ生き物に代わって訴えてくれたことが、熊森としてとてもうれしかったです。

 

リニア事業によって、南アルプスに生きる動植物の生息地は確実に奪われ、移動できるものは益々人里に出てくるようになるでしょう。

そして、有害獣のレッテルを張られて殺処分されていくのです。

 

リニア事業を止めるためには、世論を動かすことが不可欠です。

一体誰のためのリニアなのか。

自然を、そして、私たち人間や動植物の大切な水源の森を壊してまで必要な物なのか。

一旦破壊してしまえば、後でいくら後悔しても、豊かな自然も地下水脈も、もう2度と取り戻せないのです。

全国民が、JR東海やJR東海から宣伝費をもらっているマスコミによるリニア宣伝に騙されず、自分の頭でよーく考えて見るべきだと思います。

 

口頭弁論後の集会

 

現在、リニア市民ネットは

リニア中央新幹線訴訟の公正な審理を求める署名が始めました。

まだの方はよろしくお願いします。(署名用紙

 

次回以降の口頭弁論は、

2017年11月24日 第7回(愛知県におけるリニア被害について)

2018年1月19日 第8回(東京・神奈川におけるリニア被害について)

2018年3月23日 第9回(内容未定)

です。

ストップ・リニア!訴訟の口頭弁論をまだ傍聴されたことのない方は、ぜひご予定ください。

 

9月8日熊森本部、岡山県の山を調査 森林破壊により、クマが山から出て行ってしまっていた

はじめに

岡山県の山を知っている人は、岡山県にクマが残っていると聞くと驚かれるのではないでしょうか。

なぜなら、山が観光やレクレーションのために開発され尽くしており、人間がどこまでも山に入り込んでいるからです。

クマがいる地域は岡山県東部の兵庫県に接する西粟倉村と旧東粟倉村(現:美作市に合併)あたりで、面積にすれば岡山県のほんの一部だけです。

少し前までは、岡山県にクマが残っていても、10頭程度だろうと言われていました。

 

クマの分布 JBN作成

水色は環境省2004年確認地点、赤色は2014年の分布拡大地点

 

大量捕獲

ところが、山の実りゼロの異常年だった2010年には、何と岡山県で60頭のクマが捕獲され、全頭放獣されたのです。

兵庫県から大量に入ってきたのではないかという説もありましたが、真相は不明です。

その後は落ち着いていましたが、平成28年度は、目撃数が237件、有害捕殺が12頭(西粟倉村、美作市、津山市)、錯誤捕獲が28頭という大量捕獲となりました。

しかも、最近は、岡山県の西方面にも目撃が広がりだしました。

目撃数が増えたのは、この年、秋田県でクマによる人身事故死4名があったので、人々がクマに神経質になって、犬やイノシシをクマと見間違って報告したり、それまで見かけても気にせず届けなかった人達が行政に届け出たことも考えられます。しかし、40頭もの捕獲は、どう説明すればいいのでしょうか。

 

岡山県今年からクマ狩猟再開

岡山県は、兵庫県でMCMC法によるベイズ推定でクマの生息数を推定した研究者に岡山県のクマ数を推定してもらい、中央値205頭という数字を得たため、クマが激増しているとして、兵庫県にならって今年からクマ狩猟を再開することにしました。

 

 

熊森本部が後山連山調査に

9月8日、くまもり本部調査研究員3名は、岡山県にそんなに多くのクマがいるのだろうかと、兵庫県から西粟倉村に入り、兵庫県境にある岡山県の最高峰後山(うしろやま旧東粟倉村)標高1345m(「西大峯山」とも呼ばれ、かつては修験道の中心地)あたりを調査してみようと出かけました。

 

 

この日の移動ルートを以下の図に示します。人工林の部分がわかるように、早春のグーグルアースに重ねてみました。

濃い緑色の部分がスギやヒノキからなる常緑針葉樹の人工林、ベージュ色の部分は落葉広葉樹の自然林です。白色は残雪です。

赤線が車で移動した部分 黄色い線が歩いた部分(クリックすると拡大します)

 

毎回、このあたりに来ると、左右の山のほとんどが人工林であることに驚かされます。

人工林率は西粟倉村が85%、旧東粟倉村が73%、植えられるだけスギやヒノキを植えたという感じです。

クマの棲める広大な自然林など残っていません。

 

 

すばらしいながめ

ダルガ峰(なる)林道の展望台で昼食をとりました。

ここから、後山連山である駒の尾山(1280m)、後山方面への見晴らしは、抜群でした。さわやかな風に吹かれて、快適度100%です。

ここから見える範囲に205頭のクマが生息しているのでしょうか。

 

昼食後、車を置いて、ダルガ峰(なる)標高1163mに向かいました。

不思議なことに、こんな標高の高い山のてっぺんに、約80ヘクタールの平地が広がっています。

 

ダルガ峰(なる)の入り口 

 

「クマ注意」の看板を見て、私たちはクマに会わないように、鈴を鳴らしたり手をたたいたり大声を出したりしながら進みました。

皆伐された人工林の木の切り株がずらっとならんでおり、跡地はススキが原になっていました。

ところどころに生えている木は、ほとんどすべてシカの食べないウリハダカエデです。

道は平らで、中国自然歩道として立派に整備されており、最初のうちはとても楽しかったです。

しかし、良く考えてみると、ここは元々、クマたちの国だった場所です。

人間がこんなことをしてもいいのだろうかと思いました。

 

クマの餌も痕跡もなし

そのうち人工林地帯に入りました。

標高1000メートルを超えてまだ人間がスギを植えるなら、もうクマの居場所はありません。

祖先がしていたようにせめて標高800メートルより上は野生動物たちに返してやらないと、もうひとつの国民である野生動物たちとの共存などできません。

広葉樹林地帯もありました。しかしここのミズナラやブナにはなぜか実がなっていない木が多いのです。

私たちは約1時間半、クマの痕跡とエサを探して注意深く歩き続けましたが、何もありませんでした。何という山だ!

この山は人間が楽しいだけで、クマは時には通るかもしれないが棲めないと確信を持ったので、引き返すことにしました。

 

帰りは、もう、音や声を立てず、黙って下山しました。こんな山にクマなどいるはずがないと思ったからです。

1000メートル級の山々が連なる岡山の奥山連山にクマが棲めないのなら、岡山のクマはどこで何を食べて暮らしているのでしょうか。

駐車していた所まで戻り、車でアスファルトの道路を一気に下りました。

 

低標高地帯にクマの痕跡

周囲は延々と続く人工林地帯ですが、低標高まで下りて来たとき、道路沿いの1本の桜の木に今年の熊棚ができているのを見つけました。

サルナシの実もなっていました。

岡山のクマたちは、山ではなく、こんな人目を忍ばねばならない道路の横で餌をとっているのかと思うと、かわいそうになりました。

町まで降りると、姿を隠せる小さな自然林がいくつかありました。ドングリの木もありました。果樹もあります。

岡山のクマたちは、むしろこのあたりに身を潜めているのではないでしょうか。

 

熊森本部は近年、兵庫の奥山が荒れてクマが棲めなくなっていると大問題にしてきましたが、岡山の奥山の動物の棲めなさは兵庫の比ではありませんでした。

 

行政担当者のみなさんは、休みの日に山を歩いてみてください

岡山県のクマが激増しているとコンピューターで計算した研究者は、西粟倉村や旧東西粟倉村の連山を最近歩かれたことがあるのかたずねてみたいです。

夕方になっていましたが、今年からクマ狩猟再開を決めた岡山県行政に会いに行って、担当者に狩猟再開にあたって山を調査されたかたずねました。答えは、行ったことがないということでした。

 

クマが人里に出て来るのは増えすぎたからであり、猟期にはクマを山中で狩猟して個体数低減を図るべきという、兵庫県や岡山県が進めている政策を、みなさんはどう思われますか。

自然界の事は、25年間調べ続けている私たちにもわからないことでいっぱいです。

しかし、もし本当にクマが激増しているのだとしたら、何を食べて増えているのか、クマ狩猟再開を行政に進言してきた研究者たちは明らかにすべきでしょう。

 

行政は県民にクマ情報を公開すべき

実は、熊森本部は昨年度、クマ情報の公開を兵庫県に求めました。その中の項目の一つに、これまでに捕殺されたクマの胃内容がありましたが、公開を拒否されました。そこで、仕方なく兵庫県情報公開審議会に訴えました。審議会の答申は、「胃内容に関しては、(森林動物研究センターの研究者が)研究に用いるデータとしての状態が記載されていない部分に限り、公開する」でした。

しかし、この答申に基づいて、兵庫県が最終的に熊森に提示した胃内容情報は、全てが白紙か黒塗りでした。

 

このような研究者や行政の態度を、私たちは大変残念に思います。

一体何が起こっているのか、情報を提供してくださらないと私たちは考えられません。

民主主義の第一歩は情報公開のはずです。

 

クマ狩猟再開だなんてとんでもない

今回の調査で、私たちは、岡山県の知事さんに会って調査報告をし、クマ狩猟を再開するなどという無茶なことをやめていただくように訴えたいと強く思いました。

もし猟期に山にクマがいたなら、ここにいたら撃たれないとクマに思わせることが、地元の人たちにとってもとても大切なことなのです。

行政担当者のみなさんは、忙しくて奥山を調査する時間などない大学の先生たちの指示を鵜呑みにしないで、どのような政策が本当に地元の人たちの為になるのか、今一度、自分の頭でじっくりと考えていただきたいです。(完)

兵庫県環境審議会が、審議らしい審議もなく、今年もクマ狩猟を原案通り承認 茶番100%

9月4日、今年の兵庫県クマ狩猟をどうするかを決める兵庫県環境審議会鳥獣部会が、兵庫県庁北、のじぎく会館で持たれました。

直前の8月30日の兵庫県のホームページに審議会開催の予告が出ましたが、気づいた県民はまずいないでしょう。

傍聴者は熊森本部からの3名のみでした。

 

前の7名は審議会委員のみなさん、後方の大勢の方は行政担当者

 

会の冒頭、兵庫県秋山環境部長から、本審議会で、「ツキノワグマの狩猟による捕獲等の制限について」ご審議願いますという挨拶がありました。

 

この後、部会長の兵庫県立大学江崎保男教授の進行で、まず、兵庫県鳥獣対策課の藤本副課長が配布資料に基づき諮問内容(=意見を求める内容)を説明されました。

 

(主な諮問内容)

平成28年度兵庫県ツキノワグマの推定生息数がMCMC法によるベイズ推定で中央値が897頭であり、環境省狩猟基準の成獣800頭を超えているに相当するため狩猟対象とする。

クマは冬眠するため、狩猟期間は11月15日~12月14日とする。

狩猟者一人当たり原則1頭。安全講習会を受講すること。

依頼事項として、親子グマは捕獲しないこと。

捕殺上限設定は、(環境省規定では、通常、推定生息数の12%以下だが、)兵庫県の場合は分布域拡大により人間との軋轢が増加しているので、人身被害、精神被害、農林業被害防止のための有害捕殺と合わせて(環境省規定最大の)15%を捕殺上限とする。

897頭×0.15134頭が捕殺上限

()内は熊森捕捉

 

この後、兵庫県森林動物研究センターの廣瀬専門員から、ツキノワグマの目撃数や捕獲数が増加していること、生息域が阪神間北部にまで拡大していること、今年からゾーニングを取り入れて、個体数低減のために集落内だけではなく集落から200メートルまでのクマを有害捕殺していること(8月末までの有害捕殺は28頭)、昨年度人身事故が4件発生したこと、昨年度のツキノワグマ狩猟数は4頭だったことなどについて報告がありました。

また、昨年度のクマ狩猟講習会参加者140名に狩猟後アンケートを取ったところ、122名から回答があり、クマを狙って獲ろうと思った人は23名、後の8割は、狩猟中にクマに出くわしたら撃てるようにしておこうと思った人で、実際に山でクマに出会った人は16名だったそうです。

 

熊森は、行政のクマ対応を聞いてずっこけました。

●人間活動によって大荒廃している餌のない山の話に全く触れられていない!

●全国一律の環境省基準に、兵庫県の特質も考慮せず機械的に数字を合わせているだけ

●相手(クマ)の立場に立って考えることがさっぱりできていない

兵庫県と比べ物にならないほど森が深く豊かで人口密度の低い東北などのクマ狩猟県と同一基準で捕殺するのは無謀です。

人間が壊した生息地の復元も出来ていないのに、人前に出てきたクマを数が増えすぎているなどと安易に判断して捕殺するのは誤りです。

また、MCMC法によるベイズ推定を使用するとお好みの生息推定数にできると専門家によって指摘されているのに、耳を貸そうともしていません。

これでは、とてもクマの保護など任せられないと思いました。

クマがこの審議会を傍聴していたら、あまりの人間の身勝手さ残酷さに泣いたと思います。
山に食べ物がないから、人里に出て行っているのであり、ドーナツ化現象を起こしているだけです。

狩猟で人間の怖さをクマに教えると言いますが、今、銃の性能が飛躍的に向上しており、クマを追い掛けまわす必要はありません。

狩猟でクマを撃ち殺してしまうと、人間の怖さを知ったクマはいなくなります。

 

さあ、ここからが審議です。

しかし、委員の先生方の発言は誠に低調で、先程の兵庫県の説明に少し質問がある程度、兵庫県がそのたびに長々と答えていました。

諮問内容に対する意見は無きに等しかったです。

しいて意見らしきものと言えば、猟友会の方が発言された、「狩猟圧をかけて何度クマを追いやっても、奥山が豊かな森でなければまた出てきます。奥山生息ゾーンという名を、豊かな森ゾーンというようなインパクトのある名前にして、みんなで豊かな森について考えるべきではないでしょうか」だけでした。

しかし、この意見は流されました。

 

こうして、この審議会によって諮問内容は何一つ審議されないまま、原案通りの審議会答申となるのです。

これを茶番と言わずに何というのでしょうか。

 

熊森は25年間クマ問題に取り組んできた熊森の副会長を審議会委員に入れてほしいと、ずっと兵庫県にお願いし、面接まで受けましたが、はねられました。

熊森メンバーが審議会委員に入れば、現地を調べ続けているので、山のように意見が言えるのにです。

 

どこでも行政は、審議会をセレモニー的なものにしておきたがるようですが、そんなことではいい国が造れません。今のような体質を、とても残念に思います。

喧々諤々の議論があって初めて人々の思考は深まるのです。

 

 

帰宅後、審議とは何か、辞書で調べてみました。

ある物事について詳しく調査・検討し、 そのもののよしあしなどを決めることとありました。

 

かくして、今年も哀れ、山の中にひそんでいるクマまでが、「すごいアウトドア」として、ライフル銃で人間の楽しみのために撃たれるのです。

地元では、動物なんて殺してしまえという大きな声の人の陰に隠れてしまっていますが、生息地を破壊しておいて殺すことに胸を痛めておられる方は猟友会員も含め、何人もおられます。

みんなで、おかしいぞの声を挙げましょう。

でなければ、行政の方々は気づかれません。

肩書は立派だが野生動物を殺すことに何の心の痛みも感じない特殊な人の言いなりに動かれてしまいます。

 

 

以下、   NHK テレビ     関西 版 9月8日

兵庫 クマ狩猟ことしも解禁へ

 

ツキノワグマの住宅周辺への出没が増えていることなどから、兵庫県の環境審議会は、去年、20年ぶりに解禁したクマの狩猟をことしも認める方針を決めました。

動物の研究者や猟友会の代表などでつくる兵庫県の環境審議会は、県内のクマの生息数が去年4月の時点で897頭と推定され、狩猟が妥当とされる800頭を上回っているとしています。

またことし4月から7月までのクマの目撃などの出没件数が、去年の同じ時期を100件以上、上回る306件にのぼり、4月以降、2人が襲われけがをしているということです。

このため審議会は生息数の調整が必要だとして、去年、20年ぶりに解禁した狩猟をことしも解禁し、11月15日から1か月間、134頭を上限に狩猟を認める方針を決めました。

審議会の委員で、兵庫県森林動物研究センターの横山真弓部長は、「クマの出没が増え、人的被害も起きていて狩猟による捕獲が必要だ。また、クマを人里に寄せつけない取り組みも求められる」と話しています。

一方、(審議会を傍聴していた)西宮市の自然保護団体、「日本熊森協会」の森山まり子会長は、「森林(奥山)の環境が整備されていれば、里山からクマが下りてくることはない。狩猟ではなく、共存の方法を探るべきだ」としています。

エゾナキウサギの写真集

エゾナキウサギの写真集を見ました。

2010年7月にまだ残雪が残る大雪山にヒグマ調査に行った時のことを思い出しました。

あちこちに穴があいている岩場がありました。

氷河期の生き残りであるエゾナキウサギの巣穴だということでした。

巣穴に手をかざすと、ひんやりとした風が巣穴から出ていました。

エゾナキウサギはこの冷涼な環境がなければ生き残れないということで、何ともはかなくデリケートな生き物であることよと思いました。

写真を撮りたいと思いましたが、警戒をして登山者の前になど出てこないので不可能だと思いました。

 

ところが、写真集を見て、このエゾナキウサギの写真を撮っている人がいることがわかりました。

どの写真のエゾナキウサギも全ての生態が愛らしく、見終わってすぐに、鳴き声と動きを知りたいという衝動に駆られ、ネットに走りました。

解説を読むと、まだ天然記念物になっていないのだそうです。

なぜこんな貴重な生き物がまだ天然記念物になっていないのかと憤りを感じ、文化庁にすぐに電話をしました。

 

<文化庁希少種保全推進室担当者の答え>

 

天然記念物は、文化財保護法に基づき、動物、植物及び地質鉱物で我が国にとって学術上価値の高いもののうち重要なものを指定して、その保存と活用を図る制度です。

 

天然記念物の指定については、通常は事前に地元の教育委員会から指定に向けた相談があり、その後、調査結果などに基づく学術的価値の評価や生息・生育状況、利害関係者の同意など指定の検討に必要な情報を含む意見具申書を提出していただき、その意見具申書に基づいて、文化審議会への諮問などによる、指定に係る検討が行われます。ナキウサギについては、これまでそうした動きには至っていません。

 

なお、北海道中央部では大雪山が天然保護区域として昭和52年に特別天然記念物に指定されており、その指定範囲内では、ナキウサギを含む動物や植物、地質鉱物が特別天然記念物として保護されています。指定範囲に係る現状変更等の行為は規制されていますので、当該指定地において、ナキウサギが絶滅する程にその生息環境が人為的に大きく物理的改変を受ける可能性は極めて低いと考えられます。 

 

(熊森から)

エゾナキウサギもヒグマも北海道の先住民です。私たち人間は、彼らの生息地をこれ以上壊さないように注意し、畏敬の念を持って共存しなければなりません。

 

 

 

兵庫・岡山:国が狩猟獣と定めているからと、頭数基準だけを見て山の違いを考慮せず、クマ狩猟

2017年度のクマ狩猟がどうなるのか、熊森本部は、東中国山地にある3県の各担当部署に問い合わせてみました。

 

8・31 兵庫県鳥獣対策課

今年もクマ狩猟を続行する。

狩猟と有害捕殺を合わせて、平成29年4月1日~平成30年3月31日までの1年間の上限殺数を134頭とする。

根拠・・・(県内推定生息数897頭×0.15=134頭)

 

(今年度のクマ狩猟の詳細は未定)

9月4日午後1時30分~兵庫県環境審議会鳥獣部会(於:のじぎく会館、傍聴可)で決める。

 

8・31 岡山県自然保護課

生息数増加により、17年ぶりに今年からクマ狩猟を再開する。

狩猟と有害捕殺を合わせて、平成29年4月1日~平成30年3月31日までの1年間の上限殺数を30頭とする。

根拠・・・(県内推定生息数205頭×0.15=30頭)

 

(今年度のクマ狩猟の詳細)兵庫県を参考にした。

ツキノワグマの狩猟期間は11月15日から12月14日までの30日間。銃猟のみ。

10月6日にクマ狩猟講習会を開くが、講習会に参加しなくても、銃猟狩猟者のクマ狩猟OK。他府県狩猟者もOK。

狩猟後狩猟者は最寄りの県民局森林企画課又は地域森林課に報告する。

専門員が駆けつけて、体重、体長、年齢(クマを見ればおよそ何歳かわかる)を測定する。クマの遺体は狩猟者が全てもらえる。

 

熊森:何故、上限が30頭なんですか?

岡山県:国のガイドラインに基づき、県内の生息数に捕獲上限割合(15%)を乗じて算出しました。
205頭は、平成28年末時点の県内の推定生息数(中央値)です。

熊森:数えたわけではなく、計算で出しただけの推定生息数の信憑性がまず問題です。次に、山の状態です。私たちは東北地方のクマの生息地を調査してきたばかりです。北海道よりは劣るでしょうが、それでも森の深さ、餌供給量は西日本の山とケタ違いに大きく、別の国の山かと思うほど豊かでした。一方、西日本の山は浅く、奥まで人間が入り込んでおり、開発もすさまじく、山が荒廃。餌供給量は非常に乏しい。いくら日本が中央集権国家だからといって、中央で決めた15%の値を全国一律に使用するのは間違っています。元々、環境省の指導が問題なのですが。全国一律に、スギ・ヒノキを植えよと言われて、スギ・ヒノキに向かない山にまでスギ・ヒノキを植えて失敗した拡大造林の過ちの繰り返しじゃありませんか。
兵庫県も岡山県も、ハンターにクマ狩猟を楽しんでもらうような場合ではありませんよ。地元の皆さんのためにも、クマが山に帰れるように森を復元することが、今一番にすべきことです。岡山県の検討会委員の中で、クマ狩猟再開に反対する委員はいなかったんですか?

岡山県:ひとりだけでした。

熊森:それは、岡山県が環境省指導に賛成する人ばかりを委員に集めているからですよ。もっと多様な意見の人を入れないと議論が深まらないし、政策決定を誤りますよ。1時間程度の講習会を受けたからと言ってどうということはないでしょうが、クマ狩猟の経験がない人でも自由に狩猟して良いなど、クマという動物を舐めすぎです。事故の元ですよ。

 

ちなみに、鳥取県はクマ狩猟を再開しないそうです。

理由は、山中にいるクマまで撃つのはおかしいと思うからだそうです。

一番まっとうだと、熊森は思いました。

 

☆東中国山地のクマ狩猟について、みなさんはどう思われますか。

奈良市D地区のシカ1頭捕殺して解体 一線を越えた奈良県 神鹿文化への冒涜 防鹿柵補助予算0円、シカ捕殺予算2000万円

8月17日、奈良市の東里地区で、見回りをしていた猟友会のメンバーが、罠にかかったおとなのオス鹿、1頭を発見しました。

奈良県は、捕殺されたシカの胃の内容物などを調べ、生態の調査に生かすとして、猟友会に即解体を依頼しました。(調査業者は未定で、今後入札を掛けるそうです。それまで解体部位は冷凍保存されます)

猟期が始まる11月中旬まで、120頭をめざしてシカ捕殺が続けられます。

これまで奈良市一円のシカは国の天然記念物に指定され、「神の使い・神鹿(しんろく)」として保護されてきました。

いわゆる「奈良のシカ」が捕獲されたのは、60年前に、天然記念物に指定されて以降、初めてです。

 

 

(熊森から)

このような捕殺の流れを全国に広めてきたのは、野生動物の科学的・計画的管理を標榜する西洋思考のワイルドライフ・マネジメント派の研究者や彼らと繫がっている業者です。(他の分野での西洋文明の良さはもちろんありますが、こと野生動物との共存に関しては、大量絶滅させてきた西洋の自然対応をまねてはなりません。自然は人間の頭で考えた科学の力でコントロールできるような簡単なものではありません。)

彼らは大学教授などの立派な肩書を使って行政に取り入り、賛同してくれそうな人達ばかりを集めてもらって検討委員会を立ち上げ、その答申として捕殺を行政に進言して実行させるのです。

そういうわけで、今回も、「奈良のシカ保護管理計画検討委員会」で、シカ捕殺に反対した委員はゼロでした。

こういうのを、世間では「出来レース」と言います。

 

一般に、首長や行政担当者は最初は捕殺に抵抗を示しますが、専門知識がないので、偉い先生方から、早く殺さないとシカが無限に増えると脅されると簡単に洗脳されていきます。(実際は、野生動物は環境収容力以上に増えられません。現在のシカ問題は人間が引き起こしたもので、昔のように棲み分けを復活させることが必要です)

こうやって、多くの心優しい日本人の思いとは違う残酷な方向に、物事がどんどん進んでいきます。

奈良県は、天然記念物のシカを殺すという一線をついに超えてしまいました。

戦争と同じです。一線を超えるともう止められなくなり、市民は、何かおかしいと思いながらも、声を挙げられなくなっていくのです。

そのうち、C地区のシカも個体数調整しようとなって行くでしょう。B地区、A地区・・・

しかも、死体をねんごろに葬るのではなく、データをとるためとして、即バラバラに解体しました。

祖先が1300年間守り通してきた奈良の神鹿文化への冒涜です。

 

研究者は論文が書けるし、業者は毎年仕事が入っていいことばかり、きっと喜んでいる事でしょう。

まるで、利権構造です。

シカ被害を減らす目的と言いながら、いつの間にか目的がすり替えられています。

全国どこでもこうです。

120頭のシカを殺しても、胃内容のデータをとっても、農作物被害軽減になどには全く結びつきません。

新たなシカが移動して来るだけです。

 

 

今年度のシカ柵補助金を調べてみました。

何と、奈良県から奈良市農家へのシカ柵補助金はゼロです。(奈良市からの補助金は970万円)

ちなみに、シカ120頭捕殺のために、奈良県から猟友会や大阪に本社のあるコンサル会社に、計2000万円が予算計上されています。

この2000万円をシカを殺すことではなく、D地区のシカ柵を強固にすることに使った方が、シカ害は確実に減ります。

 

こんなおかしなことが許されていくのは、国民が声を挙げないからです。

 

ネットで調べてみたら、2012年度にも、奈良県がシカ捕殺に乗り出そうとしたことがあることがわかりました。

 

(以下、当時のj-castニュースより)

担当部署である奈良公園室などに100件以上、「シカを駆除するな」「撃つな」といった抗議電話が殺到し、業務に支障を来した。電話は日本全国からかけられ、「地元はシカを害獣として殺してしまうが、奈良だけは守ってくれると思っていた」といった内容もあり、凍結にいたった。担当者は、「奈良公園内のシカが殺されることはない」と断言。そして、公園周辺の「人とシカとの共生」について、外国人観光客らから「人と自然との共生が残っている素晴らしいもの」と評価されていると強調し、「これまで1000年続いてきた。これから1000年も続けていきたい」と話した。

 

熊森は、当時の担当者は、 普通の人間の感覚で 、専門家と言われる人達よりもすごくまっとうで正しい判断をされたと思います。

 

p.s 8月25日現在のシカ捕殺数3頭。

太郎と花子の獣舎、ペンキ塗りでよみがえる 2頭とも大変元気

和歌山県生石高原のツキノワグマ太郎(28才)と花子(27才)、どちらも大変元気です。

山田さん一家、くまもり和歌山県支部、くまもり本部、くまもり南大阪地区、くまもり京都府支部、みんなで大切にお世話しています。

 

ちなみに、ウィキペディアのツキノワグマの項のクマの写真は花子ちゃんの写真です。

 

6月26日、お世話隊とのふれあいを心待ちにしてくれている花子

 

7月23日 大好きな丸太を抱く太郎(伸び過ぎた爪が見える)

 

お世話係として心配しているのは、2頭共に伸び過ぎた爪です。

動物園のクマたちは、床がコンクリートのため、爪がすり減ってしまうという問題が生じます。

太郎と花子は反対で、高齢と共に爪が伸び過ぎて円形になってきました。

ネコさんのように、爪切りで切ってあげることもできず、はたまた、巻いてきた爪が手足の肉にくい込むことを防ぐ手だてもなく…今後が悩ましいです。

夏はどちらもプールですね。2頭向き合ってプール入り

 

イノシシも元気です。

お世話隊の皆さん、いつもありがとうございます。

お世話隊ボランティア

27年間使用し、サビが目立つ獣舎

7月23日、獣舎のペンキ塗りが控えていましたが、この暑さです。お世話隊のみなさんで、天井に日よけをかけてきてくださいました。

 

 

8月13日に行くと、獣舎のペンキ塗り変えが終わっていました。獣舎は、新品のようにピカピカです。和歌山県庁さん、ありがとうございました。

まだまだ暑いので、黒布の日よけを掛けてきました。これで獣舎内も快適です。

次回は日よけをもっと追加してやる予定です。

 

毎年、太郎と花子のファンクラブにご寄付くださっているみなさん、本当にありがとうございます。

おかげで、私たちも余裕で大切に世話し続けられます。2頭にはおいしい物をどっさりあげています。

幸せな動物たちを見ていると、見ているこちらの人間まで幸せな気分になってきます。

 

この奥山のブナ・ミズナラ林(120ha)にクマは棲めるか?熊森本部が専門家に山の調査を依頼

8月9日、熊森本部調査研究部は、専門家に来ていただき、兵庫県宍粟市にある氷ノ山山系の奥山ブナ・ミズナラ林を調査していただきました。

まず、標高600メートル地点から沢沿いを伝って登っていきました。

(1)魚影が見られない

水量の少ない谷川

 

小さな川魚は少しはいると思うのですが、周りの山が人工林で埋まっているせいか、谷川の水量も少なく、おそらく水温も高く、確認できるような魚影はありませんでした。(イワナの適正水温は16.8℃まで)

 

昔のように渓流の水が冷たく水量が多いと、川魚も豊富でクマは年中ここに棲めるそうですが、これでは無理とのことでした。

 

(2)酸性降下物の影響はない

夏なのに、枯れた葉が少しありました。酸性降下物の影響でしょうか?

 

先生のお答えは、「酸性降下物による影響であれば、下層植生のみならず同時に多くの樹木も枯れます。しかし樹木はしっかり育っていますから、違うだろう」ということでした。

 

(3)液果植物がほとんどない山

この山にはなぜか、液果植物であるヤマザクラやウワミズザクラが全くありません。

ミズキやヤブデマリが1本ぽつんと生えているのが見つかりましたが、クマは何本も液果植物が生えている山に来るのであって、こんな1本しかないような効率の悪い所には来ないそうです。

案の定、ヤブデマリには実がついていましたが、クマが食べに来た形跡はありませんでした。

この山には、熊の餌となるような昆虫もいないし(地球温暖化の影響か?)、クマの春夏の食料はありません。

実のついたヤブデマリは1本あったが・・・

 

(4)秋の食料

①ヤマブドウ

クマはトチの実を食べませんが、幹の苔のはがれ方で、トチノキにクマが登ったことがわかると教えてもらいました。

トチノキには、葉のない太いツルが巻きついていましたが、上を見上げるとヤマブドウが高い所で葉を広げていました。枯れ木のように見えたツルは、ヤマブドウの生きたツルでした。ヤマブドウは日光のあたる場所にしか葉を付けないようです。

 

②ブナ・ミズナラ

この山を登って行くと堅果植物であるブナ・ミズナラ林です。凶作でなければ、秋にクマが利用しにくるだろうということです。数年前、ナラ枯れが入って、ミズナラが壊滅するのではないかと心配しましたが、一部枯れただけで今のところ終息した感じです。

 

(5)若木・稚樹・下草がない

私たちは、この山に若木・稚樹・下草がないことを、非常に気にしていましたが、先生は、林冠が鬱閉(うっぺい)していることを考えると、それほど異常な状況ではないだろうと言われました。

鬱閉(うっぺい)した林冠

木が1本倒れてギャップが出来たら、そこにはさまざまな芽生えが生じるのでしょうか。シカが食べつくしてしまわないでしょうか。

 

(6)ササが消えたのは、シカではなく一斉開花

沢沿いを3時間ほど登り続け、標高1000メートルあたりで北側の尾根へ上がろうということになり、急斜面を登りました。

 

 

斜面には、背丈の低いチシマザサがぽつぽつと広がっていました。

シカがササを枯らしたのか、たずねてみました。日本中でシカが犯人にされています。

先生の判定は、一斉開花によるササ枯れであり、自然現象ではないかということでした。

その証拠に、枯死したササは背が高く、緑色のササはどれも枯れたササの根元の地下茎から出た芽でした。

徐々に下層植生が回復していくのではないかと言われていました。

 

 

ササの青い葉は地面近くだけで、先端部はどれも枯死している

 

下層植生がササばかりになると、他の植物が入ってこれなくなるので、これまたよくないそうです。

下層環境も多様性が必要です。

 

<先生のこの山の評価>

「ドングリなどの堅果類等、秋の食糧になるものはあるが、全体的に、クマの夏の食糧となる液果類の樹木が少なすぎる。たとえば、ヤマザクラやウワミズザクラの実はよくクマが食べるが、この山にはそういった液果類の樹木がほとんどない。川魚もほとんどいない。兵庫県ではクマの数が爆発的に増加していると聞くが、奥山にクマが生きていくための充分な食糧がないのに、増えられないだろう。クマがこの山に棲みつくことはできない。秋に利用するだけだろう」

 

(熊森から)

ブログでは主な事しか書けませんでしたが、専門家の先生に来ていただいて多くのことを学びました。内部資料には、もっと多くのことを残しておきたいです。

 

この山のふもとの集落のおばあさんたちが、「むかしは谷川に30センチくらいのヤマメがたくさんいて、女でも手づかみできたよ」と以前、教えてくださったことが思い出されました。そんな川があれば、クマは年中この山に棲めたのかもしれません。戦後の拡大造林政策によって、どこの谷川も水量が激減です。スギやヒノキばかり植えられたことによって、クマたちは直接、食糧を失っただけでなく、川魚という貴重な食料も失うことになったのです。

 

この自然の山に液果植物がほとんどない理由は、よくわかりません。理由を思いつかれた方は教えてください。自然界の事は、人間には永久にわからないことでいっぱいですが。

 

東中国山地にある兵庫県では、兵庫県森林動物研究センターの研究者(当時、兵庫県立大学准教授、現在、株式会社 野生鳥獣対策連携センター代表取締役)が2011年春、ベイズ推定法を用いてクマが爆発増加したと発表しました。私たちには、推定過程がよくわかりません。集落でのクマの目撃が増加したこともあって、兵庫県はクマ狩猟を再開しただけではなく、現在、積極的にどんどんクマを有害捕殺しています。

 

山すそに、クマが大好きな糠入りの罠をシカ・イノシシ用として大量に設置したことも、クマの目撃数や錯誤捕獲が激増した原因の一つではないかと私たちは思うのですが、兵庫県は情報公開を請求してもほとんど非公開回答なので、県民としては訳が分からなくなります。

 

一方、西中国山地では、生息推定数は微減とされ、奥山のクマの生息密度が低下していることが分かった(ドーナツ化現象)として、狩猟も禁止されたままです。熊森の自動撮影カメラから、兵庫県もドーナツ化現象を引き起こしていることはまちがいありません。

中国山地の東と西、なぜこれほどまでに結論が違うのでしょうか。

 

8/3記者会見 奈良市D地区シカ捕殺計画は無用の殺生  農家のためシカのため防鹿柵強化で対応を

8月1日、熊森本部は奈良県荒井正吾知事に、

奈良市D地区のシカ捕殺計画を中止し、予算は防除強化に

という要望書を提出しました。

知事への奈良シカ要望書

 

そして、8月3日、森山会長、本部スタッフ、奈良市会員らは奈良県庁記者クラブを訪れ、1時間の記者会見を行いました。

熊森の考えを説明する森山会長(奈良県庁)

 

記者会見には多くの記者さんたちがご出席くださり、みなさん熱心に聞いてくださいました。

 

奈良では、テレビニュースやいくつもの新聞記事にしていただけました。

 

1時間話を聞いてくださった記者さんたちが、20年間自然保護を研究し実践してきた熊森の主張に一理あると思われたから、報道してくださったのだと思います。思い付きだけの浅はかな意見であれば、バカにして誰も記事にしないでしょう。

 

しかし、報道内容は結論だけの簡潔なものであったため、よくぞ言ってくれたという声と共に、シカ被害に苦しむ農家のことも考えず、無責任な発言をするな、シカ柵代金は熊森が全部出せなどという非難の電話、メール、FAXも計数件本部事務所に入りました。

 

結論だけ聞いてすぐに反発するのではなく、根拠も知ってから意見を言う習慣が、お互い必要だなとつくづく思いました。自分の全く知らない事実に基づいて相手が発言しているのかもしれないのですから。

 

<熊森発言の根拠概略>

●無用の殺生は良くない

D地区のシカ120頭を殺しても(箱罠に捕獲後、高圧電流を流してシカを殺すそうです。猟友会に予算付け済)、農作物被害は減りません。

なぜなら、隣接する京都府など、周りからすぐに他のシカが移動してくるので、やがて元の木阿弥になります。

そうなれば、来年は、もっと多く殺そうということになるでしょう。

こうしてシカ捕殺の泥沼にはまっていくのです。

C地区の鹿も殺すことにしようと、エスカレートしていくでしょう。

そのうち、B地区のシカも、A地区のシカもと、殺しがどんどんエスカレートしていくかもしれません。

そうなれば、世界中からやってきて奈良にお金を落としてくれている観光客が激減するかもしれません。

そんなことになったら、その時には反対すると言っても、戦争と一緒で、いったんエスカレートし始めると止めることが難しくなります。

せっかくこれまで1頭も殺さずに来たのですから、何とか当面、奈良だけでもこの伝統を守ってほしいです。

大量捕殺を終えて、やれやれと思って手を緩めたら、シカはまたすぐに元の数に戻ってしまいます。

「シカ殺せ」と言われている人たちは、無用の殺生になってもいいから殺したいのでしょうか。

そんな人はいないはずです。

 

 

・もういい加減に、人間にはワイルドライフ・マネジメントなど不可能なことに気づこう

今、西洋思考の一つである「人間による野生動物の※頭数調整」が、国策として全国で展開されています。

(※1999年当時の環境庁が、日本中の自然保護団体の反対を押し切って、西洋の自然観を良しとする研究者たちの提案を受け入れ、導入したもの。それまであった有害駆除と違って、農作物被害を出していない個体でも、頭数調整名目で殺すことができるようになった。人間一体何様なんだ)

 

この手法では、絶滅させない限りは、激減するまでシカを殺しても、捕殺の手をゆるめるとやがて元の数に戻ってしまいます。

本当に、残酷なだけでばかげています。人間には野生動物の頭数調整など、自然界のコントロールは不可能なのです。

 

日本の山をスギだけの単一造林にしたつもりが、自然に反していたため、大雨のたびに山がどんどん崩れて自然林に戻ろうとしています。これと同じです。植物も動物も、人間が手を入れるのをやめたら、自然に戻ってしまうのです。

 

熊森は、奈良のシカだけを殺すなと言っているのではなく、野生動物の頭数調整など人間には不可能だからやめようと言っているのです。野生動物は環境収容力に生息数を合わせます。しかし、それ以上は増えません。

 

奈良公園の野生ジカ(A地区に相当)は、奈良の鹿愛護会によって、毎年、生息数が数えられています。

奈良公園のシカ生息数

これは貴重なデータです。若草山の上など、シカに入られては困るところには、シカ柵が設けられており、シカは入れません。

 

 

・全ての大型野生動物と共存してきた祖先に学ぶ

私たちは歴史のある国に生まれたのですから、野生種を大量に絶滅させてきた西洋の人間中心文明ではなく、見事、野生動物たちと共存してきた祖先から、棲み分けや被害防除対策を学ぶべきです。

 

先祖は土や石を積み上げ、徹底したシシ垣で対応してきました。

参考文献「日本のシシ垣」(イノシシ・シカの被害から田畑を守ってきた文化遺産)

著者:高橋春成(奈良大学教授)

 

奈良では、田畑の周りをロの字型人家でびっしり囲う等、とにかくシカを殺さないでシカと共存するための知恵をたくさんひねり出してきました。民族の素晴らしい知恵です。誇りです。

私たち子孫も、平成のシシ垣造りで対応すべきです。

 

祖先の、明治になるまで1200年間出続けていた殺生禁止令や、輪廻の思想などもすばらしいと思います。

今度、生まれ変わってきた時、自分がシカだったらと考えてみたら、むやみな殺生などできなくなるはずです。

 

・金網の防鹿柵でシカ被害は防げる

もちろんこの結論に至るまでは、私たちは兵庫県を中心に長年現地調査を行い、シカ被害に苦しむ農家とも随分話し込んできました。そして、私たちの提案は、しかるべき農家のみなさんから賛同を得ています。

 

以下のグラフ「防鹿柵の効果」は、兵庫県のシカ管理計画(兵庫県庁作成)から転載したものです。

 

 

この農会アンケートによると金網柵を張ることで、8割前後の農家がシカ害を防ぐ効果があると答えています。ある集落で金網柵の負担額を聞いたところ、集落負担は1割で、補助金が9割出たということです。(兵庫県では、何キロも金網を張って、集落を田畑ごと囲んでいるところがいくつかある。)

奈良の農家の方も、ノリ網はだめだが、きちんとした金網柵なら、シカから田畑を完全に守れると証言されていました。

 

2007年に「鳥獣被害防止特措法」が国会を通って、被害防止に多額の国家予算がつくようになりました。

 

奈良D地区のある農家の方は、奈良県も他府県並みに、防鹿柵に補助金が付くようにしてほしいと言われていました。そうであるなら、奈良県も兵庫県並みに防鹿柵に補助金が付くようにしてあげればどうでしょうか。

 

・他生物の生命を尊重する文明しか生き残れない

私たちが、環境省が進める頭数調整という国策に反対するのは、このような人間中心主義、経済第一、科学盲信の上に成り立つ近代文明が、人間を生かしてきた地球環境を破壊し、人類を破滅に導くものであることを感じているからです。

 

平成になってから、奈良県庁には奈良市D地区の農家から、シカに対する要望書が3回出ました。

シカ被害に悩みながらも、いずれにの要望書にも、シカ捕獲やシカ捕殺の言葉はないそうです。

これが、奈良の心だと思います。日本文化だと思います。

 

今回、シカ捕殺を決定したのは行政が集めた専門家による審議会の答申によるものということで、国策推進派の学者たちが出した結論ではないかと思われます。

 

日本は肩書社会なので、大学教授たちの出した結論が正論にされてしまいますが、原発問題を振り返ってみてもわかるように、専門家とよばれる先生方が出した結論が必ずしも正しいとは限りません。子どもや一般庶民の生物としての本能的な感覚の方が正しいことも多々あるのです。多くの日本国民は、殺生を嫌い、殺さない解決法があればそちらを選ぼうとします。これまで会ってきた多くの動物学者たちは、この反対でした。

 

最近は地球温暖化で、シカのえさとなる草が青々としている時期が、以前より1年に付き2か月長くなっています。これによって、以前よりシカが多く生きられるようになったという研究者もいます。

戦後の拡大造林のための皆伐による一時的な奥山大草原の出現や、山奥まで張り巡らされた林道、農地化宅地化による草原・湿原の9割消滅、地球温暖化、郡部の過疎化高齢化など、シカを害獣に仕立てたのは、全て人間ではないでしょうか。

 

この大地は人間だけのものではありません。殺さなくてもいい命までは殺さない。

これは、人間の倫理観として当然の考えだと思いますが、いかがでしょうか。

そして、何よりも、他生物の生命を尊重する文明だけが持続可能な文明なのです。

 

熊森が、せっかくこれまで殺さずに来た天然記念物奈良のシカを殺さないようにしようという理由は他にもまだまだありますが、長くなったので、今回はとりあえず、ここで終えます。

 

●奈良のシカを市民が守ってきたことを知り感動 6月4日ブログ

 

●今夏、旧奈良市管理地区で天然記念物のシカの初捕殺が開始されることに疑問 6月4日ブログ

 

●殺しても鹿害は減らない 予算は防除柵強化に!奈良市D地区訪問 7月13日ブログ

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