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2017-02-15

島根県でイノシシ罠に誤捕獲されたクマの大量殺処分(=違反)が発覚!パブコメ募集の中止を!

日本一のクマ保護先進県として熊森が称賛していた島根県が、現在、「島根県クマ保護計画案」に対するパブリックコメントを募集しています。(2月17日締め切り)

今年もいろんな県の「クマ保護計画・クマ管理計画」にパブリックコメントを提出している熊森ですが、「島根県保護計画案」だけ、平成28年度クマ捕殺数の記載がないことに気づきました。変だなあ?と、2月13日に島根県庁鳥獣対策室の担当者に聞き取ったところ、なんと・・・平成28年度、島根県は前代未聞、181頭という大量のクマを捕殺していたことが発覚しました!

これまで熊森が気づかなかったのは、イノシシ捕獲用の罠に誤捕獲されたクマ186頭のうち、125頭が殺処分されていることが発表されていなかったためです。誤捕獲されたクマを殺処分してしまうのは、ルール違反です。

<西中国山地3県の誤捕獲グマ殺害数と率・有害捕殺数・合計捕殺数>

島根県 誤捕獲グマ125頭/186頭を殺害  (殺害率67%)
・・・・・・・+有害捕殺数56頭 合計捕殺数181頭

広島県 誤捕獲グマ36頭/36頭を殺害    (殺害率100%)

・・・・・・・+有害捕殺数15頭 合計捕殺数51頭

山口県 誤捕獲グマ18頭/25頭を殺害        (殺害率72%)

・・・・・・・+有害捕殺数7頭   合計捕殺数25頭

 

西中国山地のツキノワグマは、環境省のレッドリストで絶滅 の恐れのある地域個体群とされ、国による狩猟禁止など、これまで保全への配慮が求められてきました。しかし、近年、分布域が外側に拡大しています。(平成24年JBN) 奥山での森林荒廃が進み、コア生息地の生息密度が薄くなってきていることから(金井塚務氏)、必ずしも生息数が増えたとは言えません。西中国山地のクマ生息数は、近年、微減と発表されていました。(2015年発表)

ちなみに、誤捕獲グマの殺害率は、平成28年度兵庫県、鳥取県、京都府では0%であり、これらの府県では、今も保全ルールがきちんと守られています。

 

(熊森から島根県へ)

「島根県クマ保護計画案」の保護の文字が泣きます。

これだけホロコースト的な大量捕殺を実施しておきながら、次年度も「保護計画案」の名を、どうして掲げることができるのでしょうか。島根県は平成28年度、クマを完全に管理対象(=捕殺対象)にしてしまっています。

 

現在パブリックコメント募集中の「クマ保護計画案」には、錯誤捕獲が発生した場合には「原則として放獣すること」と太字下線で強調して記載されています。むなしい限りです。

また、捕殺の上限も80頭と定められています。平成28年度の捕殺数181頭は記載されていません。全く意味のない捕殺上限数です。

このように、うたっていることとしていることが真逆の「クマ保護計画案」を提示してパブリックコメントを募集するのは、提供された資料を熟読し、まじめに考えて応募してきたわたしたち国民を欺き愚弄する行為であると思います。

島根県のこの様な姿勢を非常に悲しく感じます。

熊森は島根県に対し、現在の「クマ保護計画案」へのパブリックコメントの募集を中止し、島根県が本当に実施してくださる内容に書き換えて、再募集されることを申し入れました。また、すでに応募された方に対しては、平成28年度の補殺数を正直に伝え、資料不足をおわびして、再応募していただくよう依頼すべきです。

 

「島根県クマ保護計画案」パブリックコメント応募先

締切:2017年2月17日まで

島根県・西中国地域クマ保護計画 (提出先:農林水産部森林整備課鳥獣対策室 FAX:0852-22-6549 Mail:choju@pref.shimane.lg.jp)

募集要項等URL:http://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/ringyo/choujyu_taisaku/tokuteikeikaku_ikenbosyu.html

 

1月29日 東京クマ学講座 

くまもり東京都支部とくまもり神奈川県支部の共催による東京クマ学講座が、日本教育会館一ツ橋ホール707号室で開催されました。

講師は「東京のクマ」で有名な山﨑晃司氏(東京農業大学   地域環境科学部   森林総合科学科   教授)です。

「東京、そして日本のツキノワグマの今」という演題で話してくださいました。

会場風景

 

1991年から奥多摩のツキノワグマの調査に取り組んでこられた山崎先生のお話は、東京都などのくまもり会員が以前からぜひお聞きしたいと熱望していたものでした。参加者一同、全神経を集中させて聞き入っておられたことと思います。

 

先生はまず初めに、クマ保全に取り組むなら、現地に行き、地元の方とお話をし、地元の方たちの気持ちをくんであげて、その上で自分の意見を言うことが大切だと話されました。これは熊森本部もずっと言い続けてきたことで、その通りだと思います。まだ地元集落と結びついていない支部は、ぜひがんばってください。

 

大昔、日本列島の本州には、ヒグマ、ツキノワグマ、ヒョウ、トラ、オオカミたちが暮らしていたそうで、想像しただけですごいです。アジアの広大な地域に生息してきたツキノワグマですが、現在、残念ながら、分布域がどんどん縮小されているそうで、危機感を持ちました。そんな中で、日本には、まだツキノワグマがいます。単位面積当たりで見たら、日本はクマの生息密度がもっとも高い国のようで、祖先の共存文化をとても誇らしく思いました。残念ながら、九州のツキノワグマは滅びてしまいました。四国は大変危うい状況なので、山崎先生も、今年、何とかしようと決意されているようでした。熊森も、四国のクマの絶滅を止めるために、できる事をみんなで一緒にしたいです。

 

2016年に起きた秋田県鹿角市のツキノワグマと人との事故については、一体何があったのか、神のみぞ知るですが、山崎先生の推察を興味深く聞かせていただきました。それにしても、この事故があったことで、秋田のクマは推定生息数の約半分500頭近くが殺処分されてしまいました。

熊森が思うに、クマによる人身事故が起きると、いつも、研究者を名乗り、どこまで本当かわからないセンセーショナルなことを流してメディアの寵児となる人がいます。今回もそのような人の言葉を真に受けて、マスコミが、「人喰い熊誕生」、「殺人熊誕生」などと、大騒ぎしました。その結果、全国で罪もないクマが大量に殺されたのです。熊森は、マスコミのあり方に猛省を促したいです。

 

東京都奥多摩のクマについては、まず、終戦直後の1947年にアメリカ軍が上空から撮った禿山だらけの山々の写真を見せていただきました。会場からどよめきの声が上がりました。ここまで過度に人間が山を利用していたということです。今、この場所は木々で覆われています。山崎先生の調査によると、最近、山に入った時出会うクマの数や見る痕跡が増えて来ているということでした。これまでクマがいなかったところにも、クマの分布域の拡大がみられるということでした。首都という巨大な大都市のバックにある奥多摩には、今も、クマ、サル、シカ、イノシシ、カモシカ、大型野生動物たちがすべて残っているということで、本当にすごいことだと思います。1362万人東京都民の水源を支える奥多摩の山々を、調査してみたくなりました。

 

山崎先生のわかりやすいやさしい語り口に、参加者一同、参加して良かった勉強になったと、みな喜んでおられました。

 

この後、森山まり子(日本熊森協会会長)が「日本熊森協会とツキノワグマ」という題で話しました。森山会長は、人工林・自然林とも荒廃して奥山にクマが棲めなくなっている兵庫県の現状から、作今のクマの生息域拡大現象が、実は生息域の移動によるドーナツ化現象なのではないかという推察や、今、全国で実施されている「数を 推測して殺すだけ」の野生動物を物扱いした管理(=ワイルドライフマネジメント)の残酷さや非人間性を、物言えぬ野生動物たちに代わって、物言える私たち人間が声を大にして世に告発していかねばならないなどと話されました。

 

会場には山崎先生を含めて、大学の先生が3名出席されておりました。後の2人の方には、大気汚染が及ぼす森林の枯死や、ベイズ推定法でクマの生息数を推定することが不可能な理由など訳などについてミニ発表をしていただきました。おかげさまで、この講座がさらに盛り上がったと感じました。

 

会場との質疑応答では、クマの生息数推定を計算する手法が現在確立しておらず、将来も確立するとは到底思えないため、研究者たちがそのようなことに労力を費やすことへの疑問など、参加者一同が考えさせられるような質問がいくつも出て、有意義でした。

 

今回の学習会で発表してくださったみなさん、会を企画してくださったみなさん、参加してくださったみなさん、本当にありがとうございました。今後の熊森活動の力にしていきましょう。

 

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