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2016-08-21

兵庫県知事あてのクマ狩猟再開中止の要望書⑨

兵庫県知事 井戸 敏三 様

平成28年8月18日

要望書 兵庫県のツキノワグマ狩猟再開は中止すべき

―推定940頭は過大算出という専門家の指摘があるのに、逃げ場も隠れ場も失ったクマを山中で狩猟とは、生態系保全と人道に反しますー

 

日本熊森協会 会長 森山まり子

  • 専門家から、算出法に疑問、過大推定と指摘の940頭を根拠に狩猟再開は非科学的です

階層ベイズモデルMCMC法を用いて県内のクマ生息数は940頭であると算出したのは、兵庫県森林動物研究センターの県職員の研究員だけで、奥山は調べていないと公言しています。彼の推定法は捕獲が増えることは生息数が増加しているという前提に立っており、2010年山の実りが大凶作の際捕獲された101頭という過去に例のない捕獲数を異常値として処理していない、隣接している京都や岡山、鳥取間のクマの移動を考慮していない等、算出法に問題があり、過大推定だと統計学の専門家から批判を受けています。彼のデータだけで政策を決定するのは、非科学的で危険です。そもそも、森林内に生息する野生動物の数を正確に推定するのは困難です。クマの生息数を人間の勝手な計算で、800頭に一定させようという考えは、自然が全く分かっておらず、多様な生き物が複雑に関係しあっている生態系のバランスを一層崩壊させます。

 

  • 兵庫県の奥山は今大荒廃して鳥獣の棲める環境ではなく、クマは絶滅の危機にあります

今、人里にクマたちが出てきて、地元の方々は大変困っておられます。一見、クマが爆発増加したように見えますが、実はクマは山に棲めなくなっており、生息域を拡大したのではなく、生息分布がドーナツ型に拡大しただけです。兵庫県のクマ生息地では、延々と続くスギの放置人工林が広がり、内部が砂漠化しています。私たちが活動を始めた20年前から改善されていません。一方、わずかに残された自然林はナラ枯れやシカの食害などで、内部では下層植生や昆虫が消えて近年急激に劣化、クマは安心して棲めるすみかも食料も失いました。クマの逃げ場も隠れ場もない山でクマを狩猟するのは、この上なくアンフェアであり、生態系保全の観点からも、人道的見地からも認められません。国の「800頭」が安定個体群というのは、森が残っていたらという前提です。野生動物は、生息地を失うことによって絶滅します。兵庫ではクマの棲む森が失われたままであり、仮に数が増えたとしても、クマは絶滅の危機にあります。

 

  • 兵庫が西日本初で狩猟を再開すれば、他府県のクマ保護にまで悪い影響を与えます

兵庫県は、クマが人里に出て来てどうしても困る場合は、有害獣として捕殺できるようになっており、平成26年に30頭、平成27年に18頭のツキノワグマが捕殺されています。今後も追い払いや誘引物除去、有害捕殺でクマに対応すべきです。ツキノワグマは西日本全域で絶滅が危惧され、今も狩猟が禁止されており(滋賀県では自粛)、狩猟再開を決めたのは兵庫県だけです。せっかく貝原前知事や天皇皇后両陛下のご理解で当時の子供たちが勝ち取った兵庫県クマ狩猟禁止を反故にすべきではありません。、兵庫県がすべきことは、被害防除とクマの生息地であった死んだ奥山の再生に全力をあげることです。今回の狩猟再開を止めてください。

8月18日 本部:山は大荒廃、クマ狩猟再開中止の要望書を兵庫県に提出⑩

13:30~14:00

室谷くまもり副会長ら3名は、兵庫県庁農政環境部長室に出向き、井戸敏三兵庫県知事あてのクマ狩猟再開中止の要望書を、知事の代理として出席してくださった秋山農政環境部長・遠藤環境創造局長・塩谷鳥獣対策課長に手渡しました。

 

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秋山部長に要望書を手渡す室谷副会長

 

NHKテレビをはじめ、マスコミのみなさんで、部屋がいっぱいでした。取材に来てくださったみなさん、本当にありがとうございます。私たちの声を取り上げていただき、とてもうれしかったです。

 

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要望書を提出後、行政担当者(机右側)に、下層植生が消えた山でのクマ狩猟再開は残酷すぎるので中止するよう訴える熊森本部(机左側)

 

室谷副会長は、「クマ生息地の人工林の危機的状況が熊森結成の20年前と比べて全く回避できていないばかりか、今では自然林まで劣化してしまい、生息環境は更に悪化しているのに、推定生息数だけ見て、絶滅の危機を脱したと県が判断しているのはおかしい。

本来の奥山生息地を失っていることから、今も兵庫県のクマは絶滅の危機にある。しかも、推定生息数の計算法に非常に問題があると専門家から指摘されている。生態系保全上、人道上、教育上からも、狩猟再開は中止すべきである」などと、要望書を基に秋山部長に訴えました。

 

秋山部長は、「先日の審議会の答申や、この要望書など検討させていただき、9月中には結論を出したいと思っています」と答えられました。(先日の審議会で、クマ狩猟を再開することについての審議はゼロだったのに、どうやって検討されるのであろうか)

 

今回のクマ狩猟再開は、地元や猟友会には相談せず、兵庫県森林動物研究センターの研究員が出したデータを元に、兵庫県本庁が決めたものだそうです。再開理由はクマの数が増えたから、減らすために人間が山に入って狩猟する必要があると判断したということでした。県内のクマ生息数を940頭と決めつけて、800頭まで減らすために140頭のクマを駆除したいのですと、県庁の担当者はしきりにおっしゃっていました。

 

これらの数字にどこまでの信憑性があるのか、全く不確定なのに、みなさん数字にとりつかれておられるというか、数字化されたもので自然を見ようとされているように感じました。行政は、今、どこでもこうなっているのでしょうか。

机上で数字を眺めておられるより、クマたちの本来の生息地がどうなっているか見に行かれて、胸を痛められた方が、いいクマ対策を思いつかれると思います。

 

熊森が提出した要望書を本当に検討する気がおありなら、兵庫県の推定生息数の計算法に非常に問題があると指摘されている統計学の専門家である日本福祉大学山上俊彦教授を招聘して、坂田氏の計算のどこがどうおかしいと思われるのか、じっくり説明を聞くべきでしょう。山上先生の推定では、爆発増加どころか、2010年山の実り大凶作年時の大量捕殺がたたって、兵庫県のクマ生息数は減少に転じている可能性があるとのことです。

キャプチャ

      山上教授作成の兵庫県クマ推定生息数の変化

注:山上先生は、これまで兵庫県庁は、1992年時の推定生息数を60頭としてきたが、それではその後のクマの増加率がシカ並になってしまい、ありえないことから、当時、200頭~350頭いたと思われるとして、上記グラフを作成されました。実際はどうだったのか、誰にもわからないことです。

 

兵庫県で、調査らしき調査が始まって、初めて兵庫県に棲むクマの生息推定数を出したのが、1994年です。県が㈱野生動物保護管理事務所に調査委託した結果の75頭~85頭です。

 

 

 

 

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