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11月23日 政府・与党 「森林環境税 」1人1000円 2020年度以降に徴収を発表 くまもりは、年間620億円の使い道を問題視

昨年秋、政府・与党は二酸化炭素(CO2)の森林吸収量向上による温暖化対策や国土保全の安定財源として、林野庁などが創設を求めていた「森林環境税」の導入を発表しました。

集まった財源は、市町村の森林整備財源に充てるとされていました。

しかし、すでに37府県と横浜市が独自の「森林税」を導入しており、地方自治体から「二重課税」を理由に反対の声が上がったため、発表直後に早々と先送りが決定されてしまいました。

 

しかし、本日、「森林環境税」について、1人当たり年1000円を徴収する方向で政府・与党が調整に入ったことが発表されました。個人住民税を納める約6200万人が対象で、年約620億円の税収が見込まれます。

12月中旬にまとめる2018年度与党税制改正大綱に盛り込まれるということです。

 

熊森としては、戦後の森林政策の失敗で、日本の山を大荒廃させてしまった、もうどうしてよいかわからないと林野庁の職員の方々が嘆いておられるのを裏で聞いてきたので、林野庁が責任を感じて、何とかこの国のために豊かな森や林業用として活用できる林を取り戻そうとされるなら、国民として大いに協力したいという思いがあります。

しかし、問題は、そういう方向で、お金が使われるのかどうかなのです。しかも、国が中央で決めた一律のお金の使い方を指示しないだろうかという不安もあります。南北に長い日本です。豊かな森の顔は、地域によってかなり違っています。その地域に合った森造りをしないと、またまた失敗してしまうでしょう。集まった財源を、県ではなく市町村に渡すしくみとなっている訳もよくわかりません。

 

 

「森林環境税」には、環境とか、森とかいう言葉は一応入っていますが、実質は無意味な「林業振興税」に使われるだけになるのではないかという心配があります。

 

時代がすっかり変わっているのに、もはや需要もなく日本の山に取り残された哀れ膨大なスギ・ヒノキ人工林の維持や再造林を進めるための「林業振興税」なら、まっぴらごめんです。人工林の2割間伐などしても、5年もたてば残された木々が成長して、また内部が真っ暗で死んだ山になってしまいます。税金の無駄遣いです。

 

森と林は全く別物です。一緒にして森林としてしまうから、わけがわからなくなるのです。

今、日本がしなければならないのは、今後も林業として需要や利用が期待できるスギ・ヒノキの単相林は残したとして、伐り出しが不可能な場所にあったり、もはやバイオマスなどにしか使い道のない、しかも豪雨で崩れやすい針葉樹の単相林を樹種転換し、保水力豊かで野生鳥獣たちが棲める災害にも強い雑木林(=森)を、全生物のために、鳥獣被害に悩む地元の方のために、次世代のために、復元することなのですそのような「森林環境税」となるよう、熊森は声を挙げていきたいと思います。

 

 

 

この奥山のブナ・ミズナラ林(120ha)にクマは棲めるか?熊森本部が専門家に山の調査を依頼

8月9日、熊森本部調査研究部は、専門家に来ていただき、兵庫県宍粟市にある氷ノ山山系の奥山ブナ・ミズナラ林を調査していただきました。

まず、標高600メートル地点から沢沿いを伝って登っていきました。

(1)魚影が見られない

水量の少ない谷川

 

小さな川魚は少しはいると思うのですが、周りの山が人工林で埋まっているせいか、谷川の水量も少なく、おそらく水温も高く、確認できるような魚影はありませんでした。(イワナの適正水温は16.8℃まで)

 

昔のように渓流の水が冷たく水量が多いと、川魚も豊富でクマは年中ここに棲めるそうですが、これでは無理とのことでした。

 

(2)酸性降下物の影響はない

夏なのに、枯れた葉が少しありました。酸性降下物の影響でしょうか?

 

先生のお答えは、「酸性降下物による影響であれば、下層植生のみならず同時に多くの樹木も枯れます。しかし樹木はしっかり育っていますから、違うだろう」ということでした。

 

(3)液果植物がほとんどない山

この山にはなぜか、液果植物であるヤマザクラやウワミズザクラが全くありません。

ミズキやヤブデマリが1本ぽつんと生えているのが見つかりましたが、クマは何本も液果植物が生えている山に来るのであって、こんな1本しかないような効率の悪い所には来ないそうです。

案の定、ヤブデマリには実がついていましたが、クマが食べに来た形跡はありませんでした。

この山には、熊の餌となるような昆虫もいないし(地球温暖化の影響か?)、クマの春夏の食料はありません。

実のついたヤブデマリは1本あったが・・・

 

(4)秋の食料

①ヤマブドウ

クマはトチの実を食べませんが、幹の苔のはがれ方で、トチノキにクマが登ったことがわかると教えてもらいました。

トチノキには、葉のない太いツルが巻きついていましたが、上を見上げるとヤマブドウが高い所で葉を広げていました。枯れ木のように見えたツルは、ヤマブドウの生きたツルでした。ヤマブドウは日光のあたる場所にしか葉を付けないようです。

 

②ブナ・ミズナラ

この山を登って行くと堅果植物であるブナ・ミズナラ林です。凶作でなければ、秋にクマが利用しにくるだろうということです。数年前、ナラ枯れが入って、ミズナラが壊滅するのではないかと心配しましたが、一部枯れただけで今のところ終息した感じです。

 

(5)若木・稚樹・下草がない

私たちは、この山に若木・稚樹・下草がないことを、非常に気にしていましたが、先生は、林冠が鬱閉(うっぺい)していることを考えると、それほど異常な状況ではないだろうと言われました。

鬱閉(うっぺい)した林冠

木が1本倒れてギャップが出来たら、そこにはさまざまな芽生えが生じるのでしょうか。シカが食べつくしてしまわないでしょうか。

 

(6)ササが消えたのは、シカではなく一斉開花

沢沿いを3時間ほど登り続け、標高1000メートルあたりで北側の尾根へ上がろうということになり、急斜面を登りました。

 

 

斜面には、背丈の低いチシマザサがぽつぽつと広がっていました。

シカがササを枯らしたのか、たずねてみました。日本中でシカが犯人にされています。

先生の判定は、一斉開花によるササ枯れであり、自然現象ではないかということでした。

その証拠に、枯死したササは背が高く、緑色のササはどれも枯れたササの根元の地下茎から出た芽でした。

徐々に下層植生が回復していくのではないかと言われていました。

 

 

ササの青い葉は地面近くだけで、先端部はどれも枯死している

 

下層植生がササばかりになると、他の植物が入ってこれなくなるので、これまたよくないそうです。

下層環境も多様性が必要です。

 

<先生のこの山の評価>

「ドングリなどの堅果類等、秋の食糧になるものはあるが、全体的に、クマの夏の食糧となる液果類の樹木が少なすぎる。たとえば、ヤマザクラやウワミズザクラの実はよくクマが食べるが、この山にはそういった液果類の樹木がほとんどない。川魚もほとんどいない。兵庫県ではクマの数が爆発的に増加していると聞くが、奥山にクマが生きていくための充分な食糧がないのに、増えられないだろう。クマがこの山に棲みつくことはできない。秋に利用するだけだろう」

 

(熊森から)

ブログでは主な事しか書けませんでしたが、専門家の先生に来ていただいて多くのことを学びました。内部資料には、もっと多くのことを残しておきたいです。

 

この山のふもとの集落のおばあさんたちが、「むかしは谷川に30センチくらいのヤマメがたくさんいて、女でも手づかみできたよ」と以前、教えてくださったことが思い出されました。そんな川があれば、クマは年中この山に棲めたのかもしれません。戦後の拡大造林政策によって、どこの谷川も水量が激減です。スギやヒノキばかり植えられたことによって、クマたちは直接、食糧を失っただけでなく、川魚という貴重な食料も失うことになったのです。

 

この自然の山に液果植物がほとんどない理由は、よくわかりません。理由を思いつかれた方は教えてください。自然界の事は、人間には永久にわからないことでいっぱいですが。

 

東中国山地にある兵庫県では、兵庫県森林動物研究センターの研究者(当時、兵庫県立大学准教授、現在、株式会社 野生鳥獣対策連携センター代表取締役)が2011年春、ベイズ推定法を用いてクマが爆発増加したと発表しました。私たちには、推定過程がよくわかりません。集落でのクマの目撃が増加したこともあって、兵庫県はクマ狩猟を再開しただけではなく、現在、積極的にどんどんクマを有害捕殺しています。

 

山すそに、クマが大好きな糠入りの罠をシカ・イノシシ用として大量に設置したことも、クマの目撃数や錯誤捕獲が激増した原因の一つではないかと私たちは思うのですが、兵庫県は情報公開を請求してもほとんど非公開回答なので、県民としては訳が分からなくなります。

 

一方、西中国山地では、生息推定数は微減とされ、奥山のクマの生息密度が低下していることが分かった(ドーナツ化現象)として、狩猟も禁止されたままです。熊森の自動撮影カメラから、兵庫県もドーナツ化現象を引き起こしていることはまちがいありません。

中国山地の東と西、なぜこれほどまでに結論が違うのでしょうか。

 

8/3記者会見 奈良市D地区シカ捕殺計画は無用の殺生  農家のためシカのため防鹿柵強化で対応を

8月1日、熊森本部は奈良県荒井正吾知事に、

奈良市D地区のシカ捕殺計画を中止し、予算は防除強化に

という要望書を提出しました。

知事への奈良シカ要望書

 

そして、8月3日、森山会長、本部スタッフ、奈良市会員らは奈良県庁記者クラブを訪れ、1時間の記者会見を行いました。

熊森の考えを説明する森山会長(奈良県庁)

 

記者会見には多くの記者さんたちがご出席くださり、みなさん熱心に聞いてくださいました。

 

奈良では、テレビニュースやいくつもの新聞記事にしていただけました。

 

1時間話を聞いてくださった記者さんたちが、20年間自然保護を研究し実践してきた熊森の主張に一理あると思われたから、報道してくださったのだと思います。思い付きだけの浅はかな意見であれば、バカにして誰も記事にしないでしょう。

 

しかし、報道内容は結論だけの簡潔なものであったため、よくぞ言ってくれたという声と共に、シカ被害に苦しむ農家のことも考えず、無責任な発言をするな、シカ柵代金は熊森が全部出せなどという非難の電話、メール、FAXも計数件本部事務所に入りました。

 

結論だけ聞いてすぐに反発するのではなく、根拠も知ってから意見を言う習慣が、お互い必要だなとつくづく思いました。自分の全く知らない事実に基づいて相手が発言しているのかもしれないのですから。

 

<熊森発言の根拠概略>

●無用の殺生は良くない

D地区のシカ120頭を殺しても(箱罠に捕獲後、高圧電流を流してシカを殺すそうです。猟友会に予算付け済)、農作物被害は減りません。

なぜなら、隣接する京都府など、周りからすぐに他のシカが移動してくるので、やがて元の木阿弥になります。

そうなれば、来年は、もっと多く殺そうということになるでしょう。

こうしてシカ捕殺の泥沼にはまっていくのです。

C地区の鹿も殺すことにしようと、エスカレートしていくでしょう。

そのうち、B地区のシカも、A地区のシカもと、殺しがどんどんエスカレートしていくかもしれません。

そうなれば、世界中からやってきて奈良にお金を落としてくれている観光客が激減するかもしれません。

そんなことになったら、その時には反対すると言っても、戦争と一緒で、いったんエスカレートし始めると止めることが難しくなります。

せっかくこれまで1頭も殺さずに来たのですから、何とか当面、奈良だけでもこの伝統を守ってほしいです。

大量捕殺を終えて、やれやれと思って手を緩めたら、シカはまたすぐに元の数に戻ってしまいます。

「シカ殺せ」と言われている人たちは、無用の殺生になってもいいから殺したいのでしょうか。

そんな人はいないはずです。

 

 

・もういい加減に、人間にはワイルドライフ・マネジメントなど不可能なことに気づこう

今、西洋思考の一つである「人間による野生動物の※頭数調整」が、国策として全国で展開されています。

(※1999年当時の環境庁が、日本中の自然保護団体の反対を押し切って、西洋の自然観を良しとする研究者たちの提案を受け入れ、導入したもの。それまであった有害駆除と違って、農作物被害を出していない個体でも、頭数調整名目で殺すことができるようになった。人間一体何様なんだ)

 

この手法では、絶滅させない限りは、激減するまでシカを殺しても、捕殺の手をゆるめるとやがて元の数に戻ってしまいます。

本当に、残酷なだけでばかげています。人間には野生動物の頭数調整など、自然界のコントロールは不可能なのです。

 

日本の山をスギだけの単一造林にしたつもりが、自然に反していたため、大雨のたびに山がどんどん崩れて自然林に戻ろうとしています。これと同じです。植物も動物も、人間が手を入れるのをやめたら、自然に戻ってしまうのです。

 

熊森は、奈良のシカだけを殺すなと言っているのではなく、野生動物の頭数調整など人間には不可能だからやめようと言っているのです。野生動物は環境収容力に生息数を合わせます。しかし、それ以上は増えません。

 

奈良公園の野生ジカ(A地区に相当)は、奈良の鹿愛護会によって、毎年、生息数が数えられています。

奈良公園のシカ生息数

これは貴重なデータです。若草山の上など、シカに入られては困るところには、シカ柵が設けられており、シカは入れません。

 

 

・全ての大型野生動物と共存してきた祖先に学ぶ

私たちは歴史のある国に生まれたのですから、野生種を大量に絶滅させてきた西洋の人間中心文明ではなく、見事、野生動物たちと共存してきた祖先から、棲み分けや被害防除対策を学ぶべきです。

 

先祖は土や石を積み上げ、徹底したシシ垣で対応してきました。

参考文献「日本のシシ垣」(イノシシ・シカの被害から田畑を守ってきた文化遺産)

著者:高橋春成(奈良大学教授)

 

奈良では、田畑の周りをロの字型人家でびっしり囲う等、とにかくシカを殺さないでシカと共存するための知恵をたくさんひねり出してきました。民族の素晴らしい知恵です。誇りです。

私たち子孫も、平成のシシ垣造りで対応すべきです。

 

祖先の、明治になるまで1200年間出続けていた殺生禁止令や、輪廻の思想などもすばらしいと思います。

今度、生まれ変わってきた時、自分がシカだったらと考えてみたら、むやみな殺生などできなくなるはずです。

 

・金網の防鹿柵でシカ被害は防げる

もちろんこの結論に至るまでは、私たちは兵庫県を中心に長年現地調査を行い、シカ被害に苦しむ農家とも随分話し込んできました。そして、私たちの提案は、しかるべき農家のみなさんから賛同を得ています。

 

以下のグラフ「防鹿柵の効果」は、兵庫県のシカ管理計画(兵庫県庁作成)から転載したものです。

 

 

この農会アンケートによると金網柵を張ることで、8割前後の農家がシカ害を防ぐ効果があると答えています。ある集落で金網柵の負担額を聞いたところ、集落負担は1割で、補助金が9割出たということです。(兵庫県では、何キロも金網を張って、集落を田畑ごと囲んでいるところがいくつかある。)

奈良の農家の方も、ノリ網はだめだが、きちんとした金網柵なら、シカから田畑を完全に守れると証言されていました。

 

2007年に「鳥獣被害防止特措法」が国会を通って、被害防止に多額の国家予算がつくようになりました。

 

奈良D地区のある農家の方は、奈良県も他府県並みに、防鹿柵に補助金が付くようにしてほしいと言われていました。そうであるなら、奈良県も兵庫県並みに防鹿柵に補助金が付くようにしてあげればどうでしょうか。

 

・他生物の生命を尊重する文明しか生き残れない

私たちが、環境省が進める頭数調整という国策に反対するのは、このような人間中心主義、経済第一、科学盲信の上に成り立つ近代文明が、人間を生かしてきた地球環境を破壊し、人類を破滅に導くものであることを感じているからです。

 

平成になってから、奈良県庁には奈良市D地区の農家から、シカに対する要望書が3回出ました。

シカ被害に悩みながらも、いずれにの要望書にも、シカ捕獲やシカ捕殺の言葉はないそうです。

これが、奈良の心だと思います。日本文化だと思います。

 

今回、シカ捕殺を決定したのは行政が集めた専門家による審議会の答申によるものということで、国策推進派の学者たちが出した結論ではないかと思われます。

 

日本は肩書社会なので、大学教授たちの出した結論が正論にされてしまいますが、原発問題を振り返ってみてもわかるように、専門家とよばれる先生方が出した結論が必ずしも正しいとは限りません。子どもや一般庶民の生物としての本能的な感覚の方が正しいことも多々あるのです。多くの日本国民は、殺生を嫌い、殺さない解決法があればそちらを選ぼうとします。これまで会ってきた多くの動物学者たちは、この反対でした。

 

最近は地球温暖化で、シカのえさとなる草が青々としている時期が、以前より1年に付き2か月長くなっています。これによって、以前よりシカが多く生きられるようになったという研究者もいます。

戦後の拡大造林のための皆伐による一時的な奥山大草原の出現や、山奥まで張り巡らされた林道、農地化宅地化による草原・湿原の9割消滅、地球温暖化、郡部の過疎化高齢化など、シカを害獣に仕立てたのは、全て人間ではないでしょうか。

 

この大地は人間だけのものではありません。殺さなくてもいい命までは殺さない。

これは、人間の倫理観として当然の考えだと思いますが、いかがでしょうか。

そして、何よりも、他生物の生命を尊重する文明だけが持続可能な文明なのです。

 

熊森が、せっかくこれまで殺さずに来た天然記念物奈良のシカを殺さないようにしようという理由は他にもまだまだありますが、長くなったので、今回はとりあえず、ここで終えます。

 

●奈良のシカを市民が守ってきたことを知り感動 6月4日ブログ

 

●今夏、旧奈良市管理地区で天然記念物のシカの初捕殺が開始されることに疑問 6月4日ブログ

 

●殺しても鹿害は減らない 予算は防除柵強化に!奈良市D地区訪問 7月13日ブログ

九州豪雨お見舞い 土砂崩れの原因報道を 人工林率福岡県朝倉市87%東峰村86%大分県日田市76%

 記録的な豪雨に見舞われた九州北部の福岡大分両県では、崩れてきた山に集落が飲み込まれるなど、被害は甚大です。
亡くなられた方には、心からお悔やみ申し上げます。
また、怪我をされた方、財産を失われた方、被災されたすべてのみなさん、すべての生き物たちに、心からお見舞い申し上げます。
それにしても、マスコミ報道はいつものごとく、天災で済ませています。
スギの人工林が崩れた              大分県日田市(毎日新聞より)
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確かに、記録的な豪雨でしたが、山がスギやヒノキの人工林ではなく下層植生が豊かな広葉樹の自然林であったなら、ここまでの災害には至っていなかったのではと思われます。
今後も、温暖化により、ますます今回のような集中豪雨が起きると言われています。
下草の生えていない放置人工林に早急に手を加えて改善していかないと、今後も恐ろしい災害が後をたちません。一刻も早く国民が山崩れの原因に気付くように、山が崩れたではなく、「保水力を失った人工林が崩れた」と、報道すべきです。
戦後の林野庁の森林政策の失敗により、日本が災害大国になってしまったことは、当事者たちが誰よりも知っておられます。私たちは今さら林野庁を責める気はありませんが、少なくとも国民に、本当のことを伝えていただきたいです。更なる災害を防ぐために。
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九州の山に詳しい、熊本県平野虎丸氏の7月7日ブログを以下に転載させていただきます。

大量流木で被害拡大 深層崩壊でごまかすな 朝倉・日田の土砂災害 テレビ朝日報道ステーション

平野虎丸です。ご訪問ありがとうございます。

福岡朝倉市と大分県で発生した大雨による土砂災害の死者は、7月7日現在、死者11名、不明者20名以上と報道されています。犠牲になられた皆様に心よりお悔やみ申し上げます。

30年も前から挿し木スギによる土砂災害の危険を訴えてきた者として、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
こういうことが二度と起こらないように、毎年土砂災害が発生するたびにブログなどで書いてきましたが、マスコミが土砂災害の専門家と称する大学教授の間違った解説を報道し続けるために、何時まで経っても、挿し木スギによる土砂災害の犠牲者をなくすことが出来ません。
残念です。
土砂災害による死者は90%減らすことができるのです。
土砂崩れの原因さえ知っていれば・・・。

7月7日のテレビ朝日「報道ステーション」をみていたところ、今回の災害は「流木が被害を拡大した」として、、九州大学元教授(河川工学)である橋本氏が大量流木の原因を「地下水の影響による深層崩壊」と説明されていました。
説明も間違っていますが、使用された図も間違っていました。
実際は根のない挿し木が崩壊しているにもかかわらず、描かれていた図は広葉樹でした。
樹木の種類も実生か挿し木かも分らない大学教授や司会者では、真実は不明のままです。
土砂災害を「大雨による深層崩壊が原因」として終わらせていては、国家の無責任な植林はいつまでも続き、植林による国民の犠牲もなくなりません。
土砂災害の専門家としてテレビ・新聞で間違った解説をされている大学教授の皆さんたちと直接話しあいたいと思います。
土砂災害から国民の生命と財産を守るために。

引用元 http://blog.livedoor.jp/rokuten1/

兵庫県野生動物管理計画案(くまもり解説編) その②

兵庫県動物管理計画案は、人間勝手で残酷極まりない野生動物大量殺害計画案です。

 

(資料)兵庫県野生動物管理計画案 (約200ページ)

 

背景には、野生動物たちに農作物を荒らされるなどの被害が増大して、地元の皆さんが悲鳴を上げておられるという問題があります。

 

 

このような問題が起きた最大の原因は、戦後の拡大造林政策や国土総合開発によって人間が野生動物たちの生息地を奪ったことです。

クマたちの森は、多くが動物の棲めないスギやヒノキの人工林に変えられ、今や林業低迷によって放置されて大荒廃しています。

シカたちの生息地であった草地や湿地は、農地開発や宅地開発で人間に取り上げられてしまいました。

 

 

それ以外の原因として、エネルギー革命による里山放置で里山が藪化していることや、工業立国をめざす国の政策により、農林水産業に従事する人が激減して過疎化・高齢化が進み、郡部における人間側の野生動物対応力が弱まっていることなどがあります。また最近では、大気汚染や温暖化など、人間の地球環境破壊による地球規模の森林劣化が著しく、野生動物問題を引き起こしている原因は、すべて人間側にあります。

 

野生動物は、もう一つの日本国民であり、私たち人間の生存基盤である豊かな自然の貴重な構成要素です。彼らが存在してくれることによって、私たちは生かされており、どれだけ心身ともに恩恵を受けているか、はかり知れません。今後もこの国で私たち人間が生きていくためには、大型野生動物たちと国土を棲み分けて共存していかねばなりません。

 

郡部の人たちを悩ましている大型野生動物による被害問題を解決するために、まずしなければならないのは、かれらの生息地を復元・再生してそちらに戻ってもらえるようにすることです。次に、人間の所に来ないように柵などで被害防止対策をとることです。野生生物の生息数は自然界の法則によって増減を繰り返しますが、そんなことは人間が関知すべき問題ではありません。ただし、人間の所に出てきたときは、追い返さねばなりません。

 

というわけで、私たちが野生動物問題に対してとらねばならない対策は、

生息地保障被害防除対策の強化です。

 

ところが、兵庫県野生動物管理計画案では、現在の野生動物被害増大の原因は、野生動物たちの生息数が増え過ぎたことにあり、増え過ぎた原因は、ハンターが減ったからであるとしています。(熊森は、この原因特定がまやかしでありまちがっていることを、これまでブログで何度も指摘しています)

 

というわけで、兵庫県野生動物管理計画案では、絶滅しない程度に野生動物を大量殺害することが対策となっています。よって計画案の中心は、現在の野生動物の推定生息数と、適正数の計算、年度ごとの補殺数、ハンターの数です。数字ばかりが並んでいます。

管理計画という行政言葉は、殺害計画という意味です。

この計画案では、野生動物の存在は人間にとって害であり、具体的な被害が次々と表示されています。一方、かれらの存在益についての具体的な表示はゼロです。

被害防除については少し触れられていますが、生息地保障に至っては具体的な記述は皆無状態です。

 

かつて、人間が野生動物を管理することによって「野生動物の数を限りなくゼロに近く一定数にしたい」と言われた行政マンがいましたが、自然というものがどういうものか全くわかっておられません。野生動物管理思想は、野生動物の命の尊厳が全くわからない人が考え出した実現不可能で異常な残虐手法です。ナチスの思想の野生動物版です。ふつうの人なら、聞いただけでぞっとすると思います。神様でもない人間が、人間の力では把握することなど不可能な生息数を推定し、かれらの適正生息数を勝手に決め、それ以上は殺すことにするなど、もはや人間は悪魔でしかありません。これらの計画案は、人間のおごり以外の何物でもなく、人間が浅知恵で自然界の絶妙のバランスに手を入れることで、日本の自然を台無しにしてしまう亡国計画案です。

 

日本福祉大学の山上俊彦教授も指摘されていますが、生息地保障をしないこのような計画は、国際法である「生物多様性条約」(日本は1993年に外務省が締約)に、大きく違反するものです。

 

以下は、平成27年度、兵庫県で殺害された野生動物の数と、最新生息推定数です。(兵庫県発表)

 

殺害数          最新生息推定数

クマ       18頭             897頭

サル         66頭              1000頭

シカ     45569  頭                   13万頭

イノシシ        約2万頭            6千~1万5千頭

アライグマ          4795頭                                                       ?

 

全種に関して、今後も大量殺害を続けていく兵庫県野生動物管理計画案です。

 

平成28年度、兵庫県はクマが940頭に爆発増加したと推定し、20年ぶりに狩猟を再開し140頭のクマを獲ろうとしました。結果、狩猟されたのは4頭のみ。940頭に爆発増加の推定が間違っていたことが証明されました。

 

サルは、群れを作り生息数がかなり正確に数えられる例外的な動物です。兵庫県では全ての群れに発信機を付けて群れの動きを把握しており、群れの中のオトナメスが10~15頭を超えないことを目標にしています。超えた分は毎年射殺しています。家族愛の強いサルのことです。家族の悲しみはいかばかりかと思われます。

 

イノシシに関しては、かなり数を減らしてきています。イノシシは、兵庫県では肉が高く売れるので、獲りたいハンターも多いはずです。年間捕殺数2万頭、残り推定生息数が最大1万5千頭なら、もう、捕殺している場合ではないと思います。早急に捕殺を止めるべきでしょう。

なぜ次年度も管理対象(=殺害対象)なのか、理解に苦しみます。

 

アライグマなどの外来種に関しては、もう完全に無用の殺生になっています。わたしたちの税金は、現在、100%、外来種の根絶殺害のみに使われており、被害防除には使えないようになっています。繁殖力が強いので、殺しても殺しても、すぐまた環境収容量に見合う数に戻ってしまっています。

(以下、アライグマの補殺数変化表をご覧になってください)

 

 

年度    アライグマ捕殺数(頭)

平成16年度      99

平成17年度                    361

平成18年度       2100

平成19年度     2779

平成20年度     3133

平成21年度     3281

平成22年度     3999

平成23年度     3145

平成24年度     3407

平成25年度     4136

平成26年度     5121

平成27年度     4795

 

捕殺数が減る気配は全くありません。

 

このような状況では、殺され続ける外来動物の命が無駄なだけで、何ら問題解決になっていません。また、このような外来動物の根絶殺害は、生命軽視の風潮を生み、人間社会にも大きなマイナスとなります。

 

大変残念ではありますが、いったん野で繁殖した外来動物を根絶することは不可能なので、根絶殺害ではなく、アライグマの侵入する屋根裏の穴を閉じたり、田畑にアライグマ用の電気柵を張ったり、被害防除に税金を使っていただく方が賢明です。今の状態では、外来種捕殺業者が毎年もうかって喜ぶだけです。

 

次回、その③では、国民の皆さんに声を上げていただきたいことを書きます。

森の中にあれだけあったササを、シカが食べ尽くせるはずがない

幾つかの山で、原生林の中にびっしり生えていた人間の背丈より高いササが、消えてしまいました。

一般に、シカが下層植生を過採食したことにされています。

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2000年以降、上の写真のような光景を見られた方も多いと思います。

見渡す限りのササが枯れていますが、犯人がシカであるはずがありません。

そもそもササがびっしり生えた原生林が残っていたら、草原の動物シカはササにはばまれて奥まで採食に入れなかったはずです。

 

ササは、数十年に1回の一斉開花や、地球温暖化による休眠解除後の凍害によって、今、一気に特定場所で大量に枯れています。

 

ササには地下茎がありますから、本来は地上部が枯れても、やがてまた復活します。しかし、現在、そのような場所にはシカが入り込んでしまっているので、地下茎から出てきた少しの若葉をシカが食べてしまいます。よって、シカよけ柵の内側しか、ササは復活しません。

 

熊森を指導してくださっている研究者の一人は、大学で習った森林生態学は、もはや成り立たないと言われます。人間活動によって、現在、自然界ではありえない事態が山で進行しており、森が今後どう遷移していくのか、さっぱり予測できないそうです。

 

すべてをシカのせいにしている研究者がいますが、そもそも、シカを山奥へと導いたのは、戦後の拡大造林です。奥地の原生林を大規模皆伐したことや林道開設によって、シカは自由に奥地まで楽々と移動できるようになりました。皆伐跡地には草が生え、シカの豊かな餌場となって、シカ数を増やしました。

 

現在の、シカ問題、クマ問題、森林の下層植生消失問題、困った事態を引き起こしたのは、みんな人間なのです。私たちは、自分たち人間がしでかしたことを棚に上げ、野生動物を悪者に仕立て上げて、殺して食べる事ばかりを、行政やマスコミを使って進めている兵庫県森林動物研究センターの研究員に、問題を感じています。行政の任命責任が問われます。

クマ被害を防ぐため、兵庫県の奥地でクマの棲める森を再生し続ける

クマ問題もシカ問題も、元をただせば、すべて人間が引き起こした森林破壊が原因です。

 

兵庫県のクマの場合、年間の農業被害は少しです。平成25年度の被害面積は約1ヘクタール被害額は120万円程度です。(140頭殺されることになった理由のひとつ)

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 平成27年度 兵庫県ツキノワグマ保護計画(兵庫県)より

 

昔からクマと共存してきた集落では、クマはおとなしい動物であり共存できるとして問題になっていませんが、クマに慣れない集落では精神被害や、人身事故の恐れを思い、クマは害獣視されがちです。

 

クマが集落に出て来るようになったのは、本来のクマの生息地がクマが棲めないスギの人工林にされたこと、残された自然林も大気汚染、地球温暖化、シカの食害などによって内部が大荒廃し、クマが棲めなくなったことです。

 

熊森は、あの手この手でこの20年間、人工林を少しずつ自然林に戻してきました。

11月12日、人工林を除去した跡地に、大阪西ライオンズクラブのみなさんが、熊森と共に恒例の実のなる木の大苗を植樹をしてくださいました。

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元人工林だった斜面に、ヤマザクラやシバグリを植樹

 

植樹後は、シカよけ柵を張ります。

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積雪時期を前に、網を外しやすいように工夫します

 

昨年春、皮むき間伐を施していただいたところです。

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スギの葉が枯れて、林床が明るくなってきている

 

1昨年、斜面の下の平地に実のなる木を植えていただいたところです。

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苗木が大きく育っている

 

兵庫県の樹医さんの話では、斜面と比べて平地は肥沃な大地となるため、植物の成長がいいそうです。国土の平地は、みんな人間が取ってしまっているため、人間のいるところでは植物は毎年良く育つわけです。

 

今年、クマたちが棲む冷温帯のドングリ種は実りがほとんどありません。しかも、兵庫県では、多くの所で、柿も不作年となっています。

 

一方、平地の暖温帯のドングリ種は良く実っています。冬籠り前のクマたちが、暖温帯のドングリを食べに来ることを認めてやってほしいものです。

 

大阪西ライオンズクラブのみなさん、今年も実のなる木の植樹をありがとうございました。

 

国は、ハンターを増やしてクマ・サル・シカ・イノシシを殺すこと、ジビエ料理を広めることばかりに固執していますが、人間としておかしくありませんか。奥山だけでも人工林を除去して、動物の棲める自然林を再生していただきたいものです。私たちは24年間、お願いし続けています。

11月17日のテレビ朝日報道ステーションによると、群馬県赤谷では、日本で唯一、林野庁による人工林の自然林化が始まったそうです。

獣害問題に対して、生息地復元で解決していただけるよう、国民が、もっともっと行政に声をあげていく必要がありそうです。

テレビ局に兵庫県のクマ生息地の山々を初案内

11月9日、丸1日とって、あるテレビ局の方が、兵庫県のクマ生息地を取材してくださいました。

これまで熊森は、「とにかく、山に入って下さい。誰の言っていることが本当か、山の中を見たら、すぐにわかります」と、知事さんやマスコミ関係者にお願いし続けて来ました。しかし、みなさん忙しくて、応じていただけませんでした。

今回、ついに来てくださった。本当に感激でした。本部スタッフ3名で一生懸命ご案内しました。

 

クマ生息町の山は、延々と人工林が続きます。

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集落近くのぬかるみ道で、真新しいクマの糞や足跡を発見

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この足跡を残したクマは、きっとまだその辺にいることでしょう。

大きい声を出して、人間が来ていることを知らせながら歩みます。

住民に、クマが爆発的に増えていると思うかたずねてみました。

「山にはおらんから、増えてないやろな」という答えでした。

いよいよ、山奥に入って行きます。

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急斜面で、カメラさんは本当に気の毒でした。ケガをされないかひやひやしました。

一見いい自然林なのに、なぜ動物が棲めなくなったのか説明しながら進みます。

標高1000メートル近くになって、やっとブナ・ミズナラの原生的な森に、少し、下層植生が現れ出しました。雪が降ってきました。

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左は原生的な森、右は動物の餌が全くない放置人工林。林内が対照的です。

原生的な森のブナの幹をみんなで見て歩きました。どのブナの木にも、古いクマの爪痕がいっぱいついています。この爪痕は、材が柔らかい春の時期に、花や若葉を食べにきたクマたちが木に登った跡と思われます。

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ブナの木にびっしりついた古いクマの爪痕

かつて、このあたりはクマの恒常的な生息地であったことがわかります。最近のクマの爪痕が少しくらいあるかもしれないと思って探しましたが、全く見つかりませんでした。

 

ミズナラに一つぐらいは熊棚が出来ていないかと思って探しましたが、これも残念ながら全く見つかりませんでした。

クマの糞も一つも見つかりませんでした。今は、もうほとんどが、下の集落周辺に移動してしまっているのがわかっていただけたと思います。

 

かつてこのあたりは、人間の背丈より高いササにびっしり覆われた場所でした。臆病者のクマたちが何頭か姿を隠しながら棲んでいたと思われます。

多くの研究者たちは、下層植生が消えたのは全てシカとして、シカを犯人にしていますが、いくらなんでもあれだけ生えていた大量のササを、シカが食べきれるわけがありません。

ある研究者の観察では、まず初めに、地球温暖化で雪の上にササが出るような年があったり、数十年に一度のササの一斉開花があったりで、地上部のササが枯れました。ササは地下茎がありますから、いったん地上部が枯れても、また地下から芽を出してきます。その芽を今度はシカが食べてしまうので、ササが復元できなくなってしまいました。もし原生林内を囲うと、その中だけには、ササが生えてきます。

シカも関係していますが、全てシカが下層植生を枯らしたようにいうのは、まちがいです。地球温暖化で枯れたのなら、大元の原因を作ったのは人間です。

 

このあと、下の別の集落に移動しました。クマたちと共存している地元の人たちの姿がありました。

テレビ局の方は、人身事故があった現場も取材されていました。

 

帰りの車の中で、突然、東京のテレビ局の方から携帯に電話が入りました。近々、兵庫に行くので、山を案内してほしいということでした。

今回のクマ狩猟再開は、兵庫県森林動物研究センター研究員の、「兵庫の森は絶好調、歴史始まって以来の豊さを誇る森」ということが前提となっています。

もう少し早くマスコミのみなさんが熊森に注目してくださって、現地を見にきていただき、前提が全く間違っていることを報道してもらっていれば、狩猟再開はくつがえせたのではないかと思いました。兵庫の奥山は、人工林も自然林も、林内は大荒廃しています。

 

 

 

 

 

 

 

8月18日 兵庫県庁で記者会見 その2

次に、室谷副会長らが先程の要望書提出に引き続き、記者のみなさんに、

なぜ、兵庫はクマ狩猟を再開してはならないのか

説明しました。

 

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メディアの質問に答える熊森スタッフたち

 

生息地の自然環境がなんら改善されていない

くまもりが、クマ問題を解決するには奥山人工林を除去して自然林に戻すしかないと指摘してから22年たちますが、生息地問題は何一つ解決されていません。

 

(1)<兵庫県クマ生息地の人工林率>は、22年間、1%も低減されていません

一説に、人工林率が40%を超すとクマは絶滅に向かうそうです。どの町も、もう十分に絶滅に向かう人工林率です。絶滅してもおかしくない人工林率です。

 

宍粟市 73.2%

豊岡市 43.6%

香美町 48.6%

新温泉町45.0%

養父市 61.2%

朝来市 65.7%

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昼でも林内が暗い人工林・生物は棲めない(朝来市)

 

兵庫県担当者は、兵庫県は森林整備に大いに力を入れてきましたと言われます。しかし、人工林を3割間伐して林業用の整備をしただけで、下草も生えず、5年もすれば残されたスギが成長して元の木阿弥。また真っ暗な人工林が再出現です。野生動物の餌場が回復した山など知りません。この24年間に、人工林率は減るどころか増えてさえいます。経済最優先であり、野生動物や自然保護の観点では、整備してこなかったと言われても仕方がない数字です。

 

(兵庫県内民有林の人工林面積と県内人工林率)

1992年資料 21万5494ヘクタール 39.9%

2014年資料 22万1426ヘクタール 41.7%

      (+5932ヘクタール)

 

(2)<ナラ枯れやシカの食害などで、自然林にも棲めなくなっています>

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2010年ナラ枯れ(和田山) ドングリの大木が大量に枯れた

 

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シカの食害や地球温暖化で下層植生が消滅した自然林内(2014年宍粟市)

 

餌場、逃げ場、隠れ場を失った野生動物たちが人里に出て来るようになり、地元の人達が困っておられるのは本当です。すると、なんと、野生動物たちを守るためにあるはずの環境省は!野生動物を大量に捕殺することで、問題を解決しようと言い出したのです。

 

奥山の大規模人工林化とわずかに残された自然林の荒廃によって、本来のクマの生息地が失われてしまっています。相手を思いやるやさしい心が少しでもあれば、人間としてクマたちに申し訳ないと謝らねばなりません。

しかし、あろうことか、兵庫県は、クマの命をレジャーやスポーツとしての「狩猟」で殺してくださいとハンターたちに差し出そうというのです。

私たちは胸の痛みに耐えかねて、兵庫県井戸知事をはじめ、担当職員、兵庫県森林動物研究センター研究員たちに、生態系保全上、人道上、教育上、この様な殺し方を、やめて下さいとお願いしています。・・・県庁記者クラブで、一生懸命説明しました。

 

兵庫県には、東中国山地地域個体群(氷ノ山山系を中心とした、岡山・鳥取をまたぐ個体群、絶滅のおそれのある地域個体群)と、近畿北部地域個体群(豊岡市から京都府の丹後半島にまたぐ個体群)の2つのクマ個体群が存在しています。当会では、そのどちらの生息地も何度も歩いて調査しています。自動撮影カメラをあちこちに設置してクマの生態調査もしています。1か月に1分間、通過するクマが写ればいいとこです。体が丸見えのこんな山には臆病なクマは棲めません。

 

下層植生を失った山に追い上げ、クマを撃つ非人道性

ここで撃つのです

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東中国山地地域個体群 (2015年10月)

ここで撃つのです

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近畿北部個体群(2016年4月)

山の中がどこまでも見渡せるこのような荒廃した自然環境で、人は一方的にクマを撃つのです。クマの方は丸腰です。

狩猟はスポーツといわれますが、こんな狩猟は不公平そのものです。しかも、マタギの時代と違って、銃の性能は飛躍的にアップしており、5km以上も!飛弾できる望遠鏡つきライフル銃です。その上、奥地まで舗装された林道が完備されており、人間は楽々車で移動です。ゲームといっても、初めから勝負が決まっています。いじめそのものです。

 

県庁担当者は、山の恵みは昔からいただいてきた当然なものと言われますが、長野や東北地方のマタギと違って、兵庫県の歴史にはそのようなクマ撃ちはいません。

日本はクマを狩猟獣に指定しているから、狩猟するのは当然とも言われましたが、狩猟実施県は、山が深くて下層植生が生い茂っています。20年前の兵庫県の自然林は、下層植生に覆われたもっともっといい山でした。

明治以降、日本が狩猟を導入したことが良かったのかどうか、このあたりで考えねばならないことですが、今回それは置いておくとして、とにかく、こんな逃げ場のない山で狩猟再開などむごすぎると思うのは、私たちだけではないはずです。

 

県の、増えすぎたという生息数の推定方法に重大疑問

指摘済みに付きカット

 

被害防除・自然林再生こそ全力で

クマが集落に出て来て困っている地元のみなさんのために、兵庫県がすべきことは、短期的には誘引物の除去、追い払いや草刈りなどの人里での被害防除です。どうしても困る時は、ハチミツ以外の誘引物を使った有害捕獲、中長期的には奥山自然林の再生です。

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炎天下、地元からの依頼を受け、クマがが潜みそうな場所の草刈りに励む熊森ボランティア

 

地元は過疎化高齢化で被害防除が思うように進みません。

野生動物たちとこの国で棲み分けるには、野生動物が潜めないように、人里を昔のように見通しの良い場所にしておかねばなりません。

若者のみなさん、都市市民のみなさん、年に1回でもいいので、熊森のボランティア活動に参加されませんか。

仲間はみんな優しいし、心身の健康にもとてもいいです。

私たちは、都市と郡部、お互いに助け合って生きて行く国を作っていきたいと願っています。(完)

 

 

8月7日 第19回くまもり全国大会 前半速報

会場の都合で、初めて夏の全国大会となりました。

暑い中お集まりくださったみなさん、ありがとうございました。

 

最初に、この1年間に亡くなられた鳩山邦夫顧問、梅本奈良地区長、一般会員のみなさんに、黙とうをささげました。

 

オープニングは、早苗ネネさんの「夏の思い出」です。すばらしい歌唱力です。2番は全員で歌いました。

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森山会長の挨拶3分

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熊森が全国で支部活動を展開しているのは、実はすごいことなんですよ。我が国の自然保護団体の中でも、こんなことができているのは熊森だけです。そんなすごい団体だったのか、そんな団体を支えているんだという会員としての自覚と誇りを持って、どこでも胸を張って、「熊森会員です」と、堂々と名乗って下さい。

リーダーとなる条件は、弱者を守るために、本気で怒れるかどうかです。燃える思いを何年たってもずっと持ち続けられるかどうかです。

リーダーがいないと運動は進みません。全生物に畏敬の念を持つ持続可能な21世紀文明を構築していくために、熊森リーダーよ、各地に出でよ。

 

室谷副会長の基調報告10分

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年1回の大切な基調報告を、今年から会長に代わって後継の副会長が行いました。

 

(副会長報告要約)

熊森20年目の活動に入っています。多くのみなさんが私たちの活動に共感して参加し、ご支援くださって、ここまで来ることが出来ました。

 

兵庫県は平成8年からツキノワグマの狩猟を禁止にしました。これは、23年前、中学生だったわたしたちが、兵庫県のツキノワグマが絶滅しないように、当時の貝原知事に直訴したり、今の天皇皇后両陛下にお手紙を書いて訴えたりした結果、ご理解をいただき勝ち得たものです。

しかし、今、兵庫県は今秋から、クマ狩猟を再開しようとしています。

兵庫県は兵庫県森林動物研究センターのある研究員が、捕獲数と目撃数をもとにコンピューターシミュレーションしたデータを使って、兵庫県のクマは1992年の60頭が爆発増加して2015年には940頭になったと結論づけています。

しかし、この推定生息数は、人里で捕獲されたり、人里で目撃されたりしたツキノワグマの数を元に計算されており、目撃情報に至っては、同じクマかどうかを検討することなく1頭としてカウントしてしまっています。また、繁殖率が低いはずのクマの増加率が、シカ並の15%~24%になっているなど、ふつうに考えると納得できないことだらけです。

 

統計学が専門の日本福祉大学の山上俊彦教授は、兵庫県のモデルそれ自体が、

①、捕獲が増えれば生息数が増加するという前提に立っていること、

②、2010年山の実りが大凶作の際捕獲された101頭という前代未聞のすごい数を異常値として処理していないこと、

③、隣接県である京都や岡山、鳥取との間の移動が考慮されていない

など、推定法に様々な問題点があるとし、どう考えても940頭は「過大推定」であり、計算の重要な要素となる「捕獲率、自然増加率、生存率」は、事前に用意されたシナリオに沿って事後的に設定されたと批判されてもやむを得ないと結論づけています。

山上教授が、兵庫県が公表した資料をもとに標識・再捕獲法という推定法でシミュレーションをすると200~400頭という結果になりました。

推定生息数の計算というのは、前提や要素を変えることにより、いくらでも値が変わるものです。このような机上の計算によって兵庫県のクマは爆発増加したことにされ、環境省が安定生息数とする800頭を超えたからと、狩猟が再開されようとしているのです。

 

兵庫県の狩猟再開で何より問題なのは、推定生息数の数字だけに着目し、クマ本来の生息地である兵庫県の奥山が大荒廃してクマが棲めなくなっていることを全く考慮していないことです。

奥山には放置されたスギ・ヒノキの人工林が延々と広がり、林内は今も下層植生がゼロです。この状況は、1992年に私たち中学生が声を上げた24年前から、ほとんど何も改善されていません。

一方、わずかに残る自然林は、地球温暖化や酸性雨のためか、近年猛スピードで劣化し、ナラ枯れでドングリが実る木々が枯れてしまい、笹の一斉開花やシカの食害などで下層植生がきれいに消え、クマの夏の餌である昆虫もいなくなっています。もはや自然林内もクマの餌場や棲家ではありません。生息環境がこのような危機的な状態なのに、なぜ兵庫県は、クマが絶滅の危機を脱したなどと言えるのでしょうか。わたしたちが自動撮影カメラを何台も掛けて調べたところ、奥山は、ほぼ空っぽで、人里にクマの生息分布が移動しており、ドーナツ化現象が起きています。

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下層植生も昆虫も消えた原生的な森の中

延々と続くブナの木々に残る多くの古いクマの爪痕は、ここがかつてクマの生息地であったことを示す

 

狩猟とは、被害も被害の恐れもないのにレジャーやスポーツとして野生動物を獲ることです。山の中にそっと潜んでいる数少ない臆病なクマまで、犬をかけて追い回して捕殺するというのは、あまりにも残酷です。熊の胆が漢方薬で高く売れ、うまくいくとクマ1頭で100万円になると言われています。乱獲も心配です。

兵庫県のクマ狩猟再開という間違った動きが、西日本の他府県に広がっていくことも予測され、これも心配です。今後も、兵庫県に対し、方針変更を求めてできる限りのことをしていく決意です。

 

奥山荒廃に伴い、クマだけでなく、シカ、イノシシ、サルなど日本各地で野生動物が山から出て来るようになりました。戦後の森林政策の失敗によるものです。地元の人達は本当に困っておられます。野生動物たちは有害獣として大量に捕殺され続けており、まだまだ捕殺拡大の一途です。

このような野生動物の大量捕殺は、全国で10年以上も続けられていますが、これまでのところ被害低減の成果がほとんど上がっていないのが現状です。殺しても殺しても里に餌がある限り、すぐに元の数に戻ってしまいます。大量捕殺というのは、現象に対する対症療法でしかなく、生命軽視思想に基づく残虐な目先の解決法です。野生動物の本来の生息環境である奥山荒廃の問題を、人間が責任を持って解決し、野生動物たちが山に帰れるようにしてあげて棲み分けが復活しない限り、真の解決にはなりえません。

 

先日九州の山を視察してまいりましたが、どこも植えられるだけスギを植えたという感じで、60%を超える大変な人工林率でした。水位の低下も起きていました。人工林があちこちで広範囲に皆伐されていました。

 

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あちこちで皆伐されている九州の人工林

 

九州では皆伐地を放置しておけばすぐに自然林に戻っていくということですから、放置しておけばいいと思うのですが、驚いたことに、その跡地にまたスギが植林されていました。こうならないようにするには、補助金制度を変えていく必要があります。みんなで行政に訴えて、過剰に造ってしまった人工林を九州から、次々と自然林にもどしていくモデルを示してください。九州の支部のみなさんにがんばっていただきたいです。熊森が各地で、自然林再生のモデルを示していけるようにがんばりましょう。

 

経済はとても大切ですが、経済を最優先すると、人間が生きるために不可欠な自然を破壊してしまうだけでなく、平和で安心して暮らせる社会や、人間性そのものまでをも破壊してしまいます。

日本社会は今、大変で、自分のことだけで手がいっぱい、自然保護どころではないという声も聞こえてきます。そんな中で、自然を守り、他者のために、他生物のために活動しているわたしたち熊森会員の生き方は、多くの人々に、人はどうやって生きていけばいいのかという指針を与えるものです。

わたしたちは、持続可能な生き方とはどういうものか、ライフスタイルや生き方の提案もしていかなければならないと考えます。

命というものの価値が本当に小さく軽くなってしまっている現代だからこそ、わたしたち熊森の自然保護活動はより大きな意味をもっています。会員のみなさんは誇りを持って活動し、何よりも多くの人々に熊森を広めていただきたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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