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8月7日 「長野の森を視る会」その①

今年5月に予定されていた本部・支部共催の「長野の森を視る会」が、コロナで延期になったままでした。応募してくださった長野県会員のみなさんも残念だったと思いますが、私たち本部スタッフも残念でした。

 

と言いますのは、熊森本部は設立25年間の間に全国各地の森を研究者らと調査してきましたが、まだ長野の森だけが未調査で残っており、本部にデータがありません。

 

主原憲司先生がお元気なうちに、長野の森に通い続けられてきた先生に長野の森を案内しておいていただきたいということになって、東京オリンピック開催でコロナ第5波が拡大しつつある時ではありましたが、とりあえず内輪だけでもと「長野の森を視る会」を実施しました。

 

地元に迷惑をかけてはいけないので、本部スタッフは全員、PCR検査で陰性を確認しての出発です。

 

今回調査する森は、八が岳連峰です。

 

長野県は、3000m級の山々を連ねる飛騨山脈(北アルプス)、木曽山脈(中央アルプス)、赤石山脈(南アルプス)に囲まれた内陸県です。海から離れており雨が少ない、県土の標高が高いため夏でも涼しいなど、避暑地や別荘地に最適です。

 

私たちが長野の森に期待したことの一つは、標高の高さ故、急激な地球温暖化の影響をまだ受けていない森が残されているという点です。

 

長野県のツキノワグマ推定生息数は400頭〜1万5440頭、中央値3940頭とされ(幅が大きすぎますが、それだけクマは何頭いるかさっぱりわからない動物なのです)、日本で最もクマが多い県です。クマをシンボルに活動している熊森にとっては胸おどる県です。

 

【1日目 8月7日(土)】

長野県茅野市の標高1400mの場所にある、白樺湖のほとりのホテルに全員宿泊。

白樺湖は、蓼科山,霧 ケ峯,八 ケ岳 な どに囲 まれた中信高原国定公園の中心に位置し、昭和22年に造られた人造湖であることが、ホテル内の展示でわかりました。そんな昔から、人間はもうこんな奥地でも自然改変をやっていたのかとびっくりです。

北佐久郡立科町 と茅野市 の境界の低 湿地 「池の平」を流れ る水温の低い音無川の源流渓谷に堰堤 を築いて水をためて温め、農業用温水溜池 とした のだそうです。そんなかつての高原の戦後の一開拓村が、今や一大観光地に様変わりしていました。

 

ホテルの前は、オオヤマザクラ、コナラやミズナラなどの落葉広葉樹林帯です。オオヤマザクラはちょうど今、クマたちにとって食べ頃、黒い実がびっしりついています。豊作です。

豊作のオオヤマザクラ

白樺湖湖畔のミズナラ林

 

ミズナラの実はまだ小さくて、これからです。

ミズナラと言っても、見ただけで葉の大きさが違う物やら木によっていろいろです。

これは種内の多様性であり、環境の変化があっても滅びずに種を残すために種内の多様性は大切です。

 

17時から、主原憲司先生による、座学が始まりました。

 

参加者は、本部4名と長野県中澤支部長ご夫妻ら長野の会員・非会員のみなさんで計12名。自己紹介で、長野の参加者の皆さんは、自然保護にかかわって来られたエキスパートであることがわかりました。

 

様々な蝶がたくさん生息している辰野町の山でメガソーラー計画が持ち上がったため、慌てて建設予定地を「蝶の森」にして整備し、地権者にメガソーラー業者に山を売らないように説得して山を守った人たちも来られていました。

開発を止めるには、すぐに開発計画を察知して、山林売買がなされない前に阻止に動くことが大事だと言われていました。

 

主原先生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広い会場で3密を避けてのマスク勉強会

 

主原先生は、「今、日本各地で昆虫が激減し、大量に絶滅していっている。昆虫が減った原因として、昆虫が餌源としている植物が森の中から急速に衰退していっていることがある。原因はすべて急激な地球温暖化で、植物は動物のように短期間には移動できない。積雪の減少もあり、昆虫・植物の生理活動のバランスが大きく崩れてきた。このままでは、クマも人も生き残れなくなる」として、人間活動による急激な地球温暖化が自然界にもたらしている絶望的な影響について話してくださいました。

 

地元長野の参加者からは、長野の昆虫や野生動物、森の現状について専門的な質問が相次ぎ、主原先生も参加者の知見の高さに感激されながら、一生懸命答えられていました。

デンマーク大使館にて対談を行いました     -グリーンパイオニアの国 デンマークー

「われわれはグリーンパイオニアの国でなければならない」と号令を発し、力強くCO2削減に取り組む環境先進国デンマーク。日本の野生のクマが直面している問題に関して、国際社会にも状況を知っていただき、地球規模で悪化している環境問題の解決に向けて意見交換をさせていただきたい旨、デンマーク大使館に連絡したところ、「もっと詳しいお話を聞かせてください。ぜひお会いしましょう!大使館においでください」とすぐにお返事をいただき、後日、正式なInvitation Letterが届きました。
6月11日、始発の新幹線に飛び乗って、東京へ。大使館にて、政治経済担当官、および広報・文化・外交部のご担当の方が私たちを温かく迎えてくださいました。

広報・文化・外交部のステファンさん(写真左)、室谷悠子会長(中央)、政治経済担当官のアンナさん(右から2番目)さすが福祉国家でもあるデンマーク!赤ちゃんのための別室もご用意下さいました

 

日本の森と野生動物の現状を伝える

まず室谷悠子会長から、日本の奥山及び野生動物の現状について説明しました。日本は国土の3分の2が山林だと言われているが、拡大造林政策によって日本の全森林の半分近くがスギ・ヒノキの人工林に変わり、その多くがが手入れもされず放置されてしまっているということ。クマたちは、奥山の生息環境悪化により、非常に厳しい状況にあるクマが人里に下りて来ざるを得ない状況もかかわらず、日本では、クマが現れただけで大量の捕獲罠を設置し、かかったクマを子グマにいたるまで殺処分しており、2019年ツキノワグマの捕殺は5,283頭、2020年は5,795頭にも上り、過去最悪となってしまった。このように安易な捕殺が許可されている現状が続けば、近い将来、日本のクマは絶滅してしまう可能性があること。さらに、残されたわずかな自然林においても、近年地球温暖化の影響から、ミズナラ・コナラの木が枯れるナラ枯れ現象が広がっている深刻な状況もお伝えしました。大使館の皆様はずっとメモを取りながら、真剣な表情で説明を聞いてくださいました。

その後意見交換を行いました。デンマークにおいても、環境問題や生物多様性保全への取り組みは、関心が高く、EUの基準に則って、国内でも力強く取り組んでいるということで、環境への意識が深く根付いているということがうかがわれました。しかし「自然林と人工林、どちらが自分たちにとって本来の森か」という質問に対して、デンマークではもはやほとんどが人工林となっており、自然林は自分たちにとってなじみがないということでした。原生的な森はもはや失われてしまい、二次林ばかりになってしまった事実はありますが、一方で、自然の修復に力が入れられ、近年、オオカミなども野生で戻ってきている例もあるそうです。やはり野生動物との軋轢は避けては通れない問題だということでした。

クマと人が接触する根本的な原因は、人工林の放置と山の開発や温暖化による森林の劣化であり、捕殺数をどんなに増やしてもクマと人との接触は防げないことを両氏も賛同してくださり、これからの時代は、いかにして野生動物と共生していくかを模索することが大切だということで意見が一致しました。野生動物保護の重要性への理解は両国共通の問題であることを確認し合い、今後、デンマーク大使館から本国の環境問題に関わる団体と日本熊森協会が連携を取れるよう働きかけてくださると力強くおっしゃってくださいました。

熱心に聞いて下さる両氏、右から2番目は国際社会への働きかけにご協力下さった会員伊藤純子さん

 

長期的視点を持った対策を
今回のデンマーク大使館訪問が実現したのは、当協会を応援してくださる方々の、豊かな森を次世代に引き継ぎたいという思いと、野生を懸命に生きるクマを守りたいという情熱があったからこそです。国際社会に向けて素晴らしい一歩を踏み出せました。
デンマーク大使館の皆様には温かく迎えていただいただき、真摯に私たちの話に耳を傾けてくださっただけでなく、大使館のSNSにも熊森協会をご紹介いただきました。感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

デンマークは、2030年までにCO2排出量を1990年比70%削減、2050年までにカーボンニュートラルにするという目標を掲げ、既に現在約25%のCO2削減を実現しています。「VikingからBiking」と言われるほど、自転車需要の高さも環境政策として導入され大きな成果を挙げています。将来世代が生き残るために、今何をなすべきかを長期的に考えているデンマークと比べると、日本は野生動物対策をみても、対策が場当たり的で、長期的視野に欠けているように思わずにはいられません。生息地の復元こそが、根本解決であり、野生動物のすむ豊かな水源の森こそ、誇るべき次世代への財産です。我が国において、クマの大量捕殺という短絡的な対策を食い止め、将来世代のためにクマなど大型野生動物の共存と、豊かな水源の森の再生に向けて国の流れを変えていきたいと強く思いました。

主原憲司先生と歩く 石川県クマ生息地白山調査レポート1 本部・石川県支部

5月23日24日、白山調査。参加者たちは白山市一里野で主原先生と落ち合いました。

北陸はまだ梅雨に入っておらず、快晴。さわやかなお天気です。

一番心配なことをまず聞きました。

 

参加者:白山にヤマビルはいますか。

主原先生:いません。

参:マダニはいますか。

主:この時期は大丈夫です。

やったー、これで安心して調査に参加できます。

 

先生に車に同乗していただき出発です。

さっそく、サルが道路を横切ります。

アブナイ!

主:この辺りは標高700m、よくサルが車に轢かれています。

(慎重運転)(白山国立公園の看板あり)

主:このゲートが白山登山口です。3時間歩いてもらいます。あれえ、ゲートに鍵がかかっている。入れないので、谷を見に行きましょう。

(車を降りる)

参加者第一声:わあ、何?この虫。(いきなり、顔の前を黒くて足をだらんと下げた小さな虫が、避けても避けてもうっとおしいくらい何匹も飛び交う。谷川の音がうるさい)

主:自然界は虫でいっぱいなのです。花バチの一種です。ハチの種類はものすごく多いのですが、ハチの図鑑はありません。ハチを見ると刺されないかとすぐに怖がる人が多いのですが、実は、刺すハチの種類はとても少ないのです。このハチも大丈夫です。(やれやれ)

 

主原先生による対岸の山の説明

 

雪崩とクマ

ここでまず見ていただきたいのは、対岸にある雪崩地形の草付きです。5月の連休ごろに来ると、何頭かのクマたちがあそこで草を食べているのが見れますよ。

 

                  ブナオ山の草付き

 

この山がなぜツキノワグマをはぐくめるのか。一つは、豪雪地帯で山が急峻なため、毎年春に雪崩が起きて樹木が育たない草場ができるからです。あそこの草場には、ユリ科とキク科のいろいろな草が生えています。セリ科の草は生えていません。クマたちは春に冬ごもりから覚めて、あそこで草を食べ続けるのです。あの場所に行くと、生まれたばかりのさまざまな種類の小さな昆虫たちが恐ろしいほどうじゃうじゃいますよ。夏になって昆虫が大きくなってきたら、クマはこれらの昆虫を食べます。

 

生態系の多様性・種の多様性が保たれた白山

クマが生きるためには、森だけではだめで、草場や湿地、池や川、いろいろな地形、つまり、生態系の多様性が必要なのです。

東北の山と違って、白山は樹木の種類がとても多いのです。その点は、まるで、熱帯雨林と同じです。

            種の多様性を誇る白山の樹木

 

上の方の緑はブナです。この山にどんな木が生えているのか、早春に来るとよくわかります。木の種類によって芽吹きの時期や芽の色が微妙に少しづつ違うからです。(白山通い60年の主原先生には、どこに何の木が生えているのか、頭にインプットされているのでしょう。)

 

15年前のナラ枯れ

この山は、2005年の夏、全山、真っ赤になりました。

       北國新聞2005年8月白山ナラ枯れ

 

地球温暖化によって暖温帯から上がってきたカシノナガキクイムシが、この虫に抵抗力を持たない冷温帯のミズナラを一夏で一気に枯らしてしまったのです。ナラ枯れです。直径20cm以上のミズナラは枯死しました。(細いミズナラが枯れなかった仕組みは複雑なので、ここでは説明を省略)

枯死木は4~5年間立っていましたが、やがて次々と根返りを起こして倒れていきました。

白山のクマはほかの地域のクマと比べると、春や夏の食料は格段に恵まれていますが、冬ごもり前の食い込み用食料である大切なドングリを失ってしまったのです。当時、9割のミズナラが枯れました。あれから16年、若木だったミズナラが実をつけるようになってきましたが、ミズナラは元来陽樹なので、これだけ木々で埋まってしまった森の中では暗すぎてドングリが落ちても稚樹が育たないのではないかと思います。

 

幹だけになったミズナラの枯死木が谷に何本か見える

 

川に倒れこんだミズナラの枯死木

 

 

熊森から

過去を学ばなければ、過去を教わらなければ、山中の枯死木、谷の丸太、川中の枯れ木を見ても、人々は何の危機感も持たないでしょう。人間活動によって白山の森の中身が一気に変化してしまったのです。

クマにとっては、ミズナラの巨木を失ったことは致命的でした。

 

高倉良生都議会議員と、「東京のクマと森のこれから」を考える:熊森オンラインシンポジウム

オリンピックの開催で注目されている我が国の首都「東京都」は、クマが生息する世界で唯一の首都だと聞いたことがあります。

しかし、<東京都レッドリスト2020>によると、クマは、南多摩地域で絶滅危惧2類、西多摩地域で準絶滅危惧で、絶滅の危機に瀕している野生動物です。

 

6月5日、日本熊森協会は、東京都議会議員の高倉良生議員をゲストにお招きし「東京のクマと森について考える」というテーマで1時間のオンラインシンポジウムを開催しました。東京都民を中心に、54名の方々にご参加いただきました。

 

1,あいさつ 日本熊森協会 会長 室谷悠子

 

東京へ行くたびに人の多いことと大都会であることに驚きます。この首都東京には、わずかですがクマが棲んでおり、また、わずかですがクマの棲む森があります。これは世界に誇るべきことです。

東京の人はほとんどが都会に住んでおり、クマの棲む森と自分たちの関係を知りません。しかし、私たちは、森がないと水も酸素も得られません。大都会東京で、大量に使われている水は、関東平野を取り囲む熊の棲む森からの湧き水が川に流れでたものです。

森は、クマをはじめとする動物、鳥、昆虫、微生物などたくさんの生きものがつくりあげており、私たちは、生きものがつくる森に生かされています。

 

今、東京の森は荒廃しており、クマが生きられる環境にないだけでなく、水源保全や災害防止の観点からも危機的な状況です。私たちは、次の世代が豊かに生きられるように、野生動物と共存し、森を再生しなければなりません。

過疎と高齢化が進む現地で森を再生していくのは簡単ではありませんが、たくさんの人が住み、日本の中で一番経済力のある東京であれば、知恵を出し合えば野生動物との共存もできるはずです。

日本熊森協会は実践活動を通じて、クマの棲める豊かな森再生の流れを広めていきたいと思っています。

 

2,「日本の奥山と野生動物の危機的状況について」
・・・・日本熊森協会本部 主任研究員 水見竜哉

 

 

日本では、過去100年間にかつての日本文明が大切にしてきたブナやミズナラの巨木が繁る奥山の水源の森を広大に伐採し、野生動物のエサにならないスギやヒノキの人工林に植え替えてしまいました。

林業は大切ですが、林業としては使えない奥山にまで植えた人工林は、今や広大な放置林となり、ツキノワグマをはじめ多くの生き物が餌場を失って里に出て来る原因となっています。

九州や四国、西日本地域では特に人工林の割合が高く、山々は保水力を失い、この数年間に豪雨による土砂災害で甚大な被害が頻発しています。近年地球温暖化の影響により、わずかに残された自然林でも、ナラ枯れや下草の衰退が深刻化しています。

 

日本熊森協会は、この国にもう一度、祖先が大切にしてきた大型野生動物との「棲み分け共存」の文化を取り戻すことをめざしています。

そのために、奥山の放置された人工林を再び野生動物が棲める豊かな森に復元し、里での殺さない鳥獣被害対策を徹底していきたいです。これらの実現には法改正が必要で、そのためには多くの会員数が必要です。会員数が増えると、国会で自然を守る法律を作ることができます。

 

皆さん、どんどん会員を増やしていってください。

 

3,「東京都のクマ行政について」 

・・・・日本熊森協会東京都支部 副支部長 木村理絵

 

 

私たち東京都支部は6年前から、クマの生息地である奥多摩町の役場の担当者に、「住民の方の安全が大切なことは 十分理解いたしておりますが、クマと共存するために、まず、被害防除対策を図って頂きたい」と、喉がかれるほどお願いし続けてきました。しかし、駆除一辺倒でなかなか前へ進みません。

 

町には、被害対策の予算がなかったからです。このまま殺され続けていては、「東京のクマは必ず絶滅してしまう」と焦りを感じている中で、高倉議員と出会いました。

 

高倉議員は、東京都の「動物との共生を進めるプロジェクトチーム」の座長を務めた経歴をお持ちで、森やクマの問題に関心をもってくださり、2019年11月には都議会の環境建設常任委員会で質問をして下さるなど、積極的に動いてくださいました。

 

そのかいあって、東京都のツキノワグマ対策がテコ入れされ、2020年には2443万円のクマ被害対策用予算が付きました。

これにより、猟友会による追い払いや電気柵設置等にお金が出るようになり、クマが逃げられる穴付きのイノシシ檻が8基も購入されました。現在も町は、試行錯誤のなかで改革を進めていってくださっています。

クマ研究第一人者の大学の先生がサポートして下さっていることも奥多摩からお聞きし、大変心強く思っています。ようやく、少し共存への希望が見えてきたと感じています。

 

東京都のクマの捕殺を減らすため、東京都支部でも自分たちで生息地復元ができるフィールド地を持ち、都民がクマの棲む水源の森を再生したり、棲み分けをお手伝いしたりする実践活動を広めていきたいです。

 

4,「東京都の奥山水源林の現状と、ツキノワグマ保全に向けた課題」 東京都議会議員 高倉 良生 氏

 

私が日本熊森協会の方々と知り合ったきっかけは、2017年に青梅市で親子グマ3頭が殺処分され、うち2頭の子熊は無許可で殺処分されていた事件でした。当時、私の先輩である、日本熊森協会顧問の赤松正雄先生が日本熊森協会とわたしをつないでくださいました。

 

私は、山に登り自然の息吹を感じることが好きです。東京の山にも昔から何度も登ってきました。

しかし、近年、山に登ると、そこにはかつて私が見て感動した豊かな自然の森は消えており、山はスギやヒノキの「畑」になっていました。大規模に伐採されている場所もあり、昔の豊かな山の面影が消えているのを見て、私は愕然としました。

この状況で、クマが山から出てきて殺処分されるニュースを日々見てきて、心を痛めていた一人であります。

 

2019年11月当時、私は東京都議会の環境・建設常任委員会の委員でした。そこで、

1、      ツキノワグマの出没時には、捕殺ではなく、追い払いや誘因物の除去、電気柵の設置を徹底すること。

2、     森林環境税・森林環境譲与税を活用し、クマが生息する西多摩郡で、放置された人工林は、自然林への誘導を行うこと。

3、      親子のクマは殺処分しないこと。

4、      捕獲の許可権者である東京都は、違法捕獲が起きないよう市町村への指導を強化すること。

の4つの事を提案させていただきました。これを首都東京でやることの意味は、非常に大きいと思っています。

 

この後、質疑応答の時間となり、多くの質問が寄せられました。

 

【参加者から】

・東京都はオリンピックを前にして、「世界の首都で唯一クマが生息していること、しかし、クマは絶滅寸前のため、生息地の保全に急いで取り組もうとしている」と、英語で全世界に発信したらいいと思う。

・東京都の人工林で林業に使われない場所は、豊かな山に早く戻してほしいです。

・全国でクマがこんなにたくさん駆除されていることを知りませんでした。東京の奥地にクマがいるというのは驚きです。

等々、多数のコメントが寄せられました。

 

【熊森から】

ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。初めての支部向けシンポジウム、好評でした。

次回のくまもりオンラインシンポジウムは全国向けで、7月17日(土)に開催予定です。

テーマは、ツキノワグマの錯誤捕獲問題です。詳細を近日公表いたします。皆様ふるってご参加下さい。

 

皆さまのご支援が増えると、くまもりが守ることのできる野生動物や豊かな森が、さらに増えます。

生きとし生きる多くの命を救うために、まだの方は、ぜひご入会下さい!

すでに会員になってくださっている皆さんは、一人でもいいので会員を増やしていただきたいです。

入会ページhttps://congrant.com/project/kumamori/2662

 

5月23日24日 本部と石川県支部による白山調査

くまもりを支えてくださっている全国の皆さん
いつも温かいサポートをありがとうございます。
昨年秋、山からクマが大量に出て来た石川県は、捕殺上限数を超えても尚、ことごとくクマたちを駆除し続けました。
クマとの棲み分け共存をめざす熊森本部と石川県支部は、今回、クマたちが生息してきた白山の森がどうなっているのか調査に入りました。
指導してくださったのは、白山自然調査歴60年のくまもり協会顧問主原憲司先生(昆虫研究者、京都府在住、72歳)です。
5月23日夕、主原先生によるプレ学習会
(コロナのためzoomで開催、参加者約20名)♪
       zoomによる本部プレ学習会 於:一里野高原ホテルろあん
5月24日終日、白山一里野、白山白峰の現地調査。
くまもり本部4名、石川県支部11名参加 ♪
中宮ビジターセンターで
主原先生は60年以上にわたり、全国各地で、昆虫とその食草となる植物、森に生きる様々な命の緻密な生態観察を現場で続けてこられました。その知識量は膨大で、『日本の宝』と言っても過言ではない方です。
熊森の強みは、ツキノワグマ研究の第一人者である長野県の宮澤正義先生をはじめ、初期からこのような日本の研究第一人者に指導していただき活動を続けてきたことです。先生たちは、心からくまもり協会の理念に賛同してくださり、貴重で膨大な資料をくまもりに惜しみなく提供し続けてくださっています。
今回は、そんな主原先生と共に、「クマを頂点とする奥山生態系の食物連鎖」が白山でしっかりと保たれているのかという視点から、白山の森を直接観察して歩きました。
氷河期から種を繋いできた『ウスバシロチョウ』が飛び交う森には、西日本の森が失ってしまった様々な昆虫たちが今も多数存命しており、25年前の生き物たちが豊かだった兵庫県の奥山自然林をほうふつとさせると森山名誉会長が感想を述べていました。
ヤブデマリの花に止まるウスバシロチョウ(羽に鱗粉がないため透明)
このまま地球温暖化が進めば、30年後には、白山も西日本の森のように昆虫を失っているだろう。今のうちに、本当の森とはどのようなものだったのか、多くの人たちに見ておいてもらいたいという主原先生の言葉が、叫びのように聞こえました。
白山には、春と夏のクマの食料はありましたが、2005年、ミズナラがナラ枯れで9割枯死したため、冬ごもり前にクマが大量に必要とする秋の堅果類が消えていました。
そして、ナラ枯れ大量枯死後のミズナラとコナラに、驚くべきことが起きていました。主原先生が2年前に発見された出来事です。
今回の白山勉強会のレポートを、順次、アップデートしていきたいと思います。
皆様、楽しみにしていてください。
お願い!!
熊森会員が増えることで、熊森が守れる森や動物たちが増えていきます。
まだの方はぜひ会員になってください!年会費1000円から会員になれます。

 

 

 

 

 

グーグルアースを使った熊森のナラ枯れ枯死木調査をご紹介

熊森が2015年から進めているグーグルアースを使ったナラ枯れ枯死木調査を、公益財団法人奥山保全トラストが所有する富山県上市町のトラスト地670ヘクタールを例にご紹介してみたいと思います。(赤線内がトラスト地です。上市町の35分の1を占める広大なトラスト地です)

 

 

 

このトラスト地は、当時の熊森富山県支部亀田隆支部長が、富山のクマが冬ごもりするときに集まってくる全山タテヤマスギ・ブナ・ミズナラなどの奥山自然林が売りに出たので、富山県のクマ保全のために押さえておきたいということで、当時のNPO法人奥山保全トラストが渡邉保護区として2006年に購入したものです。

 

2007年10月17 日に熊森本部が調査に入り、山が赤くなるほどのナラ枯れを見て、ショックを受けました。

この葉の赤さは、紅葉ではなくこの年のナラ枯れの赤です。

中央左の木は2007年以前に枯死済み。

 

2015年4月29日に熊森本部が再調査に入りました。

 トラスト地の入口の滝の前で記念撮影

トラスト地を入ってすぐ、ナラ枯れ枯死木を何本か発見。

指さしている方向にナラ枯れ枯死木が見える

この時は、本部職員2名が二日間かけてかなり奥地まで調査に入りました。

山中の立ち枯れたミズナラ

残雪が残る奥の国有林が見えるところまで登ると、素晴らしい滝がありました。三段滝。

 

  かなり奥まで調査した

                

2日間歩いたのですが、枯れたミズナラばかりで、生きたミズナラは全く見当たりませんでした。ミズナラの総枯れです。

 

ショックだったことに、2日間歩いてみても、爪痕などクマの生息痕跡は皆無でした。ミズナラが枯れてしまい、ブナは近年凶作続き、実っても温暖化で木が弱ってきているため、シイナかもしれません。この奥山に、もう食料はなく、クマは暮らしていないのでしょうか。大変な事態が起きていると思いました。

 

帰宅後、現地をグーグルアースで見て、すごいことに気づきました。解像度がアップした新しいグーグルアースでは、枯死木1本ずつがはっきりと読み取れるのです。グーグルアースでナラ枯れ調査ができるぞ!熊森本部調査研究部は色めきました。

いったいこのトラスト地で何本のミズナラが枯れたんだろう。

ミズナラの枯死木にピンを刺していきました。以下は、2016年6月3日に撮影されたグーグルアース写真を使用したピン刺しです。

 

ミズナラの枯死木が倒れているのまではっきりと見えます。ミズナラは、枯れてから数年で倒れます。2007年から9年たっていますから倒れていて当然です。熊森は、この時から、奥山調査にグーグルアースも使い始めたのです。

 

6月3日というこの季節、少し茶色っぽい緑色はブナです。きれいな緑色は、イタヤカエデなどのカエデ類です。白い点々は、白い花です。図ってみると40センチもの大きな花です。929メートルの標高では、ホオの花ではなくトチノキの花でしょう。枯れているのはミズナラです。

 

 

トラスト地内のミズナラの枯死木にピンを刺し続けていきました。

ピン刺しはまだ途中ですが、すでに2400本を超えています。

 

豊作並作不作凶作といろいろありますが、枯れていなければ、1本のミズナラはいったい平均どれくらいの実をつけていたのでしょうか。当協会が保護飼育している元野生グマは、冬ごもりに備えて秋に約400キロのドングリを食べて太ります。もし、一本のミズナラの実の総計がわかれば、全くアバウトですが、このトラスト地のミズナラが何頭のクマの命を支えていたのか計算できます。

 

熊森はあくまで現地調査を重視していますが、このように様々なGIS(地理情報システム)を使って、各地のクマ生息地の森林を、机上でも調査し続けています。皆さんもぜひやってみてください。

 

最近、熊森関係者以外の専門家の先生たちが、クマが生息地を拡大して人里に出て来るようになったと発表されていますが、奥山の本来のクマ生息地の餌調査や痕跡調査をされているのでしょうか。熊森は、ドーナツ化現象が起きているにすぎず、動物に起きた異常現象は、絶滅の前触れだととらえています。

 

全生物のために、次世代のために、クマの棲む森を保全しなければ、我が国は災害に強い森・水源の森を失うことになります。

熊森は、クマ生息地の全自治体の皆さんに、奥山再生と聖域化、毎年繰り返されるクマの大量の有害捕殺や錯誤捕獲殺処分を見直して、大型野生動物の頭数調整捕殺ではなく、棲み分けを復活していただきたいとお願いして回っています。

 

表土流出や山崩れが頻発して森再生が難しくなり、手遅れにきています。もっともっと多くの国民の皆さんに危機的な現状を知っていただき、共に声を上げてもらいたいです。みんなが声を上げないと世の中は変わりません。

 

ご入会受け付け 電話0798-22-4190でもご入会を受け付けています。(完)

20歳の私が京都のクマ生息地現場をのぞいてみて感じたこと

私は自然のことを学びたいので、少し前に、熊森協会の顧問である北海道釧路の安藤誠さんのところへ行ってきました。安藤さんは北海道でネイチャーガイドをされている写真家で、北海道の原生林、二次林、人工的に作られた自然など様々な現場を案内してくださいました。

 

(熊森本部から) 安藤誠顧問は、 4月8日木曜. NHKラジオ第1. ラジオ深夜便に出演されます!午前4時05分 ~

 

そして、この度、私の都合で4日間だけでしたが、日本熊森協会本部にインターン生として受け入れていただきました。

ここでもまた、原生林、二次林、人工林など様々な現場に連れて行っていただきました。とても充実した4日間でした。感謝しています。

 

今日は、熊森協会の顧問である昆虫研究者の主原憲司先生が京都府の佐々里峠や福井県境にある五波峠を案内してくださったときのことを報告させていただきます。

まず、京都市にお住いの主原先生の家を訪れました。家じゅうが本だらけでびっくりしました。

          一角だけでもすごい量の本

 

去年の京都府のブナは凶作でしたが、五波峠のブナ林に、去年の秋のクマ棚が残っていました。

クマ棚

 

あんな高いところまでクマが上がったんだとびっくりしました。少しはブナがなっていたのでしょうか。

登った時の爪痕はもう消えてしまったということで、残っていませんでした。

大きくてとても立派なブナの木がありました。

樹齢400年ぐらいでそろそろ寿命だそうです。

 太いブナの木

 

ブナの木は朽ちやすいということで、近くの朽ちたブナの木を触ると、本当にボロボロに崩れました。

 

木なのにボロボロに崩れたブナの朽木

 

このブナ林のどこがおかしいかわかりますか。

 下層植生がすべて消えたブナ林

 

そうです。ブナの木の下にあったササなどの下草が一切消えているのです。近年、ブナの実が成っても殻だけで中身が入っていないシイナが増えており、原因の一つが温暖化にあることを教えていただきました。この10年は、シイナどころか、ブナに花が付かなくなっており、シイナ以前の問題だそうです。また、地球温暖化によって植生の成長速度と虫の成長速度に差が生まれて、虫が食料を求めるタイミングに若葉や花はなく、植物が受精したいタイミングに虫がいない状況になっていることを知りました。その結果、昆虫の大量絶滅が続いているそうで、恐ろしくなってきました。昆虫がいないと、虫媒花は実りませんから、山から虫媒花の実りが消えてしまったそうです。

 

さらに、かつては豪雪によってシカの個体数が調整されていたようで、冬に飢え死にしたシカの死骸がよく折り重なっていたという谷を見せてもらいました。今では、温暖化でシカがあまり死ななくなり増加してブナ林の下草を食べてしまうこと、また積雪量の減少で、冬季、雪に埋まって守られていた下草がなくなってしまったこと、地面を抑える下草が無くなることが土壌表面の流失に繋がっていることなども教えていただきました。

山が地球温暖化の影響を受けている実態を確認することができました。

 

 

このような変化は、ふだんからずっと山を見て調べていないとわからないことです。現場に行き自分の目で見て自然から学び続けることがどれだけ重要であるかを感じました。

以前、大学の座学で2050年までに表土の90%が失われると習ったことがあって、何が原因なのか疑問でしたが、今回、現場を見て納得しました。

 

また、山を見るとき、歴史的な知識が必要なことも教わりました。

この山にかつてどのような人為攪乱がなされたか

 

手前の針葉樹で青々した部分が、この土地の元々の植生だそうです。奥の落葉広葉樹の多い山はかつての薪炭林で、原生的な森を皆伐してコナラに植え替えた山です。ところどころの緑色は、豪雪地帯に元々あった裏スギです。裏スギは、葉も枝も下方を向いており、雪を受け流します。裏スギは、伏状更新といって、垂れ下がった枝が雪によって地面に押さえつけられ、そこから根が出て次々と新しいスギの命が誕生していきます。気候と植物の生態が一体になっていることがわかり驚きました。

裏スギの伏状更新

 

今回、自然が持つエネルギーの素晴らしさも、味わいました。長時間移動で疲れていた体も、ブナ、ミズナラ林を歩き、きれいな空気の中で過ごすことでとても元気になりました。私は、行きより帰りの方が元気になっていました。

 

また、どんぐり運びの重要性・必要性も学びました。ドングリ運びだけでは山を守れませんが、緊急避難措置としては有効であることがわかりました。熊森協会の方々はこれからも山や野生動物たちを守るために様々な活動を展開されていくと思いますが、私も参加したり支援したりしていきたいです。

 

安藤さんに、本物を見ないとだめだ、本物に接することで嘘のない人間が育つと何回も言われましたが、今回のインターンでも、本の知識だけではなく、本物に次々と接していって学ぶことを教わりました。この日教わったことだけでも書ききれないほど多くのことを学びました。主原先生がお元気なうちに、もっともっと一緒に山を歩いてもらって、現場から学ぶ本物の勉強を教わりたいです。希望する大学生が数名集まれば、熊森本部として、そのような講座を夏にでもセットできるということでした。

 

主原先生と一緒に山に入って現場で自然のことを学びたい大学生がいたら、熊森本部に申し出てください。

 

今回、とても短いインターンでしたが、貴重な勉強ができました。主原先生と熊森協会の皆さんにはとても感謝しています。どうもありがとうございました。(完)

福井大学助教授のドングリ運び批判はどこがおかしかったのか②

保科氏のドングリ運び批判の問題点(前回からの続き)

 

②日本の森林生態系に対する歴史的知見の欠如

日本は歴史のある国です。目の前の自然を見る時、歴史的知見がなければ判断を誤ります。故に、森林生態学者は歴史書を読んでおく必要があるのです。

また、森林気候に恵まれた日本では、人為的な自然破壊があっても、時間的な経過により森林がそれなりに回復していくため、歴史的知見のない人は森林を見誤ります。

 

<自然撹乱の結果としての里山>

 

里山というと、一般に人々はクヌギやコナラの明るい雑木林である落葉広葉樹林を想像すると思います。しかし、気候帯から見ると、九州、四国、千葉あたりまでの里山の自然植生は暖温帯の自然植生である常緑の照葉樹林であったはずです。

 

地域によって照葉樹の種類は違いますが、大まかに言うと、九州はイチイガシ、関西はアラカシ、京都はコジイ、関東はシラカシ、日本海側は新潟あたりまでスダジイです。東北地方まで北上すると、里山の本来の自然は落葉広葉樹林です。照葉樹は海岸沿いに少しある程度です。太平洋側と日本海側では構成種や垂直分布が異なります。

 

現在、里山は放置されており、本来の自然植生に戻りつつありますが、都市近郊林であったところは、エネルギー革命が起こる前の1960年ごろまで落葉広葉樹を主とした雑木林でした。雑木林からの落ち葉、牛や馬の糞尿、藁などを混ぜて作る肥料は畑作に不可欠なものでした。このような農用林は短期で伐採される薪炭林と違って広々としたクヌギを中心とした林であり、様々な昆虫類や山野草が見られました。

 

古い本を読むと、これらのクヌギを初めとするブナ科の植物は、江戸時代、想像を絶するほど大量に海運によって全国に苗木が送られ植林されていたことがわかります。江戸時代の一大苗木生産地は摂津(兵庫県と大阪府が接する地域)でした。苗木は、近くの尼崎港まで運ばれ、そこから船で全国に送られていったのです。

 

              江戸時代の林産物の遠距離水上移動

「森林と文化」鳥羽正雄著 昭和18年発行より

 

長い年月の間に、私たちの祖先はより良い生活を求めて自然を大改変してきました。今、人々が自然と称している目の前にあるもののほとんど全てが、森林も含め、実は祖先がすでに自然生態系を撹乱し終わった後の結果なのです。もちろん、虫や細菌、ウィルスも一緒に移動したはずです。

 

ドングリの遺伝子が交雑しても、別に自然界には何ら問題はないと思われますが、西日本のブナやミズナラに関しては、長い間、高標高の冷温帯に閉じ込められてきた結果、固有の遺伝子を持つに至っていますので、これらのドングリは運んでいません。

 

熊森が運んだクヌギ、コナラ、アベマキ、マテバシイのドングリに関しては、移動させても問題はありません。

 

カシノナガキクイムシが拡散されたら大変なことになるという人もいますが、あの虫は、木に付く虫で、ドングリには付きません。

 

「自然生態系を撹乱する自然破壊行為である」と、熊森のどんぐり運びを批判される人は、祖先のしてきたことを全面否定されるのでしょうか。熊森が運んだドングリが、今以上、自然生態系を攪乱するとでもいうのでしょうか。

 

 

②<自然破壊の結果としての奥山>

 

祖先は、奥山までは自然改変できなかったはずだと思われる人もいると思います。しかし、戦後の林野庁の拡大造林政策で広大な奥山原生林が皆伐され、跡地はスギだけヒノキだけの単一人工林にされてしまいました。これらの造林は自然撹乱どころか、完全なる自然破壊です。

奥山はクマをはじめとする野生動物たちが暮らす原生的な巨木の森で、日本文明を支えてきた水源の森でもありました。奥山開発や奥山人工林化に伴う生態系破壊によって、今、全国各地で奥山からの湧水の量が目に見えて激減してきています。

 

戦後、皆伐された奥山原生林の面積は628万ヘクタールにも及び、青森から福島までの東北6県分の面積よりも広大です。

 

 

   自然が皆無の真っ暗な放置人工林内

 

戦後の国策により、原生的な森は、今や国土の7%までに激減してしまいました。わずかに残された奥山原生林は、今、人間活動による地球温暖化等が原因と思われるナラ枯れによって猛烈に枯れています。当然、野生動物たちはえさを求めて山から出て来ざるを得なくなりました。地元の方々は悲鳴を上げておられます。

 

森林総合研究所の研究員たちは、ナラ枯れの原因は里山を放置したからだと言っていますが、間違っています。ナラ枯れは日本海側のミズナラの下限域で始まり、ブナ帯で終息していますが、そこに至るまでの標高800メートルまでのミズナラは壊滅状態です。

 

余りにも多く造り過ぎた人工林、シカの増加、ナラ枯れ、ブナのシイナ化、昆虫の大量絶滅、送粉者である昆虫を失ったことによる液果の実りなし、ダムによるサケ科の魚の遡上不可など、人間活動によって引き起こされた森林破壊や環境破壊、森林荒廃によって、本州以南のクマ(ツキノワグマ)たちは、奥山にあった餌場を失ってしまったのです。

 

クマの絶滅という取り返しがつかない事態を避けるために、緊急避難措置として都会の公園のごみとして掃いて捨てられる運命にあるドングリを集めて運んだのが、熊森のドングリ運びです。餌を求め命を賭して山から出てきて人間に皆殺しにされているクマという動物の種の保全のために1頭でも2頭でも命を救おうとしたのです。

 

運んだドングリ種が発芽し成長するには、気温を初め、それなりの環境が必要です。2004年は周りの植生を見て、発芽成長が考えられないところに運びました。

しかし、もし芽が出て育っても、何の問題もありません。ドングリ類の木が大量枯死している今、気温が上昇した場所に新たな気候帯に合ったドングリ類の木が育つことはリスクではなく、むしろ喜ばしい事です。

 

2005年90%のミズナラが枯死した石川県白山

 

歴史的知見で日本の森林を見れる人なら、ドングリ運びを批判されたりしないはずです。

ちなみに森林生態学者でドングリ運びを批判された方は、これまでひとりもおられません。

 

保科氏のドングリ運び批判の3つ目の問題点は、実証なき憶測による批判であったことです。続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長野県小諸市が足くくり罠への錯誤捕獲の実態を発表 2020 日本哺乳類学会

日本に於けるシカの捕獲は、近年、<銃>より低価格で設置も簡単な<足くくりわな>を用いたものへと移行しています。(胴くくり罠は禁止されている)
報道されませんが、これによって膨大な数の錯誤捕獲(=捕獲目的でない動物が誤ってわなにかかること)が発生しています。
捕獲された野生動物たちは、くくり罠から逃れようと必死で暴れるため、足の脱臼や骨折、欠損などが生じたり、死亡したりします。放獣は危険を伴うため、「鳥獣保護管理法」の錯誤捕獲放獣は守られず、全国で殺処分が常態化しています。倫理上、生態系保全上、大問題です。
    再びくくりわなにかかってしまった3本足のカモシカ(竹下毅氏報告文より)
この問題に対して、日本で唯一、長野県小諸市が許可捕獲実施主体を猟友会から行政へと移行させ,錯誤捕獲されたカモシカの放獣作業を行政職員が行う体制とし、不明な点の多かった錯誤捕獲の実態を発表しました。
それによると、2016年4月から44ヵ月間に68頭(延べ170回)のカモシカが錯誤捕獲されています。
                            (竹下毅氏報告文より)
カモシカ以外にも、クマをはじめとする様々な野生動物たちが多数錯誤捕獲されて、重傷を負い死亡したり殺処分されたりしているはずです。水源の森を無料で造ってくれるこれらの野生動物を失うことは、私たち人間が水源の森を失うことにつながります。この問題は、今を生きるわたしたち大人に全責任があります。
小諸市をはじめ多くの自治体が大量の足くくり罠を動物の通り道に設置している背景には、地球温暖化などで増えたシカによる被害に悲鳴を上げている地元の実態があります。
日本は今、シカ被害問題に対して、捕殺のみで対応しています。明治になるまで1200年間殺生禁止令が出続けていた国の子孫として、懸賞金を出してでも、全国民が知恵を絞って<殺さない解決策>を考えるべきでしょう。

長野県小諸市の取り組みをもっと詳しく知りたい方は、小諸市産業振興部農林課の竹下毅氏が、2020 日本哺乳類学会で発表された以下の報告文をお読みください。

 

他の参考資料

・(長野県小諸市に於ける)「中型哺乳類における錯誤捕獲の現状と課題」

(カモシカ以外に錯誤捕獲されている野生動物たちの実態)

北海道釧路市:一般財団法人 前田一歩園

くくり罠を使用しないシカ捕獲に取り組んでおられます。

「錯誤捕獲問題から目をそらし続けることはできない」 

2020年日本哺乳類学会発表
山﨑 晃司(東京農業大学) 1,小坂井千夏 2,釣賀一二三 3,中川 恒祐 4,近藤 麻実

クマ類の保護及び管理に関するレポート(平成 26 年度版)

環境省 テーマ:クマ類の錯誤捕獲への対応

臨時HPのご案内と当面の諸連絡 注:ブログ以外の全ページ故障中

現在、日本熊森協会のホームページに不具合が生じており、トップページを初めどのページも更新不可能、閲覧不可能になっています。なぜか、ブログページのみ稼働できています。ご迷惑をおかけしております。

ご入会等は、当分の間、急遽、臨時に作成しました臨時の簡易版ホームページをご利用ください。

https://www.kumamoriweb.org/

ネットからのご入金は現在できなくなっています。

ご不便をおかけして誠に申し訳ございません。

修理が終わるまで、今しばらくお待ちください。

 

 

会員のみなさまに、当面の諸連絡
(1)環境省ウェブ会議傍聴のお知らせ
(委員は100%ワイルドライフマネジメント派、自然保護団体ゼロ)
いずれも、ユーチューブで傍聴してください。
①☆環境省_中央環境審議会自然環境部会第18回鳥獣の保護及び管理のあり方検討小委員会の開催について
日時 令和3年3月3日(水) 10:30~15:30
(12:00~13:00 休憩)
②☆環境省_中央環境審議会自然環境部会第24回野生生物小委員会の開催について
日時 令和3年3月5日(金)15:30~17:30
(2)くまもり オンラインシンポジウム
「クマとの共存のために、今、何が必要か」チラシのPDF

3月6日(土) 15:00~17:00 オンライン開催

【参加申し込み)】お名前、お住いの都道府県を記載の上、下記までメールをお送りください。 
E-mail:event@kumamori.org

2019年、2020年とクマの捕殺数は膨大で、2年連続で過去最多となりました。クマは一気に絶滅に向かっています。クマ出没や人身事故は連日ニュースになりましたが、クマの生息地の奥山が、放置人工林、ナラ枯れ、林道開設によるシカの下層植生の食害、地球温暖化による昆虫消滅などの人為的な原因により急速に劣化していることは、熊森以外に研究しているところがなく報道もされません。

クマなどの大型野生動物のつくる森は私たちの水源の森です。現状を知り、手遅れになる前に共存へ向けて動き出しませんか? 豊かな自然を守り、全ての生きものとの共存を願う方、ぜひ、ご参加ください!3蜜を避けて、どこかの会場やどなたかのご自宅に集まって視聴することも可能です。

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