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2012-01-28

「兵庫県第3期ツキノワグマ保護管理案」パブコメ ②数十年間山を歩き続けてきた民間研究者たちがそろって証言「クマたちは、もう生き残れない」

「兵庫県第3期ツキノワグマ保護管理案」パブコメの意見提出締切日が近づいてきました。

中国山地の奥を数十年間歩き続けて来られ、今も歩いておられる民間研究者たちに意見を聞いてみたところ、見事、みなさん同じ意見でした。

・クマは、人間圧により、地球規模で絶滅しようとしている。これは、世界中の研究者の一致した意見だ。

・かつてクマたちが棲んでいた奥山生息地が、開発や針葉樹林化によりクマたちの棲めない山になって久しいが、日本では全くと言っていいほど奥山の復元策が進んでいない。

兵庫県のクマ生息地の人工林率宍粟市73%、朝来市66%、養父市61%、豊岡市 44%、香美町44%、新温泉町45%

・奥山生息地を失ったクマたちは、しかたなく集落周辺に潜んで生きるようになってきているため、目撃数、捕獲数、人身事故…どれも増えていくのが当然である。1頭のクマに、多くの人間が遭遇する環境になってきている。これをもって、クマ数激増と見なしてはいけない。(ドーナツ化現象)

・若い研究者たちが最先端科学技術を使い、コンピューター画面とにらめっこして出した生息推定数が、なぜ現実とかけ離れたものになってしまうのかというと、かれらが数字と格闘するだけのバーチャル世界に埋没してしまっており、時間をかけて山を歩き続けていないことと、エリート過ぎてクマという弱者の立場に立ってものを見ることができなくなっているから、クマの行動が理解できないのだろう。若い研究者たちにとって、クマは研究対象物体にしか過ぎないため、生き物としてのクマや命としてのクマを理解できなくなっているように感じる。

・山を歩き続けていたら、奥山にも里山にも、クマたちが安心して棲めるところが、もはやないことがわかってくるはずだ。自然林の中に、以前豊富にあったクマたちの食料が、なぜか消えている。クマたちの悲しい悲鳴が聞こえてくるはずだ。若い研究者たちは、網をかぶらなければ山中を歩けないほど虫だらけだった以前の山を見た経験がないから、今、自然林で起きている異変に気付けないのは仕方がないかもしれない。

→人と会うことなく安心して棲める生息地を保全・復元してやらない限りは、たとえ一時的にクマ数が増えたとしても、クマたちが生き残ることはできない。長期的には確実に絶滅に向かっている。クマに対して駆除促進や狩猟再開を持ち出すべきではない。

・去年の秋、奥山でたわわに実った木々の実りがあちこちで風に揺られているのをいくつか見かけたが、まったくクマたちが食べに来た跡がなかった。以前なら、クマの痕跡でいっぱいになっていた。

くまもり授業を始めて10年目の小学校で環境教育

なんと今年で10年目!毎年、環境教育授業をさせていただいている尼崎市の小学校に、1月17日(火)、今年もスタッフ7人で授業に行ってきました。

2年生の授業で、「今日は、私と一緒に森の王様が来てくれました。さて誰でしょう?」とお姉さんが言うと、「クマのツッキンや!」とみんなお見通し。毎年、クマのツッキンに会うのを楽しみにしてくれているという子どもたち。覚えてくれていて、うれしいです。

「クマは、いろいろなところで糞をしたり、木に登って枝を折ったりして、森づくりをしているんだよ。」と言うと、クマが木に登るの?と、子どもたちは半信半疑。でも実際のビデオ映像を見て納得。「へえーすごい。あんな上まで登るんだね。」先生もびっくり。森で暮らすクマの穏やかな姿にみんな釘づけでした。

1年生の授業の一幕:クマの食べ物クイズ
クマは季節を通じていろんなものを食べるんだよ。

3年生の授業の一幕:広葉樹の根っこ
地面の下には、根っこが網の目の様に絡みあってしっかりと張られているよ。

授業のあとは恒例の給食タイム。クラスで一緒にお昼ご飯をいただきました。クマや森のことに留まらず、「どこで活動しているの?」「どんなことをしているの?」と、子供たちは熊森についても興味津々。いろんなお話ができました。

私たちにとって、奥山の森の生態系はとても大切なもの。でも、都会で暮らしていると、日頃、森や野生動物と触れ合う機会は多くありません。だからこそ、そのすばらしさや危機的状況を知った者が、保全の必要性を伝えていこう。そして、環境教育を通じて、森や動物を守るために活動したいという仲間を増やしていきたい。改めてそう思った一日でした。

【実施授業】
1年生…もりとどうぶつ
2年生…森とどうぶつ(植物+動物=森)
3年生…森の力と動物

「兵庫県第3期ツキノワグマ保護管理案」パブコメ  ①実質は進んでいない野生動物育成林事業

兵庫県では、2006年(平成18年)~2009年(平成21年)の4年間に、森林税であるみどり税(県民ひとりあたり年間800円負担)約4.6億円を使って876ヘクタールもの広大な山で、「野生動物育成林事業」が行われたことになっています。

一般県民のみなさんは、さぞ、野生動物たちの餌場が復元されたことだろうと思われるでしょう。しかし、当協会が昨年、現地検証や調査を行ったところ、確かに事業費は使われていましたが、野生動物の餌場を復元するためにはまず使われていませんでした。

以下、くまもり通信70号(2011年12月当協会発行)より抜粋

実態は、まるで鳥獣被害防止事業

21ヶ所の整備報告を見ると、そのうち19ヶ所は、バッファゾーン事業のみ、またはバッファゾーン事業と奥地広葉樹林整備事業(=広葉樹林の間伐)

がセットになったものでした。

バッファゾーンというのは、集落裏の山裾(広葉樹林が多い)を何十メートルかの幅で、動物たちが人里に出てきにくいように帯状に皆伐することで、人間のための鳥獣被害防止事業です。野生動物の餌場はかえって減少します。

クマのために奥地に広葉樹を植えた事業は、21ヶ所中、たった2ヶ所だけでした。

しかも、2ヶ所共、餌場復元効果ほぼなし

A町総事業費2341万円…30haの事業面積の中のたった1.79ha に、ケヤキ(実がならない)とコナラが500本ずつ植えられていただけでした。元々この山のほぼ全て29haは、広葉樹林。竹や広葉樹を9ha間伐したそうです。

B町総事業費2158万円…28ha の事業面積の中の4ヶ所計わずか0.35haをくり抜いて、実のなる木600本を植えたそうです。しかも、どれも苗木の生育は悪く、2ヶ所は、シカよけ網が破れたり倒されたりで、シカが入り、苗木がほぼ消えていました。周囲の人工林を12ha間伐したとのことですが、弱間伐のため林内は暗く草も生えていませんでした。

まもりは、昨年末、この予算を本来の奥山生息地の広葉樹林復元に使ってほしいと県に要望しに行きました。県の回答は、このような予算の使われ方は、地元の要望だからやむおえないということでした。

県民みどり税の導入にあたっては、奥山広葉樹林復元にも使うということで、私たちも賛成した経緯があります。これでは約束違反だとして、都市市民が税の負担を拒否したら、みどり税は成り立たなくなるのではないでしょうか。

くまもりは、人間が壊した野生動物たちの奥山生息地の復元に取り組まずに、山から出て来た野生動物たちに害獣のレッテルを張り、保護管理というわけのわからない日本語訳を用いて、実際は、動物たちを殺すことに目を向けている「兵庫県第3期ツキノワグマ保護管理案」の見直しを求めます。(注:このような野生動物対策は、兵庫県独自のものではなく、環境省の方針です)

愛知県に残された貴重な里地里山を巨大造成するトヨタテストコースの見直しを求める署名

他団体が集めている署名ですが、ぜひご協力ください。署名用紙は、ここをクリックしていただければ取り出せます。

「21世紀の巨大開発の見直しを求める」サイトはこちら  http://bio-diversity.info/

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