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2013-08

例外種以外のほとんどの狩猟鳥獣の捕獲数が激減している事実を、どう考えるか

わが国の狩猟対象鳥獣は、鳥類29種、獣類20種(うち5種類は外来種)の、計49種である。

今年の3月12日、環境省や有識者が出席して、「狩猟鳥獣のモニタリングのあり方検討会」が持たれた。事務局は、自然環境研究センターである。

その中で配布された資料に、狩猟鳥獣の1923年(大正末期)から現在までの捕獲数(狩猟数+有害捕殺数)の推移グラフがある。それを見て驚いた。例外種と外来種以外は、どれも激減している。

 

<鳥類29種の場合>

捕獲数が増えているのは、カワウ1種のみで(Aタイプ)、あとはキジに代表されるように、どれも激減している(Bタイプ)。以下、環境省HPから。

 

(Aタイプ)

カワウ

 

(Bタイプ)

ゴイサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、クロガモ、エゾ ライチョウ、ウズラ、ヤマドリ(コシジロヤマドリを除く。)、キジ、コジュケイ、バン、ヤマシギ、タシギ、キジバト、ヒヨドリ、ニュウナイスズメ、スズ メ、ムクドリ、ミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラス

 

 

<獣類20種の場合>

捕獲数が増えているのは、特定外来生物法2004年によって根絶殺害捕殺が始まっている外来種を除くと、イノシシとシカのみで(Aタイプ)、あとはウサギに代表されるように激減している(Bタイプ)か、クマのようにどちらともいえないもの(Cタイプ)である。

 

(Aタイプ)イノシシ、シカ

(Bタイプ)

タヌキ、キツネ、ノイヌ、ノネコ、テン、イタチ、アナグマ、ハクビシン、リス、ウサギ、

< 熊森の考察>

これらのデータは、いったい何を意味しているのだろうか。

狩猟者が減って、捕獲される狩猟鳥獣が減ったのか、かれらが田畑を荒らさなくなったので、有害捕殺しなくてもよくなったのか、または、例外種を除いて、これら自然界の野生鳥獣の生息数が激減したのか。

いつも見ている狩猟者数の推移グラフを、ここでもう一度見てみよう。

狩猟者登録数の推移 環境省グラフを熊森編集 特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン(イノシシ編)H23

もちろん、地域や種類によっても違うし、生息環境も、森林に生きるもの、草原に生きるものなど、個々の状況は違うだろうが、西日本に住んで山の中を歩き回っているわたしたちに言わせれば、例外種以外は、我が国の野山から野生鳥獣が限りなく激減していっているように思える。

 

狩猟対象鳥獣以外にも言えることだが、むかし、どこにでもいた鳥獣が見当たらなくなってきている。緑に覆われた国土を見て安心している人がほとんどだが、実際は、野生鳥獣の棲めないひどい自然環境になってきていると言えるのではないか。スポーツやレジャーとしての狩猟など奨励している場合ではないのではないかと思えるのである。

 

農家がシカ、イノシシなどの大型動物に田畑を荒らされるようになって、所によっては農業ができないほど困っておられるのは、私たちも各地で見聞きしてきた。なぜ多くの鳥獣が激減する中で、これらの大型動物だけが大量捕獲されているのか。誰も説明できない。人間には自然界がわからない。

 

今、必要なのは、一般的なハンターを増やすことではなく、シカ、イノシシ、加えるなら、クマ、サル、この対策員を養成することではないか。しかも、これらの動物だけを見ているのではなく、彼らの本来の生息地が今どうなっているのか調べ、どうしていけばいいのかまで考えられる専門知識と、生命尊重を最優先にして考えられる倫理感あふれた対策員が必要とされていると思う。

 

 

 

熊森が、阿仁クマ牧場協議会に出席 7月23日

この日は、秋田県庁の依頼で、午後1時から5時まで開催された第1回阿仁熊牧場利活用推進協議会専門部会に、熊森も委員として出席させていただきました。この会では自由に意見を述べて良いということで、考えつくだけいろいろと提案させていただきました。

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いろいろな立場の者9名が、委員として出席しました。

近年、社会変化に伴って、既存の阿仁熊牧場の入場者が大きく減ってきているそうです。新しくできるヒグマ園で、ヒグマたちがいかに幸せな余生を送れるようにするかが一番考えられねばならないことですが、終生保護飼育するには、安定した経営も必要です。

 

この両方の問題について、実にたくさんの意見が出て、とてもいい会になったと思います。しかし、この9名の委員は、いずれもすでに自分の仕事を持っており、新しくできるヒグマ園の経営やヒグマ飼育に携われません。いろいろ出たすばらしいアイディアを、誰がどのように採用して実際の場で実践してくださるのか、ヒグマたちに深い愛情を寄せる本気の専任職員の確保が最優先であるというのが、多くの委員たちの一致した意見でした。

 

<熊森の主な発言>

 

・とにかくクマたちが幸せに暮らせる場にすること。訪問客がそれを見て癒され、自分も幸せな気分になって帰るようになる。また訪れたいとリピーターになってくれることが大切。

 

・クマは森づくりの名人。クマだけを知る場にするのではなく、「クマ・豊かな森・水源」をセットにして理解できる、国民教育の場となるような展示を工夫してほしい。そのために使っていただけるなら、残された「八幡平クマ基金」をすべて展示に提供したい。

 

・質の高い専門性を持ったガイドが、園内を案内するようにしてほしい。

 

・秋田の自然や森とヒグマ園をセットにして観察体験してもらえるようにし、秋田の子供たちだけではなく、全国の学校に来場を呼びかけて、子供たちが、自然への畏怖や畏敬の念を持ち、自然や全生物との共存を実践してきた日本文化をここで学ぶことができるように仕組んでほしい。

 

・このヒグマたちのこれまでのくらしや、ここにやってきた経緯を示す掲示板を作り、全生物の生命尊厳思想を広めてほしい。この思想が、人間の生存環境である地球の自然を守ることにつながる。

 

・秋田の子供たちに、20頭のヒグマ全てに、個性に合わせたふさわしい名前を付けてもらいたい。(クマは知能が大変高く、犬や猫のように自分の名前や人間の簡単な言葉がわかるので、名前があると触れ合いが一層楽しくなる)

 

(感想)今回の秋田訪問で、いろいろな方々と心に残るお話ができました。

中でも、県庁の職員が、「昨年突然、八幡平までヒグマの世話に行くように言われて、初めのうちはクマが荒れていたので怖かった。しかし、今は落ち着いてきて、臭いでわかるのか、自分たちが行くと、クマたちが覚えていてくれて、喜んで寄って来てくれるようになった。県庁からは往復6時間かかるが、世話に行くのは負担ではなく、楽しみになっている」と、打ち明けてくださったのが、とても心に残りました。八幡平で現在、愛情を持って日々残されたクマたちのお世話をしてくださっているみなさんに、心から感謝です。

 

阿仁クマ牧場に隣接するヒグマ園の建設工事現場を視察 7月23日

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7月1日から、ヒグマ園の造成工事が始まっていました。

 

当初、自然林を囲ってヒグマ園にする予定だったそうですが、施設として自然林が長年持つか等いろいろと検討された結果、自然林をバックに電気柵付き金網で0.6ヘクタールの造成地を囲うことになったそうです。ただし、床はコンクリートではなく、土にして、2か所に池も設置するということです。

 

ガラス越しにヒグマたちの全身がすぐ目の前で見れたり、床下にあいた穴からヒグマを下からのぞいて見たり、どんぐりを与えて食べるのを観察できるようにしたり、訪れる人とヒグマが触れ合えるような場所も、いろいろと工夫されているようでした。

 

ヒグマたちがぐちゃぐちゃにしてしまうかもしれないが、運動場内に実験的に木を少し植えてみる予定だそうです。

 

運動場は、オス・メスを徹底的に分離して、繁殖しないようにするということでした。

 

20頭全頭に個室を設け、餌やりの時は、取り合いしないように個室で与え、冬ごもりも個室でできるようにする計画だそうです。

 

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阿仁熊牧場には現在約80頭のツキノワグマと1頭のヒグマが飼われています。

2010年秋愛知県豊田市で捕獲された野生の母子グマが、当時、何とか命を助けてやりたいと願う行政の方たちの尽力で、八幡平熊牧場に移送されました。悲しいことに、間もなく母熊はストレスで死亡したそうです。こぐま2頭だけが生き残りました。それが、アイチとトヨコです。

彼らはヒグマに先立って、この阿仁熊牧場に昨年移送されました。久しぶりにアイチとトヨコの元気そうな様子を見てホッとしました。母グマが、天からこの子たちの幸せを願って見守っているように感じました。

「日本の森や動物がどうなっているか、まったく知りませんでした」という東京の高校1年生522人に、今年も熊森会長講演 7月18日

この高校では、毎年、入学してきた高校1年生に、まず森の大切さを教えます。夏休みには長野県の山まで生徒を連れて行って宿泊させ、現地学習をさせておられます。すばらしいと思います。これからの教育は、やはり森の大切さや生物の多様性を守ることの大切さを教えることから入るべきだろうと思います。 今この時点で、自然を守る文明に、現代文明を方向転換させられなければ、もはやこの生徒たちに未来はないからです。

 

この関係で、毎年、くまもりの会長講演を企画してくださっています。今年も、事前に全生徒が、「クマともりとひと」を読んで、感想文や質問を書いてくださいました。いつものことながら、生徒たちの感想文は、私たち大人に、大きな勇気と感動を与えてくれます。まだ経済第一主義に冒されていない純粋なわかものたちは、人間の本能的なやさしさや自然との共存本能を持っています。貴重な資料として、全員の感想文をいただき、保存することにしました。大人たちにぜひ読んでいただきたいです。また、生徒たちをここまで考えさせた「クマともりとひと」を、全国の高校生たちに読んでもらいたいと、切に思いました。

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<会長講演要旨>

●みなさんの感性、判断力は、本当にまっとうですばらしい。

●すでに自然を壊してしまった都会の若者たちが立ち上がらなければ、この国の自然は守れない。(アラスカの例から)

●経済第一主義、人間至上主義、科学技術過大評価が、人類を破滅に向かわせている。

●新聞やテレビが隠して伝えない真実がたくさんある。真実を知るには、知る努力が必要。

●自然生態系を初め、人間には永遠に把握できずコントロール不可能な複雑系が、この世にはたくさんある。そういうものからは、人間は手を引くべき、触らないことがベストだと、私は思う。人間は神ではないことを自覚しなければならない。

●ひとりひとりが、だれかに洗脳されることなく、自分の目で見て自分の頭で考えて、勇気を持って発言しないと衆愚政治となり、国は方向を誤る。

 

表情豊かな八幡平クマ牧場のヒグマたちに会ってきました 7月22日

この日はあいにくの雨でしたが、ヒグマたちは雨に濡れることが気にならないようです。多くが運動場に出てきて、東京のくまもり会員が送ってくれたにんじんをもらって、おいしそうに食べていました。元牧場主の長崎さんによると、晴れの日は暑いので、最近はずっとプールに浸かっているということでした。ここのプールは深いので、さぞ、気持ちがいいだろうと思います。

 

ヒグマたちの顔を1頭1頭眺めてみました。みんなすっかりおだやかな顔になっており、表情豊かでした。話しかけるとじっと聞いています。今は、毎日食事を与えられ、世話もしてもらっているので、食べ物の取り合いをしなくなったと、長崎さんが言われていました。残飯を与えていた時と比べると、ずっとスリムで健康的になったということです。

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残念ながら、調子の悪いクマもいて、彼らは運動場の下にある獣舎で、食事をもらっていました。うち1頭は、すでに床ずれができており、抗生物質入りパンをもらっていましたが、高齢で治りそうにもないということでした。11月には20頭そろって、新しい天地である阿仁に行きたいのですが、行けるのは19頭になるかもしれないということで、胸が痛みました。

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ヒグマたちの食料ですが、最近、大舘市にある大きな食品工場が協力してくださるようになり、無料で、野菜や果物の切れ端を大量に提供してくださっているというので、見に行きました。この日は、パイナップルを加工したあとの芯などを、大きなペール缶に5缶もいただきました。いくらヒグマたちでも、食べきれないと思います。ドッグフード、キャットフード、パン、野菜、魚、果物など、バランスよく与えているということでした。食料やインフラなど、八幡平クマ基金が、ずっと11月末まで支え続けます。

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