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⑳ 9月10日 大阪府松井一郎知事 豊能グマに関する記者会見

(以下 、大阪府のホームページより)

捕獲されたツキノワグマの受け入れについて

 

町中:大阪日日新聞の町中と申します。
6月に豊能町で捕獲されたツキノワグマなんですけれども、受け入れ先を探すということでされてきたと思うんですけど、現在はどのような状況でしょうか。

松井:捕獲されたその熊を、この間、105カ所打診をいたしました、引き受けてほしいということで。しかし、現在は引き受けるという返事をいただいたところはまだありません。今はこちら側で飼育をしております。
今後のことについては、今、内部で検討しています。全て協議先が立ち消えたかといえば、そうではなくて、ぜひ飼育したいと言ってくれているところもまだあります。ありますが、そこが安全に本当に飼育できるのかどうかをしっかり確認しないことにはお渡しするわけにいきませんから、その協議を継続して今やっているところです。

町中:結果的に飼育を始めてから約3カ月、野生動物を保護しているというこの状態については、どのようにお考えでしょうか。

松井: やっぱりこの大阪で熊が発見される、捕獲されるという想像を今までしていなかったわけで。大阪の場合は熊は生息していないという前提で今までやってきました。それで、その他の有害鳥獣と言われているイノブタとか鹿とか、そういうものについては、これまでも何度も捕獲をし、処分しています。だから、やはりそちら側は、慣れていたんですけどね。やっぱり熊というものに慣れがないので、すぐに処分できないのが今の現状です。だから、イノシシ、イノブタと言われるそういう有害鳥獣は、罠でひっかけたらすぐ殺処分ですよね。みんなあれ、ボタン鍋にしていますよ、それは。でも、そっち側は、慣れているからすぐできるんですけど、熊はやっぱり初めての経験なので、なかなかすぐに処分というところに、これ、気持ちの問題もあってできないというところですね。
でも、全国では年間約2,000頭…。

 職員

1,000頭ちょっとです。

松井: 1,000頭ちょっとが捕獲されて、そのほとんどは殺処分という形でされているわけですね。
だから、それは、慣れているところはすぐにそういう対応ができるんでしょうけども、大阪の場合、慣れていないので、今は3カ月かかってしまっているということです。

町中: 現在、協議中のところがあるというふうなことをおっしゃいましたが、仮にその団体なり施設さんが結局受け入れられないとなった場合、殺処分ということも視野に入れなきゃいけないのかなと思うんですけれども、そのあたりの判断というのはいつぐらいにするか決めていますでしょうか。

松井: 現在、団体と協議中ですから、その答えが出次第ということです。

2014年本部調査 山にクマの餌がない! 今年の豊凶調査はブナ凶作、ミズナラ不作

熊森協会本部では9月9日から13日までの5日間、兵庫県の但馬地方を中心に山の実り調査をしてきました。

調査樹種はブナとミズナラで、豊凶ランクは◎豊作・〇並作・△不作・☓凶作の4段階に分けました。各調査地で約10本程をブナは13カ所、ミズナラは15カ所で見てきました。

ブナは昨年度が一斉開花の年だったので、今年は凶作だろうという予想のもと調査しました。結果は、やはり凶作でした。ミズナラだけでも実りがあればと願ったのですが、ミズナラも不作でした。

昨年ほぼ豊作だった峰山高原のミズナラも今年は不作以下という状況でした。

9月16日 (57)

昨年度 2013年9月16日撮影 峰山高原のミズナラ-豊作

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2014年9月13日撮影 峰山高原のミズナラ-凶作

 

ブナはどの木も凶作です。梢枯れした枝に少しだけ殻斗がついている木がわずかにありましたが、中に実が入っているかどうかどうかは疑問です。しかし、それ以外はまず実が見つかりません。ゼロと思っていただければいいと思います。

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梢枯れした枝にわずかについたブナの実

ミズキはクマが大好きで、液果の小さな実がなる植物です。昨年は、この時期にたくさんの赤い実がついたいました。しかし、今年はまだ実が青く、実自体がついていない枝も多かったです。

8月22日 (14)

昨年度 2013年8月22日撮影  鉢伏のミズキ-全体的に赤い実がついているのが分かります

 

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2014年9月12日撮影  鉢伏のミズキ-全体的に実がほとんどついていません

 

今年は東北地方から中部・北陸のあたりなど、全国的に山の実りが悪いと報道されています。本当はコナラやアベマキ、ウラジロガシなどもきちんと調査すべきですが、ざっと見た感じではあまりよくないように感じました。ブナ・ミズナラ・コナラに関してはもうすぐ、兵庫県森林動物研究センター(行政)からも、発表があると思います。まず昨年よりかなり悪いと思います。

 

以前、山の実りが凶作の年、兵庫県では、秋にクマが集落に大量出没していた時期があります。最近は、春や秋から餌を求めて出てきているので、秋に大量に出て来る現象がおきるのかどうか、わかりません。

 

ただ、本来、おとなしくて臆病な動物なので、人間側が気を付けて行動すれば、人身事故も減らせます。クマの棲む山に入るときは、一人でそっと入らず、大きな声や音をたて続け、クマに人間が来たことをしっかり知らせてください。クマの方が、人間に出会わないように移動してくれます。

 

⑲9月9日付で、豊能グマ飼育環境改善願い文書を提出

当協会は、大阪府知事、動物愛護畜産課課長、豊能町町長あてに、以下3点について、豊能グマ飼育環境改善願いを申し出ました。

毎日の新鮮な水補給と給餌はもちろんですが、衰弱死しないよう、
①日光に当てること。
②衛生上の問題を考え、毎日糞尿の除去をすること。
③木切れ等の遊び道具を檻に入れるなど、ストレス軽減のための措置をとること。

以上。

 

 

尚、以前から申し伝えておりますが、当協会はボランティア団体なので、クマの保管場所を開錠して頂ければ、ボランティアで飼育手伝いに入らせていただきます。

 

9月9日に放映されたMBSニュースで、当協会が飼育手伝いに入った時の豊能グマの映像が流れたため、多くの方に、豊能グマは、明るくていい環境で大切に保護飼育されているという誤ったイメージを与えてしまいました。実際は、劣悪な環境で1日中暗い中で閉じ込められています。何もすることがなく、明らかに動物虐待です。普段の部屋の中の様子は以下です。写真中央にクマがいます。

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⑱「大阪府ツキノワグマ出没対応方針」は動物愛護畜産課が勝手に作ったもので無効

「大阪府ツキノワグマ出没対応方針」は、よく見ると、大阪府が発表した形になっていません。動物愛護畜産課名で発表された文書にしか過ぎないのです。知事認定を受けていないということでしょうか。しかも、環境省野生生物課に問い合わせると、記者発表直前に、メールで突然入ってきた文書であり、国としては、何の相談も受けていないということです。明らかに、この文書は無効です。

 

いろいろとこの方針文書のおかしさについて指摘したい箇所がありますが、とりあえず、誤捕獲部分について、きっちり反論しておきたいと思います。

 

<動物愛護畜産課作成方針における誤捕獲の項目>

誤捕獲が発生した際には、①人身被害の危険性がないと判断し、②周辺住民の合意が得られた場合、速やかに放獣を実施する。この1文だけです。

 

電話で、担当者に聞いてみました。

くまもり:人身被害の危険性がないかどうかの判断基準は何ですか?

動物愛護:まだ決めておりません。

熊森:②周辺住民の合意が得られたかの判断基準は何ですか?

動物愛護:まだ決めておりません。

 

もし、明日、また誤捕獲が発生したら、一体どう対応するのでしょうか。また、次回も捕まえて、何十日間も保管するのでしょうか。そして、大阪府は一切支援・協力しませんが、どこかもらってくれませんかと虫のいい要請を出すのでしょうか。判断基準も決めずに対応方針文書を記者発表するなど、ふざけているとしか言えません。

 

おそらく次回は、人身事故の危険性がゼロとは言えない、周辺住民全員に聞いたわけではないが、放獣に反対する人もいると思われるので、殺処分しておきましたと言って、動物愛護畜産課は誤捕獲グマを殺すでしょう。

 

これでは、住民はいつまでたっても、カヤの外で、成長できません。今回も、誤捕獲グマについて1回の住民説明会も開いておりません。豊能町にも言えることですが、なんとか逃げようとして檻に体当たりし続けているこの誤捕獲グマを、住民に公開していただきたいと思います。子どもたちにも全員に見せてほしいと思います。実物以上の環境教育はありません。そして、このクマをどうするか、住民みんなで考えて頂きたいのです。行政が考えるよりもずっといい名案が出るかもしれません。このクマが誤捕獲された地区は、ネットで調べると、78世帯175人と出ております。全員が集れる数です。

 

ちなみに、兵庫県のツキノワグマ保護管理計画ではどうなっているでしょうか。

記述は簡単です。以下の記述により、100%放獣が実施されています。

錯誤捕獲された個体は放獣する。 

ただし、出没対応基準の3および4に相当する場合は、その基準により対応す る。

(注)3というのは、繰り返し出没し、精神被害を含めた被害を 発生させた場合。

   4というのは、集落内徘徊など人身被害の危険性が高い場合。

 

 

何かが絶対におかしい 生物が消えた沈黙の奥山原生林

今年も、熊森本部は9月20日に、神戸市の保育所の先生たちを、岡山県にある奥山原生林にご案内することになりました。原生林は、日々姿を変えていくので、直前の下見が必要です。当日原生林を案内させていただくスタッフたちが、9月1日に下見に行ってきました。

 

新しくスタッフになったAさんは、山が好きで、若い時にはよく山に登っていたそうです。この時期は虫がすごいからと、たっぷりと虫よけ薬を塗って参加されました。ところが、行ってみると、全く虫がいませんでした。それどころか、生き物の気配がゼロといっていいほど何もありません。完全に沈黙の森になっているのです。

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半日広大な原生林内を歩き回って見つけたのは、イモリ1匹、ヘビ1匹だけでした。なにかおかしい。なにかとんでもないことが起きている。Aさんは、くまもりがブログなどで繰り返し訴えてきた奥山原生林の危機を、共有してくださるようになりました。

 

よく見ると、植物も、昔と違っています。高木の上の方は確認できませんでしたが、秋なのに、目の前の風景に、実りがありません。やっと見つけたのが、ムシカリの赤い実だけでした。ヤマブドウ、サルナシ、マタタビ・・・何の実もありません。樹木の葉の茂りやササの茂りも、明らかに弱くなって、すかすかです。国は、森の異変を、全部シカのせいにしていますが、ほんとうに、シカだけのせいなのでしょうかか。

 

近年、山からクマを初めとする動物たちがどんどんと里へ下りて来るようになったと、地元の方々は悲鳴を上げておられます。有害獣として、人間は彼らを殺すことに躍起になっていますが、くまもりは、彼らは大切なことを人間に訴えに来ているメッセンジャーではないかと思います。

 

クマが生息域を拡大してきた。大阪府にまで、クマが顔出しするようになった。けしからん。このような世論作りばかりが行われていますが、このような発表を繰り返している、権力とつながり肩書もお金もいっぱいつけてもらっている研究者のみなさんは、奥山の大異変を察知しているのでしょうか。もし、あなたが、クマだったら、この奥山原生林の中で、何を食べて生きますか。食べるものがあれば教えてください。

何種類かのネオニコチノイド系農薬が、松枯れ防止で奥山にも撒かれていた

くまもり群馬県支部長が、最近行政は、松枯れ防止薬として、奥山にネオニコチノイドを空中散布していると、本部に教えてくださいました。まさか。ネオニコチノイド系の農薬は、これまでの殺虫剤と違って、植物に来た虫を殺すのではなく、植物の体内に農薬をいったん吸収させ、その植物を食べた虫が死ぬようになっています。この農薬を使うと、これまで大量に使用していた農薬の量が少しで済むようになり、減農薬として脚光を浴びているのです。

 

本当にそんなことをしているのかどうか、兵庫県の行政担当者に電話でたずねてみました。大変誠実に、いろいろと教えてくださいました。こんな公務員なら、税金を出してもいいなと思いました。ちょっと話しただけで、相手が誠実な人かどうかわかりますから、電話というのもふしぎです。

 

結論は、平成20年から、兵庫県も1ヘクタールに30リットルの割合で、松くい虫退治のために、ネオニコチノイドをヘリコプターで空中散布していました。ただし、ネオニコチノイドといっても、カメムシ用とかいろいろな種類があるということで、EUで使用禁止になっている種類のネオニコチノイドは使っていないということでした。また、山にばかり撒いているのではなく、海岸のクロマツを守るために、海岸にも結構撒いているということでした。松くい虫退治の空中散布は効果がないと聞いていますがとたずねると、効果はある程度は出ているということでした。散布地域を初め、農薬の種類など、HPには、詳しいことがすべて掲載されていました。

 

国民に隠す、嘘を言う、ごまかす、これほど国民を愚ろうするものはありません。良きに付け悪しきにつけ、全部国民に知らせると言うのが、民主主義国家の基本です。また、知らせて行かないと、国民は賢くなっていけないのです。しかし、HPの一覧表を見せてもらって、カタカナの薬品名を知ったところで、その薬品がどういう副作用を持っているかなど、わたしたちにはさっぱりわかりません。きっと、研究者にも、専門家にも、人間には誰にもわからないでしょう。

 

奥山原生林から、虫が消えたこと、実りが消えたこと、生き物たちが消えたこと、これらの原因説として、酸性雨、地球温暖化、シカなど、いろいろな原因諸説がささやかれていますが、松くい虫の防除薬として奥山に撒いている農薬も原因の一つではないかと、直観しました。山に農薬をまいて全ての生き物たちを殺してしまうのなら、松枯れを放置してマツだけが消えた方が被害が少ないのではないかと思います。マツが枯れることを止めるために、他の生き物たちを全部死なせる。こちらの方が、問題ははるかに大きいと思います。

 

兵庫県西宮市の夙川沿いに生えているマツは、青々と繁ってとても元気です。松くい虫に強いタイプのマツを植林したからだそうです。ならば、松くい虫対策の農薬という化学物質を撒くのではなく、松くい虫に強いタイプのマツに植え替えた方が早いと思います。ただ、この時代に、マツがどれほど有用で、山に植えておく必要があるのかどうか、疑問です。マツは、森林遷移の先駆者で、自然界の中では、土地が肥えて来ると、自然と消滅していく樹種です。マツが枯れるのも自然と考えて、山や海に、化学物質を撒くのを止めていただきたいと思います。自然は自然のまま手つかずで残しておいてほしいのです。

 

この担当者に、「沈黙の森」の実態を話すと、驚いておられました。疑わしきは使用せずで、すべての農薬の山林散布を中止して欲しいです。

⑯ 今後、大阪府に顔出ししたクマは捕殺 最悪の「大阪府ツキノワグマ出没対応基準」

出没

大阪府は、今回の初マニュアルで、府内全域を人間の場所と決め、クマが出没すれば、追い払い、捕殺、捕獲による取り除きが重要としています。大阪府に追い払い体制などありませんから、結局は、捕獲か捕殺です。捕獲した場合、現在捕獲されている豊能グマもそうですが、放獣しませんから、すべて捕殺するという意味になると考えられます。

 

誤捕獲

誤捕獲グマに関しては、人身被害の危険性がないと判断し、周辺住民の合意が得られた場合、速やかに放獣を実施すると書かれています。100%人身被害の危険性がないと判断できるクマなどいないし、周辺住民が全員放獣に同意することなどあり得ませんから、このような書き方は、放獣しないで捕殺するという意味になります。 熊森としては、言葉だけであっても、次回からは放獣すると書いてあるのだろうと予測していましたから、これには驚きました。

 

これまで読んだ全国のツキノワグマ対応マニュアルと比べて、どこよりも生態系の保全を理解しておらず、一番ひどい内容です。「大阪府ツキノワグマ出没対応基準」に対して、みんなで声をあげていきたいと思います。大阪府は、滋賀県にあるクマの棲む豊かな森をはじめとする自然に、大阪府民が生かされていることが全くわかっていないような気がします。

 

 

⑮ これまでの豊能グマ問題の総括 大阪府はどうしてクマ1頭の命も助けられないのか

野生動物たちとの共存本能を失っていない子供たちはもちろん、ほとんどの大阪府民や国民は、豊能の誤捕獲グマをさっさと山に返してやればすむことなのに、行政は何をもたついているのかとイライラしていると思います。行政が大多数の国民の願いと違うことをしているのは問題です。(ただし、豊能町の町民は、山に返さないでほしいと思っている人も少なくないでしょう。)

 

今回の大阪府行政を見ていて、初めてのクマ捕獲であり、どうしてよいかわからなかっただろうという同情はあるものの、(だから、熊森としてはできる限りの協力をしようと思ったのですが)大変大きな問題を感じました。

 

<大阪府動物愛護畜産課にくまもりが感じた主な問題点>

1、生命尊厳・動物愛護の欠如

・・・今思うと、地域住民のために放獣しなかったというのは言い逃れで、自身の無知と保身ばかり。本当に地域住民の為を思うなら、今回のことで何回も地域勉強会を持ったはずです。初めから、この誤捕獲グマの命を何としても助けてやろうという気などさらさらなかったように思えます。決定権を持っている人間が、囚われているクマを見に来ないから、その状況がわからず、人間的な判断が下せなくなっています。

 

2、クマという動物は危険であるという誤解

・・・勉強不足。(わたしたちみんなの問題でもある)

 

3、クマを放獣するということは人身事故につながるのではないかという誤解

・・・勉強不足(わたしたちみんなの問題でもある)

 

4、野生で大人になったクマでも普通に飼えると思う誤解

・・・勉強不足。(わたしたちみんなの問題でもある)

 

5、近隣行政との協力関係を築く力がなかった

・・・今後は、大阪府と近隣行政の双方に、生態系保全のために協力する姿勢が必要。

 

● 他に気になったのは、行政の秘密性です。

2か月以上も囚われの身となって劣悪な環境に苦しんでいるクマを、大阪府も豊能町も、マスコミに見せないように隠してきました。町民も府民も、一体何が起きてどうなっているのか全くわからないため、野生動物とどう付き合っていくのかという大変重要な問題について、大人も子供も学べる大変いい機会であったにもかかわらず、誰も何も学べませんでした。マスコミ発表は、行政発表のみで、「クマは保護飼育されており、元気です」と出るだけです。元気なわけがないでしょう。

 

人間なら小さな穴だけの豊能のクマが突っ込まれていたドラム缶檻に入れられたら、精神が持たないでしょう。一番残酷な拷問は、狭い所に突っ込んで出さないことです。もし、自分だったらと、ちょっと想像してみればわかるはずです。熊森が登場して大阪府と闘い、やっとのことで13日目にドラム缶から出してやることができました。熊森という組織がなかったなら、間違いなく死ぬまでドラム缶に入れられていました。他者がいつ死んでもおかしくないようなひどい目に遭って苦しんでいるのにいるのに、元気ですという行政発表を垂れ流すだけのマスコミの軽さを恐ろしく思いました。

 

今回のクマ問題だけでなく、他の問題でも、国民は、今この社会で何が起きているのかわからなくされているのではないでしょうか。こうなると、弱者がどんどん切り捨てられていく社会になっていきます。児童虐待がうなぎ上りに増えているそうですが、根は全て同じところにあるような気がします。

自分だけの幸せなどこの世にはあり得ないのです。見ない言わない聞かない、このような国民でいると、結局は自分もいつか不幸になります。

 

<くま森のこれまでの取り組みの反省点>

①命を大切にする社会をめざして、精いっぱい取り組みましたが、今回豊能のクマを山に返してやれませんでした。まだまだ経験不足、力不足を感じました。これからも、誤捕獲グマは山に返すように訴え続けます。一方、劣悪な環境下に置かれているため、このクマの命が心配です。早急に、熊森が引き取って保護飼育できるように動きます。この準備だけでも、簡単なことではありません。

 

②くま森には応援団がバックにたくさんいるのに、そっと山に返すことを狙ったため、その人々を活用できませんでした。HPにも、くわしい情報を流せませんでした。

 

③騒ぐと、このクマが今も生きているからだとして、厄介払いのために大阪府によって早期に殺処分されるのではないかという恐れが常にあり、マスコミへの連絡もできませんでした。現在、熊森は、大阪府に、このクマの引き取りを文書で正式に申し出ました。命の尊厳と共に、誤捕獲グマを殺せない流れを守るためです。引取るためには、何が必要なのか、すべてこれから交渉です。

⑭8月25日 くまもりの衝撃:大阪府から、豊能のクマを放獣させてほしいという正式依頼など、1回も受けたことはありませんと、ある近隣府県の行政

大阪府に期限と言われた8月25日が、あっというまにきてしまいました。

 

よくよく考えてみると、豊能のクマを、山に返してやれば、1日で問題は解決です。

 

しかし、終生保護飼育するとなると、まだ4才ですから、土地、獣舎建設と管理、最長30年にわたる餌代、飼育人件費、このクマが人間になつくようになるまでの想像を絶する気力や労力が、くま森の肩にのしかかってきます。犬1頭飼うだけでも大変なことなのに、野生グマを飼うなど、その比ではありません。しかも、大阪府は、支援・協力は一切しないと言っているのです。

 

財政規模が大阪よりもっと小さな和歌山県でも、ツキノワグマ太郎が行き場をなくした時、2頭分の立派な獣舎を県費で建てただけでなく、太郎に関しては、毎月の餌代補助も幾分かはしてくれているのです。(花子も含めた餌代は、2005年から、熊森会員の寄付による太郎と花子のファンクラブが出しています)

 

今回、くま森が大変な苦労をして、その分、豊能のクマが幸せになってくれるならまだしも、野山を駆け巡って大人になった豊能のクマにとっては、一生狭い檻に入れられるのは、生涯、拷問を受け続けるのと同じ苦痛です。

 

太郎や花子の場合は、母熊を殺されていましたから、人間が育てるしか彼らが生き残る道はなかったのですが、この豊能グマは、これまでも野山で生き抜いてきた大人のクマです。山に返してやるのが、クマの為にも人の為にもよいというか、それしか豊能グマ問題の解決法はないのです。

 

くま森は、ある近隣府県の行政に、手をついてでも、土下座してでも、豊能グマを放獣していただけるように頼みに行こうと心を決めました。

 

くま森は、行政担当者をたずねて行って、「どうしてみなさんは今年も多くの誤捕獲グマを100%放獣してくださっているのに、大阪府が1頭だけでいいからと頼んだ豊能グマの放獣を受けてやらないのですか。生態系には、行政の線引きなどないので、関西広域連合の仕事として、クマの捕獲が初めてで不安になっている大阪府を助けるために、このクマをお宅の山に放してやってください」と、お願いしました。その時、耳を疑うようなことを言われたのです。

 

大阪府さんから、豊能のクマを放してやってほしいという正式な放獣依頼など、1回も受けたことがありません。正式な依頼があれば、検討させていただきます。

 

この近隣行政といろいろと話し合っているうち時間が経って、大阪府に電話をするのが夕方になってしまいました。

 

大阪府:約束の8月25日です。熊森は飼えるんですか。飼えないんですか。

 

熊森:ちょっと待って下さい。熊森が飼うか飼わないかという以前に、山に返してやるのが一番いいのですから、大阪府が豊能で絶対に放さないというのなら、近隣府県に放獣してもらえるように、正式に依頼して下さい。今、近隣府県にきているのですが、近隣府県は、正式な放獣依頼など、1回も大阪府から受けていないと言っていますよ。文書でちゃんと正式に申し込んでください。

 

大阪府:もうその話は十分終わっています。それじゃなくて、どこでどうするという具体的なことを出してください。そうでなければ、私の所で考えていた最終のものになります。

 

長時間、正式な放獣依頼を近隣府県に文書で出してほしいと熊森は大阪府にお願いし続けましたが、大阪府は、その話はもう終わっているとして聞き入れませんでした。

 

翌朝、8月26日、熊森は近隣府県担当者に電話をして、「大阪府は正式に依頼しないようだが、自然保護団体として熊森が依頼したい。豊能の誤捕獲グマが囚われの身になって、もう2か月以上も経っており、窮状を見ておれない。何の被害も出していないこのクマを生かすために、何とか近隣府県で放獣してやってほしい。」と、必死で頼みました。

しばらくして、検討した結果、できないという答えをもらいました。やはり、こういう問題は、行政間で頼まないとだめだと思います。→ 熊森が飼うしか助ける道はない。それにしても・・・

 

熊森との約束を守りましたよ 兵庫県波賀町リンゴ園の幸福さん 今年で引退

2004年の第1回山の実りゼロという異常年のときのことです。この年は、なんと、10個もの台風が日本に上陸しました。

兵庫県のクマ生息地にある兵庫一の大きさを誇る波賀町原観光リンゴ園では、台風でほとんどのリンゴが落ちてしまいました。わずかに残ったリンゴを、毎晩クマたちがやって来て、食べ尽くしてしまいました。

そして、この年、リンゴはゼロとなり、観光リンゴ園は閉園に追い込まれたのです。

この時、このリンゴ園のリーダーである幸福専務理事が、「リンゴは、クマにプレゼントしたとあきらめる」と発言。これを契機に、幸福さんは、スギの人工林で覆われた周りの山々を見て、「クマこそ被害者。残りの人生は、スギを伐って、動物の棲める森を復元する」と、宣言。都市市民を主体とする熊森と固く手を組んだのです。

 

あれから10年。リンゴ園の周りの山々は、毎年毎年、人工林のスギが伐採され、その後に実のなる木が植えられていきました。

 

今年8月22日、久しぶりにリンゴ園に幸福さんを訪れました。

くまもり「幸福さん、すごいですね。すっかり周りの山の景色が変わってしまいましたね。これまで、人工林のスギを何本ぐらい切られましたか」

幸福さん「もう数えられない。無数やね。熊森と出会ってちょうど10年です。あの時約束したことを、守りましたよ」

ー 約束を守りましたよ ー

この言葉に、わたしたちは、胸がいっぱいになりました。

くまもり「それはそうと、幸福さん。以前、リンゴ園でクマを飼ってもいいなと言われていましたよね」

幸福さん「もう無理です。わたしは今年で引退です。引き継いでくれるメンバーを紹介します」

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くまもり「わあ、すごい。後継者を立派に育てられたんですね」

幸福さん「さあ、最後の実のなる木の植林、くまもりさんとやりますよ。場所をご案内します。シカ除け金網も張ってあります。ドングリなどの苗木がある人は、自由に持ってきてください。

波賀町原での実のなる木植樹日は、10月25日(土)です

熊森本部より:自車参加可。定員30名。参加していただける方は、早めにお申し込みください。

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 10月25日植樹予定地

 

幸福さん「ここは来年春に、柿をたくさん植えてカキ園にしましょう。ここは、木を伐り出す時の架線集材の土場にする予定でしたが、もう、架線を張れる技術者がいなくなって、これからはみんな、道を入れて伐り出しますから、不要になりました」

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来春、柿植樹予定地

 

うーん。クマを飼ってくれる人なんて、すぐに見つけられるものではない。やはり、山に放獣するしかない。大阪府が豊能では絶対に放さないと言うのなら、近隣府県に頭を下げて頼むしかない。

 

くまもり「それはそうと、今も、リンゴを食べにクマさんがここに来ますか」

地元の人達口々に「この4年間、全くクマを見ていません。もう、氷ノ山にクマはおらんよ。みんな、餌を求めて、下の方へ行ってしまった」

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