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日本におけるワイルドライフ・マネジメント
- 2016-09-21 (水)
- くまもりNEWS
元々、ワイルドライフ・マネジメントというのは、1933年、狩猟動物の安定的な利用のためにアメリカで誕生した狩猟動物管理学の概念です。
しかし、1970年代になると、ディープエコロジーの考えが誕生し、自然の権利、動物の権利という新しい思想を生み出して、野生動物管理派と激しく対立することになり、今に至っています。
日本では、1970年代から1980年代にかけて、学会で野生動物管理の導入の必要性が提案され、研究者の間で「保護」か「管理」かの基本的な方向性や視点をめぐって論争が行われました。
そうこうするうち、1990年代になると、シカやイノシシなどの野生動物による農林業被害が深刻化するようになり、ワイルドライフ・マネジメントの導入が検討されるようになりました。
ワイルドライフ・マネジメントは、直訳すると、「野生動物管理」となりますが、日本語としては印象が悪いため、「野生動物保護管理」と和訳されました。本格的に、導入されたのは、1999年の「鳥獣保護法改正」で、この時、日本熊森協会は、ワイルドライフ・マネジメントの自然観や動物観は間違っているとして、導入を阻止しようと国会に通い続け、当時の国会議員たちから賛同者が相次ぎました。日本自然保護協会、WWFジャパン、日本野鳥の会、アライブなど、日本の自然保護団体は熊森と一致団結して総力をあげて、導入に反対しました。
しかし、教え子の学生たちの就職先がなくて困っていた生態学者たちと獣害対策に頭を悩ませていた環境庁が結びつき、無理やり「鳥獣保護法改正案」を通してしまいました。
しかし、ここで考えてみましょう。どんなに科学技術が発展しようとも、自然界は人間の頭で管理できるような単純なものではないという事実を。私たち日本人の祖先は、自然や生き物たちに畏敬の念を持ち、手を合わせて、かれらと棲み分けることで共存することに成功してきたという現実を。
我が国が、人間にはできもしないワイルドライフ・マネジメントを導入したことで、野生動物たちはみんな泣いています。みんな不幸になりました。生き物なのに物扱いされ、罠で捕獲され、麻酔をかけられ、歯を抜かれ、発信機を付けられ、いじくりまわされて生死をさまよい、研究者たちのおもちゃにされているのです。
推定生息数が何頭だとか、年平均増加率が何%だとか、個体数を調整する為に何頭殺せばいいとか、個体群生態学などという数合わせゲームに使われて、研究者たちに遊ばれているのです。
ほとんどの国民は、都会に住んでいるため、この弱い者いじめを知らず、知った人も見ないふりをしています。
いつか日本人は、深く反省せざるを得ない時が来るでしょう。自然を管理してやろうなどと考えた人間の恥ずべき傲慢さに。人間としての倫理観の喪失に。
ある生態学者に、日本で今、ワイルドライフ・マネジメントが花盛りなのをどう思うか聞いてみました。
「学会がアメリカ主導になっているんです。アメリカが国立公園で行っていることの模倣です。しかし、アメリカの国土は広くて、国立公園の組織も管理も日本と比べ物にならないほど整備されている。レンジャーも配置されている。条件が全然違います。
日本は、明治に無計画な狩猟を導入し、野生鳥獣が獲り尽くされそうになるまで激減しました。その結果、江戸時代と違って、明治になると、野生鳥獣による農業被害がなくなってしまったんです。戦後は、野生動物たちの生息地であった奥山を開発と人工林で大破壊してしまい、残された動物たちが山から出て来ざるをえないようになりました。
平成になって数が回復してきたシカ等による獣害が大きく発生し始め、地元が悲鳴を上げるようになってきました。日本は国土も狭く、農林漁業と野生鳥獣がひしめき合っている。歴史も社会構造も全然違う。国立公園の仕組みもアメリカと全く違う。レンジャーの整備もできていない。そんなところに、アメリカのやり方を持ってきてまねてもうまくいくはずがない。
導入したのは、研究者たちです。仕事が欲しかったのです。全てお金です。ワイルドライフ・マネジメントなど人間に不可能なのに、研究者は行政に、ワイルドライフ・マネジメントを導入したら、獣害問題が解決できるようにレクチャーするのです。自分たちの出番が必要なように見せかけてお金を得ようとしているのです。一時の流行なのです。いずれ必ず破綻しますよ。行政は、自分たちの犯してきた自然破壊という失敗を隠すために、ワイルドライフ・マネジメント派の研究者を利用しているだけなんです。
根本問題である、自然林復元をやらない限り、鳥獣被害問題は解決しませんよ」
みなさんはどう思われますか。
野生動物を殺さない解決法が、最も優れている
- 2016-09-20 (火)
- くまもりNEWS
日本熊森協会は、獣害問題に対して、
野生動物たちを殺すのではなく
被害防除と生息地の復元で解決を!
と訴えてきました。
●1999年、当時の環境庁が国会に提出した、個体数調整名目で野生動物の大量殺害を可能とする「鳥獣保護法改正案」(名前だけは美しい)に、日本熊森協会は猛烈に反対して、国会に乗り込みました。そして、多くの国会議員や多くの自然保護団体を巻き込み、否決前例のない参議院先議法案であったにもかかわらず、廃案寸前にまでみんなで国を追い込みました。
環境庁の面目は丸つぶれで、当時、環境庁はあわてふためきました。北海道大学から琉球大学までの国と繫がっている国立大学教授たち30名ぐらいによる、この法案成立の必要性を訴える文面を、環境委員会に属する国会議員の事務所にFAXで入れるなど、大変な苦労をして巻き返し、どうにか、この法案を成立させた経緯があります。(国家権力のすごさを思い知らされました)(教授たちの文面の内容は、よく見ると全員同じでしたが)
●環境省が出してきた外来種の根絶殺害をめざす「外来生物法」(2004年成立)の時も、日本熊森協会は生命尊厳の立場から、当初より激しく反対しました。輸入を止めるべきあり、国内ですでに繁殖してしまった外来種の根絶殺害は不可能なため無用の殺生になるとして、各地のシンポジウムで廃案を訴え、環境省を追い込みました。
(この時も、国家権力のすごさを思い知らされました)
●環境省が若者たちをハンターにしようとして、環境省HPに、日本民族は狩猟民族であるというページを作った時、熊森は、縄文以降は、日本民族は稲作漁撈民族であると訂正を求めました。そのため、HPのそのページが突然、閉鎖され、長い間<工事中>となっており、気が付くと消えていました。
●環境省が、鳥獣被害が増えたのは狩猟者が減ったからであると、1970年以降の狩猟者数の変化グラフを見せたとき、もっと以前からの狩猟者数の変化グラフを見せるべきである。狩猟者数の減少と鳥獣被害の増大は関係ないと、説明の嘘を指摘してしまいました。
2013年8月の栃木県宇都宮大学で実施された環境省主催:「狩猟者養成フォーラム」では、栃木県支部員のみなさんと共に、開催反対運動を展開し、マスコミでも大きく取り上げられました。以下、その時の写真や資料。
環境省主催 ハンター養成チラシ
会場前で、整然と開催反対を訴える栃木県会員たち
栃木県の全マスコミが熊森の栃木県庁での記者会見を載せて、わたしたちの主張を大きく取り上げてくださいました。
A紙 B紙
私たちは、環境省や都道府県行政のみなさんと協力して、この国の自然や生き物たちを守りたいと思っています。
しかし、生き物たちを殺して解決するやり方は、必ず失敗するとわかっているので、申し訳ございませんが、この国の為に、今後も、正しい解決法をどこまでも訴えていきます。
嘘やごまかしはイヤなので、どこまでも真実を求めてまいります。
兵庫県森林動物研究センター10周年事業とNHK
- 2016-09-19 (月)
- くまもりNEWS
9月17日13時から、兵庫県三田市の兵庫県立人と自然の博物館4階ひとはくサロンで、兵庫県森林動物研究センター10周年事業として、企画展特別セミナー「ひょうごのツキノワグマ 保護管理のあゆみとこれから」が催され、約50名の県民が参加しました。
第1部
①過去から現在までのツキノワグマの分布 森光氏
②ドングリの豊凶とツキノワグマの人里への出没 藤木氏
③行動と繁殖 横山氏
④何頭いるか 高木氏
第2部
①兵庫県に於ける保護管理の方針と現場での対応 広瀬氏
②豊岡市鳥獣対策員 岡居氏(ハンター)
質問時間なし
発表してくださったみなさん、ありがとうございました。
しかし、熊森は、みなさんの発表で、いつもどうしても腑に落ちない部分があります。
●クマ生息地の荒廃や、劣化した自然環境の話が全く出ない
どうしてクマたちの本来の生息地の写真や話が出ないのでしょうか。生息地の自然環境の変化を抜きにして、クマ問題は語れないと思います。
みなさんの発表には、今回も、人工林のジの字も自然林劣化のレの字も出ませんでした。奥山にどんどん道路や砂防ダムができているのに、開発のカの字も出ませんでした。
生息地は内部が砂漠化した放置人工林でいっぱいですよ。残された自然林は、内部が公園状態で、下層植生が消えており、臆病者のクマが棲めるようなところでは、もはやありませんよ。
兵庫のクマたちの生息地の自然環境について、兵庫県森林動物研究センター研究部長の横山真弓さんはいつも、「兵庫の森は今絶好調、豊かな自然にめぐまれている」と言われますが、クマたちが聞けば泣くと思います。兵庫県立大学の研究者たちは、みなさんとても頭のいい方なので、クマ生息地の荒廃や劣化に気づかないはずはありません。
研究者として、生息環境の問題については触れるなと、環境省や林野庁から注意されているのでしょうか。理解に苦しみます。
地元の人達はみんな知っていますよ。戦後の森林政策の失敗で山にえさがなくなったから、動物たちが山から出て来るようになったことを。
●どうしてクマたちの心がわかってやれないのでしょうか
山の実り大凶作年に、夜、民家の柿の木に親子で登っていたクマの映像を2回出されましたね。突然強烈なサーチライトで照らされても、母熊は逃げずに木の上でじっとしており、何もわからない子熊は、母熊の背中に乗ったり降りたりしていました。これは、人間を恐れなくなったクマとみなしていいのでしょうか。
私たちは、この母熊は、心臓が爆発するほど怖かったのだけれど、子供がいるので逃げるに逃げられなかったんだと思います。
同じ場面を見ても、人間側からだけ見るのと、クマの立場にも立って見るのとでは、解釈が180度反対になります。
前から不思議に思っているのですが、熊森本部がある兵庫県では、県立大学や森林動物研究センターに送り込まれてくる研究者たちは、なぜかみなさんワイルドライフ・マネジメント派で狩猟大好きという方が多いようです。
この日発表された皆さんも、狩猟再開を進めたいと思っておられるのでしょうか。
もしそうなら、ライフル銃を持った人間に追い回される恐怖や、弾が体にあたったときの痛さを想像してみてください。人間にも恐怖や痛さがありますが、動物たちも人間と同じように、恐怖、痛み、悲しみ、生への欲求があります。もし自分がハンターの餌食にされて、何もしていないのに銃で撃たれたらどう思うだろうかと想像してみてください。
●クマ数が20年で10倍になったら、誰でも気づきます
みなさんは大学で専門的に勉強したエリートでなければわからないむずかしい計算ばかりされていますが、猟友会の方に一度アンケートを取ってみられたらどうでしょうか。クマの痕跡やフンの数が20年で10倍になったら、どんな鈍感な人でも、計算などしなくても気づきますよ。
今回、最後に猟友会の方が、兵庫のクマが今940頭いるのなら、前から940頭いたのだと思うと言われたのは至言です。
熊森協会が出来て20年です。20年前と比べて、本当に熊棚を見かけなくなったし、クマが木に登った爪痕を見なくなりました。糞も見つけられなくなりました。クマが10倍に増えたなどあり得ません。
コンピューターで何日もかけて計算するより、山を歩いている人間の感覚の方が、ずっと正確だろうと私たちは思います。
上写真は、当日の研究者のパワーポイント発表
上図には、1996年の兵庫県クマの生息数は100頭以下で、20頭~50頭と書かれています。
兵庫県は、これを提示することにより、その後20年間で県内のクマが10倍に爆発増加して、狩猟を再開しなければならないほどの異常事態に陥っていることを強調したかったのでしょうが、反対に、墓穴を掘ったと思います。
日本のツキノワグマ研究の第一人者に、20年で10倍に増加の兵庫県のクマ数変化グラフを見せると、即座に一言、「あり得ないよ」と言われました。
県内の20年以上山に入っておられる猟友会のみなさんに、このグラフを見せて下さい。みんな笑いだすのではないでしょうか。「ありえないよ」って。日本の人口は、現在1億2千万強ですが、20年後に12億になったという割合です。そんなことになれば、誰でも増えたと気づきます。実際は、山中のクマの痕跡は、見つけられないほど、ますます減ってきているのです。
さあ、兵庫県は、今度はどんな手で、すでに発表してしまった<20年で10倍増加>の、もみ消しをしていくのでしょうか。
ちなみに、940頭の推定生息数を発表した研究者は、現在、さっさと県職員を辞めて、野生動物捕獲会社を設立し、その社長に収まっています。
当日会場に、NHKのカメラマンと記者が来られていたので、本日の行政発表だけを一方的に流さないようにお願いしておきました。しかし、NHKニュースを見られた人から、行政発表だけを一方的に流していたという報告を受けました。残念です。一方的な報道では、国民が判断を誤ってしまいます。マスコミの責任は重大です。
9月12日 貴重なブナ林が枯れている?ウエツキブナハムシ
- 2016-09-18 (日)
- くまもりNEWS
岩手県の会員が岩手県に支部を作りたいと本部を訪問されたので、豊かな巨木の森を見ておいていただこうと、阪神間から一番近い岡山県の若杉天然林86ヘクタールをご案内しました。
人工林地帯にぽつんと残された原生的な奇蹟の森です。
森に入ってみてびっくり!
美しかったブナ林が、猛烈に奥まで枯れているのです!
枯れたように見えるブナの巨木群 若杉天然林2016,9,12
葉が完全に落ちてしまっているのも、たくさんありました。
そういえば、3~4年前に、山形県支部長から、見渡す限り、ミズナラはナラ枯れ、ブナはブナ枯れ、もう今年の山には動物たちの餌が何もないと報告を受けていたのを思いだしました。
ここのブナは巨木で、葉が高い所にあり、何故枯れたのか全く見えません。
地面に落ちている今年のブナの実も皆無でした。
この森は消えてしまうのだろうか。
不安な思いで帰りかけると、下から西粟倉村の役場の方がNHKテレビのカメラマンと一緒に上がってこられました。
「ブナが大量に枯れていますよ」と訴えると、「ウエツキブナハムシです。枯れたように見えますが、ナラ枯れと違って、この虫は、葉だけ食べて葉脈は食べないので、木は枯れません」と教えてくださいました。これが噂に聞くウエツキブナハムシか。枯れないのだなと、一応ほっとしました。
どう見ても木ごと枯れているように見えますが、3年ぐらいでよみがえるそうです。兵庫県に広がれば困るなと思いましたが、まわりはスギの人工林ばかりですから、広がらないかもしれません。これからも観察していきます。
ちなみに、NHKはブナ枯れを撮影に来られたのかと思ったら、全然関係なくて、ふるさと納税の番組を作っているところだと言われていました。
この森には、ミズナラもたくさんありますが、ナラ枯れで死なないように、役場が毎年何百万円か使ってミズナラの木に1本1本薬剤を注入して、ナラ枯れを防いでおられるのだそうです。ここのミズナラは200年から300年たっていますから、その間起きなかったナラ枯れという異変が今起きていることがわかります。何という時代なんだ!
役場のみなさん、いろいろと教えてくださってありがとうございました。
植樹地調査 兵庫県豊岡市・宍粟市
- 2016-09-18 (日)
- くまもりNEWS
くまもり植樹地の実り調査に行きました。
兵庫県豊岡市の植樹地です。
9月3日 カキ
うれしいことに、2002年に植樹した柿に3年ぶりにクマが来ていました。まだ実が青いうちから食べてしまったようです。これだけ枝を折られたら、次回実を付けるのはまた3年後になると思われます。
クリ
2012年に植樹したクリの大苗に、たくさん実がついていました。なぜか、クリはまだクマが食べていませんでした。
以下は、いずれも、スギの皆伐跡地に、大阪のライオンズクラブさんが苗木を植えてくださった植樹地です。
2012年植樹地 兵庫県宍粟市
シカよけ網の中では、小鳥やテンなどが種を運んできたと思われる芽生えがたくさん出てきて、とてもにぎやかになってきました。研究者に、何の芽か、ひとつずつチェックしていただきました。実に種類が多くてびっくりするほどです。そのうちまとめようと思います。本数で多いのは、サルトリイバラでした。
残念ながら、たくさん植えた甘柿の木は、上がほとんどが枯れていました。この地は気温が低すぎて、甘柿は育たないことがわかりました。
不思議なことに、根元の柿の葉だけは元気です。これは、甘柿の苗木は、渋柿の台に接ぎ木したしたものであり、渋柿は寒さに強いから、その部分だけが生き残っているのだそうです。
2014年植樹
上の写真は、少し離れた所の植樹地です。パッチディフェンスの網を外して中に入ろうとしましたが、植えた覚えもないクマイチゴなどのイバラ類がびっしり生えており、トゲが服に引っかかって入れません。もったいないのですが、クマイチゴをかなり除伐しました。この場所では、自然に生えた草や木も多かったのですが、ヤマグワやサクラ、クルミなど、植樹した木も良く育っていました。
同じような場所に植えたのに、苗木の成長が2012年分と、全く違います。植えてみなければわからないと思いました。何がどう育っているのか。こちらの植樹地もまとめてみたいです。
2014年植樹
この日の調査は、木に名札を付けて終わりました。写真の右端にある1本切らずに残しておいたスギの木に、何度もムササビが来た跡がありました。1本残しておいてよかったです。夜の森は夜行性動物の出番でおもしろいそうですが、少し怖いです。
この日、山で、かわいそうに羽が1枚ボロボロになった大きなガを見つけました。
幼虫の時、落葉広葉樹の葉を食べるヤママユガ(天蚕)です。このガの成虫には口が無くて、成虫になってからは何も食べないそうです。この蚕から取れる絹糸は、普通の絹糸の100倍も高価なのだそうです。
クマの国でクマを捕殺する理不尽な行政に抗議中
- 2016-09-03 (土)
- くまもりNEWS
くまもりはどうしてクマだけ守るのかときかれました。
クマだけ守りたい人などいないでしょう。
クマ、サル、シカ、イノシシ・・・人間に生息地を破壊された挙句、理不尽にも大量捕殺されていく絶対的な弱者たちのために声を上げようと私たちは20年前に決意しました。不幸な犬や猫も気になります。子どもなど、弱い立場の人間のことも気になります。すべて原因を作っているのは強い立場にいる人間です。助けられるときには、私たちも動きます。
しかし、何もかもになど、とても手が回りません。その上、少数であっても、すでに彼らを守ろうと取り組んでくださっている団体がいくつかあります。心強いし、感謝でいっぱいです。
一方、有害獣というレッテルを張られた野生動物たちを守ろうという団体はありません。だから私たちが声を上げたのです。しかも、私たちは、野生動物を守らないと、人間もやがて滅びることになるという自然界の仕組みを知っています。熊森運動は、人間のためでもあるのです。
シンボルにしているクマだけにでも声を上げようと取り組んでいますが、余りにも毎日毎日理不尽な捕殺が多いので、クマだけであってもとても手が回りきらないというのが現状です。特に、クマは、マスコミの「人食いグマ誕生」や、「人殺しグマ」等、おもしろおかしくセンセーショナルな報道によって、一方的に不利な、事実とは全く違う誤った姿を国民に植え付けられてしまっています。マスコミのふざけた報道が、クマ捕殺を促進していると言ってもいいでしょう。
仏教などの影響で、生き物たちをあんなに大事にしてきた日本人だったのに、いつから生き物たちを平気で苦しめ、究極のいじめである理不尽な殺害までするようになったのでしょうか。醜い限りです。
〇埼玉県秩父市での、クマ捕殺
事件概要:こちらをクリック
グーグルアースで捕殺された現地を確認して驚きました。クマ生息地のど真ん中に、人間がぽつんと建てた施設で起きた事件でした。ここは、クマの国です。
<熊森本部が、秩父市担当者に電話>
行政:8月29日に、この施設のごみ集積場にて、クマが生ごみをあさった形跡があった。この時期は多くの子供たちが宿泊にやってくる。施設のほうから申請があって、8月30日に有害捕獲用の罠を設置した。設置前に、クマの追い払いや防除は行っていない。捕獲後も、電気柵を設置したりなどの防除はしていない。
熊森:人間がクマたちが生息する山中に勝手に施設(埼玉県立大滝げんきプラザ)を建てておいて、生ごみの後始末もせず、クマが生ごみに来たからと言って捕獲して殺処分するのはおかしい。人間として、まず、生ごみを屋外に置かないようにし、クマが来ないように追い払いをするなど、殺さない被害防除努力をするべきではないのか。子どもたちの教育の場で、こんな教育上悪いことをしていいのか。
〇群馬県吾妻郡長野原町での、クマと人の格闘とクマ捕殺用檻設置
事件概要:こちらをクリック
<熊森本部が、長野原町の担当者に電話>
行政:今回の事件でケガをした人は、音のするものを持って山に入っていなかった。渓流釣り現場は、周囲に背丈の高い草が生えている。人が川の中に入って釣りをしていたところ、前方の繁みからクマが突然現れ、腕や足をかまれたりひっかかれたりした。本日、現場に有害捕獲の罠を設置した。捕獲したら殺処分する。
熊森:ヒトとクマ、双方がけがをした不幸な事件であった。人間が怖いクマは、まさかそこに人間がいるなどとは思ってもみなかったので、いきなり出会って恐怖のあまりこのような行動に出た。島根県でも、今年6月15日に渓流釣りの男性がクマにかまれたりひっかかれたりする同様の事件があったが、島根県は、事故現場付近の草を刈り払いして、クマの潜み場をなくした。今回事件が起きた場所は、クマの国だ。まず、すべきは、注意喚起看板の設置や事故が起きた場所の潜み場をなくす等、新たな事件が起きないように対処することではないのか。
WWFJが紹介する可能な限り殺さない島根県のすばらしいクマ対応を参考に
- 2016-08-25 (木)
- くまもりNEWS
以前、兵庫県は、自他ともに認める日本一のクマ保護県でしたが、残念ながら、今や、すっかり変わってしまいました。
名前だけは、平成28年度も、「兵庫県クマ保護計画」ですが、中身は、「140頭の殺害計画」です。
今からしようとしていることがわかるように、「兵庫県クマ大量殺害計画」という名にすべきです。
さて、WWFJがHPで紹介してくださっている島根県のすばらしい取り組みから、私たちは多くを学ぶことができます。
まだの方は、是非、読んでみてください。
あたりまえのことですが、山になら、クマ・サル・シカ・イノシシ、何頭いたっていいのです。
以下、WWFJのHPより
- クマが出た!その時、住民の皆さんは…? 島根県匹見町の報告より(2014年7月)
全国的に、クマの出没が懸念されている2014年の秋。クマを殺さずに対応できないのか? という意見が強くある一方で、クマのすむ山林に隣接した地域では、・・・
- 進行中!クマとの共存めざす島根県のモデル柿園(2014年11月)
WWFジャパンと島根県では、ツキノワグマとの共存をめざしたプロジェクトを展開しています。島根県西部に位置する田橋町と横山町は、柿の栽培が盛んな地域です…
- 島根・匹見町でのクマ・プロジェクト、「住民参加」で電気柵のメンテナンス!(2015年6月)
「島根県のクマ聖地」と呼ばれるほど、ツキノワグマの生息密度が高く、クマと人間との距離が近い匹見町。ここでは、2000年から「広域電気柵」の設置が始まり…
- 開催報告:日本のクマプロジェクト最終報告セミナー(2016年7月)
ツキノワグマ個体群の絶滅が心配される四国と、クマの生息数・生息域ともに回復傾向にあり、地域住民の方とのトラブルが問題となっている島根県。この2つの
他にもまだまだありますが、後はWWFJのHPからごらんになってください。
(熊森から)
兵庫県の井戸知事にも、島根県のこの取り組みを届けたいと思います。井戸知事は、頭が良くて優しい方ですから、こんな取り組みがあることを知られたら、こっちの取り組みの方がいいなとわかっていただけるのではないでしょうか。兵庫県でクマ狩猟を再開するかしないか、最終的に決めるのは知事さんだそうです。
それにしても、WWFJさんのまとめ方はすばらしいです。完全に脱帽です。
8月18日 兵庫県クマ狩猟再開を止める署名を開始
- 2016-08-24 (水)
- くまもりNEWS
兵庫県のクマ狩猟再開を止めることは、他府県のクマ保護体制・野生動物保護体制・自然保護体制にも、良い影響を与えます。
やさしい文明が一番優れている。
そもそも自然界は超複雑な世界であり、どんなに科学技術が発達しようとも、人間が自然を管理したり思い通りの数に野生動物の頭数を調整したりできるような世界ではありません。人間が手を入れれば入れるほど、絶妙のバランスが崩れていくのです。
1999年に、熊森はもちろん、日本中の全自然保護団体が初めて一致団結して、猛烈に導入に反対したのに、鳥獣保護法が改悪され、ワイルドライフマネジメントが我が国に導入され(当時環境庁)ました。あの時から、この国は自然保護に関しては、狂気の道を歩み出したのです。このことは全国民に伝えておきたいことです。
自然や生き物たちと十分に触れ合うことなく大人になったエリートのみなさんが、自然が何なのか理解できず、肩書に物を言わせて、ワイルドライフマネジメント(個体数調整殺害)という自然界を冒涜する誤った恐ろしい思想を我が国に持ち込んだと私たち熊森は感じています。この方向で進むと、日本国が滅びます。
クマを初めとする野生動物たちが集落に出て来て、地元の人達は本当に困っておられますが、追い払い、被害防除、生息地復元による棲み分けの復活しか、正しい解決法はありません。
みなさん、ぜひ、兵庫県のクマ狩猟再開反対の署名にご協力ください!
【署名活動開始!】
ネット署名はChange.org
ネット署名リンク先 より署名できるようになっています。
(ネット署名をした方の、最新5人分だけお名前と都道府県名がホームページに表示されます。またコメントをするとずっとお名前が表示されます。)
(FaceBookの非会員の方は、氏名などを入力して赤い「賛同する」というボタンを押してください)
(FBの会員の方は、画面下の赤い「宛先への要望を読む」をクリックして、「はい」を押してください。またキャンペーンのシェアをお願いします。)
また、紙の署名用紙で提出される方は、こちらからダウンロードしてください。
AdbeReaderが必要です。
お手数ですが署名後、9月末必着で本部事務局まで郵送でお送りください。
みなさんのご協力をお願いします。
兵庫県知事 井戸敏三様
兵庫県クマ狩猟再開の中止を求める緊急署名
日本熊森協会
●環境破壊により逃げ場のないクマを撃つべきではない
●クマ数爆発増加の算出法に重大疑惑あり
●狩猟をしなくても、追い払い、被害防除、有害駆除で解決できる
8月18日 兵庫県庁で記者会見 その1
- 2016-08-24 (水)
- くまもりNEWS
14時から兵庫県庁記者クラブで、熊森本部が記者会見を行いました。
兵庫県庁記者クラブ室にて
クマたちの逃げ場も隠れ場も奪っておいて、絶滅危惧種のクマ狩猟を再開とは?
最初に森山会長が挨拶しました。
全国民の問題です
「全国で起きている大型野生動物の人里出現は、戦後の奥山開発と拡大造林という国策の失敗によってもたらされたもので、◎根本解決は奥山復元・再生しかないのに、なぜか環境省の考えた解決法は、若者たちを狩猟者にして、弱者である×野生動物を大量殺害することです。(手つかずの自然が最も豊かであり、それを守るのが環境省の使命のはずですが)
ほとんどの国民は、まさか環境省が、<「すごいアウトドア」―若者よ、ハンターになれ―>として、若者にライフル銃を持たせるこんなキャンペーンを全国で展開しているなどとは、夢にも思っていないはずです。
バックに、日本への銃販路を広げたいと願う全米ライフル協会などの圧力があるという指摘もありますが、定かではありません。
環境省指導 「若者よハンターになれ、日本人は狩猟民族になって野生肉を食べよ」
今回の兵庫県クマ狩猟再開問題は、県が、国の方針に従ったものと考えられますが、私たちは、こんな解決法を採用していいのでしょうか。
まず、人が自らが引き起こしたことに責任を取らないで、被害者である物言えぬ動物たちを殺して終わろうとしていますが、これでは人間がダメになってしまいます。(他の野生動物問題にも、同様のことが言えます)
次に、せっかくクマたち野生動物が、山から命がけでどんどん出て来て水源の森の荒廃を私たち人間に知らせてくれているのに、感謝もせず殺して終わらせてしまうなら、私たちは水源の森を失うまで気づかなくなるでしょう。
生き物たちの立場を思いやって自然と共存してきた祖先の生命尊重文明を捨て去り、人間のことしか考えない西洋近代型自然破壊文明に我が国が進んでいくのかどうかが問われています。
今回の兵庫県のクマ狩猟再開問題は、兵庫県だけの問題ではなく、明日はわが都府県、心ある国民のみなさんに、これでいいのかと考えていただきたいです。」
8月21日 第21回 本部:くまもり原生林ツアー
- 2016-08-25 (木)
- くまもりNEWS
原因不明、年々劣化してゆく原生林に、スタッフ一同不安
今年は、29名の方が参加され、健脚コース2班、ゆっくりコース2班の計4班に分かれて山に入っていただきました。
今年も、地元高校の先生と生徒会長や生徒会役員ら計4人が来てくださり、各班に入ってガイド役として地元のお話などしてくれました。参加者のみなさんからも、大好評でした。地元高校には毎年、お世話になっており、感謝です。
<高校生徒会役員がたたら製鉄の説明>
今年は子どもたちの参加が多かったので、親子班をつくり、ネイチャービンゴをしました。
沢の水温を測ったり、足跡クイズをしたりと、森の中でとても楽しい時間を過ごしていただけたと思います。
子どもたちはシカの足跡や虫など、子供目線で次々と発見してくれます。一緒に参加された保護者の皆さんは、子どもたちのおかげで、大人だけだと気づかなかったいろいろなものを見ることができ、とても楽しんでおられました。
<沢の水温は何度でしょう?>
これまで沢の水は摂氏17度でしたが、今年はどこで何度測ってみても摂氏18度です。湧き水の温度が1度も上がるということは、大変なことで、一体地球に何が起きているのか、スタッフとしては、内心、恐ろしくなりました。
健脚コースでは、動植物や自然のお話をしながら、瑞々しい原生林の中を歩いていただきました。
「いろいろ教えてもらって勉強になった」
「森に入った途端、涼しさを感じた」
「沢の音を聞きながら歩けて気持ち良かった」など、参加されたみなさんは、原生林を満喫しておられました。
木々の葉や下草でびっしり詰まっていた 現在の同じ場所 「野鳥説明看板」
豊かだったころの原生林1999年7月26日 2015年8月7日
くまもりは、ここ、岡山県若杉天然林で、20年間このようなツアーを毎年夏に実施してきましたが、20年前と比べると、森が激変しています。年々森が目に見えて劣化してくるのです。特別保護地区ではありますが、生き物がどんどん減ってきたと感じます。下層植生が減退し、動物の息吹も感じられなくなってきました。当初あったクマの生息痕跡は、もう大分前からゼロです。
何か冷温帯の森に大変な事が起きているのではないでしょうか。ブナの大木が3本そろって枯れていた場所もありました。こんな光景を見たのは初めてです。
とはいっても、若杉天然林の中は、ササの藪から頭を出して生えているたくさんの美しいブナの木々を見ることができます。コケに覆われた岩場が続いており、保水力豊かな原生林ならではの森を体感することができます。初めて参加してくださったみなさんは、感激されていました。
これからどうなって行くのかな?日本の森、世界の森・・・