くまもりHOMEへ

ホーム > アーカイブ > 2012-10-04

2012-10-04

マテバシイのドングリが落ち始める

9月末から、落下第1号、待ちに待ったマテバシイのドングリがやっと落ち始めました。このドングリの原産地は、九州南部や南西諸島と言われています。しかし、今では東京や千葉の野山でもふつうに見られます。マテバシイは人間が食べてもおいしくて食料になりますから、きっと昔、祖先が各地に植えてまわったのでしょう。私たちもフライパンで炒って食べてみました。ピーナツのようにおいしかったです。このように、わたしたちが自然だと信じているものでも、すでに人間によって攪乱され終わった生態系であることが多いのです。

 

マテバシイのドングリは、砲弾のような形をしています。受粉してから、2年目に成熟します。当協会はこれら都会の公園で集めたドングリをうまく使って、今年、食料がなく、おなかをすかせて山から出て来ては連日大量に殺されているクマたちを1頭でも救おうと、あの手この手で取り組んでいます。当協会は当然ながら、クマたちの棲む豊かな森を復元・再生する活動に全力を挙げて取り組んでいるのですが、こちらの方は結果が出るまでには長い年月がかかります。(今日も、奥山人工林の強度間伐に、スタッフたちが出かけています)

山の凶作年、飢えて山から出て来ては目の前で人間に殺されていくクマたちを助けていかないと、クマの絶滅は止められません。

 

ドングリはとてもかびやすいので、拾った後は、ビニール袋からすぐに出して、段ボールなど紙の箱や袋、網目の物に入れて保管する必要があります。下の写真が、マテバシイです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

ワシントン条約とクマ(トラフィックイーストアジアジャパン HPより)

 

1992年から、クマ科はすべての種がワシントン条約の附属書に掲載されています。
ツキノワグマは附属書 I 。ヒグマはブータン、中国、メキシコ、モンゴルの個体群と、亜種であるヒマラヤグマが附属書 I で、ほかは附属書 II に掲載されています。
生きたものはもちろんのこと、毛皮、クマノイ、などの体の部分やそこからできる製品など、いかなる部分の国際取引も、なんらかの形でワシントン条約の規制の対象になります。

 

<熊森から>

ワシントン条約がクマを取り上げたのは、人間によって、地球規模でクマが絶滅しかけているからです。人間側が、クマたちにとびきりのやさしい気持ちを持ち、生きとし生ける者の仲間としてクマたちと共にこの地球上で共存しようと決意しない限り、絶滅は止められないでしょう。クマたちを失った時、わたしたちは保水力豊かな最高の森を失うのです。

栃木県内のある新聞の、県内の今年のブナ・ミズナラといったクマの食糧は比較的多いという記述に、 熊森会員が疑問

栃木県会員から、記述に疑問があるとして、10月3日付けの栃木県内某新聞記事のFAXが送られてきました。

<この新聞記事の疑問に思った部分>

今年、栃木県でのクマ出没が多発しているが(すでに捕獲46頭)、宇都宮大学の教授の発表では、今年はブナやミズナラといった食糧は比較的多く、出没増加の原因ははっきりしないという。・・・

 

さっそく、会員が、新聞社に電話したところ、この新聞社では、記者につないでくださり、記者さんと色々話せてとてもよかったということでした。

 

<熊森本部からも、栃木県庁担当者にに確認>

栃木県庁

●高原地域のブナ・イヌブナは宇都宮大学に調査を依頼した→並作(枝についている数を見ただけで、シイナ率までは見ていない)

 

●それ以外の山については、栃木県庁が調査

ミズナラ・コナラ→不作

 

栃木県内のクマ推定生息数 85頭~323頭、今年すでに猟友会には、狩猟自粛を通達済み

捕獲したクマを放獣してあげたいが、放獣させてくれる所がないので殺処分しているということでした。

 

新聞記者も、県庁担当者も、大変丁寧に誠実に対応してくださいました。こんな人たちが増えてほしいです。若い記者さんは、もっとしっかり取材して記事を書くべきだったと、反省されていました。

 

この国をいい国にしたければ、気づいた国民が、もっともっと勇気をもって、いろんなところに声をあげていくべきだと思います。

10月2日 日経夕刊記事に、1990年代前半の兵庫県クマ推定生息数は350頭程度とのミス?記述

日本経済新聞「クマ出没 ご用心」の記事に、上記見出し記述がありました。あり得ない数字であるため、新聞社に電話をして、この記事を書いた記者と電話でお話させていただきたい旨、伝えました。ところが、社の規定により、記者の名前を知らせたり、電話をつないだりはできないことになっている、ということでした。最近このような新聞社が増えています。これでは、記事のミスを直せませんし、記者も成長できないのではないでしょうか。マスコミ界に、反省を促したいと思います。

 

兵庫県森林動物研究センターに電話して、係官に確認したところ、1990年代前半の兵庫県のクマ推定生息数は、75頭~85頭であり、兵庫県職員が350頭と答えるはずがないし、そんな数は聞いたこともない、ということでした。

 

どうしたら日経新聞社に訂正していただけるのでしょうか。新聞記事の社会に対する影響は限りなく大です。

 

いつも思うのですが、最近の新聞は以前と違って、ほとんどが、行政発表の垂れ流しばかりです。(だからどの新聞を読んでも、内容はほとんど同じ。全く読みごたえがありません)

行政はこう言っているが、○○はこう言っているというような、多角的な記事がないのです。これでは読者が、どちらの言い分が正しいのだろうかと考えたり判断したりすることができなくなって、1億2千何百万人、権力を持った者の総ロボット化に進むのではないでしょうか。

 

今、ネット上で蔓延している、匿名による誹謗、中傷、虚偽、捏造などは、人として許されるものではありませんが、きちんと名乗った議論は、絶対に、社会には必要です。

兵庫県にいったい何頭のクマがいるのか  マルコフ連鎖モンテカルロ法は使えるのか  兵庫県、クマ推定生息数を一挙に下方修正

兵庫県にいったい何頭のクマが棲んでいるのか。人間の国勢調査のようなことができればわかると思います。しかし、クマには不可能です。

兵庫大学の研究者が、2011年に、神戸市で開かれたシンポジウムで、クマ目撃数とクマ捕獲数を2大因子(パラメーター)として、階層ベイズモデルを構築し、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて、県内クマ推定生息数を算出したと発表されました。

 

その結果は、90%信頼限界では、300頭~1650頭で、中央値は650頭ということでした。

 

兵庫県で1992年は60頭絶滅寸前と言われていたクマが、650頭に増えている?!

 

650頭、この数が独り歩きをし始めました。

 

初めてこの発表を聞いたとき、そんなことは絶対にありえないと私たちは確信を持って言えました。なぜなら、私たちはクマ生息地を歩き続けて痕跡を見続けてきたからです。10倍以上にクマが増えたなら、爪痕、フンなど、いくら鈍感な人でも、絶対にクマの異常増加に気づきます。

 

むずかしい数式を使って、何日もコンピューターを操作しながら計算した結果だから間違いないと、行政の方はこの数を採用されましたが、最先端の科学的技法を使って出した結論より、人間の感じることの方が正確なんだなあと、この時、つくづく思いました。しかし、大学の先生が発表すると、肩書社会の日本では、マスコミをはじめ一般国民も、ほとんど全員がそちらを信じてしまいます。しかも、この研究発表では、クマの年間増加率が、平均22.3%となっており、年によっては30%にも達しています。クマの年間増加率が、草食動物であるシカより高い!そんなこと絶対にありえません。

 

行政の方に、この推定生息数はありえないというと、反論するならデータを出せ、論文を見せろと怒られました。現代人はみんな、科学病、数字病にかかってしまっているのではないでしょうか。複雑な計算などしなくても、わたしたちが活動を始めた20年前から、クマが10倍に増えているかどうかぐらい、山に入って観察していれば、子供でもすぐわかることです。

 

私たち熊森本部は、2011年、毎月クマ部会を持ち、1年かけて大変な労力をさいて、この発表がどれほど現実離れしているかを証明しようと試みました。何人もの研究好きの会員が、参加して下さいました。

 

有名国立大学で数学を教えておられる博士会員にも力になって頂きました。難しい部分を省略して簡単にまとめると、先生は、世の中には3つの嘘があると言われます。1つは普通の嘘、2つめは真っ赤な嘘、 3つめは統計の嘘だそうです。 統計もモンテカルロ法などは、コンピューターを使って、パラメーターをいくつもいれて 何回もシミュレーションして、頼まれた側(お金をくれた側)に都合のいい結果がでるようにするのが、研究者間での常識になっているということでした。先生によると、どういう結果を出せばいいのか、初めに結果ありきという時に使うものなのだそうです。

 

兵庫県のツキノワグマは、生息地は荒廃する一方なのに、生息数は激増していることになって、絶滅危惧種Aランクだったものが、絶滅危惧種Bランクに落とされ、2012年からは、有害捕獲原則殺処分に変更され、これまでの日本一の兵庫県のクマ保護体制は、一挙にくつがえされてしまいました。これまで私たちがすべてを投げ打って、クマたちの棲む豊かな森を兵庫県に残そうと、20年間も苦労して命を懸けて作り上げてきた保護体制だったのに、本当に無念です。

 

2012年初め、この新方針に対して、協議会や審議会がもたれました。ここで、委員たちの中から、クマがシカより増加率が高いなどあり得るのかなど、推定生息数の出し方に、疑問が相次ぎました。すると、しばらくして、兵庫県は、推定生息数や年平均増加率を、一挙に下方修正されました。これは、勇気のいることで、私たちは高く評価します。しかし、これまでのクマ異常増加説は一体なんだったのか。下方修正されたなら、有害捕獲原則殺処分などの対応はなぜ変更されないのかなど、疑問はいくつも残ります。

 

以下、兵庫県内クマ推定生息数の上限値に関するグラフ(兵庫県資料をもとに日本熊森協会作成)です。

2011年県発表

クマ推定増加率22.3%
推定生息数313頭~1651頭
中央値650頭

 

2012年県訂正発表 

クマ推定増加率11.5%
推定生息数300頭~751頭
中央値506頭

 

( 熊森より)修正グラフを見て、私たちが驚いたのは、1994年からさかのぼって、数字がいじられていたことです。当時は今のようなデータは取っていませんでしたから、当時の推定生息数の上限値など今更出せるはずはありません。これは、クマの年増加率が、シカより高くなり過ぎないようにするための操作ではないかと、考えられます。

 

もし、1994年当時の推定生息数を、当時、㈱野生動物保護管理事務所が調査発表した75頭~85頭の推定数を使うなら、このグラフは、以下のようになります。もちろんこのグラフは、上限値ですから、一般に使う中央値はぐんと下がってしまいます。

 

 

 (結論)

このようなわけのわからないことになったのは、研究者のみなさんが悪いわけではなく、いかに、最先端の科学技術を使っても、自然界や野生鳥獣の生息数など推定できないかという現実の表れだと思います。生息数もわからないのにどうやって、ワイルドライフをマネジメントなどできるのでしょうか。日本の野生鳥獣対応は、根本的に発想転換して、もう一度(日本に野生動物の保護管理思想が導入された)1999年以前に戻して、やり直さねばならないと考えます。

 

米田一彦氏もご著書で、私たちのこの結論と同じことを、当時、環境庁案に賛成した反省を込めて、書かれていました。

 

<追伸> 

2011年2月に神戸市で開催されたシンポジウムで、若い研究者のみなさんが、クマに関していろいろと発表されました。当協会員も当日、多数会場に行っており、みんな呆れてしまいました。感想を一言で言うと、「乱暴」「暴論」の一言でした。もっと自然というものを、ていねいに愛情を持って見ていただきたいと思いました。

推定生息数以外は、私たちがその場ですぐに反論できることも多く、会場でいくつか指摘もさせていただきました。あの会場に出席されておられた一般市民の方々が、誤った知識を持たれたままにならないよう、私たちのわかる範囲でしかできませんが、そのうち反論させていただこうと考えています。

私たち熊森協会は、兵庫県立大学の若い研究者のみなさんに、立派に育っていただきたいといつも願っています。

 

フィード

Return to page top