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2012-03-30

くまもりは何を訴えているのか ー 群馬県支部が、群馬県庁に出した意見書

シカは本当に森を食い尽くす害獣なのか、シカ問題の究明にヒント?  馬毛ジカの窮状

馬毛島を空撮 2010年2月28日 – YouTube

<馬毛島の位置と大きさ、歴史>

日本で2番目に大きな無人島である鹿児島県馬毛島は、種子島の西11キロメートルにある面積約8㎢の島である。

リゾート開発全盛期に、海洋リゾートを名目に大半が買収されたのち、1999年はじめより核燃料中間貯蔵施設の話が持ち上がる。2000年には買収企業である(株)馬毛島開発 の採石事業を鹿児島県知事が認可して、ダイナマイトを使った大規模 な掘削が行われた。2009年には、鳩山内閣時、普天間移設候補地になり、所有者は2本の滑走路を作り、島のレンタルを国に申し出るが、話が進まなかった。現在、2011年5月15日、防衛省が馬毛島で米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)を実施する方向で最終調整に入っているが、地元の首長らは、断固反対の意思を表明している。

この島に昔から住み続けてきた馬毛ジカは、人間に生息地を破壊され、生きられなくなって生態に変化が出ているもよう。日本ジカが、今、各地で起こしている生態変化を解くカギがここにあるような気がする。

以下は、朝日新聞夕刊 2011年10月4日より転載させていただいたものです。
進む伐採 固有のシカ半減 馬毛島[2] 失われゆくもの

固有亜種のマゲシカは、開発が進んだこの10年間に半減した=7月4日、鹿児島県・馬毛島、本社ヘリから、溝脇正撮影

馬毛島には野生のシカがいる。ニホンジカより黒っぽく、体が一回り小さい固有亜種マゲシカだ。奈良時代に皮を年貢に納めた記録があり、千年以上も独自の集団を保ってきたらしい。島の最高点の岳之腰(71メートル)から、なだらかに広がる森林と草原に暮らす。
その生息地が今、十字形の「滑走路」工事で無残な姿をさらしている。7月に本社ヘリで上空を飛んだ。
ブルドーザーやショベルカー、ダンプカーなど十数台が土地を削り、土砂を運んでいた。マゲシカは、まだ開発が及んでいない南部の草原地帯に集まってい る。草は深く食べられ、土が透けて見えるぽど短い。「森が減って餌が不足し、シカと植物のバランスが崩れている。このままでは近い将来、餌不足がひどくな る」。ヘリに同乗した北海道大助教の立澤史郎さん(51)がため息をついた。
保全生態学者の立澤さんがマゲシカの調査を始めたのは1987年。手弁当で3ヵ月ごとに漁船で島に渡り、廃校になった校舎跡に泊まり込んで個体数を配録 した。人間も天敵もいない孤立した環境。増えすぎると栄養状態が悪化して個体数が誠り、減りすぎると、また増える。自然の調節メカニズムが働いていた。
2000年8月の推定生息数は過去最高の約570 頭。その後、上陸調査は行われていない。土地を買い集め、開発に乗り出した馬毛島開発(現タストン・エアポート)が、島内への立ち入りを許さないからだ。
この10年で島の森林は約125ヘクタールが伐採され、半減した。工事の影響で元の植生が失われた土地は、島の半分近い約360ヘクタールに及ぶ。本社 ヘリを利用した今年7月の調査では、マゲシカの推定数は約280頭と半減した。生息環境が悪化し、個体数の回復は望めない。植生の復元など保全策をとらな ければ、絶滅の恐れが高まると見られる。
マゲシカだけではない。メダカやドジョウが暮らし、シイ類やタブノキの照葉樹林が茂った「椎ノ木谷」も、ほとんどが跡形なく埋め立てられた。葉が細く草丈40センチほどの固有種ホソバアリノトウクサが50年代に見つかった場所も、工事で表土がはがされた。
馬毛島に生息する動植物は、公的な調査がほとんど行われていない。立澤さんは憤る。「実態が分からないまま、なし崩しに破壊していいのか。どんな開発をするにせよ、まず専門家による詳しい現状調査を行うべきだ」(安田朋起)

3月27日、被害防止のために捕獲した鳥獣の食品利用や流通の促進が新たに法制化

参議院先議法案として、今国会の参議院農水委員会に提出されていた、野生鳥獣の捕殺を推進するための自民党法案が、多くの反対にあい撤回された。しかしその後、参議院農水委員長(小川勝也参議院議員)案として、鳥獣被害防止特措法の改正(改悪)案が出され、全会一致で、3月23日に参議院で可決3月27日に衆議院で可決されました。

鳥獣被害防止特措法の主な改正(改悪)内容

(改正前)

第十条 国及び地方公共団体は、被害防止計画に基づき捕獲等をした対象鳥獣が適正に処理されるよう、当該対象鳥獣に関し、処理するための施設の充実、環境に悪影響を及ぼすおそれのない処理方法その他適切な処理方法についての指導、有効な利用方法の開発その他の必要な措置を講ずるものとする。

⇒赤字部分が改正後

第十条 国及び地方公共団体は、被害防止計画に基づき捕獲等をした対象鳥獣が適正な処理及び食品としての利用等その有効な利用を図るため、必要な施設の整備充実及び食品としての利用に係る技術の普及、加工品の流通の円滑化を図るため、必要な措置を講ずるものとする。

<熊森の見解> 飽食日本では、スーパーに行けば、どう考えても食べきれないまでの食品が、世界中また全国から集められ、山のように積み上げられています。年間に廃棄処分されている食品は大変な量です。そんな中で、野生ジカを食べる文化を作ろうと動きに動いている人たちがいて、行政とつながっていっています。人間は、野生鳥獣を殺すこと、食べることばかり考えていていいのでしょうか。シカ問題を、シカを殺さずに解決しようという動きがこの国の行政にほとんど見られないことを悲しく思います。

命はどんな生き物にとってもひとつしかない大切なものです。熊森は可能な限り、殺生をしない国をめざしています。

3月22日 自民党が国会に提出していた、野生鳥獣捕殺をいっそう強化するための改正法案を撤回

和歌山県選出の鶴保庸介参議院議員らが中心になって作成した野生鳥獣捕殺をいっそう強化するための改正法案が、昨年度の国会に自民党から提出されていました。(ただし、法案提出の段階では、鶴保議員の名前は党内での形式的な事情により、消えています)自民党が改正を求めたのは3つの法律に対してで、改正を求めていた主な内容は、以下です。
鳥獣保護法について・・・現在の夜間発砲規制を緩和し、必要な時は夜間でも銃を発砲できるようにすることなど。
銃刀法について・・・ライフル銃所持の規制緩和を行い、もっと多くの人がライフル銃を使えるようにすることなど。
鳥獣被害防止特措法について・・・農林水産業に係る被害の原因となっている鳥獣を「有害鳥獣」と規定し、捕獲後、食品等として活用するための施設の整備充実などを図ることなど。
自民党はこの提出法案を、3月22日に撤回して引き下げました。党外や国会議員たちからの反対意見が多かったためと思われます。
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