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尼崎市公立小学校3年生に、熊森職員になって初めての環境教育 「わたしたちに森は必要か」
わたしは、昨春、環境教育担当として熊森に就職したものの、いきなりコロナで、これまで学校で授業させていただく機会がなく、学校外でくまもり紙芝居をさせていただいたことが少しあっただけでした。
1月14日、遂に初授業の日がやってきました。なんと熊森は、この小学校で20年間連続、環境教育をさせていただいているのです。
兵庫県も今、コロナ第3波のまっただなかですが、何とか例年通りのイベントを子供たちに体験させてあげたいという学校側の意向で、コロナ対策を強化しながらの環境教育となりました。例年は、1、3、5年生を1学年ずつ3クラス教室に集めて3時間の授業するのですが、今年は密にならないよう、子供の間を離して、3年生のみ1クラスごとに3回実施です。
まず初めに、自己紹介。
おねえさんが大学4年生の時、研究室にクマが入ってきたのです。こわくなって、クマのことをネットで調べてみて、日本熊森協会を知りました。このことがきっかけで、日本熊森協会に就職し、野生動物や森を守る仕事をしていますと話すと、全員の子供たちの目が私を見ているのを感じました。
次に森の写真を見せて、森はどんなところか発表してもらいました。
明るい、虫がいる、木がいっぱい生えている・・・板書が間に合わないほど次々と子供たちが発言してくれます。
次に、スギの放置人工林の写真を見せて、これも森かな?木がいっぱいあるよというと、子供たちは比較することにより、森とはなにか認識しなおします。
森=いろいろな植物+いろいろな動物+いろいろなび生物
尼崎市には今や森はゼロです。森がどういうものかわかってもらってから、私たちに森は必要かという投げかけをしてみました。
この日は4つの観点を提示して子供たちに考えてもらいました。
時々、ぬいぐるみのツキノワグマの「つっきん」が登場して、情報を提供してくれます。
「昔はね、森にいっぱい食べ物があったんだけど、去年もその前の年も、森のドングリの木が大量に枯れちゃって木の実は実らず、大好きな昆虫もほとんどいなくなっちゃったんだ」
と語ると、子供たちから、一斉に
「どうして」
の疑問が飛び出します。3年生の子供たちにどう説明すればいいのか、一瞬たじろぎました。
「地球温暖化とか酸性雨とかいろいろ言われているけど、まだよくわかりません。どっちにしても人間が原因を作っているようです」フーッ。
ツキノワグマの「つっきん」が、
「ぼくたちおなかがすいてね、食べ物を求めて次々と山から出て行ったんだ。そうしたら、人間が大勢やってきて、みんな鉄砲で撃ち殺しちゃったんだ。ニュースで見たでしょう」
というと、
「かわいそう!」
の声が、子供たちの中から反射的に上がりました。子どもたちにとって、こういうことは理屈ではなく、本能的にかわいそうなのです。
授業も終盤にさしかかりました。
1400万人もの人が毎日水道水を使うのに、どうして琵琶湖の水はなくならないんだろう。実は460 本の川の水が一年中、琵琶湖に注がれています。
滋賀県の全ての川をていねいに熊森スタッフが色塗りした地図を見せると、子供たちはびっくりする前に、
「川はいっぱい分かれてたりするのに何本かわかんない!」という反応。
何のことを言っているのかよくわからなかったので、前に出てきて説明してもらいました。
「(川の)こことかくっついてたり離れてたりしてるよ」と教えてくれる児童
確かにこれはどう数えてるの?と一瞬、私も考えこんでしまいました・・・。
(後で調べたところ、琵琶湖に注ぎ込んでいる川の数というのは、琵琶湖に面している川の本数のみを数えたもので、支流の本数は数えていないとのことでした。)
子どもたちから出る発言は予想外の連続でした・・・
子どもたちの視点はいつも鋭いです。おかげで大変勉強になりました。私も子どもたちのような目で見れたらなぁと思います。
私は初めての授業でドキドキだったのですが、コロナもなんのそのビックリするくらい元気いっぱいな子どもたちに助けられ、なんとか初授業を乗り越えることができました。
3年生だけでもこんなに勉強になったので、他の学年の授業もしてみたくなりました。
コロナの中、子どもたちにすこしでも幅広い体験をと、熊森を呼よんでくださったこの小学校に、心から感謝します。
●熊森協会本部では環境教育部員を募集中!!
これまで、日本熊森協会では、多くの大学生たちが、今、日本で起きている森や野生動物の危機的状況について学び、保育園、幼稚園、小学校に出かけて、後輩たちに環境教育を実施してきました。
学生の皆さん、若者が教える子供たちへの熊森環境教育、学外サークルとして、一緒に取り組みませんか?
関心のある方は、ぜひご応募ください!
電話0798-22-4190
メールconntact@kumamori.org
コンコンさまにさしあげそうろう
(絵本「コンコンさまにさしあげそうろう」から)
何日も何日も雪がふりつづいて、山も畑もまっしろです。
「かあさん、さむいよう、おなかがすいたよう」
ふるえる子ギツネをのこし、
母ギツネは食べものをさがしにそとに出ました。
そのとき、おいなりさんの森から、
「チーン、チーン、ドン、ドン」と、
かねとたいこの音が聞こえてきました。
・
かねとたいこの音は、山に餌のない一番寒い大寒の晩に行われる野施業の音で、「こんこんさまにさしあげそうろう」と言いながら、村人みんなで野の者たちに与える食料を持って雪山に入る行事です。
子供たちはさんだわらに、キツネの好きなあずきめしとあぶらげとかわじゃこをのせて、あちこちに置いてまわります。
餌のない時期の野の者たちを人間が思いやると共に、彼らが人間の所に来なくていいようにする知恵でもあるのです。
・
作者の森はなさんは1909年、兵庫県但馬地方の和田山というところで生まれました。
32年間、小学校の先生を務めた後、作家に。知的障害を持つ心優しい男の子を、村人みんなで守り育てた代表作「じろはったん」はとても有名です。
但馬地方の人々のやさしさが、胸に温かく伝わってきます。人間ていいな、人間が好きになってくるお話です。
野施業: 寒中に餌をさがすことのできない野の狸や狐などの鳥獣に餌を施すこと。近畿一帯から山口県にかけての地方で広く行なわれてきた行事。
この絵本を読んだ人の感想(ネットから)
「のせぎょう」という、えさが最も乏しくなる大寒の夜に、キツネやタヌキなどの山に住む動物に食べるものを施し、動物達が村の鶏を盗むなどの悪さをしないよう考えられた昔からの年中行事を題材にした本です。
何日も雪が降り続いて、食べ物が底をついたキツネの母と子。寒くてお腹がすいた子ギツネは、泣きながらお母さんキツネの胸の中で眠ってしまいます。母親にとって、これほど辛いことはないと思います。母ギツネは村の鳥小屋を襲おうと決心しますが、犬にほえられて断念。池も凍っていて魚も取れない。諦めて母ギツネが穴に戻って見たのは、枯れ葉をくわえ、泣いて眠ってしまった子ギツネの姿。切なすぎます…。
でも、そんな時、村はずれのお稲荷様から、「こんこんさまにさしあげそうろう」という子供達の声が聞こえてきます。丁度、のせぎょうの日だったのです。母ギツネは「ありがたい」とお稲荷様に手を合わせ、お供え物のあずきめし、あぶらあげ、かわじゃこを持って帰り、子ギツネに食べさせます。母ギツネの目に涙が一杯たまります。私も涙が出てしまいました。
この本を読んで、最近、民家まで下りてきて畑を荒らし、射殺されるクマ、捕獲される鹿や猿などを思い出しました。昔の人達は、動物達の生を尊重することが自分達の生活を守ることだと判っていたので、こういった行事をしていたのでしょう。
今、地球温暖化、樹木の伐採など、彼らのえさを取り上げているのは私達人間。自然、野生の動物、人間がどう共存していくのか、改めて考えさせられる一冊でした。(東京都40代ママ 2010年)
熊森から
子供を巻き込んでの昔からの野施業は、山に住む動物たちと人間との共存方法を、現地での実践を通して子々孫々に体得させていくすばらしい環境教育です。
私たちは今一度、クマ、サル、シカ、イノシシ、明治になった時にはこの国にまだオオカミも残っていましたが、このような大型野生動物たちを一種もほろばさなかった奇跡の日本文明の元となる、祖先の動物観や自然観に学ぶべきだと思います。西洋文明と違って、私たちの祖先はこうやって、人間も動物たちも、みんな一緒にこの国で暮らしてきたのです。
西日本で生まれ育ってきた私たちには、飢えに耐えかねて山から次々と出て来るクマたちを今のように皆殺しにするのではなく、都会の公園で集めたドングリを獣道に運んでやって、山から出てこなくてもいいようにし、人身事故が起きたりクマが射殺されたりしないようにする緊急避難措置の「どんぐり運び」に、何の違和感もありません。
もちろん、私たちが熊森が23年間全力を注いできたのは、クマ問題の根治療法である奥山での広葉樹林再生と里山でのクマ止め林造り、すなわち、棲み分け再現事業であることはいうまでもありません。
何度でも訴えたい 石川の山からクマたちの命の糧、ミズナラの木が消えてしまっているのです
現在の白山の写真
ミズナラの巨木が倒れた空間は、何事もなかったように、他の広葉樹が枝を伸ばして埋めています。
白山の山は今も、一見、素晴らしい自然林です。
しかし、何度でも言いたい。クマが冬ごもり前の命の糧にしてきた大きなドングリの実を大量にもたらすミズナラ、野生動物たちの命を支えてきたミズナラの木が消えているのです。
環境省も地方自治体も、担当者は3年ごとに新しい人に変わるため、新しい担当者は15年前にほとんどミズナラの木が消滅したことを知らないことが多いのです。
これでブナまで大凶作のゼロとなると、クマはもう生きていけません。この歴史を知らないと、クマがえさを求めてどんどん山から出て来るという現象を見て、クマが増えて山からあふれ出してきたという見解になってしまうのです。
ナラ枯れの原因は解明されていませんが、200年も300年も生きてきたであろうミズナラの巨木が一気に枯れてしまったことを思うと、ナラ枯れは、昨今の人間活動の結果である地球温暖化や大気汚染が原因であると思われます。
国は、ナラ枯れの原因を5ミリほどのカシノナガキクイムシのせいにしていますが、責任転嫁している間は、問題は解決しないと思います。
かつて大量の実りをもたらしていた、大きな実が大量に付くミズナラの木
1本のミズナラの巨木が100キロのドングリを落とすとすると、4本あるだけで、秋のクマ1頭の食料を賄えるのではないかと思われます。(以前15年生のクヌギを調査した時、1本の木で、10キロのドングリを落とすことが分かりました)祖先が残してきた奥山は、人間の予想以上に、数多くのクマたちを養っていたのではないかと推察されます。
それが、今や、ああ・・・絶望的です。
ナラ枯れの跡地にミズナラの稚樹を見かけた場所もありますが、まだまだ実をもたらすまでには至っていません。
[速報] クマ捕獲規制と共存対策を求める 26,798筆の全国署名と要望書を環境大臣、農林水産大臣宛に提出!!
絶滅回避と人身事故防止のために、緊急対策を要請しました
11月27日、環境省にて、宮崎勝環境大臣政務官(参議院銀)に、熊野正士農水大臣政務官に、全国から集まった26,798筆の署名とクマの絶滅回避と人身事故防止のための緊急対策を求める要望書を提出しました!
コロナ禍の中、人と会うことが制限される中で、本当にたくさんの人が、1頭でも捕殺されないように、クマと共存し、クマの棲める水源の豊かな森が日本にも残るようにと必死で集めてくださいました。署名提出には、赤松正雄顧問(元衆議院議員)、片山大介顧問(参議院議員)その他、たくさんの方にご尽力いただきました。
思いのつまった署名を、室谷悠子会長、片山大介顧問、クマ保全担当の水見職員、川崎東京支部長らと届けてきました。
捕殺より、えさ場の確保、人身事故防止、生息地復元が急務
近年、食料を求めてクマが里に大量に出没し、誘引物を入れた罠に誘引され、大量に捕殺されています。昨年度のクマ捕殺数は過去最多6000頭を超えました。
私たちは24年間奥山を歩き、調査し続けてきました。クマが、人里に出てきたのは、クマが増えたからでも、人を恐れなくなったからでもなく、クマの本来の生息地である、奥山水源域の自然林が、クマを養えないまでに劣化したことが原因です。
拡大造林政策により広大な奥山自然林が失われ、ダム建設によって俎上するサケ科の魚を失い、地球温暖化によって昆虫が消え、液果は実を結ばず、酸性雨によってドングリ類を枯死させるナラ枯れが全国的に大発生、山にクマの食料が皆無という危機的な状況となり、大量出没が起こっています。
今年の全国のクマ捕殺数は、9月末現在で4000頭を超えており、このままいけば昨年を上回る捕殺数となることが予測されます。
クマをこのまま捕殺し続けると、クマは絶滅し、生態系保全上からも人道上からも問題です。豊かな水源の森の造り手を失えば、人間も近い将来水不足で苦しむようになります。
環境大臣への要望事項 ※要望書はこちら
【クマとの共存のための緊急要請】 全国の自治体が捕殺を抑制しながら、人身事故回避・共存対策を実践できるように、今年度改訂予定の「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(クマ類編)」においても、以下の対策を反映させてください。 1 山の実りがない年は、緊急対策として、里のどんぐり、オニグルミ、カキ・クリなどをクマに分けてやってください。人身事故の危険がある場合は、実をもいで山へ運ぶことを実践できるようにしてください 2 人身事故が起きないようにするためにも、できる限りの捕殺抑制を 3 クマが里に出てくるのを押さえるために、山裾にクリなどを植え、クマ止め林を造る必要があります 4 潜み場除去のための草刈りや誘因物除去など人身事故防止対策の徹底を 5 根本対策として、奥山の生息地の復元を |
農林水産大臣への要望事項 ※要望書はこちら
【クマの人身事故防止と棲み分け対策のための要望】 鳥獣被害対策予算、森林整備関連予算、森林環境譲与税などを活用し、クマの生息環境整備と人身事故防止及び棲み分け実現のため、以下の対策を実現ください。 1 人が気をつけることで人身事故は防げます。潜み場除去のための草刈りや誘因物除去など人身事故防止対策を鳥獣被害対策予算で実現させてください 2 里のどんぐり、オニグルミ、カキ・クリなどをクマに分けてやってください。人身事故の危険がある場合は、実をもいで山へ運んでやってください 3 根本対策として、生息地・奥山の広葉樹林の復元を至急進めてください 4 クマが里に出てくるのを押さえるために、山裾にクリなどを植える「クマ止め林」を造るための事業に公的補助が使えるようにしてください |
室谷会長は、「本来の生息地である奥山にえさのないなか、捕殺を繰り返しても、出没や人身事故は無くなりません。①えさの問題をどうするか、②棲み分けをどう進めていくかという視点の対策が急務です」と訴えました。
宮崎勝環境大臣政務官は、「来年度前半までに、ガイドラインやクマ出没対応マニュアルの改訂が予定されており、「共存」という視点を取り入れていきたい」と答えられました。熊森が実践し、提案するえさ場の確保や棲み分け対策、放獣体制の整備などもガイドラインに取り入れられるよう重ねてお願いしました。共存のための各自治体のモデルになるガイドラインができるように、今後も要請を続けます。
熊野農林水産大臣政務官には、奥地の放置人工林をクマの棲める広葉樹林に戻してほしいということと、鳥獣被害対策として、捕殺に頼らない棲み分け対策やクマたちのえさ場の確保に力を入れてほしいとお願いをしました。熊野政務官は、エサの問題、生息地の問題を考え、棲み分けをすることが必要という話を、「ゾーニングが大事なのですね」と真剣に聞いてくださりました。
「農林水産省の鳥獣被害対策予算が、来年度さらに拡充される予定です」と政務官がおっしゃられたので、現在の捕殺を中心とする獣害対策から、野生動物たちが山で暮らし、棲み分けができるような環境整備と野生動物を寄せつけない集落づくりにシフトしていくことが必要なことをお伝えしました。
署名提出に合わせて、環境省記者クラブと農政記者クラブで、記者に説明をしました。「クマが出てきて捕殺された」「事故が起こった」という現象だけではなく、クマたちが奥山から出て来ざるを得ない現状や共存と人身事故防止のため、何をすべきかということを報道してほしいと訴えました。「現場を取材に行きたい」とおっしゃられる記者さんもおられました。
日本熊森協会の提案は、いずれも24年間、クマ生息地で実践してきた取組に基づいて行われているものです。ぜひ、私たちの活動を取材に来ていただきたいです。
現在も、全国各地で、クマが出没し、捕殺が続いています。署名提出を契機に、安易な捕殺に頼らない共存の取組みが進んでいくよう、今後も、国に対して要請を続けるとともに、都道府県や地元自治体にも共存対策の実施を働きかけていきます。
国際動物福祉団体 Wild Welfare(ワイルド ウェルフェア)も共存対策を提案
世界をまたにかけて、飼育下にある野生動物の福祉向上に取り組むWild Welfare(ワイルド ウェルフェア)の幹部のSimon Marsh(サイモン マーシュ)氏からも、小泉進次郎環境大臣宛の親書を授かり、政務官にお渡ししました。
サイモン氏は、捕獲された野生動物の自然復帰プロジェクトに関わった経験を持ち、人との軋轢を減らすための啓発や捕まったクマの放獣、野生復帰のための一時保護施設の整備などを、日本熊森協会などのNGOとも連携し、行うべきだと提言をされました。
Wild Welfare(ワイルド ウェルフェア) サイモン氏の親書はこちら
海外では、クマが人里へ出てきただけで捕殺するのではなく、原因を究明し、人側も十分に注意し、クマを寄せ付けないように配慮して行動することを徹底している地域が多くあり、学ぶべきことがたくさんあります。
熊森が運んだドングリをクマたちが食べています その1
地球温暖化や酸性雨(酸性雪)などの人間活動の影響を受けて、昨年に引き続き、多くの地域で、今年も山の実りゼロの異変が続いています。
たとえば、ブナの生育条件は、年平均気温が6度~12.5度まで。気温が上がると正常種子は実りません。ブナは大凶作で、実りはゼロです。
また、どんぐり類が枯死するナラ枯れの大発生など、信じられない事態が起きています。
奥山をフィールドに活動する私たちには、クマたちの本来の生息地である冷温帯の森が急速に劣化していると感じます。
飢えに苦しむクマたちが、日本海側の里や市街地に出て行き、連日殺処分されており、人身事故も多発しています。私たちは日々胸を痛めています。
緊急対策として、里の実りを山へ
環境危機による食糧不足により、人里周辺のカキ、クリ、どんぐり、オニグルミなどを食べに来ているクマは、エサが得られれば山へ戻ります。私たちは、近づかないでそっとしておいてやってほしいと思っています。絶滅防止のために、捕殺を控えるべきだと呼びかけています。
しかし、過疎化と高齢化で動物との棲み分けのための対策ができておらず、クマと人の突然の至近距離での接触を避けることが難しい地域が多いことも事実です。
このような場合、人身事故を防ぎ、クマの乱獲を止めるためには、クマたちを山にとどめることが必要です。そのためには、里の実りを、山中に運ぶことを緊急対策としてせざるを得ないと考えています。
下の動画は、山からクマが出てこないように、熊森が地元の方たちとクマの通り道にドングリや集落でもいだ柿などを運び、自動撮影カメラをかけてチェックしたものです。クマが、里の味を覚えると批判される方もいますが、柿は山にもあり、すでに昔から、クマは凶作年には、食用の木の実としてずっと認識しています。
ドングリを運んだ日時 昼 2020年10月26日14時35分
クマがやってきた日時 夜 2020年10月26日20時48分 暗くなってから、1頭のクマがやってきました。
熊森スタッフがカメラを回収したのは、10月27日の10時30分です。この間、約20時間の記録が取れました。
2020年10月27日5時23分まで、実にこのクマは8時間半にわたって休まずに食べ続けていました。
クマは暗闇の中で、ドングリを食べ続け、明るくなる前に立ち去りました。クマは夜行性の動物ではありません。なぜ、暗いうちにドングリを食べるのかと言えば、それは人を避けて行動しているからでしょう。クマは、人を恐れ、できれば接触を避けたいと思っていることがわかります。
熊森が、大阪府豊能町で保護飼育している元野生のツキノワグマの「とよ」と同じ格好で食べています。
「とよ」との違いは、「とよ」は明るい昼に食べますが、このクマは、暗闇の中で食べていることです。
クマが立ち去ると、直ちに複数のタヌキが現れ、このドングリを食べ始めました。
このようなボランティア活動を続ける熊森に対して、焼け石に水と笑う人や反対する人もいます。しかし、何もしなければこのクマは里に下り、飢えに苦しんで夜、里の柿の実をこっそり食べに行き、大量に仕掛けられた罠に掛かって殺されるか、朝帰りが遅れて人間に見つかり、大勢の人たちに追い掛け回されて射殺されることになるでしょう。その過程で時には人身事故を起こしてしまうかもしれません。そちらの方がいいのでしょうか。多くの皆さんに考えていただきたいです。
山に実りが無い場合の緊急対策として、自治体や地域のみなさんにドングリ運び柿運びの実践を検討していただきたいです。
(注)山やクマに詳しくない方がどんぐりを運ぶのは危険です。私たちは、一般の方に山にどんぐりを持って行くことを推奨しているわけではありません。クマの出てきている地域で通り道を考え、人との接触が起こらない場所に置く必要があり、森やクマに詳しい集落の方や猟友会と一緒に行うことが望ましいです。
元野生グマ「とよ」の飼育からわかる秋のクマのどんぐり食
「とよ」は、大阪府豊能町で推定5歳でイノシシ用の箱罠にかかり、殺処分が決まったため(鳥獣保護法によれば錯誤捕獲で放獣しなければならないのですが)、やむを得ず熊森が、高代寺の協力のもと保護飼育することになりました。
とよを飼ってみてわかったことですが、成獣グマは50キロのドングリを約一週間で平らげます。200キロ運ぶと、1頭のクマを1か月間山に留められます。
秋は、クリやどんぐりなどの堅果を好む
10月13日に、「とよ」にドングリの山を与え、中央にリンゴと柿を1個づつ置いてみました。
「とよ」は、掃除後、運動場に出されると、ドングリの山に飛んできて、リンゴと柿を前足で払いのけ、ドングリと栗だけを抱きかかえるようにして、ずうっと食べ続けていました。(観察時間4時間)
冬ごもり前のこの時期、クマが本当に食べたいのは、皮下脂肪を蓄えるために欠かせない栗やドングリなどの堅果類の実りなのです。
ドングリの山の上に覆いかぶさるようにしてドングリを食べ続ける「とよ」
時たま、プールに行って水をゴクゴク飲み、また、ドングリのところに戻って食べ続けていました。
プールの水を飲む「とよ」、冬ごもりに向けてだいぶん皮下脂肪がついてきました。
人と心を通わせられる穏やかな生きものです
クマとの共存策を考えるには、殺されたクマを解剖して研究しているだけではだめで、生きたクマを飼ってよく観察することが必要です。クマを飼うと、いろんなことがわかってきます。人間と深く心が通じ合えるすばらしい動物です。
野生で大人になったクマは人を恐れています。しかし、愛情いっぱいに飼育すると、クマはやがて人間を信頼するようになり、よくなつきます。そして、表情が明るくなり、幸せそうな顔付きになります。それを見た人々の頬はゆるみ、みんなが笑顔になってゆきます。
高代寺(大阪府)の「とよ」10歳 2020.10.13撮影
クマとの共存のために動き出そう
クマは、今、まるで凶悪犯罪者のように報道されていますが、大きな誤解です。大変な間違いです。
飼ってみると、人間よりずっと平和的で飼育者を思いやるやさしい動物であることがわかります。
祖先がしてきたように、人と棲み分け生息できる環境を取り戻してやれば、クマは日本の国土で人間と十分共存できる動物です。
戦後、広大な奥山生息地を破壊した私たち人間が、責任を取って、奥山を復元しませんか。
情けはクマのためならず。
私たちの大切な水源の森を未来永劫に守ることでもあるのです。
山の実りが皆無になってしまった今、当面、山裾に、クマの餌場として、クマ止め林(凶作年のえさとなるような柿やクリ、平地で実るクヌギなどのドングリ種の林)を造っていきませんか。
目の前の問題解決を図るため、里でもいだ柿やドングリを、山に運んでやりませんか。
学校が子供たちにドングリ集めを広めてくだされば、すばらしい情操教育、環境教育になります。
今秋の緊急対策として、里のドングリを集めてくださっているすべての皆さんに、心から感謝申し上げます。(完)
くまもり本部・支部、人身事故とクマの絶滅回避のために、里の実りを山に運んでいます
奥山原生林でひっそりと生きながらえてきた日本のクマたちは、戦後の林野庁の拡大造林政策と、奥山開発で、広大なえさ場を人間に破壊され、生息地を失いました。
外から見ると青々とした人工林、林内食料はゼロ
さらに、近年、残されたわずかな自然林の中から、ブドウやイチゴ類など果肉が多汁で柔らかい果物である液果の実りが少なくなっています。受粉してくれる昆虫が、地球温暖化等の影響で大量絶滅したからです。
ほとんどの液果は虫媒花です。写真は、ミズキ
ドングリ類など実の堅い堅果の実りも少なくなりました。酸性雨等の影響で、木々が弱ってきており、大量枯死してしまったからです。(ナラ枯れ、カシ枯れ、シイ枯れ)
今年枯れたクヌギの巨木(兵庫県)
今年夏の鳥取大山のナラ枯れ(赤色部分の木が枯れてしまった)
様々な液果の実りやミズナラを中心とする堅果の実りに頼って生きてきたツキノワグマたちは、食料を失いました。ツキノワグマは日本の奥山にいるだけでは生きられない状況になっています。ブナは幹の構造上、ナラ枯れしませんが、多くの地域で、去年も今年も大凶作。実りがゼロです。木々が弱ってきているのです。
こんなことになったのはすべて人間活動が原因です。
冬ごもりに備えて今大量の堅果を食べ続けなければならないクマたちは、連日、里の木々の実りを求め、次から次へと山から出てきています。
クマと共存する経験をしたことがない集落では、対応の仕方がわからず、皆さん悲鳴を上げておられます。
猟友会、警察、行政、マスコミなど大勢で1頭のクマを追いかけまわして、クマをパニックに陥れ、人身事故を誘発させています。
クマは人間と違って、本来、争いを避ける大変平和的な動物です。至近距離での突然の接触を避ければ、人身事故のほとんどは防げます。
日本のほとんどの役所は、クマが出てこないように里の柿の木を伐ったり、里の柿の実をもいで捨てたりするよう、地元に指示しています。
しかし、里の実りを利用できないと、クマたちは生きるために仕方なく、里を通り越して、その先の市街地に出て行くようになりました。
これが今、日本中で起きているクマ騒動の実態です。
熊森は、臆病なクマたちが、夜こっそり民家の柿の木に登って柿の実を食べていたら、静かに見守ってくださいと地元にお願いして回っています。
奥地に行くと、昔からクマと共存してきた集落が今もいくつもあって、必死で柿を食べるクマを皆さんそっと温かい目で見守っておられます。こういう集落では、クマによる人身事故は全く起きていません。
このようなことが無理な集落では、柿の実をもいでください。
熊森も手伝って本部・支部、みんなでどんどん山に運んでいます。
熊森本部資料より 山中のクマの通り道に運んだドングリと柿
熊森本部資料より 人間の運んだドングリを食べに来たクマの兄妹(自動撮影カメラ)
以下は、今年、くまもりの支部から送られてきた10月の活動報告写真です。
集落の方と協力して、一緒に、軽トラでごみ袋50袋分ものもいだ柿と集めたドングリを、クマが山から出てくる道に大量に運びました。
次の日見に行くと、「クマのエサ場です。近寄らないで下さい」という看板を、地元が立てておられました。
辺り一面クマの糞でいっぱいでした。
もいだ柿の実、ドングリを運び続けると、クマをこの場所で止めることができます。
平地のクヌギやコナラのドングリを、クマの通り道に運ぶ熊森会員たち
この町では、山裾に実のなる木をたくさん植樹して、令和のクマ止め林を作っていこうという熊森提案に賛成する方が、何人も出てきました。
熊森は、奥山水源の森の再生活動を進めるために結成されたボランティア団体で、がんばっています。しかし、これには時間がかかります。
当面のクマ対策として、平地向きのドングリや、カキ、クリなどを地元の皆さんと、山裾にたくさん植えていこうと思います。
飢えて人里に出て来ざるを得ない哀れなクマたちが、やっとのことで見つけた食料を取り上げた上、「危険」とレッテルを貼り殺してしまう。こんな行為が、今、日本全国で展開されており、このようなことが続けば、クマの個体数は激減し、クマは確実に絶滅します。
熊森は、やさしい解決法が一番優れていると思います。
クマが里や街中に出てきたという現象だけを見ている人たちは、現在のクマの異常事態に対してびっくりするような間違った原因説を出しておられます。
<クマが山から出てくる誤った原因説>
1、クマが爆発増加した(クマ爆発増加説)
→熊森反論:本来の奥山生息地は空っぽです。
2、クマが人間をなめだした(人なめ説)
→熊森反論:人間が怖いから人間から逃げようとして人身事故を起こすのです。
3、クマが山のものより里のもののほうがおいしいと味を占めた(味しめ説)
→熊森反論:実験で、ドングリと柿やリンゴを同時に与えると、クマはドングリに飛びつきます。
4、クマが生息地を拡大しようとしだした(生息地拡大説)
→熊森反論:生息地拡大ではなく、ドーナツ化現象です。
5、地元が里山を放置した(里山放置説)
→熊森反論:里山は1960年から放置されています。
どうしてこんなに誤った原因説が世に出回るのでしょうか。
日本熊森協会の原因説は、ただ一つです。
→1、山から食料が消えた
小泉進次郎環境相が26日にクマ被害対策の会議開催を表明されているそうです。
クマの生息環境の危機的な状況も踏まえた共存のために何をするべきかを具体的に進めることができる会議になることを祈るばかりです。(完)
【緊急提言】食料を求め出てきて次々と捕殺されているクマたちの絶滅回避と共存のために
- 2020-10-18 (日)
- くまもりNEWS
10月17日 全国クマWEB集会を開きました!
全国でナラ枯れが広がり、クマの秋の大事なエサであるどんぐりが枯死しています。
それだけでなく、今年は2年連続、山の実りの凶作の地域も多く、各地でクマがエサを求めて人里に下りてきて次々と捕殺されています。
昨年は、過去最多、6000頭を超えるクマが捕殺されました。 熊森協会は4月以降、クマ罠規制の強化を求める署名運動に取り組み、現在署名は1万8794筆に達し目標の2万筆まであと少しに迫っていますが、奥山ではエサが全くない状況が続いており、今のように人里に出てきただけでクマを捕殺続ければ、クマは絶滅します。
森と動物たちの危機的危機的状況をたくさんの方に伝え、1頭でも多くのクマたちを何とか救っていく行動を起こそうと、インターネットのウェビナーを使ったオンライン集会を開催しました。
北海道から四国まで50人が参加
会議には北海道から四国まで50人がインターネットを通じて参加されました。
参議院議員で熊森顧問の片山大介先生も参加され「全ての生物が共存共生できる環境をつくることは容易ではありませんが、私たち一人ひとりが取り組むべき課題です。人間たちの都合で大型動物の捕殺について目を背けるのではなく、私たちは問題解決に向け取り組まねばなりません」とお祝いのメッセージを寄せてくださり、会議でも「10月26日から臨時国会、来年1月には通常国会が始まり期間中に環境委員会の審議などできちんと(国に)説明を求めて、皆さんの不安に対する回答を引き出し、署名運動に関してもお手伝いできるよう頑張っていきたい」と話されました。
奥山にえさがない! クマ生息地の危機的状況~なぜ、クマの大量捕殺が止まらないのか
クマ保全担当職員水見より
戦後以降で東北6県分に相当する天然林が伐採されクマの生息地は人間による開発と環境破壊で失われ続けてきました。
さらに追い打ちをかけるように今年、エサとなるドングリを実らすナラが全国的に広範囲で枯れてしまい、山の実りは2年連続の凶作となっています。水見職員はグラフや写真を使いながら深刻な実情を訴えました。
しかし、人里に現れたクマたちは見つかると追いかけ回され、問答無用で殺され続けています。
海外では、同じように人里に現れても、日本のように追いかけ回されたり、すぐに殺されたりはせず、そっと立ち去るのを待つように扱われているのが自然な姿です。
ところが、最近の日本ではクマの出没が相次いでいることについて、一部のメディアは人里に相次いで出てくるクマを研究者の言葉を借りて「新世代グマ」などと表現し人身事故を起こしていると報道しています。
絶滅回避と共存のための5つの提言
会長 室谷悠子
クマにとってエサがない絶望的な状況が続き、人里にクマたちが下りてくる事態を簡単には止められない状況が続く中で、「クマの現状を知り、これから何をすべきか」と題して発言した室谷悠子会長は、熊森協会として、クマの絶滅を何としても避けたいと、「クマの絶滅回避に向けた緊急声明」(→全文はこちら)を発表しました。
【クマとの共存のための緊急提案】
1 里のどんぐり、オニグルミ、カキ・クリなどをクマに分けてやってください。人身事故の危険がある場合は、もいで山へ運んでやってください 2 人身事故が起きないようにするためにも、できる限りの捕殺抑制を 3 クマが里に出てくるのを押さえるために、山裾にクリなどを植え、クマ止め林を造る必要があります 4 潜み場除去のための草刈りや誘因物除去など人身事故防止対策の徹底を 5 根本対策として、奥山の生息地の復元を
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室谷会長は、「マスコミにも訴え、事実をできる限りたくさんの人に伝えて知ってもらいたいです。 私たちは、自ら実践していくことで何とかクマたちと共存することのできる国づくりをしていきたいです。
心ある全国の皆さんにお力を受け、助けていただき、何とか今からでも間に合うように、取り組みを続けていきます」と力強く宣言しました。
真実を広め、民間と行政が協力して行動を!
参加された方々からチャット機能を通じた意見交換や質問がさまざまに寄せられ、「きょうの内容をWEBでもぜひ公開してほしい」との意見もさっそくあり、室谷会長は「なるべくたくさんの人たちが共有できるようにしていきます」と約束しました。
最後に森山まり子名誉会長があいさつしました。
森山名誉会長は、森はなさんの童話「こんこんさまにさしあげそうろう」を手にとって示し、昔の兵庫県北部の但馬地方で子供たちが冬の大寒のころ、たくさんの食べ物を用意して「こんこん(キツネ)さまに差し上げよう」と山に食料を置き分け与えていた童話のストーリーを紹介。 「これが本来の日本の文化です。生き物にもやさしい文化だから水源の森も残すことができたのです。 今こそ私たちは、祖先の優しさを取り戻し、豊かな自然を取り戻しましょう」と語りかけました。
そして、クマたちの捕殺が止まらない中で、時間をかけて話を聞いてくれた行政担当者や、協力してくれた熊森支部のエピソードを紹介しながら「民間と、行政と、それぞれだけでできないことも、互いに力を合わせるとできることは増えてきます。 力を合わせて、政治を動かさないとだめです。 仲間をもっと増やしていけば、注目を集めることはできます。 ただ、思っているだけでは変わりません。 行動して、どんどん広めていきながら、大きな声にしていきましょう」と力を込めて呼びかけ、閉会しました。
報道機関のみなさんへ
クマの絶滅を回避し、クマたちの棲める豊かな森を残すため、問題の背景とどうすればよいのかを報道してください! 問題の解決へ向けて、実践活動を行っている日本熊森協会の本部・支部の活動も取り上げていただきたいです。 |
ナラ枯れの原因は虫ではない
- 2020-09-21 (月)
- くまもりNEWS
どんな問題にも原因があります。
その原因特定に誤りがあれば、打つ手は全て外れます。
ナラ枯れは2000年代になって、日本海側の豪雪地帯の冷温帯から始まりました。
熊森は当初、地球温暖化によってこの暖温帯の虫が、まだこの虫に抵抗力を持たない冷温帯の木々に上がって行って(地球温暖化)、中国起源の酸性雪で弱ったミズナラの木を(土壌酸性化)、虫が片付けに入ったことが原因ではないかと考えました。
しかし、現在、日本海側だけではなく太平洋側も、奥山だけではなく里山も、ナラ枯れが蔓延してしまいました。
今年のナラ枯れの猛威には今年の酷暑ともいえる異常な猛暑も加わって、全国の実のなる木が弱ってきたからではないでしょうか。
一方、国は、ナラ枯れの原因を、カシノナガキクイムシという長さ5ミリほどの甲虫であるとしています。
その結果、各地の山に大量の殺虫用化学物質を運び込んでいます。これで死ぬのは、カシノナガキクイムシだけではなく、全ての虫です。弊害の大きさは計り知れません。国の大量の薬剤散布にもかかわらず、ナラ枯れは北海道を除く全国に広がる一方です。人間にはこの虫をコントロールすることなどできなかったのです。
この虫は外来種ではなく、昔から日本の暖温帯にいた虫です。この虫でドングリの木が枯れるのなら、とっくの昔に、この国からドングリの木が消えていたはずです。
虫原因説から脱皮すべきでしょう。
当協会顧問の故宮下正次先生の研究によると、佐渡島では虫侵入の形跡が全くないのにミズナラが総枯れしていたそうです。こうなるともう完全に、ナラ枯れの原因は、虫ではなくなります。
土壌の酸性度を緩和すべく根元に炭をまいたところ、枯れそうになっていたミズナラが何本も生き返ったということです。
ナラ枯れの原因は、直接的には虫であったとしても、地球温暖化、酸性雪雨、大気汚染などの人間活動の総合作用によって、木々が弱っただけではなく、土壌内の共生菌である微生物たちが変化したり衰えたりしていることではないでしょうか。
この目に見えないミクロの世界で行われている多種多様な微生物たちの働きは、永遠に人間がはかり知ることができない世界であり、まして、人間がコントロールすることなど不可能です。人間はもっともっと謙虚にならねばなりません。
一時の楽さや便利さを享受するため、たった一つの母なる地球環境を壊し続けていくのでは、人間は余りにも愚かであまりにも無慈悲な動物です。
「人間は発展するために生まれてきたのではなく、幸せになるために生まれてきたのです。」
ウルグアイ 元ムヒカ大統領
リニア新幹線を筆頭に、水源の森を壊してまでこれ以上の便利さを求めることは、不要なばかりか人類の自殺行為です。
流れを変えるには大きな声が必要です。熊森は心ある皆さんの声をひとまとまりにして、他生物のために、次世代のために、奥山水源の森を聖域化する力を持ちたいのです。ぜひ多くの方に熊森協会の会員になっていただきたいです。会費は、毎年の会員数を正確に把握するための年千円でいいです。年千円の会費で年4回の会報を送付させていただきます。(完)
もはや末期症状 クマたちが山から次々と出て来るその訳は
- 2020-09-01 (火)
- くまもりNEWS
今、日本では連日、クマたち野生動物が食料を求めて人里に出てきています。
そして、害獣や危険動物のレッテルを張られ、罠や銃で片っ端から人間に殺されていっています。(殺すと役場からお金がもらえる仕組みができあがっている)
なぜ、日本のマスコミは目の前の現象だけを報道して、その背後にある原因に誰一人触れようとしないのでしょうか。その知性のなさには、信じられない思いがします。物事にはすべて原因があるのです。その原因とは、
奥山生息地から動物たちの食料が消えてしまった!
8月下旬、熊森は兵庫県のクマ生息地を調査しました。
放置人工林で埋まっているクマ生息地、人工林の中は茶色一色で動物たちの食料は皆無です。
頂上にわずかに残された貴重な自然林の色が赤い。
頂上付近を望遠レンズで撮影
ナラ枯れの再襲来です。
自然林の中のドングリの木々が、「ナラ枯れ」という現象で今夏枯れてしまい、真っ赤になっているのです。山の実りの豊凶を論じる前に、木そのものがなくなってしまっているのです。
近年、森の中から、
昆虫が消え、
液果の実りが消え、
堅果(ドングリ類)の木が大量に枯れていきます。
この傾向は年々ひどくなっていく一方です。
こんな山に誰がした?
拡大造林、
放置人工林、
奥山にまで縦横に張り巡らされた道路、
酸性雨、
地球温暖化、
農薬の空中散布、等々。
すべて人間活動が原因です!
スギの人工林の前に1本だけ残っていた希望の星、クヌギ(ドングリの一種)の巨木も、今年のナラ枯れで枯れてしまっていました。
クマたちはこれを見て、もう生きられないと泣いていることでしょう。
集落周辺にかけた熊森の自動撮影カメラには、農作物を狙って、深夜、人間におびえながら夜な夜な出て来るクマたちが次々と撮影されています。
熊森自動撮影カメラ8月14日
23時50分、あたりの様子をうかがいながら、そっとクマたちが農作物に近づきます。
でも、電気柵や金網に阻まれて、中に入れません。
生きるために食べようとした。彼らのしたことは死刑に値するほど悪いことなのでしょうか。
野生動物たちが喋れたら、人間は金儲けのため、自分たちの快適さと便利さのため、私たちの生息地を取り返しのつかないまでに壊し続けてきました。わたしたちには食べ物がないのですが、どうすればいいのですかと訴えることでしょう。
熊森スタッフたちは、農作物をクマから守ったり、クマと人の事故が起きないようにしたり、連日地元に泊まり込んで地元の手伝いに大汗を流しています。まさに、クマと人の攻防戦です。ずっとブログの更新も止まったままです。
専門家と呼ばれる先生方は、この異常現象に対して、
クマの生息推定数を毎年どんどん増加させていって、相も変わらず、
クマが増え過ぎている。
クマが人を恐れなくなった。
クマが人間の作物の味をしめたことによる現象であると説明されています。
じゃあと、行政のみなさんは、増え過ぎたと言われるクマの捕獲(=捕殺)指示に躍起です。
大量のクマ捕獲罠を仕掛けているだけではなく、山中のシカやイノシシ用の罠に誤捕獲されたクマまで片っ端から殺処分しています。(法違反)
イヌブナの実りもゼロ。
今年の山の食料のなさは、2004年(平成16年)の再来だと地元の方の声。
皮肉なことに、人里のドングリやクリ、カキなどはよく実っています。(人間はいいな、おなか一杯食べている)
リニアをはじめ、今も自然大破壊に国家予算をつぎ込み続け、自然破壊によって生きられなくなった野生鳥獣は大量殺戮してしまう。弱肉強食の典型国家。
わたしたち人間の倫理観はどうなってしまったのでしょうか。
私たち熊森はもはや、良識ある一般国民のみなさんに訴えるしかありません。
こんなことを続けていて、私たち、そして私たちの子や孫は幸せになれるのでしょうか。
他者の不幸の上に築いた幸せは、いずれ必ず破たんします。(完)
滋賀県高島市で支部長地区長研修会を実施!
- 2020-07-22 (水)
- くまもりNEWS
~7月18日、19日 全国から34人が集まりました~
くまもりは、地域の自然や野生動物は、そこに住んでいる人たちが一番守ることができるという考えのもと、支部による地域に根差した自然保護活動をとても大事にしています。
全国支部地区長会は、全国で豊かな森再生や野生動物保全に取り組む、支部スタッフが一堂に会しての研修会です。
東京都支部など一部地域の5人はZOOMでの参加になりましたが、全国の13支部から21人と本部スタッフ7人の計34人の参加となりました。
今回のテーマは 「モデルをつくり、広げよう!」です。
「野生動物の生息地を奪い、自然を破壊してきた人類の限界が見えたコロナ禍の今だからこそ、支部のみなさんと熊森の実践活動をもっと広めていきたい」という室谷悠子会長のあいさつからスタート。
Part1 どうつくるクマとの共存
本部クマ保全担当の水見竜哉職員が新潟県南魚沼市の親子グマ3頭を昨年12月にくまもりが保護して5月に放獣するまでの活動を報告しました。
12月に南魚沼市の診療所軒下で冬眠しようとしていた親子グマが見つかったというニュースを知った水見職員らが現地に駆け付け、「冬の間はくまもりが預かって、春に放獣する」という了解を得るまでの緊迫した様子や、たくさんの方のご協力で、放獣ができたことを報告。
水見職員は、「熊森として、今後、放獣体制を全国で整備することや、捕殺に頼らない棲み分けのためのモデルをつくっていくことに力を入れたい。環境省をはじめとする全国のクマ行政が、共存をめざしたものに変えていけるよう、今集めている署名も頑張って集めましょう」と訴えました。
Part2 全国で豊かな森づくりのモデルを
本部の室谷会長の報告に続き、森林環境譲与税を巡る取り組みを愛知、長野、和歌山県支部の支部長らがそれぞれの取り組みを報告しました。
Part3 顧問による講演
くまもり顧問で前滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員が「地球温暖化による豪雨災害とダムに頼らない流域治水」をテーマに講演してくださいました。
滋賀県知事時代に、ダム問題に取り組んだ嘉田顧問。トチノキ巨木保全のような水源の森保護をはじめ、流域で総合的な治水に努めることこそ、ダムよりもずっと有効な治水政策です、と強調。知事時代に近隣の近畿各府県知事らと協力して、大戸川ダムをはじめとした6つのダム事業を中止または凍結した経験をお話されました。
しかし、2年前の西日本豪雨をはじめとした「数十年に一度の大雨」が頻発し、「ダムがあってこそ、洪水は防げる」と巨大ダムの必要性を喧伝する声は根強くあります。
嘉田顧問は「ダムがあれば大丈夫というのは間違い。流域治水と住民の防災意識を高めないと生命は守れません」と強調されました。7月4日の熊本県の球磨川の氾濫で、川辺川ダムがあれば防げたのではないかという指摘もありますが、球磨川の推定流量を検証するとダムがあっても氾濫は防げなかったことが明らかとなったそうです。
さらに「洪水が起きればもともと水没する危険のある地域に住宅が建てられていることがあり、そういう場所では住民にリスクを伝えるよう訴えてきました。不動産取引の重要事項説明でハザードマップを示して十分に説明させるよう国土交通省も今年に入って取り組んでいます。そうした取り組みとともに、内水はん濫の防止や流域で川底を掘ったり堤防を強化するなど、ダム以外にしっかりと必要な事業を進めないと、洪水は防げません」と力強く訴えておられました。
熊森の本部や支部が全国で行っている動物たちの棲める豊かな森づくりは、災害対策としての森づくりでもあります。豪雨災害が多発する近年、水の循環を止め、大規模な環境破壊になるダムをつくるべきだという声も大きくなるなかで、自然と調和した治水はどのようなものか方向性を示していただきました。
夜の部ではフェイスブックやツイッター、インスタグラムなどSNSを活用したインターネットを通じた情報発信をテーマに議論を深めました。
2日目、滋賀県支部のトチノキ巨木群保全や分収造林跡地での森づくりを紹介
くまもり滋賀県支部のメンバーらの活動紹介。
地域の方々と裁判などもして、伐採危機から守った樹齢200~400年のトチノキの巨木群の保全や215haの元分収造林である「麻生林」での今後の森づくりなど、長年に亘り、滋賀県支部が力を合わせて取り組んできました。
最後に、参加した各支部長らが「この半年間に何を取り組むか」をテーマにそれぞれの支部活動について発表しました。離れていても、同じ目標をもって、支え合いながら、残りの半年活動を広げていこうと確認しました。
本当は、トチノキ巨木を見に行く予定でしたが、雨が続き、地盤が悪いため現地へは行けませんでした。その代わり、最後に、近畿2府4県1450万人の生命の水を支える琵琶湖を見ながらお昼を食べて解散。充実した2日間となりました。
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