近畿地方のツキノワグマたちは、人間活動により本来の奧山生息地を失っており、哀れにも餌を求めて山裾に降りざるを得なくなっています。
餌のないクマ生息地の人工林 (兵庫県朝来町)
その結果、近年、人里近辺の目撃数が増え、大量の駆除や個体数調整捕殺を受けてきました。
しかし、今年はどこも目撃数や捕殺数がかなり減っています。
餌のないクマ生息地の自然林 (兵庫県豊岡市)
兵庫県では今年、1800基のクマ捕獲罠を常設しているにもかかわらず、9月末までの捕殺数はわずか8頭です。私たちはあまりにもクマを殺し過ぎたからではないかと心配しています。
こんな年に、一体何のためにクマの狩猟を再開するのでしょうか。
熊森は11月4日に兵庫県斉藤元彦知事に今年度のクマ狩猟再開の撤回を求める申し入れ書を提出し、11月7日に兵庫県服部洋平副知事に1時間会っていただきました。
前熊森副会長で現熊森顧問の和田有一朗衆議院議員も途中まで同席してくださいました。
県庁側は、菅環境部長以下、担当者の皆さんが、熊森の申し入れを傍聴されました。
服部副知事への熊森の申し入れのもよう
現在、日本では、クマ狩猟はほぼ趣味やスポーツです。
狩猟は野生動物たちの生息地である山の奥まで入って行われます。
人間を恐れて山の奥に潜んでいるクマまで、なぜこんな年に殺さねばならないのでしょうか。
4府県に問い合わせましたが、猟師からクマ狩猟をしたいという声はどこもあがっていないということです。
また、4府県の猟友会が行政にクマ狩猟再開を申し出た事実もありませんでした。
兵庫県が主導して近隣府県に呼びかけて発足した「近畿北部・東中国ツキノワグマ広域保護管理協議会」で決まったことだと思われます。
4府県の中で、クマの研究者は兵庫県の森林動物研究センターにしかいませんので、他府県行政としては、広域協議会と言いながらも、実質はセンターが主導しての狩猟再開という結論だったと考えられます。
今年、春の時点で、
東中国ツキノワグマ地域個体群推定数808頭
近畿北部ツキノワグマ地域個体群推定数814頭
だったそうです。
800頭を超えているから4府県で狩猟再開となったそうです。
これでは、まるで数字だけの捕殺ゲームです。
彼らの生息環境や、狩猟をすることが意味があるかという検討すれば、こういう結論にはならないでしょう。
森林動物研究センターの責任は重いです。
第一、808頭、814頭、800頭…すべて研究者が推定した数字で、どこまで信ぴょう性があるのか誰にもわかりません。
環境省に問い合わせると、地域個体群が推定800頭を超えたからと言って狩猟する必要はないし、狩猟するようにとも言っていませんとのことでした。
2007年以来、兵庫県は森林動物研究センターを発足させ、捕殺による数のコントロールである個体数調整を唱える研究者たちによって、クマ対策を進めてきましたが、クマの生息環境の問題も、クマとの軋轢の問題も解決しません。
数合わせの対策は、現場を見ない、机上の空論になってしまっています。
兵庫県は、初めに個体数調整捕殺ありきではなく、生息地保障、被害防除にこそ一番力を入れて、棲み分けを復活させるべきです。そして、可能な限り野生動物たちの生命を尊重し、殺さない倫理観の高い野生鳥獣行政をめざすべきです。
兵庫県の鳥獣行政の転換を強く求めます。