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2016-08

8月18日 本部:山は大荒廃、クマ狩猟再開中止の要望書を兵庫県に提出⑩

13:30~14:00

室谷くまもり副会長ら3名は、兵庫県庁農政環境部長室に出向き、井戸敏三兵庫県知事あてのクマ狩猟再開中止の要望書を、知事の代理として出席してくださった秋山農政環境部長・遠藤環境創造局長・塩谷鳥獣対策課長に手渡しました。

 

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秋山部長に要望書を手渡す室谷副会長

 

NHKテレビをはじめ、マスコミのみなさんで、部屋がいっぱいでした。取材に来てくださったみなさん、本当にありがとうございます。私たちの声を取り上げていただき、とてもうれしかったです。

 

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要望書を提出後、行政担当者(机右側)に、下層植生が消えた山でのクマ狩猟再開は残酷すぎるので中止するよう訴える熊森本部(机左側)

 

室谷副会長は、「クマ生息地の人工林の危機的状況が熊森結成の20年前と比べて全く回避できていないばかりか、今では自然林まで劣化してしまい、生息環境は更に悪化しているのに、推定生息数だけ見て、絶滅の危機を脱したと県が判断しているのはおかしい。

本来の奥山生息地を失っていることから、今も兵庫県のクマは絶滅の危機にある。しかも、推定生息数の計算法に非常に問題があると専門家から指摘されている。生態系保全上、人道上、教育上からも、狩猟再開は中止すべきである」などと、要望書を基に秋山部長に訴えました。

 

秋山部長は、「先日の審議会の答申や、この要望書など検討させていただき、9月中には結論を出したいと思っています」と答えられました。(先日の審議会で、クマ狩猟を再開することについての審議はゼロだったのに、どうやって検討されるのであろうか)

 

今回のクマ狩猟再開は、地元や猟友会には相談せず、兵庫県森林動物研究センターの研究員が出したデータを元に、兵庫県本庁が決めたものだそうです。再開理由はクマの数が増えたから、減らすために人間が山に入って狩猟する必要があると判断したということでした。県内のクマ生息数を940頭と決めつけて、800頭まで減らすために140頭のクマを駆除したいのですと、県庁の担当者はしきりにおっしゃっていました。

 

これらの数字にどこまでの信憑性があるのか、全く不確定なのに、みなさん数字にとりつかれておられるというか、数字化されたもので自然を見ようとされているように感じました。行政は、今、どこでもこうなっているのでしょうか。

机上で数字を眺めておられるより、クマたちの本来の生息地がどうなっているか見に行かれて、胸を痛められた方が、いいクマ対策を思いつかれると思います。

 

熊森が提出した要望書を本当に検討する気がおありなら、兵庫県の推定生息数の計算法に非常に問題があると指摘されている統計学の専門家である日本福祉大学山上俊彦教授を招聘して、坂田氏の計算のどこがどうおかしいと思われるのか、じっくり説明を聞くべきでしょう。山上先生の推定では、爆発増加どころか、2010年山の実り大凶作年時の大量捕殺がたたって、兵庫県のクマ生息数は減少に転じている可能性があるとのことです。

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      山上教授作成の兵庫県クマ推定生息数の変化

注:山上先生は、これまで兵庫県庁は、1992年時の推定生息数を60頭としてきたが、それではその後のクマの増加率がシカ並になってしまい、ありえないことから、当時、200頭~350頭いたと思われるとして、上記グラフを作成されました。実際はどうだったのか、誰にもわからないことです。

 

兵庫県で、調査らしき調査が始まって、初めて兵庫県に棲むクマの生息推定数を出したのが、1994年です。県が㈱野生動物保護管理事務所に調査委託した結果の75頭~85頭です。

 

 

 

 

8月9日兵庫県環境審議会鳥獣部会 傍聴報告⑦ 

兵庫県農政環境部の暴挙、審議する前にクマ狩猟再開が決まっていた こうして社会は狂っていく

 

この日、兵庫県民会館303号室で、平成28 年度兵庫県環境審議会鳥獣部会が開催されました。

熊森は傍聴に出かけました。

審議会冒頭、鳥獣対策課の担当者が、「平成27年度当初の県内ツキノワグマ生息推定数は940頭です。兵庫県ツキノワグマ保護計画」では生息推定数が800頭以上になれば狩猟禁止の制限的な解除を行うことになっています。本日は、狩猟期間1か月、一人当たり捕獲できる数1頭についてご審議賜りたいと考えています」と言われ、熊森はずっこけました。

秋山環境部長も井戸知事も土井森林動物研究センター次長も、「狩猟を再開するかどうかは、審議会で審議してから決めます」と、これまで私たちに言われてきました。しかし、審議会に行ってみると、狩猟再開は審議する前からもう決まっていたのです!茶番もいいところです。

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審議会風景

傍聴してわかったことは、兵庫県としては、兵庫県森林動物研究センター研究員がコンピューターで計算した推定生息数940頭というどこまで本当かもわからない数字にこだわっていて、狩猟により今秋140頭殺して800頭にしたいと考えているということでした。生き物を数でしか見ていません。まるで殺生が数字遊びになっていると感じました。940頭も800頭も、みんな人間が勝手に決めた数字です。(人間、いったい何様なんだ。クマたちの生息地を大破壊しておきながら、クマが食料を求めて里に出て行けば有害駆除で殺す。山にそっと潜んでいたら、今度はハンターが追い掛け回して狩猟だと遊びで殺す。人間の倫理観は一体どうなっているんだ。)

兵庫県のハンター歴40年の猟友会委員は、クマを狩猟したいと言っている兵庫県の猟友会員を自分は知らないと正直に言われていましたが、京都から来ている委員は、京都にはクマを狩猟したいと言っているハンターがたくさんいるから、今秋、一斉に兵庫県に狩猟しに入って来るだろうと言われていました。

兵庫県立大学の先生たちが、クマを大量に殺さねばならないと思わせる恣意的な資料を、パワーポイントで次々と出していました。傍聴席にいた何人かのマスコミ関係者に狩猟再開が正当と思わせるためでしょう。(発表内容の不公平さやごまかしの多さには驚かされました。研究者の良心を捨てたのか、魂を売ったのか、そこまでして、行政に媚び入りたいのかと、これらの若い研究者たちの生き方を残念に思いました。いつか、天が罰することでしょう)

野生動物は、豊かな餌場と、安心して繁殖できる生息地を失うことによって、絶滅するのです。にもかかわらず、生息地についてふれた発表は、ゼロでした。(こんなごまかし審議会をやっていることを知事が知られたら、激怒されるのではないでしょうか)

<審議会を傍聴して>

生命の尊厳や自然への畏敬の念がなく、狩猟やジビエ料理が好きなごく一部の研究者たちが、専門性や科学性という言葉を前面に出して、よくわからない行政マンにうまく取り入り、祖先が保ってきた輪廻の思想や、生きとし生けるものの命は皆同じという優しくすばらしい共存社会を、狂わせようとしていると感じました。

兵庫県によると、兵庫県庁には、狩猟再開に反対する声が5日間で120件入っているそうです。また地元役場の方には、狩猟賛成の声が多数届いているそうです。

地元の人達に、山中で潜んでいるクマを狩猟で追い掛け回すことは地元のためにならないこと、被害防除と森の復元や再生でクマ問題を解決していかないと、クマを初めとする野生動物たちを絶滅させ、水源の森を失い、人類も破滅することを知っていただきたいです。

p.s 部会長の江崎保男兵庫県立大学教授は、審議会途中に、突然思い出したように、「みなさん、制限的な狩猟禁止解除に同意していただけたということでいいですね」と、全く審議もしていないのに、委員たちに同意を求めました。誰も異議を唱えませんでした。同意見の者しか集めない行政の審議会の在り方は、大変嘆かわしく危険です。ちなみに、20年以上クマ問題に取り組んできた熊森の副会長が、審議会委員に応募したら、見事落とされた経緯があります。

審議会翌朝の朝刊に決定記事 出来レース?⑧

<兵庫県のクマ狩猟再開問題>

8月9日夕方に終わった兵庫県環境審議会鳥獣部会。

この後、審議会の審議を受けての知事判断があると聞いていたので、最終決定はいつになるのかと思っていたところ、びっくりもびっくり、何と翌朝の新聞朝刊に、もう、決定記事が掲載されていました。速いなあ。

 

審議会を受けて知事が最終決断をすると聞いていましたが、審議会後、本当に知事に審議内容の報告が行ったのでしょうか。それを受けて、知事がどうするか考える時間はあったのでしょうか。

 

審議会開催以前にすでに結論は出ていて、報道記事もできていて、審議会開催は単なる「審議しました」というパフォーマンスに過ぎないのではないかと思えてきました。皆さんはどう思われますか?

 

それにしても、記者さん。県庁側からの発表だけを一方的に大本営発表記事にしておられますが、この問題に対する各方面からの声を、なぜ載せようとしないのでしょうか。記者のこの姿勢はメディアの自殺行為であると共に、国民から考える力や考える機会を奪い、一部の権力者の思い通りに社会を狂わせていく犯罪的行為なのです。本当に残念です。

 

<以下神戸新聞、8月10日朝刊記事>

ツキノワグマ個体数増 県が20年ぶり狩猟解禁へ

兵庫県が、ツキノワグマの狩猟を今冬に20年ぶりに解禁する方針を決めた。絶滅の危険性があるとして全面禁止してきたが、生息個体数が増え、集落への出没が目立つようになっための措置。11月15日から1カ月間、狩猟者一人1頭に制限して認める。

9日に開いた有識者らによる県環境審議会鳥獣部会で、県の方針が認められた。

ツキノワグマは生息個体数が減ったため、1992年度に県の要請を受け、県猟友会が狩猟を自粛。県内で100頭以下になったとして96年度には県が全面禁止した。

山裾に現れたツキノワグマ=2013年5月、豊岡市内

2003年度には県版レッドデータブックで、絶滅の危険度が最も高いAランクに指定。集落に現れた場合は、爆音やスプレーなどで追い払ってきた。

保護が奏功し、生息個体数は徐々に増加。県森林動物研究センター(丹波市)の調査では、05年以降、毎年平均約2割ずつ増えていると推定され、11年度にはレッドデータブックでBランクに下がった。

神戸新聞NEXT

15年には、推定生息数が約940頭に上った。県の第3期ツキノワグマ保護管理計画(12~16年度)では、800頭以上になれば狩猟禁止を解除することを盛り込んでいた。

一方で、20年間、ツキノワグマの狩猟についてデータがなく、捕獲頭数の見込みが分からないことから、大量捕獲を防ぐため一人1頭の限定的な解禁とする方針。親子グマについては認めない。

環境省によると、絶滅したとされる九州を含め、22都府県でツキノワグマの狩猟が禁止されている。県鳥獣対策課は「捕獲されすぎると、再び絶滅の危険性が高まる可能性もある。解禁後の実際の捕獲頭数を見て、来年度以降の方針に生かしたい」としている。(斉藤正志)

 

ツキノワグマ 本州、四国の主に落葉広葉樹林の森林に生息。体長1・1~1・5メートル、体重80~120キロ。時速40キロで走り、木登りや泳ぎも得意。環境省は、下北半島、紀伊半島、東中国、西中国、四国山地の個体群を「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定している。

 

(熊森から)

記事になったことで、たった一人の学者ハンターが推定しただけの推定生息数940頭が独り歩きし始めました。怖いことです。くまもりは兵庫県庁に、940頭推定が過大過ぎるとして推定の間違いを指摘する論文を発表している学者がいることを伝えてありますが、兵庫県庁はその学者の声を聞こうともしません。なぜなのか、ミステリーです。

 

兵庫県秋山環境部長に電話で、兵庫県ツキノワグマのレッドデータブックBランク指定は今後どうなるのかお尋ねしたところ、そのまま置いておくということでした。

 

それでは、兵庫県は、他府県からハンターを呼び寄せて、当県の絶滅の恐れのあるツキノワグマを差し出しますので狩猟を楽しんで下さいと言っていることになり、支離滅裂だと思います。誰が聞いてもおかしいと思うのですが。

 

こうなったら優秀な井戸知事に声を届けるしかないと思います。

井戸敏三兵庫県知事 E-Mail:hishoka@pref.hyogo.lg.jp

〒650-8567 兵庫県神戸市中央区下山手通5-10-1(2号館6階)

電話078-362-3009    FAX:078-341-2021  

8月7日 第19回くまもり全国大会 後半速報

くま森特別報告は、「麻生林211ha取得までの苦節9年」です。(13分間)

⑤調査

胸高直径を測って歩く滋賀県会員

「熊森滋賀は、この9年間、何回麻生林を調査したか数えられません。何回交渉に行ったかも数えられません。熊森本部・熊森支部、熊森の粘り勝ちです。自然を守る、復元すると言っても、この執念のない人にはできないと思います」

 

 

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本部・支部の活動報告が続きます。

今年、支部活動を発表してくださったのは、東京都支部と宮崎県支部です。

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次は、保護飼育中のクマたち、太郎、花子、とよの愛らしい映像とお世話代表によるトークです。

クマがこんなすばらしい動物であることを知ったら、誰も遊びで殺したりなどできなくなるはずです。

どんな動物もみんなすばらしいのです。知らないから、狩猟で殺せるのです。

 

熊森会員拡大のためのKSP(くまもりシーディングプロジェクト)サポーターの表彰式

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KSPサポーターで、最高は35人の会員を増やした大阪の会員です。

上の写真で表彰されているのは岐阜の会員で、26人の会員を増やしました。森山会長の講演CDを100回聞いたそうです。

KSPサポーター2016を募集中です。ご登録くださった方には、会員拡大グッズセットが送られます。

 

第2部は楽しかった懇親会です。

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ネネさんが、昔のヒット曲や和歌うたなどをたっぷり歌ってくださいました。みんなとても楽しんでいました。

ネネさんは、自然を守りたくて、町長選挙に立候補したことがあるそうです。トークも面白かったです。

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最後は、くまもりエールです。

 

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記念撮影

 

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第19回熊森全国大会の詳細は、会報89号で会員のみなさんにお伝えします。

 

 

来年の全国大会は、4月22日です。節目となる20周年なので、盛大にやりたいと思います。

全国会員の皆さん、今からぜひ、ご予定ください。

 

 

 

8月7日 第19回くまもり全国大会 前半速報

会場の都合で、初めて夏の全国大会となりました。

暑い中お集まりくださったみなさん、ありがとうございました。

 

最初に、この1年間に亡くなられた鳩山邦夫顧問、梅本奈良地区長、一般会員のみなさんに、黙とうをささげました。

 

オープニングは、早苗ネネさんの「夏の思い出」です。すばらしい歌唱力です。2番は全員で歌いました。

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森山会長の挨拶3分

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熊森が全国で支部活動を展開しているのは、実はすごいことなんですよ。我が国の自然保護団体の中でも、こんなことができているのは熊森だけです。そんなすごい団体だったのか、そんな団体を支えているんだという会員としての自覚と誇りを持って、どこでも胸を張って、「熊森会員です」と、堂々と名乗って下さい。

リーダーとなる条件は、弱者を守るために、本気で怒れるかどうかです。燃える思いを何年たってもずっと持ち続けられるかどうかです。

リーダーがいないと運動は進みません。全生物に畏敬の念を持つ持続可能な21世紀文明を構築していくために、熊森リーダーよ、各地に出でよ。

 

室谷副会長の基調報告10分

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年1回の大切な基調報告を、今年から会長に代わって後継の副会長が行いました。

 

(副会長報告要約)

熊森20年目の活動に入っています。多くのみなさんが私たちの活動に共感して参加し、ご支援くださって、ここまで来ることが出来ました。

 

兵庫県は平成8年からツキノワグマの狩猟を禁止にしました。これは、23年前、中学生だったわたしたちが、兵庫県のツキノワグマが絶滅しないように、当時の貝原知事に直訴したり、今の天皇皇后両陛下にお手紙を書いて訴えたりした結果、ご理解をいただき勝ち得たものです。

しかし、今、兵庫県は今秋から、クマ狩猟を再開しようとしています。

兵庫県は兵庫県森林動物研究センターのある研究員が、捕獲数と目撃数をもとにコンピューターシミュレーションしたデータを使って、兵庫県のクマは1992年の60頭が爆発増加して2015年には940頭になったと結論づけています。

しかし、この推定生息数は、人里で捕獲されたり、人里で目撃されたりしたツキノワグマの数を元に計算されており、目撃情報に至っては、同じクマかどうかを検討することなく1頭としてカウントしてしまっています。また、繁殖率が低いはずのクマの増加率が、シカ並の15%~24%になっているなど、ふつうに考えると納得できないことだらけです。

 

統計学が専門の日本福祉大学の山上俊彦教授は、兵庫県のモデルそれ自体が、

①、捕獲が増えれば生息数が増加するという前提に立っていること、

②、2010年山の実りが大凶作の際捕獲された101頭という前代未聞のすごい数を異常値として処理していないこと、

③、隣接県である京都や岡山、鳥取との間の移動が考慮されていない

など、推定法に様々な問題点があるとし、どう考えても940頭は「過大推定」であり、計算の重要な要素となる「捕獲率、自然増加率、生存率」は、事前に用意されたシナリオに沿って事後的に設定されたと批判されてもやむを得ないと結論づけています。

山上教授が、兵庫県が公表した資料をもとに標識・再捕獲法という推定法でシミュレーションをすると200~400頭という結果になりました。

推定生息数の計算というのは、前提や要素を変えることにより、いくらでも値が変わるものです。このような机上の計算によって兵庫県のクマは爆発増加したことにされ、環境省が安定生息数とする800頭を超えたからと、狩猟が再開されようとしているのです。

 

兵庫県の狩猟再開で何より問題なのは、推定生息数の数字だけに着目し、クマ本来の生息地である兵庫県の奥山が大荒廃してクマが棲めなくなっていることを全く考慮していないことです。

奥山には放置されたスギ・ヒノキの人工林が延々と広がり、林内は今も下層植生がゼロです。この状況は、1992年に私たち中学生が声を上げた24年前から、ほとんど何も改善されていません。

一方、わずかに残る自然林は、地球温暖化や酸性雨のためか、近年猛スピードで劣化し、ナラ枯れでドングリが実る木々が枯れてしまい、笹の一斉開花やシカの食害などで下層植生がきれいに消え、クマの夏の餌である昆虫もいなくなっています。もはや自然林内もクマの餌場や棲家ではありません。生息環境がこのような危機的な状態なのに、なぜ兵庫県は、クマが絶滅の危機を脱したなどと言えるのでしょうか。わたしたちが自動撮影カメラを何台も掛けて調べたところ、奥山は、ほぼ空っぽで、人里にクマの生息分布が移動しており、ドーナツ化現象が起きています。

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下層植生も昆虫も消えた原生的な森の中

延々と続くブナの木々に残る多くの古いクマの爪痕は、ここがかつてクマの生息地であったことを示す

 

狩猟とは、被害も被害の恐れもないのにレジャーやスポーツとして野生動物を獲ることです。山の中にそっと潜んでいる数少ない臆病なクマまで、犬をかけて追い回して捕殺するというのは、あまりにも残酷です。熊の胆が漢方薬で高く売れ、うまくいくとクマ1頭で100万円になると言われています。乱獲も心配です。

兵庫県のクマ狩猟再開という間違った動きが、西日本の他府県に広がっていくことも予測され、これも心配です。今後も、兵庫県に対し、方針変更を求めてできる限りのことをしていく決意です。

 

奥山荒廃に伴い、クマだけでなく、シカ、イノシシ、サルなど日本各地で野生動物が山から出て来るようになりました。戦後の森林政策の失敗によるものです。地元の人達は本当に困っておられます。野生動物たちは有害獣として大量に捕殺され続けており、まだまだ捕殺拡大の一途です。

このような野生動物の大量捕殺は、全国で10年以上も続けられていますが、これまでのところ被害低減の成果がほとんど上がっていないのが現状です。殺しても殺しても里に餌がある限り、すぐに元の数に戻ってしまいます。大量捕殺というのは、現象に対する対症療法でしかなく、生命軽視思想に基づく残虐な目先の解決法です。野生動物の本来の生息環境である奥山荒廃の問題を、人間が責任を持って解決し、野生動物たちが山に帰れるようにしてあげて棲み分けが復活しない限り、真の解決にはなりえません。

 

先日九州の山を視察してまいりましたが、どこも植えられるだけスギを植えたという感じで、60%を超える大変な人工林率でした。水位の低下も起きていました。人工林があちこちで広範囲に皆伐されていました。

 

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あちこちで皆伐されている九州の人工林

 

九州では皆伐地を放置しておけばすぐに自然林に戻っていくということですから、放置しておけばいいと思うのですが、驚いたことに、その跡地にまたスギが植林されていました。こうならないようにするには、補助金制度を変えていく必要があります。みんなで行政に訴えて、過剰に造ってしまった人工林を九州から、次々と自然林にもどしていくモデルを示してください。九州の支部のみなさんにがんばっていただきたいです。熊森が各地で、自然林再生のモデルを示していけるようにがんばりましょう。

 

経済はとても大切ですが、経済を最優先すると、人間が生きるために不可欠な自然を破壊してしまうだけでなく、平和で安心して暮らせる社会や、人間性そのものまでをも破壊してしまいます。

日本社会は今、大変で、自分のことだけで手がいっぱい、自然保護どころではないという声も聞こえてきます。そんな中で、自然を守り、他者のために、他生物のために活動しているわたしたち熊森会員の生き方は、多くの人々に、人はどうやって生きていけばいいのかという指針を与えるものです。

わたしたちは、持続可能な生き方とはどういうものか、ライフスタイルや生き方の提案もしていかなければならないと考えます。

命というものの価値が本当に小さく軽くなってしまっている現代だからこそ、わたしたち熊森の自然保護活動はより大きな意味をもっています。会員のみなさんは誇りを持って活動し、何よりも多くの人々に熊森を広めていただきたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

熊森初の新聞広告 8月7日(日)⑥

第19回くまもり全国大会当日の朝刊に、熊森初の新聞広告を出しました。(兵庫県内52万部向け)

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日本熊森協会(意見広告) クリックください

 

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会場受付で、熊森の新聞広告を見て喜ぶ参加者

 

日本奥山学会 第5回研究発表会 7月10日

今年も参加してくださったみなさんに、大満足して帰っていただくことができました。

毎年、どなたに記念講演をしていただこうか、発表していただこうか、考えるのが大変ですが、発表者にも参加者にも喜んで帰っていただけ、スタッフ一同ほっとしています。

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関西学院大学法科大学院

 

記念講演: 多種共存の森―その仕組みと恵み
講師:   清和 研二 氏 (東北大学大学院教授)

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熱心な聴講者のみなさん

(感想文から)

・ご著書を読ませていただいての参加でしたが、未発表のデータもたくさんご紹介いただき、とても楽しかったです。今年も大いに勉強になりました。

・大学の研究者と市民研究者が毎年このような場で奥山の様々な事柄について発表し合っているのは、とても意義のあることだと思います。

・自然界は人間の都合で操れるような簡単なものではないことがよくわかりました。

・ご講演内容はもちろん、お人柄もすばらしいと感じました。ご自身の良心に従って、責任感を持ち、毅然と研究されています。こんな先生にこそ、環境省や林野庁の審議会委員になっていただきたいと思いました。

・もっと質問したかったです。

 

研究発表

「協働による環境共生型の森林管理のあり方―赤谷プロジェクトを事例として―」 伊藤純子氏

「巻がらし間伐の実践と効果」  松浦利重氏

「本州における野生グマの飼育と実践課題」  水見竜哉氏

 

当日の内容は、今後、学会誌にまとめさせていただきます。お楽しみに。

無慈悲なクマ狩猟再開を発案した兵庫県 ⑤みなさん、兵庫県のクマ狩猟再開に反対してください

クマたちには、餌場なし、逃げ場なし、隠れ場なし  

そこで、狩猟を楽しむ???のはどんな人

銃の前には、野生動物たちは、たとえクマであっても絶対弱者なのです。

 

 

兵庫県の山は、東北や中部と比べると山も浅く奥まで開発が進んでいます。クマ生息地は人工林が多く、わずかに残された自然林は一見緑豊かですが、内部は大部分で下層植生が消え大荒廃しています。

クマたちには、餌場も逃げ場も隠れ場もありません。こんな状態での狩猟再開はむごすぎます。

 

<春なのにササも下層植生もない兵庫県のクマ生息地内部>

①東中国山地の原生的自然林内部2016年4月23日午後5時22分

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②近畿北部地域個体群の自然林内部2016年4月18日午前7時17分

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当協会の調査では、本来の奥山生息地にはほとんどクマがいません。この2枚の写真は、1か月間カメラをかけてやっと一瞬、山中横切るクマを撮影できた貴重な写真です。

一方、集落周辺にはクマが集まっており、クマ生息分布にドーナツ化現象が起きていると思われます。

 

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以前、兵庫県の奥山自然林の林床は、ここ他県の奥山のように、人間の背丈より高い下層植生で覆われていた。2013年4月16日

 

狩猟を再開して奥山に潜んでいるわずかのクマまで追いかけ回わすと、彼らまで人里に出て来るようになり、地元にも生態系保全上にも、よくありません。クマ問題は、スポーツやレジャーとしての狩猟再開ではなく、生息地復元、被害防除、有害駆除で対応すべきです。(日本では、明治までの1200年間、狩猟禁止令がずっと出続けていました。西洋文明である狩猟が入ってきたのは明治です。)

無思慮なクマ狩猟再開を発案した兵庫県 ④県内クマ2個体群の推定生息数合計940頭に大疑惑・・・余りにも過大推定と統計学者が反論

クマは元々自然界で数のバランスがとれていました。人の入らない生息地であれば何頭いたっていいのです。

人間が個体数をコントロールしてやるなどという発想が、そもそもクレイジーで、自然が何かわかっていません。

自然環境さえ復元・再生できれば、自然界から出て行った人間に用はありません。

コンピューターで計算した兵庫県クマ推定生息数2群計940頭が独り歩きしていますが、この数にどこまで信憑性があるのでしょうか。800頭を超えたら狩猟すべきなどという決まりはどこにもありません。

そもそも、兵庫県の推定生息数の算出法が間違っているという専門家の指摘もあります。

<以下>

①第4回日本奥山学会 発表会

「最近のクマ類 個体数推定」

 

②兵庫県階層ベイズモデルによるクマ生息数推定批判 (統計学の観点からの追記)

「階層ベイズモデルを使った兵庫県クマ生息数推定に於ける問題」

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