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2020-11

[速報] クマ捕獲規制と共存対策を求める 26,798筆の全国署名と要望書を環境大臣、農林水産大臣宛に提出!!

絶滅回避と人身事故防止のために、緊急対策を要請しました

左から、宮崎勝環境大臣政務官、室谷会長、片山大介顧問

11月27日、環境省にて、宮崎勝環境大臣政務官(参議院銀)に、熊野正士農水大臣政務官に、全国から集まった26,798筆の署名とクマの絶滅回避と人身事故防止のための緊急対策を求める要望書を提出しました!

コロナ禍の中、人と会うことが制限される中で、本当にたくさんの人が、1頭でも捕殺されないように、クマと共存し、クマの棲める水源の豊かな森が日本にも残るようにと必死で集めてくださいました。署名提出には、赤松正雄顧問(元衆議院議員)、片山大介顧問(参議院議員)その他、たくさんの方にご尽力いただきました。

思いのつまった署名を、室谷悠子会長、片山大介顧問、クマ保全担当の水見職員、川崎東京支部長らと届けてきました。

 

捕殺より、えさ場の確保、人身事故防止、生息地復元が急務

熊野正士農林水産政務官を囲んで(右から川崎東京支部長、室谷会長、伊藤会員、熊野政務官、水見クマ保全担当職員、菅原職員)。

 

近年、食料を求めてクマが里に大量に出没し、誘引物を入れた罠に誘引され、大量に捕殺されています。昨年度のクマ捕殺数は過去最多6000頭を超えました。

私たちは24年間奥山を歩き、調査し続けてきました。クマが、人里に出てきたのは、クマが増えたからでも、人を恐れなくなったからでもなく、クマの本来の生息地である、奥山水源域の自然林が、クマを養えないまでに劣化したことが原因です。

拡大造林政策により広大な奥山自然林が失われ、ダム建設によって俎上するサケ科の魚を失い、地球温暖化によって昆虫が消え、液果は実を結ばず、酸性雨によってドングリ類を枯死させるナラ枯れが全国的に大発生、山にクマの食料が皆無という危機的な状況となり、大量出没が起こっています。

今年の全国のクマ捕殺数は、9月末現在で4000頭を超えており、このままいけば昨年を上回る捕殺数となることが予測されます。

クマをこのまま捕殺し続けると、クマは絶滅し、生態系保全上からも人道上からも問題です。豊かな水源の森の造り手を失えば、人間も近い将来水不足で苦しむようになります。

環境大臣への要望事項 ※要望書はこちら

【クマとの共存のための緊急要請】

 全国の自治体が捕殺を抑制しながら、人身事故回避・共存対策を実践できるように、今年度改訂予定の「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編)」においても、以下の対策を反映させてください。

1 山の実りがない年は、緊急対策として、里のどんぐり、オニグルミ、カキ・クリなどをクマに分けてやってください。人身事故の危険がある場合は、実をもいで山へ運ぶことを実践できるようにしてください
栄養補給ができればクマは山に戻って冬眠します。山の実りの凶作年は、人里周辺の木の実を食べに来たクマには近づかないでそっと見守る。民家が近く、人との接触の恐れがある場合は、実をもいで、山へ運ぶことを、緊急対策として、推進してください。

2 人身事故が起きないようにするためにも、できる限りの捕殺抑制を
ただ出没しただけで、子グマや親子グマまで大勢の人たちで追いかけまわして捕殺しており、クマは恐怖のあまりパニックに陥り、かえって人身事故を誘発します。クマ出没時に人が至近距離に近づかない工夫をすることで事故は防げます。過剰捕 獲は地域的な絶滅を招く恐れがあり、捕殺をできる限り抑制することが必要です。
捕殺を抑制できるように全国的な放獣・一時保護体制の整備をしてください。また、シカ用・イノシシ用罠での錯誤捕獲の放獣を徹底してください。

3 クマが里に出てくるのを押さえるために、山裾にクリなどを植え、クマ止め林を造る必要があります
奥山の自然林劣化の回復には時間がかかり、今後も奥山のエサ不足の頻繁な発生が予測されます。クマが人里に出て来ないように、集落から離れた里山にえさ場を作っていくべきです。全国の自治体で実践できるよう事例の紹介や補助事業の創設をしてください。

4 潜み場除去のための草刈りや誘因物除去など人身事故防止対策の徹底を
人とクマの至近距離での突発的な遭遇が人身事故の原因です。過疎と高齢化により、これまでできていたクマを寄せつけない集落づくりができない地域が多くあり、公的支援が必要です。今後は、捕獲ではなく、被害防止と棲み分け対策に力を入れるべきです。

5 根本対策として、奥山の生息地の復元を
奥山にクマの生息環境があれば、クマと人は以前のように棲み分けて共存することができます。時間はかかりますが、根本対策である放置人工林の広葉樹林化や奥山自然林の劣化を止めるための土壌改良など、さまざまな対策が急務です。

農林水産大臣への要望事項 ※要望書はこちら

【クマの人身事故防止と棲み分け対策のための要望】

鳥獣被害対策予算、森林整備関連予算、森林環境譲与税などを活用し、クマの生息環境整備と人身事故防止及び棲み分け実現のため、以下の対策を実現ください。

1  人が気をつけることで人身事故は防げます。潜み場除去のための草刈りや誘因物除去など人身事故防止対策を鳥獣被害対策予算で実現させてください
人とクマの至近距離での突発的な遭遇が人身事故の原因です。過疎と高齢化により、これまでできていたクマを寄せつけない集落づくりができない地域が多くあり、公的支援が不可欠です。捕殺のための事業メニューはたくさんありますが、一番必要な被害防除のための予算を充実させ、利用しやすいものにすることが急務です。

2  里のどんぐり、オニグルミ、カキ・クリなどをクマに分けてやってください。人身事故の危険がある場合は、実をもいで山へ運んでやってください
栄養補給ができればクマは山に戻って冬眠します。緊急事態として人里周辺の木の実を食べに来たクマには近づかないでそっと見守ってください。木の実と民家が近く、人との接触の可能性がある場合は、実をもいで、山へ運ぶことも鳥獣被害対策予算で実現できるようにしてください。

3  根本対策として、生息地・奥山の広葉樹林の復元を至急進めてください
奥山にクマの生息環境があれば、クマと人は以前のように棲み分けて共存することができます。時間はかかりますが、根本対策である放置人工林の広葉樹林化や奥山自然林の劣化を止めるための土壌改良など、さまざまな対策が急務です。
森林整備予算、昨年創設された森林環境譲与税を活用し、奥山の広葉樹林化を至急進めてください。これは、保水力豊かな災害に強い森をつくることでもあります。

4  クマが里に出てくるのを押さえるために、山裾にクリなどを植える「クマ止め林」を造るための事業に公的補助が使えるようにしてください
奥山の自然林劣化の回復には時間がかかり、今後も奥山のエサ不足の頻繁な発生が予測されます。クマが人里に出て来ないように、集落から離れた里山にえさ場を作っていくべきです。
これらも鳥獣被害対策予算や森林整備予算、森林環境譲与税の活用により実施できるようにしてください。

室谷会長は、「本来の生息地である奥山にえさのないなか、捕殺を繰り返しても、出没や人身事故は無くなりません。①えさの問題をどうするか、②棲み分けをどう進めていくかという視点の対策が急務です」と訴えました。

宮崎勝環境大臣政務官は、「来年度前半までに、ガイドラインやクマ出没対応マニュアルの改訂が予定されており、「共存」という視点を取り入れていきたい」と答えられました。熊森が実践し、提案するえさ場の確保や棲み分け対策、放獣体制の整備などもガイドラインに取り入れられるよう重ねてお願いしました。共存のための各自治体のモデルになるガイドラインができるように、今後も要請を続けます。

熊野農林水産大臣政務官には、奥地の放置人工林をクマの棲める広葉樹林に戻してほしいということと、鳥獣被害対策として、捕殺に頼らない棲み分け対策やクマたちのえさ場の確保に力を入れてほしいとお願いをしました。熊野政務官は、エサの問題、生息地の問題を考え、棲み分けをすることが必要という話を、「ゾーニングが大事なのですね」と真剣に聞いてくださりました。

「農林水産省の鳥獣被害対策予算が、来年度さらに拡充される予定です」と政務官がおっしゃられたので、現在の捕殺を中心とする獣害対策から、野生動物たちが山で暮らし、棲み分けができるような環境整備と野生動物を寄せつけない集落づくりにシフトしていくことが必要なことをお伝えしました。

 

農政記者クラブでの説明の様子

署名提出に合わせて、環境省記者クラブと農政記者クラブで、記者に説明をしました。「クマが出てきて捕殺された」「事故が起こった」という現象だけではなく、クマたちが奥山から出て来ざるを得ない現状や共存と人身事故防止のため、何をすべきかということを報道してほしいと訴えました。「現場を取材に行きたい」とおっしゃられる記者さんもおられました。

日本熊森協会の提案は、いずれも24年間、クマ生息地で実践してきた取組に基づいて行われているものです。ぜひ、私たちの活動を取材に来ていただきたいです。

現在も、全国各地で、クマが出没し、捕殺が続いています。署名提出を契機に、安易な捕殺に頼らない共存の取組みが進んでいくよう、今後も、国に対して要請を続けるとともに、都道府県や地元自治体にも共存対策の実施を働きかけていきます。

 

国際動物福祉団体 Wild Welfare(ワイルド ウェルフェア)も共存対策を提案

世界をまたにかけて、飼育下にある野生動物の福祉向上に取り組むWild Welfare(ワイルド ウェルフェア)の幹部のSimon Marsh(サイモン マーシュ)氏からも、小泉進次郎環境大臣宛の親書を授かり、政務官にお渡ししました。

サイモン氏は、捕獲された野生動物の自然復帰プロジェクトに関わった経験を持ち、人との軋轢を減らすための啓発や捕まったクマの放獣、野生復帰のための一時保護施設の整備などを、日本熊森協会などのNGOとも連携し、行うべきだと提言をされました。

Wild Welfare(ワイルド ウェルフェア) サイモン氏の親書はこちら

海外では、クマが人里へ出てきただけで捕殺するのではなく、原因を究明し、人側も十分に注意し、クマを寄せ付けないように配慮して行動することを徹底している地域が多くあり、学ぶべきことがたくさんあります。

11月22日 とよくんファンクラブに18人が参加!

大阪・豊能町の高代寺でお寺とくまもりが終生保護飼育をしている元野生のツキノワグマのとよくん(推定10歳)。

熊森本部は毎週火曜と第三日曜にボランティアさんたちを募ってとよくんのお世話にあたる「とよくんファンクラブ」を開催しています。

 

11月22日には、埼玉県支部から池田支部長と高橋副支部長、愛知県支部からも2名が参加してくださり、総勢18人が参加。

全員マスクを着用し、落ち葉掃除や獣舎内にたまったふんやドングリの食べかすの除去などを手分けしてテキパキと進めていきました。

プールの水を抜いて汚れた底面をブラシで洗い、水を交換。

獣舎内に新しいどんぐりを大量に置いてやりました。

大阪府内の会員さんのご子息姉弟も獣舎掃除を初体験。

オリの鉄柵にこびりついた黒カビや汚れを水ぞうきんで元気よくふき取ってくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掃除の後、寝室に閉じ込めていたとよくんを運動場に出してやると、新しいどんぐりの山にさっそく座り込んでムシャムシャ食べ続け、時々、大好きなプールに浸かったりしてうれしそうでした。とよくんのファンがどんどん増えています。飼育を始めて当初はとても人間を恐れて威嚇していたとよくんですが、今ではお世話隊の皆さんとすっかり信頼関係ができて、いつもとてもおだやかです。これが本来のクマの姿です。みんなに知ってもらいたいです。

冬ごもりを前の食い込みも順調で、お腹やお尻に順調に脂肪がついてきています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参加してくれた姉弟二人は「思っていたよりも大きかったけれど、とてもかわいい」「またぜひ参加したいです」と笑顔で話してくれました。

 

 

とよくんも、写真の真ん中に入ってくれています

四国山地の奥山で、熊森がついにクマたちの餌場づくりを開始 

戦後の林野庁の拡大造林政策により、頂上近くまでスギやヒノキの人工林でびっしり埋め尽くされた四国山地。

この山の中には、動物たちの食料が皆無です。

結果、四国のツキノワグマは残りわずかな自然林の中の食料を食べるしかなく、あと十数頭にまで追い詰められています。

絶滅の危機に瀕していることが報道されて久しい四国のツキノワグマ。

にもかかわらず、誰一人、彼らの餌場を復元してやろうとしません。

熊森の四国トラスト地内を歩くクマ。誘引物なしで熊森自動撮影カメラが撮影。

 

見かねた熊森は、数年前からツキノワグマたちの生息地のど真ん中にトラスト地を探し始め、2017年と18年、各1カ所をトラスト地として取得、2019年からトラスト地に登れる道を造り、人工林を伐採し、着々と準備し続け、ついに2020年11月12日、第一弾の実のなる木の植樹にまでこぎつけたのです!

今回伐採に参加してくださった2名は、いずれも若手の森林組合職員。「こんな何もない山にクマたちは住んでいるのか。かわいそうに」を、連発されていました。

かかり木にならないように、一発で倒す。プロの腕の見せ所。

頂上が平原だからか、木は意外と大きく育っていた。伐り出せればよいのだが、奥地過ぎて伐り出せないので捨て伐りに

 

今回の伐倒で、開始前はうっそうとして何も見えなかった人工林の内部の空が急に開かれ明るくなり、何と、隣接する標高1708メートルの石立山の雄大な山頂が見えるまでになりました。

石立山が見える

 

今回シバグリやクヌギ以外に多く植えたのは、ナラガシワ。このドングリは4年で実がなります。堅果(ドングリ類)、液果、昆虫、とにかくえさになるものを四国の山奥にもう一度そろえてやろうと思います。動物は食べ物を食べないと生きていけない生き物です。食べ物がなくなって一番に滅びていくのは、クマなど一番たくさん食料を必要とする大型野生動物たちです。

ついに夢にまで見た植樹こぎつけた

鹿よけ網を張って植樹終了

 

 

この日、熊森徳島県支部の大西さちえ支部長も息子さんたちと険しい山を登りきり、他のボランティアさんたちと初の実のなる木の植樹を行いました。

今回の作業は、12日から14日までの3日間でした。徳島新聞が同行取材して、1日目のことを記事にしてくださいました。感謝。

今回、本部スタッフや愛媛、徳島両県支部の会員ら9人が地元森林組合の2人と協力してトラスト地に登山して、トラスト地のスギやヒノキの人工林約150本をチェーンソーで伐倒し、実のなる木を合計35本植樹しました。昨年間伐した場所の地面を目を凝らして見ると、小さな植物の芽がいくつか顔を出していることがあちこちで確認できました。実生の生育も楽しみです。

 

 

まだクマの餌場づくりは始まったばかり。この山だけで22ヘクタールもあります。作業は50メートル四方の区域で展開。群状間伐といわれるやり方で、まず今回で2カ所の伐採ができました。今後も順次作業を続けていきます。

 

手っ取り早く大型ドローンで里のドングリを山に運んでやればどうか、道が急峻すぎて一般人が登れない場所のため、道づくりから始めるべきだ、潜在植生でなくてもよいので、ナラ枯れに強いものを植えればいいのでは、スギやヒノキの人工林で放置されているよりはずっといいなど、いろいろな声をいただいています。皆さんのお知恵もいただいて、試行錯誤しながら、会員の会費と寄付で食料豊かな森に戻していきます。

 

静岡県から駆けつけてくださった伐倒のプロである山路淳さんは「今回の伐採と植樹は絶滅寸前のツキノワグマを救うために、わずかでも動き出そうとする確かな一歩だと思います。歴史的なことでもあると思い、ぜひとも参加したいと思ってやって来ました。伐倒では思っていたより太い木も多かったですが、作業が順調に進み、目標の植樹もできてよかったです」と話されていました。

大異変!秋の奥山自然林の中が食料ゼロと化していた 岐阜県本巣市根尾

10月29日、公益財団法人奥山保全トラストが所有する岐阜県の奥山自然林175ヘクタールの秋の実り調査を行いました。

頂上は1170m、うーん、いい森です。見渡す限りの山々がトラスト地。とにかく、広大です。

参加したのは本部から昆虫研究者とスタッフ3名、あとはクマ大量捕獲罠に規制をかけてほしいという熊森署名を今年4000筆以上集めた岐阜県支部の皆さんで、総勢20人。みんな自然保護と向学心に燃えています。

昨年夏に撮影された山の写真を見て、クマの痕跡が見られるのではと、期待して行きました。

 

 

2019年8月撮影

 

立派な集落が残っていましたが、廃村になっていました。

元の山主さんが軽トラで私たちに会いに来てくださいました。90才というのに、ものすごくお元気です。

この集落はかつて積雪が4メートルもあったそうです。

昔はこの山に、ウサギや山鳥など生き物がいっぱいいたそうです。

冬は毎年集落で6頭ぐらいのクマを捕っていて、みんなで食べたもんだとそっと教えてくださいました。

 

どんな生き物たちがいるのだろうか。久しぶりに下草の生えた自然林に入れて、兵庫県本部から来たスタッフたちは感激です。

この山にはまだシカが入っていないのかとも思いましたが、しかし、よく見ると、道の両側の草は先端のないものが多いです。

少しはシカが入っているようです。

 

 

三段滝は、やはりすばらしかったです。

突然現れた三段滝

 

しかし、こんなに大勢で一日中歩いたのに、見つけたドングリはなんとゼロでした。

ミズナラの木が枯れてしまった後の山なのだそうです。

若いミズナラの木を少し見つけましたが、もちろんドングリは一粒もなっていませんでした。地面にも一粒も落ちていませんでした。

堅果ゼロ!

 

秋の自然林の中は、色とりどりの液果が美しいはずと期待して行ったのですが、全く実りがみられませんでした。

液果は、昆虫がいて受粉してくれないと実らないのです。

液果ゼロ!

 

ヤブデマリも実りなし

 

 

兵庫県と違って岐阜の山はまだ野生動物たちが住めると思っていたのですが、これでは何も住めません。

岐阜県もか。

なんだか恐ろしいことが日本の山で起きていると思いました。

もちろんクマの痕跡もゼロでした。出会った動物もゼロ。

山から生き物たちの気配が消えていました。

みんな食料を求めて里の方に移動してしまっているということです。

 

里に出て来るようになったクマの数を見て、クマが山で増えていると言っている研究者がいますが、食料が何もないのにどうして山で増えられるのでしょうか。

 

みんなで勉強しようと、この日、奥山生態学に詳しい研究者に同行してもらったのですが、ほとんど何も説明していただくものがありませんでした。

なんてこった。

岐阜の奥山の実態を調査して怖くなってきました。

何とか、食料になるものを山で育てないと、これでは棲み分けができません。

こんなことになってしまって一番困っているのは森の動物たちです。

次に困るのは、山から出てきた野生動物たちに農作物を食べられてしまう農家の皆さんです。

気持ちが沈んでいく参加者たち

 

うーん、こうなったらもう常識にとらわれない思い切った対策が必要です。この事態を放置していたら、人間も水源の森を失います。

動物たちに帰れる森を!山に昆虫と実りを取り戻せ!

11月12日徳島新聞に徳島県支部設立の大きな記事

11月12日、熊森四国トラスト地では、残りわずかなクマたちの餌場を再生しようと、林業のプロ3名が人工林のヒノキを次々と伐倒、参加者が、実のなる木を植樹している最中です。

徳島新聞がくまもり活動を大きな記事にしてくださって、励みになります。

新聞を読んだとして、14日の支部結成記念シンポジウムなどに関する徳島県民からの電話問い合わせが、朝から本部に相次ぎました。

 

コロラド州における人とクマの共存のあり方  ~徹底した防除対策~

日本でクマの大量捕殺が続く一方で、アメリカでは「クマをできる限り殺さない」共存政策が採られています。日本のクマの大量捕殺に胸を痛め、コロラド州におけるクマとの共存政策について知らせてくれたのは、会員の伊藤純子さん。アメリカコロラド州に住む方からクマの人的被害の件数や共存のあり方を聞いて、情報を寄せてくださいました。
コロラド州のクマの生息数は17000~20000頭と推測されています。2019年(4/1~12/31)、クマとの接触情報は5369件寄せられました。このクマとの接触情報(ベア・コールBear Call)は、よっぽど緊急の場合は911(警察への緊急通報)ですが、CPW(コロラド・パークス・アンド・ワイルドライフColorado Parks and Wildlife)という機関へ通報されるのが通常です。

CPWはコロラド州における自然保護や野外活動、野生動物管理を指導する国および州が定めた機関であり、州の全野生動物を取り扱い、41ヶ所の州立公園や350ヶ所以上の野生動物生息地域の管理をしています。

CPWのホームページ トップページのスライドショーで「(クマ対策のため)ゴミ箱に錠を」と呼びかけている

 

CPWに寄せられた情報は
・外にあるごみ箱を荒らされたケースが1728件
・庭の鳥の餌箱が壊されたケースが397件
・庭の果実をつける木やハチの巣、鶏斜などが狙われたケースが1171件
・車の中に食べ物を置いておいて車に侵入されたケースが303件
・ガレージや家への侵入のケースが517件
・その他1253件
驚くべきは、計5000件以上の被害情報の中で2019年安楽死させられたクマは92頭(被害の1.7%)だということです。また、2018年の安楽死数は63頭にとどまっています。もちろん殺すことへの是非はありますが、コロラド州での「安楽死」は文字通り薬を使い、銃殺はしません。さらには、また母グマを安楽死させることはほとんどなく、仮に母親を安楽死させることがあれば、その子グマは野生に戻ることができるまで保護施設に送られるということです。
クマによる人の死亡事故は1934年から2019年までで5人となっており、一番最近の死亡者は2009年で、それ以降死亡事故は起きていません。さらに、たとえゴミなどの誘因物に引き寄せられて町中におりてきても、人が怪我をする人身事故の事例も極めて少ないです。
これは行政による住民、観光客への告知、教育、指導によるものだと考えられます。ポイントは「人間がクマの棲む場所に入ってきていることを自覚すること」その上で、クマとの接触をできるだけ回避するために
・クマがコロラド州の主にどこに生息しているか
・どの時期にどんな活動をしているか
・どの時間帯に活動しているか
をHPや配布物、看板、宣伝カーの巡回などで常にアナウンスしているということです。

「クマはとても頭がいいので、私たちも頭がよくならなければならない」と注意を促す

また、クマは嗅覚が鋭いため、ごみの処理方法についても厳しく指導し取り締まりを行なっています。
・外に設置してあるごみ箱はクマが容易に開けられないようベアプルーフと呼ばれるタイプのごみ箱を設置していること
・BBQの後、食べ残しは絶対に置いていかないよう告知が徹底されていること
・家で料理をするときはキッチンの窓を開けないよう告知していること
・家の玄関ドアノブ(外側)はレバーではなく丸いタイプにしてクマがドアを開けられないようにするよう建築基準法で定めていること
などがあります。

クマがごみをあさらないように、ベアプルーフタイプのごみ箱が置かれている

クマが開けられないように、外側には丸いタイプのドアノブが

「窓やドアにしっかりと鍵をかけるように」

 

CPWのSNSにはクマとの接触情報や対策などがアップされています。CPW南東部のツイッターによると

これは「排水溝に入り込んで出られずにいるクマがいる」との通報があり、駆け付けたCPWの職員が「排水溝と繋がったマンホールのフタを開けておけば、自力で脱出するのではないか」と試し、無事にマンホールから出てきたものです。その後、職員たちによってゴム弾で退散させられ、森に帰ったそうです。これは何度も捕獲されたり市民の安全を脅かしたりすると安楽死処分となるため、市街地に近寄らせないために脅しているのです。「安易に殺さずに解決する」という姿勢が見られます。

無事にマンホールから脱出!

森に帰るように職員によってゴム弾で脅され、掛けていくクマ

コロラド州の事例はクマとの共存のあり方として必ずしも完璧なわけではありません。生息推定数2万頭のなか、2019年は約1200頭が狩猟されている事実もあり(日本では2019年の狩猟数は数百頭)、CPWの組織自体も、狩猟や釣魚の免許の発行をしているなど、ハンティングを容認しています。しかし、日本のように、山にいる野生動物まで追いかけ回し、子グマや親子グマまで殺処分するような、非人道的な例はほとんどなく、あったとしてもCPWによって調査され、対処を受けます。違法な狩猟に対して、罰金が科せられたり、免許を剥奪されることもあります。その上、推定生息数がほぼ同じにもかかわらず、コロラド州での安楽死数(2019年92頭)と日本での捕殺数(2019年6039頭)には大きな差があります。さらに、日本では捕殺数がこれだけ多いにも関わらず、人身事故や死亡事故も毎年起きているのです。クマと人の共存や人身事故・死亡事故を防ぐということにおいて大切なのは、クマを捕殺することではなく、被害防除など人への教育と情報共有がいかに有効であるかということはコロラド州のデータから顕著です。クマの絶滅を防ぐため、日本においても、クマの大量捕殺の流れを食い止め、クマの生命を尊重した共存政策へと転換することが急務です。

10月30日、兵庫県でカキもぎを実施

凶作年は里のカキを「クマにあげて」ください

大量の常設罠でクマの乱獲体制ができてしまった兵庫県

昨年、兵庫県では過去最多の119頭のクマが殺処分されました。今年もすでに37頭(9月末現在)ものクマが殺処分されています。

兵庫県は、平成29年度から、クマの捕獲体制を強化しています。クマが出没する前の春から、半年から1年の長期間で、クマが捕獲できる箱罠を設置することを認めており、現在、わずか800頭前後の生息推定数のクマに対し、約2000基の箱罠が常設されています。罠の中に入れられた米ぬかなどの強力な誘因物に誘われて、罠にかかったクマは、農作物被害を出していなくても、0歳や1歳のクマでも基本的に皆、捕殺されています。

今年は、兵庫県でも山の実りが凶作で、どんぐり類が枯死するナラ枯れも大発生しています。熊森が定期的にクマの目撃情報などを聞き取りしている兵庫県のクマ生息地では、「今年は山の実りが悪いというのにクマがほとんど山から出てこない。県がクマを獲りすぎていなくなってしまったのではないか?」と不安の声を耳にします。

さらに、今年は夏の異常高温のせいか、里の柿などの果樹も実のつきがわるいという情報を聞きます。山にも里にも餌がない。本当に危機的状況です。

 

ツキノワグマ目撃 兵庫県は昨年に比べ少なく323件(神戸新聞、10月24日)

 

ナラ枯れ・奥山エサ不足に関する記事はこちらをクリック→くまもりNEWS

 

 

ナラ枯れと山の実りの大凶作でクマの目撃が出始める

そんな状況の中、10月下旬に入り、兵庫県丹波市ではクマの目撃が何件か出始めました。丹波市は、人工林率が58%と高く、通常はクマの目撃がほとんどない地域ですが、山に実りのない年にはエサを求めてそういう場所にもクマが下りてきます。

クマが出て来ている現場はどんな場所なのか、クマが出て来て困っている方がおられたら被害対策をして少しでもお力になりたいと思い、現場へ駆けつけました。

現地へと車を走らせる中で、丹波市は、兵庫県内の他の自治体の中でも、柿の木が実っている場所が多いと感じました。

しかし、よく見ると、どの木も豊作というわけではなく、ある木はたくさん実がなっていますが、その近くの木は全然なっていないという不思議な状況です。

僅かな場所の違い、木の違いで豊凶が異なるようです。

 

地元の方の協力でカキもぎを実施

早速、地元の方のお話をお聞きしたところ、柿の木の成りがいい場所ピンポイントで、クマが来ているようです。

集落の中でひときわカキの実りが目立つ木がありました。

 

家主の方にお話を聞いてみると、こちらの柿の木は甘くて非常においしく実っており、地域の方もカキの実を頂きに取りに来られるそうです。しかし、木の頂上付近に鈴なりで、高さがあるので地域の方でも取れない部分があるとのことでした。

家主の方に、今年は山の実りが悪くて、さらにクマの餌となるドングリの木も枯れてしまって、クマにとっては非常につらいエサ不足なんです、とお話ししました。

 

家主の方は「自分もそう思う。最近、うちの近くの山も、時々散歩で入るが、山の中のドングリも全然実が落ちていない。それにこの地域は山にスギやヒノキをたくさん植えているから、クマもエサが無くて困るだろう。うちの柿をもいで、山にもっていってやりなさい」と言ってくださいました。

ありがたいです。私たちは、家主の方に深く感謝の言葉をお伝えして、カキもぎをさせていただきました。

 

 

本来であれば、もいだカキは、クマがカキを探して出て来るであろう裏山に置くのですが、ここの裏山は急斜面で上がるのが難しいのと、この辺りは人工林率が高く、クマは本来棲んでいない場所だったので、当会の姉妹団体である(公財)奥山保全トラストが所有する、クマの生息する山にもっていくことにしました。

もいだ実は、併せて60㎏ほど

クヌギのドングリと一緒に、置いてきました。

 

事故防止対策、絶滅防止対策としてのカキもぎ

山の実りの凶作年は、冬眠のため脂肪をつけなければならないクマは、里の実りを求めて山から下りてきて、集落付近のクリやカキ、オニグルミなどを食べます。私たちは、かつての日本人がそうしていたように、そういう年は、クマに近づかないようにそっと見守って、里の実りを分けてやってほしいとお願いをしています。

ただし、クマと人が至近距離で接触すると、クマは恐怖のため事故を起こす可能性があります。そういう危険がある場所では、私たちは、地元の方の了解を得て、カキをもぎ、山へ持って行きます。

本来の生息地に十分なえさがないという危機的状況の中で、人身事故防止や過剰捕獲回避の緊急対策として、有効であると考えています。

今、あまりにも多くの地域で、クマが出てきており、私たちの力だけで全て対応することは到底できませんが、事故を防ぎたい、1頭でも多くのクマが、生きのびてほしいと願い、本部や支部で実践をしています。

クマが出没しているが、捕殺に頼るのでなく、共存の道を模索したいと考えておられる集落があれば、ぜひ、ご連絡をいただきたいです。

 

 

静岡県で「クマ止め林」づくり!

熊森の会員がボランティアで頑張ってくださっています

 先日、「クマ止め林」を作ろう!という記事を公開しましたが(10月18日)、実際に静岡県の山でクマ止め林づくりに取り組んで下さっている会員の山路淳さんをご紹介いたします。 

静岡県の天竜川上流で広葉樹林化をめざす

(公財)奥山保全トラストの静岡県佐久間トラスト地での広葉樹林再生活動。衛星写真で茶色く見える部分は人工林を部分的に伐採したところ。

現場は、静岡県浜松市の公益財団法人奥山保全トラスト地が所有する佐久間トラスト地です。

(公財)奥山保全トラストは、熊森の自然保護活動から生まれたナショナル・トラスト運動を進める自然保護団体で、市民のみなさんからいただいた寄付で、生物多様性豊かな水源の森を開発されないように買取って保全する活動をしています。現在、全国に19か所、2346haの水源地の森を買取り、保全しています。

スギ・ヒノキの人工林率77%と山のほとんどをスギ・ヒノキにしてしまった浜松市では、野生動物の棲める生息環境はわずかにしか残っておらず、放置人工林の荒廃も深刻です。人工林地帯である静岡県では、ツキノワグマは絶滅危惧種に指定されています。

奥山保全トラストが所有する294haの佐久間トラスト地も3分の1がスギ・ヒノキの人工林です。ここでは、地元森林組合や日本熊森協会のボランティアに協力いただきながら、クマをはじめとする野生動物の生息地の回復や、保水力ある災害に強い森をめざして、スギ・ヒノキを伐採し、広葉樹林再生活動を積極的に行っています。

 

くまもり会員によるクマ止め林づくり

佐久間トラスト地の一角で、熊森協会の会員の方による動物のえさ場となる森づくりが進められています。

十数年に亘り、ご夫婦でボランティアでご協力くださっているSさんご夫妻の熱意に触れて参加されるようになったのが山路さんです。

山路さんにクマ止め林づくりにかける思いをインタビューしました。

(山路さんが伐採しているスギ・ヒノキの林。伐採したことで光が入るようになりました。)
 

くまもり活動にかける思い 

茨城大学 理学部卒業後、静岡県西部で、高校の理科非常勤講師をしながら、ゴミ拾いや耕作放棄地の草刈りなどの環境活動に取り組んできました。

7年前に林業に転職。現在、中田島砂丘の海岸林整備、春野町、愛知県新城市の里山再生、広葉樹林化。竹林再生プロジェクトで、浜松市天竜区、中区の竹林整備を進めています。 海から山まで、総合的な環境保全の必要を考え、研究活動を行なっています。

 

熊森との関わりは、Sさんご夫妻のお宅の竹藪を整備して、沢沿いの眺め良くしつつ、孟宗竹の伐採技術の開発をしたことがきっかけで、熊森協会の存在を知り6年。奥山保全の重要さを改めて再確認して、入会しました。

人口減社会で、林業を続けるのが困難な場所を広葉樹林に戻していくことは、野生動物の保護だけでなく林業の今後の発展にも必要だと思い、活動に参加しています。

現在、ツキノワグマなど市街地の出没で騒動の中にいる人たちに、奥山の重要性について少しでも知ってもらいたいと思っています。

野生動物の聖域として保全しているトラスト地に立つ看板。Sさんご夫妻の思いのこもった動物たちのポスター。とてもキュートですね。

 

共生の場をつくりたい
 

かつてくまもりが植樹した場所。すっかり植物に覆われ地面が見えない。苗木も順調に育っている(2019年11月撮影)。

 現在、佐久間トラスト地でスギ・ヒノキの伐採や広葉樹の保護、生育調査を行っています。今後は、トラスト地全体の調査と適切な生態系保全に向けての簡易土工の実施をしていきたいです。

尾根伝いのスーパー林道の傍(最初の写真)は随分と明るくなりました。
栗の木が生えているので、それを避けて伐採を進めるのは難儀ではありますけど、広葉樹とスギ・ヒノキが混交する森を、作ること。
そのための高度の伐採技術を、地元の人々に見せていきたいです。
熊止めの森。人間と野生動物の共生の場を作っていくこと。そこは死ぬ気でやらざるを得ません。

 

山路さん、Sさんご夫妻、いつもありがとうございます。 奥山保全トラストや日本熊森協会の活動は野生動物との共存を願うたくさんのボランティアのみなさんに支えられています。

熊森が運んだドングリをクマたちが食べています その1

地球温暖化や酸性雨(酸性雪)などの人間活動の影響を受けて、昨年に引き続き、多くの地域で、今年も山の実りゼロの異変が続いています。

たとえば、ブナの生育条件は、年平均気温が6度~12.5度まで。気温が上がると正常種子は実りません。ブナは大凶作で、実りはゼロです。

また、どんぐり類が枯死するナラ枯れの大発生など、信じられない事態が起きています。

奥山をフィールドに活動する私たちには、クマたちの本来の生息地である冷温帯の森が急速に劣化していると感じます。

飢えに苦しむクマたちが、日本海側の里や市街地に出て行き、連日殺処分されており、人身事故も多発しています。私たちは日々胸を痛めています。

 

緊急対策として、里の実りを山へ

環境危機による食糧不足により、人里周辺のカキ、クリ、どんぐり、オニグルミなどを食べに来ているクマは、エサが得られれば山へ戻ります。私たちは、近づかないでそっとしておいてやってほしいと思っています。絶滅防止のために、捕殺を控えるべきだと呼びかけています。

しかし、過疎化と高齢化で動物との棲み分けのための対策ができておらず、クマと人の突然の至近距離での接触を避けることが難しい地域が多いことも事実です。

このような場合、人身事故を防ぎ、クマの乱獲を止めるためには、クマたちを山にとどめることが必要です。そのためには、里の実りを、山中に運ぶことを緊急対策としてせざるを得ないと考えています。

 

下の動画は、山からクマが出てこないように、熊森が地元の方たちとクマの通り道にドングリや集落でもいだ柿などを運び、自動撮影カメラをかけてチェックしたものです。クマが、里の味を覚えると批判される方もいますが、柿は山にもあり、すでに昔から、クマは凶作年には、食用の木の実としてずっと認識しています。

 

ドングリを運んだ日時 昼 2020年10月26日14時35分

クマがやってきた日時 夜 2020年10月26日20時48分 暗くなってから、1頭のクマがやってきました。

熊森スタッフがカメラを回収したのは、10月27日の10時30分です。この間、約20時間の記録が取れました。

クマがドングリを食べている映像

 

2020年10月27日5時23分まで、実にこのクマは8時間半にわたって休まずに食べ続けていました。

クマは暗闇の中で、ドングリを食べ続け、明るくなる前に立ち去りました。クマは夜行性の動物ではありません。なぜ、暗いうちにドングリを食べるのかと言えば、それは人を避けて行動しているからでしょう。クマは、人を恐れ、できれば接触を避けたいと思っていることがわかります。

熊森が、大阪府豊能町で保護飼育している元野生のツキノワグマの「とよ」と同じ格好で食べています。

「とよ」との違いは、「とよ」は明るい昼に食べますが、このクマは、暗闇の中で食べていることです。

クマが立ち去ると、直ちに複数のタヌキが現れ、このドングリを食べ始めました。

 

このようなボランティア活動を続ける熊森に対して、焼け石に水と笑う人や反対する人もいます。しかし、何もしなければこのクマは里に下り、飢えに苦しんで夜、里の柿の実をこっそり食べに行き、大量に仕掛けられた罠に掛かって殺されるか、朝帰りが遅れて人間に見つかり、大勢の人たちに追い掛け回されて射殺されることになるでしょう。その過程で時には人身事故を起こしてしまうかもしれません。そちらの方がいいのでしょうか。多くの皆さんに考えていただきたいです。

山に実りが無い場合の緊急対策として、自治体や地域のみなさんにドングリ運び柿運びの実践を検討していただきたいです。

(注)山やクマに詳しくない方がどんぐりを運ぶのは危険です。私たちは、一般の方に山にどんぐりを持って行くことを推奨しているわけではありません。クマの出てきている地域で通り道を考え、人との接触が起こらない場所に置く必要があり、森やクマに詳しい集落の方や猟友会と一緒に行うことが望ましいです。

 

元野生グマ「とよ」の飼育からわかる秋のクマのどんぐり食

「とよ」は、大阪府豊能町で推定5歳でイノシシ用の箱罠にかかり、殺処分が決まったため(鳥獣保護法によれば錯誤捕獲で放獣しなければならないのですが)、やむを得ず熊森が、高代寺の協力のもと保護飼育することになりました。

とよを飼ってみてわかったことですが、成獣グマは50キロのドングリを約一週間で平らげます。200キロ運ぶと、1頭のクマを1か月間山に留められます。

秋は、クリやどんぐりなどの堅果を好む

10月13日に、「とよ」にドングリの山を与え、中央にリンゴと柿を1個づつ置いてみました。

「とよ」は、掃除後、運動場に出されると、ドングリの山に飛んできて、リンゴと柿を前足で払いのけ、ドングリと栗だけを抱きかかえるようにして、ずうっと食べ続けていました。(観察時間4時間)

冬ごもり前のこの時期、クマが本当に食べたいのは、皮下脂肪を蓄えるために欠かせない栗やドングリなどの堅果類の実りなのです。

ドングリの山の上に覆いかぶさるようにしてドングリを食べ続ける「とよ」

 

 

時たま、プールに行って水をゴクゴク飲み、また、ドングリのところに戻って食べ続けていました。

プールの水を飲む「とよ」、冬ごもりに向けてだいぶん皮下脂肪がついてきました。

 

人と心を通わせられる穏やかな生きものです

クマとの共存策を考えるには、殺されたクマを解剖して研究しているだけではだめで、生きたクマを飼ってよく観察することが必要です。クマを飼うと、いろんなことがわかってきます。人間と深く心が通じ合えるすばらしい動物です。

 

野生で大人になったクマは人を恐れています。しかし、愛情いっぱいに飼育すると、クマはやがて人間を信頼するようになり、よくなつきます。そして、表情が明るくなり、幸せそうな顔付きになります。それを見た人々の頬はゆるみ、みんなが笑顔になってゆきます。

高代寺(大阪府)の「とよ」10歳 2020.10.13撮影

 

 

クマとの共存のために動き出そう

クマは、今、まるで凶悪犯罪者のように報道されていますが、大きな誤解です。大変な間違いです。

飼ってみると、人間よりずっと平和的で飼育者を思いやるやさしい動物であることがわかります。

祖先がしてきたように、人と棲み分け生息できる環境を取り戻してやれば、クマは日本の国土で人間と十分共存できる動物です。

 

戦後、広大な奥山生息地を破壊した私たち人間が、責任を取って、奥山を復元しませんか。

情けはクマのためならず。

私たちの大切な水源の森を未来永劫に守ることでもあるのです。

 

山の実りが皆無になってしまった今、当面、山裾に、クマの餌場として、クマ止め林(凶作年のえさとなるような柿やクリ、平地で実るクヌギなどのドングリ種の林)を造っていきませんか。

目の前の問題解決を図るため、里でもいだ柿やドングリを、山に運んでやりませんか。

学校が子供たちにドングリ集めを広めてくだされば、すばらしい情操教育、環境教育になります。

今秋の緊急対策として、里のドングリを集めてくださっているすべての皆さんに、心から感謝申し上げます。(完)

 

 

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